(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記板状部材は、前記左側開口の右端部に隣接し該左側開口における気体の流通方向と平行に前記第1流路側に突出した板状の左側突出部と、前記右側開口の左端部に隣接し該右側開口における気体の流通方向と平行に前記第1流路側に突出した板状の右側突出部と、を有する、
請求項1又は2に記載の赤外線処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
次に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である赤外線処理装置10の縦断面図である。
図2は、給気装置20の給気ダクト22を右上前方から見た斜視図である。
図3は、給気ダクト22を前方から見た正面図である。なお、
図1中の右上の給気ダクト22の拡大断面図は、
図3のA−A断面図に相当する。また、
図2,3では、仕切り板19は図示を省略している。赤外線処理装置10は、シート75上に塗布された被処理物としての塗膜77の赤外線処理(ここでは乾燥)を赤外線を用いて行うものであり、炉体14と、給気装置20と、排気装置50と、赤外線ヒーター60と、搬送装置70と、制御装置80と、を備えている。この赤外線処理装置10は、塗膜77が上面に形成されたシート75を搬送装置70のロール72,73により連続的に搬送方向(後方)に搬送して塗膜77の乾燥を行う、ロールトゥロール方式の乾燥炉として構成されている。なお、本実施形態において、上下方向,左右方向及び前後方向は、
図1〜3に示した通りとする。
【0020】
炉体14は、略直方体に形成された断熱構造体であり、前端面15及び後端面16にそれぞれ開口17,18を有している。この炉体14は、前端面15から後端面16までの長さが例えば2〜10mである。炉体14は、内部に仕切り板19が配設されている。この仕切り板19は、水平方向に配置されて炉体14内の空間を上部空間14aと下部空間(処理空間14b)とに上下に分離している。仕切り板19は、赤外線ヒーター60からの赤外線の少なくとも一部(例えば波長が0.7μm以上4μm以下の近赤外線)を透過する赤外線透過材料で構成されている。本実施形態では、仕切り板19の材質は波長が4μmを超える赤外線を吸収し且つ波長が4μm以下の赤外線を透過する石英ガラスとした。仕切り板19は、赤外線ヒーター40が存在する上部空間14aと塗膜77が通過する処理空間14bとを分離することで、塗膜77の過熱を抑制したり給気装置20から処理空間14b内への送風を整流したりする役割を果たす。開口17,18は処理空間14bに開口している。片面に塗膜77が塗布されたシート75は、開口17から搬入され、処理空間14bを水平方向に進行し、開口18から搬出される。
【0021】
給気装置20は、処理空間14b内の塗膜77の表面(上面)側に気体を供給(送風)して、処理空間14b内のシート75及び塗膜77の冷却と塗膜77から蒸発した溶剤などの成分の除去との少なくとも一方を行う装置である。給気装置20は、給気ファン21と、給気ダクト22(本発明のダクトに相当)と、を備えている。給気ファン21は、炉体14外に配置されて給気ダクト22内に気体を供給するものである。給気ファン21は、気体の流量の調節が可能となっており、気体の温度も調節可能であってもよい。給気ファン21が供給する気体、本実施形態ではシート75及び塗膜77を冷却可能な冷風(例えば常温や50℃以下の空気)とした。給気ファン21から供給された気体は、給気ダクト22内を通過して、給気ダクト22の前側に設けられた第2開口44から処理空間14b内に供給される。第2開口44は、
図2,3に示すように、長手方向と短手方向とを有する長方形状をしている。第2開口44は、長手方向が左右方向と平行であり、短手方向が上下方向と平行になっている。第2開口44から処理空間14bに供給される気体の風速は、特にこれに限定するものではないが、例えば1m/s〜15m/sとしてもよい。
【0022】
給気ダクト22について
図1〜3を用いて詳細に説明する。給気ダクト22は、第1開口34を有する筒状部材30と、筒状部材30を囲む本体部41と、本体部41の前端側に配設されたノズル部43と、を備えている。給気ダクト22は、例えばSUS304やアルミニウムなどの金属で構成されている。
【0023】
筒状部材30は、
図2に示すように、底部38を有する有底の管である。筒状部材30は、軸方向が第2開口44の長手方向(左右方向)と平行になるように配置されている。筒状部材30は、本体部41の右側の壁を左右に貫通し、図示は省略するが炉体14も貫通して炉体14外まで配設されている。筒状部材30の内部は、気体が流通可能な第1流路32となっており、給気ファン21から供給された気体は第1流路32内を右から左に流通し、底部38側に向けて流れていく。筒状部材30は、断面円形の管であり、第1流路32も流路断面(気体の流通方向に垂直な断面)は円形になっている。筒状部材30にはフランジ31が配設されており、このフランジ31を介して本体部41の右側の外壁面にボルトなどで取り付けられて固定されている。なお、筒状部材30は本体部41内に位置する部分と本体部41外に位置する部分とが一体であっても別の部材であってもよく、別の部材である場合は両部材がこのフランジ31で接続されていてもよい。筒状部材30の底部38は、本体部41の内壁面に接触しており、ボルトなどで本体部41に固定されている。筒状部材30は、第1流路32からの気体の出口となる第1開口33を1以上有している。第1開口33は筒状部材30の外周面(側面)に配設されている。第1開口33は複数配設されていてもよく、本実施形態では第1開口34〜37の4個が配設されている。第1開口34〜第1開口37を第1開口33と総称する。第1開口34〜第1開口37は、いずれも角が丸い長方形状をしており、いずれも長手方向が第2開口44の長手方向(左右方向)に平行に開口している。第1開口34〜第1開口37は、いずれも本体部41内に位置しており、且つ、底部38よりも第1流路32の流通方向(右から左に向かう方向)で上流側に位置している。第1開口34,35は、筒状部材30の外周面の前端に配設され、第1流路32中の気体が後方から前方に向かって流出するようになっている。第1開口34と第1開口35とは、互いに左右に並んで配設されている。第1開口34,35の軸方向(気体の流通方向)は、前後方向と平行になっている。第1開口36,37は、筒状部材30の外周面の後端に配設され、第1流路32中の気体が前方から後方に向かって流出するようになっている。第1開口36と第1開口37とは、互いに左右に並んで配設されている。第1開口36,37の軸方向(気体の流通方向)は、前後方向と平行になっている。第1開口34〜37はいずれも同じ形状且つ同じ大きさになっている。また、第1開口34と第1開口36とは、筒状部材30の軸線を通り上下方向に平行な仮想面に対して面対称になっている。同様に、第1開口35及び第1開口36も面対称になっている。
【0024】
本体部41は、略直方体形状(立方体形状を含む)に形成された中空の部材である。本体部41は、筒状部材30の外周面のうち少なくとも第1開口33を含む部分を覆っている。本実施形態では、本体部41内には筒状部材30の底部38も配置されており、本体部41は第1開口33だけでなく筒状部材30の左端部(フランジ31の配設された部分から底部38まで)全体を囲んでいる。本体部41の内部の中空部分(略直方体形状の空間)は第2流路42となっており、第2流路42は筒状部材30の第1開口33を介して第1流路32と連通している。
【0025】
ノズル部43は、気体が流通可能な管であり、本実施形態では角管状に形成されている。ノズル部43は、本体部41に配設されており、本実施形態では本体部41と一体的に形成されている。ノズル部43は、本体部41の下端且つ前端に配設されており、内部の空間は本体部41内部の空間と連通している。なお、ノズル部43内部の空間も第2流路42に含まれるものとする。ノズル部43は、第2流路42から処理空間14bへの気体の出口となる第2開口44を有している。第2開口44は、ノズル部43の前端で前方に向けて水平に開口している。これにより、給気装置20は、シート75の搬送方向とは反対方向に(後方から前方に向けて)気体を供給する。第2開口44は、上述したように長手方向が左右方向と平行であり、短手方向が上下方向と平行になっている。第2開口44の長手方向(左右方向)は、搬送装置70による塗膜77の搬送方向(前後方向)に垂直且つ塗膜77の幅方向に平行になっている。第2開口44の長手方向は、上下方向に垂直になっている。第2開口44の軸方向(気体の流通方向)は、前後方向と平行になっている。ノズル部43内の空間の軸方向(気体の流通方向)も、前後方向と平行になっている。第2流路42を流通した気体は、この第2開口44を介して後方から前方に向かって流出する。なお、ノズル部43の前後方向の長さ(ノズル部43内の流通方向の長さ)やノズル部43内の空間の軸方向は、第2開口44から流出する気体が所望の向きになるように適宜調整することができる。例えば、ノズル部43内の空間の軸方向が上前方や下前方を向くように、ノズル部43の内周面(特に上面及び下面)の向きを傾斜させてもよい。第2開口44の左右の幅(第2開口44の長手方向の長さであり、
図3の2本の二点鎖線間の距離)は、
図3に示すように、塗膜77の左右の幅よりも大きくなっている。そして、搬送される塗膜77の左右方向の両端は、第2開口44の長手方向の両端の間の領域に位置するようになっている。すなわち、塗膜77は、第2開口44の長手方向の両端の間の領域に含まれるような位置関係を保ちつつ搬送される。ノズル部43及び第2開口44は、
図1,3に示すように、第1開口33よりも下方に位置しており、さらに筒状部材30のうち本体部41に覆われた部分よりも下方に位置している。
【0026】
ここで、第1開口33の流路断面積(開口面積)を面積S1とし、第2開口44の流路断面積(開口面積)を面積S2とし、第1流路32の流路断面積を面積S3とし、第2流路42の流路断面積を面積S4とする。なお、流路が複数の孔で構成されている場合は、面積S1〜S4はいずれも合計面積とする。例えば、面積S1は、第1開口34〜37の流路断面積の合計値とする。また、本実施形態では第1流路32の流路断面積(筒状部材30の内径で定まる円の面積)は一定としたが、第1流路32の流路断面積が流通方向に沿って変化する部分がある場合には、第1流路32中の流路断面積の最大値を面積S3とする。面積S4についても同様とする。そのため、本実施形態では、面積S4は、ノズル部43内の流路断面積ではなく、本体部41内の流路断面積に基づいて定まる。また、面積S4は、第2流路42のうち第1開口33から第2開口44までの間の気体の経路の中で定めるものとする。そのため、本実施形態では、第2流路42のうち第1開口33よりも上方の領域の断面積は、面積S4には無関係とする。以上のことから、本実施形態における面積S4は、
図1に示すように本体部41内部の筒状部材30よりも下方且つノズル部43よりも上方の空間における流路断面積(流通方向に垂直すなわち前後左右に平行な面の面積)となる。
【0027】
