(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部は、前記特定したピーク値の変化速度が所定値以下である場合に、前記第1のしきい値との比較の結果にかかわらず、前記操作体のタッチ状態を否定的に判定する
請求項4の判定装置。
前記判定部は、前記認識した操作体を認識してから前記特定したピーク値が第2のしきい値以上となるまでの時間が所定値以上である場合に、前記第1のしきい値との比較の結果にかかわらず、前記操作体のタッチ状態を否定的に判定する
請求項5の判定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、上述した測定値に応じて設定される各レベルの感度が適切となるように、想定される手袋の厚さ毎の適切な感度を予め測定しておく必要が生じる。このように、従来の技術では、タッチパネルの適切な感度を予め測定しておかなければならないという不利益が生じる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、手袋の厚さ等に応じた感度を予め測定することなく多様な厚さの手袋等を装着した操作に対応できる判定装置及び判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、操作体の操作面に対する接触又は近接に応じて変動する静電容量を検出するセンサと、前記検出した静電容量の変動量の時間的な変化に基づいて第1のしきい値を決定する決定部と、前記検出した静電容量の変動量と前記決定した第1のしきい値との比較の結果に基づいて前記操作体の前記操作面に対するタッチ状態を判定する判定部とを有し、前記決定部は、前記静電容量の変動量が上昇する過程が終了した
時に、前記操作体の移動に伴って時間的に変化する前記静電容量の変動量の極大値に基づいて、前記極大値よりも小さい前記第1のしきい値を決定する判定装置である。
【0007】
この構成によれば、タッチ状態の判定に用いる第1のしきい値が、検出した静電容量の変動量の時間的な変化に基づいて決定されるから、手袋の厚さ等に応じた第1のしきい値(感度)を予め測定することなく多様な厚さの手袋等を装着した操作に対応することができる。
【0008】
また、この構成によれば、時間的に変化する静電容量の変動量の極大値に基づいて、この極大値よりも小さい第1のしきい値を決定することができる
【0009】
好適には本発明の判定装置は、前記検出した静電容量の変動量に基づいて前記操作体を認識する認識部を有し、前記決定部は、前記認識部が新たに前記操作体を認識する毎に前記第1のしきい値を決定する。
【0010】
この構成によれば、操作体を認識する毎に第1のしきい値を決定するから、操作体を認識する毎に適切な第1のしきい値を決定して適用することができる。
【0011】
好適には本発明の判定装置は、前記認識部は、1又は複数の前記操作体を個別に認識し、前記決定部は、前記認識した操作体毎に前記第1のしきい値を決定し、前記判定部は、前記認識した操作体毎のタッチ状態を判定する。
【0012】
この構成によれば、複数の操作体の各々について第1のしきい値を決定するから、操作体毎に適切な第1のしきい値を決定して適用することができる。
【0013】
好適には本発明の判定装置は、前記認識部は、前記検出した静電容量の変動量の前記操作面における分布に基づいて前記認識した操作体に対応する静電容量の変動量のピーク値を特定し、前記決定部は、前記特定したピーク値の時間的な変化に基づいて前記第1のしきい値を決定し、前記判定部は、前記特定したピーク値と前記決定した第1のしきい値との比較の結果に基づいて前記操作体のタッチ状態を判定する。
【0014】
この構成によれば、操作体に対応する静電容量の変動量のピーク値を用いて、第1のしきい値の決定及びタッチ状態の判定を行うことができる。ここで、ピーク値は、検出した静電容量の変動量の操作面における分布に基づいて特定される値であり、操作面における静電容量の変動量の空間的な極大値と言うことができる。
【0015】
好適には本発明の判定装置は、前記判定部は、前記特定したピーク値の変化速度が所定値以下である場合に、前記第1のしきい値との比較の結果にかかわらず、前記操作体のタッチ状態を否定的に判定する。
【0016】
この構成によれば、ピーク値の変化速度が比較的遅い場合、つまり、操作体の近接する速度が比較的遅い場合にタッチ状態を否定的に判定することができる。そして、操作体の速度が比較的遅い場合は、意図せずに操作体が操作面に接触又は近接してしまった場合であることが想定されるから、意図しない操作に基づくタッチ状態の肯定的な判定が抑制される。
