特許第6704681号(P6704681)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704681
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】液体柔軟剤組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/267 20060101AFI20200525BHJP
   D06M 13/463 20060101ALI20200525BHJP
   D06M 11/13 20060101ALI20200525BHJP
   D06M 11/155 20060101ALI20200525BHJP
   C08L 35/00 20060101ALI20200525BHJP
   C08K 3/20 20060101ALI20200525BHJP
   C08K 5/19 20060101ALI20200525BHJP
   C07C 219/06 20060101ALN20200525BHJP
   C07C 211/63 20060101ALN20200525BHJP
【FI】
   D06M15/267
   D06M13/463
   D06M11/13
   D06M11/155
   C08L35/00
   C08K3/20
   C08K5/19
   !C07C219/06
   !C07C211/63
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-105480(P2015-105480)
(22)【出願日】2015年5月25日
(65)【公開番号】特開2016-216864(P2016-216864A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】金尾 知樹
(72)【発明者】
【氏名】森高 峰穂
(72)【発明者】
【氏名】石川 晃
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−061571(JP,A)
【文献】 特開2012−172283(JP,A)
【文献】 特開2009−299210(JP,A)
【文献】 特開2002−105857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 11/00−15/715
C08K 3/20
C08K 5/19
C08L 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分15質量%以上、30質量%以下、及び水を含有する液体柔軟剤組成物の製造方法であって、
(A)成分及び水を含む乳化組成物を形成する乳化工程を、下記(B)成分のカチオン性ポリマーの存在下で且つ質量として(A)成分量よりも水量が多い条件下で行い、且つ、
乳化工程で形成された乳化組成物に、水溶性無機塩を添加する工程を有する、
液体柔軟剤組成物の製造方法。
<(A)成分>
第4級アンモニウム塩であって、窒素原子に共有結合する4つの基のうち、1個以上、3個以下が−R1a−OCO−R2aで表される基であり、残余の基が炭素数1以上、3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である、第4級アンモニウム塩(ここで、R1aは、炭素数2又は3のアルキレン基、R2aは、炭素数16以上、22以下の炭化水素基を示す。)
<(B)成分>
重量平均分子量が6000以上、100,000以下であって、下記一般式(B1)で示される化合物、その酸塩及びその4級塩から選ばれる1種以上の化合物に由来するモノマー単位を含有するカチオン性ポリマー
【化1】

〔一般式(B1)中、R1b、R2bは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示し、R3bは−COOM(Mは水素原子、又はアルカリ金属原子)又は水素原子を示す。Xは、−COO−R6b−又は−CONR7b−R8b−を示す。R4bは、炭素数1以上、3以下のアルキル基、又は炭素数1以上、3以下のヒドロキシアルキル基を示す。R5bは、炭素数1以上、3以下のアルキル基、炭素数1以上、3以下のヒドロキシアルキル基又は水素原子を示す。R6b、R8bは、それぞれ独立に炭素数1以上、4以下のアルキレン基、R7bは、水素原子又は炭素数1以上、3以下のアルキル基を示す。〕
【請求項2】
(B)成分が、
(i)メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N―ジメチルアミノメチルから選ばれるモノマーのカチオン性ホモポリマー、並びに
(ii)メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチルから選ばれるモノマーと、アルキル基の炭素数が8以上14以下のアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルから選ばれる1種以上の化合物との共重合により得られたカチオン性コポリマー、
から選ばれるカチオン性ポリマーである、請求項1記載の液体柔軟剤組成物の製造方法。
【請求項3】
(B)成分が、一般式(B1)中のR5bが炭素数1以上、3以下のアルキル基又は炭素数1以上、3以下のヒドロキシアルキル基の化合物、その酸塩及びその4級塩から選ばれる1種以上の化合物に由来するモノマー単位を含有するカチオン性ポリマーであり、該(B)成分と共に非イオン界面活性剤を存在させて乳化工程を行う、請求項1又は2記載の液体柔軟剤組成物の製造方法。
【請求項4】
乳化工程を、(A)成分を含有する液体組成物を、(B)成分及び水を含有する水性組成物に添加して行う、請求項1〜3の何れか1項記載の液体柔軟剤組成物の製造方法。
【請求項5】
乳化工程を、(A)成分を含有する液体組成物を(A)成分の融点以上に加熱して、(B)成分及び水を含有する水性組成物に添加して行う、請求項1〜4の何れか1項記載の液体柔軟剤組成物の製造方法。
【請求項6】
(A)成分を含有する液体組成物が、水溶性有機溶媒を含有する、請求項4又は5記載の液体柔軟剤組成物の製造方法。
【請求項7】
(B)成分及び水を含有する水性組成物が、非イオン界面活性剤を含有する、請求項4〜6の何れか1項記載の液体柔軟剤組成物の製造方法。
【請求項8】
(B)成分及び水を含有する水性組成物のpHが65℃で1以上、10以下である、請求項4〜7の何れか1項記載の液体柔軟剤組成物の製造方法。
【請求項9】
液体柔軟剤組成物に配合される(A)成分の全量と(B)成分の全量が混合された時点における(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)が、10以上、200以下である、請求項1〜の何れか1項記載の液体柔軟剤組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体柔軟剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体柔軟剤は、通常、約600mL〜2.5L容量のプラスチック容器に充填され販売されている。近年、環境意識への高まりから、容器の容量を更に少なくすることで、容器の材質であるプラスチック材料の使用量を削減する試みがなされている。また、高齢化に伴い、店頭で購入した消費者が製品を持ち運びし易くする為に、製品の質量を低減することが望まれている。しかしながら、容器1個当たりの内容量を単に少なくなると、使用可能な回数が減少する。その課題を解決する為に、内容物の有効成分を高濃度化し、洗濯1回あたりの使用量を少なくすることが望まれている。
【0003】
一方で、柔軟性を更に高くすることを目的に、カチオン性ポリマーを配合することも公知である。
【0004】
特許文献1、2には、特定の手順でカチオン性ポリマーと、第4級アンモニウム塩等とを混合する、液体柔軟剤組成物を製造する方法が記載されている。
また、特許文献3には、(a)特定の高分子化合物、(b)特定の第4級アンモニウム塩及びアミン化合物から選ばれる一種以上、並びに(c)水及びClogPが2以下の溶剤から選ばれる少なくとも1種の化合物を、それぞれ特定範囲で含有し、20℃におけるpHが2〜5である液体柔軟剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−172283号公報
