(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本実施の形態に係る放射線検出器用モジュール、および放射線検出器は、X線のほかにもγ線などの各種放射線に適用させることができる。ここでは、一例として、放射線の中の代表的なものとしてX線に係る場合を例にとり説明をする。したがって、以下の実施形態の「X線」を「他の放射線」に置き換えることにより、他の放射線にも適用させることができる。
【0008】
また、放射線検出器であるX線検出器1は、例えば、一般医療用途などに用いることができるが、放射線検出(X線検出)を行うものであれば用途に限定はない。
また、各図中の矢印X、Y、Zは互いに直交する三方向を表している。例えば、基板2aの主面に対して垂直な方向をZ方向としている。また、基板2aの主面に対して平行な平面内の1つの方向をY方向とし、Z方向とY方向とに垂直な方向をX方向としている。
【0009】
図1は、本実施の形態に係るX線検出器用モジュール11、およびX線検出器1を例示するための模式斜視図である。
なお、
図1においては、煩雑となるのを避けるために反射層6、防湿体7などを省いて描いている。
図2は、X線検出器1のブロック図である。
図3は、本実施の形態に係るX線検出器用モジュール11の周端部近傍を例示するための模式断面図である。
図4は、X線検出器用モジュール11の回路図である。
図5(a)は、防湿体7を例示するための模式平面図である。
図5(b)は、防湿体7を例示するための模式側面図である。
【0010】
まず、本実施の形態に係るX線検出器用モジュール11について説明する。
図3に示すように、X線検出器用モジュール11には、アレイ基板2、シンチレータ層5、反射層6、防湿体7、および接着部8が設けられている。
【0011】
アレイ基板2は、シンチレータ層5によりX線から変換された蛍光(可視光)を電気信号に変換する。
アレイ基板2は、基板2a、光電変換部2b、制御ライン(又はゲートライン)2c1、データライン(又はシグナルライン)2c2、配線パッド2d1、配線パッド2d2、および保護層2fを有する。
【0012】
基板2aは、板状を呈し、ガラスなどの透光性材料から形成されている。
光電変換部2bは、基板2aの一方の表面に複数設けられている。
光電変換部2bは、矩形状を呈し、複数の制御ライン2c1と複数のデータライン2c2とにより画された複数の領域のそれぞれに設けられている。複数の光電変換部2bは、マトリクス状に並べられている。
なお、1つの光電変換部2bは、1つの画素(pixel)に対応する。
複数の光電変換部2bが設けられた領域が、有効画素領域Aとなる。(
図3を参照)
【0013】
複数の光電変換部2bのそれぞれには、光電変換素子2b1と、スイッチング素子である薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)2b2が設けられている。
また、
図4に示すように、光電変換素子2b1において変換した信号電荷を蓄積する蓄積キャパシタ2b3を設けることができる。蓄積キャパシタ2b3は、例えば、矩形平板状を呈し、各薄膜トランジスタ2b2のそれぞれの下に設けることができる。ただし、光電変換素子2b1の容量によっては、光電変換素子2b1が蓄積キャパシタ2b3を兼ねることができる。
【0014】
光電変換素子2b1は、例えば、フォトダイオードなどとすることができる。
薄膜トランジスタ2b2は、蛍光が光電変換素子2b1に入射することで生じた電荷の蓄積および放出のスイッチングを行う。薄膜トランジスタ2b2は、アモルファスシリコン(a−Si)やポリシリコン(P−Si)などの半導体材料を含むものとすることができる。薄膜トランジスタ2b2は、ゲート電極2b2a、ソース電極2b2b及びドレイン電極2b2cを有している。薄膜トランジスタ2b2のゲート電極2b2aは、対応する制御ライン2c1と電気的に接続される。薄膜トランジスタ2b2のソース電極2b2bは、対応するデータライン2c2と電気的に接続される。薄膜トランジスタ2b2のドレイン電極2b2cは、対応する光電変換素子2b1と蓄積キャパシタ2b3とに電気的に接続される。
【0015】
制御ライン2c1は、所定の間隔を開けて互いに平行に複数設けられている。制御ライン2c1は、X方向(例えば、行方向)に延びている。
