(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704750
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】自律型芝刈機およびそのための置換可能なモジュール
(51)【国際特許分類】
A01D 34/64 20060101AFI20200525BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20200525BHJP
【FI】
A01D34/64 M
G05D1/02 N
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-29544(P2016-29544)
(22)【出願日】2016年2月19日
(65)【公開番号】特開2016-202165(P2016-202165A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年10月24日
(31)【優先権主張番号】15001128.6
(32)【優先日】2015年4月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503113186
【氏名又は名称】ホンダ リサーチ インスティテュート ヨーロッパ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Honda Research Institute Europe GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マティアス フランジウス
(72)【発明者】
【氏名】ニル アイネッケ
(72)【発明者】
【氏名】ローマン ディルンベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ロニー ボルスドルフ
【審査官】
吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−026247(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0121881(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/64
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接続手段に電気接続する制御ユニットと、
少なくとも一つの置換可能な部品と、を備える自律型芝刈機であって、
前記電気接続手段は、前記置換可能な部品を取り替える際に、前記電気接続手段と前記置換可能な部品の対応接続手段との接続および切断が行えるように配置されており、
前記置換可能な部品は、前記電気接続手段が設けられた前記自律型芝刈機の内側に連通する開口を覆うサービス用の蓋を形成するよう構成されており、
前記置換可能な部品は、前記サービス用の蓋と同じ前記電気接続手段が設けられた前記自律型芝刈機の内側に連通する開口を覆う当初の目的を果たすよう構成されたカメラモジュールと置換可能であり、前記カメラモジュールは、前記自律型芝刈機の前記制御ユニットによって生成された速度および操舵の情報を含む駆動信号に基づいて芝を刈る機能に、周囲の画像を取得し、取得した画像を処理して前記制御ユニットが駆動信号を生成するために使う信号を生成する機能を追加する
自律型芝刈機。
【請求項2】
前記制御ユニットおよび前記電気接続手段は、該電気接続手段を介して受け取る信号に基づいて前記自律型芝刈機の駆動ユニットを制御するよう構成されている、請求項1に記載の自律型芝刈機。
【請求項3】
前記電気接続手段が電力コネクタおよび/または通信コネクタを備える、請求項1または請求項2に記載の自律型芝刈機。
【請求項4】
前記通信コネクタがCANバスコネクタである、請求項3に記載の自律型芝刈機。
【請求項5】
前記制御ユニットが前記電気接続手段を介して更新可能である、請求項1から4のいずれか1項に記載の自律型芝刈機。
【請求項6】
前記自律型芝刈機が複数の置換可能な部品およびそれぞれの電気接続手段を備え、該電気接続手段に接続されるとき前記複数の置換可能な部品の通信が可能になる、請求項1から5のいずれか1項に記載の自律型芝刈機。
【請求項7】
自律型芝刈機の置換可能な部品に置き換えられるよう構成されたモジュールであって、
信号生成ユニットと、
