特許第6704768号(P6704768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704768
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】摩擦攪拌接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
   B23K20/12 360
   B23K20/12 310
   B23K20/12 344
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-64994(P2016-64994)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-177128(P2017-177128A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 正皓
(72)【発明者】
【氏名】石川 武
(72)【発明者】
【氏名】河田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】渥美 健太郎
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−084467(JP,A)
【文献】 特開2013−039615(JP,A)
【文献】 特開2014−208461(JP,A)
【文献】 特開2015−107525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面と、前記第1表面に平行な第1裏面と、前記第1表面と前記第1裏面との間で前記第1表面と前記第1裏面とに交差する第1接合端面と、前記第1裏面と前記第1接合端面とが交差する部位に前記第1裏面の内側に窪んだ切欠き部と、を有する第1金属板と、
第2表面と、前記第2表面に平行な第2裏面と、前記第2表面と前記第2裏面との間で前記第2表面と前記第2裏面とに交差する第2接合端面と、を有する第2金属板とに対して、
前記第1接合端面と前記第2表面とが沿うように前記切欠き部に前記第2接合端面を当接させつつ、前記第1接合端面及び前記第2表面の側から前記切欠き部と前記第2接合端面との間に円柱状の回転ツールの先端を回転させつつ挿入し、前記切欠き部と前記第2接合端面との間に沿って前記回転ツールを回転させつつ移動させることにより、前記第1裏面と前記第2裏面とが180°未満の接合角をなすように前記第1金属板と前記第2金属板とを接合し
前記回転ツールは、円柱状の本体部と、前記本体部の先端に前記本体部よりも直径が小さい円柱状のプローブ部とを有し、
前記切欠き部の前記第1裏面から窪んだ深さは、前記プローブ部の直径の1/4以上であって1/2未満である、摩擦攪拌接合方法。
【請求項2】
前記回転ツールの回転方向と移動方向とが一致する側に前記第1接合端面が位置するようにし、前記回転ツールの回転方向と移動方向とが反対となる側に前記第2表面が位置するようにする、請求項1に記載の摩擦攪拌接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の金属板を180°の角度をなす直線状ではなく、90°等の180°以外の接合角をなすように摩擦攪拌接合により接合する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、一対の金属板の裏面が90°の角度をなすように一対の金属板を互いに突き合わせ、90°の角度をなす金属板の裏面を裏当材で支持し、金属板の表面の側から、一対の金属板が突き合わされた部位に回転ツールを挿入することにより、一対の金属板を摩擦攪拌接合により接合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003‐001440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、摩擦攪拌接合では、回転ツールからの荷重により、一対の金属板が突き合わされた部位から金属板の裏面側に金属板の金属材料が押し出される。一対の金属板を180°の角度をなすように直線状に接合する場合には、平板状の裏当材により一対の金属板が突き合わされた部位の裏面側を完全に覆い、回転ツールからの荷重により押し出された金属板の金属材料を受けることが可能である。
