(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書は、これらに何ら限定されるものではないが、例えば以下の態様の発明を開示する。
[1] 次の一般式(1)
【0017】
[式中、Xはハロゲン原子を示す。]
で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、及びトロメタモールを含有する、水性組成物。
[2] 前記一般式(1)で表される化合物が、リパスジルである、[1]記載の水性組成物。
[3] 眼科用剤である、[1]又は[2]記載の水性組成物。
[4] 点眼剤である、[3]記載の水性組成物。
[5] 高眼圧症、緑内障及び眼底疾患よりなる群から選ばれる疾患の予防及び/又は治療剤である、[1]〜[4]のいずれか記載の水性組成物。
【0018】
[6] さらに、α1受容体遮断薬、α2受容体作動薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類、交感神経作動薬、副交感神経作動薬、カルシウム拮抗剤及びコリンエステラーゼ阻害剤よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、[1]〜[5]のいずれか記載の水性組成物。
[7] さらに、ラタノプロスト、ニプラジロール、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、チモロール及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、[1]〜[5]のいずれか記載の水性組成物。
【0019】
[8] [1]〜[7]のいずれか記載の水性組成物が、ポリオレフィン系樹脂製容器に収容されてなる、医薬製剤。
[9] 前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン又はポリプロピレンである、[8]記載の医薬製剤。
[10] 前記ポリオレフィン系樹脂製容器が、点眼剤用容器である、[8]又は[9]記載の医薬製剤。
【0020】
[11] 前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物に、トロメタモールを含有せしめる工程を含む、水性組成物の変色の抑制方法。
[12] 前記一般式(1)で表される化合物が、リパスジルである、[11]記載の方法。
[13] 前記水性組成物が、眼科用剤である、[11]又は[12]記載の方法。
[14] 前記眼科用剤が、点眼剤である、[13]記載の方法。
[15] 前記水性組成物が、高眼圧症、緑内障及び眼底疾患よりなる群から選ばれる疾患の予防及び/又は治療剤である、[11]〜[14]のいずれか記載の方法。
【0021】
[16] 前記水性組成物が、さらにα1受容体遮断薬、α2受容体作動薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類、交感神経作動薬、副交感神経作動薬、カルシウム拮抗剤及びコリンエステラーゼ阻害剤よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、[11]〜[15]のいずれか記載の方法。
[17] 前記水性組成物が、さらにラタノプロスト、ニプラジロール、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、チモロール及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、[11]〜[15]のいずれか記載の方法。
【0022】
[18] さらに、水性組成物をポリオレフィン系樹脂製容器に収容する工程を含む、[11]〜[17]のいずれか記載の方法。
[19] 前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン又はポリプロピレンである、[18]記載の方法。
[20] 前記ポリオレフィン系樹脂製容器が、点眼剤用容器である、[18]又は[19]記載の方法。
【0023】
なお、前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物とトロメタモールを含有する水性組成物は、優れた防腐効果をも有する。水性組成物は、溶媒として水を含有するものであるため生体に対して刺激が少ない等の利点を有するものの、微生物によって汚染され易い、という問題がある。しかるところ、後記試験例2、3の通り、一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物とトロメタモールの組み合わせは、優れた防腐効果を発揮することが明らかとなった。なお、前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の防腐効果については、これまでに一切知られていない。
従って、前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、及びトロメタモールを含有する水性組成物は、高温保存時の変色が抑制され、また、優れた防腐効果を有するため、保存安定性に優れるというメリットを有する。
【0024】
また、本出願は、以下の防腐効果付与方法にも関連する。
[21] 前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、トロメタモールとを水性組成物に配合する工程を含む、水性組成物への防腐効果付与方法。
[22] 前記一般式(1)で表される化合物が、リパスジルである、[21]記載の方法。
[23] 前記水性組成物が、点眼剤又は眼軟膏剤である、[21]又は[22]記載の方法。
【0025】
[24] 前記水性組成物が、さらにα1受容体遮断薬、α2受容体作動薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類、交感神経作動薬、副交感神経作動薬、カルシウム拮抗剤及びコリンエステラーゼ阻害剤よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、[21]〜[23]のいずれか記載の方法。
