特許第6704709号(P6704709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6704709-電気生理学的マップのリアルタイム着色 図000002
  • 特許6704709-電気生理学的マップのリアルタイム着色 図000003
  • 特許6704709-電気生理学的マップのリアルタイム着色 図000004
  • 特許6704709-電気生理学的マップのリアルタイム着色 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704709
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】電気生理学的マップのリアルタイム着色
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/044 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
   A61B5/04 314K
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-215488(P2015-215488)
(22)【出願日】2015年11月2日
(65)【公開番号】特開2016-87464(P2016-87464A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2018年9月13日
(31)【優先権主張番号】14/531,130
(32)【優先日】2014年11月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】エリアフ・ジーノ
(72)【発明者】
【氏名】ロイ・ウルマン
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・マーション
(72)【発明者】
【氏名】シュムエル・アウアーバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ヤニブ・ベン・ズリハム
【審査官】 佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0184863(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0184858(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01757227(EP,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0039293(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/092016(WO,A1)
【文献】 国際公開第00/045700(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0249579(US,A1)
【文献】 特開2009−148550(JP,A)
【文献】 特開2011−131060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
複数の電極及びセンサを有するプローブと、
前記プローブが生存被験者の心臓内のある位置にあるときに、前記電極及び前記センサからデータを受け取るための電気回路と、
メモリと、
表示モニターと、
前記メモリ及び前記表示モニターに接続されたプロセッサであって、該プロセッサが、
前記表示モニター上に前記心臓の電気解剖学的マップを表示する工程と、
前記心臓の心周期の持続時間を超えない時間間隔の間に、更なる工程:
前記電極及び前記センサのうち少なくとも1つからのデータを読み取る工程と、
前記データに対してアルゴリズムを実行する工程であって、該アルゴリズムは複数の入力及び結果を有し、前記データは該複数の入力のうちの1つを含み、かつ該結果は該データの変形を含む、工程と、
前記表示モニター上で前記結果を描画し、前記電気解剖学的マップを修正する工程と、を実行する工程と、を実行するように動作可能である、プロセッサと、を含
前記アルゴリズムが、
前記電極の中から第1電極を選択する工程であって、前記第1電極が、前記心臓の組織に接触している、工程と、
前記組織に対する前記第1電極の相対的運動を識別する工程と、
前記第1電極の中から第2電極を選択する工程であって、前記第2電極が、所定量の前記相対的運動を示す、工程と、
前記第2電極の中から第3電極を選択する工程であって、連続する心拍において前記第3電極のそれぞれの位置が所定の閾値より低い相関スコアを有する、工程と、
前記第3電極から取得されたデータから前記結果を生成する工程と、
を含む、装置。
【請求項2】
