【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一つの実施形態にかかる乾式脱硫システムは、
舶用エンジンから排出される排ガスから硫黄酸化物を除去する乾式脱硫システムであって、
固形粒子状の脱硫剤を貯留する脱硫剤タンクと、
前記排ガスの排気エネルギーによって回転駆動するタービンインペラを有するタービンと、
前記脱硫剤タンクに貯留される前記脱硫剤を前記タービンインペラよりも前記排ガスの流れ方向上流側に排ガス流れ方向の上流側に供給する脱硫剤供給ラインと、を備えて構成される。
【0008】
上記(1)に記載の乾式脱硫システムによれば、脱硫剤供給ラインによって脱硫剤を排ガスの流れ方向上流側に供給するので、排ガスがタービン及びタービンよりも下流の排ガス通路を流れていく過程で、脱硫剤が排ガス中の硫黄酸化物と反応するための反応時間を確保することができる。また、タービンインペラの回転により脱硫剤が撹拌されて、排ガス中の硫黄分と脱硫剤の反応が促進される。このため、排ガスがタービン及びタービンよりも下流の排ガス通路への流通時に、脱硫剤と排ガス内の硫黄酸化物とが十分に反応可能であれば、反応器を無くすことができる。また、反応器を設置する場合であっても、その反応器の容量を小型化することができる。このため、乾式脱硫システムの小型化を図ることができ、乾式脱硫システムを船舶に配置する際のレイアウトの自由度を高めることが可能な乾式脱硫システムを実現できる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の乾式脱硫システムにおいて、
前記脱硫剤タンクは、前記舶用エンジンが搭載された船舶のデッキ上に設けられて構成される。
【0010】
本実施形態の乾式脱硫システム1において、使用済みの脱硫剤P1は廃棄タンク29に集められて廃棄されるため、脱硫剤タンク5に貯留されている脱硫剤P1が無くなった場合に、新たな脱硫剤タンク5と交換する必要がある。よって、上記(2)に記載の実施形態によれば、脱硫剤タンクが船舶のデッキ上に設けられることで、脱硫剤タンクの交換作業を容易にすることができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の乾式脱硫システムにおいて、
前記タービンは、前記船舶の機関室内に設けられ、
前記脱硫剤タンクは、前記機関室の鉛直方向の上方位置に設けられて構成される。
【0012】
上記(3)に記載の実施形態によれば、タービンの上方位置に設けられている脱硫剤タンクに貯留されている脱硫剤を、重力を利用して、タービンまで搬送することが出来る。このため、脱硫剤供給ラインに大掛かりな搬送装置などを設けることなく、簡素な構成で脱硫剤タンクからタービンまで脱硫剤を搬送することが出来る。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)に記載の乾式脱硫システムにおいて、
前記脱硫剤タンク内には、前記脱硫剤タンク内の湿度を調整可能な空調設備が設けられて構成される。
【0014】
脱硫剤タンクが船舶のデッキ上に設けられた場合には、湿度や塩分を含んだ空気によって脱硫剤に悪影響が及ぶ虞がある。
【0015】
これに対して、上記(4)に記載の実施形態によれば、空調設備によって脱硫剤タンク内の湿度を調整することができる。このため、湿度による脱硫剤への悪影響を防止することができる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)から(4)のいずれか1項に記載の乾式脱硫システムにおいて、
前記脱硫剤タンクには、前記脱硫剤タンク内の気体の圧力を昇圧可能な昇圧装置が設けられて構成される。
【0017】
脱硫剤タンクが船舶のデッキ上に設けられた場合には、湿度や塩分を含んだ空気によって脱硫剤に悪影響が及ぶ虞がある。
【0018】
