(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記橋架部の側面は、上記径方向に直交する方向の内向きから漸次上記後方へと、上記軸方向と直交する方向に沿って延びる境界線を境として屈曲されながら延びている、請求項1から3のいずれかに記載の釣竿用尻栓。
上記穿孔工程の前に、上記柱状体の後端部を切削して、上記後面及び上記周面が滑らかに連続する凸曲面を形成する後形成工程を備える、請求項9に記載の釣竿用尻栓の製造方法。
上記切削工程の前に、上記柱状体の後端部を切削して、上記後面及び上記周面が滑らかに連続する凸曲面を形成する後形成工程を備える、請求項12に記載の釣竿用尻栓の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の尻栓は、前述のように軸部2及び頭部3と、連結ピン4と、リング5とを有し、部品点数が多かった。したがって、各部品の加工工程が多く且つ組立工程が煩雑であり、製造コストが上昇していた。他方、尻栓1が延べ竿に装着され、ターゲットとして大型魚が想定される場合は、リング5及び連結ピン4の機械的強度並びに頭部3と連結ピン4との連結強度が確保される必要がある。しかし、従来の尻栓1の構造で十分な強度が達成されるためには、設計が容易ではないという問題もあった。なお、特許文献1に開示された尻栓は、尻栓の内部に連結バーが架け渡された構造であるが、かかる構造であってもなお部品点数が多く、十分な機械的強度の確保は容易ではないという問題がある。
【0007】
本発明は係る背景のもとになされたものであり、その目的は、尻手ロープが連結可能でありながら簡単な構造であり、且つ十分な機械的強度を発揮する釣竿用尻栓及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係る釣竿用尻栓は、
元節の後端部に着脱自在に設けられる釣竿用尻栓であって、前端及び後端
が開放されており、当該前端側から上記元節の後端部に当該元節の軸方向に沿って取り付けられる
筒状の栓本体と、当該栓本体の後端に一体的に形成され、当該栓本体との間に所定の隙間を形成するように当該栓本体から後方に膨出し且つ上記栓本体の径方向に架け渡された橋架部と、を備える。
【0009】
この構成によれば、栓本体及び橋架部が一体的に形成されているから、当該釣竿用尻栓は、単一の部品から構成され得る。このため、橋架部は、外力に対する機械的強度が向上する。しかも、橋架部は、栓本体の径方向に架け渡された形状であるから、たとえば、鍛造又は切削等の既知の簡単な加工により形成され得るし、橋架部の肉厚寸法等の設計及び加工が容易である。
【0010】
(2) 上記栓本体は、上記元節の内径に対応した外径を有する筒体と、当該筒体の後端部に形成されたフランジとを備えるのが好ましい。
【0011】
この構成によれば、栓本体は、元節の内側にねじ込まれる。栓本体が元節に取り付けられると、フランジが元節の後端面に当接し、元節の後端面の少なくとも一部を被覆する。このため、元節の後端部のデザインが洗練される。
【0012】
(3) 上記橋架部は、滑らかに湾曲しているのが好ましい。
【0013】
この構成によれば、橋架部が湾曲しているので、橋架部の機械的強度、特に、軸方向への外力に対する機械的強度が向上する。
【0014】
(4) 上記橋架部の側面は、上記径方向に直交する方向の内向きから漸次上記後方へと滑らかに湾曲しながら延びているのが好ましい。
【0015】
この構成によれば、橋架部の側面が湾曲しながら延びているので、橋架部における上記軸方向と交差する方向の外力に対する機械的強度が向上する。また、橋架部の側面のデザインも洗練される。
【0016】
(5) 上記橋架部の側面は、上記径方向に直交する方向の内向きから漸次上記後方へと、上記軸方向と直交する方向に沿って延びる境界線を境として屈曲されながら延びているのが好ましい。
【0017】
この構成によれば、橋架部の側面が屈曲されながら延びているので、橋架部における上記軸方向と交差する方向の外力に対する機械的強度が向上する。また、橋架部の側面のデザインも洗練される。
【0018】
(6) 上記隙間を区画する上記橋架部の前面は、滑らかに湾曲しながら延びているのが好ましい。
【0019】