【0005】
しかし、一対の金属板を90°等の180°以外の接合角をなすように接合する場合には、一対の金属板が突き合わされた部位の裏面側を完全に覆うことができないため、回転ツールからの荷重により押し出された金属板の金属材料を完全に受けて、金属材料の逃げを押さえることができない。このため、一対の金属板が突き合わされた部位の裏面側には、元の金属板の金属材料同士の界面の一部が接合されず、未接合部が残存することがある。このような未接合部は、疲労亀裂や静的な破壊の起点になる可能性があり、改善が望まれている。
【0006】
そこで本発明は、一対の金属板を180°以外の接合角をなすように接合する場合に、より良好な接合を得ることができる摩擦攪拌接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1表面と、第1表面に平行な第1裏面と、第1表面と第1裏面との間で第1表面と第1裏面とに交差する第1接合端面と、第1裏面と第1接合端面とが交差する部位に第1裏面の内側に窪んだ切欠き部とを有する第1金属板と、第2表面と、第2表面に平行な第2裏面と、第2表面と第2裏面との間で第2表面と第2裏面とに交差する第2接合端面とを有する第2金属板とに対して、第1接合端面と第2表面とが沿うように切欠き部に第2接合端面を当接させつつ、第1接合端面及び第2表面の側から切欠き部と第2接合端面との間に円柱状の回転ツールの先端を回転させつつ挿入し、切欠き部と第2接合端面との間に沿って回転ツールを回転させつつ移動させることにより、第1裏面と第2裏面とが180°未満の接合角をなすように第1金属板と第2金属板とを接合する摩擦攪拌接合方法である。
【0008】
この構成によれば、第1金属板は、第1裏面と第1接合端面とが交差する部位に第1裏面の内側に窪んだ切欠き部を有し、第1接合端面と第2表面とが沿うように切欠き部に第2接合端面を当接させつつ、第1接合端面及び第2表面の側から切欠き部と第2接合端面との間に回転ツールを回転させつつ挿入することにより、第1裏面と第2裏面とが180°未満の接合角をなすように第1金属板と第2金属板とが接合される。第1裏面の内側に窪んだ切欠き部に第2接合端面を当接させることにより金属材料の逃げを押さえるとともに、第1裏面の内側に窪んだ切欠き部と第2接合端面との間に回転ツールを回転させつつ挿入することにより、回転ツールの速度が0となる回転軸は第1裏面の内側に位置し、回転ツールの速度がより大きい回転ツールの外周部の位置は第1裏面に重なるため、より良好な接合を得ることができる。
【0009】
この場合、回転ツールの回転方向と移動方向とが一致する側に第1接合端面が位置するようにし、回転ツールの回転方向と移動方向とが反対となる側に第2表面が位置するようにすることが好適である。
【0010】
この構成によれば、回転ツールの回転方向と移動方向とが一致する側に第1接合端面が位置するようにし、回転ツールの回転方向と移動方向とが反対となる側に第2表面が位置するようにすることにより、さらに良好な接合を得ることができる。
【0011】
また、回転ツールは、円柱状の本体部と、本体部の先端に本体部よりも直径が小さい円柱状のプローブ部とを有し、切欠き部の第1裏面から窪んだ深さは、プローブ部の直径の1/4以上であって1/2未満であることが好適である。
【0012】
この構成によれば、切欠き部の第1裏面から窪んだ深さが、プローブ部の直径の1/4以上であって1/2未満であることにより、プローブ部の外周部の位置は第1裏面に重なるため、さらに良好な接合を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の摩擦攪拌接合方法によれば、一対の金属板を180°以外の接合角をなすように接合する場合に、より良好な接合を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る摩擦攪拌接合方法における金属板同士を当接させた状態を示す図である。
図2図1の金属板同士が当接している部位に回転ツールを挿入した状態を示す図である。
図3】実施形態に係る摩擦攪拌接合方法における回転ツールの回転方向と移動方向とを示す斜視図である。
図4】従来の摩擦攪拌接合方法において、金属板同士を当接させた状態を示す図である。