前記結果を生成する前に、呼吸サイクルのある部分の外にあるデータを除外する工程を更に含む、請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記時間間隔が500msを超えない、請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記センサが温度センサを含む、請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記センサが位置センサを含む、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記センサが接触力センサを含む、請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記センサが光学センサを含む、請求項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は心カテーテル処置に関する。より具体的には、本発明は、心カテーテル処置中の電気解剖学的マップの生成に関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動などの心不整脈は、心臓組織の諸区域が、隣接組織に電気信号を異常に伝導することによって正常な心周期を阻害し、非同期的な律動を引き起こす場合に発生する。
【0003】
不整脈を治療するための手技には、不整脈を発生させている信号の発生源を外科的に破壊すること、及び、そのような信号の伝導路を破壊することが含まれる。カテーテルを介してエネルギーを印加して心臓組織を選択的にアブレーションすることによって、心臓の一部分から別の部分への望ましくない電気信号の伝播を停止する又は変更することが時に可能である。このアブレーション処理は、非伝導性の損傷部位を形成することによって望ましくない電気経路を破壊するものである。
【0004】
今日、心臓の電気的活動のマッピングのために電気生理学的センサを含む心臓カテーテルを用いて心臓内の電位をマッピングすることが、一般的に行われている。典型的には、時間的に変化する心内膜内の電位を検知し、心臓内における位置の関数として記録した後に、これを用いて局所興奮到達時間のマッピングを行う。興奮到達時間は、電気的インパルスが心筋を通して伝導するのに要する時間に応じて、心内膜内における点ごとに異なる。心臓内の任意の点におけるこの電気伝導の方向は、従来、等電活動面(isoelectric activation front)に垂直な活性化ベクトルによって表現されており、これら等電活動面及び活性化ベクトルのいずれも、興奮到達時間のマップから導出され得る。心内膜の任意の点を通る活動面の伝播速度は、速度ベクトルとして表現され得る。
【0005】
活動面及び伝導場をマッピングすることは、心臓組織内の電気的伝播障害のエリアに起因する、心室性及び心房性頻脈症並びに心室及び心房細動などの異常を特定しかつ診断する際に、医師をサポートする。
【0006】
心臓の活性化信号伝導の局所的欠陥は、多活動面、活性化ベクトルの異常な集中、又は速度ベクトルの変化若しくはこのベクトルの正常値からの逸脱等の現象を観察することによって確認され得る。このような欠陥の例としては、コンプレックス細分化電位図として知られる信号パターンと関連付けられ得るリエントラント型のエリアが挙げられる。いったん欠陥がこのようなマッピングによって突き止められると、心臓の正常な機能を可能な限り復旧するために、その欠陥は(異常に機能しているのであれば)アブレーションされてよい、ないしは別の方法で処置されてよい。
【0007】
心筋内の電気的興奮到達時間をマッピングするためには、各測定時において心臓内におけるセンサの位置が分かっている必要がある。過去においては、このようなマッピングは心臓内部の単一の可動電極センサを用いて行われ、このセンサが、固定的な外部参照電極に対する興奮到達時間を測定していた。しかしながらこの技術では、較正、例えば、身体のインピーダンスに無関係なインピーダンス調整を行うインピーダンス較正が必要となる。単一の電極を使用した電気的興奮到達時間のマッピングは、更に、一般に透視撮像の下で行われる、長期にわたる手順であった、かつこれによって被験者を望ましくない電離放射線に被曝させる。更に、不整脈性の心臓において、単一の場所における興奮到達時間は連続拍動間で変化する。
【0008】
単一電極マッピングがこのような欠点を有することから、記述のように、多くの発明者が、複数の電極を用いて心内膜内の別々の場所における電位を同時測定することで、興奮到達時間をより迅速かつ便利にマッピングできるようにすることを教示してきた。心臓表面上の各点の軌跡を特定するために、位置センサを収容したカテーテルが使用されてもよい。これらの軌跡は、組織の収縮力などの運動特性を推測するために用いられてもよい。Ben Haimに発行済みの米国特許第5,738,096号(参照によってその全ての内容が本明細書に組み込まれる)に開示されているように、心臓内の十分な数のポイントで軌跡の情報が標本化されると、そのような運動特性を示すマップが構築され得る。
【0009】
心臓内の一ポイントでの電気的活動は、通常、心腔の複数のポイントにおける電気的活動を同時に測定するために複数の電極カテーテルを前進させることにより測定される。1つ又は2つ以上の電極で測定された時間的に変化する電位から得られる記録は、電位図として知られている。電位図は単極又は双極のリードで測定することができて、例えば、局所興奮到達時間として知られる、ある点における電気伝搬の開始を特定するために用いられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