これに対して、上記(5)に記載の実施形態によれば、昇圧装置によって脱硫剤タンク内の気体の圧力を昇圧することができる。このため、脱硫剤タンクに隙間があっても、湿度や塩分を含んだ気体が脱硫剤タンク内に浸入する虞を防止することができる。
【0019】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)から(5)のいずれか1項に記載の乾式脱硫システムにおいて、
前記脱硫剤タンクは、外側槽の内側に内側槽が配置された二重構造に形成されて構成される。
【0020】
脱硫剤タンクが船舶のデッキ上に設けられた場合には、湿度や塩分を含んだ空気によって脱硫剤に悪影響が及ぶ虞がある。
【0021】
これに対して、上記(6)に記載の実施形態によれば、脱硫剤タンクは二重構造に形成されているので、内側槽内に貯留される脱硫剤が湿分にさらされ難くなる。
【0022】
(7)幾つかの実施形態では、上記(2)から(6)のいずれか1項に記載の乾式脱硫システムにおいて、
前記脱硫剤タンクには、前記脱硫剤タンク内を加熱可能な加熱器が設けられて構成される。
【0023】
脱硫剤タンクが船舶のデッキ上に設けられた場合には、湿度や塩分を含んだ空気によって脱硫剤に悪影響が及ぶ虞がある。
【0024】
これに対して、上記(7)に記載の実施形態によれば、加熱器によって脱硫剤タンク内を加熱することで、脱硫剤タンク内の気体の相対湿度を下げることができ、脱硫剤への影響を低減することができる。
【0025】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)から(7)のいずれか1項に記載の乾式脱硫システムにおいて、
前記タービンインペラよりも前記排ガス流れ方向の下流側を流れる前記排ガスは、固形粒子状であり前記脱硫剤の流動化を促進するための流動材を含み、
前記タービンインペラよりも前記排ガス流れ方向の下流側に設けられ、前記流動材と前記脱硫剤とを分離する分級器をさらに備えて構成される。
【0026】
上記(8)に記載の実施形態によれば、排ガス中に流動材を含むことで、排ガスがタービンインペラよりも排ガス流れ方向の下流側を流れる際に、流動材によって脱硫剤が撹拌されて、排ガス中の硫黄酸化物と脱硫剤の反応を促進させることができる。
【0027】
また、流動材を含む排ガスが分級器内に流入すると、分級器によって、粒径の大きい流動材が排ガスから分離される一方、硫黄酸化物と反応した脱硫剤と排ガスが分級器よりも排ガス流方向下流側へ流れる。また、分級器によって流動材を分離して回収し、これを再利用することで、流動材のコストの増大を抑制することができる。
【0028】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)に記載の乾式脱硫システムにおいて、
前記分級器によって分離された前記流動材と、前記脱硫剤タンクから供給された前記脱硫剤とを混合するための混合器をさらに備え、
前記脱硫剤供給ラインは、前記混合器に接続されるように構成される。
【0029】
脱硫剤は流動材と比較して小径である。このため、脱硫剤供給ラインに脱硫剤のみが流れる場合、脱硫剤供給ラインにおいて脱硫剤が詰まる虞が生じる。よって、上記(9)に記載の実施形態によれば、混合器によって混合された流動材及び脱硫剤が脱硫剤供給ラインに供給されるので、脱硫剤供給ラインを流れる脱硫剤の流動化が促進され、脱硫剤供給ラインにおける脱硫剤の搬送性を向上させることができる。
【0030】
(10)幾つかの実施形態では、上記(8)又は(9)に記載の乾式脱硫システムにおいて、前記タービンインペラよりも前記排ガス流れ方向の下流側、且つ、前記分級器よりも前記排ガス流れ方向の上流側に設けられた乾式脱硫反応器をさらに備えるように構成される。
【0031】
上記(10)に記載の実施形態によれば、乾式脱硫反応器を設けることで、タービン及びタービンインペラよりも排ガス流れ方向の下流側の流路において、硫黄酸化物が脱硫剤と反応せずに残ってしまった場合でも、この乾式脱硫反応器において、残ってしまった硫黄酸化物と脱硫剤とを反応させることができる。