(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
得られたハイブリッド繊維コードのASTM D885によって測定された切断強度及び破断伸び率がそれぞれ8.0g/d〜15.0g/d及び7%〜15%である請求項1〜5のいずれか1つに記載のハイブリッド繊維コードの製造方法。
【背景技術】
【0002】
タイヤ、コンベヤベルト、V−ベルト、ホースなどのゴム製品の補強材として、繊維コード、特に、接着剤で処理された繊維コードが広く用いられている。繊維コードの材料としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維などがある。最終的なゴム製品の性能を向上させる重要な方法の一つは、補強材として使用される繊維コードの物性を向上させることである。
【0003】
自動車の性能が向上し、道路状況の改善によって走行速度が漸次増加しており、高速走行時にもタイヤの安定性及び耐久性を維持できるように、タイヤのゴム補強材として使用されるタイヤコードに対する研究が活発に進められている。
【0004】
タイヤコードは、使用される部位及び役割によって区分され、タイヤを全体的に支持するカーカス部分と、高速走行による荷重支持及び変形を防止するベルト部分と、ベルト部分の変形を防止するキャッププライ部分とに分けられる。最近、高速道路の状況が改善され、かつ自動車の走行速度が増加することによって、タイヤのベルト部分が変形し、乗り心地が低下するなどの問題が発生しており、前記ベルト部分の変形を防止するためのキャッププライに対する重要度が増加している。
【0005】
現在使用されているキャッププライ素材としては、ナイロンとアラミドとが主軸をなしている。そのうち、ナイロンは、他の素材に比べて低価格、優れた接着性能及び疲労後の接着性能を示すため、ほとんどのタイヤ規格で使用されている。また、キャッププライで要求される高速でのベルトコード支持のために有利な高い収縮応力を示す。しかし、ナイロンは、モジュラス部分で低値を示し、常温及び高温での変化が大きいため、フラットスポットなどの性能を示し、キャッププライとしての短所がある。
【0006】
前記ナイロンの他にキャッププライ素材として使用されているアラミドは、ナイロンに比べて低い収縮応力を示すが、優れたクリープ特性を保有しており、モジュラス特性が非常に高く、常温及び高温でのモジュラスの変化量が少ないため、長時間駐車した場合でも、タイヤが変形するフラットスポット現象をほとんど示さない。このようなアラミド材質は、タイヤの品質が非常に重要視される高級タイヤで主に使用されているが、材料自体が非常に高価であるため、汎用的なタイヤでは使用がほとんど不可能である。また、アラミドは、高いモジュラスによってタイヤ成形及び加硫中の膨張が非常に困難であるため、一般的なタイヤに使用しにくく、低い破断伸度によって低い疲労性能を示し、長期間の耐久性を確保しにくいという短所がある。
【0007】
これを補完するために、ナイロンとアラミドとを共に使用するハイブリッド構造が開発されてきたが、ナイロンとアラミドとの大きな物性差を考慮して、主に、ナイロンとアラミドとの下撚りの撚り数とその合撚糸の上撚りの撚り数とが全て異なる構造が使用されてきた。これによって、タイヤ製造中の膨張問題と疲労耐久性との問題を解決することができたが、全て異なる撚り数とするための球形リング撚糸機または特殊撚糸機の使用によって、生産性が低下するという限定された製造可能性、不安定な構造による物性変動値の増加及び不良率の上昇などの問題を有しており、使用量の拡大において限界が発生した。
【0008】
具体的に説明すると、従来のハイブリッドコードは、異なる撚り数をそれぞれ有するナイロン下撚り糸及びアラミド下撚り糸を含むだけでなく、これらが共に上撚りされるときにも異なる撚り数で上撚りされるため、ハイブリッド繊維コードの全体の物性が、下撚りの各撚り数及び上撚りの撚り数に支配的な影響を受けた。
【0009】
また、