この構成によれば、橋架部の前面が曲面であるので、応力集中が回避され、機械的強度が向上する。また、橋架部のデザインも洗練される。
【0020】
(7) 上記隙間を区画する上記橋架部の前面の中央部は、上記径方向に真直に延びているのが好ましい。
【0021】
この構成によれば、橋架部の前面の中央部が平面状であるので、橋架部の前面の加工が比較的容易である。
【0022】
(8) 上記栓本体は円筒状を呈し、上記前端に当接板が設けられているのが好ましい。
【0023】
この構成によれば、当接板が設けられているので、釣竿を収納状態とするために釣竿を構成する複数の節が後方に移動されたときに、節が当接板に当接する。このため、伸長状態の釣竿が収納される際に、節同士の嵌合が容易に外れる。したがって、釣竿の収納を容易に行うことができる。
【0024】
(9) 本発明に係る釣竿用尻栓の製造方法は、元節の後端部に着脱自在に設けられる釣竿用尻栓の製造方法であって、前面、後面、及び周面を有する柱状体を、当該軸心を中心として、上記後面を残すように、当該前面から穿孔する穿孔工程と、上記柱状体の後端部のうちの上記軸心を基準として径方向に隔たった2つの対称部位を、上記柱状体の径方向に沿って
、上記穿孔工程により形成された凹部と連通するように切削する切削工程とを備える。
【0025】
この構成によれば、穿孔工程により、柱状体がその前面から後面に向かって軸方向に穿孔される。すなわち、柱状体にその前面に開口する凹部が設けられ、当該柱状体は、有底筒状に加工される。この凹部は、柱状体を貫通していないが当該柱状体の後端部まで延びている。また、切削工程により、柱状体の後端部のうち、上記2つの対称部位が切削される。これにより、上記後端部の中央部分のみが残される。上記2つの対称部位が切削されることにより、上記凹部が柱状体を貫通する。柱状体の中央部分は、後方に膨出し且つ径方向に架け渡された橋架部を構成する。柱状体の前部は、釣竿用尻栓の栓本体を構成し、筒状を呈する。これら栓本体及び橋架部は、一体的に形成され、当該釣竿用尻栓は、単一の部品から構成される。このため、橋架部は、外力に対する機械的強度が向上する。
【0026】
(10)上記穿孔工程の前に、上記柱状体の後端部を切削して、上記後面及び上記周面が滑らかに連続する凸曲面を形成する後形成工程を備えるのが好ましい。
【0027】
この構成によれば、橋架部の外面が曲面となり、橋架部の機械的強度が向上する。
【0028】
(11)上記切削工程の後に、当接板を上記柱状体の前端部に取り付ける取付工程を備えるのが好ましい。
【0029】
この構成によれば、尻栓に当接板が設けられる。そのため、釣竿を収納状態とするために釣竿を構成する複数の節が後方に移動されたときに、節が当接板に当接する。このため、伸長状態の釣竿が収納される際に、節同士の嵌合が容易に外れる。したがって、釣竿の収納を容易に行うことができる。
【0030】
(12)本発明に係る釣竿用尻栓の製造方法は、元節の後端部に着脱自在に設けられる釣竿用尻栓の製造方法であって、前面、後面、及び周面を有する柱状体の後端部のうちの上記柱状体の軸心を基準として径方向に隔たった2つの対称部位を、上記柱状体の径方向に沿って切削する切削工程と、上記柱状体を、当該軸心を中心として、上記後面を残
し且つ前方に開口する凹部を形成するように、当該前面から穿孔する穿孔工程とを備える。
【0031】
この構成によれば、切削工程により、柱状体の後端部のうち上記2つの対称部位が径方向に切削される。これにより、上記後端部の中央部分のみが残される。穿孔工程により、上記柱状体がその前面から後面に向かって軸方向に穿孔される。すなわち、柱状体にその前面に開口する凹部が形成される。この凹部は、柱状体を軸方向に貫通し且つ後面を残すように形成される。これにより、柱状体の前部が筒状に加工され、且つ上記中央部分が、柱状体の前部から後方に膨出し且つ径方向に架け渡された橋架部を構成する。柱状体の前部は、釣竿用尻栓の栓本体を構成し、筒状を呈する。これら栓本体及び橋架部は、一体的に形成され、当該釣竿用尻栓は、単一の部品から構成される。このため、橋架部は、外力に対する機械的強度が向上する。
【0032】
(13)上記切削工程の前に、上記柱状体の後端部を切削して、上記後面及び上記周面が滑らかに連続する凸曲面を形成する後形成工程を備えるのが好ましい。