【0017】
好適には本発明の判定装置は、前記判定部は、前記認識した操作体を認識してから前記特定したピーク値が第2のしきい値以上となるまでの時間が所定値以上である場合に、前記第1のしきい値との比較の結果にかかわらず、前記操作体のタッチ状態を否定的に判定する。
【0018】
この構成によれば、操作体が認識されてから第2のしきい値に対応する位置へと移動するまでの時間が比較的長い場合、つまり、認識されてからの操作体の速度が比較的遅い場合にタッチ状態を否定的に判定することができる。そして、認識されてからの操作体の速度が比較的遅い場合は、意図せずに操作体が操作面に接触又は近接してしまった場合であることが想定されるから、意図しない操作に基づくタッチ状態の肯定的な判定が抑制される。
【0019】
好適には本発明の判定装置は、前記決定部は、前記特定したピーク値が前記第2のしきい値以上となった後の前記ピーク値の時間的な変化に基づいて前記第1のしきい値を決定する。
【0020】
この構成によれば、第2のしきい値以上となった後に第1のしきい値を決定するから、第2のしきい値に対応する位置へと移動するまでの時間に基づいてタッチ状態が否定的に判定された場合に、第1のしきい値を決定する必要がなくなる。
【0021】
好適には本発明の判定装置は、前記認識部は、前記検出した静電容量の変動量の前記操作面における分布に基づいて前記認識した操作体が接触又は近接する面積を特定し、前記決定部は、前記面積が所定値以上である場合に、前記第1のしきい値との比較の結果にかかわらず、前記操作体のタッチ状態を否定的に判定する。
【0022】
この構成によれば、操作体の接触又は近接する面積が比較的大きい場合にタッチ状態を否定的に判定することができる。そして、操作体の接触又は近接する面積が比較的大きい場合は、意図せずに操作体が操作面に接触又は近接してしまった場合であることが想定されるから、意図しない操作に基づくタッチ状態の肯定的な判定が抑制される。
【0023】
本発明は、操作体の操作面に対する接触又は近接に応じて変動する静電容量の変動量の時間的な変化に基づいて第1のしきい値を決定する決定部と、前
記静電容量の変動量と前記決定した第1のしきい値との比較の結果に基づいて前記操作体の前記操作面に対するタッチ状態を判定する判定部と
、前記静電容量の変動量に基づいて前記操作体を認識する認識部とを有し、前記判定部は、前記認識した操作体を認識してから前記静電容量の変動量が第2のしきい値以上となるまでの時間が所定値以上であるか否か判定し、前記決定部は、前記判定部において前記時間が前記所定値以上でないと判定された場合において、前記静電容量の変動量が前記第2のしきい値以上となった後に前記静電容量の変動量が上昇する過程が終了した場合、前記操作体の移動に伴って時間的に変化する前記静電容量の変動量の極大値に基づいて、前記極大値よりも小さい前記第1のしきい値を決定する判定装置である。
【0024】
この構成によれば、タッチ状態の判定に用いる第1のしきい値が、検出した静電容量の変動量の時間的な変化に基づいて決定されるから、手袋の厚さ等に応じた第1のしきい値(感度)を予め測定することなく多様な厚さの手袋等を装着した操作に対応することができる。
【0025】
本発明は、操作体の操作面に対する接触又は近接に応じて変動する静電容量を検出するセンサ部と、前記検出した静電容量の変動量と第1のしきい値との比較の結果に基づいて前記操作体の前記操作面に対するタッチ状態を判定する判定部と、前記検出した静電容量の変動量に基づいて前記操作体を認識する認識部とを有し、前記判定部は、前記認識した操作体を認識してから前記検出した静電容量の変動量が第2のしきい値以上となるまでの時間が所定値以上である場合に、前記第1のしきい値との比較の結果にかかわらず、前記操作体のタッチ状態を否定的に判定する判定装置である。
【0026】
本発明は、操作体の操作面に対する接触又は近接に応じて変動する静電容量を検出する
第1工程と、
前記第1工程において検出した静電容量の変動量に基づいて前記操作体を認識する第2工程と、前記第2工程において前記操作体を認識してから前記静電容量の変動量が第2のしきい値以上となるまでの時間が所定値以上であるか否か判定する第3工程と、前記第3工程において前記時間が前記所定値以上でないと判定した場合において、前記静電容量の変動量が前記第2のしきい値以上となった後に前記静電容量の変動量が上昇する過程が終了したか否か判定する第4工程と、前記第4工程において前記上昇する過程が終了したと判定された場合、前記操作体の移動に伴って時間的に変化する前記静電容量の変動量の極大値に基づいて、前記極大値よりも小さい第1のしきい値を決定する