この面積S1〜S4に関して、本実施形態では、S3<S1とした。ただし、S3=S1としてもよいし、S3>S1としてもよい。また、本実施形態では、S1<S4とした。すなわち、第2流路42の少なくとも一部が第1開口33よりも流路断面積が大きくなるようにした。ただし、S1=S4としてもよいし、S1>S4としてもよい。また、本実施形態では、S4>S2とした。すなわち、第2開口44は、第2流路42の流路断面積の最大値よりも流路断面積が小さくなるようにした。ただし、S4=S2としてもよいし、S4<S2としてもよい。また、本実施形態では、S1>S2とした。ただし、S1=S2としてもよいし、S1<S2としてもよい。なお、面積S2すなわち第2開口44の開口面積を調整することで、第2流路42から処理空間14bに供給される風の風速を調整することができる。そのため、面積S2は、必要な風速が得られるように定めてもよい。
【0028】
排気装置50は、炉体14内の雰囲気ガスを排出する装置である。排気装置50は、排気ダクト52内の雰囲気ガスを排気する排気ファン51と、雰囲気ガスを排気ファン51に導く排気ダクト52と、処理空間14bから排気ダクト52への雰囲気ガスの出口となる排気口54と、を備えている。排気口54は、炉体14のうちシート75の搬入側である開口17側の端部に設けられ、搬出側である開口18側に向けて水平に開口している。排気装置50は、この排気口54を介して炉体14内の雰囲気ガス(主に塗膜77の表面に沿って流れた後の給気装置20からの送風)を吸気して、排気ファン51により炉体14の外部へ排気する。なお、排気ファン51は、例えば図示しない排気用の配管に接続されていてもよく、処理空間14b内の雰囲気ガスに含まれる塗膜77から蒸発した有機溶剤などの成分を除去するなど、適切な処理を行ってから赤外線処理装置10外に雰囲気ガスを排気してもよい。また、排気ファン51は、排気ダクト52内の雰囲気ガスを赤外線処理装置10外に排気せず、給気ファン21の吸気として循環させてもよい。
【0029】
赤外線ヒーター60は、処理空間14b内を通過する塗膜77に赤外線を照射する装置であり、上部空間14a内に複数取り付けられている。本実施形態では、赤外線ヒーター60は前端面17側から後端面18側にわたって略均等に複数本(本実施形態では6本)配置されている。この複数の赤外線ヒーター60は、いずれも同様の構成を有しており、いずれも長手方向が搬送方向と直交するように取り付けられている。以下、1つの赤外線ヒーター30の構成について説明する。
【0030】
赤外線ヒーター60は、
図1の拡大図に示すように、発熱体であるフィラメント61を内管62が囲むように形成されたヒーター本体63と、このヒーター本体63の外側に設けられ内管62を囲むように形成された外管64と、外管64の外表面に配設された反射層65と、を備えている。
【0031】
ヒーター本体63は、本実施形態ではハロゲンヒーターとして構成されている。フィラメント61は、加熱すると赤外線を放射する発熱体であり、本実施形態ではW(タングステン)製とした。なおフィラメント61の材料としては、他にNi−Cr合金,Mo,Ta,及びFe−Cr−Al合金などを挙げることができる。フィラメント61の両端には、図示しない電力供給源から電力が供給される。内管62は、円筒状の管であり、フィラメント61からの赤外線の少なくとも一部を透過する赤外線透過材料で構成されている。本実施形態では、内管62の材質は仕切り板19と同じ石英ガラスとした。内管62の内部は、アルゴンガスにハロゲンガスを添加した雰囲気となっている。
【0032】
外管64は、上述した赤外線透過材料で形成された管である。本実施形態では、外管64は、内管32と同様に石英ガラスで形成されているものとした。
【0033】
反射層65は、外管64の外周面のうち、フィラメント61からみて塗膜77とは反対側(上側)を含む領域に形成され、フィラメント61の周囲の一部のみを覆うように設けられている。本実施形態では、反射層65は、外管64の上側半分を全て覆っているものとした。反射層65は、その断面の円弧を含む円の中心位置にフィラメント61が位置するように配置されている。この反射層65は、フィラメント61から放射される電磁波のうち赤外線の少なくとも一部を反射する赤外線反射材料で形成されている。赤外線反射材料としては、例えば金,白金,アルミニウムなどが挙げられる。
【0034】
冷媒流路66は、内管62と外管64との間の空間であり、例えば炉体14を左右に貫通する図示しない流体出入口などを介して冷媒が流通可能となっている。冷媒は、例えば空気などの流体である。冷媒流路66を流通する冷媒は、赤外線ヒーター60の外面である外管64及び反射層65の温度を下げたり、任意の温度に調整(例えば200℃以下など)したりする役割を果たす。
【0035】
搬送装置70は、塗膜77を搬送する機構であり、炉体14の前方に設けられたロール72と、炉体14の後方に設けられたロール73と、ロール72,73に掛け渡されたシート75と、を備えている。シート75はロール72,73に巻き付けられており、ロール72,73の回転によって処理空間14b内を搬送方向(後方)に移動する。シート75は、特に限定するものではないが、例えば樹脂製のシートであり、本実施形態ではPETフィルムからなるものとした。シート75は、特に限定するものではないが、例えば厚さ10〜100μm,幅200〜1000mmである。
【0036】
塗膜77は、シート75の上面に塗布された被処理物であり、例えば乾燥後にMLCC(積層セラミックコンデンサ)用の薄膜として用いられるものである。塗膜77は、例えばセラミック粉末又は金属粉末と、有機バインダーと、有機溶剤とを含むものである。塗膜77の厚みは、特に限定するものではないが、例えば20〜1000μmである。
