特許第6704683号(P6704683)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6704683油相及び水相を含有する液体調味料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704683
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】油相及び水相を含有する液体調味料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/60 20160101AFI20200525BHJP
   A23D 7/02 20060101ALI20200525BHJP
   A23D 9/02 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   A23L27/60 A
   A23D7/02
   A23D9/02
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-125939(P2015-125939)
(22)【出願日】2015年6月23日
(65)【公開番号】特開2016-26487(P2016-26487A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2018年3月22日
(31)【優先権主張番号】特願2014-129550(P2014-129550)
(32)【優先日】2014年6月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 綾
(72)【発明者】
【氏名】椎葉 大介
【審査官】 小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06147237(US,A)
【文献】 特開平09−235584(JP,A)
【文献】 特開2011−195621(JP,A)
【文献】 特開2013−018970(JP,A)
【文献】 特開2012−201771(JP,A)
【文献】 特開2005−204653(JP,A)
【文献】 特開平08−154576(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/102477(WO,A1)
【文献】 国際公開第01/096506(WO,A1)
【文献】 特開平07−305088(JP,A)
【文献】 特開2011−205924(JP,A)
【文献】 特開2013−049829(JP,A)
【文献】 米国特許第05855944(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00−27/40;27/60
A23D 7/00− 9/06
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程(1−1)、(1−2)、(2)及び(3):
(1−1)80℃以下の温度で、アマニ油、エゴマ油、藻油及び魚油から選ばれる1種又は2種以上を含む油脂に0.1〜20質量%濃度のアスコルビン酸又はその塩の水溶液を、前記油脂に対して10〜100質量%添加して撹拌する工程、
(1−2)工程(1−1)の後、油脂に水を接触させ油水分離を行う水洗工程、
(2)工程(1−2)後の油脂と水蒸気とを、130℃以上で、減圧下、接触させる工程、
(3)工程(2)で得られる油脂を油相成分として水相と接触させる工程
を含む、液体調味料の製造方法。
【請求項2】
次の工程(1−1’)、(2’)及び(3):
(1−1’)80℃以下の温度で、アマニ油、エゴマ油、藻油及び魚油から選ばれる1種又は2種以上を含む油脂に0.00001〜1質量%濃度のアスコルビン酸又はその塩の水溶液を、前記油脂に対して1〜10質量%添加して撹拌する工程、
(2’)工程(1−1’)の後、油脂に水を接触させ油水分離を行う水洗工程を行わずに、油脂と水蒸気とを、130℃以上で、減圧下、接触させる工程、
(3)工程(2’)で得られる油脂を油相成分として水相と接触させる工程
を含む、液体調味料の製造方法。
【請求項3】
油相/水相の質量比が10/90〜80/20である請求項1又は2記載の液体調味料の製造方法。
【請求項4】
液体調味料がマヨネーズである請求項1〜のいずれか1項記載の液体調味料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油相及び水相を含有する液体調味料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドレッシング等の油相及び水相を含有する液体調味料は、通常、水を含有する水相を調製した後、これに油脂を含有する油相を接触させることにより製造されている。液体調味料は、安定性の高いことが必要であるが、経時的に空気中の酸素によって油脂の酸化が進行し、著しく風味が劣化してしまう。
そこで、従来、液体調味料を酸素透過性の低い樹脂製容器に封入したり、液体調味料に酸化防止剤を含有させたりして油脂の酸化による風味の劣化を防止することが行われている。
【0003】
一方、加熱調理油の酸化安定性を向上させる技術として、油脂難溶性の有機酸を油脂に含有させる技術が検討され、例えば、アスコルビン酸、エリソルビン酸又はリンゴ酸を所定量油脂中に含まれるように水溶液の状態で油脂中に添加し、減圧条件で脱水処理する、フライ又は炒めに使用される油脂であって、加熱に際し生じる加熱臭及び/又は加熱劣化臭を抑制した、油脂の製造法(特許文献1)、有機酸及び/又はその塩類を粉末の状態で油脂中に添加し所定条件下で撹拌した後、ろ過して清澄な油脂を得る有機酸及び/又はその塩類を含有する油脂の製造方法(特許文献2)、リン分とアスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸誘導体を所定量含有する油脂組成物(特許文献3)等が報告されている。
また、脱臭工程において、グリセリド組成物に、所定量のクエン酸、アスコルビン酸、又はクエン酸モノグリセリドを添加し、油脂の自動酸化と低温下での保存時に生じる戻り物質の生成を抑制するグリセリド組成物の製造方法(特許文献4)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2001/096506号
【特許文献2】特開2012−201771号公報
