特許第6704778号(P6704778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704778
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
   H01L21/304 648G
   H01L21/304 648K
   H01L21/304 643A
【請求項の数】7
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-82422(P2016-82422)
(22)【出願日】2016年4月15日
(65)【公開番号】特開2017-191919(P2017-191919A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2018年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 真弘
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−179793(JP,A)
【文献】 特開2010−123709(JP,A)
【文献】 特開2014−236079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304−308
H01L 21/02−027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液によって基板を処理する複数の処理ユニットと、
前記処理液を供給する処理液供給源と、
前記処理液供給源に接続された主供給路と、前記主供給路から前記複数の処理ユニットにそれぞれ分岐した複数の分岐供給路とを含む処理液供給路と、
前記複数の分岐供給路にそれぞれ配置され、前記分岐供給路の流路内の処理液に作用または応答する処理液関連ユニットと、
前記複数の分岐供給路をそれぞれ開閉して、前記処理ユニットへの処理液の供給を制御する複数の処理液バルブと、
前記複数の処理液バルブを制御する制御ユニットとを含み、
前記制御ユニットが、前記処理液関連ユニットでの異常の有無に拘わらず、前記分岐供給路の流路における気泡を解消するための気泡解消動作を計画し、その計画に基づいて前記複数の処理液バルブを制御するようにプログラムされており、
前記気泡解消動作が、一つの前記分岐供給路の前記処理液バルブを開状態とし、他の全ての前記分岐供給路の前記処理液バルブを閉状態とする動作を含み、
前記制御ユニットが、前記分岐供給路の流路における気泡を解消するための前記気泡解消動作を複数の前記処理ユニットに対して順に実行するように計画する、基板処理装置。
【請求項2】
前記制御ユニットが、前記処理ユニットにおいて前記処理液供給源から基板へと処理液を供給する処理液供給動作を計画し、前記処理液供給動作の期間を回避するように前記気泡解消動作を計画するようにプログラムされている、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理液関連ユニットが、前記分岐供給路の流路を流れる処理液の流量を計測する流量計を含む、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
処理液によって基板を処理する複数の処理ユニットと、前記処理液を供給する処理液供給源と、前記処理液供給源に接続された主供給路と、前記主供給路から前記複数の処理ユニットにそれぞれ分岐した複数の分岐供給路とを含む処理液供給路と、前記複数の分岐供給路にそれぞれ配置され、前記分岐供給路の流路内の処理液に作用または応答する処理液関連ユニットと、前記複数の分岐供給路をそれぞれ開閉して、前記処理ユニットへの処理液の供給を制御する複数の処理液バルブとを含む基板処理装置に適用される方法であって、
前記処理液関連ユニットでの異常の有無に拘わらず、前記分岐供給路の流路における気泡を解消するための気泡解消動作を計画するステップと、
前記計画された気泡解消動作を実行するために、前記計画に基づいて前記複数の処理液バルブを開閉する気泡解消ステップとを含み、
前記気泡解消動作が、一つの前記分岐供給路の前記処理液バルブを開状態とし、他の全ての前記分岐供給路の前記処理液バルブを閉状態とする動作を含み、
前記気泡解消動作を計画するステップが、前記分岐供給路の流路における気泡を解消するための前記気泡解消動作を複数の前記処理ユニットに対して順に実行するように計画する、基板処理方法。
【請求項5】
前記処理ユニットにおいて前記処理液供給源から基板へと処理液を供給する処理液供給動作を計画するステップをさらに含み、
前記気泡解消動作を計画するステップが、前記処理液供給動作の期間を回避するように前記気泡解消動作を計画する、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記処理液関連ユニットが、前記分岐供給路の流路を流れる処理液の流量を計測する流量計を含む、請求項4または5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
処理液によって基板を処理する第1処理ユニットと、前記処理液を供給する第1処理液
供給源と、前記第1処理液供給源に接続された第1主供給路と、前記第1主供給路から前記第1処理ユニットに分岐した第1分岐供給路とを含む第1処理液供給路と、前記第1分岐供給路に配置され、前記第1分岐供給路の流路内の処理液に作用または応答する第1処理液関連ユニットと、前記第1分岐供給路を開閉して、前記第1処理ユニットへの処理液の供給を制御する第1処理液バルブと、を含む第1処理区画と、