【0037】
制御装置80は、CPUを中心とするマイクロプロセッサーとして構成されている。この制御装置80は、給気ファン21及び排気ファン51の各々に制御信号を出力して、給気ダクト22の第2開口44から送風される気体の温度及び風量を制御したり、処理空間14bの雰囲気の排気口54からの排気量を制御したりする。また、制御装置80は、フィラメント61の電力供給源に制御信号を出力して、フィラメント61のヒーター出力(消費電力)を制御し、これによりフィラメント61の温度や塗膜77に照射される赤外線の放射強度を制御する。制御装置80は、図示しない冷媒供給源から冷媒流路66に流れる冷媒の流量を制御して、外管64及び反射層65の温度を調整する。制御装置80は、ロール72,73の回転速度を制御することで、炉体14内のシート75及び塗膜77の通過時間やシート75及び塗膜77にかかる張力を調整することができる。また、制御装置80は、図示しないタッチパネルなどの表示操作部を備えており、作業者からの指示を入力したり作業者に情報を出力したりする。
【0038】
次に、こうして構成された制御装置80を用いて塗膜77を乾燥する様子について説明する。まず、制御装置80は、例えば作業者からの処理開始指示を入力すると、フィラメント61に通電して赤外線を放射させると共に、給気ファン21,排気ファン51を制御して処理空間14b内への送風および排気を行う。これにより、制御装置80は処理空間14b内の温度や風量を所定の状態になるよう調整する。次に、制御装置80はロール72,73を回転させ、シート75の搬送を開始する。これによりロール72からシート75が巻き外されていく。また、シート75は開口17から処理空間14b内に搬入される直前に図示しないコーターによって上面に塗膜77が塗布される。そして、塗膜77が塗布されたシート75は、処理空間14b内に搬送される。シート75が処理空間14b内を通過する間に、シート75の上面に形成された塗膜77は、赤外線ヒーター60からの赤外線が照射されることによって溶剤などの成分が蒸発して乾燥される。また、これと同時に、給気装置20からの冷風が塗膜77やシート75を冷却したり、塗膜77から蒸発した溶剤を除去したりする。そして、塗膜77は乾燥されて薄膜となり、開口18から搬出される。この薄膜(塗膜77)は、ロール73にシート75とともに巻き取られる。その後、薄膜はシート75から剥離され、所定形状に切断されて積層され、MLCCが製造される。
【0039】
なお、制御装置80は、上記の塗膜77の赤外線処理を行う際、例えば、フィラメント61から放射される赤外線のピーク波長が所定の波長領域(例えば波長1μm〜4μm,2μm〜3.5μmなど)内の値になるように、赤外線ヒーター60のヒーター出力を制御する。
【0040】
また、制御装置80は、シート75の温度が所定値となるように給気ファン21の温度や流量を制御する。この温度および流量はあらかじめ定められているものとしてもよいし、処理空間14b内に設けられた温度センサが検出した温度に基づいて制御装置80が温度及び流量を調整してもよい。
【0041】
ここで、給気ファン21から処理空間14bまでの気体の流れについて説明する。給気ファン21から供給された気体は、第1流路32,第1開口33,第2流路42,第2開口44をこの順に通過して、第2開口44から処理空間14bに供給される。このとき、第1流路32を有する筒状部材30の外周面に第1開口33が配設されていることで、気体の少なくとも一部は筒状部材30の内周面や底部38などに当たってから第1開口33を通過して第2流路42に流出する。このように筒状部材30の内周面や底部38などに気体が当たることにより、気体の動圧の少なくとも一部が静圧に変換され、第1開口33から流出する際には気体の流線が整った状態になる。これにより、第2流路42を通過して第2開口44から処理空間14bを流れる風は、風速のばらつきが低減される。例えば、第2開口44の長手方向の両端と中央とにおける風速のばらつきが低減される。これにより、例えば風速がよりばらついている場合と比較して、塗膜77の乾燥にむらが生じることなどを低減でき、MLCCの品質や歩留まりの低下などを抑制できる。
【0042】
以上詳述した本実施形態の赤外線処理装置10によれば、内部に第1流路32を有する筒状部材30の外周面に第1開口33が配設されていることで、第2流路42を通過して第2開口44から処理空間14bに流出する風は、風速のばらつきが低減される。
【0043】
また、第2開口44は、長手方向と短手方向とを有し、第1開口33は、長手方向が第2開口44の長手方向に平行な第1開口34〜37を有している。第2開口44と第1開口33(34〜37)とが長手方向が平行であることで、第2開口44から流出する風は長手方向での風速のばらつきがより低減されやすい。
【0044】
さらに、第2開口44は、長手方向と短手方向とを有し、筒状部材30は、軸方向が第2開口44の長手方向と平行になるように配置されている。しかも、第1開口33は、上記のように長手方向が第2開口44の長手方向に平行な第1開口34〜第1開口37を有している。これにより、筒状部材30の軸方向と第1開口33(34〜37)の長手方向とが平行になるため、第1開口33(34〜37)の長手方向の長さを大きくしやすい。
【0045】
さらにまた、第2流路42は、少なくとも一部が第1開口33よりも流路断面積が大きい(S1<S4)。そしてまた、第2開口44は、第2流路42の流路断面積の最大値よりも流路断面積が小さい(S4>S2)ため、処理空間14b内に供給される風の風速を高くしやすい。
