(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記検出手段で検出された前記媒体の伸びに応じて前記サーマルヘッドのライン周期及び/又は前記媒体の搬送速度を変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
前記制御手段は、前記検出手段で検出された前記媒体の伸びに応じてさらに前記サーマルヘッドによる前記媒体への画像形成開始位置を補正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
前記検出手段は、前記搬送手段による前記媒体の搬送量を検出することで前記媒体に生じた伸びを検出することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
前記検出手段は、前記画像形成部による画像形成の際に、前記画像形成部の上流側における前記搬送手段による前記媒体の搬送量と前記画像形成部の下流側における前記搬送手段よる前記媒体の搬送量とを比較することで前記媒体に生じた伸びを検出することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、カード(記録媒体)に文字や画像を印刷記録するとともに、カードに磁気的ないし電気的な情報記録を行う印刷装置に適用した実施の形態について説明する。
【0019】
1.構成
1−1.システム構成
図1および
図12に示すように、本実施形態の印刷装置1は印刷システム200の一部を構成している。すなわち、印刷システム200は、大別して、上位装置201(例えば、パーソナルコンピュータ等のホストコンピュータ)と、印刷装置1とで構成されている。
【0020】
印刷装置1は、図示を省略したインターフェースを介して、上位装置201に接続されており、上位装置201から印刷装置1に画像データや磁気的ないし電気的記録データ等を送信して、記録動作等を指示することが可能である。なお、印刷装置1は、オペパネ部(操作表示部)5を有しており(
図12参照)、上位装置201からの記録動作指示の他、オペパネ部5からの記録動作指示も可能である。
【0021】
上位装置201には、デジタルカメラやスキャナ等の画像入力装置204、上位装置201に命令やデータを入力するためのキーボードやマウス等の入力装置203、上位装置201によって生成されたデータ等の表示を行なう液晶ディスプレイ等のモニタ202が接続されている。
【0022】
1−2.印刷装置
1−2−1.機構部
図2に示すように、印刷装置1はハウジング2を有しており、ハウジング2内に情報記録部Aと、印刷部Bと、媒体収容部Cと、収容部Dと、回動ユニットFとを備えている。
【0023】
(1)情報記録部A
情報記録部Aは、磁気記録部24と、非接触式IC記録部23と、接触式IC記録部27とで構成されている。
【0024】
(2)媒体収容部C
媒体収容部Cは、複数枚のカードCaを立位姿勢で整列して収納しており、その先端には分離開口7が設けられており、ピックアップローラ19で最前列のカードCaから順次繰り出して供給する。なお、本実施形態では、カードCaに横85.6mm、縦53.9mmの標準サイズのカードが用いられる。
【0025】
(3)回動ユニットF
繰り出されたブランクのカードCaは、搬入ローラ22で回動ユニットFに送られる。回動ユニットFはハウジング2に回動可能に軸支された回動フレーム80と、このフレームに支持された2つのローラ対20、21で構成されている。そして、ローラ対20、21は回動フレーム80に回転自在に軸支持されている。
【0026】
回動ユニットFが回動する外周には、上述した磁気記録部24、非接触式IC記録部23および接触式IC記録部27が配置されている。そして、ローラ対20、21は、これらの情報記録部23、24、27のいずれかに向けてカードCaを搬送するための媒体搬送路65を形成し、これらの記録部でカードCaには磁気的若しくは電気的にデータが書き込まれる。なお、回動ユニットFの近傍には、環境温度(外気温)を検出するサーミスタ等の温度センサThが配置されており、この温度センサThで検出された環境温度を基に印刷部Bに設けられたサーマルヘッドやヒートローラ等(後述)の加熱要素の温度補正が行われる。
【0027】
(4)印刷部B
印刷部Bは、カードCaの表裏面に顔写真、文字データなど画像を形成するもので、媒体搬送路65の延長上にカードCaを搬送するための媒体搬送経路P1が設けられている。また、媒体搬送経路P1にはカードCaを搬送する搬送ローラ29、30が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0028】
印刷部Bはフィルム搬送機構10を有しており、このフィルム搬送機構10により搬送される転写フィルム46の画像形成領域(後述)に対して、サーマルヘッド40でインクリボン41の各色画像を重ねて形成する画像形成部B1と、続いてヒートローラ33により媒体搬送経路P1上のカードCaの表面に転写フィルム46に形成された画像を転写する転写部B2とを備えている。
【0029】
印刷部Bの下流側には、媒体搬送経路P1の延長線上に、収容スタッカ60に印刷後のカードCaを搬送するための媒体搬送経路P2が設けられている。媒体搬送経路P2にはカードCaを搬送する搬送ローラ対37、38が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0030】
搬送ローラ対37と搬送ローラ対38の間にはデカール機構12が配置されている。デカール機構12は、搬送ローラ対37、38で両端部が挟持(ニップ)されたカードCaの中央部を下方に凸状のデカールユニット33で押圧して位置固定された凹状のデカールユニット34との間でカードCaを挟むことにより、ヒートローラ33による熱転写でカードCaに生じた反りを矯正する。デカール機構12は偏心カム36を含む構成によりデカールユニット33が
図2に示す上下方向で進退可能に構成されている。
【0031】
(5)収容部D
収容部Dは、印刷部Bから送られたカードCaを収容スタッカ60に収容するように構成されている。収容スタッカ60は、昇降機構61にて
図2で下方に移動するように構成されている。
【0032】
(6)印刷部詳細
次に、上述した印刷装置1の全体構成のうち印刷部Bについて、さらに詳しく説明する。
【0033】
転写フィルム46は、カードCaの幅方向より若干大きな幅を有する帯状を呈しており、上から順に、インクリボン41のインクを受容するインク受容層、インク受容層の表面を保護する透明の保護層、加熱によりインク受容層および保護層を一体に剥離を促進するための剥離層、基材(ベースフィルム)の順で積層されて形成されている。
【0034】
図14(A)、(B)に示すように、本実施形態で使用される転写フィルム46には、矢印で示す印刷方向(サーマルヘッド40の副走査方向)と交差する幅方向(サーマルヘッド40の主走査方向)を横断するように形成され画像形成開始位置を設定するためのマークが一定間隔で形成されており、これらのマーク間が画像形成領域Rとされている。つまり、画像形成領域Rは、印刷方向における上流側のマークMaと下流側のマークMbとで画定される。なお、画像形成領域Rの印刷方向(
図14の横方向)の寸法は94mm、幅方向(
図14の縦方向)の寸法は60mm、マークMa、Mbの太さ(幅)はそれぞれ4mmに設定されている。
【0035】
図2に示すように、転写フィルム46は、モータMr2、Mr4の駆動により転写フィルムカセット内の回転する供給ロール47と巻取ロール48にそれぞれ巻き取りないし繰り出される。すなわち、転写フィルムカセット内には、供給ロール47の中心に供給スプール47A、巻取ロール48の中心に巻取スプール48Aが配されており、供給スプール47Aには図示しないギアを介してモータMr2の回転駆動力が伝達され、巻取スプール48Aには図示しないギアを介してモータMr4の回転駆動力が伝達される。モータMr2およびモータMr4には正逆転可能なDCモータが用いられており、モータMr2、Mr4のモータ軸には出力軸側とは反対側の位置にこれらのモータの回転数をそれぞれ検出する不図示のエンコーダ(以下、モータMr2のエンコーダ、モータMr4のエンコーダという。)が設けられている。本実施形態では、転写処理前の転写フィルム46が供給スプール47Aに巻回されており、使用済み(転写部B2で転写処理された部分)の転写フィルム46が巻取スプール48Aに巻回されている。よって、転写フィルム46に対して画像形成処理および転写処理を行う際は、供給スプール47Aから転写フィルム46を巻き取スプール48A側に一旦繰出し、供給スプール47Aで転写フィルム46を巻き取りながら画像形成処理および転写処理を行う。
【0036】
フィルム搬送ローラ49は、転写フィルム46を搬送する主要な駆動ローラであり、このフィルム搬送ローラ49の駆動を制御することで転写フィルム46の搬送量および搬送停止位置が定まる。フィルム搬送ローラ49は正逆転可能なフィルム搬送モータMr5(ステッピングモータ)に連結されている。フィルム搬送ローラ49の駆動時にモータMr2、Mr4も駆動するが、供給ロール47、巻取ロール48のいずれか一方から繰り出された転写フィルム46をいずれか他方で巻き取り、搬送される転写フィルム46にテンションを付与するためのものであってフィルム搬送の補助的機能を果たし、転写フィルム46の主要な搬送源となるものではない。