現在、様々な種類のセンサからのデータが、カテーテル処置作業中に取得及び蓄積され、必要に応じて処理され、しばらくしてから、例えば、心臓の機能マップ上の擬似色の点又は領域として、モニターに視覚的に表示される。このようにして捕捉済みのデータを処理することは、カテーテル処置の遅れ及び遅延を招く。カテーテルを再配置する必要がある可能性がある場合、データ取得工程をやり直さなければならないことがあるからである。本発明の実施形態により、このデータはほぼリアルタイムで、カテーテルを付近で動かす際、又は様々な種類の診断の進行中に、心臓の既存のマップの動的な修正として、手術者に視覚的に提示され得る。
【0011】
本発明の実施形態により、カテーテル処置の一方法が提供され、この方法は、生存被験者の心臓内に、複数の電極及びセンサを有するプローブを挿入することと、モニター上」に心臓の電気解剖学的マップを表示することと、及び心臓の心周期の持続時間を超えない時間間隔の間に、更なる工程:電極及びセンサのうちの少なくとも1つからのデータを読み取る工程と、プロセッサを起動してこのデータに対してアルゴリズムを実行する工程と、このアルゴリズムの結果をモニター上に描画してその電気解剖学的マップを修正する工程と、を実行することによって実行される。このデータは、アルゴリズムの複数の入力のうちの1つであり、このアルゴリズムの結果には、データの変形が含まれる。
【0012】
この方法の更なる一態様により、このアルゴリズムは、電極の中から第1電極を選択することであって、前記第1電極が、心臓の組織に接触していることと、前記組織に対する前記第1電極の相対的運動を識別することと、前記第1電極の中から第2電極を選択することであって、前記第2電極が、所定量の前記相対的運動量を示すことと、前記第2電極の中から第3電極を選択することであって、連続する心拍において前記第3電極のそれぞれの位置が所定の閾値より低い相関スコアを有することと、前記第3電極から取得されたデータから前記結果を生成することと、を含む。
【0013】
この方法の更に別の一態様は、結果を生成する前に、呼吸サイクルのある部分の外にあるデータを除外する工程を含む。
【0014】
本方法の更に別の一態様により、この時間間隔は500msを超えない。
【0015】
本方法の追加的一態様により、このセンサは温度センサを含む。
【0016】
本方法の更に別の一態様により、このセンサは位置センサを含む。
【0017】
本方法の別の一態様により、このセンサは接触力センサを含む。
【0018】
本方法の更なる一態様により、このアルゴリズムは、接触力センサ及び位置センサからのデータを統合することを含み、かつ描画することは、電気解剖学的マップ上に歪んだ面を表示することを含む。
【0019】
本方法の一態様により、このセンサは光学センサを含み、かつデータはこの光学センサからの光学的反射率データを含む。このアルゴリズムは、光学的反射率データの変動を解析することを含み、かつ描画することは、切迫したスチームポップ事象の指標を表示することを含む。
【0020】
本方法の一態様により、アルゴリズムは、波面伝播の計算を含み、かつ描画することは、電気解剖学的マップ上での波面の注釈を更新することを含む。
【0021】
本方法の別の一態様により、アルゴリズムは、波面伝播の計算を含み、かつ描画することは、電気解剖学的マップ上での波面の注釈を表しているベクトルを更新することを含む。
【0022】
本方法の更に別の一態様により、アルゴリズムは、複数のセンサからの温度データの反復分析を含み、かつ描画することは、プローブと心臓内の標的組織との間の接触喪失の指標を表示することを含む。
【0023】
本方法の追加的一態様により、電気解剖学的マップは、アイコン画像を含み、かつ描画することは、このアイコン画像における変化を含む。
【0024】
本方法の別の一態様により、電気解剖学的マップは境界及びそれぞれの擬似色を有する領域を含み、かつ描画することは、この境界又は擬似色における変化を含み。
【0025】
本発明の実施形態により、複数の電極及びセンサを有するプローブと、このプローブが生存被験者の心臓内の位置にあるときに電極及びセンサからデータを受け取るための電気回路と、メモリと、表示モニターと、を含む装置が更に提供される。プロセッサが、メモリ及び表示モニターに接続され、かつ心臓の電気解剖学的マップをモニターに表示するように動作し、並びに、心臓の心周期の持続時間を超えない時間間隔の間に、電極及びセンサのうちの少なくとも1つからのデータを読み取ることと、このデータに対してアルゴリズムを実行するように動作可能である。このアルゴリズムは複数の入力及び結果を有し、前記データは複数入力のうちの1つであり、結果はデータの変形を含む。プロセッサは、モニター上で前記結果を描画し、電気解剖学的マップを修正するように動作可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明が更に理解されるように、一例として、本発明の詳細な説明を参照するが、その説明は以下の図面と共に読まれるべきであり、図面において同様の要素は同様の参照符号を与えられている。