【0046】
そしてまた、赤外線処理装置10は、塗膜77を処理空間14b内で搬送方向に搬送する搬送装置70を備え、第2開口44は、長手方向が搬送方向に垂直且つ塗膜77の幅方向に平行である。これにより、塗膜77の幅方向での風速のばらつきが低減されるため、塗膜77に乾燥の処理むらが生じにくくなる。
【0047】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態の赤外線処理装置10Bの縦断面図である。
図5は、給気ダクト22Bを右上前方から見た斜視図である。
図6は、
図4の給気ダクト22Bの拡大部分のB−B断面図である。なお、
図4中の右上の給気ダクト22Bの拡大断面図は、
図6のC−C断面図に相当する。また、
図5,6では、仕切り板19は図示を省略している。赤外線処理装置10Bは、給気装置20に代えて給気装置20Bを備える点以外は、第1実施形態の赤外線処理装置10と同じ構成をしている。そのため、赤外線処理装置10と同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0048】
給気装置20Bは、給気ファン21と、給気ダクト22B(本発明のダクトに相当)と、を備えている。給気装置20Bは、給気ダクト22の代わりに給気ダクト22Bを備えている点以外は、給気装置20と同様である。
【0049】
給気ダクト22Bは、本体部41Bと、板状部材30Bと、ノズル部43と、配管45Bと、を備えている。給気ダクト22Bは、給気ダクト22と同様に、例えばSUS304やアルミニウムなどの金属で構成されている。
【0050】
本体部41Bは、略直方体形状(立方体形状を含む)に形成された中空の部材であり、内部に気体が流通可能な第1流路32B及び第2流路42Bを有している。本実施形態では、本体部41Bの天井部分は、
図5に示すように、上方ほど第1流路32Bの流路断面積が小さくなる形状に一部が傾斜している。第1流路32Bの天井部分の中央には配管45Bが取り付けられている。配管45Bは、炉体14の天井を貫通しており、給気ファン21から本体部41B(第1流路32B)までの気体の流路を形成している。給気ファン21から供給された気体は配管45B内を上から下に流通し、第1流路32Bに向けて流れていく。
【0051】
板状部材30Bは、本体部41Bの内部に配置された部材であり、本体部41Bの内部空間を区画することで、第1流路32Bと第2流路42Bとを区画している。本実施形態では、板状部材30Bは第1流路32Bに面する表面(ここでは上面)が前後左右と平行になるように配置され、本体部41Bの内部を上方の空間(第1流路32B)と下方の空間(第2流路42B)とに区画している。板状部材30Bは、
図4に示すように、本体部41Bの後側の壁を前後に貫通している。本体部41Bの後側の外壁面には接続板31Bがボルトなどで固定されている。この接続板31Bと板状部材30Bとがボルトなどで固定されることで、板状部材30Bは接続板31Bを介して本体部41Bに取り付けされている。板状部材30Bは、本体部41Bの内周面との間の隙間であり第1流路32からの気体の出口となる第1開口33Bを1以上形成するように配置されている。第1開口33Bは、本体部41Bと板状部材30Bとが第1流路32の流通方向(上下方向)に垂直な方向に離間していることで形成される隙間である。この第1開口33Bは、
図5,6に示すように、長手方向が第2開口44の長手方向(左右方向)に平行であり板状部材30Bの第2開口44側(前側)に位置する前側開口34Bと、板状部材30Bの左側に位置する左側開口35Bと、板状部材30Bの右側に位置する右側開口36Bと、を有している。前側開口34B,左側開口35B,及び右側開口36Bを第1開口33Bと総称する。第1開口33Bは、第1流路32Bと第2流路42Bとを連通させている。第1開口33Bの軸方向(気体の流通方向)は、第1流路32の流通方向(上下方向)と平行になっている。前側開口34Bは、板状部材30Bの前側に位置していることで、第1流路32Bのうち前側の領域と連通している。言い換えると、第1流路32Bの流通方向に沿って見たときに、前側開口34Bは第1流路32Bのうち前側の領域と重複するように位置している。同様に、左側開口35Bは、第1流路32Bのうち左側の領域と連通している。右側開口36Bは、第1流路32Bのうち右側の領域と連通している。言い換えると、第1流路32Bの流通方向に沿って見たときに、左側開口35B及び右側開口36Bは、第1流路32Bのうち左側の領域及び右側の領域とそれぞれ重複するように位置している。また、前側開口34Bと左側開口35Bとは接続されており、前側開口34Bと左側開口35Bとは接続されている。そのため、前側開口34B,左側開口35B,及び右側開口36Bは全体として1つの開口になっている。左側開口35B及び右側開口36Bは、いずれも長手方向が前後方向と平行になっている。前側開口34B,左側開口35B,右側開口36Bは、いずれも矩形状をしている。左側開口35Bと右側開口36Bとは同じ形状且つ同じ大きさをしており、左右対称になっている。
【0052】
ノズル部43は、第1実施形態のノズル部43と同じである。ノズル部43は、本体部41Bの下端且つ前端に配設されている。ノズル部43及び第2開口44は、第1開口33Bよりも下方に位置しており、板状部材30Bよりも下方に位置している。第2開口44は、第1開口33Bにおける気体の流通方向(上下方向)と垂直な方向(前方向)に向けて本体部41Bの前端側で開口している。第2流路42Bを流通する気体は、第2開口44から処理空間14b内に供給される。