図1に概略的に示したように、従来の方法によると、ナイロン下撚り糸11とアラミド下撚り糸12が共に上撚りされるとき、ナイロン下撚り糸11をアラミド下撚り糸12が被覆する形態で合撚糸10が製造される。その結果、合撚糸10を接着剤溶液に浸漬させた後、乾燥及び熱処理する際、合撚糸10とガイド及びローラーとの間の摩擦が激しくなり、ナイロン下撚り糸11を被覆するアラミド下撚り糸12が押されてループを形成し、あるいは、ナイロン下撚り糸11の収縮による形態不均一がもたらされた。このようなループ形成及び形態不均一は、ハイブリッド繊維コードの物性不均一及び製造不良を招く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記のような関連技術の制限及び短所に起因した各問題を防止できるハイブリッド繊維コード及びその製造方法に関する。
【0011】
本発明の一観点は、既存のハイブリッド繊維コードに比べてその製造が簡便なだけでなく、より均一な物性及び改善された強度と耐疲労性とを有することによって、超高性能タイヤに適用可能なナイロンフィラメント及びアラミドフィラメントを含むハイブリッド繊維コードを提供することである。
【0012】
本発明の他の観点は、既存のハイブリッド繊維コードに比べてその製造が簡便なだけでなく、より均一な物性及び改善された強度と耐疲労性とを有することによって、超高性能タイヤに適用可能なナイロンフィラメント及びアラミドフィラメントを含むハイブリッド繊維コードの製造方法を提供することである。
【0013】
以下に、本発明の特徴及び利点を記述しており、部分的にはそのような記述から自明になるだろう。または、本発明の実施を通じて、本発明の更に他の特徴及び利点が理解され得るだろう。本発明の目的及び他の利点は、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲で特定された構造によって実現、達成されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記のような本発明の一観点によると、第1の撚り数を有するナイロン下撚り糸及び第2の撚り数を有するアラミド下撚り糸を含み、前記第1の撚り数及び前記第2の撚り数は同一であり、前記ナイロン下撚り糸及び前記アラミド下撚り糸は、同一の構造で共に上撚りされていることを特徴とするハイブリッド繊維コードが提供される。
【0015】
本発明の他の観点によると、ナイロンフィラメントを第1の撚り数で下撚りすることによってナイロン下撚り糸を製造する第1のステップ、アラミドフィラメントを第2の撚り数で下撚りすることによってアラミド下撚り糸を製造する第2のステップ及び前記ナイロン下撚り糸及び前記アラミド下撚り糸を同一の構造で共に上撚りすることによって合撚糸を製造する第3のステップを含み、前記第1の撚り数と前記第2の撚り数は同一であることを特徴とするハイブリッド繊維コードの製造方法が提供される。
【0016】
前記のような一般的敍述及び以下の詳細な説明は、いずれも本発明を例示または説明するためのものに過ぎなく、特許請求の範囲の発明に対するより詳細な説明を提供するためのものと理解しなければならない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ナイロン合撚糸とアラミド合撚糸とが同一の下撚りの撚り数を有するため、ハイブリッド繊維コードに対する製造工程の単純化及び適用機器の拡大を達成することができる。
【0018】
また、撚糸工程時、モジュラス特性が異なるナイロン下撚り糸とアラミド下撚り糸とが同一の構造を有し得るように張力を調節することによって、ナイロン下撚り糸にアラミド下撚り糸が被覆される形態で製造されることなく、ナイロン下撚り糸とアラミド下撚り糸とが同一の比率で撚られた安定した構造を与えることができる。その結果、ハイブリッド繊維コードの物性変動値及び不良率を減少させ得るだけでなく、改善された強度と耐疲労性を有することによって、高速走行用タイヤのキャッププライに効果的に適用できるハイブリッド繊維コードを提供することができる。
