(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704756
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】画像投映装置およびプラネタリウム
(51)【国際特許分類】
G02B 27/18 20060101AFI20200525BHJP
G09B 27/00 20060101ALI20200525BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
G02B27/18 Z
G09B27/00 B
H04N5/74 H
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-41803(P2016-41803)
(22)【出願日】2016年3月4日
(65)【公開番号】特開2017-156656(P2017-156656A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】595086410
【氏名又は名称】コニカミノルタプラネタリウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 光
【審査官】
山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/072483(WO,A1)
【文献】
特開2015−132708(JP,A)
【文献】
特開2014−191304(JP,A)
【文献】
特開2015−081953(JP,A)
【文献】
米国特許第06369919(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18,27/18
G09B 27/00
G03B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を出力するレーザー発振部と,前記レーザー発振部から出力されるレーザー光の光路上に設けられ,前記レーザー光の回折に基づく回折画像を生成する回折光学素子とを有し,前記回折画像をスクリーン上に投映する画像投映装置であって,
前記回折光学素子には,第1の回折画像を生成する第1回折格子領域と,第2の回折画像を生成する第2回折格子領域とが設けられており,
前記回折光学素子による回折画像の投映についてモード切替を行う投映モード切替部を有し,
前記投映モード切替部により切り替えられる投映モードに,
前記第1回折格子領域および前記第2回折格子領域のいずれか一方のみを用いて回折画像の投映を行う1像モードと,
前記第1回折格子領域と前記第2回折格子領域との両方を用いて回折画像の投映を行う重ね像モードとが含まれており,
前記レーザー発振部は,前記投映モード切替部による投映モードが前記重ね像モードであるときには,前記1像モードであるときよりも光量を多くするものであることを特徴とする画像投映装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投映装置であって,前記投映モード切替部は,
前記回折光学素子を,前記レーザー発振部から出力されるレーザー光の光路に対して交差する面内方向に移動させることにより,モード切替を行うものであることを特徴とする画像投映装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像投映装置であって,
前記回折光学素子の移動により,前記第1回折格子領域を用いる第1の1像モードから,前記第2回折格子領域を用いる第2の1像モードへ移行する途中に,前記レーザー光が前記第1回折格子領域および前記第2回折格子領域の両方に跨って照射されることによって前記重ね像モードの投映を行うものであることを特徴とする画像投映装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像投映装置であって,
前記レーザー発振部は,レーザー光が出射する,複数の出射部を有するものであり,
前記投映モード切替部は,前記複数の出射部のうちどの出射部を用いるかを切り替えることにより,モード切替を行うものであることを特徴とする画像投映装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像投映装置であって,
前記複数の出射部に,出射されるレーザー光が,前記第1回折格子領域および前記第2回折格子領域の両方に跨って照射される位置に配置されているものがあり,
前記重ね像モードでは,前記複数の出射部のうち当該位置に配置されているものにより回折画像の投映を行うものであることを特徴とする画像投映装置。
【請求項6】
レーザー光を出力するレーザー発振部と,
前記レーザー発振部から出力されるレーザー光の光路上に設けられ,前記レーザー光の回折に基づく回折画像を生成する回折光学素子とを有する画像投映装置と,