【0037】
フィルム搬送ローラ49の周面には、ピンチローラ32aとピンチローラ32bとが配置されている。ピンチローラ32a、32bは、
図2では示されていないが、フィルム搬送ローラ49に対して進出および退避するよう移動可能に構成されており、
図2に示す状態ではフィルム搬送ローラ49側に進出して圧接することで転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に巻き付けている。これにより、転写フィルム46はフィルム搬送ローラ49の回転数に応じた距離の正確な搬送が行われる。
【0038】
従って、フィルム搬送機構10は、画像形成部B1と転写部B2との間に配された主要駆動ローラのフィルム搬送ローラ49を駆動させることにより、転写フィルム41を供給ロール47、画像形成部B1、転写部B2および巻取ロール48間で正逆搬送するとともに、画像形成部B1および転写部B2において転写フィルム46の画像形成領域Rおよび画像形成領域Rに形成された画像を適正位置に位置付ける(頭出し)機能を有している。また、巻取ロール48と画像形成部B1(サーマルヘッド40、プラテンローラ45)との間、フィルム搬送ローラ49と転写部B2(ヒートローラ33、プラテンローラ31)との間には、それぞれ、発光素子と受光素子を有し上述した転写フィルム46に形成されたマークを検出する透過型センサSe1、Se3が配設されている。
【0039】
一方、インクリボン41はインクリボンカセット42に収納されており、このカセット42にインクリボン41を供給する供給ロール43とインクリボン41を巻き取る巻取ロール44との間で張架された状態で収容されている。巻取ロール44の中心には巻取スプール44A、供給ロール43の中心には供給スプール43Aが配されており、巻取スプール44AはモータMr1の駆動力で回転し、供給スプール43AはモータMr3の駆動力で回転する。モータMr1およびモータMr3には正逆転可能なDCモータが用いられている。
【0040】
インクリボン41は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)のカラーリボンパネルとBk(ブラック)リボンパネルとを長手方向に面順次に繰り返すことで構成されている。また、供給ロール43と画像形成部B1(サーマルヘッド40、プラテンローラ45)との間には、発光素子側からの光がBkリボンパネルにより受光素子側で遮光されることでインクリボン41の位置検出を行い画像形成部B1へのインクリボン41の頭出しを行うための透過型センサSe2が配置されている。
【0041】
プラテンローラ45とサーマルヘッド40とは画像形成部B1を構成しており、プラテンローラ45に対向する位置にサーマルヘッド40が配置されている。画像形成時には、転写フィルム46およびインクリボン41を介してプラテンローラ45をサーマルヘッド40に圧接する。サーマルヘッド40は主走査方向に列設された複数の加熱素子を有しており、これらの加熱素子はヘッドコントロール用IC(図示せず)により印刷データに基づいて選択的に加熱制御され、インクリボン41を介して転写フィルム46に画像を形成する。その際、転写フィルム46とインクリボン41とは同速で同方向(
図14に示す印刷方向、
図2の下側から上側の方向)に搬送される。なお、冷却ファン39はサーマルヘッド40を冷却するためのものである。
【0042】
転写フィルム46への画像形成が終了したインクリボン41は、剥離コロ25と剥離部材28とで転写フィルム46から引き剥がされる。剥離部材28はインクリボンカセット42に固設されており、剥離コロ25は画像形成時に剥離部材28に当接して両者で転写フィルム46とインクリボン41とを挟持することで剥離が行われる。そして、剥離されたインクリボン41はモータMr1の駆動力で巻取ロール44に巻き取られ、転写フィルム46はフィルム搬送ローラ49により、プラテンローラ31とヒートローラ33とを有する転写部B2まで搬送される。
【0043】
転写部B2では、転写フィルム46はカードCaとともにヒートローラ33およびプラテンローラ31とで挟持されて、転写フィルム46の画像形成領域Rに形成された画像がカードCa表面に転写される。すなわち、転写時には、カードCaおよび転写フィルム46(の画像形成領域R)を介してヒートローラ33をプラテンローラ31に圧接し、カードCaと転写フィルム46とを同速で同方向に搬送する(
図20も参照)。なお、ヒートローラ33は、転写フィルム46を介してプラテンローラ31に圧接・離間するように昇降機構(不図示)に取り付けられている。
【0044】
画像転写後の転写フィルム46は、ヒートローラ33と搬送ローラ対37を構成する従動ローラ37bとの間に配置された剥離ピン79でカードCaから分離(剥離)され供給ロール47側に搬送される。一方、画像が転写されたカードCaは媒体搬送経路P2上を下流側のデカール機構12に向けて搬送される。
【0045】
画像形成部B1の構成をその作用とともにさらに詳しく説明する。
図3〜
図5に示すように、ピンチローラ32a、32bはピンチローラ支持部材57の上端部と下端部にそれぞれ支持されており、ピンチローラ支持部材57はその中央部を挿通する支持シャフト58に回動自在に支持されている。支持シャフト58は、
図10に示すように、両端部がピンチローラ支持部材57に形成された長穴76、77に架け渡されているとともに、中間部でブラケット50の固定部78にて固定されている。また、長穴76、77は支持シャフト58に対して水平方向および垂直方向に空間を持たせている。これにより、後述するフィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32a、32bの調整が可能となる。
【0046】
支持シャフト58にはバネ部材51(51a、51b)が装着されており、ピンチローラ支持部材57のピンチローラ32a、32bが装着される側の端部は、それぞれバネ部材51と接してそのバネ力によりフィルム搬送ローラ49の方向へ付勢されている。
【0047】
ブラケット50は、カム受81でカム53のカム作動面と当接しており、駆動モータ54(
図10参照)の駆動力で回動するカム軸82を支点とするカム53の矢印方向への回動に応じてフィルム搬送ローラ49に対して図で左右方向に移動するように構成されている。従って、ブラケット50がフィルム搬送ローラ49に向けて進出したとき(
図4および
図5)、ピンチローラ32a、32bはバネ部材51に抗して転写フィルム46を挟んでフィルム搬送ローラ49に圧接し、転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に巻き付ける。
【0048】
このとき、ブラケット50の回動支点となる軸95から遠い位置にあるピンチローラ32bがまずフィルム搬送ローラ49を圧接し、続いてピンチローラ32aが圧接する。このように、回動支点である軸95をフィルム搬送ローラ49より上方に配置することで、ピンチローラ支持部材57は平行移動ではなく回動しながらフィルム搬送ローラ49と当接することになり、平行移動させるよりも幅方向のスペースが少なくてすむ利点がある。
【0049】
また、ピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49へ圧接したときの圧接力は、バネ部材51により転写フィルム46の幅方向の対して均一となる。その際、ピンチローラ支持部材57の両側に長穴76、77が形成され支持シャフト58は固定部78で固定されているために、ピンチローラ支持部材57を3方向に調整することができ、フィルム搬送ローラ49の回転により転写フィルム46はスキュー(斜行)を起こすことなく正しい姿勢にて搬送される。なお、ここで言う3方向の調整とは、(i)フィルム搬送ローラ49に対してピンチローラ32a、32bの軸方向の圧接力を均一にするために、フィルム搬送ローラ49の軸に対するピンチローラ32a、32bの軸の水平方向の平行度を調整すること、(ii)フィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32aの圧接力とフィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32bの圧接力とを均一にするために、フィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32aとピンチローラ32bとの移動距離を調整すること、および(iii)フィルム進行方向に対してピンチローラ32a、32bの軸が垂直になるように、フィルム搬送ローラ49の軸に対するピンチローラ32a、32bの軸の垂直方向の平行度を調整することである。
【0050】
さらに、ブラケット50には、ブラケット50がフィルム搬送ローラ49に向けて進出したとき、転写フィルム46のフィルム搬送ローラ49に巻き付けられていない部分と当接する張力受け部材52とが設けられている。
【0051】