【特許文献3】特開2011−205924号公報
【特許文献4】特開2013−49829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、油相及び水相を含有する液体調味料を調製するにあたって、特に油相として不飽和度の高い油脂を使用した場合、従来の方法でも保存中の風味保持は十分ではない。
したがって、本発明は、保存に伴う風味劣化が抑制された液体調味料及びその製造方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、油相及び水相を含有する液体調味料を調製するにあたって油相に予め有機酸を含有させることを試みたが、油相自体の経時的な酸化は抑制できるものの、当該油相を用いた液体調味料の経時的な風味劣化は抑制できないことが判明した。そこでさらに鋭意研究を行った結果、80℃以下の温度で、油相として用いる油脂に所定の有機酸の水溶液を添加した後、所定の条件で水蒸気を接触させる処理を行えば、液体調味料の経時的な風味の劣化を抑制できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の工程(1)、(2)及び(3):
(1)80℃以下の温度で、油脂にアスコルビン酸、ヒドロキシ酸及びそれらの塩から選択される少なくとも1種の水溶液を添加して撹拌する工程、
(2)工程(1)後の油脂と水蒸気とを、減圧下、接触させる工程、
(3)工程(2)で得られる油脂を油相成分として水相と接触させる工程
を含む、液体調味料の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、次の(1)及び(2)の工程を含む方法により得られる油脂を含有する油相及び水相を含有する液体調味料を提供するものである。
(1)80℃以下の温度で、油脂にアスコルビン酸、ヒドロキシ酸及びそれらの塩から選択される少なくとも1種の水溶液を添加して撹拌する工程、
(2)工程(1)後の油脂と水蒸気とを、減圧下、接触させる工程
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、保存後も風味が良好な油相及び水相を含有する液体調味料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の液体調味料の製造方法は、80℃以下の温度で、油脂にアスコルビン酸、ヒドロキシ酸及びそれらの塩から選択される少なくとも1種の水溶液を添加して撹拌する工程(1)と、当該工程(1)後の油脂と水蒸気とを、減圧下、接触させる工程(2)と、工程(2)で得られる油脂を油相成分として水相と接触させる工程(3)とを含む。
また、本発明の液体調味料は、前記(1)及び(2)の工程を含む方法により得られる油脂を含有する油相及び水相を含有する。
【0010】
〔工程(1)〕
本発明の方法では、まず、80℃以下の温度で、油脂にアスコルビン酸、ヒドロキシ酸及びそれらの塩から選択される少なくとも1種の水溶液を添加して撹拌する。
本発明の方法に供する油脂は、食用油脂として使用できるものであれば特に制限はなく、例えば、大豆油、菜種油、サフラワー油、米油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、ハトムギ油、小麦胚芽油、シソ油、アマニ油、エゴマ油、サチャインチ油、クルミ油、キウイ種子油、サルビア種子油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、椿油、茶実油、ボラージ油、パーム油、パームオレイン、パームステアリン、やし油、パーム核油、カカオ脂、サル脂、シア脂、藻油等の植物性油脂;魚油、ラード、牛脂、バター脂等の動物性油脂;あるいはそれらのエステル交換油、水素添加油、分別油等の油脂類を挙げることができる。これらの油は、それぞれ単独で用いてもよく、あるいは適宜混合して用いてもよい。なかでも、使用性の点から、低温耐性に優れた液状油脂を用いるのが好ましく、更に大豆油、菜種油、サフラワー油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、ハトムギ油、小麦胚芽油、シソ油、アマニ油、エゴマ油等の植物油、藻油及び魚油から選ばれる1種又は2種以上を用いるのが好ましく、更にアマニ油、エゴマ油、藻油及び魚油から選ばれる1種又は2種以上を用いるのが好ましい。更に、アマニ油、エゴマ油、藻油及び魚油から選ばれる1種又は2種以上と大豆油、菜種油、サフラワー油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油及びゴマ油から選ばれる1種又は2種を混合して用いることが好ましく、更にアマニ油、藻油及び魚油から選ばれる1種又は2種以上と大豆油、菜種油、ヒマワリ油、オリーブ油及びゴマ油から選ばれる1種又は2種を混合して用いることが好ましく、更にアマニ油と菜種油を混合するか、魚油と菜種油を混合して用いるのが好ましい。
【0011】
アマニ油、エゴマ油、魚油及び藻油から選ばれる油脂の含有量は、工程(1)に付す油脂全量中、1質量%(以下、「%」とする)以上、更に2%以上、更に3%以上、更に5%以上が好ましく、また、75%以下、更に50%以下、更に20%以下、更に15%以下であることが好ましい。また、工程(1)に付す油脂全量中のアマニ油及び/又はエゴマ油の含有量は、5%以上、更に10%以上、更に15%以上が好ましく、また、90%以下、更に80%以下、更に70%以下が好ましい。また、工程(1)に付す油脂全量中のアマニ油及び/又はエゴマ油の含有量は、5〜90%、更に10〜80%、更に15〜70%が好ましい。
また、工程(1)に付す油脂全量中の魚油及び藻油から選ばれる1種又は2種以上の油脂の含有量は、1%以上、更に2%以上、更に3%以上、更に5%以上が好ましく、また、100%以下、更に80%以下、更に50%以下、更に25%以下が好ましい。工程(1)に付す油脂全量中の魚油及び藻油から選ばれる1種又は2種以上の油脂の含有量は、1〜100%、更に2〜80%、更に3〜50%、更に5〜25%が好ましい。魚油とは、水産動物油脂であり、例えば、イワシ、ニシン、サンマ、サバ、マグロ、イカ、たら肝臓等の原料から採取することができる。また、食用油脂は、精製工程を経た精製油脂であるのが好ましい。
なお、液状油脂とは、基準油脂分析試験法2.3.8−27による冷却試験を実施した場合、20℃で液状である油脂をいう。