ドームスクリーンとを有し,
前記画像投映装置により前記ドームスクリーンに前記回折画像を投映するプラネタリウムであって,
前記回折光学素子には,第1の回折画像を生成する第1回折格子領域と,第2の回折画像を生成する第2回折格子領域とが設けられており,
前記回折光学素子による回折画像の投映についてモード切替を行う投映モード切替部を有し,
前記投映モード切替部により切り替えられる投映モードに,
前記第1回折格子領域および前記第2回折格子領域のいずれか一方のみを用いて回折画像の投映を行う1像モードと,
前記第1回折格子領域と前記第2回折格子領域との両方を用いて回折画像の投映を行う重ね像モードとが含まれることを特徴とするプラネタリウム。
【請求項7】
請求項6に記載のプラネタリウムであって,前記投映モード切替部は,
前記回折光学素子を,前記レーザー発振部から出力されるレーザー光の光路に対して交差する面内方向に移動させることにより,モード切替を行うものであることを特徴とするプラネタリウム。
【請求項8】
請求項7に記載のプラネタリウムであって,
前記回折光学素子の移動により,前記第1回折格子領域を用いる第1の1像モードから,前記第2回折格子領域を用いる第2の1像モードへ移行する途中に,前記レーザー光が前記第1回折格子領域および前記第2回折格子領域の両方に跨って照射されることによって前記重ね像モードの投映を行うものであることを特徴とするプラネタリウム。
【請求項9】
請求項6に記載のプラネタリウムであって,
前記レーザー発振部は,レーザー光が出射する,複数の出射部を有するものであり,
前記投映モード切替部は,前記複数の出射部のうちどの出射部を用いるかを切り替えることにより,モード切替を行うものであることを特徴とするプラネタリウム。
【請求項10】
請求項9に記載のプラネタリウムであって,
前記複数の出射部に,出射されるレーザー光が,前記第1回折格子領域および前記第2回折格子領域の両方に跨って照射される位置に配置されているものがあり,
前記重ね像モードでは,前記複数の出射部のうち当該位置に配置されているものにより回折画像の投映を行うものであることを特徴とするプラネタリウム。
【請求項11】
請求項6から請求項10までのいずれか1つに記載のプラネタリウムであって,前記レーザー発振部は,
前記投映モード切替部による投映モードが前記重ね像モードであるときには,前記1像モードであるときよりも光量を多くするものであることを特徴とするプラネタリウム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,スクリーンに対して画像を投映する画像投映装置,およびそれを用いたプラネタリウムに関する。さらに詳細には,レーザー光を用い,そのレーザー光に基づいて回折現象により画像を生成し投映する画像投映装置およびプラネタリウムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の画像投映装置の一例として,特許文献1に記載されているものを挙げることができる。同文献の画像投映装置では,「透過原板」を用いて投映像を生成させている(同文献の[0010]等)。そしてその透過原板を移動させることで,投映される画像を変化させるようにしている。同文献では具体的には,透過原板の移動により,星の日周運動を再現したり([0012]),地球上の異なる位置での星空を再現したり([0013])している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−308785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した従来の技術には問題点があった。特許文献1の技術を応用し,透過原板内に2以上の領域を設けることで,2以上の別々の画像を切り替えて投映することができる。しかしこのようなことを実際に行おうとすると,次のような不具合があった。すなわち,画像の切り替えの途中では,中途半端な画像が投映されてしまう。中途半端な画像とは,一方の画像の右半分が投映領域中の左半分に現れ,もう一方の画像の左半分が投映領域中の右半分に現れた投映像である。これは本来意図した投映像ではないし,観覧者から見て非常に興ざめな投映像である。このような画像が投映されるのを防止するには,画像の切り替え中には一時的に光源をオフすることになる。しかしそれも観覧者から見て興ざめな演出となってしまう。
【0005】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,2以上の別々の画像を切り替えて投映することができるばかりでなく,画像の切り替えの途中においても個々の画像を本来の投映位置に投映できる画像投映装置およびプラネタリウムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様における
