特許第6704706号(P6704706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704706
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ユニフォーム衣料用難燃防水性布帛
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/08 20060101AFI20200525BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20200525BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20200525BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20200525BHJP
   A41D 29/00 20060101ALI20200525BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20200525BHJP
【FI】
   B32B5/08
   B32B27/18 B
   B32B27/30 102
   D06M15/564
   A41D29/00
   A41D31/00 502B
   A41D31/00 503B
   A41D31/00 503E
   A41D31/00 504B
   A41D31/00 504D
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-209418(P2015-209418)
(22)【出願日】2015年10月23日
(65)【公開番号】特開2017-80937(P2017-80937A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】592197315
【氏名又は名称】ユニチカトレーディング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北阪 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中川 清
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−043664(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/010483(WO,A1)
【文献】 特開2014−061621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
D06M13/00−15/715
A41D29/00
A41D31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布、接着層及び樹脂層がこの順で積層されてなる難燃防水性布帛であって、前記基布は難燃ビニロン繊維とセルロース繊維とを混率(難燃ビニロン繊維/セルロース繊維)90/10〜10/90の割合で含有し、前記樹脂層は無孔膜であり、さらに前記接着層及び樹脂層は共に難燃剤を含有し、布帛全体として耐水圧が50kPa以上の範囲にあることを特徴とするユニフォーム衣料用難燃防水性布帛。
【請求項2】
前記接着層及び樹脂層が共にポリカーボネート系ポリウレタン樹脂から構成されていることを特徴とする請求項1記載のユニフォーム衣料用難燃防水性布帛。
【請求項3】
前記耐水圧が300〜400kPaの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2記載のユニフォーム衣料用難燃防水性布帛。
【請求項4】
前記布帛全体の洗濯収縮率が5%以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のユニフォーム衣料用難燃防水性布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた難燃性、防水性を有すると同時に、風合い、質感が改善されたユニフォーム衣料用布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な機能を有する布帛が提案されている。布帛が有する機能の中でも、難燃性は、安全性や防炎性への要求という社会ニーズの高まりにより、今やユニフォーム衣料分野においては欠かすことのできない重要な機能となっている。
【0003】