図1】本発明の一実施形態による、医療処置を行うためのシステムの図である。
図2】本発明の一実施形態による、ほぼリアルタイムのデータ表示のための、図1に示すシステム構成を表わす流れ図である。
図3】本発明の一実施形態による、心臓の電気生理学的マップのリアルタイム着色のための方法のフローチャートである。
図4図3に示す方法の態様の詳細フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の説明では、本発明の様々な原理の深い理解を促すため、多くの具体的な詳細について記載する。しかしながら、これらのすべての詳細が本発明の実施に必ずしも必要ではないことが、当業者には理解されよう。この場合、一般的な概念を不要に曖昧にすることのないよう、周知の回路、制御論理、並びに従来のアルゴリズム及び処理に対するコンピュータプログラム命令の詳細については、詳しく示していない。
【0028】
ここで図面を参照し、最初に図1を参照すると、この図は、開示される本発明の一実施形態に基づいて構築され動作可能である、患者の心臓12に対してアブレーション手術を行うためのシステム10の絵による図解である。このシステムは、患者の血管系を通して、心臓12の心房・心室又は血管構造内に操作者16によって経皮的に挿入されるカテーテル14を備えている。通常、医師である操作者16は、カテーテルの遠位先端部18を、心臓壁、例えばアブレーション標的部位と接触させる。その開示が本明細書に参照により組み込まれる、米国特許番号第6,226,542号及び同第6,301,496号、並びに同一出願人による米国特許第6,892,091号に開示されている方法に従って、電気的活性化マップが作成できる。システム10の要素を具現化する1つの市販の製品は、Biosense Webster,Inc.(3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,CA 91765)より入手可能な、CARTO(登録商標)3システムとして入手可能である。このシステムは、本明細書に記載されている本発明の原理が具現化されるように、当業者が修正をほどこすことができる。
【0029】
例えば電気的活性化マップの評価によって異常と判定された領域は、例えば心筋に高周波エネルギーを加える遠位先端部18の1つ又は複数の電極に、カテーテル内のワイヤを通して高周波電流を流すことなどにより熱エネルギーを加えることによってアブレーションすることができる。エネルギーは組織に吸収され、組織を電気的興奮性が永久に失われる点(一般的には約50℃)まで加熱する。成功すると、この手技により、心組織内に非伝導性の損傷部位が形成され、この損傷部位が不整脈を発生させる異常な電気経路を遮断する。本発明の原理を異なる心房・心室に適用することによって、多くの異なる心不整脈を診断し、治療することができる。
【0030】
カテーテル14は、通常、ハンドル20を備え、ハンドル20は、その上に好適な制御部を有し、操作者16がカテーテルの遠位端部をアブレーションに望ましいように、操舵、位置決め、及び方向付けできる。操作者16を補助するため、カテーテル14の遠位部分には、コンソール24内に配置されたプロセッサ22に信号を供給する位置センサ(図示せず)が収容されている。プロセッサ22は、以下に記載するいくつかの処理機能を果たす。
【0031】
アブレーションエネルギー及び電気信号を、遠位先端部18に又は遠位先端部18の付近に配置される、1つ又は複数のアブレーション電極32を通じて、コンソール24に至るケーブル34を介し、心臓12へ又は心臓12から、搬送することができる。ペーシング信号及び他の制御信号は、コンソール24から、ケーブル34及び電極32を通して、心臓12へと搬送することができる。検知電極33は、同様にコンソール24にも接続され、アブレーション電極32の間に配設されて、ケーブル34への結線を有する。
【0032】
ワイヤ接続部35はコンソール24を、身体表面の電極30と、カテーテル14の位置座標及び配向座標を測定するための位置決定サブシステムの他の構成要素と、に連結する。プロセッサ22又は他のプロセッサ(図示せず)は、位置決定サブシステムの要素であってよい。電極32及び体表面電極30は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,536,218号(Govariら)に教示されるように、アブレーション部位での組織のインピーダンスを測定するために使用することができる。温度センサ(図示せず)、典型的には、熱電対又はサーミスタは、電極32の各々の上に、又は電極32の各々の付近に載置され得る。
【0033】
コンソール24には通常、1つ又は複数のアブレーション電力発生装置25が収容されている。カテーテル14は、例えば、高周波エネルギー、超音波エネルギー、及びレーザー生成光エネルギーなどの任意の周知のアブレーション技術を使用して心臓にアブレーションエネルギーを伝えるように適応させることができる。このような方法は、参照により本明細書に組み込まれる、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号、及び同第7,156,816号に開示されている。