[25] 前記水性組成物が、さらにラタノプロスト、ニプラジロール、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、チモロール及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、[21]〜[23]のいずれか記載の方法。
【0026】
ここで、「防腐効果付与方法」とは、水性組成物に防腐効果を付与する方法を意味する。防腐効果付与方法において、防腐効果は、評価する対象の防腐力が、前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物及びトロメタモールの両成分を共に配合しない場合と比較して優れたものであれば効果有りと判定され、その効果の程度は問わない。
具体的には例えば、第十六改正日本薬局方 参考情報「保存効力試験法」に従い、細菌(例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli))あるいは真菌(例えば、カンジダ(Candida albicans))を用いた場合において、前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物及びトロメタモールの両成分を共に配合しない対照(防腐効果が無いことが知られている精製水を対照として用いればよい。)と比較して、いずれか1種以上の微生物種において任意の日数において生菌数が少ないことを確認できれば防腐効果有り、と判定され、この場合、水性組成物への防腐効果の付与が確認される。なお、防腐効果付与方法における文言の意義、各種成分の配合量等は、以下に詳述される、「一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、トロメタモールとを含有する水性組成物」に係る態様の発明における文言の意義、各種成分の含有量等と同様である。
【0027】
前記一般式(1)において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。前記一般式(1)において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
また、前記一般式(1)において、メチル基の置換したホモピペラジン環を構成する炭素原子は不斉炭素である。そのため、立体異性が生じるが、一般式(1)で表される化合物にはいずれの立体異性体も包含され、単一の立体異性体でもよく、各種立体異性体の任意の割合の混合物でもよい。前記一般式(1)で表される化合物としては、絶対配置がS配置である化合物が好ましい。
【0028】
前記一般式(1)で表される化合物の塩としては、薬学上許容される塩であれば特に限定されず、具体的には例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、フッ化水素酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、カンファ―スルホン酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、塩酸塩が好ましい。
さらに、前記一般式(1)で表される化合物又はその塩は、水和物やアルコール和物等の溶媒和物であってもよく、水和物であるのが好ましい。
【0029】
前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物としては、具体的には例えば、
リパスジル(化学名:4−フルオロ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリン)若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
4−ブロモ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
等が挙げられる。
【0030】
前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物としては、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、4−ブロモ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物が好ましく、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物がより好ましく、リパスジル若しくはその塩酸塩又はそれらの水和物がさらに好ましく、以下の構造式:
【0032】
で表されるリパスジル塩酸塩水和物(リパスジル1塩酸塩2水和物)が特に好ましい。
【0033】
前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は公知であり、公知の方法により製造できる。具体的には例えば、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、国際公開第1999/020620号パンフレット、国際公開第2006/057397号パンフレット記載の方法等により製造することが出来る。また、4−ブロモ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、国際公開第2006/115244号パンフレット記載の方法等により製造することが出来る。
【0034】
