(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704735
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】飛行体の着陸対象装置、および飛行体の制御方法
(51)【国際特許分類】
B64F 1/12 20060101AFI20200525BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20200525BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20200525BHJP
B64C 27/08 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
B64F1/12
B64D27/24
B64C39/02
B64C27/08
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-5503(P2016-5503)
(22)【出願日】2016年1月14日
(65)【公開番号】特開2017-124758(P2017-124758A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2019年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】田淵電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 豊
(72)【発明者】
【氏名】岸 賢人
(72)【発明者】
【氏名】中村 治哉
(72)【発明者】
【氏名】西田 知純
(72)【発明者】
【氏名】小川 哲史
【審査官】
長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102015206844(DE,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0001883(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0069968(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0167682(US,A1)
【文献】
特開2015−042539(JP,A)
【文献】
特開2012−071645(JP,A)
【文献】
特開2012−232654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 1/12
B64C 27/08
B64C 39/02
B64D 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体を着陸させる飛行体の着陸対象装置であって、
周辺部に対して中央部が低く設定された傾斜部を有するとともに、
上記傾斜部の中央部に、傾斜部の傾斜面の下端に接続された平坦な床部を有し、
上記床部に、上記床部よりも低く形成された円形の円形平面部を有していることを特徴とする飛行体の着陸対象装置。
【請求項2】
請求項1の飛行体の着陸対象装置であって、
上記傾斜部は、逆角錐台形状、または逆円錐台形状を有していることを特徴とする飛行体の着陸対象装置。
【請求項3】
飛行体を上昇駆動する駆動装置を有する飛行体の制御方法であって、
飛行体を飛行状態から請求項1の着陸対象装置に着陸させる着陸制御工程と、
飛行体が着地した後に、上記飛行体が浮上するよりも大きな上昇力を生じないように上記駆動装置を動作させる着陸後駆動制御工程と、
を有することを特徴とする飛行体の制御方法。
【請求項4】
請求項3の飛行体の制御方法であって、
上記着陸後駆動制御工程は、飛行体が着陸してから所定時間経過したことが検出されたとき、飛行体が所定の位置に達したことが検出されたとき、飛行体が水平姿勢になったことが検出されたとき、および駆動停止指示がなされたときの少なくとも何れかのときに、上記駆動装置の上記動作を停止させることを特徴とする飛行体の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローンなどと称される無人の飛行体の着陸対象装置、およびそのような飛行体を着陸させるための制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、モータを駆動源として無人飛行し、垂直離着陸する飛行体が用いられつつある。上記モータに電力を供給するバッテリの充電は、例えば、着陸時に電磁誘導等による給電によって行われる。そのような場合、給電の効率を高めるためには、着陸位置を正確に制御する必要がある。着陸位置を制御する技術としては、着陸対象装置に所定の発光パターンに配置された発光素子やマークを設け、飛行体からの撮像画像により飛行位置を演算して、着陸位置を制御する技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−71645号公報