プラネタリウムは,レーザー光を出力するレーザー発振部と,レーザー発振部から出力されるレーザー光の光路上に設けられ,レーザー光の回折に基づく回折画像を生成する回折光学素子とを有
する画像投映装置と,ドームスクリーンとを有し,
画像投映装置によりドームスクリーン
に回折画像を投映する
設備であって,回折光学素子には,第1の回折画像を生成する第1回折格子領域と,第2の回折画像を生成する第2回折格子領域とが設けられており,回折光学素子による回折画像の投映についてモード切替を行う投映モード切替部を有し,投映モード切替部により切り替えられる投映モードに,第1回折格子領域および第2回折格子領域のいずれか一方のみを用いて回折画像の投映を行う1像モードと,第1回折格子領域と第2回折格子領域との両方を用いて回折画像の投映を行う重ね像モードとが含まれるものである。
【0007】
上記態様における
プラネタリウムでは,回折光学素子の第1回折領域のみを用いて第1の回折画像をスクリーンに投映することができる。また,第2回折領域のみを用いて第2の回折画像をスクリーンに投映することもできる。これらが1像モードである。ここで,スクリーンに投映される画像が回折画像であるため,投映する画像を切り替える途中であっても,各画像の位置は本来の投映位置のまま変わらない。このため,画像の切り替えを,観覧者に違和感を感じさせることなく自然に行うことができる。また,第1回折領域と第2回折領域との両方を用いて回折画像の投映を行う重ね像モードも容易にできる。
【0008】
上記態様における
プラネタリウムではさらに,投映モード切替部は,回折光学素子を,レーザー発振部から出力されるレーザー光の光路に対して交差する面内方向に移動させることにより,モード切替を行うものであることが好ましい。このような回折光学素子の移動により,投映されている回折画像を,位置の移動を伴うことなく消失させたり,あるいは,投映されていなかった回折画像を,最初から本来の位置に出現させたりすることができる。
【0009】
このように回折光学素子の移動によりモード切替を行う場合には,回折光学素子の移動により,第1回折格子領域を用いる第1の1像モードから,第2回折格子領域を用いる第2の1像モードへ移行する途中に,レーザー光が第1回折格子領域および第2回折格子領域の両方に跨って照射されることによって重ね像モードの投映を行うことができる。こうして,1本のレーザー光で重ね像モードを実現できる。また,第1の1像モードから第2の1像モードへの移行を,途中で重ね像モードを経由しつつ自然に行うことができる。
【0010】
上記態様における
プラネタリウムでは,レーザー発振部を,レーザー光が出射する,複数の出射部を有するものとすることができる。この場合における投映モード切替部は,複数の出射部のうちどの出射部を用いるかを切り替えることにより,モード切替を行うものとすることができる。このような出射部の使い分けによっても,投映されている回折画像を,位置の移動を伴うことなく消失させたり,あるいは,投映されていなかった回折画像を,最初から本来の位置に出現させたりすることができる。
【0011】
複数の出射部を有する場合にはその中に,出射されるレーザー光が,第1回折格子領域および第2回折格子領域の両方に跨って照射される位置に配置されているものがあるとよい。この場合,複数の出射部のうち当該位置に配置されているものにより回折画像の投映を行うことで重ね像モードを実行できる。
【0012】
上記のいずれかの態様における
プラネタリウムでは,レーザー発振部は,投映モード切替部による投映モードが重ね像モードであるときには,1像モードであるときよりも光量を多くするものであることが好ましい。このような光量制御を行うことで,重ね像モード時に,スクリーンが暗いという印象を観覧者に与えることを防止できる。ある回折画像から別の回折画像への切り替えを行うときも同様である。
【0013】
本発明の別の一態様における
画像投映装置は,
レーザー発振部と,回折光学素子とを有し,回折画像をスクリーン上に投映する
装置であって,
回折光学素子には,第1の回折画像を生成する第1回折格子領域と,第2の回折画像を生成する第2回折格子領域とが設けられており,回折光学素子による回折画像の投映についてモード切替を行う投映モード切替部を有し,投映モード切替部により切り替えられる投映モードに,第1回折格子領域および第2回折格子領域のいずれか一方のみを用いて回折画像の投映を行う1像モードと,第1回折格子領域と第2回折格子領域との両方を用いて回折画像の投映を行う重ね像モードとが含まれており,レーザー発振部は,投映モード切替部による投映モードが重ね像モードであるときには,1像モードであるときよりも光量を多くするものである。
【発明の効果】
【0014】