水性組成物中の前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量は特に限定されず、適用疾患や患者の性別、年齢、症状等に応じて適宜検討して決定すればよいが、優れた薬理作用を得る観点及び/又は優れた防腐効果を得る観点から、水性組成物全容量に対して、一般式(1)で表される化合物のフリー体に換算して0.01〜10w/v%含有するのが好ましく、0.02〜8w/v%含有するのがより好ましく、0.04〜6w/v%含有するのが特に好ましい。中でも、一般式(1)で表される化合物としてリパスジルを用いる場合においては、優れた薬理作用を得る観点及び/又は優れた防腐効果を得る観点から、水性組成物全容量に対して、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を、フリー体に換算して0.05〜5w/v%含有するのが好ましく、0.1〜3w/v%含有するのがより好ましく、0.15〜2w/v%含有するのが特に好ましい。
【0035】
本明細書において「トロメタモール」は特に限定されず、日本薬局方外医薬品規格2002に収載のトロメタモールや、米国薬局方に収載のTromethamine等を用いてもよい。
トロメタモールは公知であり、公知の方法により製造しても良いし、市販品を用いても良い。市販品としては例えば、トロメタモール(和光純薬工業(株))等が挙げられる。
【0036】
水性組成物中のトロメタモールの含有量は特に限定されないが、変色抑制作用の観点及び/又は優れた防腐効果を得る観点から、水性組成物全容量に対して0.01〜30w/v%含有するのが好ましく、0.05〜25w/v%含有するのがより好ましく、0.1〜20w/v%含有するのが特に好ましい。
また、水性組成物中の前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物とトロメタモールの含有質量比率は特に限定されないが、変色抑制作用の観点及び/又は優れた防腐効果を得る観点から、一般式(1)で表される化合物のフリー体に換算して1質量部に対し、トロメタモールを0.01〜75質量部含有するのが好ましく、0.05〜65質量部含有するのがより好ましく、0.15〜55質量部含有するのが特に好ましい。中でも、一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物がリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である場合においては、変色抑制作用の観点及び/又は優れた防腐効果を得る観点から、リパスジルのフリー体に換算して1質量部に対し、トロメタモールを0.1〜70質量部含有するのが好ましく、0.2〜60質量部含有するのがより好ましく、0.3〜50質量部含有するのが特に好ましい。
【0037】
本明細書において「水性組成物」とは、少なくとも水を含有する組成物を意味し、その性状としては、液状(溶液又は懸濁液)、半固形状(軟膏)が挙げられ、液状が好ましい。なお、組成物中の水としては例えば、精製水、注射用水、滅菌精製水等を用いることができる。
水性組成物に含まれる水の含有量は特に限定されないが、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらにより好ましく、90〜99.8質量%が特に好ましい。
【0038】
水性組成物は、例えば、第十六改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法に従って、種々の剤形とすることができる。剤形としては、例えば、注射剤、吸入液剤、点眼剤、眼軟膏剤、点耳剤、点鼻液剤、注腸剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、ゲル剤、経口液剤、シロップ剤等が挙げられる。剤形としては、一般式(1)で表される化合物の有する薬理作用を有利に利用する観点から、眼科用剤、具体的には点眼剤、眼軟膏剤が好ましく、点眼剤が特に好ましい。
【0039】
水性組成物には、上記した以外に、剤形に応じて、医薬品や医薬部外品等で利用される添加物を含んでいても良い。このような添加物としては、例えば、無機塩類、等張化剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、防腐剤、抗酸化剤、粘稠化剤、界面活性剤、可溶化剤、懸濁化剤、清涼化剤、分散剤、保存剤、油性基剤、乳剤性基剤、水溶性基剤等が挙げられる。
こうした添加物としては、具体的には例えば、アスコルビン酸、アスパラギン酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アルギン酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸ベンジル、イプシロン−アミノカプロン酸、ウイキョウ油、エタノール、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エデト酸ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩酸、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、カルボキシビニルポリマー、乾燥亜硫酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、d−カンフル、dl−カンフル、キシリトール、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、グリセリン、グルコン酸、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸ナトリウム、クレアチニン、クロルヘキシジングルコン酸塩液、クロロブタノール、結晶リン酸二水素ナトリウム、ゲラニオール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム水和物、酸化チタン、ジェランガム、ジブチルヒドロキシトルエン、臭化カリウム、臭化べンゾドデシニウム、酒石酸、水酸化ナトリウム、ステアリン酸ポリオキシル45、精製ラノリン、D−ソルビトール、ソルビトール液、タウリン