従来から難燃性を有する布帛が数多く上市されており、代表的なものとしてアラミド繊維や難燃性アクリル繊維等を使用した布帛が提案されている。しかし、アラミド繊維は難燃性に優れるものの、染色性に問題がありかつコストも高いという欠点があった。また、アクリル繊維は、燃焼される際に毒性を強いシアンガスが発生するため、かえって安全面に悪影響を与えてしまうという欠点があった。さらに、これらの布帛は、風合いが硬いことから、専ら産業資材用途に供されており、衣料用途に供された例はほとんど見当たらないのが実情である。
【0004】
そこで、これらの点を改善するために、ポリエステル先染糸からなる基布の上にパディング加工により難燃剤を付与した難燃性布帛が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−293148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の発明は、難燃性だけでなく風合い、意匠性にも優れるものであり、布帛表面に樹脂層を設けることで、さらに防水性をも付与できるという利点がある。ユニフォーム衣料の分野では、難燃性と共に防水性が付与されると用途展開するうえで非常に有利となる。
【0007】
しかし、上記難燃性布帛に樹脂層を設けた布帛は、ポリエステル繊維を使用して基布を構成しているため、基布が火炎と接触するとメルトドリップ(溶液落下物)するという問題がある。基布がメルトドリップすると布帛に穴が開くことがあり、安全上問題である。このため、当該布帛は、難燃性を有しているものの、火炎との接触が想定される場面での使用は不向きとされており、用途が限られるという難点がある。
【0008】
さらに、当該布帛では、樹脂層を設けることで防水性を付与でき、実施例にもあるように、当該樹脂層としてコーティング層が好適なものとして例示されている。ただ、コーティングの場合、高い防水性を得るには、一般に層を厚くする必要がある。しかし、層を厚くしようとすると、製膜時、空気が混入し易くなり、防水性のさらなる向上が見込めない。また、布帛全体の風合いを改良するために基布の構成を工夫しても、層厚により布帛の風合いが損なわれることがある。
【0009】
これらの点を解決するには、薄いコーティング層を何層にも重ねればよいと考えられる。このようなコーティング方法であれば、多少厚みを抑えても防水性は十分維持できると考えられる。しかし、層を幾重にも渡り形成することは、その分、工程が増えることになるからコスト面で不利となる。そればかりか、製膜の度に乾燥、熱処理を繰り返すことにもなるから、基布が過度に熱を受ける結果、黄変、脆化し易くなり、ユニフォーム衣料に仕立てたとき、風合い、質感などの基本特性が大きく損なわれることになる。例えば、代表的な衣料用繊維であるセルロース繊維を使用して基布を構成すれば、基布に由来して布帛全体が相応の風合いを発現するが、こうした繊維は、通常、過度の熱を受けることが想定されていないから、過度の受熱により黄変、脆化が進み、結果として布帛全体の風合いが損なわれる傾向にある。
【0010】
そこで、コーティングの条件を改良する、又はパディング加工のみもしくは基布のみで、難燃性及び防水性と、風合い及び質感とを両立させる手段が種々検討されている。しかし、有効な手段は未だ提案されていないのが実情である。
【0011】
本発明の課題は、上記のような従来技術の欠点を解消する点にあり、優れた難燃性、防水性を有し、各種のユニフォーム衣料に仕立てたとき優れた風合い、質感を発現しうる布帛の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討した結果、基布を構成する際、難燃ビニロン繊維を使用すればメルトドリップを抑えながら所望の難燃性が得られ、同時にセルロース繊維を使用すれば、衣料としたとき所望の風合い、質感が得られることを見出した。そして、両繊維の混率を特定すれば、これらの特性をバランスよく取得できることも見出した。ビニロン繊維、セルロース繊維は共に染色が可能であり、燃焼時、炭化するだけでガスの発生も少ないから、意匠性及び安全性の点で有用であり、各種用途への展開が可能となる。
【0013】
さらに、本発明者らは、基材の上から樹脂層をラミネーションすれば、例えば1回の工程のみでも樹脂層を形成できるから、効率的にコストを抑制できることを知見した。また、ラミネーションであれば、製膜時、熱は受けるものの工程が減るから受熱を適度に抑えることができ、結果、基布の風合い、質感を維持しながら加工できるという利点があることも見出した。さらに、ラミネーションであれば、樹脂層中に空気が介在するのを適度に抑えることができるから、防水性の調製は自在となり、樹脂層を必要以上に厚くしなくても所望の防水性が得られる。そして、樹脂層、接着層に各々難燃剤を含有しておけば、難燃性が向上し、ひいては各種ユニフォーム衣料に見合うだけの難燃性も付与されることになる。
【0014】