図5】(A),(B),(C)及び(D)は、実施形態に係る摩擦攪拌接合方法において、回転ツールの移動方向に対する回転方向と、プローブ部の挿入位置とをそれぞれ変更した状態を示す斜視図である。
図6】(A),(B),(C)及び(D)は、従来の摩擦攪拌接合方法において、回転ツールの移動方向に対する回転方向と、プローブ部の挿入位置とをそれぞれ変更した状態を示す斜視図である。
図7】実施形態に係る摩擦攪拌接合方法により接合された部位を示す図である。
図8】(A),(B)及び(C)のそれぞれは、図5(A)、図5(B)及び図5(C)に示す摩擦攪拌接合方法により接合された部位を拡大して示す図である。
図9】(A),(B),(C)及び(D)のそれぞれは、図6(A)、図6(B)、図6(C)及び図6(D)に示す摩擦攪拌接合方法により接合された部位を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る摩擦攪拌接合方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の摩擦攪拌接合方法では、第1金属板10と第2金属板20とを摩擦攪拌接合により接合する。第1金属板10及び第2金属板20は、直方体の形状を有する平板である。第1金属板10及び第2金属板20は、例えば、Al合金、Mg合金、Fe合金により形成されている。
【0017】
第1金属板10は、第1表面11と、第1表面11に平行な第1裏面12と、第1表面11と第1裏面12との間で第1表面11と第1裏面12とに交差する第1接合端面13とを有する。本実施形態では、第1金属板10は、第1裏面12と第1接合端面13とが交差する部位に第1裏面12の内側に窪んだ切欠き部15とを有する。切欠き部15の第1裏面12の内側に窪んだ面は、第1裏面12と平行である。
【0018】
第2金属板20は、第2表面21と、第2表面21に平行な第2裏面22と、第2表面21と第2裏面22との間で第2表面21と第2裏面22とに交差する第2接合端面23とを有する。
【0019】
第1金属板10と第2金属板20とに対して、第1接合端面13と第2表面21とが沿うように切欠き部15に第2接合端面23が当接させられる。第1金属板10の第1裏面12と第2金属板20の第2裏面22とは、180°未満の接合角θをなす。
【0020】
第1接合端面13と第2表面21とが沿うとは、例えば、第1接合端面13と第2表面21とが同一平面上に位置することを意味する。また、第1接合端面13と第2表面21とが沿うとは、例えば、第1接合端面13と第2表面21とが平行であって、1〜5[mm]以内の距離を隔てて位置していることを含む。また、第1接合端面13と第2表面21とが沿うとは、第1接合端面13と第2表面21とが平行ではなく、例えば、第1接合端面13と第1裏面12とが交差する辺と、第2表面21と第2接合端面23とが交差する辺とが1〜5[mm]以内の距離を隔てて位置しつつ、第1接合端面13と第1裏面12とが交差する辺が第2接合端面23に接触している状態や、第2表面21と第2接合端面23とが交差する辺が切り欠き部15に接触している状態を含む。
【0021】
また、図1の例では、接合角θは90°であるが、例えば、接合角θは、150°、135°、120°、60°、45°及び30°等の180°未満の任意の角度とすることができる。第1裏面12と第2裏面22とが接合角θをなすように、切欠き部15に第2接合端面23を当接させた場合に、第2接合端面23の全面が切欠き部15に当接するように、第2裏面22と第2接合端面23とのなす角度は、(180°−接合角θ)であり、切欠き部15の第1裏面12に平行な方向に沿った長さは、第2接合端面23の第1裏面12に平行な方向に沿った長さと等しいことが好ましい。
【0022】
図2及び図3に示すように、本実施形態の摩擦攪拌接合方法では、第1接合端面13及び第2表面21の側から切欠き部15と第2接合端面23との間に円柱状の回転ツール50の先端を回転させつつ挿入し、切欠き部15と第2接合端面23との間に沿って回転ツール50を回転させつつ移動させることにより、第1裏面12と第2裏面22とが180°未満の接合角θをなすように第1金属板10と第2金属板20とが接合される。
【0023】