【0034】
1つの実施形態において、この位置決めサブシステムは、磁場生成コイル28を使用して、既定の作業体積内に磁場を生成し、カテーテルにおけるこれらの磁場を検知することによって、カテーテル14の位置及び向きを特定する、磁気位置追跡の仕組みを含む。位置決めサブシステムは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,756,576号、及び上記の米国特許第7,536,218号に見出される。
【0035】
上述したように、カテーテル14は、コンソール24に連結され、これにより操作者16が、カテーテル14の機能を観察及び調節できるようになっている。コンソール24は、プロセッサ、好ましくは適切な信号処理回路を有するコンピュータを含む。プロセッサは、モニター29を駆動するように結合されている。信号処理回路は通常、カテーテル14からの信号を、受信、増幅、フィルタリング、及びデジタル化するが、そのような信号には、カテーテル14の遠位側に設置された、電気、温度、及び接触力センサのようなセンサ、及び複数の位置検知電極(図示せず)により生成される信号が含まれる。デジタル化された信号は、コンソール24及び位置決めシステムによって受信され、カテーテル14の位置及び向きを計算し、電極からの電気信号を解析するために使用される。
【0036】
簡略化のため図には示されていないが、通常、システム10には、他の要素も含まれる。例えば、システム10は、心電図(ECG)モニターを含み得るが、このECGモニターは、ECG同期信号をコンソール24に供給するために、1つ又は複数の体表面電極から信号を受信するように連結される。また、上に述べたように、システム10は通常、基準位置センサをも含むが、基準位置センサは、患者の身体の外側に取り付けられた、体位外貼付式基準パッチ上、又は心臓12に挿入され、心臓12に対して固定位置に維持された、体内配置式カテーテル上のいずれかに配置される。カテーテル14に液体を通して循環させるための、従来のポンプ及びラインが、アブレーション部位を冷却するために提供される。システム10は、画像データを外部MRIユニット等のような外部の画像診法から受信することができるし、以下に説明される画像を生成及び表示のために、プロセッサ22に統合され得る、又はプロセッサ22により起動され得る画像プロセッサを具備することもできる。
【0037】
リアルタイムマッピング構成
ここで図2を参照すると、同図は、本発明の一実施形態による、ほぼリアルタイムのデータ表示のためのシステム10(図1)の構成を表わす高レベルの流れ図である。本開示の目的において、用語「ほぼリアルタイム」とは、次の心周期の前に、現在の心周期において処理及び表示を行うことを指す。例えば、センサによるデータ読取り値の検出及び伝送と、そのデータの視覚的表現の表示との間の典型的な遅延時間間隔は、500ms以下の桁となり得る。この遅延時間間隔は、この特定のデータを評価するためにプロセッサ22に必要なリソースに応じて、評価対象の不整脈焦点のサイクル長さと同じ短さとなり得る。
【0038】
本発明の原理は、電気解剖学的マップに直接表示されないデータに特にあてはまるが、電気生理学的指標をある程度動的に変化させる複雑なアルゴリズムに組み込まれる。このデータはアルゴリズムのための1つの入力を含み、典型的に、アルゴリズムへの複数の入力のうち1つである。そのようなアルゴリズムの出力が、グラフィック表示される。アルゴリズムの出力は受信データの時間と大きさの単なる描写ではなく、他のデータと組み合わせてこのデータを処理することにより、このデータをいくつかの電気生理学的指標に変換するある程度の計算を伴う。この、他のデータも、アルゴリズムへの入力を形成し、現在受信されていてよく(例えば他のセンサによって)、又は同じセンサ、同じタイプの他のセンサ、他のタイプのセンサ、若しくはこれらの組み合わせからすでに受信されていてもよい。
【0039】
1つの例は、参照により本明細書に組み込まれる、本願と同一譲受人に譲渡された同時係属出願の第14/166,982号「Hybrid Bipolar/Unipolar Detection of Activation Wavefront」に記述されている、波面伝播を計算し、マップ上の波面注釈を更新するためのアルゴリズムである。このアルゴリズムでは、プローブの電極からバイポーラ電位図及びユニポーラ電位図を記録し、時間に関して差別化する。差別化したバイポーラ電位図におけるピークを特定する。ピークの周りのバイポーラ活動を含む活動窓を画定する。活動窓内の差別化されたユニポーラ電位図における極端な負の値をユニポーラ活性化の開始として報告する。1つの変異型において、注釈は、バイポーラ電位図における活動と相関しない候補を排除することによって、活動窓内の差別化されたユニポーラ電位図における最小値候補から選択される。
【0040】
別の一例において、参照により本明細書に組み込まれる、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許出願公開第2012/0116210号「Visualization of Catheter−Tissue Contact by Map Distortion」に開示されるアルゴリズムは、接触力センサ及び位置センサの表面反射からのデータを統合して、力が所定量を超えたときに、歪んだ面を表示する。