【特許文献2】特開2011−236518号公報
【特許文献3】特開2008−144316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
柔軟基剤として、エステル基で分断されている炭化水素基、すなわち、炭化水素基がエステル基で連結された基を有する第4級アンモニウム塩(以下、エステル型第4級アンモニウム塩という場合もある)を用いる場合、エステル型第4級アンモニウム塩の含有量が高濃度になると、製造中に混合物が増粘し、安定に製造することが困難となる場合がある。具体的には、液体柔軟剤の調製時に、エステル型第4級アンモニウム塩を水で乳化させる工程において、エタノール等の有機溶媒や加熱によりエステル型第4級アンモニウム塩自体の流動性を担保して、柔軟剤の調製に用いたとしても、エステル型第4級アンモニウム塩と水とを混合した際に高粘度化してしまい、効率的で十分な撹拌ができなくなる、という問題が生じる。
本発明は、エステル型第4級アンモニウム塩を高濃度で含有する液体柔軟剤組成物を製造中に高粘度になることなく安定に製造できる液体柔軟剤組成物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(A)成分15質量%以上、30質量%以下、及び水を含有する液体柔軟剤組成物の製造方法であって、
(A)成分及び水を含む乳化組成物を形成する乳化工程を、下記(B)成分のカチオン性ポリマーの存在下で且つ質量として(A)成分量よりも水量が多い条件下で行う、
液体柔軟剤組成物の製造方法に関する。
<(A)成分>
第4級アンモニウム塩であって、窒素原子に共有結合する4つの基のうち、1個以上、3個以下が−R1a−OC(O)−R2aで表される基であり、残余の基が炭素数1以上、3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である、第4級アンモニウム塩(ここで、R1aは、炭素数2又は3のアルキレン基、R2aは、炭素数16以上、22以下の炭化水素基、C(O)はカルボニル基を示す。)
<(B)成分>
下記一般式(B1)で表される化合物、その酸塩及びその4級塩から選ばれる1種以上の化合物に由来するモノマー単位を含有するカチオン性ポリマー
【0008】
【化1】
【0009】
〔一般式(B1)中、R1b、R2bは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示し、R3bは−C(O)OM(Mは水素原子、又はアルカリ金属原子)又は水素原子を示す。Xは、−C(O)O−R6b−、−C(O)NR7b−R8b−又は−CH−を示す。R4bは、Xが−CH−の場合には一般式(B1’)
【0010】
【化2】
【0011】
で表される基を示し、Xがそれ以外の場合は炭素数1以上、3以下のアルキル基、又は炭素数1以上、3以下のヒドロキシアルキル基を示す。R5bは、炭素数1以上、3以下のアルキル基、炭素数1以上、3以下のヒドロキシアルキル基又は水素原子を示す。R6b、R8bは、それぞれ独立に炭素数1以上、4以下のアルキレン基、R7bは、水素原子又は炭素数1以上、3以下のアルキル基を示す。〕
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エステル型第4級アンモニウム塩を高濃度で含有する液体柔軟剤組成物を製造中に高粘度になることなく安定に製造できる液体柔軟剤組成物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の製造方法に用いられ、液体柔軟剤組成物に配合される成分について説明する。
<(A)成分>
(A)成分は、第4級アンモニウム塩であって、窒素原子に共有結合する4つの基のうち、1個以上、3個以下が−R1a−OC(O)−R2aで表される基であり、残余の基が炭素数1以上、3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である、第4級アンモニウム塩(ここで、R1aは、炭素数2又は3のアルキレン基、R2aは、炭素数16以上、22以下の炭化水素基を示す。)である。本発明の目的は(A)成分を粘度の増加なく乳化することにある。
【0014】
(A)成分としては、一般式(A1)で表される化合物が挙げられる。
【0015】
【化3】
【0016】
〔式中、R11a、R12a、R13a、R14aは、これらの基のうち1個以上、3個以下が−R1a−OC(O)−R2aで表される基であり、残余が炭素数1以上、3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である(ここで、R1aは、炭素数2又は3のアルキレン基、R2aは、炭素数16以上、22以下の炭化水素基を示す。)。Xは陰イオン基である。〕
【0017】
一般式(A1)中、R11a、R12a、R13a、R14aは、これらの基のうち2個が−R1a−OC(O)−R2aで表される基であることが柔軟性及び安定性の上で好ましい。R2aの炭化水素基はアルキル基が好ましい。R2aの炭素数は15以上、21以下が好ましい。R2aは、炭素数16以上、22以下のアルキル基が好ましい。
一般式(A1)中、R11a、R12a、R13a、R14aの残余である基は、炭素1以上、3以下のヒドロキシルアルキル基又はアルキル基が好ましい。
一般式(A1)中、Xの陰イオン基は、ハロゲンイオン、硫酸イオン、炭素数1以上、12以下の脂肪酸イオン、及び炭素数1以上、3以下のアルキル硫酸イオンから選ばれる陰イオン基が挙げられ、好ましくは、ハロゲンイオン、及び炭素数1以上、3以下のアルキル硫酸イオンから選ばれる陰イオン基である。
【0018】
(A)成分は、一般式(A1)中、R11a、R12a、R13a、R14aのうち1個、2個又は3個が−R1a−OC(O)−R2aで表される基であって、残余の基の少なくとも1つが炭素数1以上、3以下のアルキル基である化合物の混合物として用いられることが好ましい。
【0019】
また、(A)成分は、一般式(A1)で表される化合物の混合物であって、
−R1a−OC(O)−R2aを1個有する化合物の割合が、前記混合物中、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下であり、
−R1a−OC(O)−R2aを2個有する化合物の割合が、前記混合物中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下であり、
−R1a−OC(O)−R2aを3個の化合物の割合が、前記混合物中、好ましくは8質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である、混合物であることが好ましい。この混合物の場合も、−R1a−OC(O)−R2aで表される基の残余の基の少なくとも1つが炭素数1以上、3以下のアルキル基である化合物が好ましい。
【0020】
<(B)成分>
(B)成分は、下記一般式(B1)で表される化合物、その酸塩及びその4級塩から選ばれる1種以上の化合物に由来するモノマー単位〔以下、モノマー単位(B1)という〕を含有するカチオン性ポリマーである。本発明により製造される液体柔軟剤組成物は、(B)成分を含有する。
【0021】
【化4】
【0022】
〔一般式(B1)中、R1b、R2bは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示し、R3bは−C(O)OM(Mは水素原子、又はアルカリ金属原子)又は水素原子を示す。Xは、−C(O)O−R6b−、−C(O)NR7b−R8b−又は−CH−を示す。R4bは、Xが−CH−の場合には一般式(B1’)
【0023】
【化5】
【0024】
で表される基を示し、Xがそれ以外の場合は炭素数1以上、3以下のアルキル基、又は炭素数1以上、3以下のヒドロキシアルキル基を示す。R5bは、炭素数1以上、3以下のアルキル基、炭素数1以上、3以下のヒドロキシアルキル基又は水素原子を示す。R6b、R8bは、それぞれ独立に炭素数1以上、4以下のアルキレン基、R7bは、水素原子又は炭素数1以上、3以下のアルキル基を示す。〕
【0025】