張力受け部材52は、ピンチローラ32a、32bが転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に圧接した際に生じる転写フィルム46の張力により、ピンチローラ32a、32bがそれぞれバネ部材51の付勢力に抗してフィルム搬送ローラ49から退避するのを防止するために設けられている。このため、張力受け部材52は、ピンチローラ32a、32bより図で左の位置で転写フィルム46と当接するようブラケット50の回動側端部の先端に取り付けられている。
図2は張力受け部材52が転写フィルム46と当接している状態を示している。
【0052】
これにより、転写フィルム46の弾性から生じる張力は張力受け部材52を通してカム53にて直接受け止めることができる。従って、この張力によりピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49から退避してピンチローラ32a、23bの圧接力が弱まることが防止されるので、転写フィルム46のフィルム搬送ローラ49への密着した巻き付け状態が維持されて正確な搬送を行うことができる。
【0053】
転写フィルム46の横幅方向に沿って配置されたプラテンローラ45は、
図9に示すように、軸71を支点として回動自在な一対のプラテン支持部材72に支持されている。一対のプラテン支持部材72はプラテンローラ45の両端を支持している。プラテン支持部材72はそれぞれ、軸71を共通の回動軸とするブラケット50Aの端部にバネ部材99を介して接続されている。
【0054】
ブラケット50Aは、基板87と、この基板87からのプラテン支持部材72の方向に折り曲げて形成されたカム受支持部85とを有しており、カム受支持部85でカム受84を保持している。基板87とカム受支持部85との間には、駆動モータ54にて駆動するカム軸83を支点に回動するカム53Aが配設されており、カム作動面とカム受84とが当接するよう構成されている。従って、カム53Aの回動によりブラケット50Aがサーマルヘッド40の方向へ進出すると、プラテン支持部材72も移動してプラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接する。
【0055】
このようにブラケット50Aとプラテン支持部材72との間にバネ部材99とカム53Aとを上下に配置することにより、このプラテン移動ユニットはブラケット50Aとプラテン支持部材72との間隔内に収めることができる。また、幅方向はプラテンローラ45の幅内に収めることができ省スペース化を図ることができる。
【0056】
また、カム受支持部85は、プラテン支持部材72に形成した穿孔部72a、72b(
図9参照)に嵌合しているため、カム受支持部85をプラテン支持部材72の方向に突設しても、ブラケット50Aとプラテン支持部材72との間隔が広がることがなく、その面でも省スペース化を図ることができる。
【0057】
プラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接したとき、それぞれのプラテン支持部材72に接続されたバネ部材99は、それぞれ転写フィルム46の幅方向への圧接力が均一となるように作用する。このため、転写フィルム46がフィルム搬送ローラ49により搬送されるときスキューが防止され、転写フィルム46の画像形成領域Rが幅方向にずれることがなくサーマルヘッド40による転写フィルム46への画像形成を正確に行うことができる。
【0058】
ブラケット50Aの基板87には、剥離コロ25の両端を支持する一対の剥離コロ支持部材88がバネ部材97を介して設けられており、剥離コロ25は、ブラケット50Aがカム53Aの回動によりサーマルヘッド40に対し進出したとき、剥離部材28と当接して両者で挟持された転写フィルム46とインクリボン41とを剥離する。剥離コロ支持部材88もプラテン支持部材72と同様に剥離コロ25の両端にそれぞれ設けられており、剥離部材28に対する幅方向の圧接力が均一となるように構成されている。
【0059】
ブラケット50Aの軸支59側の端部と反対側の端部には、張力受け部材52Aが設けられている。張力受け部材52Aは、プラテンローラ45と剥離コロ25とをサーマルヘッド40と剥離部材28とにそれぞれ圧接する際に生じる転写フィルム46の張力を吸収するように設けられている。バネ部材99とバネ部材97は、転写フィルム46の幅方向への圧接力を均一にするために設けられるが、逆にバネ部材99、97が転写フィルム46の張力に負けて転写フィルム46への圧接力が弱まってしまわないように、張力受け部材52Aにより転写フィルム46からの張力を受けている。なお、張力受け部材52Aも上述の張力受け部材52と同様にブラケット50Aに固定されているため、転写フィルム46の張力はブラケット50Aを介してカム53Aで受けることになるので、転写フィルム46の張力に負けることはない。これにより、サーマルヘッド40とプラテンローラ45との圧接力および、剥離部材28と剥離コロ25との圧接力が保たれるので、良好な画像形成および剥離を行うことができる。また、フィルム搬送ローラ49の駆動時に転写フィルム46の搬送量に誤差を生じることがなく、画像形成領域Rの長さ分が正確にサーマルヘッド40に搬送されて精度よく(色ずれを生じることなく)画像を形成できる。
【0060】
カム53とカム53Aとは、ベルト98(
図3参照)が張架されており同一の駆動モータ54により駆動される。
【0061】
印刷部Bが
図6に示す待機ポジションにあるときカム53およびカム53Aは
図3に示す状態にあり、ピンチローラ32a、32bはフィルム搬送ローラ49に圧接しておらず、またプラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接していない。換言すると、待機ポジションにあるときは、プラテンローラ45とサーマルヘッド40とは両者が離間した離間位置に位置している。
【0062】
そして、カム53およびカム53Aが連動して回転して
図4に示す状態となると、印刷部Bは
図7に示す印刷ポジションに移行する。その際、まずピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49に転写フィルム46を巻き付けるとともに、張力受け部材52は転写フィルム46と当接する。その後プラテンローラ45がサーマルヘッド40に圧接する。この印刷ポジションでは、プラテンローラ45がサーマルヘッド40に向けて移動して転写フィルム46とインクリボン41を挟み圧接して、剥離ローラ25が剥離部材28と接している。
【0063】
この状態で、フィルム搬送ローラ49の回転により転写フィルム46の搬送が開始されると、同時にインクリボン41もモータMr1の動作により巻取ロール44により巻き取られて同じ方向に搬送される。この搬送の間、転写フィルム46に形成されたマークがセンサSe1を通過して所定距離移動し、転写フィルム46が画像形成開始位置に到達した時点で、転写フィルム46の画像形成領域Rにサーマルヘッド40による画像形成が行われる。特に画像形成中は転写フィルム46の張力が大きくなるため、転写フィルム46の張力はフィルム搬送ローラ46からピンチローラ32a、32bを離間させる方向および、剥離部材28とサーマルヘッド40から剥離コロ25とプラテンローラ45とを離間させる方向に働く。しかし、上述したように、転写フィルム46の張力は張力受け部材52、52Aが受けているため、ピンチローラ32a、32bの圧接力が弱くなることがなく、正確なフィルム搬送を行うことができ、サーマルヘッド40とプラテンローラ45との圧接力および、剥離部材28と剥離コロ25との圧接力も弱くなることがないため、正確な画像形成(印刷)および剥離を行うことができる。
【0064】
転写フィルム46の搬送量、すなわち転写フィルム46の搬送方向の距離は、フィルム搬送ローラ49に設けられた図示しないエンコーダ(以下、フィルム搬送ローラ49のエンコーダという。)で検出され、それに応じてフィルム搬送ローラ49の回転が停止し、同時にモータMr1の動作による巻取ロール44による巻き取りも停止する。これにより、転写フィルム46の画像形成領域Rへの最初のインクパネルのインクによる画像形成が終了する。
【0065】
次に、カム53およびカム53Aが連動してさらに回転し
図5に示す状態となると、印刷部Bは
図8に示す搬送ポジションに移行して、プラテンローラ45はサーマルヘッド40から退避する方向に復帰する。この状態では依然として、ピンチローラ32a、32bはフィルム搬送ローラ49に転写フィルム46を巻き付けて、張力受け部材52は転写フィルム46と接しており、フィルム搬送ローラ49の逆方向の回転により転写フィルム46は初期位置にまで逆搬送される。このときも転写フィルム46の移動量はフィルム搬送ローラ49の回転によって制御されるが、一色のインクパネル(例えば、Y)により画像が形成された画像形成領域Rの搬送方向の長さ分が逆搬送される。なお、インクリボン41もモータMr3により所定量巻き戻され、次に画像を形成するためのインクのインクパネルを初期位置(頭出し位置)に待機させる。
【0066】
そして、カム53、53Aは再び
図4に示す状態となって
図7に示す印刷ポジションとなり、プラテンローラ45をサーマルヘッド40に圧接させ、フィルム搬送ローラ49が再び正方向への回転を行って転写フィルム46を画像形成領域Rの長さ分移動させて、サーマルヘッド40により次のインクパネルのインクによる画像形成が行われる。