前記自律型芝刈機の制御ユニットに電気信号を送るための、該自律型芝刈機の電気接続手段の対応接続手段と、
を備え、
前記モジュールは、前記置換可能な部品としてのサービス用の蓋であって、前記電気接続手段が設けられた前記自律型芝刈機の内側に連通する開口を覆う前記サービス用の蓋に置き換わって当該サービス用の蓋の前記電気接続手段が設けられた前記自律型芝刈機の内側に連通する開口を覆う機能を維持するよう構成され、且つ、前記モジュールは、前記サービス用の蓋と同じ前記電気接続手段が設けられた前記自律型芝刈機の内側に連通する開口を覆う当初の目的を果たすよう構成されたカメラモジュールと置換可能であり、前記カメラモジュールは、前記自律型芝刈機の前記制御ユニットによって生成された速度および操舵の情報を含む駆動信号に基づいて芝を刈る機能に、周囲の画像を取得し、取得した画像を処理して前記制御ユニットが駆動信号を生成するために使う信号を生成する機能を追加するよう構成されている、
モジュール。
【請求項8】
前記信号生成ユニットが前記カメラモジュールで撮像した画像に基づいて前記自律型芝刈機の制御を支援するための信号を生成するよう構成されたデータ処理ユニットを有する、請求項7に記載のモジュール。
【請求項9】
前記データ処理ユニットがビジュアル障害物検出機能、ビジュアル・オドミトリ機能、ビジュアル境界認識機能、ビジュアル侵入者検出機能およびビジュアル芝生健康分析の少なくとも一つを実行するよう構成されている、請求項8に記載のモジュール。
【請求項10】
前記信号生成ユニットがさらにワイヤレス通信手段を有する、請求項7から9のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項11】
前記ワイヤレス通信がWLAN、ブルーツースまたはNFCを使用する、請求項10に記載のモジュール。
【請求項12】
前記自律型芝刈機の制御ユニットのためのソフトウェアおよびまたはパラメータを保存するための記憶装置をさらに備える、請求項7から11のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項13】
請求項1から6のいずれか1項に記載の自律型芝刈機と、請求項7から12のいずれか1項に記載のモジュールと、を備える自律型芝刈りシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自律型芝刈機の分野に関係する。
【背景技術】
【0002】
自律型芝刈機は成長分野である。数年前に自律型芝刈機が発表されて以来、障害物を検出しユーザを煩わすことなく芝刈りを行う自律型芝刈機の能力が改善されてきた。もちろん、顧客の期待も大きくなってきている。そのため、より複雑な機能を備えた自律型芝刈機が開発されてきている。このような複雑な機能をもつ芝刈機の一つの問題は、それぞれの機能は必然的に大きな開発努力を必要とし、その制作は高価な部品を必要とするので、高価であることである。したがって、多くの顧客はそのような高価な芝刈機を敬遠して従来型の芝刈機か自律型であっても簡単な芝刈機を購入することになる。
【0003】
このような芝刈機のベーシックなものが特許文献1に記載されている。この文献の自律型芝刈機は、芝刈り領域を制限する境界線用のワイヤを必要とし、芝刈機は境界線ワイヤに達するまでランダムに駆動し、境界線ワイヤに達すると方向を変える。芝刈機の動きを制限するのは境界線ワイヤだけなので、知的な機能を実行することはできず、芝の中に紛失した携帯電話のような平坦な障害物は検出できない。そのようなベーシックな自律型芝刈機をより知的で複雑なシステムにアップグレードすることはできない。
【0004】
より複雑な芝刈機が特許文献2に記載されている。この文献の自律型芝刈機はカメラを備えており、草センサの出力と結合させて草を認識する。環境の画像を取得するので、自律型芝刈機を制御するのにより複雑かつ知的な機能を使うことができる。しかし、カメラまたは草センサは自律型芝刈機自体に一体化されているので、顧客はこの芝刈機を購入する前に自分がそのような機能を欲するのかそれとももっと低廉なもので満足するのかを決めなければならず、この低廉なものは芝刈機の機能をアップグレードする能力をもたない。
【0005】
刈る必要のない草でない領域を規定するための領域検出を行うもう一つの例が特許文献3に記載されている。この文献に記載されている芝刈機は、カメラを備えレーザ光を使って地面を走査し、これらのものは芝刈機に一体化されている。したがって、この芝刈機は上述のものと同じ問題をかかえており、後日顧客の新しい要求に応えるよう適応させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