本構成によれば,2以上の別々の画像を切り替えて投映することができるばかりでなく,画像の切り替えの途中においても個々の画像を本来の投映位置に投映できる画像投映装置およびプラネタリウムが提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態に係る画像投映装置の正面図である。
【
図2】実施の形態に係る回折光学素子板の平面図である。
【
図3】実施の形態に係る回折光学素子板の第1領域による回折画像の形成を説明する模式図である。
【
図4】実施の形態に係る回折光学素子板の第2領域による回折画像の形成を説明する模式図である。
【
図5】実施の形態に係る回折光学素子板により第1の回折画像を投映している状況を示す模式図である。
【
図6】実施の形態に係る回折光学素子板により第2の回折画像を投映している状況を示す模式図である。
【
図7】回折光学素子による投映画像の位置精度を説明する模式図である。
【
図8】(比較例)透過原板による投映画像の位置精度を説明する模式図である。
【
図9】画像切り替え時における回折光学素子板へのレーザー光の照射状況を示す模式図である。
【
図10】
図9の状況での回折画像の投映を示す模式図である。
【
図11】(比較例)透過原板による投映画像の切り替え時の状況を示す模式図である。
【
図12】実施の形態に係る画像投映装置による投映の演出例を示す模式図である。
【
図13】
図12の演出を行うための回折光学素子板の平面図である。
【
図14】実施の形態に係る画像投映装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図15】変形例に係る画像投映装置の模式図である。
【
図16】実施の形態に係る画像投映装置を利用するプラネタリウム投映装置の正面図である。
【
図17】実施の形態に係る画像投映装置を利用するプラネタリウムの斜視図である。
【
図18】回折光学素子板におけるCGH領域の配置例(一直線状)を示す平面図である。
【
図19】回折光学素子板におけるCGH領域の配置例(二次元状)を示す平面図である。
【
図20】回折光学素子板におけるCGH領域の配置例(隙間あり)を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態に係る画像投映装置1は,
図1に示すように構成されている。
図1の画像投映装置1は,レーザー光源2と,回折光学素子板3とを有している。レーザー光源2は,レーザー光Lを出力するレーザー発振部である。本形態の画像投映装置1では,レーザー光源2から出力されたレーザー光Lの光路上に回折光学素子板3が配置されている。そして,回折光学素子板3より先の投映空間には,レーザー光Lが回折光学素子板3で回折された回折レーザー光Dが照射されるようになっている。本形態の画像投映装置1ではさらに,回折光学素子板3が,レーザー光Lの光路に対して交差する面内方向に移動できるようになっている(矢印A)。
【0017】
本形態における回折光学素子板3は,
図2に示すように,第1領域4と,第2領域5とを有している。第1領域4および第2領域5はいずれも,CGH(Computer Generated Hologram) パターンが形成された回折格子である(回折格子自体については特開2013−013912号公報の[0023]あるいは特開2013−190394号公報の[0012]を参照されたい)。第1領域4と第2領域5とは,異なる回折画像を生成するものである。ここでは,第1領域4が大熊座の絵柄を(
図3),第2領域5が大熊座の目印線群を(
図4),それぞれスクリーン6に表すようにされているものとする。よって本形態の画像投映装置1では,
図1中に矢印Aで示した回折光学素子板3の移動により,スクリーン6に投映する画像を切り替えることができる。
図5が,第1領域4を用いて第1の回折画像(星座絵)を投映している状況である。
図6が,第2領域5を用いて第2の回折画像(目印線群)を投映している状況である。
【0018】
なお
図3〜
図6におけるスクリーン6では白地に黒色で投映画像を示しているが,これは描画の便宜上のことであり,実際のスクリーンでは明暗が逆となることに注意されたい。すなわち実際のスクリーンでは,地部分が暗く,その中に明るい投映画像が現れることになる。このことは,以下「スクリーン6」が登場するすべての図において同じである。
【0019】
このように本形態の画像投映装置1では,2通りの回折画像を切り替えて投映することができる。ここにおいて,以下に説明する2つの利点を有している。第1の利点は,回折光学素子板3の位置精度があまり要求されない,ということである。第2の利点は,2つの画像間の切り替えを,観覧者に違和感を与えずに行うことができる,ということである。
【0020】
まず第1の利点について説明する。この利点は,像形成の原理が
