特許第6704660号(P6704660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6704660有人/無人運転モードが自動切換される射出成形機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704660
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】有人/無人運転モードが自動切換される射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20200525BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20200525BHJP
   B22D 46/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   B29C45/76
   B22D17/32 Z
   B22D46/00
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-193801(P2017-193801)
(22)【出願日】2017年10月3日
(65)【公開番号】特開2019-64208(P2019-64208A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】三宅 宏昌
【審査官】 一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−269150(JP,A)
【文献】 特開2008−062642(JP,A)
【文献】 特開平09−254223(JP,A)
【文献】 特開2016−196145(JP,A)
【文献】 特開平04−312826(JP,A)
【文献】 特開平9−131780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 48/00−48/96
B22D 17/32
B22D 46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常発生時に警報ブザーが出力されてオペレータの操作を待つ有人運転モードと、異常発生時に警報ブザーの出力が抑制されて自動的に運転を停止する無人運転モードの切換可能な2個の運転モードを備えた射出成形機であって、
前記射出成形機は人感センサを備えていると共にオペレータの操作無しで前記2個の運転モードを自動的に切換える自動切換機能を備え、
前記射出成形機において前記自動切換機能を有効にしているとき、前記人感センサによって人が検出されるか、前記射出成形機のコントローラが操作されるか、または前記射出成形機の安全扉が開かれると有人運転モードに切換えられ、所定の規定時間に渡って前記人感センサによって人が検出されず、かつ前記コントローラが操作されず、かつ前記安全扉が開かれないと無人運転モードに切換えられるようになっていることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形機において、前記人感センサは焦電型赤外線センサからなることを特徴とする射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常発生時には警報を出力してオペレータの対応を待ちオペレータが操作して異常対応するようになっている有人運転モードと、異常発生時には警報の出力を抑制して予め決められた手順で異常対応するようになっている無人運転モードの、2個の運転モードの切換ができるようになっている射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は射出装置、型盤装置等を備え、これらの装置はコントローラからの制御によって駆動されるようになっている。射出成形機は、いわゆる有人運転モードと無人運転モードとが用意され、コントローラにおいて切換えできるようになっている。有人運転モードはオペレータの操作を受け付ける運転モードであり、無人運転モードはオペレータの操作無しで自動運転する運転モードになっている。有人/無人運転モードは、射出成形機において異常が発生したときの動作において大きく相違している。射出成形機で成形サイクルを実施しているとき、樹脂の温度異常、型締力の異常等、色々な種類の異常を検出することがある。有人運転モードに切換中に異常が発生すると、コントローラによって警報ブザーが出力され、射出成形機に設けられている警告ランプが点灯しオペレータに異常を知らせる。しかしながらコントローラは、直ちに加熱シリンダのヒータの通電を遮断したり、サーボモータの制御システムをOFFすることはしない。オペレータが異常の内容を理解して適切に操作すればいいからである。これに対して無人運転モードに切換中には、異常が発生しても警報ブザーは出力されず警告ランプも点灯しない。近くに対応可能なオペレータがいないからである。しかしながら無人運転モードでは、異常時にコントローラはヒータの通電を遮断し、サーボモータの制御システムをOFFする。オペレータによる判断や操作を待つこと無く安全サイドで射出成形機、金型等を保護するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−92458号公報
【0004】