1.米国特許第3,570,227号
2.欧州特許出願第2 286 653 A2号
3.ドイツ国特許出願DE 103 27 223 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、自律型芝刈機、この芝刈機のためのモジュール、および自律型芝刈機とモジュールからなるシステムを提供するものであり、顧客が後日モジュールの変更を決定し、新しいモジュールによって付加的な特徴および機能を追加することができるようにする。この点に関し、芝刈機のカバーまたはハウジングの部品さえもモジュールである。モジュールは、別の部品で置き換えて自律型芝刈機の同じ機械的インターフェイスを使う任意の部品を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、特許請求の範囲の独立請求項に記載される自律型芝刈機、この芝刈機のためのモジュール、および自律型芝刈機とモジュールからなるシステムによって解決される。利点のある特徴および観点が従属請求項に規定されている。
【0009】
本発明の自律型芝刈機は、電気接続手段に電気的に接続する制御ユニットを備える。さらに、モジュールを形成する少なくとも一つの置換可能な部品がある。電気接続手段は、置換可能な部品を置換するときに、該電気接続手段と置換可能な部品にある対応接続手段(counterpart)との接続および切断、さらにはもう一つの置換可能な部品の対応接続手段との接続および切断を容易に行うことができるように配置されている。ここで容易にとは、置換可能な部品を取り外す以外には芝刈機のさらなる分解は不要なことを意味する。たとえば置換可能な部品のハウジングにプラグが直接取り付けられていて、電気接続手段が芝刈機のハウジングその他の堅い部分に固定されている場合、置換可能な部品を取り外すことによって自動的に切断され、または少なくとも電気接続手段は置換可能な部品が取り外されていないときに直接アクセス可能とする。こうして置換可能な部品(モジュールともいう)をもう一つの部品で置換することが可能になり、このもう一つの部品は異なる機能または改善された機能を提供する。電気接続手段は置換可能な部品の近くに配置され、特に置換可能な部品を置換するときに、電気接続手段の相手方(対応接続手段)および自律型芝刈機の電気接続手段の接続および切断が容易にできるように配置されている。このような部品の置換により顧客自身によって自律型芝刈機がアップグレードされ、またはその機能が適応化されることができる。
【0010】
これにより、たとえば置換可能な部品としてカバー(モジュールの最も簡単なもの)だけをもつ自律型芝刈機のベーシックな構成からはじめるが、芝刈機が電気接続可能なカメラユニットをもつモジュールを受け入れることができるものとすることができる。カメラユニットを備えたこのようなモジュールは最初に使われた置換可能な部品を置換するよう構成されており、置換部品と同じ目的のほかに画像取得(撮像)などのさらなる機能を提供する。カメラは機能性の追加を説明するための一例であり、機能性を追加しまたは適応化を提供する任意のデバイスまたは手段を使うことができることは言うまでもない。
【0011】
電気接続手段は、置換可能な部品を置換するときに電気接続手段および置換可能な部品におけるその相方の接続および切断が容易にできるように配置されているので、古い部品を取り外し新しいもので置き換えるのは容易である。さらなる組み立ておよび分解は不要であり、このような置き換えは自律型芝刈機の顧客およびユーザ自身が行うことができる。置換は全く簡単で、置換可能部品、たとえば新しいカメラモジュールを接続する専用の電気接続手段、カメラ技術について新しく開発された技術、カメラで取得する画像の処理技術などを後に自律型芝刈機に追加することができる。こうして将来的な機能性を制限することなく顧客が購入することができるベーシック構成が得られる。
【0012】