モノマー単位(B1)の由来となる、一般式(B1)で表される化合物のうち、一般式(B1)中のXが−C(O)O−R6b−である化合物としては、アクリル酸(またはメタクリル酸)N,N−ジメチルアミノメチル、アクリル酸(またはメタクリル酸)N,N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸(またはメタクリル酸)N,N−ジメチルアミノプロピル、アクリル酸(またはメタクリル酸)N,N−ジメチルアミノブチル、アクリル酸(またはメタクリル酸)N,N−ジエチルアミノメチル、アクリル酸(またはメタクリル酸)N,N−ジエチルアミノエチル、アクリル酸(またはメタクリル酸)N,N−ジエチルアミノプロピル、アクリル酸(またはメタクリル酸)N,N−ジエチルアミノブチル等が挙げられる。
【0026】
また、一般式(B1)で表される化合物のうち、一般式(B1)中のXが−C(O)NR7b−R8b−である化合物としては、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリル酸(またはメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアミノメチルアクリル酸(またはメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリル酸(またはメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアミノブチルアクリル酸(またはメタクリル酸)アミド等が挙げられる。
【0027】
また、一般式(B1)中のXが−CH−の場合、R4bは前記一般式(B1’)で表される基である。かかる化合物としては、ジアリルアミン等が挙げられる。
【0028】
一般式(B1)で表される化合物は、その酸塩又は4級塩を用いることができる。酸塩としては、一般式(B1)で表される化合物と、例えば塩酸又は硫酸などの無機酸との中和塩や各種有機酸との中和塩が挙げられる。4級塩としては、一般式(B1)で表される化合物を、炭素数1以上、3以下のハロゲン化アルキル又は炭素数1以上、3以下のアルキル硫酸等で4級化した4級塩が挙げられる。4級塩としてはN,N,N−トリメチル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムエチルサルフェート、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。これらの化合物は、例えばMRCユニテック(株)からQDMやMOEDESという商品名で販売されている。
【0029】
一般式(B1)で示される化合物のうち、より好ましい化合物は、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、及びアクリル酸N,N−ジメチルアミノメチルから選ばれる一種以上である。
【0030】
本発明に係る(B)成分は、モノマー単位(B1)と、一般式(B1)で表される化合物と共重合可能な重合性ビニル化合物に由来するモノマー単位〔以下、モノマー単位(B2)という〕とを有する共重合体であってもよい。
【0031】
モノマー単位(B2)としては、下記一般式(B2)で表される化合物に由来するモノマー単位が挙げられる。
【0032】
【化6】
【0033】
〔式中、R11b、R12bは、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1以上、3以下のアルキル基を示し、Yはアリール基、−O−C(O)−R13b、−C(O)O−(R14b−O)−R15b、又は−C(O)NR16b−R17bを示す。R13b、R15b、R17bは、それぞれ独立に炭素数1以上、22以下の直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状のアルキル基もしくはアルケニル基、又は総炭素数6以上、14以下のアリールアルキル基を示し、R14bは、炭素数2又は3のアルキレン基、nは0以上、50以下の数、R16bは水素原子、又は炭素数1以上、3以下のアルキル基を示す。〕
【0034】
一般式(B2)中のYは−C(O)O−(R14b−O)−R15bが好ましい。
Yの−C(O)O−(R14b−O)−R15bでは、R15bは、炭素数8以上、更に10以上、そして、18以下、更に14以下のアルキル基が好ましい。R14bは、エチレンが好ましい。nは0以上、好ましくは20以下、より好ましくは10以下の数である。nは0が更に好ましい。
【0035】
一般式(B2)で示され、モノマー単位(B1)の出発物質と共重合可能な具体的な重合性ビニル化合物としては、アルキル基の炭素数が1以上、好ましくは8以上、そして22以下、好ましくは14以下であるアクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルが、本発明の効果をより享受できる点で好ましい。
【0036】
一般式(B2)の化合物以外の前記モノマー単位(B1)の出発物質と共重合可能な重合性ビニル化合物〔以下、その他重合性化合物という〕としては、(1)ビニルアルコール、(2)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等の炭素数1以上、22以下のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミド、(3)グリセリン(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、(4)ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(5)N−ビニルピロリドン等のN−ビニル環状アミド、(6)N−(メタ)アクロイルモルホリン、(7)塩化ビニル、(8)アクリロニトリル、(9)(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、スチレンカルボン酸等のカルボキシル基を有するビニル化合物、(10)2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン酸基を有するビニル化合物、等が例示される。
【0037】
(B)成分は、(i)前記一般式(B1)で表される化合物、その酸塩及びその4級塩から選ばれる化合物、具体的にはメタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N―ジメチルアミノメチルから選ばれるモノマーのカチオン性ホモポリマー、並びに(ii)前記一般式(B1)で表される化合物、その酸塩及びその4級塩から選ばれる1種以上の化合物、具体的にはメタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチルから選ばれるモノマーと、一般式(B2)で表される化合物、具体的にはアルキル基の炭素数が8以上14以下のアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルから選ばれる1種以上の化合物との共重合により得られたカチオン性コポリマー、から選ばれるカチオン性ポリマーが好ましい。
【0038】
(B)成分は、モノマー単位(B1)及びモノマー単位(B2)、なかでも前記一般式(B2)で表される化合物に由来するモノマー単位を有する共重合体が、柔軟効果の点で好ましい。そのような共重合体は、モノマー単位(B1)/モノマー単位(B2)=20/80以上、99/1以下のモル比であることが好ましく、50/50以上、95/5以下がより好ましく、更には70/30以上、95/5以下がより好ましい。また、モノマー単位(B1)及びモノマー単位(B2)の合計は、柔軟性の向上効果の点から、(B)成分の全モノマー単位中60モル%以上が好ましく、更に80モル%以上がより好ましく、100モル%以下が好ましい。当該モノマー単位の比率は、重合時に用いた一般式(B1)及び一般式(B2)の重合性化合物のモル比であってもよい。
【0039】
(B)成分の重量平均分子量(Mw)は、柔軟効果の観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは6,000以上、より更に好ましくは12,000以上、そして、好ましくは2,000,000以下、より好ましくは1,500,000以下、更に好ましくは100,000以下、より更に好ましくは60,000以下である。MwとMn(数平均分子量)の比Mw/Mnは、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、そして、好ましくは40以下、より好ましくは35である。