第5工程と、前記検出した静電容量の変動量と前記決定した第1のしきい値との比較の結果に基づいて前記操作体の前記操作面に対するタッチ状態を判定する
第6工程とを有する判定方法判定方法である。
【0027】
この構成によれば、タッチ状態の判定に用いる第1のしきい値が、検出した静電容量の変動量の時間的な変化に基づいて決定されるから、手袋の厚さ等に応じた第1のしきい値(感度)を予め測定することなく多様な厚さの手袋等を装着した操作に対応することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、手袋の厚さ等に応じた感度を予め測定することなく多様な厚さの手袋等を装着した操作に対応できる判定装置及び判定方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る判定装置について説明する。
図1は、本実施形態の判定装置1の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、判定装置1は、センサ部10と、処理部20と、記憶部30と、インターフェース部40とを有する。判定装置1は、指などの操作体の操作面に対するタッチ状態を判定する。判定装置1は、例えば、操作面に対するタッチ操作によって情報を入力可能なタッチパッド又はタッチパネル等の入力装置の少なくとも一部を構成する。
【0031】
センサ部10は、操作面に分布する複数の検出位置において、物体の接触及び近接(以下、単に「近接」と言うことがある。)に応じて変動する静電容量を検出し、その検出結果を検出データとして生成する。センサ部10は、
図1に示すように、物体の近接度合いに応じて静電容量が変動する容量性センサ素子(キャパシタ)12がマトリクス状に形成されているセンサマトリクス11と、容量性センサ素子12の静電容量に応じた検出データを生成する検出データ生成部13と、容量性センサ素子12に駆動電圧を印加する駆動部14とを有する。
【0032】
センサマトリクス11は、
図1に示すように、縦方向に延在した複数の駆動電極Lxと、横方向に延在した複数の検出電極Lyとを備える。複数の駆動電極Lxは横方向へ平行に並び、複数の検出電極Lyは縦方向へ平行に並ぶ。複数の駆動電極Lxと複数の検出電極Lyは、互いに絶縁されて格子状に交差している。駆動電極Lxと検出電極Lyとの交差部付近において容量性センサ素子12が形成されている。なお、
図1の例では電極(Lx,Ly)の形状が短冊状に描かれているが、電極の形状は他の任意の形状(ダイヤモンドパターンなど)でもよい。
【0033】
駆動部14は、センサマトリクス11の各容量性センサ素子12に駆動電圧を印加する。例えば、駆動部14は、処理部20の制御に従って、複数の駆動電極Lxから順番に一の駆動電極Lxを選択し、当該選択した一の駆動電極Lxの電位を周期的に変化させる。駆動電極Lxの電位が所定の範囲で変化することにより、この駆動電極Lxと検出電極Lyとの交差部付近に形成された容量性センサ素子12に印加される駆動電圧が所定の範囲で変化し、容量性センサ素子12において充電や放電が生じる。
【0034】
検出データ生成部13は、駆動部14による駆動電圧の印加に伴って容量性センサ素子12が充電又は放電される際に各検出電極Lyにおいて伝送される電荷に応じた検出データを生成する。すなわち、検出データ生成部13は、駆動部14の駆動電圧の周期的な変化と同期したタイミングで、各検出電極Lyにおいて伝送される電荷をサンプリングし、そのサンプリングの結果に応じた検出データを生成する。
【0035】
例えば、検出データ生成部13は、容量性センサ素子12の静電容量に応じた電圧を出力する静電容量−電圧変換回路(CV変換回路)と、CV変換回路の出力信号をデジタル信号に変換し、検出データとして出力するアナログ−デジタル変換回路(AD変換回路)とを有する。
【0036】
CV変換回路は、駆動部14の駆動電圧が周期的に変化して容量性センサ素子12が充電又は放電される毎に、処理部20の制御に従って、検出電極Lyにおいて伝送される電荷をサンプリングする。具体的には、CV変換回路は、検出電極Lyにおいて正又は負の電荷が伝送される度に、この電荷又はこれに比例する電荷を参照用のキャパシタに移送し、参照用のキャパシタに発生する電圧に応じた信号を出力する。例えば、CV変換回路は、検出電極Lyにおいて周期的に伝送される電荷又はこれに比例する電荷の積算値や平均値に応じた信号を出力する。AD変換回路は、処理部20の制御に従って、CV変換回路の出力信号を所定の周期でデジタル信号に変換し、検出データとして出力する。