複数の制御ライン2c1は、基板2aの周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d1のそれぞれと電気的に接続されている。複数の配線パッド2d1には、フレキシブルプリント基板12aに設けられた複数の配線の一端がそれぞれ電気的に接続されている。フレキシブルプリント基板12aに設けられた複数の配線の他端は、信号処理部3に設けられた制御回路31とそれぞれ電気的に接続されている。
【0016】
データライン2c2は、所定の間隔を開けて互いに平行に複数設けられている。データライン2c2は、X方向に直交するY方向(例えば、列方向)に延びている。
複数のデータライン2c2は、基板2aの周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d2とそれぞれ電気的に接続されている。複数の配線パッド2d2には、フレキシブルプリント基板12bに設けられた複数の配線の一端がそれぞれ電気的に接続されている。フレキシブルプリント基板12bに設けられた複数の配線の他端は、信号処理部3に設けられた増幅・変換回路32とそれぞれ電気的に接続されている。
制御ライン2c1とデータライン2c2は、アルミニウムやクロムなどの低抵抗金属を用いて形成することができる。
【0017】
また、複数の光電変換素子2b1と電気的に接続される図示しないバイアスラインを設けることもできる。
図示しないバイアスラインは、例えば、データライン2c2と同じ方向に延びるものとすることができる。
【0018】
保護層2fは、光電変換部2b、制御ライン2c1、およびデータライン2c2などを覆っている。
保護層2fは、例えば、酸化物絶縁材料、窒化物絶縁材料、酸窒化物絶縁材料、および樹脂材料の少なくとも1種を含む。
酸化物絶縁材料は、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウムなどである。
窒化物絶縁材料は、例えば、窒化シリコン、窒化アルミニウムなどである。
酸窒化物絶縁材料は、例えば、酸窒化シリコンなどである。
樹脂材料は、例えば、アクリル系樹脂などである。
【0019】
シンチレータ層5は、複数の光電変換部2b(有効画素領域A)の上に設けられ、入射したX線を蛍光すなわち可視光に変換する。
シンチレータ層5は、例えば、ヨウ化セシウム(CsI):タリウム(Tl)、あるいはヨウ化ナトリウム(NaI):タリウム(Tl)などを用いて形成することができる。この場合、真空蒸着法などを用いて、シンチレータ層5を形成すれば、複数の柱状結晶の集合体からなるシンチレータ層5が形成される。
ここで、真空蒸着法などを用いてシンチレータ層5を形成すると、
図3に示すように、シンチレータ層5の周縁部分に、傾斜部5aが形成される。傾斜部5aの厚み寸法は、シンチレータ層5の外側に向かうに従い漸減している。そのため、傾斜部5aは、シンチレータ層5の中央領域にある部分に比べて厚みが薄くなる。
傾斜部5aの側面、すなわち、シンチレータ層5の周端面5a1は、シンチレータ層5の外側に向かうに従いシンチレータ層5の中心から離れる方向に傾斜している。
平面視において(Z方向から見て)、シンチレータ層5の周端面5a1は、有効画素領域Aの外側に設けられている。
【0020】
反射層6は、蛍光の利用効率を高めて感度特性を改善するために設けられている。すなわち、反射層6は、シンチレータ層5において生じた蛍光のうち、有効画素領域A側とは反対側に向かう光を反射させて、有効画素領域A側に向かうようにする。
反射層6は、シンチレータ層5の表面側(X線の入射面側)に設けられている。
この場合、反射層6の周端部6aは、シンチレータ層5の周端面5a1の上に設けられている。反射層6の周端部6aは、周端面5a1の基板2a側の端部5a1aと、周端面5a1の基板2a側とは反対側の端部5a1bとの間に設けられている。
なお、傾斜部5aと有効画素領域Aの位置関係と、傾斜部5aと反射層6の位置関係に関する詳細は後述する。
【0021】
反射層6は、例えば、酸化チタン(TiO
2)などの光散乱性粒子を含む樹脂をシンチレータ層5上に塗布することで形成することができる。
この場合、反射層6は、酸化チタンからなるサブミクロン粉体と、バインダ樹脂と、溶媒を混合して作成した材料をシンチレータ層5上に塗布し、これを乾燥させることで形成することができる。
【0022】
防湿体7は、空気中に含まれる水蒸気により、シンチレータ層5および反射層6の特性が劣化するのを抑制するために設けられている。
図5(a)、(b)に示すように、防湿体7は、ハット形状を呈し、表面部7a、周面部7b、および、つば(鍔)部7cを有する。
防湿体7は、表面部7a、周面部7b、および、つば部7cが一体成形されたものとすることができる。