【0033】
この構成によれば、橋架部の外面が曲面となり、橋架部の機械的強度が向上する。
【0034】
(14)上記穿孔工程の後に、当接板を上記柱状体の前端部に取り付ける取付工程を備えるのが好ましい。
【0035】
この構成によれば、尻栓に当接板が設けられる。そのため、釣竿を収納状態とするために釣竿を構成する複数の節が後方に移動されたときに、節が当接板に当接する。このため、伸長状態の釣竿が収納される際に、節同士の嵌合が容易に外れる。したがって、釣竿の収納を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、尻手ロープが連結可能でありながら簡単な構造であり、且つ十分な機械的強度を発揮する釣竿用尻栓及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0040】
図1は、本発明の第1実施形態に係る尻栓29を備えた釣竿20の側面図である。この釣竿20は、外径の異なる5つのブランク21〜25からなり、いわゆる振出式に組み立てられている。各ブランク21〜25は、「節」と称され、外径の細い順に第1番節21〜第5番節25と称される。第1番節は、穂先を構成する節であり、その外径は最も小さい。第5番節25は、特に「元節」と称され、元節に隣り合う第4番節24は、特に「元上節」と称される。本実施形態では、釣竿20は、いわゆる延べ竿と称されるもので、たとえば渓流用として使用される。
【0041】
各節21〜25は、既知の要領で構成される。たとえば、カーボンプリプレグが所定形状に裁断され、これが筒状に巻回され且つ熱処理がなされることによって、円筒状の節21〜25が焼成される。第1番節21は、第2番節22の内部に引き出し自在に収納されている。この第1番節21の先端には、釣糸が連結されるトップ部材26が設けられている。このトップ部材26の構成は、既知であるので、その詳しい説明は省略される。
【0042】
第1番節21は、全体としてテーパー状に形成されており、その先端部の外径よりも後端部の外径の方が大きくなるように形成されている。また、第1番節21の後端径は、第2番節22の先端径よりも大きく設定されている。したがって、第1番節21が第2番節22から引き出された際に、第1番節21の後端部分が第2番節22の先端部分と所定寸法だけオーバーラップした状態でかみ合って(内嵌して)おり、これにより、両者が固定されるようになっている。なお、第2番節22と第3番節23との関係、第3番節23と元上節24との関係、及び元上節24と元節25との関係も、第1番節21と第2番節22との関係と同様である。
【0043】
図2は、尻栓29(特許請求の範囲に記載された「釣竿用尻栓」に相当)を備えた元節25の後端部25aの側面図である。また、
図3は、
図2のIII−III断面図である。
図2、
図3に示されるように、元節25は、円筒状の元節本体27と、元節本体27の後部の外周面に設けられた円筒状のグリップ部材28とを備えている。元節25の後端部25a、より詳しくは元節本体27の後端部には、尻栓29が設けられている。
【0044】
尻栓29は、当該尻栓29の軸心が元節25の軸心と一致するように、元節25に取り付けられる。両者の軸心の方向は、元節25の軸方向及び尻栓29の軸方向と一致する。この軸方向には、符号34が付されている。また、元節25の径方向と尻栓29の径方向も一致しており、特に、径方向のうちの互いに直交する2つの径方向を用いて、尻栓29の姿勢が規定される。これらの2つの径方向は、第1径方向35と、第1径方向35に直交する第2径方向36とである。
【0045】
図4は、尻栓29の分解斜視図である。
図3、
図4に示されるように、尻栓29は、栓本体30と、橋架部40と、当接板50と、Oリング37とを備える。栓本体30は、前端30a及び後端30bを有する。橋架部40は、栓本体30の後端30bに一体的に形成されている。当接板50は、栓本体30の前端30aに設けられている。詳しくは後述するが、第1径方向35は、橋架部40が延びている方向である。なお、
図4において、当接板50は、栓本体30及び橋架部40から分離されている。
【0046】