【0019】
本発明の他の利点は、関連する技術的特徴と共に、以下で詳細に記述されるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の技術的思想及び範囲から逸脱しない範囲内で本発明の多様な変更及び変形が可能であることは、当業者にとって自明であろう。したがって、本発明は、特許請求の範囲に記載した発明及びその均等物の範囲内の変更及び変形を全て含む。
【0022】
下撚りは、フィラメントを反時計方向、すなわち、Z−方向に撚ることによって行うことができ、上撚りは、各下撚り糸を時計方向、すなわち、S−方向に共に撚ることによって行うことができる。
【0023】
本明細書で使用される「合撚糸(ply yarn)」とは、2本以上の下撚り糸を共に撚って作った糸を意味し、「ローコード(raw cord)」と称される場合もある。
【0024】
本明細書で使用される「繊維コード」は、ゴム製品に直ぐ適用されるように接着剤を含有した合撚糸を意味し、「ディップコード(dipped cord)」と称される場合もある。合撚糸で織物を製造した後、この織物を接着剤溶液に浸漬させた場合の接着剤を含有した織物も「繊維コード」に含まれる。
【0025】
本明細書で使用される「撚り数(twist number)」とは、1m当たりの撚りの回数を意味し、その単位はTPM(Twist Per Meter)である。
【0026】
本発明のハイブリッド繊維コードは、ナイロンフィラメント及びアラミドフィラメントを含む。前記ナイロンフィラメントとアラミドフィラメントの重量比は、20:80〜80:20とすることができる。
【0027】
本発明のハイブリッド繊維コードは、ナイロンフィラメントとアラミドフィラメントがそれぞれ同一の撚り数で下撚りされたナイロン下撚り糸とアラミド下撚り糸とが共に上撚りされた2プライ―合撚糸及び前記合撚糸にコーティングされた接着剤を含む。
【0028】
本発明のハイブリッド繊維コードは、ASTM D885によって測定された切断強度が8.0g/d〜15.0g/dで、ASTM D885によって測定された破断伸び率が7%〜15%で、乾熱収縮率が1.5%〜2.5%である特性を示す。
【0029】
本発明のハイブリッド繊維コードにおいて、同一の条件で製造された各物性の最小値と最大値との差は、切断強度が1g/d以内、破断伸び率が3%以内の値を示す。
【0030】
本発明のハイブリッド繊維コードは、日本標準協会(Japanese Standard Association:JSA)のJIS―L 1017方法によって実施されるディスク疲労テスト後の強力維持率が80%以上である。
【0031】
本発明の一実施例によれば、前記ハイブリッド繊維コードは、a)ケーブルコーダー(Cable Corder)のように下撚り及び上撚りを同時に行う撚糸機を用いてナイロンフィラメントとアラミドフィラメントに対して同一の撚り数で下撚り及び上撚りを同時に実施し、合撚糸を製造するステップ及びb)このように製造された前記合撚糸を接着剤溶液に浸漬させた後、乾燥及び熱処理するステップを含む方法によって製造される。
【0032】
以下では、本発明をより詳細に説明する。
【0033】
本発明に係るハイブリッド繊維コードは、接着力及び耐熱性・耐疲労性に優れたナイロンフィラメント及びアラミドフィラメントが混合されたハイブリッドタイプであって、ナイロンフィラメントの低いモジュラスをアラミドフィラメントが補完し、アラミドフィラメントの低い収縮力をナイロンフィラメントが補完し、価格を低下させることによって製品の競争力を高める。
【0034】
本発明のハイブリッド繊維コードが適用され得るタイヤのキャッププライは、スチールワイヤまたは織物繊維で構成されたベルト上に付着する特殊コード紙であって、自動車走行性能を向上させ、ベルトの離脱現象を防止するためのものである。ハイブリッド繊維コードは、ナイロン及びアラミドフィラメントが有する物性などの材料上の側面と、撚り数及び合糸順序などの工程上の側面とを全て考慮しなければならない。