【0041】
更なる一例は、アブレーション中の切迫したスチームポップ事象を検出するための、光学的反射率データのリアルタイム解析に関するものであり、これは、参照により本明細書に組み込まれる、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許出願第61/984953号「Prevention of Steam Pops during Ablation」に開示されており、この中で、カテーテル先端近くの光学センサにより測定された光学的反射率の高周波数変動の分析により、切迫したスチームポップ発生が予測される。この解析は、データのフーリエ変換、又は、時系列データの二次導関数の計算を含み得る。
【0042】
更に別の一例は、標的組織との接触喪失を判定するために、アブレーションカテーテル上の複数のセンサからの温度データをリアルタイムで反復受信することに関するものであり、これは、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許出願第14/072,885号「Using Catheter Position and Temperature Measurement to Detect Movement from Ablation Point」に教示されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
上記のすべての例において、データ処理アルゴリズムは、現在受信されているデータと、前に受信したデータとを、ほぼリアルタイムで比較することを伴い、あるいは、データ処理アルゴリズムのために複数の入力又はパラメータの1つとしてデータの取り込みを伴う。
【0044】
ブロック41、43、45、47は、カテーテル処置作業中に心カテーテルから典型的に受け取るデータのタイプを表わす。これらは例として提示されているものである。他のタイプのセンサ、例えば反射率データの光学センサを読み取ることもできる。ブロック41は、上述の位置決定システムの構成要素である位置センサからの入力を表わす。ブロック43は、例えばマッピング電極などの電極からの、電極データ及び生理学的データを表わす。ブロック43は更に、温度、電圧、電気位相情報などの物理的状態の、センサからのデータを含む。ブロック45は、例えば、接触力の偏向など、生データのフィルタされた又は処理されたバージョンに関する。ブロック47は、心臓腔又はその環境の現在の構造を表わすデータを表わし、例えば、位置データの点群による心臓の現在の再構築を表わす。これは、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許出願第14/132,631号「Dynamic Feature Rich Anatomical Reconstruction from a Point Cloud」に記述されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
ブロック49は、データが、ブロック41、43、45、47のいずれかから受信したかどうかを判定するため継続的に動作する論理である。そのように判定された場合、そのデータがこのカテゴリーに従って分類され、特殊マッピングモジュールが即座に作動してデータを処理する。これらのモジュールは、プロセッサ22(図1)で実行することができるが、マルチプロセッサを採用して、データの処理及び描画をほぼリアルタイムで行うよう、高優先度を実現することができる。
【0046】
ブロック51で、処理の結果がマップ表示に描画される。この描画は、例えば、マップの点の色又は寸法の変化であってよく、又はマップの領域若しくは領域の境界の擬似色の変化であってよく、又はベクトルの変化であってもよい。多くの場合、この描画は、現在の心周期の間に完了し、かつ手術者に可視となる。特に複雑なアルゴリズムを伴う場合、最長500msの遅れが生じることがある。
【0047】
ブロック49で現在のデータが受信されない場合、特殊マッピングモジュールが作動せず、マップはデフォルト色で表示される。
【0048】
ここで図3を参照して、同図は、本発明の一実施形態による、心臓の電気生理学的マップのリアルタイム着色のための方法のフローチャートである。そのプロセス工程は、提示の明瞭性のために、図3及び本明細書の後続のフローチャートでは特定の直線的順序で示される。しかしながら、それらのプロセス工程の多くは、並列的に、非同期的に、又は異なる順序で実行し得ることが明白であろう。当業者であれば、プロセスは、別の方法としては、例えば、状態図において、相互関連状態又は事象の数として表現され得ることが理解されるであろう。更には、例示されている全てのプロセス工程が、このプロセスの実行に必要とされるとは限らない場合もある。
【0049】
初期工程53では、心カテーテルが既知の方法を用いて被験者の心臓内に導かれる。
【0050】
工程55においては、カテーテルの1つ又は2つ以上のセンサが読み取られる。センサは、ブロック41、43、45(図2)に記述されるセンサの任意の組み合わせであり得る。