栓本体30は、筒体31と、フランジ32と、を備える。したがって、栓本体30は、内周面33を有する。筒体31の外径は、元節25の内径(元節本体27の内径)に対応している。フランジ32は、筒体31の後端部に形成されている。筒体31は、
図3が示すように、元節25に挿入可能である。また、フランジ32は、元節本体27の後端面を被覆するが、グリップ部材28の後端面は被覆しない。すなわち、本実施形態では、フランジ32の外径は、元節本体27の外径に略等しい。
【0047】
図3、
図4が示すように、筒体31の外周面に、雄ネジ31aと、周溝31bとが形成されている。周溝31bは筒体31の後端部に位置し、Oリング37が装着されている。雄ネジ部31aは、筒体31の前端から後方に向けて周溝31bまで形成されている。元節本体27の後端部の内周面に雌ネジ27aが形成されている。そのため、尻栓29は、元節25の後端部25aに、軸方向34に沿って前方(
図3において左方)に螺合可能であり、尻栓29は元節25に着脱自在に設けられている。
【0048】
当接板50は、円盤状の板本体51と、円柱状の挿入部52とを備える。挿入部52は、板本体51の後端の中央部から後方(
図3において右方)に延びる。挿入部52は、栓本体30の筒体31の内部に挿入されている。より詳しくは、挿入部52の外周面が筒体31の内周面33に当接し、板本体51の後端面51aが筒体31の前端30aに当接している。当接板50は、たとえば接着剤を用いて筒体31に固定される。また、当接板50は、好ましくは、弾性材料によって構成される。
【0049】
図4が示すように、尻栓29が元節25に取り付けられている状態では、当接板50が元節25の後端部25aの内部に位置する。したがって、釣竿20が収納状態とされたとき(すなわち、第1番節21〜元上節24が元節25内に収納されたとき)、第1番節21〜元上節24のそれぞれの後端面は、当接板50に当接するようになっている。
【0050】
図4〜
図8を参照して、尻栓29の栓本体30及び橋架部40がより詳しく説明される。
図5は、尻栓29の栓本体30及び橋架部40の後面図である。
図6は、尻栓29の栓本体30及び橋架部40の前面図である。
図7は、
図6のVII−VII断面図である。
図8は、
図6のVIII−VIII断面図である。
【0051】
図7、
図8に示されるように、橋架部40は、栓本体30との間に所定の隙間44を形成するように、当該栓本体30(フランジ32)から後方(
図7、
図8において軸方向34の右向き)に膨出し且つ径方向(第1径方向35)に架け渡されている。より詳しくは、橋架部40は、フランジ32の第1径方向35の両端部間に架け渡されており、隙間44は、橋架部40とフランジ32との間の空間を意味する。隙間44を利用して、尻手ロープの先端に設けられたフック等の連結具が、橋架部40に取り付けられる。また、本実施形態では、橋架部40は、
図8が示すように、滑らかに湾曲している。
【0052】
図4〜
図8に示されるように、橋架部40は、後面41、前面42、及び一対の側面43を備える。後面41及び前面42は、軸方向34において互いに表裏の位置にある。一対の側面43は、第2径方向36において互いに表裏の位置にある。
図4、
図8に示されるように、第2径方向36から見て、前面42は、フランジ32の後面32aと協働して、隙間44を区画する。
【0053】
図4、
図8に示されるように、後面41及び前面42は、橋架部40が湾曲しながら架け渡されるのに伴って、滑らかに湾曲しながら延びている。したがって、後面41及び前面42は、共に曲面である。後方から見たときの後面41の形状は、I字状である(
図5参照)。後面41は、橋架部40の外面のうち、後方に面する部分と、第1径方向35の両向きに面する部分とを含んでいる。同様に、前方から見たときの前面42の形状も、I字状である。前面42は、橋架部40の外面のうち、前方に面する部分と、第1径方向35の両向きにそれぞれ面する部分とを含んでいる。
【0054】
図5、
図7が示すように、側面43は、第1径方向35と平行に延びる面である。
図7に示されるように、第1径方向35から見て、側面43は、第2径方向36の内向き(
図7における第2径方向36の左向き)から、漸次後方へと滑らかに湾曲しながら延びている。第2径方向36は、橋架部40が延びている第1径方向35に直交する方向である。
【0055】
図4、