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、チメロサール、チロキサポール、デヒドロ酢酸ナトリウム、濃グリセリン、濃縮混合トコフェロール、白色ワセリン、ハッカ水、ハッカ油、濃ベンザルコニウム塩化物液50、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ヒアルロン酸ナトリウム、人血清アルブミン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、氷酢酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、フェニルエチルアルコール、ブドウ糖、プロピレングリコール、ベルガモット油、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム塩化物液、ベンジルアルコール、ベンゼトニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物液、ホウ砂、ホウ酸、ポビドン、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングルコール(70)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、d−ボルネオール、マクロゴール4000、マクロゴール6000、D−マンニトール、無水クエン酸、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、メタンスルホン酸、メチルセルロース、l-メントール、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ユーカリ油、ヨウ化カリウム、硫酸、硫酸オキシキノリン、流動パラフィン、リュウノウ、リン酸、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リンゴ酸、ワセリン等が例示される。
【0040】
添加物としては、例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、グリセリン、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム水和物、酒石酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、濃グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ホウ砂、ホウ酸、ポビドン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、マクロゴール4000、マクロゴール6000、無水クエン酸、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、メチルセルロース、モノエタノールアミン、リン酸、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、ヒアルロン酸ナトリウム、ブドウ糖、l-メントール等が好ましい。
【0041】
水性組成物は、さらに、上記した以外に、適用疾患等に応じて、他の薬効成分を含んでいても良い。このような薬効成分としては、例えば、ブナゾシン塩酸塩などのブナゾシン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むα1受容体遮断薬;ブリモニジン酒石酸塩などのブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、アプラクロニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むα2受容体作動薬;カルテオロール塩酸塩などのカルテオロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ニプラジロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、チモロールマレイン酸塩などのチモロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ベタキソロール塩酸塩などのベタキソロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、レボブノロール塩酸塩などのレボブノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ベフノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、メチプラノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むβ遮断薬;ドルゾラミド塩酸塩などのドルゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ブリンゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、アセタゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ジクロルフェナミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、メタゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む炭酸脱水酵素阻害剤;イソプロピルウノプロストン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、タフルプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、トラボプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ビマトプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ラタノプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むプロスタグランジン類;ジピべフリン塩酸塩などのジピべフリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、エピネフリン、エピネフリンホウ酸塩、エピネフリン塩酸塩などのエピネフリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む交感神経作動薬;ジスチグミン臭化物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ピロカルピン、ピロカルピン塩酸塩、ピロカルピン硝酸塩などのピロカルピン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、カルバコール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む副交感神経作動薬;ロメリジン塩酸塩などのロメリジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むカルシウム拮抗薬;デメカリウム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、エコチオフェート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、フィゾスチグミン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むコリンエステラーゼ阻害剤などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を配合できる。
他の薬効成分としては、ラタノプロスト、ニプラジロール、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、チモロール及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0042】
水性組成物のpHは特に限定されないが、4〜9が好ましく、4.5〜8がより好ましく、5〜7が特に好ましい。また、生理食塩水に対する浸透圧比は特に限定されないが、0.6〜3が好ましく、0.6〜2が特に好ましい。
【0043】
水性組成物は、保存安定性、携帯性等の観点から、容器に収容されるのが好ましい。本明細書において「容器」とは、前記水性組成物を直接的に収容する包装体を意味する。容器は、第十六改正日本薬局方 通則に定義される「密閉容器」、「気密容器」、「密封容器」のいずれをも包含する概念である。
【0044】
容器の形態は、水性組成物を収容可能であることを限度として特に限定されず、剤形等に応じて適宜選択、設定すればよい。このような容器の形態としては、具体的には例えば、注射剤用容器、吸入剤用容器、スプレー剤用容器、ボトル状容器、チューブ状容器、点眼剤用容器、点鼻剤用容器、点耳剤用容器、バッグ容器等が挙げられる。また、これらの容器はさらに箱、袋等によって包装されていてもよい。
【0045】
容器の材質(材料)は特に限定されず、容器の形態に応じて適宜選択すればよい。具体的には例えば、ガラス、プラスチック、セルロース、パルプ、ゴム、金属等が挙げられる。加工性、スクイズ性や耐久性の観点から、プラスチック製であるのが好ましい。プラスチック製容器の樹脂としては、熱可塑性樹脂であるのが好ましく、例えば、低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレンを含む)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレナフタレート)等のポリエステル系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;スチレン系樹脂などが挙げられ、これらの混合体(ポリマーアロイ)であってもよい。
容器の材質としては、特に限定されないが、変色抑制作用の観点からポリオレフィン系樹脂であるのが好ましく、ポリプロピレンであるのが特に好ましい。後記試験例の通り、容器がポリオレフィン系樹脂製容器の場合において、優位に変色が抑制される。
【0046】
本明細書において「ポリオレフィン系樹脂製容器」とは、容器のうち少なくとも水性組成物と接する部分が「ポリオレフィン系樹脂製」である容器を意味する。従って、例えば、水性組成物と接する内層にポリオレフィンの層を設け、その外側に他の材質の樹脂等を積層等させてなる容器も、「ポリオレフィン系樹脂製容器」に該当する。ここで、ポリオレフィン系樹脂は特に限定されず、単一種のモノマーの重合体(ホモポリマー)であっても、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、コポリマーである場合においては、その重合様式は特に限定されず、ランダム重合でもブロック重合でもよい。さらに、その立体規則性(タクティシティー)は特に限定されない。
このようなポリオレフィン系樹脂としては、具体的には例えば、ポリエチレン(より詳細には例えば低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレンを含む)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリ(4−メチルペンテン)、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組合わせて使用できる。ポリオレフィン系樹脂としては、変色を抑制する観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンがより好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。