処理液によって基板を処理する第2処理ユニットと、前記処理液を供給する第2処理液供給源と、前記第2処理液供給源に接続された第2主供給路と、前記第2主供給路から前記第2処理ユニットに分岐した第2分岐供給路とを含む第2処理液供給路と、前記第2分岐供給路に配置され、前記第2分岐供給路の流路内の処理液に作用または応答する第2処理液関連ユニットと、前記第2分岐供給路を開閉して、前記第2処理ユニットへの処理液の供給を制御する第2処理液バルブと、を含む第2処理区画と、
前記第1および第2処理液バルブ並びに前記第1および第2処理ユニットを制御する制御ユニットとを含み、
前記制御ユニットは、気泡解消動作の計画が指示されると、前記気泡解消動作計画に対応する処理区画で気泡解消動作を計画すると共に、前記気泡解消動作の計画後に、前記第1または第2処理区画で基板処理の計画が指示されると、前記気泡解消動作計画と干渉しない処理区画を選択し、前記選択された処理区画で前記基板処理を計画するようにプログラムされている、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
基板を処理液で処理する基板処理装置の一例が、特許文献1に開示されている。この基板処理装置は、複数の処理ユニットと、各処理ユニットに基板を搬送する搬送ロボットと、装置制御のためのマスター装置とを含む。処理ユニットは、基板を保持して回転させるスピンチャックと、スピンチャックに保持された基板に処理液を供給する処理液ノズルとを含む。処理液ノズルには、処理液供給配管が接続されている。処理液供給配管には、第1薬液供給配管、第2薬液供給配管およびリンス液供給配管が接続されている。第1薬液供給配管、第2薬液供給配管およびリンス液供給配管のそれぞれには、流量計および電動式ニードルバルブが介装されている。流量計は、各供給配管を流れる処理液の流量を検出し、その検出結果をマスター装置に入力する。マスター装置は、流量検出結果に応じて電動式ニードルバルブの開度をフィードバック制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−144182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処理液の供給路には、処理液中に溶存する気体に起因する気泡が現れる場合がある。この気泡が供給路にトラップされると、処理液の正確な供給や流量の検出等に支障を来すおそれがある。たとえば、流量計の検出対象領域で気泡が捕捉されると、流量を正確に検出することができない。
そこで、流量計からエラー信号が出力された場合に、処理液の供給路に大流量で処理液を圧送することによって、流路内の気泡を押し出す必要がある。具体的には、作業者が実行する手順は、次のとおりである。
【0005】
手順1:基板処理装置による基板処理運転を停止する。
手順2:エラー信号を出力した流量計に対応する処理ユニットから処理途中の基板を取り出す。
手順3:全ての処理ユニットの処理液ノズルに接続されたバルブを閉じる。
手順4:エラー信号を出力した流量計が配置された処理液供給路のバルブを開く。
【0006】
これにより、処理液供給源に設けられたポンプから一つの処理ユニットの処理液供給路に向けて処理液が圧送され、その処理液がエラー信号を発生した流量計の検出対象領域を通って処理液ノズルから吐出される。それにより、流量計の検出対象領域の気泡が処理液とともに処理液ノズルへと流れて排出される。
その後、作業者は、手順4で開いたバルブを閉じ、基板処理装置の通常運転を再開する。
【0007】
このような手順では、基板処理装置の基板処理運転を停止して気泡を除去するための作業を行う必要がある。そのため、全ての処理ユニットでの処理が停止するので、基板処理装置の稼働率が低下する。また、手順2で取り出した基板が無駄になるおそれもある。
そこで、この発明の一つの目的は、基板処理装置の稼働率を向上できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【0008】
また、この発明の他の目的は、流路内での気泡の発生に伴う基板の無駄を抑制できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、処理液によって基板を処理する複数の処理ユニットと、前記処理液を供給する処理液供給源と、前記処理液供給源に接続された主供給路と、前記主供給路から前記複数の処理ユニットにそれぞれ分岐した複数の分岐供給路とを含む処理液供給路と、前記複数の分岐供給路にそれぞれ配置され、前記分岐供給路の流路内の処理液に作用または応答する処理液関連ユニットと、前記複数の分岐供給路をそれぞれ開閉して、前記処理ユニットへの処理液の供給を制御する複数の処理液バルブと、前記複数の処理液バルブを制御する制御ユニットとを含む基板処理装置を提供する。前記制御ユニットは、前記処理液関連ユニットでの異常の有無に拘わらず、前記分岐供給路の流路における気泡を解消するための気泡解消動作を計画し、その計画に基づいて前記複数の処理液バルブを制御するようにプログラムされている。
【0010】
この構成によれば、処理液関連ユニットでの異常の有無に拘わらず、分岐供給路の流路内の気泡を解消するための気泡解消動作のために、処理液バルブが制御される。すなわち、処理液関連ユニットでの異常発生を待つことなく、気泡解消動作が予め計画されて予防的に実施される。これにより、処理液関連ユニットの異常に伴う基板処理装置の運転停止を抑制または防止できるので、基板処理装置の稼働率を向上できる。また、分岐供給路で気泡が捕獲されて基板処理に影響を及ぼす前に、分岐供給路の気泡を解消できるので、基板が無駄になることを抑制または防止できる。