【0012】
油脂を構成する脂肪酸は特に限定されず、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよいが、本発明の効果が有効に発揮される点から、構成脂肪酸中の60〜100%が不飽和脂肪酸であることが好ましく、より好ましくは70〜100%、更に75〜99%、更に80〜98%が不飽和脂肪酸であるのが好ましい。不飽和脂肪酸の炭素数は14〜24、更に16〜22であるのが生理効果の点から好ましい。構成脂肪酸中、多価不飽和脂肪酸を含有することが、本発明の効果を有効に発揮する点から好ましく、α−リノレン酸(C18:3、ALA)、エイコサペンタエン酸(C20:5、EPA)及びドコサヘキサエン酸(C22:6、DHA)から選択される多価不飽和脂肪酸を含有することが更に好ましい。
【0013】
工程(1)は、液体調味料の経時的な風味劣化を抑える点、液体調味料の保存安定性の点から、80℃以下の温度で行われる。工程(1)における温度は、75℃以下、更に70℃以下が好ましく、また、油脂とアスコルビン酸、ヒドロキシ酸又はそれらの塩との接触を促すという点から、15℃以上、更に20℃以上、更に40℃以上が好ましい。工程(1)における温度は、15〜80℃、更に20〜75℃、更に40〜70℃が好ましい。
所望する温度で油脂とアスコルビン酸、ヒドロキシ酸又はそれらの塩との接触を行う方法としては、油脂と有機酸の水溶液の温度を各々調整してから両者を接触させてもよいが、油脂に有機酸の水溶液を添加した後、加温調整するのが簡便で好ましい。なお、工程(1)の温度は、有機酸の水溶液を添加した後の油脂の温度を測定することで測定できる。
【0014】
本発明で用いられるヒドロキシ酸は、1分子中にカルボキシル基とアルコール性水酸基とをもつ化合物の総称であり、例えば、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。アスコルビン酸には、立体異性体であるL−アスコルビン酸及びエリソルビン酸が含まれる。
アスコルビン酸及びヒドロキシ酸の塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、更にナトリウム塩及びカリウム塩が好ましく、更にナトリウム塩が好ましい。
なかでも、アスコルビン酸、ヒドロキシ酸又はそれらの塩は、液体調味料の保存安定性及び風味の点から、L−アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、エリソルビン酸及びそれらの塩から選択される一種以上が好ましく、更にL−アスコルビン酸、エリソルビン酸及びそれらの塩から選択される一種以上が好ましく、更にL−アスコルビン酸ナトリウムが好ましい。
【0015】
後述の水洗工程を行う場合には、アスコルビン酸、ヒドロキシ酸又はそれらの塩の水溶液の濃度は、保存安定性の点から、0.1%以上が好ましく、更に0.2%以上が好ましく、また、液体調味料の風味の観点から、20%以下が好ましく、更に10%以下が好ましく、更に5%以下が好ましく、更に2%以下が好ましい。また、アスコルビン酸、ヒドロキシ酸又はそれらの塩の水溶液の濃度は、0.1〜20%、更に0.2〜10%、更に0.2〜5%、更に0.2〜2%が好ましい。
また、水洗工程を行う場合のアスコルビン酸、ヒドロキシ酸又はそれらの塩の水溶液の添加量は、液体調味料の保存安定の性の点から、油脂に対して、10%以上が好ましく、更に20%以上が好ましく、更に30%以上が好ましく、また、工業生産性の点から、油脂に対して、100%以下が好ましく、更に80%以下が好ましく、更に60%以下が好ましい。また、アスコルビン酸、ヒドロキシ酸又はそれらの塩の水溶液の添加量は、油脂に対して、10〜100%、更に20〜80%、更に30〜60%が好ましい。
【0016】
後述の水洗工程を行わない場合には、アスコルビン酸、ヒドロキシ酸又はそれらの塩の水溶液の濃度は、液体調味料の保存安定性の点から、0.00001%以上が好ましく、更に0.00002%以上が好ましく、更に0.00005%以上が好ましく、更に0.0001%以上が好ましく、また、液体調味料の風味の点から、1%以下、更に0.5%以下、更に0.2%以下、更に0.1%以下、更に0.01%以下、更に0.001%以下、更に0.0003%以下が好ましい。また、アスコルビン酸、ヒドロキシ酸又はそれらの塩の水溶液の濃度は、0.00001〜1%、更に0.00002〜0.5%、更に0.00005〜0.2%、更に0.0001〜0.1%、更に0.0001〜0.01%、更に0.0001〜0.001%、更に0.0001〜0.0003%が好ましい。
また、水洗工程を行わない場合のアスコルビン酸、ヒドロキシ酸又はそれらの塩の水溶液の添加量は、液体調味料の保存安定の性の点から、油脂に対して、1%以上が好ましく、更に2%以上が好ましく、更に3%以上が好ましく、工業生産性の点から、油脂に対して、10%以下が好ましく、更に8%以下が好ましく、更に6%以下が好ましい。また、アスコルビン酸、ヒドロキシ酸又はそれらの塩の水溶液の添加量は、油脂に対して、1〜10%、更に2〜8%、更に3〜6%が好ましい。
【0017】
撹拌条件は、適宜調整することができるが、200〜1000r/minにて、10分〜5時間の間の条件で調整することが好ましい。また、撹拌時の温度は、油脂の劣化を加速しない程度に、油脂とアスコルビン酸、ヒドロキシ酸又はそれらの塩との接触を促すという点から、15〜80℃、更に20〜75℃、更に40〜70℃が好ましい。このとき、窒素等の不活性ガスの気流下とすることが好ましい。
【0018】
撹拌後、油脂と水相を分離し、油脂を得る手段としては、例えば、静置分離、遠心分離等が挙げられる。分離条件は適宜調整することができるが、常圧で、3000〜10000r/minにて、5〜30分間の条件で調整することが好ましい。
また、次いで、減圧による脱水を行ってもよい。脱水条件は、適宜調整することができるが、例えば、60〜90℃、0.01〜5kPaの条件で調整することが好ましい。
【0019】
〔工程(2)〕
次に、工程(1)後の油脂と水蒸気とを、減圧下、接触させる処理を行う。
油脂と水蒸気とを接触させる方法としては、減圧水蒸気蒸留が挙げられ、バッチ式、半連続式、連続式等で行ってもよい。処理すべき油脂の量が少量の場合はバッチ式を用い、多量の場合は半連続式、連続式を用いることが好ましい。