なお、本明細書において「ポリオレフィン系樹脂製」とは、その材質の少なくとも一部にポリオレフィン系樹脂を含んでいることを意味し、例えば、ポリオレフィン系樹脂と他の樹脂との2種以上の樹脂の混合体(ポリマーアロイ)も「ポリオレフィン系樹脂製」に含まれる。
【0047】
ポリオレフィン系樹脂製容器には、さらに紫外線吸収剤や紫外線散乱剤などの紫外線の透過を妨げる物質を練り込むのが好ましい。これにより、一般式(1)で表される化合物の光に対する安定性が改善される。こうした物質としては、具体的には例えば、紫外線散乱剤としては、酸化チタン;酸化亜鉛等が挙げられる。また、紫外線吸収剤としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール(例えば、Tinuvin P:BASF社)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(例えば、Tinuvin 234:BASF社)、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(例えば、Tinuvin320:BASF社)、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール(例えば、Tinuvin 326:BASF社)、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(例えば、Tinuvin327:BASF社)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール(例えば、Tinuvin PA328:BASF社)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(例えば、Tinuvin 329:BASF社)、2,2'−メチルレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(例えば、Tinuvin 360:BASF社)、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300の反応生成物(例えば、Tinuvin 213:BASF社)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール(例えば、Tinuvin 571:BASF社)、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−(3'',4'',5'',6''−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5'−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2'−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,2−ビス{[2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイルオキシ]メチル}プロパン−1,3−ジイル=ビス(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート)(例えば、Uvinul 3030 FF:BASF社)、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸エチル(例えば、Uvinul 3035:BASF社)、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルへキシル(例えば、Uvinul 3039:BASF社)等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(例えば、Tinuvin 1577 ED:BASF社)等のトリアジン系紫外線吸収剤;オクタベンゾン(例えば、Chimassorb 81:BASF社)、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンフェノン(例えば、Uvinul 3049:BASF社)、2,2'−4,4'−テトラヒドロベンフェノン(例えば、Uvinul 3050:BASF社)、オキシベンゾン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;ジイソプロピルケイ皮酸メチル、シノキサート、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ケイ皮酸ベンジル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、4−[N,N−ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミノ]安息香酸エチル等の安息香酸エステル系紫外線吸収剤;サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸メチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤;グアイアズレン;ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル;2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5−トリアジン;パラヒドロキシアニソール;4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン;フェニルベンズイミダゾールスルホン酸;2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)−安息香酸ヘキシルなどが挙げられる。
【0048】