【0037】
なお、上述の例において示したセンサ部10は、電極間(Lx,Ly)に生じる静電容量(相互容量)の変動によって物体の接触又は近接を検出するものであるが、この例に限らず、他の種々の方式によって物体の近接を検出してもよい。例えば、センサ部10は、近接する物体によって電極とグランドの間に生じる静電容量(自己容量)を検出する方式でもよい。自己容量を検出する方式の場合、検出電極に駆動電圧が印加される。
【0038】
処理部20は、判定装置1の全体的な動作を制御する回路であり、例えば、後述する記憶部30に格納されるプログラムの命令コードに従って処理を行うコンピュータや、特定の機能を実現するロジック回路を含んで構成される。処理部20の処理は、その全てをコンピュータとプログラムとにより実現してもよいし、その一部又は全部を専用のロジック回路で実現してもよい。
【0039】
図1の例において、処理部20は、センサ制御部21と、2次元データ生成部22と、認識部23と、決定部24と、判定部25とを有する。
【0040】
センサ制御部21は、操作面の複数の検出位置(センサマトリクス11の複数の容量性センサ素子12)における物体の近接を周期的に検出する検出動作を行うようにセンサ部10を制御する。具体的には、センサ制御部21は、駆動部14における駆動電極の選択とパルス電圧の発生、及び、検出データ生成部13における検出電極の選択と検出データの生成が周期的に適切なタイミングで行われるように、駆動部14及び検出データ生成部13を制御する。
【0041】
2次元データ生成部22は、センサ部10による検出結果に基づいて、操作面の複数の検出位置における物体の近接度合いに基づく複数のデータを含んだ行列形式の2次元データ31を生成し、記憶部30に格納する。
【0042】
例えば、2次元データ生成部22は、センサ部10から出力される検出データを、行列形式で記憶部30の記憶領域(現在値メモリ)に格納する。2次元データ生成部22は、現在値メモリに格納した行列形式の検出データと、記憶部30の別の記憶領域(ベース値メモリ)に予め格納した行列形式のベース値との差を演算し、それらの演算結果を2次元データ31として記憶部30に格納する。ベース値メモリには、操作面に物体が近接していない状態における検出データの基準となる値(ベース値)が記憶される。2次元データ31は、物体が操作面に近接していない状態からの検出データの変動量(静電容量の変動量)を表す。
【0043】
認識部23は、2次元データ生成部22によって生成される2次元データ31に基づいて、操作面に近接する1又は複数の操作体を個別に認識し、認識した操作体に対応する操作面上の位置の座標及び当該位置における静電容量の変動量(ピーク値)を含む座標・ピーク値データ32を、操作体毎に生成する。例えば、認識部23は、2次元データ31に基づいて、操作体の近接に応じて静電容量が変動した操作面上の領域である1又は複数の近接領域を特定し、特定した近接領域毎に、領域内の複数の検出位置の各々における静電容量の変動量のうち、最も大きい変動量をピーク値として特定し、特定したピーク値に対応する検出位置の座標及び当該ピーク値を含む座標・ピーク値データ32を生成する。ピーク値は、近接領域内の静電容量の変動量の空間的な極大値と言うこともできる。
【0044】
また、認識部23は、センサ部10による周期的な検出動作の複数のサイクルに渡って同一の操作体を認識する。例えば、認識部23は、検出動作の複数のサイクルに渡って生成される同一の操作体に関する複数の座標・ピーク値データ32に対して、同一の識別コードを割り当てる。つまり、識別コードは、複数のサイクルに渡って同一の操作体を追跡するための情報と言うこともできる。例えば、認識部23は、検出動作の複数のサイクルに渡って生成される複数の2次元データ31の各々における近接領域の比較に基づいて、同一の操作体を認識及び識別することができる。
【0045】
決定部24は、認識部23によって生成される座標・ピーク値データ32に基づいて、操作体のタッチ状態を判定するための第1のしきい値T1を決定する。例えば、決定部24は、座標・ピーク値データ32に含まれるピーク値の時間的な変化に基づいて第1のしきい値T1を決定する。第1のしきい値T1を決定する動作の詳細については後述する。
【0046】