半連続式装置としては、例えば数段のトレイを備えた脱臭塔からなるガードラー式脱臭装置等を用いることができる。本装置は、上部から油脂を供給し、トレイ上で油脂と水蒸気の接触を適当な時間行った後、油脂を下段のトレイへ下降させ、間欠的に次々と下降しながら移動することにより処理を行うものである。
連続式装置としては、薄膜状の油脂と水蒸気を接触させることが可能な薄膜脱臭装置等を用いることができる。
【0020】
油脂と水蒸気とを接触させる際の温度は、脱臭効率の点から、70℃以上、更に100℃以上、更に130℃以上、更に150℃以上、更に160℃以上が好ましく、トランス酸の生成抑制の点から、200℃以下、更に190℃以下、更に180℃以下が好ましい。また、油脂と水蒸気とを接触させる際の温度は、70〜200℃であることが好ましく、更に100〜190℃、更に130〜180℃、更に150〜180℃、更に160〜180℃が好ましい。なお、本発明において、油脂と水蒸気とを接触させる際の温度は、水蒸気を接触させる油脂の温度である。
【0021】
油脂と水蒸気との接触時間は、脱臭効率の点から、0.5分以上、更に5分以上、更に10分以上、更に20分以上が好ましく、トランス酸の生成抑制の点から、90分以下、更に60分以下、更に50分以下、更に40分以下が好ましい。また、油脂と水蒸気との接触時間は、0.5〜90分であることが好ましく、更に5〜60分、更に10〜50分、更に20〜40分が好ましい。
【0022】
また、油脂と水蒸気を接触させる際の圧力は、減圧下であるが、脱臭効率及び工業生産性の点から、5kPa以下、更に0.01〜4kPa、更に0.03〜1kPa程度が好ましい。
【0023】
油脂に接触させる水蒸気の量は、油脂に対して0.3〜20%/hr、更に0.5〜10%/hrとすることが脱臭効率及び工業生産性の点から好ましい。
【0024】
本発明の方法においては、工程(2)に先立ち、油脂に水を接触させ、油水分離を行う水洗工程を行ってもよい。水洗工程を行うことで、一層風味良好な液体調味料を得ることができる。
油脂に水を接触させる方法としては、例えば、油脂水を混合・撹拌し濾別するバッチ式が挙げられる。このとき、窒素等の不活性ガスの気流下とすることが好ましい。
水としては、例えば、水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水が例示される。
【0025】
水の使用量は、水溶性成分が十分に除去できるという点から、油脂に対して、1%以上が好ましく、更に3%以上、更に5%以上が好ましく、油脂に対して、50%以下、更に30%以下、更に20%以下が好ましい。また、水の使用量は、油脂に対して、更に1〜50%、更に3〜30%、更に5〜20%が好ましい。前記水の使用量は水洗1回あたりの値である。
【0026】
水の温度は、油脂と水とを十分に接触させる点から、80℃以下が好ましく、更に40〜80℃、更に50〜75℃が好ましい。
【0027】
水洗時間は、油脂と水とを十分に接触させる点から、1〜120分が好ましく、5〜60分がより好ましく、15〜30分が更に好ましい。前記水洗時間は水洗1回あたりの値である。
水洗は1回でも複数回でもよく、例えば2回、3回繰り返してもよい。
【0028】
水洗後、油脂と水相を分離する手段としては、静置分離、遠心分離等が挙げられる。
分離条件は適宜調整することができるが、常圧で、3000〜10000r/minにて、5〜30分間の条件で調整することが好ましい。
また、次いで、減圧による脱水を行うのが好ましい。脱水条件は、適宜調整することができるが、例えば、60〜90℃、0.01〜5kPaの条件で調整することが好ましい。
【0029】
〔工程(3)〕
次に、工程(2)で得られる油脂を、油相成分として水相と接触させる。乳化組成物を製造する場合は、油相成分と水相とを混合後、必要により予備乳化を行い、均質化することが好ましい。均質機としては、例えば、高圧ホモジナイザー、超音波式乳化機、コロイドミル、アジホモミキサー、マイルダー等が挙げられる。
また、油相と水相が分離した分離型液体調味料を製造する場合は、水相と油相を、夫々を容器に充填することが好ましい。
本発明の液体調味料の油相には、工程(2)で得られる油脂以外に前記食用油脂を含有させてもよいが、工程(2)で得られる油脂のみを油相成分の油脂として用いることが好ましい。
【0030】
本発明の液体調味料は、卵黄を含有していることが好ましい。卵黄は、生、凍結、粉末、加塩、加糖等任意の形態でよく、卵白を含んだ全卵の形態で配合してもよい。また、酵素処理されたものを用いてもよい。
卵黄は、工程(3)の水相に含有させて液体調味料を製造することが好ましい。
【0031】
液体調味料が乳化組成物である場合には、液体調味料中の卵黄の含有量は、風味向上及び乳化安定性の観点から、液状卵黄換算で0.1〜20%であるのが好ましく、更に0.5〜17%、更に0.5〜15%、更に1〜15%であるのが好ましい。液体調味料がマヨネーズ類、マヨネーズ様食品である場合には、液体調味料中の卵黄の含有量は、風味向上及び乳化安定性の観点から、液状卵黄換算で5〜20%であるのが好ましく、更に7〜17%、更に8〜15%、更に10〜15%であるのが好ましい。
液体調味料が分離型液体調味料である場合には、液体調味料中の卵黄の含有量は、油相と水相の分離状態を維持する観点から、1%未満であることが好ましく、更に0.5%未満、更に0.3%未満、更に0.1%未満であることが好ましい。
【0032】
水相部のpH(20℃)は、5.5以下、更に2.5〜5.5、更に3〜5、更に3.2〜4.5の範囲であることが保存性の点から好ましい。この範囲にpHを低下させるためには、食酢、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸、リン酸等の無機酸、レモン果汁等のかんきつ類の果汁を使用することができるが、保存性を良くする点から前記の食酢を用いることが好ましい。酸を添加するタイミングは、油相と水相とを接触させる前に水相に添加してもよく、油相と水相とを接触させた後に添加してもよい。
【0033】