図7に示されるように、側面43は、境界線45を境として、フランジ32の後面32aから区分されている。また、側面43は、境界線46を境として、2つの部分、すなわち湾曲面部43aと平面部43bとに区分されている。平面部43bは、湾曲面部43aよりも後方に位置する平面である。2つの境界線45、46は、共に、軸方向34と直交する方向に沿って延びる線であって、第1径方向35と平行な線であり、フランジ32の後面32a及び側面43における曲率の変更位置を示している。つまり、フランジ32の後面32aは平面であり、湾曲面部43aは曲面である。また、湾曲面部43aは境界線45を介してフランジ32の後面32aに滑らかに接続され、平面部43bは、境界線46を介して湾曲面部43aに滑らかに接続されている。なお、境界線45、46はなくてもよい。すなわち、側面43の全体が滑らかな曲面に形成されてもよい。
【0056】
[第1実施形態に係る尻栓の作用、効果]
【0057】
第1実施形態に係る尻栓29によれば、栓本体30及び橋架部40が一体的に形成されているから、当該釣竿用尻栓29は、単一の部品から構成され得る。このため、橋架部40は、外力に対する機械的強度が向上する。しかも、橋架部40は、栓本体30の径方向に架け渡された形状であるから、たとえば、鍛造又は切削等の既知の簡単な加工により形成され得るし、橋架部の肉厚寸法等の設計及び加工が容易である。
【0058】
尻栓29の栓本体30は、元節25の内側に取り付けられる。栓本体30が元節25に取り付けられると、フランジ32が元節25の後端面に当接し、元節25の後端面の少なくとも一部を被覆する。このため、元節25の後端部25aのデザインが洗練される。
【0059】
尻栓29の橋架部40が湾曲しているので、橋架部40の機械的強度、特に、軸方向34への外力に対する機械的強度が向上する。
【0060】
尻栓29の橋架部40の側面43が湾曲しながら延びているので、橋架部40の側面43のデザインが洗練される。
【0061】
尻栓29の橋架部40の前面42が曲面であるので、応力集中が回避され、機械的強度が向上する。また、橋架部40のデザインも洗練される。
【0062】
尻栓29は、当接板50を備えるので、釣竿20を収納状態とするために釣竿20を構成する複数の節21〜25が後方に移動されたときに、節21〜25が当接板50に当接する。このため、伸長状態の釣竿20が収納される際に、節同士の嵌合が容易に外れる。したがって、釣竿20の収納を容易に行うことができる。
【0064】
次に、
図9、
図10を参照して、尻栓29の製造方法が説明される。
図9、
図10は、尻栓29の製造方法を示す図である。
図9(a)は素材となる柱状体を示し、同図(b)は後形成工程を示す。
図10(a)は前形成工程、同図(b)(c)はそれぞれ穿孔工程及び切削工程を示す。
【0065】
図9(a)が示すように、尻栓29の栓本体30及び橋架部40の素材として、柱状体60が準備される。柱状体60の材質は、ステンレス鋼又はアルミニウム合金が好ましい。柱状体60は、前面60a、後面60b、及び周面60cを有する。柱状体60は、たとえば、旋盤を用いて、次のように加工される。柱状体60の軸方向は、尻栓29の軸方向34と一致する。
【0066】
図9(b)が示すように、後形成工程では、柱状体60の後面60b及び周面60cが切削される。これにより、柱状体60の後端部62が半球状に形成される。特に、後形成工程では、柱状体60の後端部62が切削されることによって、後面60b及び周面60cが、滑らかに連続した凸曲面62aに形成される。凸曲面62aは、後端部62の外面であり、後方に向けて凸となるように膨らんでいる。
【0067】
図10(a)が示すように、前形成工程では、柱状体60の前部61が加工される。これにより、前部61の外周面に雄ネジが形成される。この加工により、柱状体60の前部61と区別される後端部62が形成される。
【0068】
図10(b)が示すように、穿孔工程では、柱状体60に孔が開けられる。具体的には、柱状体60の軸心を中心として、前面60aから軸方向34に沿って後方へ穿孔される。これにより、柱状体60の内部に凹部63が形成される。この加工では、凹部63が柱状体60を貫通しないように当該柱状体60が穿孔される。すなわち、凸曲面62aが残るように、凹部63が形成される。