過去、自律型芝刈機の推進機能および芝刈機能がまだ良好な状態であっても、新しい機能を得るためには全く新しいシステムを購入する必要があった。ベーシック構成はバンプセンサおよび境界線ワイヤによる自律型芝刈機の駆動制御に限り、画像処理を使って障害物を検出するよう複雑な制御はなしにすることができる。顧客が後に自身の自律型芝刈機の機能を改善したいときは、最初に使った置換可能部品を新しい置換可能部品で置き換えることができ、この新しい部品がたとえばカメラおよび画像処理ユニットを備えていて、このユニットが自律型芝刈機の制御ユニットに信号を送り、この信号に基づいて制御ユニットが自律型芝刈機を制御することができる。しかし、カメラは当初備えられていなかったので、自律型芝刈機のベーシックな構成は安価である。こうして、顧客はベーシック構成を購入し、後日、快適性のためにさらにお金を使う気になれば、さらに複雑な機能を追加することができる。
【0013】
以前使われていたモジュールまたは当初使われたモジュールを置き換える本発明のモジュールは信号生成ユニットおよび芝刈機の電気接続手段に対応する接続手段(相手方、counterpart)を備える。したがって、モジュールから(その信号生成ユニットからというよりも)芝刈機の制御ユニットに信号が送られ、自律型芝刈機の駆動を制御するのに使われる。
【0014】
一般に電気接続手段は、自律型芝刈機のハーネスに取り付けられたコネクタであり、モジュール側のコネクタに接続することができる。もちろん、モジュール側でもコネクタをモジュールのハーネスに接続することができる。代替的に電気接続手段を自律型芝刈機(そのかたい部分)に固定し、その相手方は可撓性のハーネスを使うことなくモジュールに同様に固定することができ、モジュールを単にたとえば電気接続手段としてソケットに挿入するようにすることができる。
【0015】
モジュールは新しく追加される機能の必要事項を充足するだけでなく置換された部品の機能も充足するよう構成される。当初使われた置換可能な部品がたとえば自律型芝刈機のカバーの部品の場合、このことは、自律型芝刈機のモジュールは、置換可能な部品を置き換えた後もカバー機能が存在するよう設計されることを意味する。古い置換可能な部品がカバーであるときは、このことは、置き換える部品は古い置換可能な部品を取り外した結果生じる凹みをカバーしなければならないことを意味する。これは、一つのタイプの芝刈機の特定の置換に専用のすべてのモジュールの機械的なインターフェイスを同様に設計することで達成することができる。
【0016】
一つの有利な側面によると、制御ユニットは、電気接続手段を介して受け取る信号に基づいて自律型芝刈機の駆動ユニットを制御するよう構成されている。このことは、電気接続手段になにも接続されていないときは、自律型芝刈機はたとえば単純な障害物検出および/または境界検出ならびにランダム駆動に基づいて自動推進機能を提供することができることを意味する。これは、従来技術に関連して前述した広く知られた境界線技術を使い、障害物に接した後駆動方向を変更するためにバンプセンサを備えることにより達成することができる。この置換可能な部品が本発明による新しいモジュールで置き換えられるなら、この新しいモジュールは電気接続手段およびその対応接続手段によって接続され、自律型芝刈機の制御ユニットに信号を送り、この信号が考慮されそれに含まれる情報が自律型芝刈機の駆動ユニットを制御するために使われる。特に、このモジュールがカメラを備え、画像信号が制御ユニットに転送されるようにすることができる。この場合、画像信号の処理は、自律型芝刈機の制御ユニットで行うことができる。
【0017】
画像取得手段(カメラ、レーザスキャナなど)によって取得された画像からの情報はモジュール自身で処理されるのが好ましく、この場合たとえばカメラで取得された画像に基づいて自律型芝刈機の制御を支援する信号がモジュール自身で発生される。この信号は、障害物の芝刈機に対する位置およびサイズの情報または駆動の方向を変える指令をも含むことができる。
【0018】
電気接続手段が電力コネクタおよび/または通信コネクタを備えていると好都合である。通信コネクタはCAN(controller area network)バスコネクタであるのがより一層好ましい。このような標準化されたバス接続を使うことは、同じ通信プロトコルを使って複数の様々なモジュールを容易に開発することができるという利点がある。こうすることによって、置換可能な部品として使うことができる複数のモジュールを提供することができ自律型芝刈機により大きな融通性を与えることができ、芝刈機サイドで適応化をすることなく様々の機能を与えることができる。
【0019】