図7に示される回折現象であることに起因して得られるものである。すなわち,回折光学素子板3による回折レーザー光Dの照射方向は,元のレーザー光Lの照射方向に対する回折角θとして定まる。回折角θは,レーザー光Lの波長と回折光学素子板3の格子定数だけで決まり,回折光学素子板3のどの位置にレーザー光Lが入射したのかは関係ない。このように回折角θが一定であるため,投映画像は,レーザー光Lの回折光学素子板3への入射位置から,回折角θの方向にある程度離れた位置に投映されることとなる。したがって,レーザー光源2の配置さえ確実に固定されていれば,回折光学素子板3の停止位置の精度が悪くても,投映画像の位置には影響しないのである。レーザー光Lの回折光学素子板3における照射範囲が,第1領域4,第2領域5のうち目的とする一方のみに掛かり,他方に跨らない程度の位置精度があればよい。
【0021】
もし,レーザー光源2の位置が
図7中に矢印Bで示されるようにずれていたとすれば,そのずれ量は投映画像の位置にそのまま反映されることになる。しかしこれは,従来のレンズを使った投映機とは異なり,光学系により拡大されるものではない。つまり,レーザー光源2の位置ずれがミリレベルであれば,スクリーン6上における投映画像の位置ずれもミリレベルである。よって,レーザー光源2の通常の取り付け精度の範囲内の位置ずれであれば,投映画像の位置ずれが観覧者に感知されることはない。
【0022】
この点が,従来型の透過原板による画像の投映の場合との違いである。
図8に示すように拡散光源7と透過原板8とを用いて画像をスクリーン6に投映する場合,透過原板8の位置ずれ量Cが,スクリーン6上には,光学的に大きく拡大されて反映されてしまう(矢印E)。このためこの方式では,透過原板8の停止位置に非常に高い精度が求められる。これに対して本形態では上記のように,回折光学素子板3の停止位置の精度はあまり要求されない。
【0023】
次に第2の利点について説明する。この利点も,回折現象を利用して像形成を行っていることに得られるものである。前述の
図5の状況から
図6の状況への切り替えの途中では,
図9に示すように,第1領域4と第2領域5との両方に跨ってレーザー光Lが照射されるタイミングが存在する。このタイミングにおいては
図10に示すようにスクリーン6に,第1領域4による回折画像(星座絵)と,第2領域5による回折画像(目印線群)とが重なって表示されることとなる。
図10の状況におけるスクリーン6上での星座絵の画像の位置は,
図5の状況における当該画像の位置と同じである。同様に目印線群の画像の位置も,
図10と
図6とで同じである。その理由は,前述の「第1の利点」のところで説明した通りである。
【0024】
このため本形態での画像の切り替え時におけるスクリーン6上の投映画像の実際の状況は,次のようになる。最初の状態が,
図5に示した星座絵が投映されている状態であることとする。画像の切り替えが始まると,
図5の星座絵に対し,目印線群の画像がうっすらと現れて重ね合わせられた状況となる。そして,画像の切り替えの進行(つまり回折光学素子板3の移動)とともに,目印線群の画像が次第に明るくなり,
図10に示した状態に至る。切り替えがさらに進行すると今度は星座絵の画像が次第に薄くなる。最終的に星座絵の画像が消失して
図6に示した状態になると,切り替え完了である。むろん,
図6の状態から
図5の状態への切り替えの場合でも,星座絵と目印線群とが逆になるだけで同じである。
【0025】
この画像切り替えの過程において,星座絵,目印線群とも,スクリーン6上での移動はなく,本来の投映位置のまま留まる。その理由は上記の通りである。このため観覧者からはスクリーン6上の画像が,星座絵と目印線群との一方から他方へ次第に遷移していくように見える。つまりこの画像切り替えは,観覧者から見て非常に自然である。また,敢えて
図10の状態で回折光学素子板3の移動を停止し,重ね像モードとしての投映を静的に行うことも可能である。なお,上記の画像切り替えの途中での星座絵や目印線群は,
図5や
図6の1像モード時と比べれば暗いことは否めない。元のレーザー光Lのエネルギーが両画像に分散されるからである。そこで,画像切り替えの途中ではレーザー光源2の光量を増すことで画像の明るさを保つようにしてもよい。
【0026】
このように自然な画像切り替えができるという点も,従来型の透過原板による画像の投映の場合と違うところである。
図11に示すように,拡散光源7および透過原板11による投映で画像切り替えを行うと,スクリーン6には,2つの画像の一部分ずつが中途半端に配置された投映画像が現れてしまう。
図11の状況は,透過原板11のうちの透過原板8の部分による投映から透過原板9の部分による投映への移行途中の状況である。透過原板による投映画像の切り替えの際には,先の画像が一方へ退出し,替わりに他方から次の画像が進入してくる,という形になるので,
図11のような投映状況が現れるのである。もちろんその間,先の画像も次の画像もスクリーン6上で移動する。この