【0069】
これにより、柱状体60は、有底筒状に加工される。凹部63は、上記前部61から上記後端部62の内部にまで延びている。このように上記前部61が筒状に加工されることにより、上記栓本体30が形成される。
【0070】
図10(c)が示すように、切削工程では、柱状体60の後端部62のうち、2つの部位65(同図(b)の二点鎖線によって区画される領域:特許請求の範囲に記載された「2つの対称部位」に相当))が切削される。これらの2つの部位65は、柱状体60の軸心を基準として対称に第2径方向36に隔たっている。2つの部位65は、それぞれ柱状体60の第1径方向35(紙面に垂直な方向)に沿って切削される。
【0071】
切削工程の実行により、
図10(c)に示されるように、上記2つの部位65が上記後端部62から削り取られて、後端部62の中央部分64が残される。上記凹部63は、後端部62の内部まで延びているので、上記前面60aに開口する凹部63は、上記前部61を貫通し、その結果、中央部分64によって橋架部40が形成される。また、橋架部40が形成されるのに伴って、栓本体30の後端部にフランジ32が形成される。
【0072】
上記凹部63が後端部62の内部まで延びているので、当該凹部63の内面は、後端部62において、上記橋架部40の前面を形成し、半球面状の曲面63bとなる。本実施形態では、NC旋盤を用いて、切削工具を回転させながら、当該切削工具を上記軸心に沿って移動させ且つ軸心と直交する方向に沿って移動させることによって、凹部63の内面が形成されている。
【0073】
図10(c)が示すように、取付工程では、当接板50が、上記栓本体30の前端部に取り付けられる。以上の工程を経て、尻栓29が形成される。
【0075】
この尻栓29の製造方法は、上記穿孔工程及び切削工程を備えている。かかる2つの工程を経て、栓本体30及び橋架部40が一体的に形成された尻栓29が簡単に製造される。したがって、本製造方法によれば、単一の部品から構成された尻栓29がコスト安価に製造される。
【0076】
特に、上記尻栓29の製造方法は、後形成工程を備えるので、橋架部40の外面が曲面となる。したがって、尻栓29の橋架部40の機械的強度が向上する。もっとも、この後形成工程は省略されてもよい。
【0077】
また、上記尻栓29の製造方法は、前形成工程を備えるので、栓本体30に雄ネジが形成される。したがって、元節25に螺合可能な尻栓29が製造され得る。もっとも、この前形成工程は省略されてもよく、その場合、尻栓29は、上記元節25に嵌め込まれる。
【0078】
さらに、上記尻栓29の製造方法は、取付工程を備えるので、尻栓29に当接板50が設けられる。したがって、釣竿20の収納を容易に行うことが可能な尻栓29が製造され得る。なお、この取付工程は省略されてもよい。
【0080】
次に、
図11、
図12を参照して、尻栓29の他の製造方法が説明される。他の製造方法は、先の製造方法と比べて、穿孔工程及び切削工程の順番が逆転している。すなわち、後形成工程、前形成工程、切削工程、穿孔工程及び取付工程が、順に実行される。それ以外の点では、他の製造方法は、先の製造方法と同様である。
【0081】
図11、
図12は、尻栓29の他の製造方法を示す図である。特に、
図11(a)は素材となる柱状体を示し、同図(b)は後形成工程を示す。
図12(a)は前形成工程、同図(b)(c)はそれぞれ切削工程及び穿孔工程を示す。
【0082】
図12(b)が示すように、切削工程では、柱状体60の後端部62のうち、2つの部位65(同図(b)の二点鎖線によって区画される領域:特許請求の範囲に記載された「2つの対称部位」に相当))が、それぞれ柱状体60の第1径方向35(紙面に垂直な方向)に沿って切削される。これにより、後端部62の中央部分64が残される。
【0083】
図12(c)が示すように、穿孔工程では、柱状体60が、軸心を中心として、前面60aから軸方向34に沿って前方から後方へ孔が設けられる。これにより、柱状体60に前方に開口する凹部63が形成される。この穿孔工程において、上記中央部分64が貫通されないように凹部63が形成される。ここで、先に実行された切削工程において2つの部位65が切削されているので、穿孔工程で形成された凹部63は、後方に連通する。これにより、柱状体60の前部61が筒状に加工され、前部61により栓本体30が形成される。また、中央部分64が、橋架部40を形成する。