【0067】
このように、印刷ポジションと搬送ポジションでの動作は全てまたは所定のインクパネルのインクによる画像形成が終了するまで繰り返される。そして、サーマルヘッド40による画像形成が終了すると、転写フィルム46の画像形成領域Rをヒートローラ33まで搬送するが、このときカム53および53Aは
図3に示す状態に移動して、転写フィルム46への圧接を解除する。その後、フィルム搬送モータMr5(およびモータMr2、Mr4)の駆動で転写フィルム46を搬送しながらカードCaへの転写が行われる。
【0068】
このような印刷部Bは、3つのユニット90、91、92に分割されている。
【0069】
図9に示すように、第1のユニット90は、ユニット枠体75に駆動モータ54(
図10参照)の駆動により回転する駆動軸70を装架しており、駆動軸70にフィルム搬送ローラ49を装着している。フィルム搬送ローラ49の下方には、ブラケット50Aと一対のプラテン支持部材72とが配置されており、これら部材はユニット枠体75の両側板に装架される軸71に回動自在に支持されている。
【0070】
図9では、プラテン支持部材72に形成した穿孔部72a、72bからブラケット50Aの一部である一対のカム受支持部85が現れている。カム受支持部85は、その後方に配置される一対のカム受84を保持する。そして、カム受84のさらに後方には、ユニット枠体75を挿通しているカム軸83に装着されるカム53Aが配置されている。カム軸83はユニット枠体75の両側板に装架される。
【0071】
上述したサーマルヘッド40は、転写フィルム46とインクリボン41の搬送パスを挟みプラテンローラ45と対向する位置に配置されている。
図11に示すように、サーマルヘッド40、加熱に関する部材および冷却ファン39は第3のユニット92に一体化しており、第1のユニット90に対向して配置されている。
【0072】
第1のユニット90は、移動可能なブラケット50Aにより、画像形成動作で位置が変動するプラテンローラ45と剥離コロ25と張力受け部材52Aとを一括して保持することで、これら部材間の位置調整が不要となる。しかも、カム53の回動によりブラケット50Aを移動させることでこれら部材を所定の位置にまで移動させることができる。また、ブラケット50Aを設けたことで、固定のフィルム搬送ローラ49と同一のユニットに収納でき、転写フィルムを精度良く搬送しなければならないフィルム搬送ローラ49による搬送駆動部分と、プラテンローラ45による転写位置規制部分とが同じユニットに含まれるために両者間の位置調整が不要となる。
【0073】
図10に示すように、第2のユニット91は、ユニット枠体55にカム53が装着されるカム軸82を挿通させて、カム軸82を駆動モータ54の出力軸に連結している。そして、第2のユニット91は、カム53と当接するようブラケット50をユニット枠体55に移動自在に支持しており、ブラケット50には、ピンチローラ支持部材57を回動自在に支持している支持シャフト58と張力受け部材52とが固設されている。
【0074】
ピンチローラ支持部材57には、支持シャフト58にバネ部材51a、51bが取り付けられており、その端部をピンチローラ32a、32bを支持するピンチローラ支持部材57の両端にそれぞれ当接させて、フィルム搬送ローラ49の方向へ付勢している。ピンチローラ支持部材57は、長穴76、77に支持シャフト58が挿入されており、支持シャフト58は中央部でブラケット50に固定支持されている。
【0075】
ブラケット50とピンチローラ支持部材57との間には、ピンチローラ支持部材57をブラケット50に向けて付勢するバネ89が設けられている。このバネ89によりピンチローラ支持部材57は第1のユニット90のフィルム搬送ローラ49から後退する方向に付勢されるため、転写フィルムカセットを印刷装置1にセットするときに第1のユニット90と第2のユニット91の間に転写フィルム46を容易に通すことができる。
【0076】
第2のユニット91は、画像形成動作に応じて位置が変動するピンチローラ32a、32bと張力受け部材52とをブラケット50Aで保持し、カム53の回動によりブラケット50Aを移動させることでピンチローラ32a、32bと張力受け部材52とを移動させるため、両者間の位置調整やピンチローラ32a、32bとフィルム搬送ローラ49との位置調整が簡略化される。このような第2のユニット91は、転写フィルム46を挟み第1のユニット90に対向して配置されている。
【0077】
このようにユニット化することで第1のユニット90、第2のユニット91および第3のユニット92は、転写フィルム46やインクリボン41の各カセットと同様に、それぞれ印刷装置1の本体から引き出すことも可能となる。従って、転写フィルム46やインクリボン41の消耗によるカセットの交換時にこれらユニット90、91、92も必要に応じてユニットを取り出しておけばカセット挿入時の転写フィルム46やインクリボン41を簡単に装置内に装架することができる。
【0078】
上述したように、プラテンローラ45とブラケット50Aとカム53Aとプラテン支持部材72とを一体化した第1のユニット90と、ピンチローラ32a、32bとブラケット50とカム53とバネ部材51とを一体化した第2のユニット91とを組み合わせるとともに、サーマルヘッド40が取り付けられた第3のユニット92をプラテンローラ45に対向して配置して組み付けることで、印刷装置1の製造時における組み立てやメンテナンス時の調整を容易且つ正確に行うことができる。また、一体化したことで装置からの取り外しも容易に行え、印刷装置1の取扱い性が向上する。
【0079】
1−2−2.制御部および電源部
次に、印刷装置1の制御部および電源部について説明する。
図12に示すように、印刷装置1は、印刷装置1全体の動作制御を行う制御部100と、商用交流電源から各機構部および制御部等を駆動/作動可能な直流電源に変換する電源部120とを有している。
【0080】
(1)制御部
図14に示すように、制御部100は、印刷装置1の全体の制御処理を行うマイクロコンピュータユニット(MCU)102(以下、MCU102と略称する。)を備えている。MCU102は、中央演算処理装置として高速クロックで作動するCPU、印刷装置1のプログラムやプログラムデータが記憶されたROM、CPUのワークエリアとして働くRAM、およびこれらを接続する内部バスで構成されている。
【0081】
MCU102には外部バスが接続されている。外部バスには、上位装置201との通信を行うための図示を省略したインターフェース、カードCaに画像を形成すべき印刷データやカードCaの磁気ストライプや収容ICに磁気的ないし電気的に記録すべき記録データ等を一時的に格納するメモリ101が接続されている。
【0082】
また、外部バスには、Se1〜Se3の各種センサやフィルム搬送モータMr5、モータMr2、Mr4のエンコーダからの信号を処理する信号処理部103、各モータに駆動パルスや駆動電力を供給するモータドライバ等を含むアクチュエータ制御部104、サーマルヘッド40を構成する発熱素子への熱エネルギを制御するためのサーマルヘッド制御部105、オペパネ部5を制御するための操作表示制御部106および上述した情報記録部Aが接続されている。
【0083】
(2)電源部
電源部120は、制御部100、サーマルヘッド40、ヒートローラ33、オペパネ部5および情報記録部A等に作動/駆動電源を供給している。
【0084】
2.動作
次に、フローチャートを参照して、本実施形態の印刷装置1によるカード発行動作について、MCU102のCPU(以下、単にCPUという。)を主体として説明する。
【0085】
なお、説明を簡単にするために、印刷装置1を構成する各部材はホーム(初期)位置に位置付けられ(例えば、
図2に示す状態)、ROMに格納されたプログラムおよびプログラムデータをRAMに展開する初期設定処理が終了し、上位装置201から印刷データ等を受信済みのものとして、すなわち、CPUは、上位装置201から一面(片面印刷の場合)または一面および他面(両面印刷の場合)側の印刷データ(Bkの印刷データ、Y、M、Cの色成分印刷データ)並びに磁気ないし電気的記録データを受信しメモリ101に格納しているものとして説明する。また、印刷部B(画像形成部B1、転写部B2)の動作については既に説明したので、重複を避けるために簡単に説明する。
【0086】
図13に示すように、カード発行ルーチンでは、ステップ302において、画像形成部B1で、転写フィルム46に一面(例えば表面)側の画像(鏡像)を形成する一次転写処理(画像形成処理)を行う。すなわち、メモリ101に格納されたY、M、Cの色成分印刷データおよびBkの印刷データに基づいて画像形成部B1のサーマルヘッド40を制御することで、転写フィルム46の画像形成領域Rにインクリボン41のY、M、CおよびBkインクによる画像を重ねて形成する。CPUは、サーマルヘッド制御部105を介して印刷データを1ラインごとにサーマルヘッド40側に出力することで、主走査方向に列設された発熱素子を選択的に加熱させてサーマルヘッド40を駆動する。なお、CPUは、この一次転写処理に先立って、サーマルヘッド制御部105を介してサーマルヘッド40を構成する加熱素子を予備加熱(インクリボン41のインクが転写フィルム46の画像形成領域Rに転写される温度未満の所定温度まで加熱素子を加熱)するように制御する。