無人運転モードは、夜間や休日等のオペレータがいない時間帯において生産を継続したいときに利用されることもある。しかしながら無人運転モードに切換えられているときに異常が発生すると、前記したように射出成形機は自動的に停止してしまうが、射出成形機の停止も異常の内容もオペレータが知ることはできない。オペレータが出勤するときまで停止せざるを得ず、生産計画に支障を来す。特許文献1には、無人運転モードに切換中に異常が発生したら、公衆電話回線を通じて異常の発生をオペレータに通知する射出成形機が記載されている。この射出成形機においては、無人運転モード切換中に異常が発生しても、公衆電話回線を通じてオペレータは異常の内容を受信できる。従って、必要に応じて対応することも可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に射出成形機は有人/無人運転モードが切換えられるようになっていて、状況に合わせて運転モードを選択でき優れている。すなわち、オペレータが射出成形機の近傍において操作可能な状態で待機しているときは有人運転モードを選択して、異常発生時においても、オペレータの判断によって適切に射出成形機を運転できるし、オペレータが射出成形機から離れる場合には無人運転モードを選択して、異常が発生したときには安全に射出成形機が停止されることが保証される。また特許文献1に記載の射出成形機においては無人運転モード時に異常が発生したら、公衆電話回線を通じてオペレータに異常が通知されるので、安心して無人運転モードでの運転が可能である。しかしながら、有人/無人運転モードの切換ができるようになっている射出成形機にも解決すべき問題が見受けられる。具体的には運転モードの切換忘れの問題である。オペレータは、必要に応じて有人/無人運転モードの切換を実施できるが、うっかり切換し忘れてしまう場合がある。例えば、射出成形機が設置されている工場からオペレータが離れるとき、射出成形機を有人運転モードにしたままで切換えし忘れる場合が考えられる。オペレータが不在中に異常が発生しても、有人運転モードであれば射出成形機はサーボモータの制御システムをOFFしない。つまり射出成形機の運転は停止しない。一応警報ブザーが出力され警報ランプが点灯するが、通知すべきオペレータが不在なので異常に対する適切な対応ができず意味がない。これとは逆に、無人運転モードで運転中にオペレータが射出成形機の近傍に戻ってきた場合に、運転モードの切換を忘れる場合もある。無人運転モード中に異常が発生すると、コントローラはヒータの通電を遮断し、サーボモータの制御システムを停止してしまう。しかしながら、警報ブザーも出力されないし警報ランプも点灯されないので、オペレータは射出成形機が停止して初めて異常の発生に気づく。つまり適切な対応を採ることができるオペレータが近傍にいるにもかかわらず、異常発生時には無条件で射出成形機が停止してしまう。
【0006】
本発明は、上記したような問題点を解決した射出成形機を提供することを目的としている。具体的には、有人/無人運転モードの切換が実施できる射出成形機であって、オペレータによる運転モードの切換のし忘れの問題がない、射出成形機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、有人運転モードと無人運転モードの切換可能な2個の運転モードを備えた射出成形機を対象とする。そして射出成形機は人感センサを備えていると共にオペレータの操作無しで2個の運転モードを自動的に切換える自動切換機能を備える。射出成形機において自動切換機能を有効にしているとき、人感センサによって人が検出されるか、射出成形機のコントローラが操作されるか、または射出成形機の安全扉が開かれると有人運転モードに切換えられ、所定の規定時間に渡って人感センサによって人が検出されず、かつコントローラが操作されず、かつ安全扉が開かれないと無人運転モードに切換えられるように構成する。
【0008】
かくして請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、異常発生時に警報ブザーが出力されてオペレータの操作を待つ有人運転モードと、異常発生時に警報ブザーの出力が抑制されて自動的に運転を停止する無人運転モードの切換可能な2個の運転モードを備えた射出成形機であって、射出成形機は人感センサを備えていると共にオペレータの操作無しで2個の運転モードを自動的に切換える自動切換機能を備え、射出成形機において自動切換機能を有効にしているとき、人感センサによって人が検出されるか、射出成形機のコントローラが操作されるか、または射出成形機の安全扉が開かれると有人運転モードに切換えられ、所定の規定時間に渡って人感センサによって人が検出されず、かつコントローラが操作されず、かつ安全扉が開かれないと無人運転モードに切換えられるようになっていることを特徴とする射出成形機として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の射出成形機において、前記人感センサは焦電型赤外線センサからなることを特徴とする射出成形機として構成される。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によると、異常発生時に警報ブザーが出力されてオペレータの操作を待つ有人運転モードと、異常発生時に警報ブザーの出力が抑制されて自動的に運転を停止する無人運転モードの切換可能な2個の運転モードを備えた射出成形機を対象としている。本発明によると、射出成形機は人感センサを備えていると共にオペレータの操作無しで2個の運転モードを自動的に切換える自動切換機能を備え、射出成形機において自動切換機能を有効にしているとき、人感センサによって人が検出されるか、射出成形機のコントローラが操作されるか、または射出成形機の安全扉が開かれると有人運転モードに切換えられ、所定の規定時間に渡って人感センサによって人が検出されず、かつコントローラが操作されず、かつ安全扉が開かれないと無人運転モードに切換えられるようになっている。つまり自動切換機能によって、オペレータが操作することなく自動的に運転モードが切換えられる。これによってオペレータの操作し忘れを防止することができる。運転モードは自動的に切換えられるので、オペレータが不在のときには無人運転モードになり、異常が発生すると射出成形機を安全に停止することができるし、オペレータが戻ってきたときには有人運転モードになって、異常が発生したときには警報ブザー等でオペレータに知らせ、射出成形機はオペレータからの指令を待つことができる。他の発明によると、人感センサは焦電型赤外線センサからなる。焦電型赤外線センサは人の検出精度が高いにもかかわらず比較的安価であり、射出成形機を小コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る複数台の射出成形機が設置されている工場の一部を示す平面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る射出成形機において、有人/無人運転モードを自動的に切換える自動切換機能の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る射出成形機は、従来の射出成形機と同様に構成されており、概略射出装置と型締装置とから構成されている。射出成形機には、各装置を制御するコントローラが設けられオペレータはコントローラから射出成形機を操作できるようになっている。型締装置には安全扉が設けられ、必要により型締装置をメンテナンスするときは安全扉を開いて実施するようになっている。