なお、紫外線の透過を妨げる物質を容器に練り込む場合、その配合割合は、当該物質の種類等によって異なるが、例えば、容器中に、0.001〜50質量%、好ましくは0.002〜25質量%、特に好ましくは0.01〜10質量%程度とすればよい。
【0049】
容器は、その内部が肉眼で視認可能(観察可能)であるのが好ましい。内部が視認可能であれば、医薬製剤の製造工程において異物混入の有無等の検査が可能となる、医薬製剤の使用者が内容物(水性組成物)の残量を確認できる等のメリットが生ずる。ここで、視認可能性は、少なくとも容器表面の一部において確保されていればよい(例えば、点眼剤用容器の側面がシュリンクフィルム等により見通せなくなっていても、底面が視認可能であれば視認可能と言える。)。容器表面の一部において内部が視認可能であれば、これにより、容器内の水性組成物が確認可能となる。
【0050】
容器への水性組成物の収容手段は特に限定されず、容器の形態等に従って常法により充填等すればよい。
【0051】
水性組成物や医薬製剤の適用疾患は特に限定されず、前記一般式(1)で表される化合物の有する薬理作用等に応じて適宜選択すればよい。
具体的には例えば、一般式(1)で表される化合物の有するRhoキナーゼ阻害作用や眼圧低下作用に基づき、高眼圧症や緑内障の予防又は治療剤として利用できる。ここで、緑内障としては、より詳細には例えば、原発性開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、房水産生過多緑内障、急性閉塞隅角緑内障、慢性閉塞隅角緑内障、plateau iris syndrome、混合型緑内障、ステロイド緑内障、水晶体の嚢性緑内障、色素緑内障、アミロイド緑内障、血管新生緑内障、悪性緑内障などが挙げられる。
【0052】
また、日本国特許第5557408号公報に開示されるように、眼底疾患(主として網膜及び/又は脈絡膜に発現する病変。具体的には例えば、高血圧と動脈硬化による眼底変化、網膜中心動脈閉塞症、網膜中心静脈閉塞症(central retinal vein occlusion)や網膜静脈分枝閉塞症(branch retinal vein occlusion)等の網膜静脈閉塞症、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病黄斑症、イールズ病(Eales disease)、コーツ病(Coats disease)等の網膜血管先天異常、ヒッペル病(von Hippel disease)、脈なし病(pulseless disease)、黄斑疾患(中心性網脈絡膜症(central serous chorioretinopathy)、嚢胞様黄斑浮腫(cystoid macular edema)、加齢黄斑変性(age-related macular degeneration)、黄斑円孔(macular hole)、近視性黄斑萎縮(myopic macular degeneration)、網膜硝子体界面黄斑変性症、薬物毒性黄斑変性症、遺伝性黄斑変性等)、(裂孔原性、牽引性、滲出性等の)網膜剥離、網膜色素変性症、未熟児網膜症等が挙げられる。)の予防又は治療剤、より好適には糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫又は加齢黄斑変性の予防又は治療剤として利用できる。
【0053】
なお、水性組成物や医薬製剤を眼疾患(好適には、高眼圧症、緑内障及び眼底疾患から選ばれる疾患:特に好適には、高眼圧症及び緑内障から選ばれる疾患)の予防及び/又は治療剤として利用する場合においては、1日1〜3回程度、投与すればよい。
【実施例】
【0054】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
なお、以下の試験例において、リパスジル1塩酸塩2水和物は、例えば国際公開第2006/057397号パンフレット記載の方法により製造することが出来る。
【0055】
[試験例1]保存試験
表1に示す成分及び分量を100mL当たりに含有する実施例1、実施例2及び比較例1の水性組成物を常法により調製し、ポリプロピレン製の容器に収容した。
得られた各水性組成物を80℃で1週間保存した。保存前後での変色(黄変)の程度は、保存前後での水性組成物の色差(ΔYI)を色差計(分光測色計CM−700d:コニカミノルタセンシング(株))を用いて測定することにより評価した。
結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1記載の結果の通り、リパスジルを含有する水性組成物にさらにトロメタモールを含有せしめた場合、トロメタモールを含有しない場合と比較してΔYIの値が低くなり、高温保存後の変色が抑制されることが明らかとなった。また、ΔYIの値は、トロメタモールの含有量の増加に比例して低い値となることが明らかとなった。
【0058】
以上の試験結果から、リパスジルに代表される一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物にさらにトロメタモールを含有せしめた場合、高温で保存した場合でも相対的に変色(黄変)が生じ難く、保存安定性に優れることが明らかとなった。
【0059】
[試験例2]リパスジルとトロメタモールの組合わせによる防腐効果の確認
リパスジルとトロメタモールとの組合わせに係る防腐効果の有無を確認するため、微生物としてカンジダ(Candida albicans)を用い、以下の試験を実施した。
すなわち、Candida albicansをサブロー・ブドウ糖カンテン培地に播種し、20〜25℃で40〜48時間培養した。その後、培養菌体をペプトン食塩緩衝液に懸濁して、1mL当たり菌体が約10
7〜10
8個となるように調整し、試験菌懸濁液を得た。
下記の方法で調製した各種製剤サンプルに対し試験菌懸濁液を接種した後、容器に充填し、20〜25℃で遮光条件下、14日間保存した。
保存後、各種製剤サンプルを順次10倍ずつ希釈した希釈系列を調製し、カンテン平板混釈法に従い、20〜25℃で5〜7日間培養した。