【0040】
尚、本発明の(B)成分のMw、Mn、Mw/Mnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定による値を使用する。溶離液としては、水、アルコール、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル及びこれらの溶媒を組み合わせた液の何れかを使用し、(B)成分のポリマーが比較的親水性の場合は、ポリエチレングリコールを標品として用いるため、ポリエチレングリコール換算(以下、PEG換算という場合もある)の分子量とし、比較的疎水性の場合は、ポリスチレンを標品として用いるため、ポリスチレン換算(以下、PSt換算という場合もある)の分子量とする。
【0041】
すなわち、測定対象のポリマーが、モノマー単位(B1)の割合が大きく比較的親水性であると考えられる場合は、(1%酢酸/エタノール):水=3:7(質量比)の混合溶媒で調製したLiBrの50mmol/L溶液を溶媒として、極性溶媒用GPCカラム「α−M(東ソー(株)製)」を2本直列して用い、ポリエチレングリコール換算の分子量により算出する(測定法A)。ポリマーが比較的疎水性であると考えられる場合は、ファーミンDM20(花王(株)製)の1mmol/L−CHCl溶液にて、有機溶媒用GPCカラム「K−804(昭和電工(株)製)」を2本直列して用い、ポリスチレン換算の分子量により算出する(測定法B)。
なお(B)成分のカチオン性ポリマーは、本発明の製造工程において、(D)成分の水溶性有機溶媒に溶解ないし分散させた形態で用いてもよい。その際の水溶性有機溶媒の使用量は、最終製品としての柔軟剤組成物の貯蔵安定性や粘度物性のみならず、製造方法や製造設備等を考慮して必要最小限の量で用いることが好ましい。なお(B)成分は親水性のカチオン性ポリマーが好ましい。
【0042】
<その他の成分>
本発明の製造方法により製造される液体柔軟剤組成物は、(A)成分、(B)成分以外の成分を含有することができる。具体的には、以下の成分を含有することができる。
【0043】
〔(C)成分〕
非イオン界面活性剤
本発明の製造方法により製造される液体柔軟剤組成物は、(C)成分として、非イオン界面活性剤を含有することができる。
(C)成分は、乳化時の(B)成分の均一分散、および保存安定性の観点から、下記一般式で示される非イオン界面活性剤が好ましい。
R−O−(CO)−H
〔式中、Rは炭素数8以上18以下のアルキル基又はアルケニル基である。nは平均付加モル数であって、nは15以上50以下の数である。
式中、Rは、好ましくは炭素数10以上、より好ましくは12以上、そして好ましくは16以下、より好ましくは14以下のアルキル基又はアルケニル基であり、更に好ましくは炭素数10以上14以下の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基である。
【0044】
本発明では、(B)成分が、一般式(B1)中のR5bが炭素数1以上、3以下のアルキル基又は炭素数1以上、3以下のヒドロキシアルキル基の化合物、その酸塩及びその4級塩から選ばれる1種以上の化合物に由来するモノマー単位を含有するカチオン性ポリマーである場合、該(B)成分と共に非イオン界面活性剤を存在させて乳化工程を行うことが、(B)成分を均一に分散させる観点から好ましい。
【0045】
本発明に係る液体柔軟剤組成物中の(C)成分の含有量は、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、3.0質量%以下、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下である。
【0046】
〔(D)成分〕
水溶性有機溶媒
本発明の製造方法により製造される液体柔軟剤組成物は、(D)成分として、水溶性有機溶媒を含有することができる。(D)成分は、液体柔軟剤組成物の凍結時の粘度上昇抑制に有効である。
ここで、(D)成分の有機溶媒について、水溶性であるとは、25℃の脱イオン水100gに1.0g以上溶解するものを指す。
(D)成分としては、具体的には、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール及びプロピレングリコールから選ばれる1種以上が好ましく、エタノール、イソプロパノール及びエチレングリコールから選ばれる1種以上がより好ましい。
本発明に係る液体柔軟剤組成物における(D)成分の含有量は、0質量%以上、更に1.0質量%以上、そして、5.0質量%以下、更に3.0質量%以下が好ましい。また、エタノールを含有する場合の含有量は、組成物中、1.0質量%以上、そして、2.5質量%以下、更に2.0質量%以下であることが好ましい。なお、(D)成分に相当する成分は、(A)成分の製造過程での分散媒、(B)成分の溶媒ないし分散媒等として用いることができ、且つそのような形態で(D)成分を含む成分を本発明の柔軟剤組成物の製造方法に用いることができる。そして、そのような形態で液体柔軟剤組成物中に取り込まれた(D)成分についても、前記(D)成分の含有量に取り込むものとする。
【0047】
〔(E)成分〕
pH調整剤
本発明により製造される液体柔軟剤組成物は、(A)成分の第4級アンモニウム化合物の加水分解による分解を抑制する上で、原液のpHを30℃で2.0以上4.0以下に調整することが好ましい。そのために、本発明により製造される液体柔軟剤組成物には、(E)成分としてpH調整剤を配合することが好ましい。pH調整剤として、酸剤及びアルカリ剤から選ばれる成分が挙げられる。
酸剤としては、無機酸又は有機酸が挙げられる。無機酸の具体例としては、塩酸、硫酸が使用できる。有機酸の具体例としては、炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸、又は炭素数1以上20以下の1価又は多価のスルホン酸が挙げられる。より具体的にはメチル硫酸、エチル硫酸、p−トルエンスルホン酸、(o−、m−、p−)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ギ酸、グリコール酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸が挙げられる。
酸剤には、後述するキレート剤として機能するものがあるが、本発明では、キレート剤としても機能する酸剤の量は、キレート剤の量に算入するものとする。
アルカリ剤としては、無機塩基又は有機塩基が挙げられる。無機塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが使用できる。有機塩基の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが挙げられる。
酸剤やアルカリ剤の(E)成分は、組成物のpHが前記範囲になる量で配合され、安定性を損なわない程度の量に制限される。
本発明でのpHの測定は「JIS K 3362;2008の項目8.3に従って、指定温度、指定が無い場合は30℃において測定する。
【0048】
〔(F)成分〕
水溶性無機塩
本発明の製造方法により製造される液体柔軟剤組成物は、(F)成分として、水溶性無機塩を含有することができる。
ここで、(F)成分の無機塩化物について、水溶性であるとは、25℃の脱イオン水100gに10g以上溶解するものを指す。
(F)成分の水溶性無機塩化物としては、アルカリ金属塩化物及びアルカリ土類塩化物から選ばれる化合物が挙げられる。好ましくは、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムから選ばれる化合物であり、より好ましくは、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムから選ばれる化合物、さらに好ましくは塩化カルシウムである。なお、本発明の製造方法により製造される液体柔軟剤組成物の保存時の増粘を抑制するには、(F)成分は、既に乳化された乳化組成物に添加することが好ましい。