【0053】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1開口33Bの流路断面積(開口面積)を面積S1とし、第2開口44の流路断面積(開口面積)を面積S2とし、第1流路32Bの流路断面積を面積S3とし、第2流路42Bの流路断面積を面積S4とする。流路が複数の孔で構成されている場合に面積S1〜S4をいずれも合計面積とする点も、第1実施形態と同じとする。面積S3,S4については流路断面積の最大値とする点や、面積S4は第2流路42Bのうち第1開口33Bから第2開口44までの間の気体の経路の中で定める点も、第1実施形態と同じとする。そのため、本実施形態では、面積S3は、第1流路32Bのうち流路断面積が小さい本体部41Bの天井付近ではなく、板状部材30B付近の流路断面積に基づいて定まる(
図4参照)。また、面積S4は、第1実施形態と同様に、本体部41B内部の板状部材30Bよりも下方且つノズル部43よりも上方の空間における流路断面積(流通方向に垂直すなわち前後左右に平行な面の面積)となる(
図4参照)。
【0054】
面積S1〜S4に関して、本実施形態では、S3>S1となっている。すなわち、第1流路32Bの流路断面積の最大値よりも第1開口33Bの方が流路断面積が小さくなっている。それ以外の面積S1〜S4の大小関係については、第1実施形態と同様に適宜調整することができる。なお、本実施形態では、S1<S4とし、S4>S2とし、S1>S2とした。
【0055】
以上詳述した本実施形態の赤外線処理装置10Bによれば、板状部材30Bが存在することにより、本体部41B内の第1流路32Bと第2流路42Bとの間に第1流路32Bの流路断面積の最大値よりも流路断面積の小さい第1開口33Bが存在している。これにより、第1流路32Bから第1開口33Bを通過して第2流路42Bに気体が流出する際に、気体の少なくとも一部が板状部材30Bの上面に当たることにより動圧の少なくとも一部が静圧に変換され、気体の流線が整った状態になる。これにより、第2流路42Bを通過して第2開口44から処理空間14bを流れる風は、風速のばらつきが低減される。
【0056】
また、第2開口44は、長手方向と短手方向とを有し、第1開口33Bは、長手方向が第2開口44の長手方向に平行な前側開口34Bを有している。こうすれば、第2開口44と第1開口34Bとが長手方向が平行であることで、第2開口44から流出する風は長手方向での風速のばらつきがより低減されやすい。
【0057】
さらに、第2開口44は、第1開口33Bにおける気体の流通方向(上下方向)と垂直な前方向に向けて本体部41Bの前端側で開口し、長手方向が流通方向(上下方向)及び前方向に垂直な左右方向に沿っている。そして、第1開口33Bは、長手方向が左右方向に平行であり第1流路32Bのうち前側の領域と連通する前側開口34Bと、第1流路のうち左側及び右側の領域とそれぞれ連通する左側開口35B及び右側開口36Bと、を有している。これにより、例えば左側開口35B及び右側開口36Bを有さない場合と比較して、処理空間14b内に供給される風の風速のばらつきがより低減される。
【0058】
さらにまた、第2流路42Bは、少なくとも一部が第1開口44Bよりも流路断面積が大きい(S1<S4)。そしてまた、第2開口44は、第2流路42Bの流路断面積の最大値よりも流路断面積が小さい(S4>S2)ため、処理空間14b内に供給される風の風速を高くしやすい。
【0059】
そしてまた、赤外線処理装置10Bは、塗膜77を処理空間14b内で搬送方向に搬送する搬送装置70を備え、第2開口44は、長手方向が搬送方向に垂直且つ塗膜77の幅方向に平行である。これにより、塗膜77の幅方向での風速のばらつきが低減されるため、塗膜77に乾燥の処理むらが生じにくくなる。
【0060】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0061】
例えば、上述した第2実施形態において、板状部材30Bが左右の両側(第2開口44の長手方向の両側)に突出部を有していてもよい。
図7は、変形例の給気ダクト22Bを右上前方から見た斜視図である。
図8は、変形例の給気ダクト22Bを上方から断面視した断面図である。この変形例の給気ダクト22Bでは、板状部材30Bは、左側突出部37Bと右側突出部38Bとを備えている。左側突出部37B及び右側突出部38Bは、長手方向が前後方向に沿った直方体形状の部材である。左側突出部37B及び右側突出部38Bは、板状部材30Bから第1流路32B側に突出するように配設されている。左側突出部37Bは、左側開口35Bの右端部に隣接し左側開口35Bにおける気体の流通方向(上下方向)と平行に突出している。右側突出部38Bは、右側開口36Bの左端部に隣接し右側開口36Bにおける気体の流通方向(上下方向)と平行に突出している。なお、
図7では、左側突出部37B及び右側突出部38Bは下面が板状部材30Bの上面に接するように配置されているが、左側突出部37Bの右面の一部が板状部材30Bの左端面に接するように配置されてもよい。同様に、右側突出部38Bの左面の一部が板状部材30Bの右端面に接するように配置されてもよい。また、左側突出部37B及び右側突出部38Bは板状部材30Bと一体的に形成されていてもよい。この変形例の給気ダクト22Bでは、板状部材30Bへ接触せず動圧が静圧に変換されぬまま流出しようとする気体の少なくとも一部が左側突出部37B又は右側突出部38Bに当たることよって、更に動圧を静圧に変換することが出来る。そのため、処理空間14b内に供給される風の風速のばらつきをより低減することが可能となる。
【0062】