また、液体調味料の水相には、例えば、水;米酢、酒粕酢、リンゴ酢、ブドウ酢、穀物酢、合成酢等の食酢;食塩等の塩類;グルタミン酸ナトリウム等の調味料;砂糖、水飴等の糖類;酒、みりん、醤油等の呈味料;各種ビタミン;クエン酸等の有機酸及びその塩;香辛料;レモン果汁等の各種野菜又は果実の搾汁液;各種野菜類;各種果実類;キサンタンガム、ジェランガム、グァーガム、タマリンドガム、カラギーナン、ペクチン、トラガントガム等の増粘多糖類;馬鈴薯澱粉等の澱粉類、それらの分解物及びそれらを化工処理した澱粉類;ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート等の合成乳化剤;レシチン又はその酵素分解物等の天然系乳化剤;牛乳等の乳製品;大豆タンパク質、乳タンパク質、小麦タンパク質等のタンパク質類、あるいはこれらタンパク質の分離物や分解物等のタンパク質系乳化剤;各種リン酸塩等を含有させることができる。本発明においては、目的とする組成物の粘度、物性等に応じて、これらを適宜配合できる。
【0034】
液体調味料における油相と水相の配合比(質量比)は、10/90〜80/20であるのが好ましく、更に20/80〜75/25であるのが好ましい。
【0035】
このようにして製造された液体調味料は容器に充填され、容器入り食品として使用できる。
【0036】
容器としては通常、液体調味料に用いられるものであればいずれでも良い。なかでも、瓶に比べて使い勝手の良い可撓性容器、例えばプラスチック製のチューブ式容器が好ましい。プラスチック製容器の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン性酢酸ビニル、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性プラスチックの一種又は二種以上を混合して中空成型したものや、これらの熱可塑性プラスチックからなる層を二層以上に積層して中空成形したもの等を用いることができる。
【0037】
本発明における液体調味料は、油脂を含有する油相と水を含有する水相とを接触させることにより得られる調味料であり、油相を上層、水相を下層とした分離型、水中油型乳化物からなる乳化型、又は該水中油型乳化物に油相を積層した分離型が挙げられる。
具体的には、日本農林規格(JAS)で定義される半固体状ドレッシング、乳化液状ドレッシング、分離液状ドレッシング、マヨネーズ、サラダクリーミードレッシングのドレッシングが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではなく、広くマヨネーズ類、マヨネーズ様食品、ドレッシング類、ドレッシング様食品といわれるものが該当する。
【0038】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の液体調味料、或いは液体調味料の製造方法を開示する。
【0039】
<1>次の工程(1)、(2)及び(3):
(1)80℃以下の温度で、油脂にアスコルビン酸、ヒドロキシ酸及びそれらの塩から選択される少なくとも1種の水溶液を添加して撹拌する工程、
(2)工程(1)後の油脂と水蒸気とを、減圧下、接触させる工程、
(3)工程(2)で得られる油脂を油相成分として水相と接触させる工程
を含む、液体調味料の製造方法。
【0040】
<2>工程(1)の油脂が、好ましくは大豆油、菜種油、サフラワー油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、ハトムギ油、小麦胚芽油、シソ油、アマニ油、エゴマ油、藻油及び魚油から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはアマニ油、エゴマ油、藻油及び魚油から選ばれる1種又は2種以上と大豆油、菜種油、サフラワー油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油及びゴマ油から選ばれる1種又は2種の混合油であり、更に好ましくはアマニ油、藻油及び魚油から選ばれる1種又は2種以上と大豆油、菜種油、ヒマワリ油、オリーブ油及びゴマ油から選ばれる1種又は2種の混合油であり、更に好ましくはアマニ油と菜種油の混合油か、魚油と菜種油の混合油である<1>に記載の液体調味料の製造方法。
<3>工程(1)の油脂中、アマニ油及び/又はエゴマ油の含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下・・・であり、また、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜80質量%、更に好ましくは15〜70質量%である<1>又は<2>に記載の液体調味料の製造方法。
<4>工程(1)の油脂中、魚油及び藻油から選ばれる1種又は2種以上の油脂の含有量が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは100質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更に好ましくは25質量%以下であり、また、好ましくは1〜100質量%、より好ましくは2〜80質量%、更に好ましくは3〜50質量%、更に好ましくは5〜25質量%である<1>〜<3>のいずれか1に記載の液体調味料の製造方法。
<5>工程(1)における温度が、好ましくは75℃以下、更に好ましくは70℃以下であり、また、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは40℃以上であり、また、好ましくは15〜80℃、より好ましくは20〜75℃、更に好ましくは40〜70℃である<1>〜<4>のいずれか1に記載の液体調味料の製造方法。
<6>ヒドロキシ酸が、好ましくは乳酸、酒石酸、リンゴ酸又はクエン酸であり、より好ましくはクエン酸又は酒石酸である<1>〜<5>のいずれか1に記載の液体調味料の製造方法。
<7>工程(1)後に水洗工程を行う場合のアスコルビン酸、ヒドロキシ酸又はそれらの塩の水溶液の濃度が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下であり、また、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.2〜10質量%、更に好ましくは0.2〜5質量%、更に好ましくは0.2〜2質量%である<1>〜<6>のいずれか1に記載の液体調味料の製造方法。
<8>工程(1)後に水洗工程を行う場合のアスコルビン酸、ヒドロキシ酸又はそれらの塩の水溶液の添加量が、油脂に対して好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、また、油脂に対して好ましくは100質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下であり、また、油脂に対して好ましくは10〜100質量%、より好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜60質量%である<1>〜<7>のいずれか1に記載の液体調味料の製造方法。