本発明はこれらの知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、完成されたものである。
【0015】
すなわち、本発明は、第一に、基布、接着層及びラミネート層がこの順で積層されてなる難燃防水性布帛であって、前記基布は難燃ビニロン繊維とセルロース繊維とを混率(難燃ビニロン繊維/セルロース繊維)90/10〜10/90の割合で含有し、さらに前記接着層及びラミネート層は共に難燃剤を含有し、布帛全体として耐水圧が50kPa以上の範囲にあることを特徴とするユニフォーム衣料用難燃防水性布帛を要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、難燃性、防水性の他、風合い、質感にも優れるユニフォーム衣料用難燃防水性布帛が提供できる。本発明では、接着層及びラミネート層がポリカーボネート系ポリウレタン樹脂から構成されていることが好ましく、これにより耐湿熱性や耐久性等に優れるものが提供できる。さらに、布帛の洗濯収縮率を所定以下に抑えることで、洗濯後も快適に着用できるユニフォーム衣料が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
本発明の難燃防水性布帛は、ユニフォーム衣料全般に適用しうるものであり、中でも難燃性と防水性とが要求されるユニフォーム衣料に好適に使用できるものである。具体的には、溶接現場、製鉄現場、調理現場、災害現場などにおいて使用されるユニフォーム衣料に好適である。本発明の布帛を使用した衣服の形状としては、特に限定されず、目的に応じた適宜の形状が採用できる。
【0019】
本発明の難燃防水性布帛では、基布、接着層及びラミネート層がこの順で積層されている。まず、本発明では、難燃ビニロン繊維とセルロース繊維とを使用して基布を構成する。難燃ビニロン繊維とは、難燃性が付与されたビニロン繊維を指し、この繊維を使用することで基布のメルトドリップを抑えながら所望の難燃性が得られる。また、難燃ビニロン繊維とセルロース繊維とは、共に染色が可能であるため、基布ひいては布帛へ意匠性を付与できる点で有用である。
【0020】
本発明における難燃ビニロン繊維としては、例えばJIS L1091 8.5E−2法で測定される限界酸素指数(LOI値)が好ましくは32以上より好ましくは35以上のビニロン繊維が使用できる。市販品として、ユニチカトレーディング社製「ミューロンFR」などがある。LOI値とは、繊維の燃焼性を判断するための尺度である。一般的に、LOI値が21未満である繊維は、空気中(例えば、酸素の含有率が20.8質量%である空気中)で容易に着火し、急速に燃焼する繊維であることを示し、LOI値が26以上である繊維は、優れた難燃性を有する繊維であるといわれている。通常のビニロン繊維におけるLOI値は19程度である。
【0021】
難燃ビニロン繊維を構成するポリマーとしては、ビニルアルコール単位を全構成単位の70モル%以上含む、水及び熱水に不溶なポリマー、又はビニルアルコール単位及び塩化ビニル単位を含み、両単位の合計が全構成単位の70モル%以上であるポリマーが好適である。特に後者のポリマーの場合、両単位の含有比率(ビニルアルコール単位/塩化ビニル単位)としては、85/15〜35/65の範囲が好ましい。
【0022】
本発明では、難燃性向上の観点から、ビニルアルコール単位及び塩化ビニル単位の合計含有量が全構成単位の95モル%以上であるビニロン繊維が好適であり、とりわけ両単位を98モル%以上、さらには99モル%以上、特に99.8モル%以上含む繊維が好適である。ビニロン繊維を構成するポリマーの重合度については、特に限定されないが、繊維強度を向上させる観点から、500以上が好ましく、1500以上がより好ましい。
また、本発明では、ビニロン繊維を構成するポリマーを必要に応じてアセタール化してもよく、こうすることで耐水性、耐熱水性の向上が期待できる。アセタール化は、通常、ポリマー内部、ポリマー間又はその両者において行い、このときのアセタール化度としては、10〜40モル%程度が好ましい。
【0023】
難燃ビニロン繊維の製造方法としては、例えば、まずポリビニルアルコールとポリ塩化ビニルを用意し、これに粉末の錫化合物やアンチモン系化合物などの難燃剤を混合し、混合液を得る。次に、この混合液を公知の手段により紡糸した後、適宜の条件で延伸及び熱処理し、さらに必要に応じてアルデヒド類が含有された酸性浴にてアセタール化処理する。その後、得られた繊維を必要に応じて短繊維化する。
【0024】
この他、難燃ビニロン繊維を構成するポリマーには、上記した構成単位以外の構成単位が含まれてもよい。他の単位としては、エチレン、酢酸ビニル、イタコン酸、ビニルアミン、アクリルアミド、ビバリン酸ビニル、無水マレイン酸、スルホン酸含有ビニル化合物などのモノマー成分があげられる。また、ビニロン繊維中には、必要に応じて制電剤、酸化防止剤、耐熱剤、防汚剤など任意の機能剤が含まれていてもよい。