【0023】
防湿体7は、透湿係数の小さい材料から形成することができる。
防湿体7は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、樹脂層と無機材料(アルミニウムなどの軽金属、SiO
2、SiON、Al
2O
3などのセラミック系材料)層が積層された低透湿防湿材料などから形成することができる。
また、防湿体7の厚み寸法は、X線の吸収や剛性などを考慮して決定することができる。この場合、防湿体7の厚み寸法を大きくしすぎるとX線の吸収が多くなりすぎる。防湿体7の厚み寸法を小さくしすぎると剛性が低下して破損しやすくなる。
防湿体7は、例えば、厚み寸法が0.1mmのアルミニウム箔をプレス成形して形成することができる。
【0024】
表面部7aは、シンチレータ層5の表面側(X線の入射面側)に対峙している。
周面部7bは、表面部7aの周縁を囲むように設けられている。周面部7bは、表面部7aの周縁から基板2a側に延びている。
表面部7aおよび周面部7bにより形成された空間の内部には、シンチレータ層5と反射層6が設けられる。表面部7aおよび周面部7bと、反射層6またはシンチレータ層5との間には隙間があってもよいし、表面部7aおよび周面部7bと、反射層6またはシンチレータ層5とが接触していてもよい。
【0025】
つば部7cは、周面部7bの表面部7a側とは反対側の端部を囲むように設けられている。つば部7cは、周面部7bの端部から外側に向けて延びている。つば部7cは、環状を呈し、基板2aの光電変換部2bが設けられる側の面と平行となるように設けられている。
つば部7cは、接着層8を介して、アレイ基板2の周縁領域(有効画素領域Aの外側)に接着されている。
ハット形状の防湿体7を用いるものとすれば、高い防湿性能を得ることが可能となる。この場合、防湿体7はアルミニウムなどから形成されるため、水蒸気の透過は極めて少ないものとなる。
【0026】
接着層8は、つば部7cと、アレイ基板2との間に設けられている。接着層8は、例えば、紫外線硬化型の接着剤が硬化することで形成されたものである。
また、接着層8の透湿率(水蒸気の透過率)は、できるだけ小さくなるようにすることが好ましい。この場合、紫外線硬化型の樹脂に無機材質のタルク(滑石:Mg
3Si
4O
10(OH)
2)を70重量%以上添加すれば、接着層8の透湿係数を大幅に低減させることができる。
【0027】
次に、傾斜部5aと有効画素領域Aの位置関係と、傾斜部5aと反射層6の位置関係についてさらに説明する。
図6は、比較例に係るX線検出器用モジュール110の周端部近傍を例示するための模式断面図である。
図6に示すように、比較例に係るX線検出器用モジュール110にも、アレイ基板2、シンチレータ層115、反射層116、防湿体7、および接着部8が設けられている。
【0028】
ただし、シンチレータ層115の傾斜部115aの一部は、有効画素領域Aの上に設けられている。
傾斜部115aは、シンチレータ層115の外側に向かうに従い厚み寸法が漸減している。すなわち、傾斜部115aは、シンチレータ層115の中央領域にある部分に比べて厚みが薄くなる。シンチレータ層115の厚みが薄くなると、蛍光の量が減る。
そのため、有効画素領域Aの上方、あるいは、有効画素領域Aに近接した位置に傾斜部115aがあると、感度特性が悪化するおそれがある。
【0029】
この場合、有効画素領域Aから外側に離れた位置に傾斜部115aを設ければ、感度特性が悪化するのを抑制することができる。しかしながら、有効画素領域Aから外側に離れた位置に傾斜部115aを設けるようにすると、X線検出器用モジュール110が大きくなりX線検出器の小型化が図れなくなるおそれがある。
【0030】
また、シンチレータ層115全体を覆うように反射層116を設ければ、傾斜部115aの周端面に向かう光を反射させることができるので、感度特性の悪化を抑制することができる。
しかしながら、反射層116は、光散乱性粒子とバインダ樹脂と溶媒を混合して作成した材料をシンチレータ層115上に塗布し、これを乾燥させることで形成する。すなわち、反射層116の材料は流動性を有する。そのため、反射層116を形成する際に、シンチレータ層115の傾斜部115aを超えて基板2aの表面にまで反射層116の材料が流出するおそれがある。基板2aの表面にまで反射層116が形成されると、接着層8が反射層116の上に形成されることになるので、接着層8における接着強度が低下するおそれがある。この場合、基板2aの表面にまで反射層116の材料が流出することを考慮して防湿体7の接着位置を外側に設定すると、基板2a、ひいてはX線検出器用モジュール110が大きくなりX線検出器の小型化が図れなくなるおそれがある。