上述した第1実施形態では、筒状部材30は軸方向が第2開口44の長手方向と平行に配置されているが、特にこれに限られない。例えば、筒状部材30の軸方向が
図1の上下方向と平行であったりしてもよい。また、第1開口33の長手方向は筒状部材30の軸方向と平行としたが、特にこれに限られない。また、第1開口33の長手方向は第2開口44の長手方向と平行としたが、特にこれに限られない。第1開口33の数,位置,及び形状も、上述した第1実施形態に限られない。例えば、第1開口33は長手方向を有しない形状(例えば円形状)であってもよい。例えば、第1開口33は筒状部材30の下方(第2流路42の流通方向と同方向)や上方に開口していてもよい、前後上下から傾斜した方向に開口していてもよい。
【0063】
上述した第1実施形態では、本体部41は第1開口33だけでなく筒状部材30の左端部(フランジ31の配設された部分から底部38まで)全体を囲んでいたが、特にこれに限られず、本体部41は少なくとも第1開口33を囲んでいればよい。例えば、筒状部材30の底部38側の端部が本体部41を貫通して左側に突出していてもよい。また、上述した第1実施形態では、本体部41に底部38が取り付けられていたが、特にこれに限らず、例えば底部38が本体部41から離間して本体部41内に配置されていてもよい。この場合、底部38の一部に第2流路42に連通する開口が存在してもよい。なお、第1開口33は少なくとも筒状部材30の外周面に配設された開口を有する必要があるが、底部38にも第2流路42に連通する開口が存在する場合、この開口も第1開口33に含めるものとし、この開口の面積も面積S1に含めるものとする。また、本体部41の壁部が筒状部材30の底部38を兼ねていてもよい。
【0064】
上述した第2実施形態では、第1開口33Bは前側開口34B,左側開口35B,及び右側開口36Bを備えていたが、特にこれに限られない。これらの1以上を省略してもよいし、第1開口33Bがこれらとは別の開口を備えていてもよい。例えば、第1開口33Bが、板状部材30Bの前後の中央に配設された開口を有していてもよいし、板状部材30Bの後側に位置する開口(第1流路32Bのうち後側の領域と連通する開口)を有していてもよいし、これらの開口と前側開口34B,左側開口35B,及び右側開口36Bとのうち1以上を有していてもよい。また、第1開口33Bの形状も、矩形状に限らず例えば円形状であってもよい。また、第1開口33として形成された開口の数も、1以上であれば特に限定されない。例えば前側開口34Bが左右に隣接する2つの開口で構成されていてもよい。
【0065】
上述した第2実施形態では、板状部材30Bは第1流路32Bに面する表面(上面)が前後左右と平行になるように配置されていたが、特にこれに限られない。例えば、板状部材30Bのうち第1流路32Bに面する表面が湾曲していてもよい。また、板状部材30Bのうち第1流路32Bに面する表面は、第1流路32Bの流通方向とのなす角θ1が0°でなければよく、例えば上述した第2実施形態ではなす角θ1が90°であるが、0°超過90°以下の範囲で傾斜していればよい。なお、傾斜の向きは特に限定されず、例えば板状部材30Bの前側が下方に向かうように傾斜してもよいし、後側が下方に向かうように傾斜してもよい。
【0066】
上述した第2実施形態では、板状部材30Bは、他の部材(本体部41B)との隙間として第1開口33Bを形成していたが、これに限られない。板状部材30B自身に第1開口33Bが配設(形成)されていてもよい。また、板状部材30Bは本体部41とは別の部材としたが、これに限らず、本体部41と一体的に形成されていてもよい。また、第2実施形態では、板状部材30Bは中身の詰まった中実の板としたが、例えば中空の板であってもよい。
【0067】
上述した第1,第2実施形態では、第2開口44は長手方向と短手方向を有する矩形状(長方形状)としたが、特にこれに限らず、正方形状であったり円形状であったりしてもよい。また、第2開口44の開口の軸方向も特に限定されず、例えば軸方向が上下方向に平行であってもよい。この場合、例えばノズル部43が本体部41,41Bの下端に配設されていてもよい。また、ノズル部43は本体部41,41Bから突出していたが、これに限らず、本体部41,41Bの壁部に直接に第2開口44が形成されていてもよい。この場合、本体部41,41Bの壁部のうち第2開口44を形成する部分(第2開口44の周辺部分)の部材がノズル部43に相当する。
【0068】
上述した第1,第2実施形態では、仕切り板19により上部空間14aと処理空間14bとが区画されていたが、特にこれに限られず、例えば仕切り板19を省略してもよい。また、赤外線ヒーター60はいわゆる線状ヒーターとして説明したが、面状ヒーターであってもよい。また、赤外線ヒーター60は炉体14内に配置されているが、これに限らず、炉体14の外側から被処理物に赤外線を放射してもよい。
【0069】
上述した第1,第2実施形態では、赤外線処理装置10,10Bは搬送装置70を備えるいわゆる連続炉としたが、これに限られない。例えば、搬送装置70を備えないバッチ炉としてもよい。また、連続炉の場合も、搬送装置70はロール72,73でシート75を搬送して塗膜77を搬送する装置としたが、これに限られない。例えば、搬送装置はベルトコンベアであってもよいし、処理空間14b内に配置されたローラーであってもよい。
【0070】