【0087】
2−1.転写フィルムの伸び検出
ここで、本実施形態の印刷装置1の特色の一つである、サーマルヘッド40の加熱素子による加熱により転写フィルム46に生じた伸びを検出する伸び検出方法について説明する。この転写フィルム46の伸び検出は、ステップ302での一次転写処理中に画像形成領域RへのY、M、CおよびBkインクによる画像形成と一体で行われる。以下では、典型的な3つの伸び検出方法について例示するが、本実施形態の印刷装置1ではこれらの伸び検出方法のいずれを用いるようにしてもよい。
【0088】
2−1−1.画像形成領域より上流側のマークを頭出しに用いる場合
まず、転写フィルム46に形成されたマークMaと転写フィルム46の画像形成領域Rにおける画像形成開始位置(サーマルヘッド40の印刷開始位置)との関係について説明する。
【0089】
図14(A)は、印刷方向に対し画像形成領域Rより上流側のマークMaを頭出しに用いる(センサSe1でマークMaを検出する)場合の画像形成部B1における転写フィルム46の画像形成領域Rに対する画像形成開始位置を模式的に示したものである。
図14(A)に示すように、本実施形態では、マークMaを頭出しに用いる場合の画像形成領域Rにおける画像形成開始位置PAは、マークMaの(印刷方向)先端から90.3mmの位置に設定されている。換言すると、画像形成領域Rの印刷方向での長さのセンタと、サーマルヘッド40による印刷領域の印刷方向での長さのセンタとが一致するように設定されている。
【0090】
なお、
図14(A)において、画像形成領域R内の実線の長方形の領域がサーマルヘッド40による印刷領域、2点鎖線の領域がカードCaの領域である。本実施形態でサーマルヘッド40による印刷領域は
図14(A)の横方向で86.6mm、縦方向で54.9mmに設定されており、標準サイズのカードCaに対して上下左右方向それぞれで0.5mmほど余裕を持っている(カードCaより大きい)。付言すれば、マークMaの先端からサーマルヘッド40による印刷領域(画像形成終了位置)までの距離およびマークMbの後端から画像形成開始位置PAまでの距離はそれぞれ3.7mmとなる。以下では、マークMaを頭出しに用いる場合について上述した3つの伸び検出方法について順に説明する。
【0091】
(1)第1検出方法
第1検出方法について一言すれば、一色(例えば、Y)のインクによる画像形成前のマークMb、Ma間の距離(長さ)と、その一色のインクによる画像形成後のマークMb、Ma間の距離とを比較することで、当該一色のインクによる画像形成で転写フィルム46の画像形成領域Rに生じた伸びを検出するものであるが、詳しくは次のとおりである。
【0092】
図15(A)は、
図6に示した一部であり、印刷装置1が待機ポジションにある状態を示したものである。このとき、1つ前のカードCaに対するカード発行ルーチンの二次転写処理(後述するステップ316、306も参照)により1つ前の画像形成領域Rは剥離ピン79と供給ロール47との間に位置しており、画像形成領域Rはマークを介して連続していることから、次の(今回使用する未使用の、以下、単に「未使用の」という。)画像形成領域Rは供給ロール47に巻かれた状態に位置付けられている。つまり、この状態で露出している(スプールに巻かれていない)転写フィルム46は全て使用済みの状態である。
【0093】
図15(B)は、
図15(A)に示した待機ポジションにおいて、モータMr2およびモータMr4を駆動させて、未使用の画像形成領域Rを画定するマークMb、MaをセンサSe1の上流側に位置付けた状態を示したものである。なお、このマークMb、MaをセンサSe1の上流側に位置付ける動作は1つ前のカードCaに対するカード発行ルーチンの終了処理で行うようにしてもよい。
【0094】
図15(C)は、
図15(B)に示した状態から、印刷装置1を
図8に示した搬送ポジションに移行させ(ピンチローラ32a、32bをフィルム搬送ローラ49に圧接させ)フィルム搬送モータMr5(およびモータMr2、Mr4、なお、上述したようにモータMr2、Mr4は転写フィルム46にテンションを付与することが主機能のため、以下では説明を省略する。)を駆動させて、マークMb、MaがセンサSe1を通過する位置まで転写フィルム46を搬送した状態を示したものである。CPUは、信号処理部103を介してセンサSe1の出力を参照することにより、Yインクによる未使用の画像形成領域Rへの画像形成前のマークMb、Ma間の距離を計測することができる。
【0095】
図15(D)は、Yインクによる画像形成に対する未使用の画像形成領域Rの頭出しのために、
図15(C)に示した状態から(搬送ポジションにおいて)、フィルム搬送モータMr5を駆動させて、未使用の画像形成領域RのマークMaをセンサSe1の上流側に位置付けた状態を示したものである。なお、
図15(B)〜
図15(D)に示す状態間で、インクリボン41側でもセンサSe2の出力を監視(インクリボン41のBkインクパネルの位置を検出)することによりYインクパネルについての頭出しが行われる。
【0096】
図15(E)は、
図15(D)に示した状態から、印刷装置1を
図7に示した印刷ポジションに移行させた(転写フィルム46およびインクリボン41を介してプラテンローラ45をサーマルヘッド40に圧接させた)状態を示したものである。未使用の画像形成領域Rに対するYインクパネルによる画像形成は、フィルム搬送モータMr5を駆動させることで、センサSe1がマークMaの先端を検出した後、マークMaが画像形成部B1側に所定距離(例えば、数mm)搬送されたところで開始される。この位置が
図14(A)に示した画像形成開始位置PA(マークMaの先端から90.3mmの位置)である。また、モータMr1も同時に駆動させることで、転写フィルム46およびインクリボン41は画像形成部B1を同速で同方向に搬送される。この状態でサーマルヘッド制御部105のヘッドコントロール用ICで主走査方向に列設された加熱素子を選択的に加熱制御することで、画像形成領域RにはYインクによる画像が形成される(
図14(A)も参照)。
図15(F)は、Yインクによる画像形成領域Rへの画像形成が終了した状態を示したものである。
【0097】
図15(G)は、Yインクによる画像形成領域Rへの画像形成後のマークMb、Ma間の距離を計測するために、
図15(F)に示した状態(印刷ポジション)から、
図8に示した搬送ポジションに移行させ、フィルム搬送モータMr5を駆動させて、再度マークMb、MaをセンサSe1の上流側に位置付けた状態を示したものである。
【0098】
図15(H)は、
図15(G)に示した状態から、
図15(C)に示した状態と同様に、フィルム搬送モータMr5を駆動させて、マークMb、MaがセンサSe1を通過するまで転写フィルム46を搬送した状態を示したものである。CPUは、センサSe1の出力を参照することにより、Yインクによる画像形成領域Rへの画像形成後のマークMb、Ma間の距離を計測することができる。
【0099】
CPUは、画像形成後の(
図15(H)で示した状態での)画像形成領域Rを画定するマークMb、Ma間の距離と、画像形成前の(
図15(C)で示した状態での)画像形成領域Rを画定するマークMb、Ma間の距離との差を、Yインクによる画像形成で転写フィルム46の画像形成領域Rに生じた伸びとして検出(算出)する。なお、CPUは、他のM、Cインクによる画像形成で生じる転写フィルム46の伸びも同様に検出するが、その際には
図15(D)〜
図15(H)で説明した動作を繰り返す。
【0100】
(2)第2検出方法
上述した第1検出方法は、転写フィルム46の画像形成領域Rに生じた伸びを直接計測する点で理念的に優れるが、その反面、転写フィルム46の搬送が多くなるため、印刷装置1の印刷処理時間短縮の観点からは改善の余地がある。第2検出方法はこの点の改善を図ったものである(後述する第3検出方法も同じ。)。
【0101】
第2検出方法について一言すれば、モータMr2のエンコーダで転写フィルム46に形成されたマークの位置をアドレス管理し、一色(例えば、Y)のインクによる画像形成前にマークがセンサSe1を通過した際のアドレスと、次の色(例えば、M)のインクによる画像形成前にマークがセンサSe1を通過した際のアドレスとを比較することで、その差を転写フィルム46の画像形成領域Rに生じた伸びとして検出するものであるが、詳しくは次のとおりである。なお、第2検出方法以下の検出方法において、上述した第1検出方法での説明と重複する部分についてはごく簡単に説明する。
【0102】
図16(A)は、印刷装置1が待機ポジションにある状態を示したものである(
図15(A)の状態と同じ。)。
図16(B)は、
図16(A)の状態から、モータMr2、Mr4を駆動させてマークMaをセンサSe1の上流側に位置付けた状態を示したものである(
図15(B)の状態と同じ。)。
図16(C)は、
図16(B)に示した状態から、印刷装置1を印刷ポジションに移行させた状態を示したものである。
【0103】
図16(D)は、