置換可能な部品がサービス用の蓋を形成するよう構成されることが特に好ましい。このようなサービス用の蓋はいずれにせよ多くの場合なんらかの形で存在しており、自律型芝刈機のデザインを大きく変更する必要はない。モジュールによってサービス用の蓋の機能を維持することが可能であるが、電気接続手段による接続に由来して置換可能な部品すなわち本発明に従うモジュールを置き換えることにより追加的な機能が得られる。サービス用の蓋はたとえば自律型芝刈機の芝刈りの高さを調整する高さ調整手段をカバーし、または芝刈機をプログラミングする専用の制御パネルへのアクセスを提供する。
【0020】
電気接続手段を介して制御ユニットを更新することができるようにするのがよい。この場合、モジュールが電気接続手段で接続されるとき、単にモジュールを自律型芝刈機に接続するだけで更新機能がトリガされるようにするのが好ましい。モジュールが更新機能をトリガし実行するようにするため、モジュールに記憶装置が備えられ、自律型芝刈機の制御ユニットのためのソフトウェアが格納されている。モジュールが自律型芝刈機に取り付けられると、更新が自動的に実行される。
【0021】
自律型芝刈機は複数の置換可能な部品からなることが望ましく、接続されたモジュールはそれぞれの電気接続で互いに通信するようにするのがよい。カメラモジュールとかレーザセンサモジュールのような様々な環境知覚モジュールを備えるようにして、制御ユニットのための制御信号を生成するためにその情報を一緒に使うこともできる。これは、複数のモジュールのうちの一つのモジュールの処理ユニットを使って様々な知覚モジュールの情報を処理するか、または複数のモジュールは、たとえばカメラとレーザセンサによって得られる画像について一つの情報だけを自律型芝刈機の制御ユニットに提供するよう構成することができ、この制御ユニットでこの情報が処理される。もう一つの例は通信機能をもちそれぞれの接続手段を介して取得画像を送受信することができる別のモジュールを使うものである。
【0022】
そのような自律型芝刈機の制御がモバイル装置の使用によって支援されることが多くなってきたので、モジュールにワイヤレス通信手段を備えることが望まれる。もちろん、置換可能な部品としてのモジュールは、上述のようなワイヤレスモジュールだけを備えることができ、そのようなモジュールは既にビジュアル(visual)障害物検出などを備えるが遠隔のモバイル装置たとえば携帯電話、タブレットなどとワイヤレスで通信するようには構成されていない自律型芝刈機の機能の改善専用になる。もちろん、ワイヤレス通信はそのようなモジュールを備えた自律型芝刈機とモバイル通信装置またはワイヤレス通信が可能な任意のデバイスとの間で必ずしも行われる必要はない。ワイヤレス通信の好ましい例は、W-LAN、ブルーツースまたはNFCである。芝刈機のカメラからビデオがストリーミングされるとき、ワイヤレス通信は、芝刈機が視覚から外れていてもその制御を可能にする。
【0023】
モジュールのデータ処理ユニットで実行される機能の好ましい例は、ビジュアル障害物検出機能、ビジュアル・オドメトリ(visual odometry)機能、ビジュアル境界認識機能、ビジュアル侵入者検出機能、またはビジュアル(画像による)芝生健康分析などがある。これらの機能そのものは従来から知られているが、前述のように今日までこれらの機能は全体システムに一体化されておりハードウェアの更新とか機能の追加とかは不可能であった。本発明の一面によると、そのような追加の機能は置換可能な部品として自律型芝刈機の古い置換可能な部品を置き換えるモジュールに少なくとも部分的に含まれており、機能の追加またはそのような機能の更新されたバージョンが使われる。そのような機能がモジュールに含まれているならば、記憶装置、処理ユニット、センサなどのすべての必要なユニットがモジュールに備わっているか、そのモジュールが自律型芝刈機に既に備わっているユニットを使用する。このような機能を提供するために必要な情報の交換は電気接続を介して行われる。
【0024】
本発明に従うシステムは上述の観点の一つに従う自律型芝刈機およびモジュールに関して上述した観点の一つに従うモジュールを備える。次に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来技術の自律型芝刈機のベーシック構成を示す図。
【
図2】本発明に従うモジュールを取り付けた本発明の実施例の自律型芝刈機を示す図。
【
図3】自律型芝刈機の置換可能部品を取り替えた後の機能を説明する図。
【