【0035】
ナイロンは、主鎖に強い極性を有するアミド基を含有し、立体規則性及び対称性を有するので結晶性を有する。繊維コードの製造に使用されるナイロンフィラメントは、本発明で特別に限定しないが、繊維コードとして使用するのに適切な物性、すなわち、引張強度が8g/d以上で、切断伸び度が17%以上であることが好ましい。しかし、前記条件未満であると、低い強度によって多量のコードが使用されることによって、タイヤの重さが増加し、自動車走行時のベルトの動きを十分に防止できないという問題が発生する。また、低い破断伸度により、反復的なタイヤの走行の疲労現象によって強度損傷が大きく発生するという問題がある。
【0036】
使用可能なナイロンフィラメントとしては、一般的なナイロン6、ナイロン66及びナイロン6.10からなる群から選ばれた1種のフィラメントが可能であり、ナイロン66を使用することが好ましい。
【0037】
アラミドは、前記のナイロン系高分子のうち一つであって、アミド基を除いた全ての主鎖にフェニル環が連結されており、ナイロンに比べて10倍以上のモジュラスを示す。アラミドとしては、フェニル環とアミド基との連結状態に応じてパラ(p−)及びメタ(m−)があり、下記の化学式1で表示するように、パラ形態で結合されたポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(poly(p−phenylene terephthalamide))を使用することが好ましい。
【0039】
前記式において、nは、アラミドの分子量によって決定されるものであって、本発明では特に限定されない。
【0040】
前記化学式1の構造を有するアラミドフィラメントは、フェニル環が互いに板状に積層されるため結晶度が高く、熱に対する安定性に優れ、モジュラスが非常に高く、主に繊維として用いられる。このようなアラミドフィラメントも、繊維コードとして使用するためには、引張強度が20g/d以上で、切断伸び度が3.0%以上であることが好ましい。しかし、前記条件未満であると、発明で追求するナイロンフィラメントの低い強度が補償されず、その結果、繊維コードがタイヤの内部での支持を十分に行えない。
【0041】
本発明に係るハイブリッド繊維コードの物性は、これを構成するナイロンフィラメントとアラミドフィラメントの混合比によって調節することができ、このとき、各フィラメントの混合比は、ハイブリッド繊維コードに要求される物性を満足させ、各フィラメントの短所が十分に補完されるように決定される。一般に、アラミドフィラメントは、ナイロンフィラメントに比べて10倍程度のモジュラスを有しているため、15重量%程度が導入されたとしても、ナイロン単一素材に比べて2倍〜3倍程度のモジュラスを有するようになり、その結果、フラットスポット現象を相当減少させることができる。本発明によると、繊維コードの物性と費用を考慮して、ナイロンフィラメント20重量%〜80重量%とアラミドフィラメント80重量%〜20重量%を使用する。
【0042】
ナイロンフィラメントを過度に使用する場合、最終的に得られたハイブリッド繊維コードがナイロンフィラメントの物性が優位となり、フラットスポット現象が発生し、アラミドフィラメントを過度に使用すると、物性は向上するが、収縮力が低いため、自動車走行によるベルトコードの動きを効果的に防止することができず、費用が上昇する。
【0043】
前記ハイブリッド繊維コードのナイロン下撚り糸及びアラミド下撚り糸は、同一の撚り数を有する。一般に、繊維の撚り数が高いと、強力は低下するが、疲労性能が増加し、その反対に、撚り数が低いほど、強力は増加する一方、疲労性能が減少する。
【0044】
本発明によれば、
図2に例示したように、前記二つの種類の下撚り糸110、120は、同一の撚り数を有するだけでなく、互いに同一の構造を有することによってハイブリッド繊維コードの強力及び疲労性能が類似する挙動を示す。このときに適用されるナイロン下撚り糸110及びアラミド下撚り糸120の撚り数は、ナイロンフィラメントの繊度を基準にして定められる。