【0051】
次に、工程57の判定で、工程55において受信したデータがほぼリアルタイムで処理及びモニター表示されるかどうかが判定される。判定が否定の場合、制御は最終工程59に進む。データは従来と同様に処理される。表示モニターの更新が最終的に起こり得る。しかしながら、更新が手術者に可視になるまでの遅延時間間隔は、現在の心周期の持続時間を超える。
【0052】
決定工程57における判定が肯定の場合、制御は工程61に進む。ほぼリアルタイムのプロセッサが作動して、工程55で受け取ったデータのタイプに適するように、後述のアルゴリズムを実行する。プロセッサは、ソフトウェアプロセスであり得る。あるいは、プロセッサは、ハードウェアプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、又はハードワイヤード論理にデータを伝達することにより作動し得る。
【0053】
工程63で、ほぼリアルタイムのプロセッサが、入力の1つとして、工程55で受け取ったデータを用いて、選択されたアルゴリズムを実行し、結果を生成する。この結果が最終工程65で、4次元マップ、例えば動画フォーマットとして描画される。描画工程は、マップの一部の擬似色を変化させ、点を動かし、又は画面アイコンを修正させることができ、この画面アイコンには例えば、本願と同一譲受人に譲渡された意匠特許出願第29/464,664号「Portion of a Computer Screen with an Icon Image」に開示されるアニメーションアイコン、又は、同第29/490874号「Enhanced Ablation Site Visualization」に開示されるアイコンが挙げられ、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
ここで図4を参照すると、同図は、本発明の一実施形態による、工程63(図3)に記されたアルゴリズムを説明する詳細フローチャートである。初期工程67は、工程55で上述のデータ収集を指す。
【0055】
次に、工程69で、標的組織に接触している電極からのデータが選択される。組織に接触していない電極からのデータは無視される。電極の組織との接触は、例えば、米国特許第6,569,160号又は同第8,226,580号の教示など、既知の方法によって確立することができ、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
次に、工程71で、呼吸サイクルの1つのウィンドウ(例えば、拡張期終了に対応する部分)が、工程69で選択された電極データに適用され、更なる分析に使用される。このウィンドウの外にあるデータは無視される。
【0057】
次に、工程73で、標的組織と、工程69で選択された電極との間の相対的な運動が、それぞれ識別される。これは、例えば、上述のCARTOシステムの位置決定機能を用いるなど、数多くの様々な方法によって確立することができる。
【0058】
次に、工程75で、工程73で取得された情報を用いて、連続する心拍における電極位置の相関が、周知の相関方法を用いて、関連付けられる。
【0059】
相関スコアが低い場合は、標的組織に対する位置的な不安定性に対応する。工程77で、工程69において選択された電極が、更に選択の対象となり、閾値を下回る相関スコアを有するものが選択される。
【0060】
上述の工程で大量のデータが除去された後、手順が工程79で終了し、フィルタされたデータがここで、最終工程65での処理へと送られる(図3)。無関係なデータを除去することによって達成された効率によって、カテーテル処置中に、現在の心臓−呼吸イベントと同時に、ハードウェアがデータの処理及び描画を行うことができる。この結果は、現在のものとして、すなわち知覚可能な遅れなしにほぼリアルタイムで、そしてもちろん現在の心サイクルの範囲内で、手術者により視認される。
【0061】
当業者であれば、本発明は、以上で具体的に示し、説明したものに限定されない点は、理解するところであろう。むしろ、本発明の範囲は、以上で述べた様々な特徴の組み合わせ及び一部の組み合わせ、並びに上記の説明を読むことで当業者が想到するであろう、従来技術にはない特徴の変形及び改変をも含むものである。
【0062】
〔実施の態様〕
(1) カテーテル処置の方法であって、
複数の電極及びセンサを有するプローブを、生体被験者の心臓内に挿入する工程と、
モニター上に前記心臓の電気解剖学的マップを表示する工程と、
前記心臓の心周期の持続時間を超えない時間間隔の間に、更なる工程:
前記電極及びセンサのうちの少なくとも1つからのデータを読み取る工程と、
プロセッサを起動して前記データに対してアルゴリズムを実行する工程であって、該アルゴリズムは複数の入力及び結果を有し、前記データは該複数の入力のうちの1つを含み、該結果は該データの変形を含む、工程と、
前記モニター上で前記結果を描画し、前記電気解剖学的マップを修正する工程と、を実行する工程と、
を含む、方法。
(2) 前記アルゴリズムが、
前記電極の中から第1電極を選択する工程であって、前記第1電極が、前記心臓の組織に接触している、工程と、