なお、切欠き部15と第2接合端面23との間に円柱状の回転ツール50の先端を回転させつつ挿入するとは、切欠き部15と第2接合端面23とが互いに当接する面と、回転ツール50の回転軸とが一致する状態のみならず、少なくとも切欠き部15と第2接合端面23とが互いに当接する面と、プローブ部52が接触する範囲とが重なる状態を含む。
【0024】
回転ツール50は、円柱形状を有する本体部51の先端の中央部に本体部51よりも小さな直径の円柱状のプローブ部52を有する。回転ツール50は、例えば、炭素鋼、工具鋼又はSi等のセラミックスから形成されている。本実施形態の摩擦攪拌接合方法では、図2に示すように、切欠き部15の第1裏面12から窪んだ深さdは、プローブ部52の直径Dの1/4以上であって1/2未満であることが好ましい。また、プローブ部52が接触する範囲と切欠き部15の範囲とが重なることが好ましい。
【0025】
また、本実施形態の摩擦攪拌接合方法では、図3に示すように、回転ツール50の回転方向Rと移動方向Jとが一致する側に第1接合端面13が位置するようにし、回転ツール50の回転方向Rと移動方向Jとが反対となる側に第2表面21が位置するようにすることが好ましい。
【0026】
従来は、図4に示すように、第1表面11と第1裏面12と第1接合端面13とを有する平板状の第1金属板10と、第2表面21と第1裏面12と第2接合端面23とを有する平板状の第2金属板20とに対して、第1裏面12と第2裏面22とが180°未満の接合角θをなすように第1金属板10と第2金属板20とを接合する摩擦攪拌接合方法が行われている。
【0027】
しかし、この方法では、第1裏面12と第2接合端面23との間の第1裏面12及び第2裏面22の側を完全に覆うことができないため、回転ツール50からの荷重により押し出された金属材料を完全に受けて、金属材料の逃げを押さえることができない。このため、第1裏面12と第2接合端面23との間の第1裏面12及び第2裏面22の側には、元の金属板の金属材料同士の界面の一部が接合されず、未接合部が残存することがある。このような未接合部は、疲労亀裂や静的な破壊の起点になる可能性がある。
【0028】
一方、本実施形態によれば、第1金属板10は、第1裏面12と第1接合端面13とが交差する部位に第1裏面12の内側に窪んだ切欠き部15を有し、第1接合端面13と第2表面21とが沿うように切欠き部15に第2接合端面23を当接させつつ、第1接合端面13及び第2表面21の側から切欠き部15と第2接合端面23との間に回転ツール50を回転させつつ挿入することにより、第1裏面12と第2裏面22とが180°未満の接合角θをなすように第1金属板10と第2金属板20とが接合される。第1裏面12の内側に窪んだ切欠き部15に第2接合端面23を当接させることにより金属材料の逃げを押さえるとともに、第1裏面12の内側に窪んだ切欠き部15と第2接合端面23との間に回転ツール50を回転させつつ挿入することにより、回転ツール50の速度が0となる回転軸は第1裏面12の内側に位置し、回転ツール50の速度がより大きい回転ツール50の外周部の位置は第1裏面12に重なるため、より良好な接合を得ることができる。
【0029】
L字の継手をアーク溶接で製作する場合には、歪みが多いため、予め金属板に反りを与えたりする等の処理が必要となり、工作精度を確保することが難しい。一方、本実施形態の摩擦攪拌接合方法によりL字の継手を製作することにより、摩擦攪拌接合は歪みが少ないため、より工作精度が向上する。また、L字の継手をアーク溶接で製作する場合には、裏面に余盛りが生じるが、本実施形態の摩擦攪拌接合方法によりL字の継手を製作することにより、第1裏面12及び第2裏面22に余盛りの無いL字の継手を製作することができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、回転ツール50の回転方向Rと移動方向Jとが一致する側に第1接合端面13が位置するようにし、回転ツール50の回転方向Rと移動方向Jとが反対となる側に第2表面21が位置するようにすることにより、さらに良好な接合を得ることができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、切欠き部15の第1裏面12から窪んだ深さdが、プローブ部52の直径Dの1/4以上であって1/2未満であることにより、プローブ部52の外周部の位置は第1裏面12に重なるため、さらに良好な接合を得ることができる。