図11に示したような投映状況は,観覧者からは不自然に見えるものである。
【0027】
なお
図11に示したものでは,
図10に示したような重ね画像の投映が一応は可能である。ただしそれは,透過原板11中に,重ね画像そのものを投映するための領域である透過原板9が用意されているからである。透過原板8の画像と透過原板10の画像とを重ねて投映できるわけではない。これに対して本形態では上記のように,自然な画像切り替えが可能である。また,回折光学素子板3中には,
図11における透過原板9に相当する領域を設ける必要はない。
【0028】
上記のような本形態の画像投映装置1の特性を利用して,
図12に示すような演出を行うことができる。
図12は,スクリーン6上に投映される画像が,(a)から順に(f)まで変化していく様子を示している。
図12の演出を行うためには,
図13の回折光学素子板12を使用する。
図13の回折光学素子板12は,
図2の回折光学素子板3に第3領域13を追加したものである。第3領域13は,
図13の(a)に示すように,大熊座の目印線群のうち北斗七星の部分に相当するものだけを投映するCGHパターンが形成された回折格子である。
【0029】
図12の演出ではまず,(a)に示すように,回折光学素子板12の第3領域13を用いて,北斗七星の目印線群をスクリーン6に投映する。この状態から回折光学素子板12を移動させて,第2領域5による投映が行われる状態にしたときのスクリーン6が(b)に示されている。このときの投映画像は
図6に示したものと同じである。ここで,観覧者の目には,(a)の状態から(b)の状態への変化の際には,北斗七星の目印線群はそのままの状態で,大熊座の目印線群のうち北斗七星以外の部分に相当するものが次第に浮き出てくるように見える。
【0030】
(b)の状態から回折光学素子板12をさらに移動させていくと,(c),(d),(e),(f)と投映画像が変化していく。すなわち前述のようにうっすらと星座絵が現れる(c)。そして,星座絵が次第に明るくなる一方で目印線群(北斗七星の部分を含む)は次第に暗くなっていく((d),(e))。目印線群が完全に消失した状態が(f)であり,このとき回折光学素子板12では第1領域4のみにレーザー光Lが照射されている。この,(c)→(e)の過程での星座絵と目印線群との明るさの変化は,第2領域5および第1領域4における,実際にレーザー光Lの照射を受けている部分の面積比が変化していくことによる。
【0031】
ここで,本形態の画像投映装置1の制御系の構成を説明する。画像投映装置1の制御系は,
図14に示すように構成されている。
図14の制御系は,制御部14と駆動部15とにより構成されている。制御部14は,レーザー光源2の発光制御や回折光学素子板3,12の移動制御を行う部分である。駆動部15は,制御部14の制御に従って回折光学素子板3,12を移動させるメカ部分であり,公知のモーターやギア等の組み合わせにより構成されている。
【0032】
本形態における制御部14の制御機能のうち回折光学素子板3,12の移動制御とは,要するに前述の,星座絵や目印線群といった投映画像の切り替えのために回折光学素子板3,12を移動させる制御のことである。その中には,前述の1像モード(
図5,
図6,
図12の(a),(b),(f))や,重ね像モード(
図10,
図12の(c)〜(e))が含まれる。また,レーザー光源2の発光制御には,前述の投映画像切り替え時の光量増量制御が含まれる。むろん,重ね像モードの状態で回折光学素子板3,12を停止させる場合でも,光量を増量した状態とすることができる。また,画像切り替えの開始から完了まで,増量した光量を一定としてもよいし,山なり状に光量が変化するようにしてもよい。
【0033】
本形態の画像投映装置1の変形例として,
図15に示すものを挙げることができる。この変形例は,回折光学素子板3を移動させる代わりに,レーザー光源の出射部を複数個にしたものである。すなわち
図15の構成例では,3つの出射部16〜18を有するレーザー光源19を用いている。出射部16は,回折光学素子板3の第1領域4により1像モードの投映を行うための出射部である。出射部17は,回折光学素子板3の第1領域4および第2領域5により重ね像モードの投映を行うための出射部である。すなわち出射部17は,出射されるレーザー光が,第1領域4および第2領域5の両方に跨って照射される位置に配置されているものである。出射部18は,回折光学素子板3の第2領域5により1像モードの投映を行うための出射部である。
【0034】
この変形例の場合の投映画像の切り替え制御は,出射部16〜18のうち実際に発光させるものを切り替えることによりなされる。ここで,出射部16〜18のうち2つ以上を同時に発光させることもできる。また,出射部16〜18の発光量を個別に漸増させていったり漸減させていったりすることもできる。これにより,