図4】カメラおよびワイヤレス通信手段を有するモジュールの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は従来技術の自律型芝刈機を示す。この自律型芝刈機1はベーシック構成を有している。芝刈機1は、芝刈機を移動させる複数の車輪2を備えている。高さ調整はサービス用の蓋からアクセスすることができるレバー3によって行われる。これは周知のものなので、高さ調整の機械構造は図に示していない。サービス用の蓋4はレバー3を操作するたびに完全に取り外されるように設計することができ、または
図1に示すように蓋の一方の側に設けられたヒンジ(蝶番)によって自律型芝刈機のハウジングまたは主カバーに接続されることができる。
【0027】
自律型芝刈機1は自分で推進する。自律型芝刈機1の駆動は制御ユニット5によって制御され、制御ユニット5が発生する駆動信号が駆動ユニット6に送られる。このことが図に簡略化して示されている。駆動ユニット6およびその制御は既に周知であり、そのような既知のシステムをここで使うことができる。
図1に示す自律型芝刈機1を有する従来のシステムは、芝刈りをすべき領域の境界を検出するためにたとえば境界線ワイヤを使用し、さらに境界線ワイヤで示される境界内の領域にある障害物を検出するためのバンプ(衝突、隆起)センサ(図には示さない)を使用する。制御ユニット5は駆動ユニット6に速度および操舵の情報を含む駆動信号を送って自律型芝刈機1の速度および方向を制御する。
【0028】
図2に基づいて詳細を説明する本発明のよると、サービス用の蓋4は置換可能な部品を形成するよう構成されており、これは接続すべき電子部品を持たない極めて簡単なモジュールである。サービス用の蓋4に限らず芝刈機に現に取り付けられている任意のモジュールは自律型芝刈機から完全に取り外すことができ、本発明によるもう一つのモジュールとして説明する置換可能な部品によって置き換えることができる。取り外された元の置換可能な部品を置き換える新しい置換可能な部品は置き換えられる部品と同じ機械的機能をもっている。置換可能な部品がたとえば
図1のサービス用の蓋4である場合、新しい置換可能な部品は自律型芝刈機1に取り付けられて自律型芝刈機1のハウジングまたはカバーの一部を形成する。これに加えて、新しい置換可能な部品であるこの新しいモジュールは追加の機能を有する。このようなモジュールを使うことにより、自律型芝刈機1の機能的な柔軟性を増大させることができ、顧客がそのような機能をもつ自律型芝刈機を買い換えなくてもよくするので、ベーシック構成のコストが低減される。顧客はたとえば芝生のシーズンのはじめにベーシック構成の芝刈機を購入し、後日このような増大した機能をもつモジュールを購入することによって機能を追加することができる。こうして、製造業者にとっての利点は、置換可能な部品は後日購入される更新用の部品でありうるので販売シーズンが拡大することである。
【0029】
このように本発明は、自律型芝刈機にモジュール方式の概念を与える。
図2はモジュール方式の自律型芝刈機1’の全体的な構成を示す。
図1の自律型芝刈機1と同じ部品は同じ参照番号で示してあり、重複説明は省略する。
図2は本発明による芝刈機1’を示し、最初に備えていたサービス用の蓋2は既に置換可能な部品で置き換えられており、図の実施例ではカメラモジュール7で置き換えられている。
図2に点線で示すように置き換えられたサービス用の蓋4の機械的な機能はモジュール7で維持されている。すなわち、カメラモジュール7はヒンジによって自律型芝刈機1’のハウジングに取り付けられることができるので、カメラモジュール7をスイングさせると芝刈り高さを調節するためのレバー3にアクセスすることができる。
【0030】
カメラモジュール7と制御ユニット5’との電気接続は電気接続手段8によって達成され、これは簡単な図では電力コネクタおよび通信コネクタからなる。上述したように通信コネクタはたとえばCANバスコネクタであることができる。自律型芝刈機1’に備えられる電気接続手段8は制御ユニット5に接続されたハーネスの端に取り付けられたプラグからなることができる。このようなプラグは自律型芝刈機1’のハウジングに固定されていてもよく、またはサービス用の蓋2が取り外された後に届くことができる領域に配置されていてもよい。本発明ではサービス用の蓋2、またはそこに搭載されうる他の置換可能な部品、を取り外した後、電気接続手段8に届いて古いものに置き換わる新しい置換可能な部品が自律型芝刈機1’に電気的に接続されうることが重要である。これを満足するいくつかの可能性がある。その一つは既に説明したハーネスに接続されるコネクタである。もう一つの可能性は、自律型芝刈機サイドにソケットを配し、対応するモジュール7がこのソケットに挿入されるプラグを持つようにすることである。いずれにしても最初に使われたサービス用の蓋2の元の機械的機能が依然として満足されなければならない。もちろん、電気接続手段8、すなわちソケット、プラグまたはコネクタに自律型芝刈機のハウジングの外側から届くことができるようにすることができるが、電気接続手段8は自律型芝刈機1’のハウジングによって覆われ、自律型芝刈機1’の内側でサービス用の蓋2によって覆われた開口近くにあるのが好ましい。