図16(C)に示した状態から、フィルム搬送モータMr5を駆動させて転写フィルム46の画像形成領域Rを画像形成部B1に向けて搬送を開始した状態を示したものである。CPUは、センサSe1がマークMaの先端を検出した時点でモータMr2のエンコーダの基準アドレスをセットし、信号制御部103を介してモータMr2のエンコーダから出力されるクロック数を監視することでアドレス管理を行う。
【0104】
図17はこのアドレス管理を模式的に示したタイミングチャートである。
図17(A)に示すように、Yインクによる画像形成領域Rへの画像形成前に、マークMaによりセンサSe1(の受光素子側)が遮光されると、その時点でのモータMr2のエンコーダのアドレスを基準アドレスとしてセットし(
図17(A)に示す「0」)、モータMr2のエンコーダから出力されるクロック数をアドレスとして付与(計数)する。なお、画像形成領域Rが正逆両方向に搬送されることから、
図17(A)に示す例では、このアドレスを、印刷方向(センサSe1側から画像形成部B1側に搬送される方向)に画像形成領域Rが搬送される場合を「正」、印刷方向とは逆方向に搬送される場合を「負」として表している。
【0105】
図16(D)に戻り、フィルム搬送モータMr5を駆動させることで、センサSe1がマークMaの先端を検出した後、マークMaが画像形成部B1側に所定距離(例えば、数mm)搬送されたところが
図14(A)に示した画像形成開始位置PAである。この状態でサーマルヘッド制御部105の加熱素子を選択的に加熱制御することで、画像形成領域RにはYインクによる画像が形成される。
図16(E)は、Yインクによる画像形成領域Rへの画像形成が終了した状態を示したものである。
【0106】
図16(F)は、
図16(E)に示した状態(印刷ポジション)から、印刷装置1を搬送ポジションに移行させ、次のMインクによる画像形成領域Rへの画像形成に備えて(画像形成領域Rの頭出しのために)、フィルム搬送モータMr5を駆動させて、再度マークMaをセンサSe1の上流側に位置付けた状態を示したものである。なお、
図16(F)に示す状態で、インクリボン41側でも次のMインクパネルについての頭出しが行われる。
【0107】
図16(G)は、
図16(F)に示した状態(搬送ポジション)から、印刷装置1を印刷ポジションに移行させた状態を示したものである。
図16(H)は、
図16(G)に示した状態(印刷ポジション)において、Mインクによる画像形成領域Rへの画像形成のために、
図16(D)に示した状態と同様に、フィルム搬送モータMr5を駆動させて、転写フィルム46の画像形成領域Rを画像形成部B1に向けて搬送を開始した状態を示したものである。
【0108】
CPUは、センサSe1がマークMaの先端を検出した時点でモータMr2のエンコーダのアドレスを参照する。
図17(B)は、このアドレス参照を模式的に示したものである。
図17(A)と比較すると、マークMaによりセンサSe1が遮光された際のモータMr2のエンコーダのアドレスが「5」となっており、モータMr2のエンコーダの1クロックとその間の転写フィルム46の搬送量は既知のため、CPUは、アドレスの差からYインクによる画像形成で生じた画像形成領域Rの伸びを検出(算出)することができる。Mインクによる画像形成領域Rへの画像形成開始は、センサSe1がマークMaの先端を検出した後、マークMaが画像形成部B1側に所定距離搬送されたところのため、CPUは、Mインクによる画像形成前に、Yインクによる画像形成で生じた画像形成領域Rの伸びを検知することができる。なお、CPUは、他のM、Cインクによる画像形成で生じる転写フィルム46の伸びも同様に検出するが、その際には
図16(E)〜
図16(H)で説明した動作を繰り返す。
【0109】
(3)第3検出方法
第3検出方法について一言すれば、一色(例えば、Y)のインクによる画像形成の際に、画像形成部B1の下流側に配されたフィルム搬送モータMr5の駆動量(駆動パルス数)と、画像形成部B1の上流側に配され転写フィルム46にバックテンションを加えるモータMr4の駆動量(モータMr4のエンコーダの出力クロック数)とを比較することで、当該一色のインクによる画像形成で転写フィルム46の画像形成領域Rに生じた伸びを検出するものであるが、詳しくは次のとおりである。なお、第3検出方法は、センサSe1によるマークMaの検出を検出契機としない(伸び検出においてマークMaの検出が不要)という点で、上述した第2検出方法と相違している。
【0110】
図18(A)は、印刷装置1が待機ポジションにある状態をしたものである(
図15(A)の状態と同じ。)。
図18(B)は、
図18(A)の状態から、モータMr2、Mr4を駆動させてマークMaをセンサSe1の上流側に位置付けた状態を示したものである(
図15(B)の状態と同じ。)。
図18(C)は、
図18(B)に示した状態から、印刷装置1を印刷ポジションに移行させた状態を示したものである。
【0111】
図18(D)は、
図18(C)に示した状態から、フィルム搬送モータMr5を駆動させて転写フィルム46の画像形成領域Rを画像形成部B1に向けて搬送し、画像形成が開始した状態を示したものである。CPUは、画像形成領域Rへの画像形成が開始した時点で、アクチュエータ制御部104を介してフィルム搬送モータMr5に出力される駆動パルス数と、信号処理部103を介してモータMr4のエンコーダから出力されるクロック数との監視を開始する。
図18(E)は、Yインクによる画像形成領域Rへの画像形成が終了した状態を示したものである。
【0112】
図19(A)は、Yインクによる画像形成領域Rへの画像形成が開始した時点から画像形成が終了した時点までの間で転写フィルム46に伸びが生じていない場合に、フィルム搬送モータMr5に出力される駆動パルスと、モータMr4のエンコーダの出力クロックとの関係をタイミングチャートとして部分的に示したものである。本実施形態の印刷装置1では、転写フィルム46の画像形成領域Rに伸びが生じない場合には、フィルム搬送モータMr5に出力される駆動パルス1クロックに対し、モータMr4のエンコーダからは20クロック出力されるように設定されている。
【0113】
これに対し、
図19(B)に示すように、フィルム搬送モータMr5に出力される駆動パルス1クロックに対し、例えば、モータMr4のエンコーダから19クロック出力される場合は、(画像形成部B1より下流側の)フィルム搬送モータMr5の駆動量より(画像形成部B1より上流側の)モータMr4の駆動量が少ないため、画像形成部B1より下流側の転写フィルム46の搬送が進んでおり転写フィルム46に伸びが生じていると判断できる。従って、
図19(B)に示すモータMr4のエンコーダの実測クロック数(19)と、
図19(A)に示すモータMr4のエンコーダから出力されるはずの基準クロック数(20)とを比較することで、転写フィルム46の伸びを検出(算出)することができる。
【0114】
以上では把握を容易にするために、フィルム搬送モータMr5に出力される駆動パルスが1クロックの場合について説明したが、CPUは、画像形成領域Rへの画像形成開始時点(
図18(D))から画像形成終了時点(
図18(E))までのフィルム搬送モータMr5に出力した駆動パルス数に対して、モータMr4のエンコーダから出力された実測クロック数と、フィルム搬送モータMr5に出力した駆動パルス数に対応してモータMr4のエンコーダから出力されるはずの基準クロック数とを比較することで、転写フィルム46の伸びを検出する。また、CPUは、他のM、Cインクによる画像形成で生じる転写フィルム46の伸びも同様に検出するが、その際には、印刷装置1を搬送ポジションに移行させ、次のインクによる画像形成領域Rへの画像形成に備えて、フィルム搬送モータMr5を駆動させて、再度マークMaをセンサSe1の上流側に位置付けた後(
図16(F)も参照)、
図18(D)以降の動作を繰り返す。
【0115】
2−1−2.画像形成領域より下流側のマークを頭出しに用いる場合
図14(B)は、印刷方向に対し画像形成領域Rより下流側のマークMbを頭出しに用いる場合の画像形成部B1における転写フィルム46の画像形成領域Rに対する画像形成開始位置を模式的に示したものである。
図14(B)に示すように、マークMbを頭出しに用いる場合の画像形成領域Rにおける画像形成開始位置PBは、マークMbの(印刷方向)先端から7.7mmの位置に設定されている。すなわち、画像形成領域Rの印刷方向での長さのセンタと、サーマルヘッド40による印刷領域の印刷方向での長さのセンタとが一致するように設定されている。なお、
図14(B)において、サーマルヘッド40による印刷領域のサイズ等は
図14(A)を参照して説明したとおりである。
【0116】
マークMbを頭出しに用いる場合に、マークMaを頭出しに用いて説明した第1〜第3検出方法と異なる点は、原則的に、センサSe1がマークMaに代えてマークMbを検出する点のみである。ただし、第2検出方法で説明したアドレス管理では、マークMaを頭出しに用いて説明した第2検出方法と同様の精度を確保するために、画像形成部B1より下流側のモータMr2のエンコーダから出力されるクロック数を監視することに代えて、画像形成部B1より上流側のモータMr4のエンコーダから出力されるクロック数を監視することでアドレス管理を行う。
【0117】
2−2.画像形成部での補正
次に、本実施形態の印刷装置1の別の特色である、転写フィルム46の画像形成領域Rの伸びに対する画像形成部B1での補正について説明する。