【特許文献2】特開2012−232654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように飛行体からの撮像画像により着陸位置を制御するためには、撮像システムや撮像画像の画像処理システムなどを必要とし、構成が複雑で製造コストが高くつくという問題点を有していた。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、比較的簡潔な構成で着陸位置の精度を容易に高め得るようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、飛行体の着陸対象装置の傾斜、および周囲よりも低く形成された円形平面部を利用し、また、飛行体が上昇しない程度に駆動装置を駆動させることにより、着地地点の位置を高精度に制御しなくても、着陸後に、自重の影響によって正確に中央部の位置に導くことができるようにするものである。
【0007】
すなわち、第1の発明は、
飛行体を着陸させる飛行体の着陸対象装置であって、
周辺部に対して中央部が低く設定された傾斜部を有するとともに、
上記傾斜部の中央部に円形の円形平面部を有し、上記円形平面部は、その周囲の部分よりも低く形成されていることを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、
第1の発明の飛行体の着陸対象装置であって、
上記傾斜部は、逆角錐台形状、または逆円錐台形状を有していることを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、
第1の発明または第2の発明の飛行体の着陸対象装置であって、
上記傾斜部の中央部に、傾斜部の傾斜面の下端に接続された平坦な床部を有し、
上記円形平面部は、上記床部に設けられていることを特徴とする。
【0010】
これらにより、飛行体の最初の着陸地点を正確に制御しなくても、飛行体を自重の作用によって例えば飛行体の全ての脚部が円形平面部に収まる位置まで自動的に移動させることが可能になる。
【0011】
第4の発明は、
飛行体を上昇駆動する駆動装置を有する飛行体の制御方法であって、
飛行体を飛行状態から第1の発明の着陸対象装置に着陸させる着陸制御工程と、
飛行体が着地した後に、上記飛行体が浮上するよりも大きな上昇力を生じないように上記駆動装置を動作させる着陸後駆動制御工程と、
を有することを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、
第4の発明の飛行体の制御方法であって、
上記着陸後駆動制御工程は、飛行体が着陸してから所定時間経過したことが検出されたとき、飛行体が所定の位置に達したことが検出されたとき、飛行体が水平姿勢になったことが検出されたとき、および駆動停止指示がなされたときの少なくとも何れかのときに、上記駆動装置の上記動作を停止させることを特徴とする。
【0013】
これらにより、実質的に飛行体の脚部等と着陸対象装置との間の摩擦を減少させて、飛行体が円形平面部に移動するのをより容易にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、比較的簡潔な構成で着陸位置の精度を高めることが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ドローンの着陸対象装置を示す斜視図である。
【
図4】他の着陸対象装置の要部を示す斜視図である。
【
図5】さらに他の着陸対象装置の要部を示す斜視図である。
【
図6】さらに他の着陸対象装置を構成する板部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
(着陸台100)
飛行体であるドローンの着陸対象装置である着陸台100は、
図1および
図2に示すように、周辺部に対して中央部が低く設定された、扁平な逆四角錐台形状の傾斜部101を有している。より詳しくは、上記傾斜部101は、台形の外形形状を有する4枚の傾斜パネル102が、互いに斜辺を接するとともに、支持脚103によって、例えば15°以下、好ましくは6°程度の傾斜が保たれるように設けられて成っている。
【0018】
傾斜部101の中央部には、例えば1辺が400mmの正方形状の平坦な床部104が設けられている。さらに床部104の中央部には、床部104よりも低く、かつ、ドローンにおける着陸脚の外接円よりわずかに大きな直径、例えば直径が340mmの円形の円形平面部105が設けられている。
【0019】
(ドローン200、および送電ユニット300)
上記着陸台100に着陸させるドローン200は、例えば
図3に示すように、回転軸が鉛直方向の複数(例えば4つ)のモータ201と、このモータ201により駆動されて上昇力を発生させるプロペラ202と、着陸したときに接地する例えば4本の着陸脚203とを有している。また、ドローン200の下部には、受電コイル204が設けられている。上記受電コイル204は、ドローン200が着陸台100に着陸した際に、着陸台100の中央部の下方に設けられた送電ユニット300の送電コイル301と対向して、電磁誘導等によって給電され、図示しないバッテリの充電がなされるようになっている。
【0020】
(着陸動作)