<9>工程(1)後に水洗工程を行わない場合のアスコルビン酸、ヒドロキシ酸又はそれらの塩の水溶液の濃度が、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.00002質量%以上、更に好ましくは0.00005質量%以上、更に好ましくは0.0001質量%以上であり、また、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0.001質量%以下、更に好ましくは0.0003質量%以下であり、また、好ましくは0.00001〜1質量%、より好ましくは0.00002〜0.5質量%、更に好ましくは0.00005〜0.2質量%、更に好ましくは0.0001〜0.1質量%、更に好ましくは0.0001〜0.01質量%、更に好ましくは0.0001〜0.001質量%、更に好ましくは0.0001〜0.0003質量%である<1>〜<6>のいずれか1に記載の液体調味料の製造方法。
<10>工程(1)後に水洗工程を行わない場合のアスコルビン酸、ヒドロキシ酸又はそれらの塩の水溶液の添加量が、油脂に対して好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、また、油脂に対して好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下であり、また、油脂に対して好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%、更に好ましくは3〜6質量%である<1>〜<6>及び<9>のいずれか1に記載の液体調味料の製造方法。
<11>油脂と水蒸気とを接触させる際の温度が、好ましくは70℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは130℃以上、更に好ましくは150℃以上、更に好ましくは160℃以上であり、また、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、更に好ましくは180℃以下であり、また、好ましくは70〜200℃、より好ましくは100〜190℃、更に好ましくは130〜180℃、更に好ましくは150〜180℃、更に好ましくは160〜180℃である<1>〜<10>のいずれか1に記載の液体調味料の製造方法。
<12>油脂と水蒸気との接触時間が、好ましくは0.5分以上、より好ましくは5分以上、更に好ましくは10分以上、更に好ましくは20分以上であり、また、好ましくは90分以下、より好ましくは60分以下、更に好ましくは50分以下、更に好ましくは40分以下であり、また、好ましくは0.5〜90分、より好ましくは5〜60分、更に好ましくは10〜50分、更に好ましくは20〜40分である<1>〜<11>のいずれか1に記載の液体調味料の製造方法。
<13>工程(1)の後、油脂に水を接触させ油水分離を行う工程を含む、<1>〜<12>のいずれか1に記載の液体調味料の製造方法。
<14>水の使用量が、油脂に対して好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、更に好ましくは5%以上であり、また、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下であり、また、好ましくは1〜50%、より好ましくは3〜30%、更に好ましくは5〜20%である<13>に記載の液体調味料の製造方法。
<15>液体調味料における油相と水相の配合比(質量比)が、好ましくは10/90〜80/20であり、より好ましくは20/80〜75/25である<1>〜<14>のいずれか1に記載の液体調味料の製造方法。
<16>液体調味料が、好ましくは油相を上層、水相を下層とした分離型、水中油型乳化物からなる乳化型、又は該水中油型乳化物に油相を積層した分離型の液体調味料であり、より好ましくは半固体状ドレッシング、乳化液状ドレッシング、マヨネーズ又はサラダクリーミードレッシングであり、更に好ましくは乳化液状ドレッシング又はマヨネーズである<1>〜<15>のいずれか1に記載の液体調味料の製造方法。
【0041】
<17>次の(1)及び(2)の工程を含む方法により得られる油脂を含有する油相及び水相を含有する液体調味料。
(1)油脂に、80℃以下の温度で、アスコルビン酸、ヒドロキシ酸及びそれらの塩から選択される少なくとも1種の水溶液を添加して撹拌する工程
(2)工程(1)後の油脂と水蒸気とを、減圧下、接触させる工程
【実施例】
【0042】
実施例1〜5及び比較例1〜2
〔油相の調製〕
菜種油(日清菜種サラダ油:日清オイリオ社製、不飽和脂肪酸含有量93.4%、以下同じ)450gと魚油(DHA−27:ニッスイ社製、脂肪酸中のDHA及びEPAの合計含有量40%、不飽和脂肪酸含有量73.7%、以下同じ)50gを9:1の比率で混合した油脂に、表1の条件(1)に示す有機酸(塩)水溶液を油脂に対して50%添加し、70℃に加温して、窒素気流下、500r/minにて4時間撹拌した。その後、6000r/minで10分間遠心分離(遠心分離機:HITACHI社製、40℃)を行い、水相を除去して油脂を得た。
【0043】
次いで、油脂に対して10%の水を加え、70℃に加温して、500r/minにて20分間撹拌した。その後、6000r/minで10分間遠心分離を行った。この水洗操作を3回繰り返した。
遠心管より、油脂を取り出し、70℃、0.1kPaの条件下で、撹拌しながら脱水処理を行った。
【0044】
2Lガラス製クライゼンフラスコに油脂を投入し、温度150℃、圧力0.4kPa、水蒸気量2%対油/hの条件で30分間水蒸気接触処理を行い、油相を得た。
【0045】
〔液体調味料の調製〕
表2に示す水相原料のうち、卵黄以外を混合し、80℃4分加熱殺菌を行い、常温にした。卵黄を添加した水相33質量部に対し、上記で得られた油相67質量部を添加して、予備乳化したのち、コロイドミル(3,000r/min、クリアランス0.08mm)で均質化し、平均粒子径2.0〜3.5μmのマヨネーズを製造した。得られたマヨネーズを、100gプラスチック製のチューブ式容器に充填し、サンプルとした。