【0118】
2−2−1.画像形成領域より上流側のマークを頭出しに用いる場合
上述したようにマークMaを頭出しに用いる場合(2−1−1参照)には、1色目(例えば、Y)のインクによる画像形成で転写フィルム46の画像形成領域Rに伸びが生じると、マークMaから画像形成開始位置PAまでの距離が変わってしまい(
図14(A)も参照)、2色目(例えば、M)のインクによる画像形成開始位置PAがずれるため、画像形成開始位置(側)で色ずれが発生する。また、転写フィルム46の画像形成領域Rに伸びが生じると、画像形成終了位置(側)でも色ずれが発生する。このため、(1)画像形成開始位置PAの補正と、(2)サーマルヘッド40の印刷領域(印刷方向の画像の長さ)の補正とが必要となる。以下、詳述する。
【0119】
(1)画像形成開始位置の補正
把握を容易にするために、上述した第1〜第3検出方法により画像形成領域Rの伸びを検出した結果、Yインクによる画像形成領域Rへの画像形成で転写フィルム46に1.0[mm]の伸び生じ、Mインクによる画像形成領域Rへの画像形成で転写フィルム46に0.5[mm]の伸びが生じ、Cインクによる画像形成領域Rへの画像形成で転写フィルム46に伸びが生じなかった(伸び:0[mm])場合を例として説明する。
【0120】
Yインクによる画像形成領域Rの画像形成の際の画像形成開始位置PAは、未使用の画像形成領域Rを用いるため、
図14(A)を参照して説明したように、マークMaの先端から90.3mmの位置である。Mインクによる画像形成領域Rの画像形成の際の画像形成開始位置PAは、Yインクによる画像形成領域Rへの画像形成で転写フィルム46に1[mm]の伸びが生じたため、マークMaの先端から、90.3[mm]+1.0[mm]=91.3[mm]の位置となる(1.0[mm]マークMb側に補正される。)。Cインクによる画像形成領域Rの画像形成の際の画像形成開始位置PAは、YインクおよびMインクによる画像形成領域Rへの画像形成で転写フィルム46にそれぞれ1[mm]、0.5[mm]の伸びが生じたため、マークMaの先端から、90.3[mm]+1.0[mm]+0.5[mm]=91.8[mm]の位置となる(1.5[mm]マークMb側に補正される。)。Bkインクによる画像形成領域Rの画像形成の際の画像形成開始位置PAは、Cインクによる画像形成領域Rへの画像形成で転写フィルム46に伸びが生じなかったため、Cインクの場合と同様に、マークMaの先端から、90.3[mm]+1.0[mm]+0.5[mm]+0[mm]=91.8[mm]の位置となる(1.5[mm]マークMb側に補正される。)。つまり、画像形成開始位置PAは画像形成領域Rの伸びに応じてマークMb側に補正される。
【0121】
(2)印刷領域の補正
サーマルヘッド40の印刷領域の補正は、本実施形態では、サーマルヘッド40のライン周期(1ラインの画像形成時間)を変更することにより行われる。
【0122】
具体的に説明すると、本実施形態では、通常時(転写フィルム46に伸びが生じていない場合)には、転写フィルム46を1ラインにつき0.8ms(1/1000秒)の速度で搬送し、それに合わせてサーマルヘッド40のライン周期も0.8[ms/line]に設定されている。上記の例に則して、Yインクによる画像形成により画像形成領域Rに1.0[mm]の伸びが生じた場合、サーマルヘッド40の印刷領域は上述した86.6[mm]から1.0[mm]伸び、87.6[mm]となる。このため、次のMインクによる画像形成の際に、通常時と比べ約1.2%だけライン周期を長くすることで、すなわち、転写フィルム46を1ラインにつき0.8msの速度で搬送し、ライン周期を0.8096[ms/line]に補正することで、印刷方向の画像の長さを1[mm]伸ばす。なお、CPUは、サーマルヘッド制御部105のヘッドコントロール用ICに通常時のライン周期対しどの程度ライン周期を長くするかを指示することで、この印刷領域の補正を行う。
【0123】
2−2−2.画像形成領域より下流側のマークを頭出しに用いる場合
マークMbを頭出しに用いる場合(2−1−2参照)には、マークMbから画像形成開始位置PBまでの距離は転写フィルム46の画像形成領域Rに伸びが生じても変わらないため、画像形成開始位置PBの位置補正は不要である。従って、上記2−2−1.(2)で説明した印刷領域の補正のみを行えばよい。
【0124】
図13のカード発行ルーチンのフローチャートに戻り、CPUは、ステップ302において一次転写処理をする際に、上述した「2−1.転写フィルムの伸び検出」および「2−2.画像形成部での補正」を実行する。
【0125】
ステップ302での一次転写処理と並行して、ステップ304において、CPUは、媒体収容部CからカードCaを繰り出し、磁気ないし電気的記録データに基づいて、情報記録部Aを構成する磁気記録部24、非接触式IC記録部23、接触式IC記録部27のうちいずれかまたは複数でカードCaの対する記録処理を行った後、カードCaを転写部B2に搬送する。
【0126】
次のステップ306では、転写部B2において、転写フィルム46の転写面に形成された画像をカードCaの一面に転写する二次転写処理を行う。なお、CPUは、この二次転写処理に先だって、ヒートローラ33を構成するヒータの温度が所定温度に到達しているように制御するとともに、カードCaと転写フィルム46の転写面に形成された画像とが同期して転写部B2に到着するように制御する。
【0127】
2−3.転写部での補正
ここで、本実施形態の印刷装置1の他の特色である、転写フィルム46の画像形成領域Rの伸びに対する転写部B2での補正について説明する。
【0128】
図20は、
図13のステップ306での二次転写処理の際の印刷装置1の正面図を示したものである。二次転写処理の際には、上述したようにマークMa、Mbを頭出しに用いるいずれの場合でも、センサSe3でマークMbを検出して頭出しを行う。なお、本実施形態では、フィルム搬送モータMr5を駆動させて、センサSe3がマークMbの先端を検出してから転写フィルム46をさらに30[mm]搬送した位置が(二次)転写開始位置に設定されている。
【0129】
図21(A)は、転写フィルム46の画像形成領域Rに伸びが生じていない場合の画像形成領域RとカードCaとの位置合わせを模式的に示したものである。
図21(A)に示すように、ステップ308の二次転写処理では、サーマルヘッド40による印刷領域の印刷方向での長さのセンタCnとカードCaの長手方向のセンタとが同位置となるように転写フィルム46の頭出しを行う。転写フィルム46の画像形成領域Rに伸びが生じていない場合には、上述したように、センサSe3がマークMbの先端を検出してから転写フィルム46をさらに30[mm]搬送することで、サーマルヘッド40による印刷領域の印刷方向での長さのセンタCnとカードCaの長手方向のセンタとが一致するように設定されている。
【0130】
図21(B)は、転写フィルム46の画像形成領域Rに伸びが生じた場合の画像形成領域RとカードCaとの位置合わせを模式的に示したものである。上記の例(2−2−1.(1)参照)に則すれば、画像形成領域Rは、Y、M、Cインクによる画像形成全体で1.5[mm]の伸びが生じている。付言すれば、本実施形態ではBkインクに溶融インクが用いられており(Y、M、Cのカラーリボンインクは昇華インク)、溶融インクを用いる場合は昇華インクを用いる場合と比べて転写フィルム46のインク受容層に吸収される程度が低いため(インク受容層に付着する程度が高いため)、Bkインクによる画像形成領域Rの伸びは小さくBkインクによる伸びについては考慮する必要がない。
【0131】
CPUは、
図13のステップ306での二次転写処理において、画像形成領域Rに生じた伸びの1/2(1.5[mm]÷2=0.75[mm])を補正値として算出し、センサSe3がマークMbを検出してから30[mm]+0.75[mm]=30.75[mm]転写フィルム46を搬送した位置を転写開始位置とする(0.75[mm]補正する。)。これにより、画像形成領域Rに伸びが生じても、サーマルヘッド40による印刷領域の印刷方向での長さのセンタCnとカードCaの長手方向のセンタとを一致させることができる。
【0132】
二次転写処理後の転写フィルム46は、ヒートローラ33と搬送ローラ対37との間に配置された剥離ピン79(
図20参照)でカードCaから分離(剥離)され供給ロール47側に搬送される。一方、画像が転写されたカードCaは媒体搬送経路P2上を下流側のデカール機構12に向けて搬送される。CPUは、図示しない搬送モータをなおも駆動させカードCaの後端が剥離ピン79を通過した後に図示しない搬送モータの駆動を停止させる。これにより、カードCaは両端部が搬送ローラ対37、38に挟持された状態とする。
【0133】
次のステップ308では、偏心カム36を回動させデカールユニット33をデカールユニット34に向けて押し下げカードCaをデカールユニット33、34で挟むことでカードCaに生じた反りを矯正するデカール処理を実行する。
【0134】
次にステップ310において、両面印刷か否かを判断し、否定判断のときはステップ320に進み、肯定判断のときは、ステップ312において、画像形成部B1で、転写フィルム46の次の画像形成領域Rに、ステップ302と同様に、他面(例えば裏面)側の画像(鏡像)を形成する一次転写処理を行ってステップ316に進む。