ドローン200は、図示しない制御装置によって、手動による着陸操作、または自動的に着陸制御がなされると、モータ201の回転速度が低下して徐々に降下し、着陸台100上に着陸する。このとき、4本の着陸脚203が何れも円形平面部105内に位置したとすると、ドローン200は水平な姿勢を保つことになる。
【0021】
これに対して、4本の着陸脚203の全て、または一部が、傾斜パネル102または床部104上に位置する場合には、ドローン200は傾いた状態となる。この場合に、ドローン200が浮上するよりも大きな上昇力を生じない回転速度でモータ201が回転すると、ドローン200は、モータ201の回転による振動等の影響で徐々に傾斜部101の中央部に向かって移動し、やがて、4本の着陸脚203が何れも円形平面部105内に位置するように移動して水平な姿勢となる。これによって、受電コイル204と送電コイル301とが正確に対向する状態となり、高い効率で給電が可能となる。また、受電コイル204や送電コイル301の小型化を図ることも容易になる。
【0022】
上記モータ201の回転は、例えば、ドローン200が着陸してから所定時間経過したことが検出されたときや、ドローン200が正確に着陸台100の中央部に位置するなど所定の位置に達したことが検出されたとき、ドローン200が水平姿勢になったことが検出されたとき、および手動操作などによって駆動停止指示がなされたときの何れか、または複数の条件が満たされたときに停止する。
【0023】
上記のように、着陸台100に中央部が低く設定された傾斜部101が設けられ、さらに、周囲よりも低く形成された円形平面部105が設けられていることによって、最初の着地地点の位置を高精度に制御しなくても、自重の影響によって正確に中央部の位置に導くことができる。また、ドローン200が浮上しない程度にモータ201を回転させることによって、実質的に着陸台100とドローン200の着陸脚203との摩擦を小さくできるので、傾斜部101の傾斜角度を小さく設定して着陸直前のドローン200の傾きに対する許容角度(例えばプロペラ202が着陸台100に接触しない傾き角度)を大きくしても、速やか、かつ容易にドローン200を中央部に至らせることができる。
【0024】
(変形例)
着陸台の形状は、上記のように逆四角錐台形状に限らず、傾斜部が形成されていれば、六角形など種々の多角形等でもよく、さらに、例えば
図4に示すように、逆円錐台形状の傾斜部401を有する着陸台400が形成されてもよい。
【0025】
上記逆円錐台形状の傾斜部401を有する場合には、上記傾斜部401の下端に接続される平面部が、前記着陸台100の円形平面部105に対応する、周囲の部分よりも低く形成された円形の円形平面部405となり得る。なお、円形平面部405を着陸台100の床部104に対応させて、その中に、着陸台100の円形平面部105に対応する、より低い円形平面部が設けられてもよい。
【0026】
(その他の事項)
ドローン200が傾斜部101上に着陸したときなどに、より容易に移動させるためには、着陸脚203にボールキャスタや車輪、ころなどを設けて、着陸台100と転がり接触するようにしてもよい。
【0027】
また、ドローン200を正確な位置に至らせる目的は受電コイル204と送電コイル301とによる給電のために限るものではなく、例えばデータ通信の効率向上など、種々の目的であってもよい。
【0028】
また、上記のような着陸台100や着陸台400は、一体的に形成されてもよいし、別個の傾斜パネル102等が組み立てられて形成されたり、扇形の展開形状を有する板部材が円錐状に丸められて形成されたりしてもよい。また、複数の傾斜パネル102が連なった帯状の部材が折り曲げられて逆四角錐台形状に形成されるなどしてもよい。また、
図5および
図6に示すように、細長い(中心角が小さい)扇形の板部材502が互いに接合され丸められて(または各板部材502が丸められ互いに接合されて)、逆円錐台形状の傾斜部501が形成され、中央部に円形平面部505が形成されるようにしたりしてもよい。また、上記のような傾斜部501を有する着陸台が運搬される場合などには、板部材502が連なった扇形の形状を有する部材が板部材502のような形状単位で折り畳まれ、またはスライド収納され、使用時に広げられ丸められて、またはスライド展開され、逆円錐台形状の傾斜部501が形成されるようにしてもよい。
【0029】
また、傾斜パネル102の下端と円形平面部105の外周部とは、平坦な床部104を介して接続されるのに限らず、なめらかな傾斜面で接続されるなどしてもよい。また、平坦な床部104が設けられる場合、一般に、飛行体を速やかに円形平面部105に移動させやすい点では、そのような床部104は小さい方が好ましい。
【0030】
また、円形平面部105等の形状は、正確な円形でなくても、飛行体の収まる位置の精度が水平面内での飛行体の向きに係わらず許容できる範囲になる程度の実質的な円形であればよい。
【符号の説明】
【0031】
100 着陸台
101 傾斜部
102 傾斜パネル
103 支持脚
104 床部
105 円形平面部
200 ドローン
201 モータ
202 プロペラ
203 着陸脚
204 受電コイル
300 送電ユニット
301 送電コイル
400 着陸台
401 傾斜部
405 円形平面部
501 傾斜部
502 板部材
505 円形平面部