上述した第1,第2実施形態では、上述した実施形態では、赤外線処理装置10,10Bは乾燥を行う装置としたが、これに限らず、赤外線により被処理物を処理する赤外線処理を行う装置であればよい。「赤外線処理」には、蒸発,乾燥,脱水などを含む物理変化をさせる処理や、イミド化などの化学反応をさせる処理、昇温などの温度変化をさせる処理などが含まれる。給気装置20から処理空間14bに供給する気体も、特に限定されず、例えば被処理物の加熱に用いられる熱風であってもよいし、被処理物と同程度の温度であってもよい。気体の種類についても空気に限らず、例えば不活性ガスなどとしてもよい。
【0071】
上述した第1,第2実施形態では、塗膜77はMLCC用の薄膜として用いられるものとしたが、被処理物はこれに限られず、赤外線処理の対象となる被処理物であればよい。例えば、塗膜77は、LTCC(低温焼成セラミックス)やその他のグリーンシート用の薄膜として用いるものとしてもよい。あるいは、塗膜77がリチウムイオン二次電池などの電池用の電極となる塗膜として用いられるものとしてもよい。塗膜77が電池用の電極となる塗膜である場合、シート75は、アルミニウムや銅等の金属シートとしてもよい。また、被処理物は、特に塗膜に限られない。
【実施例】
【0072】
以下には、本発明の第1の赤外線処理装置のダクト及び第2の赤外線処理装置のダクトを具体的に作製した例を実施例として説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
[実施例1]
図1〜3に示した給気ダクト22を作製し、給気ファン21から給気ダクト22に供給する気体の風量を0.370Nm
3/minとした場合を、実施例1とした。実施例1では、筒状部材30の内径を47.8mmとした。筒状部材30のうち本体部41内部に覆われる部分の軸方向長さは240mmとした。第1開口34〜37はいずれも長手方向の大きさが110mmとし、短手方向の大きさが15mmとした。本体部41の内部空間は、前後が76mm、上下が100mm、左右が240mmの直方体形状とした。ノズル部43の内部空間は、前後が30mm、上下が15mm、左右が240mmとした。第1開口34〜37の下端と第2開口44の上端との上下方向の距離は40mmとした。給気ダクト22に供給する気体の温度は24℃とした。
【0074】
[実施例2〜6]
実施例1と同じ給気ダクト22を用いて、給気ファン21から供給する風量を表1のように種々変更した場合を、実施例2〜6とした。
【0075】
[実施例1B]
図4〜6に示した給気ダクト22Bを作製し、給気ファン21から給気ダクト22Bに供給する気体の風量を1.3Nm
3/minとした場合を、実施例1Bとした。給気ダクト22Bに供給する気体の温度は実施例1〜6と同じく24℃とした。実施例1Bでは、
本体部41Bの内部空間は、前後が50mm、上下が75mm(底面から天井部分の傾斜面の最下端までの距離)、左右が460mmとした。配管45Bの内径は48.6mmとした。板状部材30Bは前後が48mm、左右が390mm、厚さが1mmの板とした。これにより、前側開口34Bの短手方向(前後)の大きさが2mm、左側開口35B及び右側開口36Bの短手方向(左右)の大きさがいずれも33.5mmとなった。また、本体部41Bの内部空間の底面から板状部材30Bまでの上下の距離は46mmとした。ノズル部43の内部空間は、前後が30mm、上下が15mm、左右が460mmとした。
【0076】
[実施例2B]
板状部材30Bの前後の長さを小さくして前側開口34Bの短手方向(前後)の大きさを7mmとした点以外は実施例1Bと同様の給気ダクト22Bを実施例2Bとした。
【0077】
[実施例3B]
図7,8に示した変形例の給気ダクト22Bを作製し、実施例3Bとした。実施例3Bは、板状部材30Bが左側突出部37B及び右側突出部38Bを備える点以外は実施例2Bと同じとした。左側突出部37B及び右側突出部38Bの突出高さは10mmとした。
【0078】
[比較例1]
板状部材30Bを備えない点以外は実施例1Bと同様のダクトを作製し、比較例1とした。
【0079】
[風速のばらつきの評価]
比較例1,実施例1〜6,実施例1B〜3Bについて、風速を測定して風速のばらつきを評価した。風速の測定は、カノマックス社製の中高温用アネモマスター風速計(Model 6162)を用いて行った。実施例1〜6では、測定箇所は、第2開口44から前方に10mm離れた位置とし、第2開口44の左端付近(第2開口44の左端から右に10mmの位置),中央,右端付近(第2開口44の右端から左に10mmの位置)の3箇所で測定した。比較例1及び実施例1B〜3Bでは、測定箇所は、第2開口44から前方に10mm離れた位置とし、第2開口44の左端付近(第2開口44の左端から右に30mmの位置),左(左端付近と中央との中間点),中央,右(右端付近と中央との中間点),右端付近(第2開口44の右端から左に30mmの位置)の5箇所で測定した。比較例1,実施例1〜6,実施例1B〜3Bの各々について、測定した風速の平均値を導出し、変動係数(%)(=標準偏差/平均値×100)を導出した。変動係数が小さいほど、風速のばらつきが小さいことを意味する。
【0080】
比較例1,実施例1〜6,実施例1B〜3Bの各々について、風量,測定した風速,風速の平均値,及び風速の変動係数を表1にまとめて示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1に示すように、実施例1〜6,実施例1B〜3Bのいずれについても、比較例1と比べて変動係数が小さくなっており、風速のばらつきが低減されていた。実施例1〜6は、実施例1B〜3Bのいずれと比較しても風速のばらつきがより低減されていた。実施例1B〜3Bのうち、左側突出部37B及び右側突出部38Bを有する実施例3Bは、これらを有しない実施例1B,2Bと比較して風速のばらつきがより低減されていた。