【0025】
一方、セルロース繊維は、布帛をユニフォーム衣料に仕立てたときに、優れた風合い、質感を発現させるために用いるものである。セルロースは、D−グルコース単位がβ(1→4)グリコシド結合を介して連なる縮合体であり、2個のD−グルコース単位が互い違いに裏返しに並んだ繰り返し立体構造を有する。セルロース繊維としては、綿、麻、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル、アセテートなどがあげられる。
【0026】
ビニロン繊維及びセルロース繊維の形状としては、特に限定されず、長繊維、短繊維いずれの形状でもよいが、風合いの観点から短繊維が好ましい。また、両繊維の単糸繊度としても、特に限定されず、例えば0.6〜4.2dtexが好ましい。さらに、短繊維とした場合の両繊維の繊維長としては、例えば10〜50mmが好ましい。
【0027】
本発明では、基布に含まれる上記難燃ビニロン繊維及びセルロース繊維の混率が特定されている。具体的には、難燃ビニロン繊維/セルロース繊維=90/10〜10/90の割合で含有されている。好ましくは90/10〜50/50、より好ましくは90/10〜60/40、さらに好ましくは70/30〜80/20である。難燃ビニロン繊維/セルロース繊維の割合が10/90を下回って難燃ビニロン繊維が少なると、布帛の難燃性が低下する。一方、90/10を上回って難燃ビニロン繊維が多くなると、セルロース繊維の混率が過少となるため、セルロース繊維に由来する風合い、質感等が低下する。また、基布中には、本発明の効果を損なわない範囲で難燃ビニロン繊維及びセルロース繊維以外の繊維が含まれていてもよく、そのような繊維としては、ポリエステル、ナイロン、アクリル、アラミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ウールなどがあげられる。
【0028】
さらに、基布の形状としては、平坦な形状をしたものであれば特に限定されず、例えば織物、編物、不織布などが好適である。また、難燃ビニロン繊維及びセルロース繊維の混用方法としても特に限定されない。例えば、それぞれの繊維で糸条(フィラメント糸又は紡績糸)を作製した後、適宜手段で交織、交編してもよいし、両繊維を混紡、混繊、交絡、合撚、引き揃え、カバリング、同時仮撚り、精紡交撚などの手段により糸条とした後、適宜手段により基布としてもよい。基布は、長短繊維を混用したものでもよい。
【0029】
また、基布の形状が織編物である場合、組織としては任意のものが採用でき、中でも後述するラミネート層との接着性を考慮し、表面凹凸感の少ない平滑なものを採用するとよい。具体的には、平組織、綾組織、シングルリップ、ダブルリップなどの組織が採用できる。さらに、表面の凹凸感を低減する目的で基布をカレンダー加工してもよい。また、基布の密度、目付け、厚みとしては、ユニフォーム衣料用途に見合うものであればよく、特に限定されない。
【0030】
この他、意匠性を付与する目的で基布を染色するのが好ましい。染色方法としては一般に後染めによる方法が好ましいが、先染めによる方法を採用しても構わない。染色条件としては公知の条件に基づけばよい。さらに、風合いや発色性の観点から、染色に先立ち基布を糊抜き、精練、シルケットしておくとよい。また、必要に応じて基布を付帯加工してもよい。付帯加工としては、難燃加工、柔軟加工、撥水加工、防汚加工、吸水加工、帯電防止加工、防縮加工などがあげられる。中でも基布を難燃加工すれば、本発明の主たる効果である難燃性の向上が期待でき、柔軟加工すれば同じく主たる効果である風合いの向上が期待できる。布帛を染色又は付帯加工するときは、通常、最終工程として布帛を仕上げセットするが、仕上げセットする際は、過剰な張力を掛けずに有り巾でセットすることが好ましい。過剰な張力を加えると、基布が歪んでしまい、火炎と接触したときの熱により、歪みが顕在化する。歪みが顕在化すると基布が収縮する。この点、基布が火炎と接触すると、その部分は少なからず損傷を受けるが、基布が収縮すると、当該収縮と相まって損傷個所が広がることになり、結果として穴が開き易くなることがある。
【0031】
本発明では、以上のような基布を用意した後、基布の上から樹脂層をラミネーションする。樹脂層をラミネーションしたものがラミネート層である。樹脂層は基本的に合成樹脂、難燃剤から構成され、必要に応じて各種添加剤が併含される。
【0032】