本発明に係る液体柔軟剤組成物中の(F)成分の含有量は、0.1質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上であり、1.5質量%以下、好ましくは1.2質量%以下、より好ましくは0.9質量%以下である。
【0049】
〔(G)成分〕
キレート剤
本発明により製造される液体柔軟剤組成物は、水中の銅や鉄などの金属イオンやアルカリ土類金属イオンを捕捉するために、(G)成分として、キレート剤を含有することが好ましい。
本発明において用いられるキレート剤は、水中の銅や鉄などの金属イオンやアルカリ土類金属イオンを捕捉する目的以外に、本発明により製造される液体柔軟剤組成物の保存安定性を向上させるためや、柔軟剤組成物の変色や染料の褪色を抑制するためにも用いられる。
(G)成分としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸やヒドロキシエチリデンジホスホン酸やこれらに比較して生分解性に優れるL−アスパラギン酸二酢酸、S,S−エチレンジアミン二コハク酸、N−2−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸、L−グルタミン酸−N,N−二酢酸、メチルグリシン二酢酸を用いることが出来る。(G)成分としては、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、及びそれらの塩から選ばれる化合物がより好ましい。
本発明に係る液体柔軟剤組成物は、(G)成分を、酸型化合物の換算で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.003質量%以上、更に好ましくは0.005質量%超、より更に好ましくは0.0075質量%以上、そして、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下含有する
【0050】
〔(H)成分〕
シリコーン
柔軟剤組成物の使用時の起泡を抑制する上で、また繊維製品の風合いや感触の向上のために、本発明により製造される液体柔軟剤組成物は、(H)成分として、シリコーン化合物を含有すること事が好ましい。
シリコーン化合物としては、一般的なジメチルポリシロキサンや公知の変性シリコーンを挙げることができる。シリコーン化合物はシリカ微粒子と併用することで柔軟剤組成物の抑泡力が向上する。シリカ入りのシリコーンとしては、市販のシリコーン溶液を使用することができる。
(H)成分のシリコーン化合物の含有量は、本発明に係る液体柔軟剤組成物中、0質量%以上、更に0.01質量%以上、そして、2.0質量%以下、更に1.5質量%以下が好ましい。
【0051】
[その他任意成分]
本発明により製造される液体柔軟剤組成物には、柔軟剤に配合することが公知の成分を、本効果を損なわない程度に配合することができる。
本発明により製造される液体柔軟剤組成物は、例えば、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩等の(A)成分以外の界面活性剤、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール等の酸化防止剤、C.I.Acid Blue 5、C.I.Acid Blue9、C.I.Acid Blue 74等の染料、プロキセルBDNとして市販されている防腐剤、柔軟剤組成物や繊維処理剤組成物に配合することが公知の香料組成物、アルコール系香料のケイ酸エステル化物及び香料組成物を包含してマイクロカプセル化したマイクロカプセル香料を含有することができる。
【0052】
本発明により製造される液体柔軟剤組成物は水を含有する。該組成物の残部は水である。水は、脱イオン水、脱イオン水に次亜塩素酸塩を少量配合した滅菌した水、水道水などを用いることができる。
【0053】
<液体柔軟剤組成物の製造方法>
本発明の液体柔軟剤組成物の製造方法は、(A)成分及び水を含む乳化組成物を形成する乳化工程を、(B)成分のカチオン性ポリマーの存在下で行う。その際に(A)成分の質量が水の質量よりも少ない状態で行う。本発明の液体柔軟剤組成物の製造方法は、(A)成分及び水を含む乳化組成物を形成する乳化工程を有し、該乳化工程を(B)成分のカチオン性ポリマーの存在下で且つ質量として(A)成分量よりも水量が多い条件下で行う。
【0054】
乳化組成物に配合される成分に(E)成分が含まれる場合、(A)成分である第4級アンモニウム塩、(B)成分であるカチオン性ポリマー、(E)成分であるpH調整剤、及び水を、以下のいずれか方法で用いて乳化組成物を形成することができる。すなわち、本発明では、液体柔軟剤組成物に(E)成分を配合する場合、下記(i)〜(vii)の何れかの方法により、(A)成分及び水を含む乳化組成物を形成する乳化工程を行うことができる。
但し、乳化工程は(A)成分量に対して水の量が多い状態で行う必要がある。例えば(A)成分を含む液状組成物に、水又は水を含む水性組成物を添加するような方法で乳化工程を開始する場合、一度に水を全部添加してしまうと水の方が多くなる場合があるが、経時的にみると、乳化開始時は、(A)成分の量が水よりも多い状態で乳化を行うことになり、乳化工程時に混合物が増粘するおそれがある。
なお(B)成分は(D)成分の水溶性有機溶媒に溶解ないし分散させた状態で用いてもよく、下記の(i)〜(vii)では水溶性有機溶剤の使用を省略するが、使用する場合の例示も開示しているものとする。従って、下記の(i)〜(vii)の(B)成分には、「(D)成分に溶解ないし分散させた(B)成分」を含む。
(i):(B)成分、(E)成分及び水を混合して得た水性組成物に、(A)成分を添加して乳化を行う方法。
(ii):(B)成分及び水を混合して得た水性組成物に、(A)成分を添加して乳化を行い、乳化中又は乳化後に(E)成分を添加する方法
(iii):(E)成分及び水を混合して得た水性組成物に、(A)成分及び(B)成分の混合物を添加して乳化を行う方法。
(iv):水を含有する水性組成物に、(A)成分及び(B)成分の混合物を添加して乳化を行い、乳化中又は乳化後に(E)成分を添加する方法。
(v):水を含有する水性組成物に、(A)成分、(B)成分及び(E)成分の混合物を添加して乳化を行う方法。
(vi)(B)成分及び水を混合して得た水性組成物に、(A)成分及び(B)成分の混合物を添加して乳化を行い、乳化中又は乳化後に(E)成分を添加する方法。
(vii)(B)成分、(E)成分及び水を混合して得た水性組成物に、(A)成分及び(B)成分の混合物を添加して乳化を行う方法。
【0055】
本発明では、(i)、(ii)、(iii)及び(iv)から選ばれる方法が好ましく、(i)又は(ii)の方法がより好ましい。
【0056】
なお、その他の成分は、安定性に影響しない限り、いずれの時点で配合成分の混合物に配合してもよく、乳化後に配合してもよい。香料組成物のような熱による影響を受けやすい成分は、乳化組成物の冷却後に添加する。(C)成分、(D)成分(但し、(A)成分の製造工程で混入した(D)成分及び(B)成分の溶解又は分散に用いた(D)成分を除く)、(G)成分及び(H)成分から選ばれる1種以上は、上記(i)〜(vi)における水を含む水性組成物に含まれることが好ましい。更には、本発明の製造方法は、液体柔軟剤組成物の配合成分に(C)成分と(H)成分とが含まれており、液体柔軟剤組成物の製造過程で、乳化組成物が形成される前に(C)成分と(H)成分とが共存する状態にあることが好ましい。また(F)成分は乳化工程後に乳化組成物に添加することが好ましい。
【0057】
本発明では、乳化工程を、(A)成分を含有する液体組成物(以下、“液体組成物(La)”という場合もある)を、(B)成分及び水を含有する水性組成物(以下、“水性組成物(Lwb)”という場合もある)に添加して乳化を行うことが好ましい。前記した(i)及び(ii)の方法がこの態様に該当する。
【0058】
(A)成分を含有する液体組成物(La)は、(A)成分の溶融物を含むことが好ましい。(A)成分が室温で固体の場合は、加熱により溶融したものを用いる。液体組成物(La)すべてが(A)成分の溶融物であってもよい。
【0059】
(A)成分を含有する液体組成物(La)中、(A)成分の含有量は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