判定部25は、座標・ピーク値データ32に含まれるピーク値と決定部24によって決定される第1のしきい値T1とを比較し、この比較の結果に基づいて操作体のタッチ状態を判定する。判定部25は、操作体のタッチ状態が肯定的に判定された場合には、当該操作体に対応する位置の座標においてタッチ状態であることを示すタッチ状態データ33を生成して記憶部30に格納する。タッチ状態を判定する動作の詳細については後述する。
【0047】
記憶部30は、処理部20の処理に使用される定数データや変数データを記憶する。処理部20がコンピュータを含む場合、記憶部30は、そのコンピュータにおいて実行されるプログラムを記憶してもよい。記憶部30は、例えば、DRAMやSRAMなどの揮発性メモリ、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリ、ハードディスクなどを含んで構成される。
【0048】
インターフェース部40は、判定装置1と他の制御装置(例えば、判定装置1を搭載する電子機器のコントロール用ICなど)との間でデータをやり取りするための回路である。処理部20は、記憶部30に記憶される情報を、インターフェース部40を介して図示しない制御装置へ出力する。
【0049】
次に、上述した構成を有する判定装置1の動作について説明する。
図2は、判定装置1の処理部20によって実行されるメイン処理の一例を示すフローチャートである。このメイン処理は、センサ部10による検出動作の1サイクル毎に実行される。
【0050】
図2に示すように、メイン処理では、まず、2次元データ生成部22が2次元データ31を生成する(ST100)。上述したように、2次元データ31は、センサ部10による検出データに基づいて生成される。
【0051】
そして、操作面に近接する操作体が存在する場合には(ST110のYes)、認識部23が2次元データ31に基づいて座標・ピーク値データ32を生成し(ST120)、操作面に近接する操作体が存在しない場合には(ST110のNo)、そのままメイン処理を終了する。例えば、2次元データ31が表す複数の検出位置における静電容量の変動量が、いずれも0又は基準値以下である場合には、操作面に近接する操作体が存在しないと判定される。
【0052】
操作面に近接する操作体が存在する場合において、座標・ピーク値データ32を生成すると、次に、
図3に例示するタッチ状態判定処理を実行する(ST130)。このタッチ状態判定処理は、操作面に近接する操作体が複数存在する場合には、複数の操作体の各々に対して順に実行される(ST140のYes)。
【0053】
また、タッチ状態判定処理は、同一の操作体に関して、この操作体が認識される間、繰り返し実行される。
図3に示すように、タッチ状態判定処理では、まず、対象となる操作体に対するタッチ状態判定処理の実行が初回である場合には(ST200のYes)、決定部24が、今回のピーク値を、時間的に変化するピーク値の最大値Pmaxに設定する。具体的には、決定部24は、メイン処理のST120において生成された座標・ピーク値データ32に含まれるピーク値を、最大値Pmaxとして記憶部30に格納する。
【0054】
そして、判定部25が、非タッチ状態であると判定し(ST220)、タッチ状態判定処理を終了する。このように、操作面に近接する操作体が認識されてから初めて実行される初回のタッチ状態判定処理においては、常に、ピーク値の最大値Pmaxを設定した上で非タッチ状態と判定される。
【0055】
そして、2回目以降に実行されるタッチ状態判定処理では、まず、判定部25が、当該操作体に対して非タッチ状態属性が設定されているか否かを判定する(ST230)。2回目のタッチ状態判定処理では、非タッチ状態属性は設定されていないため(ST230のNo)、続いて、決定部24が、第1のしきい値T1が設定されているか否かを判定する(ST240)。2回目のタッチ状態判定処理では、第1のしきい値T1は設定されていないため(ST240のNo)、続いて、決定部24が、ピーク値が第2のしきい値T2以上であるか否かを判定する(ST250)。
【0056】
そして、ピーク値が第2のしきい値T2未満である間は(ST250のNo)、非タッチ状態と判定される(ST220)。このように、第2のしきい値T2は、タッチ状態と判定され得るピーク値の下限として機能する。
【0057】
2回目以降のタッチ状態判定処理において、ピーク値が第2のしきい値T2以上となると(ST250のYes)、次に、判定部25が、操作体が認識されてから(例えば、初回のタッチ状態判定処理の実行から)ピーク値が第2のしきい値T2以上となるのに要した経過時間tが、基準値tr以上であるか否かを判定する(ST260)。