【0045】
本発明に係るハイブリッド繊維コードのナイロン下撚り糸110及びアラミド下撚り糸120は、300TPM〜500TPM範囲の同一の撚り数を有する。例えば、ナイロンフィラメントの総繊度が840デニールである場合は、ナイロン下撚り糸110及びアラミド下撚り糸120の適切な撚り数は470TPMであり、ナイロンフィラメントの総繊度が1890デニールである場合は、ナイロン下撚り糸110及びアラミド下撚り糸120の適切な撚り数は300TPMである。
【0046】
アラミドフィラメントの繊度は、ナイロンフィラメントと同一又は類似する範囲を有することが好ましい。
【0047】
上述した本発明のハイブリッド繊維コードの製造方法をより詳細に説明する。
【0048】
本発明のハイブリッド繊維コードは、ナイロンフィラメントとアラミドフィラメントとのそれぞれに対する下撚り工程及び前記下撚り工程によって製造されるナイロン下撚り糸110及びアラミド下撚り糸120を共に撚る上撚り工程を同時に行い、前記下撚り及び上撚り工程によって製造された合撚糸100を接着剤溶液に浸漬させた後、乾燥及び熱処理して製造することができる。
【0049】
本発明の撚糸工程は、それぞれのフィラメントを有して各下撚り糸を製造した後、前記下撚り糸を共に上撚りすることによって合撚糸を製造する既存の撚糸工程とは大きな差を示す。すなわち、本発明によると、それぞれの素材に対する撚り数を同一に付与するため、ケーブルコーダーのように上撚り及び下撚りを同時に行う撚糸機を用いて製造可能である。また、本発明によると、下撚りと上撚りが同時に行われる連続式方法で合撚糸100が製造されるため、ナイロンフィラメントとアラミドフィラメントに対してそれぞれ異なる撚糸機によって下撚り糸をそれぞれ製造した後、これらを共に上撚りする工程を経る既存のバッチ式方法に比べてハイブリッド繊維コードの生産性を向上させることができる。
【0050】
上述したように、従来のハイブリッド繊維コードは、異なる撚り数を有するナイロン下撚り糸11及びアラミド下撚り糸12を含むだけでなく、これらが共に上撚りされるときにも異なる撚り数で上撚りされるため、ハイブリッド繊維コードの全体の物性は、下撚りの各撚り数及び上撚りの撚り数に支配的な影響を受けるしかなかった。また、ナイロン下撚り糸11とアラミド下撚り糸12を共に上撚りするとき、
図1に示したように、ナイロン下撚り糸11をアラミド下撚り糸12がカバーリングする形態で合撚糸10が製造されるしかなかった。その結果、前記合撚糸10を接着剤溶液に浸漬させた後、乾燥及び熱処理するとき、前記合撚糸10とガイド及びローラーとの間の摩擦が激しくなり、ナイロン下撚り糸11をカバーリングするアラミド下撚り糸12が押されてループを形成し、あるいは、ナイロン下撚り糸11の収縮による形態不均一がもたらされた。このようなループ形成及び形態不均一は、ハイブリッド繊維コードの物性不均一及び製造不良を招く。
【0051】
本発明によると、ナイロン下撚り糸とアラミド下撚り糸が同一の撚り数を有するため、i)下撚り及び上撚りを同時に行うことによって製造工程の単純化を図ることができ、ii)撚糸工程で撚り不良を著しく減少させることができ、iii)ナイロン下撚り糸110及びアラミド下撚り糸120が
図2に示したように同一の構造を有することによって(すなわち、合撚糸100が全体的に安定した構造を有することによって)、従来のハイブリッド繊維コードで示されるループ形成及び形態不均一などによる物性不均一及び製造不良を著しく減少させることができる。
【0052】
図2に示したように、ナイロン下撚り糸110及びアラミド下撚り糸120が実質的に同一の構造を有するためには、撚糸工程を行うとき、モジュラス特性が異なるナイロンフィラメントとアラミドフィラメントにそれぞれ加えられる張力を適宜調節することができる。
【0053】
タイヤとの接着性を向上させるために、撚糸工程を通じて得られた合撚糸100を接着剤溶液に浸漬又は通過させるステップを経た後、乾燥して熱処理することによって本発明のハイブリッド繊維コードを完成する。