前記組織に対する前記第1電極の相対的運動を識別する工程と、
前記第1電極の中から第2電極を選択する工程であって、前記第2電極が、所定量の前記相対的運動を示す、工程と、
前記第2電極の中から第3電極を選択する工程であって、連続する心拍において前記第3電極のそれぞれの位置が所定の閾値より低い相関スコアを有する、工程と、
前記第3電極から取得されたデータから前記結果を生成する工程と、
を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記結果を生成する前に、呼吸サイクルのある部分の外にあるデータを除外する工程を更に含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記時間間隔が500msを超えない、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記センサが温度センサを含む、実施態様1に記載の方法。
【0063】
(6) 前記センサが位置センサを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記センサが接触力センサを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記アルゴリズムが、前記接触力センサ及び位置センサからのデータを統合することを含み、かつ描画することが、前記電気解剖学的マップ上に歪んだ面を表示することを含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記センサが光学センサを含む、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記データが前記光学センサからの光学的反射率データを含み、前記アルゴリズムが該光学的反射率データの変動を解析することを含み、かつ描画することが、切迫したスチームポップ事象の指標を表示することを含む、実施態様9に記載の方法。
【0064】
(11) 前記アルゴリズムが波面伝播の計算を含み、かつ描画することが前記電気解剖学的マップ上での波面の注釈を更新することを含む、実施態様1に記載の方法。
(12) 前記アルゴリズムが波面伝播の計算を含み、かつ描画することが前記電気解剖学的マップ上での前記波面の注釈を表しているベクトルを更新することを含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記アルゴリズムが複数の前記センサからの温度データの反復解析を含み、かつ描画することが、前記プローブと前記心臓内の標的組織との間の接触喪失の指標を表示することを含む、実施態様1に記載の方法。
(14) 前記電気解剖学的マップがアイコン画像を含み、かつ描画することが前記アイコン画像における変化を含む、実施態様1に記載の方法。
(15) 前記電気解剖学的マップが境界及びそれぞれの擬似色を有する領域を含み、かつ描画することが該境界又は該擬似色における変化を含む、実施態様1に記載の方法。
【0065】
(16) 装置であって、
複数の電極及びセンサを有するプローブと、
前記プローブが生存被験者の心臓内のある位置にあるときに、前記電極及びセンサからデータを受け取るための電気回路と、
メモリと、
表示モニターと、
前記メモリ及び前記表示モニターに接続されたプロセッサであって、該プロセッサが、
前記モニター上に前記心臓の電気解剖学的マップを表示する工程と、
前記心臓の心周期の持続時間を超えない時間間隔の間に、更なる工程:
前記電極及びセンサのうち少なくとも1つからのデータを読み取る工程と、
前記データに対してアルゴリズムを実行する工程であって、該アルゴリズムは複数の入力及び結果を有し、前記データは該複数の入力のうちの1つを含み、かつ該結果は該データの変形を含む、工程と、
前記モニター上で前記結果を描画し、前記電気解剖学的マップを修正する工程と、を実行する工程と、を実行するように動作可能である、プロセッサと、を含む、装置。
(17) 前記アルゴリズムが、
前記電極の中から第1電極を選択する工程であって、前記第1電極が、前記心臓の組織に接触している、工程と、
前記組織に対する前記第1電極の相対的運動を識別する工程と、
前記第1電極の中から第2電極を選択する工程であって、前記第2電極が、所定量の前記相対的運動を示す、工程と、
前記第2電極の中から第3電極を選択する工程であって、連続する心拍において前記第3電極のそれぞれの位置が所定の閾値より低い相関スコアを有する、工程と、
前記第3電極から取得されたデータから前記結果を生成する工程と、
を含む、実施態様16に記載の装置。
(18) 前記結果を生成する前に、呼吸サイクルのある部分の外にあるデータを除外する工程を更に含む、実施態様17に記載の装置。
(19) 前記時間間隔が500msを超えない、実施態様16に記載の装置。
(20) 前記センサが温度センサを含む、実施態様16に記載の装置。
【0066】
(21) 前記センサが位置センサを含む、実施態様16に記載の装置。
(22) 前記センサが接触力センサを含む、実施態様16に記載の装置。
(23) 前記センサが光学センサを含む、実施態様16に記載の装置。
図1
図2
図3
図4