【0058】
そして、経過時間tが基準値tr以上であると判定された場合には(ST260のYes)、判定部25が、この操作体に対して非タッチ状態属性を設定した上で(ST270)、非タッチ状態と判定し(ST220)、タッチ状態判定処理を終了する。ここで、次回以降のタッチ状態判定処理において、非タッチ状態属性が設定された操作体は(ST230のYes)、直ちに非タッチ状態と判定される(ST220)。つまり、ピーク値が第2のしきい値T2以上となるのに要した経過時間tが基準値tr以上であった操作体によるタッチ操作は、常に、非タッチ状態と判定される。
【0059】
一方、経過時間tが基準値tr未満であると判定された場合には(ST260のNo)、次に、決定部24が、ピーク値が最大値Pmaxより大きいか否かを判定する(ST280)。そして、ピーク値が最大値Pmaxより大きい場合(ST280のYes)、つまり、操作体の操作面への近接に従ってピーク値が上昇する過程にある場合には、決定部24が、今回のピーク値を最大値Pmaxに設定した上で(ST290)、判定部25が、非タッチ状態と判定し(ST220)、タッチ状態判定処理を終了する。
【0060】
そして、次回以降のタッチ状態判定処理において、ピーク値が最大値Pmax以下となった場合(ST280のNo)、つまり、ピーク値が上昇する過程を終了した場合には、決定部24が、第1のしきい値T1を決定する(ST300)。
【0061】
本実施形態において、第1のしきい値T1は、ピーク値に基づいて決定される。例えば、第1のしきい値T1は、ピーク値より小さい値が設定され、例えば、ピーク値に0.8を乗じた値が設定される。決定された第1のしきい値T1は、記憶部30に格納される。
【0062】
第1のしきい値T1を決定すると、次に、判定部25が、操作体が近接した操作面上の領域である近接領域の面積Aが基準値Arよりも小さいか否かを判定する(ST320)。そして、面積Aが基準値Arよりも小さい場合には(ST320のYes)、判定部25が、タッチ状態と判定して(ST330)、タッチ状態判定処理を終了する。上述したように、タッチ状態との判定に応じて、判定部25は、座標・ピーク値データ32に含まれる位置の座標においてタッチ状態であることを示すタッチ状態データ33を生成して記憶部30に格納する。一方、面積Aが基準値Ar以上である場合には(ST320のYes)、判定部25が、非タッチ状態と判定して(ST220)、タッチ状態判定処理を終了する。
【0063】
本実施形態において、タッチ状態判定処理は、第1のしきい値T1がいったん設定されると(ST240のYes)、判定部25が、ピーク値が第1のしきい値T1以上であるか否かを判定し、ピーク値が第1のしきい値T1以上である場合には(ST310のYes)、上述した面積Aの大きさに基づいてタッチ状態を判定し(ST320、ST330、及びST220)、ピーク値が第1のしきい値T1未満である場合には(ST310のNo)、ノンタッチ状態と判定する。このように、操作体が認識される間、同一の第1のしきい値T1を用いてタッチ状態の判定が行われる。
【0064】
図4は、操作体の移動に応じて第1のしきい値T1を決定しタッチ状態を判定する様子を説明するための図である。
図4の上側は、手袋Gを装着している操作体Fが操作面(センサマトリクス11)に対して近接する様子を示しており、横軸は時間の経過を示す。
図4の下側は、
図4の上側の操作体Fの近接に応じて生じる静電容量の変動量を示している。
図4の下側における1つの釣鐘状の山は、特定の時点における操作体Fの近接領域の静電容量の変動量に対応しており、この山の頂点が、特定の時点におけるピーク値に対応する。
【0065】
図4に示すように、操作体Fが操作面に近接する方向に移動するに従って、ピーク値は上昇する(P1〜P2)。そして、操作体Fの操作面に近接する方向への移動が止まるとピーク値の上昇が止まる(P2)。このとき、ピーク値(P2)より小さい第1のしきい値T1が決定されると共に、タッチ状態と判定される。その後、この第1のしきい値T1とピーク値との比較の結果に基づいてタッチ状態が判定される。
図4の例では、第1のしきい値T1以上のピーク値(P6)であるときにはタッチ状態と判定され、第1のしきい値T1より小さいピーク値(P3〜5、7〜8)であるときには非タッチ状態と判定される。
【0066】
図5は、異なる厚さの手袋を操作体が装着している場合のタッチ状態の判定を比較して説明するための図であり、
図4と同様に、操作体が近接する様子と、操作体の近接に応じて生じる静電容量の変動量を示す。また、