上記合成樹脂としては、接着性に優れるものであればどのようなものでも使用できる。例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂などがあげられる。中でも、防水性、柔軟性等に優れるポリウレタン樹脂が好適であり、特に耐湿熱性、耐久性等にも優れるポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好適である。本発明の難燃防水性布帛は、主としてユニフォーム衣料に適用されるから所定の耐久性を具備していることが好ましい。加えて、かかるユニフォーム衣料は、泥汚れ、油汚れなど通常の家庭洗濯では除去できない汚れが付着する環境下(例えば、災害現場)で使用されることがあるため、着用後は工業洗濯することがある。このため、布帛は、工業洗濯に耐えうるだけの耐湿熱性を備えていることが好ましい。
【0033】
ここで、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂とは、ジオール成分とジイソシアネート成分とからなるポリウレタンであって、ジオール成分がポリカーボネートポリオールからなるものをいう。イソシアネート成分としては特に限定されないが、芳香族系ジフェニルメタンジイソシアネートがあげられる。特に、ポリカーボネートポリオール及び芳香族系ジフェニルメタンジイソシアネートからなるポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を使用すると、ラミネート層の耐湿熱性、耐久性の向上に一層貢献できるため、好ましい。
【0034】
他方、樹脂層中に含有させる難燃剤としては、亜リン酸エステル、リン酸アンモニウム、リン酸グアニジンなどを主たる成分とするリン系難燃剤、ホウ素系難燃剤、ハロゲン系難燃剤の他、硫酸アンモニウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどを主たる成分とする無機難燃剤などがあげられる。これらの難燃剤は、単独で又は複数混合して使用される。難燃剤の含有量としては、合成樹脂固形分100質量部に対して10〜500質量部であることが好ましい。難燃剤の含有量が10質量未満になると、所望の難燃性が得られ難く、一方、500質量部を超えると、難燃剤が凝集し易くなる結果、ラミネート層の強度が低下又は脆化することにより、防水性の低下を招き易くなる。加えて、さらなる難燃性の向上が期待できないばかりか、かえってコスト面で不利となる場合がある。
【0035】
さらに、目的に応じて併含される添加剤としては、架橋剤、硬化促進剤、マット剤、顔料、フィラー、滑剤、耐光剤等があげられる。
【0036】
ラミネート層は、防水性の観点からいわゆる無孔膜であることが好ましく、形状としては、平坦な形状をしたものであれば特に限定されない。通常はフィルム状のものが好ましい。ラミネーションの方法としては、基布の上に塗布、乾燥により後述の接着層を設けた後、予めフィルム状に成形した樹脂層を加熱ロールで加圧しながら、接着層上に貼り合わせるドライラミネーションや、基布の上に、塗布、乾燥により接着層を設けた後、押出機から溶融した樹脂層を接着層の上に押出すことによりラミネート層を形成する押出しラミネーションなどの方法が採用できる。
【0037】
また、ラミネーションする際は、基布及び樹脂層に張力が極力掛からないようにして行うのがよい。張力が掛かり過ぎると、基布及び樹脂層が歪みを内在し、火炎と接触したとき、その熱により歪みが顕在化する。歪みが顕在化すると収縮し易くなる。そうすると、火炎により損傷を受けたとき、その収縮と相まって損傷個所が広がることがある。その結果、穴が開き易くなることがある。さらに、張力が掛かり過ぎると、布帛が後に洗濯収縮し易いものとなる。本発明の難燃防水性布帛では、洗濯収縮率が5%以下であることが好ましい。洗濯収縮率は、ISO 6330 2A法に準じて布帛全体を5回洗濯した後、JIS L1909により測定する。布帛全体の洗濯収縮率が5%を超えると、ユニフォーム衣料としたとき洗濯後の着用快適性が低減することがある。
【0038】
さらに、ラミネート層の厚みとしては、特に限定されないが、難燃性、防水性、柔軟性などの観点から5〜50μmが好ましく、20〜40μmがより好ましい。5μm未満になると、使用する難燃剤の絶対量が減り、所望の難燃性が得られ難くなる。さらに、層が薄くなる結果、所望の防水性も得られ難くなる。一方、50μmを超える場合、難燃性、防水性の点では特段問題はないものの、布帛全体の風合いを改良するために基布の構成をいくら工夫しても、層厚により布帛の風合いが損なわれる傾向にある。加えて、布帛の目付けが大きくなり、用途展開に支障を来すことがある。
【0039】