【0031】
そこで、本実施の形態に係るX線検出器用モジュール11においては、シンチレータ層5の周端面5a1を有効画素領域Aの外側に設け、反射層6の周端部6aを、周端面5a1の上に設けるようにしている。
X線検出器モジュール11の小型化のためには、シンチレータ層5の周端面5a1が、有効画素領域Aに近接し、かつ、周端面5a1の幅寸法(平面視における端部5a1bと端部5a1aとの間の距離)を小さくする事が望ましい。
前述したように、シンチレータ層5は、複数の柱状結晶の集合体となっている。そして、柱状結晶同士の間には隙間がある。この場合、流動性を有する反射層6の材料を周端面5a1の上に塗布すると、塗布された反射層6の材料の一部は、柱状結晶同士の間に入り込む。そのため、反射層6は、シンチレータ層5の周端面5a1において、複数の柱状結晶同士の間にも設けられている。
シンチレータ層5の周端面5a1において、流動性を有する反射層6の材料に対する流出抵抗が高くなるので、反射層6の周端部6aを、周端面5a1の上に設けるようにしても、塗布された反射層6の材料がシンチレータ層5の傾斜部5aを超えて基板2aの表面にまで流出するのを抑制することができる。
その結果、シンチレータ層5と接着層8との間の距離が長くなるのを抑制することができる。
【0032】
そして、反射層6の周端部6aが、周端面5a1の上に設けられていれば、周端面5a1に向かう光を有効画素領域A側に反射させることができる。
そのため、有効画素領域Aに近接した位置に傾斜部5aがあっても、感度特性が悪化するのを抑制することができる。
その結果、有効画素領域Aに近接した位置にシンチレータ層5の傾斜部5aがあっても感度特性を向上させることができ、且つ、X線検出器用モジュール11の小型化、ひいてはX線検出器1の小型化を図ることができる。
【0033】
次に、
図1、
図2に戻って、本実施の形態に係るX線検出器1について説明する。
図1に示すように、X線検出器1には、X線検出器用モジュール11、信号処理部3、および画像伝送部4が設けられている。
信号処理部3は、基板2aの光電変換部2bが設けられる側とは反対側に設けられている。
信号処理部3は、X線検出器用モジュール11に設けられた複数の光電変換素子2b1からの画像データ信号をデジタル信号に変換する。
【0034】
信号処理部3には、制御回路31と、増幅・変換回路32とが設けられている。
図2に示すように、制御回路31は、複数のゲートドライバ31aと行選択回路31bとを有する。
ゲートドライバ31aは、対応する制御ライン2c1に制御信号S1を印加する。
行選択回路31bは、X線画像の走査方向に従って、対応するゲートドライバ31aに外部からの制御信号S1を送る。
例えば、制御回路31は、フレキシブルプリント基板12aと制御ライン2c1とを介して、制御信号S1を各制御ライン2c1毎に順次印加する。制御ライン2c1に印加された制御信号S1により薄膜トランジスタ2b2がオン状態となり、光電変換素子2b1からの信号電荷(画像データ信号S2)が受信できるようになる。
【0035】
増幅・変換回路32は、複数の積分増幅器32aと、複数のA/D変換器32bを有する。
積分増幅器32aは、データライン2c2と配線パッド2d2とフレキシブルプリント基板12bとを介して、各光電変換素子2b1からの画像データ信号S2を増幅し出力する。積分増幅器32aから出力された画像データ信号S2は、並列/直列変換されてA/D変換器32bに入力される。
A/D変換器32bは、入力された画像データ信号S2(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。
【0036】
図1に示すように、画像伝送部4は、配線4aを介して、信号処理部3の増幅・変換回路32と電気的に接続されている。なお、画像伝送部4は、信号処理部3と一体化されていてもよい。
画像伝送部4は、複数のA/D変換器32bによりデジタル信号に変換された画像データ信号S2に基づいて、X線画像を合成する。合成されたX線画像のデータは、画像伝送部4から外部の機器に向けて出力される。
その他、X線検出器1は、X線検出器用モジュール11、信号処理部3、および画像伝送部4を収納する図示しない筐体などを備えることができる。
【0037】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。