図5の左側は、操作体Fが手袋G1を装着している場合に対応し、
図5の右側は、操作体Fが手袋G1よりも薄い手袋G2を装着している場合に対応する。
【0067】
図5に示すように、操作体が同じように操作面に近接すると、薄い手袋G2を装着している場合(
図5の右側)の方が、厚い手袋G1を装着している場合(
図5の左側)よりも、静電容量の変動量が大きくなる。しかし、静電容量の変動量の時間的な変化の仕方は同様であるから、同様のタイミングでピーク値が上昇する過程を終了し、このときのピーク値(P3)に基づいて第1のしきい値T1が決定され、また、同様のタイミングで第1のしきい値T1以上のピーク値(P4)となり、タッチ状態と判定される。
【0068】
図6は、異なる速度で操作体が操作面に近接する場合の静電容量の変動量の変化を比較して説明するための図であり、
図4及び
図5と同様に、操作体が近接する様子と、操作体の近接に応じて生じる静電容量の変動量を示す。
図6の左側は、操作体Fが、操作面に対して比較的遅い速度で移動する場合に対応し、
図6の右側は、操作体Fが、操作面に対して比較的早い速度で移動する場合に対応する。
【0069】
図6に示すように、操作体Fが比較的遅い速度で移動する場合(
図6の左側)、操作体Fが認識されてからピーク値が第2のしきい値T2以上となるのに要する時間t1は長くなる。一方、操作体Fが比較的速い速度で移動する場合(
図6の右側)、操作体Fが認識されてからピーク値が第2のしきい値T2以上となるのに要する時間t2は短くなる。そして、上述したように、本実施形態におけるタッチ状態判定処理では、ピーク値が第2のしきい値T2以上となるのに要した経過時間tが基準値tr以上であった操作体によるタッチ操作は、常に、非タッチ状態と判定される。したがって、
図6の左側の例のように、操作体Fが比較的遅い速度で操作面に近接する場合、経過時間tが基準値tr以上となると、操作体Fによるタッチ操作は、常に、非タッチ状態と判定される。そして、操作体Fが比較的遅い速度で操作面に近接する場合は、意図せずに操作体が操作面に近接してしまった場合であることが想定されるから、意図しない操作に基づくタッチ状態の肯定的な判定が抑制される。
【0070】
図7及び
図8は、操作体が近接した操作面上の領域である近接領域を例示する。
図7は、操作面の全体領域WAにおいて近接領域A1を有する。近接領域A1は、静電容量の変動量が比較的小さい領域A11と静電容量の変動量が比較的大きい領域A12とによって構成される。
図8は、操作面の全体領域WAにおいて上述した近接領域A1よりも面積が大きい近接領域A2を有する。近接領域A2は、近接領域A1と同様に、静電容量の変動量が比較的小さい領域A21と静電容量の変動量が比較的大きい領域A22とによって構成される。
【0071】
図8に例示した近接領域A2は、
図7に例示した近接領域A1と比べて、その面積が大きい。そして、上述したように、本実施形態におけるタッチ状態判定処理では、ピーク値が第1のしきい値T1以上である場合であっても、近接領域の面積Aが基準値Ar以上である場合には、非タッチ状態と判定される。例えば、
図8の例のように、近接領域の面積が大きい場合、基準値Ar以上であると、非タッチ状態と判定される。そして、近接領域の面積が大きい場合は、意図せずに操作体が操作面に近接してしまった場合であることが想定されるから、意図しない操作に基づくタッチ状態の肯定的な判定が抑制される。
【0072】
以上説明した本実施形態の判定装置1によれば、タッチ状態の判定に用いる第1のしきい値T1が、検出した静電容量の変動量の時間的な変化(上昇する過程を終了したときのピーク値)に基づいて決定されるから、手袋の厚さ等に応じた第1のしきい値T1(感度)を予め測定することなく多様な厚さの手袋等を装着した操作に対応することができる。
【0073】
本発明は上述した実施形態には限定されない。すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲又はその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【0074】
例えば、ピーク値が第2のしきい値T2以上となるのに要した経過時間tに基づく非タッチ状態の判定は、必ずしも必要ではない。更に、タッチ状態と判定され得るピーク値の下限として機能する第2のしきい値T2自体も、必ずしも設ける必要はない。
【0075】
また、例えば、近接領域の面積Aに基づく非タッチ状態の判定は、必ずしも必要でない。