培養後、形成されたコロニー数と希釈倍数とから、各種製剤サンプル1mL中の生菌数を算出した。
得られた生菌数と接種菌数(接種時の試験菌懸濁液中の生菌数から、サンプル1mL中の生菌数に換算した。)から、以下の式により生菌残存率(%)を算出した。
【0060】
〔数1〕
生菌残存率(%) = 14日保存後の各種製剤サンプル1mL当たりの生菌数 / 接種菌数 ×100
【0061】
なお、製剤サンプルとしては、リパスジルを単独で含有する製剤サンプル、トロメタモールを単独で含有する製剤サンプル、並びにリパスジル及びトロメタモールを含有する製剤サンプルの3種類を用いた。
【0062】
<リパスジルを単独で含有する製剤サンプル(表中において、「リパスジルのみ」と表記する。)>
100mL当たり、リパスジル1塩酸塩2水和物 0.4896g(リパスジルのフリー体として0.4g)、無水リン酸二水素ナトリウム 0.4g、グリセリン 2.136g、水酸化ナトリウム 適量(pH 6.0)及び滅菌精製水(残余)を含有する水性組成物を調製し、フィルター滅菌して製剤サンプルとした。
【0063】
<トロメタモールを単独で含有する製剤サンプル(表中において、「トロメタモールのみ」と表記する。)>
100mL当たり、トロメタモール 1.5g、無水リン酸二水素ナトリウム 0.4g、グリセリン 2.136g、水酸化ナトリウム 適量(pH6.0)及び滅菌精製水(残余)を含有する水性組成物を調製し、フィルター滅菌して製剤サンプルとした。
【0064】
<リパスジル及びトロメタモールを含有する製剤サンプル(表中において、「リパスジル+トロメタモール」と表記する。)>
100mL当たり、リパスジル1塩酸塩2水和物 0.4896g(リパスジルのフリー体として0.4g)、トロメタモール 1.5g、無水リン酸二水素ナトリウム 0.4g、グリセリン 2.136g、水酸化ナトリウム 適量(pH 6.0)及び滅菌精製水(残余)を含有する水性組成物を調製し、フィルター滅菌して製剤サンプルとした。
【0065】
結果を表2に示す。
【表2】
【0066】
表2記載の結果より、リパスジル単独では14日間の保存により生菌数の減少が認められ、防腐効果が多少確認されたものの、十分な作用ではなかった。また、トロメタモール単独では14日間の保存により生菌数の増加が認められ、防腐効果は確認されなかった。
一方、リパスジルとトロメタモールとの組み合わせでは14日間の保存により生菌数の大幅な減少が認められ、優れた防腐効果が奏されることが確認された。
【0067】
[試験例3]リパスジルとトロメタモールの組合わせによる防腐効果の確認 その2
リパスジルとトロメタモールとを組合わせることによる微生物(細菌及び真菌)に対する防腐効果の有無をより詳細に確認するため、細菌として緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)及び大腸菌(Escherichia coli)を、真菌としてカンジダ(Candida albicans)を用い、以下の試験を実施した。
【0068】
<細菌に対する発育阻止活性の確認>
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)又は大腸菌(Escherichia coli)をソイビーン・カゼイン・ダイジェストカンテン培地に播種し、30〜35℃で、18〜24時間培養した。その後、培養菌体をペプトン食塩緩衝液に懸濁して、1mL当たり菌体が約10
7〜10
8個となるように調整し、試験菌懸濁液を得た。
下記の方法で調製した製剤サンプルに対し試験菌懸濁液を接種した後、容器に充填し、20〜25℃で遮光条件下、14日間及び28日間保存した。
保存後、製剤サンプルを順次10倍ずつ希釈した希釈系列を調製し、カンテン平板混釈法に従いレシチン・ポリソルベート80添加ソイビーン・カゼイン・ダイジェストカンテン培地に混釈し、30〜35℃で5〜7日間培養した。
培養後、形成されたコロニー数と希釈倍数とから、各種製剤サンプル1mL中の生菌数を算出した。
【0069】
<カンジダに対する発育阻止活性の確認>
保存日数を14日間及び28日間としたほかは試験例2と同様の方法により試験を実施した。
【0070】
なお、製剤サンプルとしては、以下の組成の製剤を用いた。
<リパスジル及びトロメタモールを含有する製剤サンプル>
100mL当たり、リパスジル1塩酸塩2水和物 0.4896g(リパスジルのフリー体として0.4g)、トロメタモール 5g、無水リン酸二水素ナトリウム 0.4g、グリセリン 2.136g、水酸化ナトリウム 適量(pH 6.0)及び滅菌精製水(残余)を含有する水性組成物を調製し、フィルター滅菌して製剤サンプルとした。
【0071】
結果を表3に示す。なお、接種菌数は、接種時の試験菌懸濁液中の生菌数から、サンプル1mL中の生菌数に換算した。
【0072】
【表3】
【0073】
表3記載の結果より、リパスジルとトロメタモールの組合わせは、細菌及び真菌に対し優れた防腐効果を有することが明らかとなった。
【0074】
[製造例1〜27]
表4〜表6に記載の成分及び分量(水性組成物100mL当たりの量(g))を含有する水性組成物を常法により製造できる。
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
【表6】
【0078】
[製造例28〜54]
製造例1〜27において、リパスジル1塩酸塩2水和物の代わりに同量の4−ブロモ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリンを用いたものを、製造例28〜54の水性組成物として、常法により製造できる。
【0079】
[製造例55〜108]
製造例1〜54の水性組成物をポリプロピレン製の点眼剤用容器に収容することにより、製造例55〜108の医薬製剤として、常法により製造できる。
【0080】
[製造例109〜162]
製造例1〜54の水性組成物をポリエチレン製の点眼剤用容器に収容することにより、製造例109〜162の医薬製剤として、常法により製造できる。