そして、ラミネーションにあたり、基布の上に設けておくべき接着層としては、上記樹脂層同様、基本的には合成樹脂、難燃剤から構成される。目的に応じて各種添加剤を併含していてもよい。さらに、合成樹脂、難燃剤及び各種添加剤の組成についても、樹脂層の場合と同様のものが採用できる。よって、接着層を構成するときも、当該合成樹脂としてポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましく使用できる。また、難燃剤の含有量としては、合成樹脂固形分100質量部に対して10〜200質量部が好ましい。
【0040】
接着層を構成する合成樹脂の種類としては、特に限定されないが、耐久性の観点から硬化型のものが好適である。硬化型合成樹脂としては、水酸基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基等の反応基を持ついわゆる架橋性を有する樹脂が自己架橋したもの、イソシアネート系、エポキシ系等の架橋剤と架橋し、硬化型となるものなどが例示できる。硬化型合成樹脂を使用するときも、言うまでもなく耐湿熱性や耐久性等の観点からポリカーボネート系ポリウレタン樹脂からなる硬化型合成樹脂を使用するのが好ましい。
【0041】
さらに、硬化型合成樹脂の種類としては、特に限定されるものでないが、実用上の観点から、溶液型又はホットメルト型であることが好ましい。溶液型の合成樹脂を使用するときは、当該合成樹脂に難燃剤及び必要に応じて添加剤を配合し接着剤とした後、25℃における粘度を好ましくは500〜5000mPa・sに調製し、クリアランスコータ、グラビアロールなどを使用して基材上に当該接着剤を塗布すればよい。以降は、前述の方法にて樹脂層をラミネーションすればよい。
【0042】
一方、ホットメルト型の合成樹脂を使用するときは、まず、調製した接着剤の融点や溶融時の粘性などを考慮しつつこれを溶融させる。この場合、80〜200℃程度の温度域で接着剤を溶融させるのが、実用上好ましい。そして、基材上に溶融した接着剤を塗布し、その後は、必要に応じて接着剤を冷却しつつ樹脂層をラミネーションすればよい。
【0043】
また、接着剤の塗布は、均一な形での塗布でありさえすれば、全面状でも部分状でもよい。部分状の場合は、例えば点状、格子状、線状、市松模様、亀甲模様等のパターン模様を描くようにして塗布すればよい。一般に、基布上に接着剤を全面状に塗布すれば、後に耐久性に優れる布帛が得られ易く、部分状に塗布すれば、柔軟性に富む風合いの布帛が得られ易い。
【0044】
接着層の厚みとしては、塗布の形状が全面状、部分状のいずれであっても10〜100μm程度が好ましく、25〜70μmがより好ましい。接着層の厚みをかかる範囲にすることで、基布とラミネート層との剥離を抑えつつ、布帛に適度な柔軟性を付与することができる。厚みが10μm未満になると、基布とラミネート層とが剥離し易くなり、防水性の低下を招くことになる。一方、100μmを超えると、布帛の風合いが硬くなる傾向にある。
【0045】
以上のように、本発明の布帛は、基布、接着層及びラミネート層をこの順で積層したものであるが、必要に応じてラミネート層の上からさらに別の樹脂層を積層してもよい。さらに、ラミネート層が積層された面と反対側の面にも適宜樹脂層を積層してもよい。
【0046】
これまでに述べたように、本発明における主たる効果は、優れた難燃性、防水性の発現に加え、優れた風合い、質感の発現にある。
【0047】
難燃性は、公益財団法人日本防炎協会が認定する作業服の防炎性試験(ISO 15025表面着火法)により評価する。この場合、「水洗い洗濯(弱アルカリ合成洗剤使用)5回後の布帛において、溶融又は滴下しない、端部への火炎伝播なし、穴が開かない、残炎時間2秒以下、残じん時間2秒以下」という要件を満たせば合格と認められる。難燃性は、基布を構成する難燃ビニロン繊維のLOI値、混率の他、接着層及びラミネート層に含まれる難燃剤の組成、含有量、さらには付帯加工の有無などにより調製することができる。
【0048】
一方、防水性は、JIS L1092 6.1B法(高水圧法)に基づいて評価する。本発明では、布帛全体の耐水圧が50kPa以上の範囲を満たす必要がある。好ましくは100〜450kPa、より好ましくは200〜400kPa、さらに好ましくは300〜400kPaである。耐水圧が50kPa未満になると、例えば、当該布帛で仕立てたユニフォーム衣料を災害現場等で着用したとき、水の浸入を十分に抑えられない場合がある。一方、耐水圧が過度に増える場合、防水性の点では特に問題ないが、必然的に層厚が増す結果、風合いが低下することがある。防水性は、接着層及びラミネート層の層厚、形状の他、これらを構成する合成樹脂の組成、さらには付帯加工の有無などにより調製することができる。
【0049】