乳化工程前(B)成分は(A)成分を含有する液体組成物(La)とは異なる溶液に配合していることが好ましい。従って(A)成分を含有する液体組成物(La)中、(B)成分の含有量は、好ましくは1質量%以下、以上、より好ましくは0質量%である。
(A)成分を含有する液体組成物(La)中の水の含有量は少ない方が好ましいが、後述する水溶性有機溶剤等の基材から不可避的に少量の水分が持ち込まれる場合等があることを考慮すると、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0060】
(A)成分を含有する液体組成物(La)は、その他の成分を含有することができる。
(A)成分を含有する液体組成物(La)は、(D)成分の水溶性有機溶媒、好ましくはエタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、エチレングリコール及びグリセリンから選ばれる一種以上、より好ましくはエタノール及びイソプロパノールから選ばれる一種以上、更により好ましくはエタノール、を含有することが好ましい。(A)成分を含有する液体組成物(La)中、(D)成分の水溶性有機溶媒の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0061】
(B)成分及び水を含有する水性組成物(Lwb)中、(B)成分の含有量は、0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、そして、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0062】
(B)成分及び水を含有する水性組成物(Lwb)は、(B)成分以外に、(A)成分以外の成分を含有することができる。その他の成分として例示した成分を含有することができる。(B)成分の製造工程での使い勝手をよくするために、(B)成分を(D)成分の水溶性有機溶媒に溶解ないし分散して用いてもよい。
【0063】
(B)成分及び水を含有する水性組成物(Lwb)は、(C)成分の非イオン界面活性剤を含有することが好ましい。
(B)成分及び水を含有する水性組成物(Lwb)中、非イオン界面活性剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0064】
乳化工程を、(A)成分を含有する液体組成物(La)を、(B)成分及び水を含有する水性組成物(Lwb)に添加して行う場合、前記液体組成物(La)の温度は、(A)成分の融点以上が好ましく、具体的には、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、そして、好ましくは75℃以下、より好ましくは70℃以下である。また、前記水性組成物(Lwb)の温度は、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、そして、好ましくは70℃以下、より好ましくは65℃以下である。
【0065】
本発明では、乳化工程を、(A)成分を含有する液体組成物(La)を(A)成分の融点以上に加熱して、(B)成分及び水を含有する水性組成物(Lwb)に添加して乳化を行うことが好ましい。すなわち、本発明では、乳化工程を、(A)成分の溶融物を含有する液体組成物(La)を、(B)成分及び水を含有する水性組成物(Lwb)に添加して行うことがより好ましい。本発明では、(A)成分を含有する液体組成物(La)は、(A)成分を(A)成分の融点以上に加熱して、又は(A)成分と他の成分との混合物を(A)成分の融点以上に加熱して、調製された(A)成分の溶融物を含む液体組成物が好ましい。
【0066】
(B)成分及び水を含有する水性組成物のpHは、65℃で、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは9以下である。
【0067】
(A)成分及び水を含む乳化組成物を形成する乳化工程では、乳化組成物に配合される成分を攪拌して乳化組成物を形成することが好ましい。
本発明において、(A)成分及び水を含む乳化組成物を形成する乳化工程は、プロペラ式攪拌機、ホモミキサーのような装置を用いて行うことができる。装置は、プロペラ式攪拌機が好ましい。
これらの装置を用いて、液体組成物(La)を水性組成物(Lwb)に添加して攪拌することで乳化を行うことができる。その場合、受け手側(添加される側)である水性組成物(Lwb)をゆるやかに攪拌した状態で液体組成物(La)を少しずつ添加し、攪拌して乳化を行うことが好ましい。
前記の装置は、撹拌翼(インペラ)を有する。撹拌翼はファン型、プロペラ型、タービン型のような形状を有するものが好ましい。
乳化の際の装置の撹拌条件は製造品の保存安定性の観点から、撹拌翼がプロペラ型である場合、周速0.5〜10m/sで攪拌することが好ましい。
液体組成物(La)又は水性組成物(Lwb)を添加する速度は製造のスケールによって異なる。
このようにして得られた乳化組成物は、製造後の保存時に良好な安定性を示すものとなる。
【0068】
本発明では、保存時の粘度上昇抑制の観点から、液体柔軟剤組成物に配合される(A)成分の全量と(B)成分の全量が混合された時点における(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)が、好ましくは10以上、より好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上、そして、好ましくは200以下、より好ましくは170以下、さらに好ましくは100以下である。この質量比は、液体柔軟剤組成物における(A)成分と(B)成分の質量比である。本発明では、(B)成分を、前記(A)/(B)の質量比の範囲となるように存在させて、乳化工程を開始することが好ましい。
また、本発明では、増粘を抑制し均一な乳化組成物を得る観点から、(B)成分の存在下に行う乳化工程では、乳化終了の時点で、乳化の対象となる混合物、即ち乳化組成物の粘度が、65℃で、好ましくは10mPa・s以上、そして、好ましくは500mPa・s以下、より好ましくは300mPa・s以下である。
更に、本発明では、増粘を抑制し均一な乳化組成物を得る観点から、(B)成分の存在下に行う乳化工程では、乳化開始から乳化終了までの間、乳化の対象となる混合物の粘度が、65℃で、好ましくは10mPa・s以上、そして、好ましくは500mPa・s以下、より好ましくは300mPa・s以下である。
なお、これらの粘度は、実施例の「乳化工程での粘度」と同様の方法で測定されたものである。
【0069】
本発明では、最終的に液体柔軟剤組成物に配合される(A)成分の全量のうち、90質量%以上、更に95質量%以上、更に100質量%、すなわち(A)成分の全量を、乳化工程で用いることが好ましい。
また、本発明では、最終的に液体柔軟剤組成物に配合される(B)成分の全量のうち、90質量%以上、更に95質量%以上、更に100質量%、すなわち(B)成分の全量を、乳化工程で用いることが好ましい。
【0070】
(A)成分及び(B)成分以外の成分は、液体柔軟剤組成物を製造する工程のいずれかで用いることができる。(F)成分の水溶性無機塩は、液体柔軟剤組成物の保存時の粘度上昇抑制の観点から、乳化工程の後に乳化組成物に添加することが好ましい。したがって、本発明では、乳化工程で形成された乳化組成物に、(F)成分の水溶性無機塩を添加する工程を有することが、液体柔軟剤組成物の保存時の粘度上昇抑制の観点から好ましい。(F)成分の水溶性無機塩は、液体柔軟剤組成物に対して、0.3質量%以上、1.0質量%以下の割合となるように添加することが好ましい。
【0071】
液体柔軟剤組成物中の(A)成分の含有量は、15質量%以上、より好ましくは18質量%以上、そして、30質量%以下、好ましくは25質量%以下である。
また、液体柔軟剤組成物中の(B)成分の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
さらに、液体柔軟剤組成物中の水の量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0072】
本発明の液体柔軟剤組成物の好ましい製造方法として、以下のものが挙げられる。この製造方法には、上記で述べた事項を適宜適用することができる。