図12の(b)〜(f)に示したような演出を行うこともできる。また,出射部16〜18のうち出射部17は,必須のものではない。出射部17を発光させなくても,出射部16,18を同時に発光させることで,重ね像モードを実現できるからである。
【0035】
ここで厳密に考えれば,
図15の構成例で回折光学素子板3が
図10中のものと全く同じだとすると,スクリーン6上での星座絵の位置と目印線群の位置とが少しずれることになる。ただしそのずれ量は,レーザー光源19における出射部16〜18の間隔と同じで,拡大されるものではない。したがって,スクリーン6上で観覧者に気づかれるほどのずれ量ではない。なぜなら投映画像は,例えばプラネタリウムの場合,10mほど離れた位置に数m四方程度のサイズで投映されることとなる。一方,出射部16〜18の間隔は通常,2〜4mm程度でしかないため,数m四方サイズの投映画像が2〜4mm程度ずれることとなる。これは誤差範囲でしかないといえるからである。出射部16〜18の間隔はもちろん,回折光学素子板3における第1領域4や第2領域5のサイズに合わせられている。レーザー光Lのビーム系が通常1〜3mm程度だからである。
【0036】
本
形態の画像投映装置は例えば,
図16に示すプラネタリウム投映装置47における副投映部48として有益である。プラネタリウム投映装置47は副投映部48の他に,通常の主投映部49を有している。副投映部48は,主投映部49の間に配置されている。主投映部49から投映される主画像は主として,星野(せいや)画像である。副投映部48から投映される副画像は,前述の回折光学素子板3,12による回折像として形状が規定された画像である。このようなプラネタリウム投映装置47により,主画像と副画像とを重ねてドームスクリーンに投映することができる。例えば,主投映部49から投映される星像に対し,副投映部48から投映される星座絵や目印線群,あるいはそれらの両方を重ね合わせることができる。
【0037】
本
形態の画像投映装置はあるいは,
図17に示すようなプラネタリウム50における副画像の投映装置51としても有益である。
図17には,投映装置51の他に,主画像の投映装置52,ドームスクリーン53,操作台54を示している。投映装置52は,前述の副投映部48を有しない通常のプラネタリウム投映装置である。その代わりに,投映装置52とは別に投映装置51を設けたのが
図17の構成例である。このような構成でも,投映装置52から投映される主画像と,投映装置51から投映される副画像とがドームスクリーン53に重ねて投映されることとなる。
【0038】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば,レーザー光Lの光路上に回折光学素子板3,12を配置するとともに,回折光学素子板3,12に少なくとも第1領域4と第2領域5とを設けている。そして,回折光学素子板3,12の面内方向の移動により,もしくは複数個設けられた出射部16〜18の使い分けにより,1像モードでの投映や重ね像モードでの投映を行うことができるようにしている。これにより,2以上の別々の画像を切り替えて投映することができるばかりでなく,画像の切り替えの途中においても個々の画像を本来の投映位置に投映できる画像投映装置1,48,51およびプラネタリウム50が実現されている。
【0039】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,投映する画像の切り替えに際して,回折光学素子板3,12の面内方向の移動と,複数の出射部16〜18の使い分けとを併用することとしてもよい。
【0040】
また,回折光学素子板3,12におけるCGH領域の数は,4以上であってもよい。4以上のCGH領域を持つ回折光学素子板におけるCGH領域の配置は,
図18に例示されるような一直線状でもよいし,
図19に例示されるような2次元状でもよい。
図19のような二次元配置の場合,最大4通りの回折画像の重ね合わせ同時投映が可能である。また,各CGH領域の間には
図20に例示されるように,隙間部分20が存在していてもよい。ただし隙間部分20は,レーザー光Lに対して不透明な材質であることが望ましい。また,重ね像モードでの投映に支障とならないため,隙間部分20の幅はレーザー光Lのビーム径の3分の1以下であることが望ましい。
図19の二次元配置で隙間部分20を設けた場合には,隙間部分20の交差箇所の対角線の長さがレーザー光Lのビーム径の3分の1以下であることが望ましい。
【符号の説明】
【0041】
1 画像投映装置
2,19 レーザー光源
3,12 回折光学素子板
4 第1領域
5 第2領域
6,53 スクリーン
13 第3領域
14 制御部
16〜18 出射部
47 プラネタリウム投映装置
48 副投映部
50 プラネタリウム
51 投映装置