【0085】
この製造方法は、切削工程及び穿孔工程を備えている。かかる2つの工程を経て、栓本体30及び橋架部40が一体的に形成された尻栓29が簡単に製造される。したがって、単一の部品から構成された尻栓29がコスト安価に製造される。
【0086】
上記製造方法は、後形成工程を備えるので、橋架部40の外面が曲面となり、橋架部40の機械的強度が向上する。もっとも、この後形成工程は省略されてもよい。
【0087】
上記製造方法によれば、尻栓29に当接板50が設けられる。したがって、釣竿20の収納を容易に行うことができる。もっとも、この前形成工程は省略されてもよく、その場合、尻栓29は、上記元節25に嵌め込まれる。
【0089】
次に、
図13、
図14を参照して、本発明の第2実施形態に係る尻栓70が説明される。
図13は、尻栓70の栓本体30及び橋架部71の斜視図である。
図14は、尻栓70の栓本体30及び橋架部71の縦断面図である。第2実施形態に係る尻栓70は、橋架部71の前面72の形状において、第1実施形態に係る尻栓29と異なっている。それ以外の点では、第2実施形態は、第1実施形態と同様である。
【0090】
図13、
図14に示されるように、橋架部71の前面72は、第1径方向35において中央に位置する中央面部72aと、第1径方向35において中央面部72aの両側に位置する一対の接続面部72bとを備える。各接続面部72bは、中央面部72aから前方に延びて栓本体30の後端に接続されている。中央面部72aは、第1径方向35に真直に延びている。
【0091】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の製造方法を用いて、尻栓70が製造される。第2実施形態に係る尻栓70の内面も、
図14に示されるように、栓本体30の内周面33と橋架部71の前面72とによって構成されている。当該前面72を構成する中央面部72a及び接続面部72bは、共に直線を描いている。つまり、第1実施形態に係る尻栓29の前面42(
図8参照)の形状が曲線を含むのに対して、上記前面72の形状は、直線のみによって構成されている。
【0092】
[第2実施形態に係る尻栓の作用、効果]
【0093】
第2実施形態に係る尻栓70によれば、栓本体30及び橋架部71が一体的に形成されているから、当該尻栓70は、単一の部品から構成され得る。このため、橋架部71は、外力に対する機械的強度が向上する。しかも、橋架部71は、栓本体30の径方向に架け渡された形状であるから、たとえば、鍛造又は切削等の既知の簡単な加工により形成され得るし、橋架部71の肉厚寸法等の設計及び加工が容易である。
【0094】
尻栓70の栓本体30は、元節25の内側に取り付けられる。このため、元節25の後端部25aのデザインが洗練される。
【0095】
尻栓70の橋架部71が湾曲しているので、橋架部71の機械的強度、特に、軸方向34への外力に対する機械的強度が向上する。
【0096】
尻栓70の橋架部71の側面73が湾曲しながら延びているので、橋架部71の側面73のデザインが洗練される。
【0097】
尻栓70の橋架部71の前面72の中央部が平面状であるので(
図4参照)、当該前面72の加工、ひいては橋架部71の加工が比較的容易である。
【0098】
尻栓70は、当接板50を備える。したがって、第1実施形態と同様に釣竿20の収納を容易に行うことができる。
【0099】
上記前面72は前述のように屋根形に形成されているので、たとえば単一のドリルによって、尻栓70の内面を簡単に形成できる。
【0101】
次に、
図15、
図16を参照して、本発明の第3実施形態に係る尻栓80が説明される。
図15は、尻栓80の栓本体30及び橋架部81の斜視図である。
図16は、尻栓80の栓本体30及び橋架部81の側面一部縦断面図である。第3実施形態に係る尻栓80は、橋架部81の側面83の形状において、第2実施形態に係る尻栓70と異なっている。それ以外の点では、第3実施形態は、第2実施形態と同様である。したがって、第3実施形態に係る尻栓80は、橋架部81の前面72及び側面83の形状を除いて、第1実施形態に係る尻栓29と同様である。