(A)成分を含有する液体組成物(La)、更に(A)成分の溶融物を含有する液体組成物(La)を、(B)成分と水とを含有する水性組成物(Lwb)に添加して混合物とし、該混合物を攪拌して、(A)成分を乳化粒子とする乳化組成物を調製する工程を有する、液体柔軟剤組成物の製造方法。さらには、乳化組成物を調製する前記工程で調製された乳化組成物に、(F)成分、好ましくは水溶性カルシウム塩を添加する工程を有する、前記液体柔軟剤組成物の製造方法。
この場合、乳化のための撹拌は、液体組成物を水性組成物に添加する前から行われていてもよく、添加中又は添加後に行ってもよい。
【0073】
(A)成分及び水を含む乳化組成物を形成する乳化工程の全てを経た乳化組成物が、そのまま目的とする液体柔軟剤組成物であってもよい。また、(A)成分及び水を含む乳化組成物に、更に他の工程を適用して、目的とする液体柔軟剤組成物を得てもよい。
【0074】
本発明は、衣料等の繊維製品用の液体柔軟剤組成物の製造方法として好適である。
【実施例】
【0075】
<衣料用液体柔軟剤組成物の調製方法>
〔調製方法1〕
300mLのガラスビーカーに、タービン型羽が3枚ついた攪拌羽を設置(攪拌羽底部がビーカー底面より1cm上部になるように設置)し、衣料用液体柔軟剤組成物の出来上がり質量が300gになるのに必要な量のイオン交換水(つまり組成物の残部に相当するイオン交換水)のうち、95質量%に相当する量のイオン交換水を入れ、ウォーターバスで65℃まで昇温した。450rpmで攪拌しながら、溶融した(C)成分(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、(H)成分(シリコーン)を添加した。次いで、(B)成分を添加した後、(G)成分(キレート剤)を添加した。一部の実施例では、(B)成分を添加した後、(E)成分(塩酸)を添加し1分間攪拌後、(G)成分を添加した。これにより、(B)成分と水とを含有する水性組成物(Lwb)が調製された。この水性組成物(Lwb)のpHは、65℃で、2.5〜3.5であった。
【0076】
(A)成分と(D)成分(エチレングリコール)を65℃で混合し、(A)成分が溶融した水分量1.0質量%以下の液体組成物(La)を調製した。
【0077】
65℃の液体組成物(La)を65℃の水性組成物(Lwb)に添加して乳化工程を開始し、さらに65℃で5分間攪拌して乳化工程を行い、乳化組成物を得た。実施例3では、乳化工程で得られた乳化組成物に(F)成分(塩化カルシウム)を添加し、5分間攪拌した。
【0078】
乳化工程で得られた乳化組成物、又は乳化工程で得られた乳化組成物に(F)成分(塩化カルシウム)を添加して得られた乳化組成物を、5℃のウォーターバスで30℃まで冷却し、表1の組成の衣料用液体柔軟組成物を得た。
【0079】
〔調製方法2〕
300mLのガラスビーカーに、タービン型羽が3枚ついた攪拌羽を設置(攪拌羽底部がビーカー底面より1cm上部になるように設置)し、衣料用液体柔軟剤組成物の出来上がり質量が300gになるのに必要な量のイオン交換水(つまり組成物の残部に相当するイオン交換水)のうち、95質量%に相当する量のイオン交換水を入れ、ウォーターバスで65℃まで昇温した。450rpmで攪拌しながら、溶融した(C)成分(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、(H)成分(シリコーン)を添加した。次いで、(B)成分を添加した後、(E)成分(塩酸)を添加した。次いで(G)成分(キレート剤)、(F)成分(塩化カルシウム)を添加した。これにより、(B)成分と水とを含有する水性組成物(Lwb)が調製された。この水性組成物(Lwb)のpHは、65℃で、3.0であった。
【0080】
(A)成分と(D)成分(エチレングリコール)を65℃で混合し、(A)成分が溶融した水分量1.0質量%以下の液体組成物(La)を調製した。
【0081】
65℃の液体組成物(La)を65℃の水性組成物(Lwb)に添加して乳化工程を開始し、さらに65℃で5分間攪拌して乳化工程を行い、乳化組成物を得た。
得られた乳化組成物を、5℃のウォーターバスで30℃まで冷却し、表1の組成の衣料用液体柔軟組成物を得た。
【0082】
〔調製方法3〕
300mLのガラスビーカーに、タービン型羽が3枚ついた攪拌羽を設置(攪拌羽底部がビーカー底面より1cm上部になるように設置)し、衣料用液体柔軟剤組成物の出来上がり質量が300gになるのに必要な量のイオン交換水(つまり組成物の残部に相当するイオン交換水)のうち、95質量%に相当する量のイオン交換水を入れ、ウォーターバスで65℃まで昇温した。450rpmで攪拌しながら、溶融した(C)成分(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、(H)成分(シリコーン)を添加した。次いで、(G)成分(キレート剤)を添加した。これにより、(B)成分を含まない水性組成物が調製された。この水性組成物のpHは、65℃で、3.05であった。
【0083】
(A)成分と(D)成分(エチレングリコール)を65℃で混合し、(A)成分が溶融した水分量1.0質量%以下の液体組成物(La)を調製した。
【0084】
65℃の液体組成物(La)を65℃の前記水性組成物に添加して乳化工程を開始し、さらに65℃で5分間攪拌して乳化工程を行い、乳化組成物を得た。
【0085】
この乳化組成物に(B)成分、(E)成分(塩酸)を添加し、5分間攪拌し、乳化組成物を得た。得られた乳化組成物に(F)成分(塩化カルシウム)を添加し、5分間攪拌した。
【0086】
(F)成分を添加して得られた乳化組成物を、5℃のウォーターバスで30℃まで冷却し、表1の組成の衣料用液体柔軟組成物を得た。
【0087】
<乳化工程での粘度>
乳化工程で得られた乳化組成物又は乳化工程で得られた乳化組成物に(F)成分を添加して得られた乳化組成物を65℃に調温し5分間撹拌した後、1分以内に粘度を測定した。粘度の測定はB型粘度計(東機産業:VISCOMETER TVB-10)を用いて、60rpmで1分間せん断をかけて測定を行った。ローターは粘度計の数値が20〜80の範囲になるものを選択する。対象ローターが複数になる場合或いは満たすローターが無い場合は、当該数値範囲に近いものを採用する。
結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
<衣料用液体柔軟剤組成物の粘度>
塩化カルシウムの添加時期が異なる調製方法で製造された実施例3及び実施例11の衣料用液体柔軟剤組成物については、最終的に得られた組成物の30℃での粘度を測定した。ここで、組成物の粘度は、調製後、20℃で保管し、1日経過した後の組成物の粘度である。粘度の測定は、衣料用液体柔軟剤組成物をサンプル瓶に入れ、B型粘度計(東機産業:VISCOMETER TVB-10)を用いて、30℃恒温槽中でサンプル瓶を水に浸した状態で、60rpmで1分間せん断をかけて測定を行った。ローターの選択は乳化工程での粘度の測定と同様とした。結果を表2に示す。なお、表2には、比較例1及び比較例2の粘度も示した。
【0090】
【表2】
【0091】
表中の成分は以下のものである。
・a−1:下記合成例a−1で得られた第4級アンモニウム塩混合物(融点38.0℃) 表中のa−1の数値(質量%)は、a−1の有姿での含有濃度である。a−1中の(A)成分濃度は80質量%である。
・b−1:下記合成例b−1で得られたジメチルアミノエチルメタクリレート−ラウリルメタクリレート共重合体、Mw14000(PEG換算)
・b−2:下記合成例b−2で得られたポリ(2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド)、Mw10000(PEG換算)
・b−3:下記合成例b−3で得られたポリ(2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド)、Mw58000(PEG換算)
・b−4:下記合成例b−4で得られたポリ(2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド)、Mw100000(PEG換算)
・b−5:下記合成例b−5で得られたポリ(2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド)、Mw230000(PEG換算)