【0031】
モジュール7は電気接続手段8に対する対応接続手段9をもち、これは一番簡単なケースではソケットに嵌るプラグである。そのようなプラグはモジュールのハーネス10の一端に取り付けられており、ハーネス10は十分長いので、自律型芝刈機1’のハウジングは高さ調節のためレバー3にアクセスするために
図2に示すように開くことができる。
【0032】
図4に拡大して示すモジュール7は、カメラ11を備えている。カメラ11は自律型芝刈機1’の周囲の画像を取得し、好ましくは画像処理ユニット14を備えている。画像処理ユニットは取得した画像を直接処理して制御ユニット5’が駆動信号を生成するために使う信号を発生する。電力は電気接続手段8によってモジュール7に供給され、電気接続手段8はモジュール7の信号生成ユニットによって精製された信号を制御ユニット5’に転送することもできる。モジュール7から供給された信号に基づいて制御ユニット5’が駆動信号を生成し、これが駆動ユニット6に供給される。実施例の信号生成ユニットは少なくともカメラ11およびデータ処理ユニット14を備え、ワイヤレス通信モジュール13および記憶装置18をも備えているのが好ましい。
【0033】
記憶装置18には制御ユニット5’で走る更新ソフトウェア(および/またはパラメータ)のためのソフトウェア(および/またはパラメータ)が保存されている。モジュール7が制御ユニット5’に接続されるとき、ソフトウェア(および/またはパラメータ)更新を実行することができる。更新は接続確立後に自動的にはじまるかまたはユーザによってトリガされてはじまってもよい。
【0034】
モジュール7は自律型芝刈機1’の全体的なデザインに滑らかに一体化するように設計されており、置換するモジュールの機械的な機能を満足するように設計されている。いまのケースでは、ハウジング16がベースプレートに固定されている。このベースプレートはヒンジ17によって自律型芝刈機1’に取り付けられているので、モジュール7全体がピボット回転し蓋4と同様に内側へのアクセスを可能にする。信号生成ユニットの接続は図の実施例ではその一端が処理ユニット14に接続されたケーブルまたはハーネス10によって達成される。他方の端において対応接続手段9がケーブルまたはハーネス10に取り付けられている。ケーブルまたはハーネス10の長さはモジュール7のピボット回転を制限しないように選択され、閉じられた状態でモジュール7によって覆われたエレメントの働きが可能なように選択されている。
【0035】
サービス用の蓋4は多くの場合自律型芝刈機1’のハウジングの上側にあるので、モジュール7に備えられるカメラ11の位置は
図3に示すように良好な視野角を提供する。こうしてユーザによる自律型芝刈機1’のリモートコントロールまたは障害物検出を容易に行うことができる。モジュール7をリモートコントロールする機能を提供するためにカメラ11に加えて、カメラによって撮像された画像をワイヤレス通信可能なリモートのデバイス、例えば携帯電話、タブレットその他同様なデバイスに直接送信することができるワイヤレス通信ユニット13を備えることができる。ワイヤレス通信ユニット13は、アンテナ15に接続されており、アンテナ15はモジュール7のハウジング16の内側に設けることもできる。ワイヤレス通信は、近距離通信(NFC)、ブルーツースまたはより長距離の通信が望まれるときはワイヤレスLANを使うことができる。
【0036】
モジュール方式のシステムなので、カメラ7を持つモジュールを取り外すことも可能であり、新しいバージョンのカメラまたは追加の画像処理能力をもつ新しい置換可能な部品を用いてシステム全体を更新することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 自律型芝刈機
2 車輪
3 レバー
4 蓋
5 制御ユニット
6 駆動ユニット
7 置換可能なモジュール