【0135】
CPUは、ステップ312での一次転写処理と並行して、ステップ314において、搬送ローラ対37、38に挟持されデカール機構12に位置付けられているカードCaを媒体搬送経路P2、P1を経由して回動ユニットFに搬送し、両端部をローラ対20、21で挟持されたカードCaを180°回動(表裏面を反転)させる。次のステップ316では、ステップ306と同様に、転写部B2において、転写フィルム46の次の画像形成領域Rに形成された画像をカードCaの他面に転写する二次転写処理を行う。
【0136】
次いで、ステップ318では、ステップ308と同様に、偏心カム36を回動させデカールユニット33をデカールユニット34に向けて押し下げカードCaをデカールユニット33、34で挟むことでカードCaに生じた反りを矯正するデカール処理を実行する。そして、次のステップ320では、収容スタッカ60に向けてカードCaを排出してカード発行ルーチンを終了する。
【0137】
3.効果等
次に、本実施形態の印刷装置1の効果等について説明する。
【0138】
3−1.効果
本実施形態の印刷装置1では、制御部100により、検出された転写フィルム46の伸びに応じてサーマルヘッド40のライン周期を変更するように画像形成部B1が制御されるので、サーマルヘッド40による加熱により生じた転写フィルム46の伸びに拘わらず色ずれを防止できる。このため、サーマルヘッド40の発熱量を高めて画像形成時間を短縮しつつ転写フィルム46に形成された画像の品質維持を図ることができる。
【0139】
また、本実施形態の印刷装置1では、制御部100により、検出された転写フィルム46の伸びに応じてサーマルヘッド40による転写フィルム46への画像形成開始位置PAを補正するように画像形成部B1が制御されるので、画像形成領域Rより上流側のマークMaを頭出しに用いても、画像形成開始位置PA側での色ずれを防止することができる。
【0140】
さらに、本実施形態の印刷装置1では、制御部100により、検出された転写フィルム46の伸びに応じて転写部B2においてカードCaに対する転写フィルム46の転写位置が補正されるので、カードCaに転写された画像が一側に偏って見えたり(とりわけ、証明写真やロゴマーク等がカードCaの端部に配置されたときに目立つ。)、場合によっては二次転写の際の転写先端側の画像がカードCaの端側で切れたりすることを防止することができる。
【0141】
3−2.変形例
なお、本実施形態では、間接印刷方式の印刷装置1を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、インクリボン41を用いてカードCaに直接印刷する直接印刷方式の印刷装置にも適用可能である。その際、画像形成部、搬送ローラ、センサ等の構成や位置等を適宜変更すればよい。また、本実施形態では、媒体に転写フィルム46を例示したが、例えば直接印刷方式の場合に、典型的にはチューブやフィルム等の熱伸縮性を有する媒体にも適用可能である。
【0142】
また、本実施形態では、サーマルヘッド40の印刷領域(印刷方向の画像の長さ)を補正する際に、サーマルヘッド40のライン周期を変更する例を示したが(2−2−1.(2)および2−2−2参照)、本発明はこれに制限されることなく、ライン周期を変更することなく、例えば、メモリ101に格納された印刷データ自体を補正して補正後の印刷データを1ラインずつサーマルヘッド40に出力するようにしてもよい。また、サーマルヘッド40のライン周期は変更せずに、転写フィルム46の搬送速度を速めることで印刷方向の画像の長さを長くしてもよい。その場合、上述した例(画像が1mm伸びた場合)では、CPUがモータMr5を制御して、転写フィルムを1ラインにつき0.7904msの速度で搬送し、サーマルヘッド40のライン周期は0.8[ms/line]のままに設定すればよい。
【0143】
さらに、本実施形態では、第2検出方法(2−1−1.(2)参照)において、モータMr2のエンコーダでアドレス管理をする例を示したが、本発明はこれに限らず、フィルム搬送ローラ49のエンコーダでアドレス管理するようにしてもよい。すなわち、画像形成領域Rの上流側のマークMaを用いる場合には、画像形成部B1より下流側の搬送体(ローラ)または搬送源(モータ)に設けられたエンコーダでアドレス管理をすればよい。また、本実施形態では、第3検出方法(2−1−1.(3)参照)において、フィルム搬送モータMr5の駆動パルス数と、モータMr4のエンコーダの出力クロック数とを比較する例を示したが、フィルム搬送ローラ49のエンコーダの出力クロック数と、モータMr4のエンコーダの出力クロック数とを比較するようにしてもよい。
【0144】
また、本実施形態では、第2検出方法において、モータMr2のエンコーダ(2−1−1.(2)参照)、Mr4のエンコーダ(2−1−2参照)を用いる例を示したが、供給スプール43A、巻取スプール44Aにエンコーダを設け、そのエンコーダからの出力を参照するようにしてもよい。その際、エンコーダにスリットを複数形成し転写フィルム46の搬送量の把握精度を高めようにしてもよい。
【0145】
また、本実施形態では、第3検出方法において、画像形成領域Rへの画像形成開始時点から画像形成終了時点までのフィルム搬送モータMr5に出力した駆動パルス数に対して、モータMr4のエンコーダから出力された実測クロック数と、フィルム搬送モータMr5に出力した駆動パルス数に対応してモータMr4のエンコーダから出力されるはずの基準クロック数とを比較することで、転写フィルム46の伸びを検出する方法を示した。つまり、サーマルヘッド40が駆動(加熱)している間のフィルム搬送モータMr5に出力した駆動パルス数に対応するモータMr4のエンコーダから出力されるクロック数を検出している。しかし、画像形成領域Rがサーマルヘッド40を通過する間(
図18(D)の位置から
図18(E)の位置に転写フィルム46が搬送される間)のフィルム搬送モータMr5に出力した駆動パルス数に対して、モータMr4のエンコーダから出力された実測クロック数と、フィルム搬送モータMr5に出力した駆動パルス数に対応してモータMr4のエンコーダから出力されるはずの基準クロック数とを比較することで、転写フィルム46の伸びを検出してもよい。つまり、第3検出方法においても、センサSe1による転写フィルム46のマークMaまたはMbの検出を検出契機としてもよい。
【0146】
さらに、本実施形態では、二次転写処理の際に、センサSe3でマークMbを検出して頭出しを行う例を示したが(2−3参照)、センサSe3からヒートローラ33までの転写フィルム46の搬送距離がマークMaから
図14(A)の画像形成開始位置までの距離より長い場合は、センサSe3でマークMaを検出して頭出しを行うようにしてもよい。
【0147】
また、本実施形態では、画像形成部B1においてプラテンローラ45をサーマルヘッド40に圧接する例を示したが、サーマルヘッド40をプラテンローラ45に圧接するようにしてもよい。その際、プラテンは例示したローラである必要もないが、転写フィルム46やインクリボン41の搬送に影響を与えないものが好ましい。さらに、本実施形態では、転写部B2においてヒートローラ33をプラテンローラ31に圧接する例を示したが、プラテンローラ31をヒートローラ33に圧接するようにしてもよい。
【0148】
さらに、本実施形態では、画像形成部B1において転写フィルム46の画像形成領域RにカードCaの一面側の画像を形成し(
図13のステップ302)、転写部B2においてカードCaの一面に画像を転写(ステップ306)した後に、画像形成部B1において転写フィルム46の次の画像形成領域Rへの他面側の画像形成(ステップ312)と並行して、カードCaを回動ユニットF側に搬送してカードCaを180°回転させ(ステップ314)、転写部B2においてカードCaの他面に他面側の画像を転写する(ステップ316)例を示したが、画像形成部B1において転写フィルム46の画像形成領域RにカードCaの一面側の画像を形成した後、転写フィルム46の次の画像形成領域Rに他面側の画像を形成し、転写部B2において、カードCaの一面に画像を転写した後、カードCaを回動ユニットF側に搬送してカードCaを180°回転させ、カードCaの他面に他面側の画像を転写するようにしてもよい。
【0149】
そして、本実施形態では、上位機器201から印刷データや磁気ないし電気的記録データを受信する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、印刷装置1がローカルネットワークの一員を構成している場合には上位機器201以外のローカルネットワークに接続されたコンピュータから入力するようにしてもよい。また、磁気ないし電気的記録データについてはオペパネ部5から入力してもよい。さらに、印刷装置1がUSBやメモリカード等の外部記憶装置と接続可能な構成の場合には外部記憶装置に格納された情報を読み取ることで印刷データや磁気ないし電気的記録データを取得することができる。また、印刷データ(Bkの印刷データ、Y、M、Cの色成分印刷データ)に代えて画像データ(Bkの画像データ、R、G、Bの色成分画像データ)を上位機器201から受信するようにしてもよい。この場合には、印刷装置1側で受信した画像データから印刷データに変換すればよい。