【0046】
実施例6〜9
〔油相の調製〕
実施例1と同様にして、表1の条件(1)に示す有機酸(塩)水溶液を油脂に対して5%添加して撹拌後、水相を除去して油脂を得た。
遠心管より、油脂を取り出し、70℃、0.1kPaの条件下で、撹拌しながら脱水処理を行った。
次いで、脱水後の油脂に対して、実施例1と同様にして表1に示す条件(2)で水蒸気接触処理を行い油脂を得、これを油相成分とした。
【0047】
〔液体調味料の調製〕
上記で得られた油相を用いて、実施例1と同様にして、表2に示す割合でマヨネーズを製造し、サンプルとした。
【0048】
実施例10及び11
〔油相の調製〕
実施例1と同様にして、表1の条件(1)に示す有機酸(塩)水溶液を油脂に対して50%添加して70℃に加温して撹拌後、水相を除去して油脂を得た。 次いで、実施例1と同様にして、油脂に対して10%の水を加え、70℃に加温して、500r/minにて20分間撹拌した。その後、6000r/minで10分間遠心分離を行った。この水洗操作を3回繰り返した。
遠心管より、油脂を取り出し、70℃、0.1kPaの条件下で、撹拌しながら脱水処理を行った。
2Lガラス製クライゼンフラスコに脱水後の油脂を投入し、温度180℃、圧力0.4kPa、水蒸気量2%対油/hの条件で30分間又は60分間水蒸気接触処理を行い、油相を得た。
【0049】
〔液体調味料の調製〕
上記で得られた油相を用いて、実施例1と同様にして、表2に示す割合でマヨネーズを製造し、サンプルとした。
【0050】
比較例3
〔油相の調製〕
菜種油(日清菜種サラダ油:日清オイリオ社製)450gと魚油(DHA−27:ニッスイ社製)50gを9:1の比率で混合した油脂に対して10%の水を加え、70℃に加温して、500r/minにて20分間撹拌した。その後、6000r/minで10分間遠心分離を行った。この水洗操作を3回繰り返した。
遠心管より、油脂を取り出し、70℃、0.1kPaの条件下で、撹拌しながら脱水処理を行った。
次いで、脱水後の油脂に対して、実施例1と同様にして、表1に示す条件(2)で水蒸気接触処理を行い油相を得た。
【0051】
〔液体調味料の調製〕
上記で得られた油相を用いて、実施例1と同様にして、表2に示す割合でマヨネーズを製造し、サンプルとした。
【0052】
比較例4
〔油相の調製〕
実施例1と同様にして、表1に示す条件(1)で、0.2%L−アスコルビン酸ナトリウム水溶液を油脂に対して50%添加して撹拌後、水相を除去して油脂を得た。
次いで、実施例1と同様にして、油脂に対して10%の水を加え、70℃に加温して、500r/minにて20分間撹拌した。その後、6000r/minで10分間遠心分離を行った。この水洗操作を3回繰り返した。
遠心管より、油脂を取り出し、70℃、0.1kPaの条件下で、撹拌しながら脱水処理を行った。
【0053】
〔液体調味料の調製〕
上記で得られた脱水後の油脂を油相として用いて、実施例1と同様にして、表2に示す割合でマヨネーズを製造し、サンプルとした。
【0054】
比較例5
〔油相及び液体調味料の調製〕
菜種油(日清菜種サラダ油:日清オイリオ社製)450gと魚油(DHA−27:ニッスイ社製)50gを9:1の比率で混合した油脂を油相として、実施例1と同様にして、表2に示す割合でマヨネーズを製造し、サンプルとした。
【0055】
比較例6
〔油相の調製〕 菜種油(日清菜種サラダ油:日清オイリオ社製)450gと魚油(DHA−27:ニッスイ社製)50gを9:1の比率で混合した油脂を1Lガラス製クライゼンフラスコに投入し、温度150℃、圧力0.4kPa、水蒸気量2%対油/hの条件で30分間水蒸気接触処理を行った後、120℃まで冷却したところで一度開圧し、0.5%L−アスコルビン酸ナトリウム水溶液を100μL油脂に添加し、再び減圧した後50℃まで冷却して油相を得た。
【0056】
〔液体調味料の調製〕
上記で得られた油相を用いて、実施例1と同様にして、表2に示す割合でマヨネーズを製造し、サンプルとした。
【0057】
〔風味評価〕
(1)魚臭
サンプルを非露光下、40℃で2週間、露光下、20℃で2週間夫々保存した後、約4時間室温に放置し、その風味(魚臭)を専門パネル2名により、下記に示す判断基準に従って評価し、協議により評点を決定した。結果を表1に示す。
5:魚臭なし
4:魚臭ほとんどなし
3:魚臭わずかにあり
2:魚臭感じる
1:魚臭を強く感じる
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
表1より明らかなように、従来の方法で調製された酸性水中油型乳化組成物は、経時的に著しく風味が劣化し、魚臭を強く感じた(比較例5)。これに対し、本発明の方法で調製された酸性水中油型乳化組成物は、経時的な風味の劣化が抑制されることが確認された。
リン酸又は亜硝酸ナトリウムの水溶液を使用した比較例1と2、水洗と油脂に水蒸気を接触させる処理だけ行った比較例3、水蒸気を接触させる処理を行わなかった比較例4、油脂に水蒸気を接触させる処理の高温時にL−アスコルビン酸ナトリウム水溶液を添加した比較例6は、保存中の風味保持が十分ではなかった。
一方、各実施例及び比較例で調製した油脂について上記〔風味評価〕と同様にして保存した後その風味を評価したところ、比較例3と5の油脂については風味劣化が認められた以外は、良好な風味を保っていた。
【0061】
(2)酸味
実施例2、6、10及び11で得られたサンプルを非露光下、40℃で2週間保存した後、約4時間室温に放置し、その酸味の強さを専門パネル2名により、下記に示す判断基準に従って評価し、協議により評点を決定した。結果を表3に示す。
3:酸味を感じ、良好
2:酸味をやや強く感じ、やや良好
1:酸味を強く感じ、良くない
【0062】
【表3】
【0063】
表3より明らかなように、実施例2、10及び11のマヨネーズは、実施例6のマヨネーズと比べ適度な酸味を有し、より好ましいものであった。
【0064】
実施例12
〔油相の調製〕
菜種油(日清菜種サラダ油:日清オイリオ社製)500gに、表4の条件(1)に示す0.2%L−アスコルビン酸ナトリウム水溶液を油脂に対して50%添加し、70℃に加温して、窒素気流下、500r/minにて4時間撹拌した。その後、6000r/minで10分間遠心分離(遠心分離機:HITACHI社製、40℃)を行い、水相を除去して油脂を得た。
【0065】