さらに、風合い、質感については、官能試験により○(優)、△、×(劣)の3段階で評価する。布帛の風合い、質感は、基材の構成によるところが大きいため、基布自体の風合いが最終的に布帛へ反映されるよう、接着層及びラミネート層の層厚、形状、組成等を適宜調製するとよい。なお、セルロース繊維の混率が増えると、基布自体の風合いは向上する傾向にある。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものでない。
【0051】
(実施例1)
難燃ビニロン繊維(ユニチカトレーディング社製「ミューロンFR」、LOI値35、単糸繊度1.5dtex、平均繊維長38mm)と綿繊維(単糸繊度1.7dtex、平均繊維長35mm)とを、ビニロン繊維75質量部、綿繊維25質量部の割合で混紡し、太さ30番手双糸の混紡糸を得た。この混紡糸を経緯糸に用い、エアージェット織機(石川製作所社製)にて綾組織の生機を製織した。製織後、生機を糊抜き、精練、シルケットし、さらに染色した後、巾出しを極力抑えながら仕上げ剤を使用せずに仕上げセットした。以上のようにして基布を得た。
【0052】
次に、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を固形分で60%含有する樹脂溶液に、非エーテル型ハロゲン系難燃剤、架橋剤及び硬化促進剤を配合し、接着層作製のための溶液(接着剤を含有する溶液;接着剤溶液)を調製した。その後、クリアランスコータを使用して、接着剤溶液を基布の上に全面状に塗布し、乾燥することで接着層を形成した。接着層におけるポリウレタン樹脂と難燃剤との含有比率(ポリウレタン樹脂:難燃剤)は、2:1であり、接着層の厚みは45μmであった。
【0053】
さらに、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を固形分で30%含有する樹脂溶液に、非エーテル型ハロゲン系難燃剤、架橋剤、硬化促進剤及びマット剤を配合し、樹脂層作製のための溶液(樹脂層用溶液)を調製した。その後、離型紙(リンテック社製「EV130TPO」)の離型面に、クリアランスコータを使用して樹脂層用溶液を塗布し、乾燥することで樹脂層を形成した。樹脂層におけるポリウレタン樹脂と難燃剤との含有比率(ポリウレタン樹脂:難燃剤)は、1:4であり、樹脂層の厚みは30μmであった。
【0054】
そして、基布及び樹脂層に掛かる張力を極力抑えながら上記樹脂層を接着層の上にドライラミネーションし、離型紙を剥がした後、3日間エージングし、難燃防水性布帛とした。
【0055】
(実施例2)
張力を掛けて基布を仕上げセットしたこと、並びに基布及び樹脂層に張力を掛けてドライラミネーションしたこと以外は、実施例1と同様に行い、難燃防水性布帛を得た。
【0056】
(比較例1)
実施例1において、難燃剤をそれぞれ含有しない接着剤溶液及び樹脂層用溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、布帛を得た。
【0057】
(比較例2、実施例3)
接着層の厚みを45μmに代えて5μm(比較例2)、120μm(実施例3)としたこと以外は、実施例1と同様に行い、各々布帛を得た。
【0058】
(比較例3)
樹脂層におけるポリウレタン樹脂と難燃剤との含有比率(ポリウレタン樹脂:難燃剤)を、1:10に変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、布帛を得た。
【0059】
以上の布帛について、その特性を表1にまとめた。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例1にかかる布帛は、表1に示す通り、難燃性、防水性に優れ、風合い等にも優れるものであった。さらに、洗濯収縮率も小さく、ユニフォーム衣料としたとき洗濯後の着用快適性が大いに期待できるものであった。
【0062】
これに対し、実施例2にかかる布帛は、防水性、風合い等に優れ、所定の難燃性も備えていた。しかし、基布に張力を掛けて仕上げセットしたり、基布及び樹脂層に張力を掛けてラミネーションしたため、洗濯収縮の大きいものとなった。さらに、防炎試験後の布帛に一部穴あきが認められた。また、実施例3では、接着層が厚過ぎたため、実施例1における布帛ほどの風合い、質感は得られなかった。
【0063】
さらに、比較例1にかかる布帛では、接着層及びラミネート層に難燃剤が含まれていなかったため、難燃性に劣るものとなった。比較例2では、接着層が薄く、基布とラミネート層との間に一部層間剥離が認められたため、防水性に劣るものとなった。また、比較例3では、ラミネート層に含まれる難燃剤の量が多く、難燃剤に凝集が認められたため、布帛は防水性に劣るものとなった。さらに、防炎試験後の布帛に一部穴あきが認められた。これは、ラミネート層の強度低下が原因と考えられる。