【0012】
このような本実施の形態に係る射出成形機1、1、…が複数台、図1に示されているように、工場Fに設置されている。本実施の形態に係る射出成形機1、1、…には、型締装置の端部の1箇所と、射出装置の端部の1箇所とにそれぞれ人感センサ3、3、…が設けられている。人感センサ3、3、…は、その近傍に人が近づくとこれを検出するセンサであり、有人状態か無人状態を検出できる。人感センサ3、3、…はどのようなセンサから構成されていてもいいが、本実施の形態においては焦電型赤外線センサからなる。焦電型赤外線センサは安価であるにも拘わらず精度良く近傍に人がいるときにこれを検出できる。図1に示されているように射出成形機1、1、…は通路P、P、…を空けて配置されており、人つまりオペレータは通路P、P、…を通って所望の射出成形機1、1、…にアクセスできるようになっている。射出成形機1、1、…に設けられている人感センサ3、3、…は通路P、P、…に近く配置され、そして通路P、P、…に臨んでいるので、ここを歩行するオペレータを精度良く検出できることになる。
【0013】
本実施の形態に係る射出成形機1、1、…は、有人運転モードと無人運転モードとを備え、これらを切換え出来るようになっている。有人運転モードはオペレータからの操作を受け付ける運転モードであり、射出成形機1、1、…においてコントローラが異常の発生を検出したら、警報ブザーを出力すると共に警報ランプを点灯し、オペレータに異常を通知する。そしてオペレータからの操作を待つ。これに対して無人運転モードはオペレータが射出成形機1、1、…の近傍にいないときに選択される運転モードであり、コントローラが異常の発生を検出したら、射出成形機1、1、…を安全な状態に停止する。すなわち射出装置のヒータへの通電を遮断し、サーボモータの制御システムを停止する。しかしながら異常の発生が検出されても警報ブザーの出力は行わず、警報ランプの点灯も実施しない。オペレータが近隣にいないことを前提にしている運転モードであるからである。このような有人運転モードと無人運転モードの2個の運転モードの切換えは、オペレータが射出成形機のコントローラにて手動で実施するようになっているが、本実施の形態に係る射出成形機1、1、…は、このような2個の運転モードを自動的に切換える自動切換機能を備えている。これによって運転モードの切換忘れを防止している。自動切換機能は有効にしたり無効にすることができ、有効/無効の操作はオペレータがコントローラ上で行う。
【0014】
以下、本実施の形態に係る射出成形機1、1、…のコントローラにおいて実施される処理方法について説明する。射出成形機1、1、…は図2に示されているように、定周期で所定の処理を繰り返す。すなわち、最初にステップS1を実施して、有人運転モードと無人運転モードを自動的に切換える自動切換機能が有効になっているか否かをチェックする。無効になっているとき、つまり運転モードの切換えが手動になっている場合には、元の処理に戻る。もし自動切換機能が有効になっていればステップS2の処理を行う。ステップS2では現在の運転モードをチェックする。現在の運転モードが有人運転モードになっていれば、ステップS3の処理に移行し、無人運転モードになっていればステップS5の処理に移行する。現在、有人運転モードであるとき、ステップS3によって当該射出成形機1の近傍に人がいるか否か、つまりオペレータがいるか否かを判定する。この判定は、人感センサ3、3と、コントローラと、安全扉とで行う。人感センサ3、3において人が検出されるか、コントローラにおいて操作されたことが検出されるか、安全扉の操作が検出されたら、近傍に人がいる状態、すなわち有人状態であると判定する。有人運転モードになっているときに有人状態が検出されたので正常であり、ステップS6に移行する。一方、人感センサ3、3において人が検出されず、かつコントローラにおける操作がなく、そして安全扉の操作が検出されないとき、近傍に人がいない状態、すなわち無人状態であると判定する。有人運転モードにおいて無人状態が検出されたので、この無人状態が所定の規定時間続くか否かをチェックする。規定時間を超えるか否かについては無人判定タイマーで判定するが、ステップS4において無人判定タイマーが満了したか否かをチェックし、満了していないとき、タイマーカウンタを加算(ステップS7)して、最初の処理に戻る。有人運転モードにおいて繰り返し無人状態が続くとステップS7によってタイマーカウンタが加算されて、いずれ無人判定タイマーが満了する。そうするとステップS8において無人運転モードに切換えられ、最初の処理に戻る。ところでステップS6は、有人運転モード中において有人状態が検出されるときに実施されるステップである。つまり正常時のステップである。このステップS6においてカウントアップされている無人判定タイマーをゼロにリセットし、最初の処理に戻るようになっている。
【0015】
ステップS2において、現在の運転モードが無人運転モードであると判断されれば、ステップS5の処理に移行する。ステップS5では、当該射出成形機1の近傍に人がいるか否か、つまりオペレータがいるか否かを判定する。この判定も人感センサ3、3と、コントローラと、安全扉とで行い、ステップS3と同様に実施する。すなわち、人感センサ3、3において人が検出されるか、コントローラにおいて操作されたことが検出されるか、安全扉の操作が検出されたら有人状態であると判定し、人感センサ3、3において人が検出されず、かつコントローラにおける操作がなく、そして安全扉の操作が検出されないとき無人状態であると判定する。現在が無人運転モードであるときに有人状態が検出されたら、ステップS9によりただちに有人運転モードに切換える。そして最初の処理に戻る。一方、現在が無人運転モードであるときにステップS5において無人状態が検出されたら、そのまま最初の処理に戻る。無人運転モードを維持すればいいからである。
【符号の説明】
【0016】
1 射出成形機
3 人感センサ
図1
図2