次いで、油脂に対して10%の水を加え、70℃に加温して、500r/minにて20分間撹拌した。その後、6000r/minで10分間遠心分離を行った。この水洗操作を3回繰り返した。
遠心管より、油脂を取り出し、70℃、0.1kPaの条件下で、撹拌しながら脱水処理を行った。
【0066】
2Lガラス製クライゼンフラスコに油脂を投入し、温度150℃、圧力0.4kPa、水蒸気量2%対油/hの条件で30分間水蒸気接触処理を行い、油相を得た。
【0067】
〔液体調味料の調製〕
表2に示す水相原料のうち、卵黄以外を混合し、80℃4分加熱殺菌を行い、常温にした。卵黄を添加した水相33質量部に対し、上記で得られた油相67質量部を添加して、予備乳化したのち、コロイドミル(3,000r/min、クリアランス0.08mm)で均質化し、平均粒子径2.0〜3.5μmのマヨネーズを製造した。得られたマヨネーズを、100gプラスチック製のチューブ式容器に充填し、サンプルとした。
【0068】
比較例7
〔油相及び液体調味料の調製〕
菜種油(日清菜種サラダ油:日清オイリオ社製)を油相として、実施例12と同様にして、表2に示す割合でマヨネーズを製造し、サンプルとした。
【0069】
〔風味評価〕
サンプルを非露光下、40℃で2週間、露光下、20℃で2週間夫々保存した後、約4時間室温に放置し、その風味(劣化臭)を専門パネル2名により、下記に示す判断基準に従って評価し、協議により評点を決定した。結果を表4に示す。
5:劣化臭がない
4:劣化臭がほとんどない
3:劣化臭がある
2:劣化臭が強い
1:劣化臭が非常に強い
【0070】
【表4】
【0071】
表4より明らかなように、本発明の方法で調製された酸性水中油型乳化組成物は、一層経時的な風味の劣化が抑制されることが確認された(実施例12)。
【0072】
実施例13
〔油相の調製〕
菜種油(日清菜種サラダ油:日清オイリオ社製)375gと亜麻仁油(亜麻仁油:サミット精油製、脂肪酸中のALAの合計含有量25%、不飽和脂肪酸含有量94.9%、以下同じ)125gを75:25の比率で混合した油脂に、表5の条件(1)に示す有機酸(塩)水溶液を油脂に対して50%添加し、70℃に加温して、窒素気流下、500r/minにて4時間撹拌した。その後、6000r/minで10分間遠心分離(遠心分離機:HITACHI社製、40℃)を行い、水相を除去して油脂を得た。
【0073】
次いで、油脂に対して10%の水を加え、70℃に加温して、500r/minにて20分間撹拌した。その後、6000r/minで10分間遠心分離を行った。この水洗操作を3回繰り返した。
遠心管より、油脂を取り出し、70℃、0.1kPaの条件下で、撹拌しながら脱水処理を行った。
【0074】
2Lガラス製クライゼンフラスコに油脂を投入し、温度180℃、圧力0.4kPa、水蒸気量2%対油/hの条件で60分間水蒸気接触処理を行い、油相を得た。
【0075】
〔液体調味料の調製〕
表2に示す水相原料のうち、卵黄以外を混合し、80℃4分加熱殺菌を行い、常温にした。卵黄を添加した水相33質量部に対し、上記で得られた油相67質量部を添加して、予備乳化したのち、コロイドミル(3,000r/min、クリアランス0.08mm)で均質化し、平均粒子径2.0〜3.5μmのマヨネーズを製造した。得られたマヨネーズを、100gプラスチック製のチューブ式容器に充填し、サンプルとした。
【0076】
比較例8
〔油相及び液体調味料の調製〕
菜種油(日清菜種サラダ油:日清オイリオ社製)375gと亜麻仁油(亜麻仁油:サミット精油製)125gを75:25の比率で混合した油脂を油相として、実施例13と同様にして、表2に示す割合でマヨネーズを製造し、サンプルとした。
【0077】
〔風味評価〕
サンプルを非露光下、40℃で2週間、露光下、20℃で2週間夫々保存した後、約4時間室温に放置し、その風味(劣化臭)を専門パネル2名により、上記に示す判断基準に従って評価し、協議により評点を決定した。結果を表5に示す。
【0078】
【表5】
【0079】
表5より明らかなように、従来の方法で調製された酸性水中油型乳化組成物は、経時的に著しく風味が劣化し、劣化臭を強く感じた(比較例8)。これに対し、本発明の方法で調製された酸性水中油型乳化組成物は、経時的な風味の劣化が抑制されることが確認された。
【0080】
実施例14
〔油相の調製〕
菜種油(日清菜種サラダ油:日清オイリオ社製)450gと魚油(DHA−27:ニッスイ社製)50gを9:1の比率で混合した油脂に、表6の条件(1)に示す0.0001%L−アスコルビン酸ナトリウム水溶液を油脂に対して5%添加し、70℃に加温して、窒素気流下、500r/minにて4時間撹拌した後、6000r/minで10分間遠心分離(遠心分離機:HITACHI社製、40℃)を行い、水相を除去して油脂を得た。
【0081】
遠心管より、油脂を取り出し、70℃、0.1kPaの条件下で、撹拌しながら脱水処理を行った。
【0082】
2Lガラス製クライゼンフラスコに油脂を投入し、温度150℃、圧力0.4kPa、水蒸気量2%対油/hの条件で30分間水蒸気接触処理を行い油相を得た。
【0083】
〔液体調味料の調製〕
表7に示す水相原料のうち、卵黄以外を混合し、80℃4分加熱殺菌を行い、常温にした。卵黄を添加した水相60質量部に対し、上記で得られた油相40質量部を添加して、TKホモディスパー(特殊機化工業(株))を用いて3000r/minにて10分間乳化して乳化型ドレッシングを製造した。得られたドレッシングを、100mLプラスチック容器に充填し、サンプルとした。
【0084】
比較例9
〔液体調味料の調製〕
菜種油(日清菜種サラダ油:日清オイリオ社製)450gと魚油(DHA−27:ニッスイ社製)50gを9:1の比率で混合した油脂を油相として、実施例14と同様にして、表7に示す割合で乳化型ドレッシングを製造し、サンプルとした。
【0085】
〔風味評価〕
サンプルを40℃で5日間、露光下で5日間夫々保存した後、約4時間室温に放置し、その風味(魚臭)を専門パネル2名により、下記に示す判断基準に従って評価し、協議により評点を決定した。結果を表6に示す。
5:魚臭なし
4:魚臭ほとんどなし
3:魚臭わずかにあり
2:魚臭感じる
1:魚臭を強く感じる
【0086】
【表6】
【0087】
【表7】
【0088】
表6より明らかなように、従来の方法で調製された酸性水中油型乳化組成物は、経時的に風味が劣化し、魚臭を感じた(比較例9)。これに対し、本発明の方法で調製された酸性水中油型乳化組成物は、経時的な風味の劣化が抑制されることが確認された。