【0054】
前記接着剤溶液としては、本発明では特別に限定されず、この分野で通常的に使用されるタイヤコード用接着剤溶液であるRFL溶液(Resorcinol Formaldehyde Latex)またはエポキシ系接着剤溶液などを使用することができる。
【0055】
前記浸漬工程に続いて行われる乾燥工程の温度及び時間は、前記接着剤溶液の組成によって変わるが、70℃〜200℃で30秒〜120秒間乾燥工程を実施することができる。
【0056】
熱処理工程は、200℃〜250℃で30秒〜120秒間実施することができる。
【0057】
このような乾燥及び熱処理工程を通じて以前のステップで合撚糸100に含浸された接着剤溶液の接着剤成分が合撚糸の表面にコーティングされることによって、タイヤ用ゴム組成物との接着性が増加する。
【0058】
一方、本発明のハイブリッド繊維コードは、撚糸工程で同一の撚り数の下撚りと上撚りを付与するが、接着剤溶液に浸漬した後で乾燥させるステップで撚りが解ける現象が発生し、下撚りと上撚りで15%以内の撚り数差が発生することがある。
【0059】
前記のような方法で製造された本発明のハイブリッド繊維コードは、ASTM D885によって測定された切断強度が8.0g/d〜15.0g/dで、破断伸び率が7%〜15%で、180℃で2分間
、初期荷重0.01g/De'で測定された乾熱収縮率が1.5%〜2.5%である物性を有する。
【0060】
本発明のハイブリッド繊維コードにおいて、同一の条件で製造された各物性の最小値と最大値との差は、切断強度が1g/d以内、破断伸び率が3%以内の値を示す。
【0061】
本発明のハイブリッド繊維コードは、日本標準協会のJIS―L 1017方法によって実施されるディスク疲労テスト後の強力維持率が80%以上である。
【0062】
前記ハイブリッド繊維コードは、特に、キャッププライに好ましく適用されるものであって、自動車の高速走行時に発生するタイヤベルト部分の変形を防止し、従来のナイロン系繊維コードを採用したタイヤで発生するフラットスポット現象を効果的に改善することができる。
【0063】
また、前記ハイブリッド繊維コードは、優れた物性を有する高価のアラミドと低価のナイロンフィラメントとを混合して使用することによって、従来のアラミドフィラメント単一材料で製造された繊維コードに比べて費用が低く、不良率が低減し、生産性を向上させることができるため、製品としての競争力が増加する。
【0064】
以下では、本発明の好ましい実施例を記載する。ただし、下記の実施例は、本発明の好ましい一実施例に過ぎなく、本発明が下記の実施例によって限定されることはない。
【0065】
実施例1
1260De'のナイロンフィラメントと1500De'のアラミドフィラメントに対してケーブルコーダー撚糸機を用いて下撚りを反時計方向に、上撚りを時計方向にそれぞれ同時に行い、ハイブリッド合撚糸を製造した。このとき、300TPMの撚り数が設定された。
【0066】
このように製造されたハイブリッド合撚糸を2.0重量%のレゾルシノール、3.2重量%のホルマリン(37%)、1.1重量%の水酸化ナトリウム(10%)、43.9重量%のスチレン/ブタジエン/ビニルピリジン(15/70/15)ゴム(41%)及び水を含むレゾルシノール−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)接着剤溶液にディッピングした。ディッピング時、ハイブリッド合撚糸に加えられ
た張力は0.5kg/cord
であった。
【0067】
浸漬によってRFL溶液を含有したハイブリッド合撚糸を150℃で100秒間乾燥させた後、240℃で100秒間熱処理することによってハイブリッド繊維コードを完成した。
【0068】
実施例2
840De'のナイロンフィラメントと1000De'のアラミドフィラメントを使用し、相対的に低い繊度を挽回するために相対的に高い撚り数である350TPMの撚り数を設定したことを除いては、実施例1と同一の方法でハイブリッド繊維コードを製造した。