【0102】
図15、
図16に示されるように、第3実施形態に係る側面83は、第2径方向36(第1径方向35に直交する方向)の内向きから、漸次後方へと、第1径方向35と平行な境界線45、46を境として屈曲されながら延びている。すなわち、
図16が示すように、側面83の稜線は、橋架部81を中心として、第2径方向36へ末広がりに延びている。
【0103】
側面83は、境界線45を境として、フランジ32の後面32aから区分されている。また、側面83は、境界線46を境として、2つの部分、すなわち湾曲面部83aと平面部83bとに区分されている。湾曲面部83aは、境界線45を境として、フランジ32の後面32aに対して屈曲されている。平面部83bは、境界線46を境として、湾曲面部83aに対して屈曲されている。
【0104】
[第3実施形態に係る尻栓の作用、効果]
【0105】
第3実施形態に係る尻栓80によれば、栓本体30及び橋架部81が一体的に形成されているから、当該尻栓80は、単一の部品から構成され得る。このため、橋架部81は、外力に対する機械的強度が向上する。しかも、橋架部81は、栓本体30の径方向に架け渡された形状であるから、たとえば、鍛造又は切削等の既知の簡単な加工により形成され得るし、橋架部81の肉厚寸法等の設計及び加工が容易である。
【0106】
尻栓80の栓本体30は、元節25の内側に取り付けられる。このため、元節25の後端部25aのデザインが洗練される。
【0107】
尻栓80の橋架部81が湾曲しているので、橋架部81の機械的強度、特に、軸方向34への外力に対する機械的強度が向上する。
【0108】
尻栓80の橋架部81の側面83が屈曲されながら延びているので、橋架部81における軸方向34と交差する方向の外力に対する機械的強度が向上する。また、橋架部81の側面83のデザインも洗練される。
【0109】
尻栓80の橋架部81の前面72の中央部が平面状であるので(
図15参照)、当該前面72の加工、ひいては橋架部71の加工が比較的容易である。
【0110】
尻栓80は、当接板50を備える。したがって、第1実施形態と同様に釣竿20の収納を容易に行うことができる。
【0111】
上記前面82は前述のように屋根形に形成されているので、たとえば単一のドリルによって、尻栓80の内面を簡単に形成できる。
[尻栓の変形例]
【0112】
第1〜第3実施形態に係る尻栓29、70、80では、栓本体30は、元節25の後端部25aに螺合されている。もっとも、栓本体30は、元節25の後端部25aに取り付け可能に構成されていればよい。栓本体30は、たとえば、嵌め込みによって元節25の後端部25aに取り付けられてもよい。
【0113】
第1〜第3実施形態では、橋架部40、71、81は、湾曲しながら延びている。橋架部40の形状は、
図4、
図10、
図15に示されるように、第2径方向36から見て、一様に湾曲した略C字状である。しかし、橋架部40、71、81は、この構成に限定されない。橋架部40、71、81は、湾曲しながら延びる部分及び直進しながら延びる部分を含んでもよい。この場合、橋架部40、71、81の形状は、第2径方向36から見て、たとえば、U字状であってもよい。あるいは、橋架部40、71、81は、直進しながら延びる部分のみを含んでもよい。この場合、橋架部40、71、81は、直進しながら延びる部分同士の接続部において屈曲するように構成される。この場合、橋架部40、71、81の形状は、第2径方向36から見て、たとえば、略Π字状、又はV字状であってもよい。
【0114】
第1実施形態では、
図4、
図7に示されるように、橋架部40の側面43は、第1径方向35から見て、滑らかに湾曲しながら延びている。第2実施形態では、橋架部71の側面73は、
図13に示されるように、第1径方向35から見て、滑らかに湾曲しながら延びている。同様に、第3実施形態では、橋架部81の側面83は、
図15、
図16に示されるように、第1径方向35から見て、屈曲しながら延びている。橋架部40、71、81の側面は、第2径方向36の内向きから漸次後方へと延びていればよく、上述の構成に限定されない。橋架部40、71、81の側面は、たとえば、1つの平面で構成されてもよく、互いに屈曲するように接続された複数の平面で構成されてもよい。