・b−6:ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムクロライド)、[Mw100000(PEG換算)、ユニセンスFPA102L、センカ株式会社製]
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル:アルキル基の炭素数12(ラウリルアルコール由来)、エチレンオキシドの平均付加モル数29
・キレート剤:メチルグリシン2酢酸ナトリウム[トリロンMリキッド、BASF社製]
・シリコーン:シリコーンKHE−55B(信越化学工業株式会社製)(風合い改善助剤として使用)
【0092】
<合成例a−1> a−1の合成
パーム油を原料とした酸価206.9mgKOH/gの脂肪酸と、トリエタノールアミンとを、反応モル比1.65/1(脂肪酸/トリエタノールアミン)で、脱水縮合反応させて、N,N−ジアルカノイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチルアミンを主成分とする縮合物を得た。
【0093】
次にこの縮合物のアミン価を測定し、該縮合物に対してジメチル硫酸を0.95当量用い、4級化を行ない、N,N−ジアルカノイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェートを主成分とし、エタノール10質量%を含有する第4級アンモニウム塩混合物(以下、a−1という)を得た。但し、ここでいう“アルカノイル”の用語には、アルカノイルがパーム油原料の脂肪酸残基であるため、飽和脂肪酸以外に不飽和脂肪酸由来の残基、例えばアルケノイル等も含むものとする。また、前記縮合物及びa−1を得るための調製手順や反応条件は、特開2010−209493号公報の合成例2に従って行った。
a−1が含む第4級アンモニウム塩中、アルカノイル基を1つ有する第4級アンモニウム塩である(モノアルカノイル)成分の割合は30質量%、アルカノイル基を2つ有する第4級アンモニウム塩である(ジアルカノイル)成分の割合は55質量%、アルカノイル基を3つ有する第4級アンモニウム塩である(トリアルカノイル)成分の割合は15質量%であった。ここで、(モノアルカノイル)成分はパーム油原料の脂肪酸残基を1つ有する化合物であり、(ジアルカノイル)成分はパーム油原料の脂肪酸残基を2つ有する化合物であり、(トリアルカノイル)成分はパーム油原料の脂肪酸残基を3つ有する化合物である。
a−1は、4級化率が92質量%であり、(モノアルカノイル)成分、(ジアルカノイル)成分、(トリアルカノイル)成分、エタノール以外に、ジエステル構造体及びトリエステル構造体の3級アミン化合物、微量のトリエタノールアミン及びその4級化物、並びに微量の脂肪酸を含んでいた。
【0094】
<合成例b−1> b−1の合成
プロペラ式攪拌機、窒素導入管、ジムロート還流器、温度計を備えた1L4つ口セパラブルフラスコを一定時間窒素置換した。そこにプロピレングリコールモノメチルエーテルを73.3g添加し、撹拌しながら内容物温度が80℃になるまで加熱し、保持した。
別途ジメチルアミノエチルメタクリレート213.6g(1.36mol)、ラウリルメタクリレート86.4g(0.34mol)、プロピレングリコールモノメチルエーテル164.1gを均一に混合したモノマー溶液を作製した。
また、2,2’―アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(v−65B:和光純薬工業(株)製)4.22g、プロピレングリコールモノメチルエーテル40.11gを均一に混合した開始剤溶液も別途作製した。
モノマー溶液と開始剤溶液を上記セパラブルフラスコ中に3時間かけて滴下した。次に2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製、v−65B)8.44gをプロピレングリコールモノメチルエーテル75.9gに溶解した溶液を上記フラスコに4時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、80℃で2時間保持し、その後プロピレングリコールモノメチルエーテルを添加することにより、(b)成分であるジメチルアミノエチルメタクリレートとラウリルメタクリレートの共重合体(b−1)を含有するポリマー溶液1563gを得た。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は14000であった。またH−NMRより分析したこの共重合体の組成は、ジメチルアミノエチルメタクリレート/ラウリルメタクリレート=8/2(モル比)であった。ポリマー溶液の組成は、ジメチルアミノエチルメタクリレートとラウリルメタクリレートの共重合体(b−1)20質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル80質量%であった。このポリマー溶液を、共重合体(b−1)の量が表1の通りとなるように用いた。
【0095】
<合成例b−2> b−2の合成
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管のついた反応器に、2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド(QDM)50.0g、及び重合溶媒イソプロピルアルコール200.0gと、重合開始剤V−65B(和光純薬工業(株)製)6.0gを仕込み、85℃にて6時間重合反応を行った。その後、アセトン3000.0gで再沈殿させた後に乾燥させることで、ポリ(2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド)(b−2)(Mw10000)を得た。
【0096】
<合成例b−3> b−3の合成
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管のついた反応器に、2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド(QDM)50.0g、及び重合溶媒として水50.0gと、重合開始剤として過硫酸ナトリウム(和光純薬(株)製)2.3gを仕込み、80℃にて6時間重合反応を行った。その後、アセトン3000.0gで再沈殿させた後に乾燥させることで、ポリ(2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド)(b−3)(Mw58000)を得た。
【0097】
<合成例b−4> b−4の合成
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管のついた反応器に、2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド(QDM)100.0g、及び重合溶媒エタノール150.0gと、重合開始剤V−65B(和光純薬(株)製)0.4gを仕込み、70℃にて6時間重合反応を行った。その後、アセトン3000.0gで再沈殿させた後に乾燥させることで、ポリ(2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド)(b−4)(Mw100000)を得た。
【0098】
<合成例b−5> b−5の合成
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管のついた反応器に、2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド(QDM)100.0g、及び重合溶媒としてエタノール66.7gと、重合開始剤V−65B(和光純薬(株)製)0.1gを仕込み、85℃にて6時間重合反応を行った。その後、アセトン3000.0gで再沈殿させた後に乾燥させることで、ポリ(2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド)(b−5)(Mw230000)を得た。
【0099】
表1の組成の衣料用液体柔軟剤組成物に、更に、その他任意成分である、香料成分、防腐剤、消泡剤としてのシリコーン((H)成分に相当)、および染料等を配合することができる。その場合は、乳化工程で得られた乳化組成物、もしくは乳化工程で得られた乳化組成物に(F)成分を添加して得られた乳化組成物、又はこれらを冷却した後の組成物に、当該その他任意成分を添加した後、攪拌して衣料用液体柔軟組成物を得ることができる。