【0069】
実施例3
350TPMの撚り数を設定したことを除いては、実施例1と同一の方法でハイブリッド繊維コードを製造した。
【0070】
比較例
ナイロンフィラメントとアラミドフィラメントをそれぞれ300TPM及び400TPMで下撚りし、ナイロン下撚り糸及びアラミド下撚り糸を製造した後、リング撚糸機(Ring―Twister)を用いて上撚り工程を行うことによってアラミド下撚り糸がナイロン下撚り糸をカバーリングする形態の合撚糸を製造したことを除いては、前記実施例1と同一の方法でハイブリッド繊維コードを製造した。
【0071】
前記の各実施例及び比較例によって得られた各ハイブリッド繊維コードの切断強度及びその不均一性、破断伸び率及びその不均一性、乾熱収縮率、及びディスク疲労テスト後の強力維持率を次の方法でそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0072】
切断強力及びその不均一性&破断伸び率及びその不均一性 ASTM D885試験方法によって、インストロン試験機(Instron Engineering Corp.,Canton、Mass)を用いて250mmのサンプル10個に対し
て引張速度を加えることによって、ハイブリッド繊維コードの切断強力(Strength at Break)及び破断伸び率をそれぞれ測定した。続いて、各サンプルの切断強力をハイブリッド繊維コードの全体の繊度で分けることによって、各サンプルの切断強力(g/d)を求めた。続いて、10個のサンプルの切断強力及び破断伸び率の平均値をそれぞれ算出することによって、ハイブリッド繊維コードの切断強力及び破断伸び率を得た。
【0073】
一方、10個のサンプルの切断強度のうち最大値と最小値との差を算出し、前記各サンプルの破断伸び率のうち最大値と最小値との差を算出することによって、ハイブリッド繊維コードの切断強度の不均一性及び破断伸び率の不均一性を求めた。
【0074】
乾熱収縮率(%) 温度25℃、相対湿度65%の雰囲気条件下で24時
間放置した後、テストライト(Testrite)機器を用いて180℃で2分間
、初期荷重0.01g/Deの荷重下でハイブリッド繊維コードの乾熱収縮率を測定した。
【0075】
ディスク疲労テスト後の強力
維持率 ハイブリッド繊維コード
の強力
(疲労前の強力)を測定した後、ハイブリッド繊維コードとゴムとを一緒に加硫することによって試料を製造した
。その後、日本標準協会のJIS―L 1017方法によってディスク疲労測定機(Disc Fatigue Tester)を用い
て2500rpmで回転させながら、80℃にて、引張及び収縮を繰り返すことによって、前記試料に疲労を加えた。ただし、2500rpmでの回転を8時間とした。続いて、前記試料からゴムを除去した後、ハイブリッド繊維コードの疲労後の強力を測定した。前記疲労前の強力疲労後の強力に基づいて、下記の計算式1によって定義される強力維持率を計算した。
【0076】
<計算式1>
強力維持率(%)=[疲労後の強力(kgf)/疲労前の強力(kgf)]×100
ここで、疲労前及び疲労後の強力(kgf)は、ASTM D885試験方法によって、インストロン試験機を用いて250mmの試料長に対し
て引張速度を加えながらハイブリッド繊維コードの切断強力(Strength at Break)を測定することによって求めた。
【0078】
比較例では、ハイブリッド繊維コードでループ及び形態不均一が発生し、全般的な物性が各実施例に比べて低下する傾向を示した。具体的に説明すると、強力を担当するアラミドフィラメントの損傷及び形態異常によって各サンプル間の強力差が激しく発生することが分かり、ナイロン合撚糸を被覆しているアラミド合撚糸の形態が不均一になることによって、各サンプル間の伸び率の差が激しく発生することが分かる。また、不均一な物性により、疲労試験時にゴム組成物内でそれぞれ異なる外力を受けるので、強度維持率も各実施例に比べて低下する傾向を示した。