【0032】
(実験例)
以下、本発明の実験例について説明する。図5(A)、図5(B)、図5(C)及び図5(D)のそれぞれに示すようにして、Al合金の第1金属板10と第2金属板20とを第1裏面12と第2裏面22とが90°の接合角θをなすように摩擦攪拌接合によりそれぞれ接合した。切欠き部15の第1裏面12から窪んだ深さdは、プローブ部52の直径Dの1/4である。
【0033】
図5(A)では、回転方向Rと移動方向Jとが一致する側に第1接合端面13が位置し、回転方向Rと移動方向Jとが反対となる側に第2表面21が位置し、切欠き部15と第2接合端面23とが互いに当接する面と、回転ツール50の回転軸とが一致する。図5(B)では、回転方向Rと移動方向Jとが反対となる側に第1接合端面13が位置し、回転方向Rと移動方向Jとが一致する側に第2表面21が位置し、切欠き部15と第2接合端面23とが互いに当接する面と、回転ツール50の回転軸とが一致する。
【0034】
図5(C)では、回転方向Rと移動方向Jとが一致する側に第1接合端面13が位置し、回転方向Rと移動方向Jとが反対となる側に第2表面21が位置し、第1裏面12と回転ツール50の回転軸とが一致する。図5(D)では、回転方向Rと移動方向Jとが反対となる側に第1接合端面13が位置し、回転方向Rと移動方向Jとが一致する側に第2表面21が位置し、第1裏面12と回転ツール50の回転軸とが一致する。
【0035】
また、図6(A)、図6(B)、図6(C)及び図6(D)のそれぞれに示すようにして、従来の摩擦攪拌接合方法により、Al合金の第1金属板10と第2金属板20とを第1裏面12と第2裏面22とが90°の接合角θをなすように摩擦攪拌接合によりそれぞれ接合した。
【0036】
図6(A)では、回転方向Rと移動方向Jとが一致する側に第1接合端面13が位置し、回転方向Rと移動方向Jとが反対となる側に第2表面21が位置し、第1裏面12と回転ツール50の回転軸とが一致する。図6(B)では、回転方向Rと移動方向Jとが反対となる側に第1接合端面13が位置し、回転方向Rと移動方向Jとが一致する側に第2表面21が位置し、第1裏面12と回転ツール50の回転軸とが一致する。
【0037】
図6(C)では、回転方向Rと移動方向Jとが一致する側に第1接合端面13が位置し、回転方向Rと移動方向Jとが反対となる側に第2表面21が位置し、回転ツール50の回転軸がプローブ部52の直径Dの1/4だけ第1裏面12の内側に位置する。図6(D)では、回転方向Rと移動方向Jとが反対となる側に第1接合端面13が位置し、回転方向Rと移動方向Jとが一致する側に第2表面21が位置し、回転ツール50の回転軸がプローブ部52の直径Dの1/4だけ第1裏面12の内側に位置する。
【0038】
図5(A)の方法による第1金属板10及び第2金属板20の第1裏面12、第1接合端面13、第2表面21及び第2裏面22の状態は、図7に示すようになった。図5(A)、図5(B)及び図5(C)の方法による第1金属板10と第2金属板20との接合面を拡大した状態を図8(A)、図8(B)及び図8(C)にそれぞれ示す。図8(A)、図8(B)及び図8(C)のそれぞれに示すように、いずれも未接合部は生じていなかった。また、図5(A)、図5(B)及び図5(C)の方法の順に接合面の状態が良好であった。図5(D)の方法による第1金属板10と第2金属板20との接合面には、わずかに未接合部が生じていたが、未接合部以外の接合面の状態は良好であった。
【0039】
一方、図6(A)、図6(B)、図6(C)及び図6(D)の方法による第1金属板10と第2金属板20との接合面を拡大した状態を図9(A)、図9(B)、図9(C)及び図9(D)にそれぞれ示す。いずれの接合面にも、大きな未接合部Cが生じていることが判る。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【符号の説明】
【0041】
10…第1金属板、11…第1表面、12…第1裏面、13…第1接合端面、15…切欠き部、20…第2金属板、21…第2表面、22…第2裏面、50…回転ツール、51…本体部、52…プローブ部、R…回転方向、J…移動方向、θ…接合角、d…深さ、D…直径、C…未接合部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9