【0011】
この発明の一実施形態では、前記気泡解消動作が、予め定める数(分岐供給路の総数よりも少ない数。たとえば一つ)の前記分岐供給路の前記処理液バルブを開状態とし、他の前記分岐供給路の前記処理液バルブを閉状態とする動作を含む。これにより、処理液供給源からの処理液を予め定める数の分岐供給路に集中的に送り込むことができ、それによって、分岐供給路の流路を増やして、分岐供給路内の気泡を流し出すことができる。
より具体的には、前記気泡解消動作は、一つの前記分岐供給路の前記処理液バルブを開状態とし、他の全ての前記分岐供給路の前記処理液バルブを閉状態とする動作を含んでいてもよい。
また、前記制御ユニットは、前記分岐供給路の流路における気泡を解消するための前記気泡解消動作を複数の前記処理ユニットに対して順に実行するように計画してもよい。
【0012】
この発明の一実施形態では、前記制御ユニットが、前記処理ユニットでの基板処理動作を計画し、前記基板処理動作との干渉を回避するように前記気泡解消動作を計画するようにプログラムされている。これにより、基板処理動作への影響を抑制しながら、気泡解消動作を予防的に行うことができる。したがって、基板処理装置の稼働率の低下を抑制しながら予防的な気泡解消動作を実行できる。
より具体的には、前記制御ユニットは、前記処理ユニットにおいて前記処理液供給源から基板へと処理液を供給する処理液供給動作を計画し、前記処理液供給動作の期間を回避するように前記気泡解消動作を計画するようにプログラムされていてもよい。
【0013】
この発明の一実施形態では、前記処理液関連ユニットが、前記分岐供給路の流路を流れる処理液の流量を計測する流量計を含む。これにより、基板に供給される処理液の流量を監視できるので、基板に対して高品質な処理を施すことができる。そして、分岐供給路の流路に気泡が捕獲されることを抑制または防止できるので、気泡の存在によって流量検出が不正確になったり不可能になったりすることを抑制または防止できる。したがって、流量検出不良による基板処理装置の運転停止を抑制または防止できるので、基板処理装置の稼働率を向上できる。
【0014】
この発明は、また、処理液によって基板を処理する複数の処理ユニットと、前記処理液を供給する処理液供給源と、前記処理液供給源に接続された主供給路と、前記主供給路から前記複数の処理ユニットにそれぞれ分岐した複数の分岐供給路とを含む処理液供給路と、前記複数の分岐供給路にそれぞれ配置され、前記分岐供給路の流路内の処理液に作用または応答する処理液関連ユニットと、前記複数の分岐供給路をそれぞれ開閉して、前記処理ユニットへの処理液の供給を制御する複数の処理液バルブとを含む基板処理装置に適用される基板処理方法を提供する。この方法は、前記処理液関連ユニットでの異常の有無に拘わらず、前記分岐供給路の流路における気泡を解消するための気泡解消動作を計画するステップと、前記計画された気泡解消動作を実行するために、前記計画に基づいて前記複数の処理液バルブを開閉する気泡解消ステップとを含む。
【0015】
この発明の一実施形態の基板処理方法では、前記気泡解消ステップが、予め定める数の前記分岐供給路の前記処理液バルブを開状態とし、他の前記分岐供給路の前記処理液バルブを閉状態とする。
前記気泡解消動作は、一つの前記分岐供給路の前記処理液バルブを開状態とし、他の全ての前記分岐供給路の前記処理液バルブを閉状態とする動作を含んでいてもよい。
また、前記気泡解消動作を計画するステップが、前記分岐供給路の流路における気泡を解消するための前記気泡解消動作を複数の前記処理ユニットに対して順に実行するように計画してもよい。
この発明の一実施形態の基板処理方法では、前記処理ユニットでの基板処理動作を計画するステップをさらに含み、前記気泡解消動作を計画するステップが、前記基板処理動作との干渉を回避するように前記気泡解消動作を計画する。
より具体的には、前記基板処理方法は、前記処理ユニットにおいて前記処理液供給源から基板へと処理液を供給する処理液供給動作を計画するステップをさらに含み、前記気泡解消動作を計画するステップが、前記処理液供給動作の期間を回避するように前記気泡解消動作を計画してもよい。
【0016】
この発明の一実施形態の基板処理方法では、前記処理液関連ユニットが、前記分岐供給路の流路を流れる処理液の流量を計測する流量計を含む。
この発明の一実施形態は、処理液によって基板を処理する第1処理ユニットと、前記処理液を供給する第1処理液供給源と、前記第1処理液供給源に接続された第1主供給路と、前記第1主供給路から前記第1処理ユニットに分岐した第1分岐供給路とを含む第1処理液供給路と、前記第1分岐供給路に配置され、前記第1分岐供給路の流路内の処理液に作用または応答する第1処理液関連ユニットと、前記第1分岐供給路を開閉して、前記第1処理ユニットへの処理液の供給を制御する第1処理液バルブと、を含む第1処理区画と、
処理液によって基板を処理する第2処理ユニットと、前記処理液を供給する第2処理液供給源と、前記第2処理液供給源に接続された第2主供給路と、前記第2主供給路から前記第2処理ユニットに分岐した第2分岐供給路とを含む第2処理液供給路と、前記第2分岐供給路に配置され、前記第2分岐供給路の流路内の処理液に作用または応答する第2処理液関連ユニットと、前記第2分岐供給路を開閉して、前記第2処理ユニットへの処理液の供給を制御する第2処理液バルブと、を含む第2処理区画と、
前記第1および第2処理液バルブ並びに前記第1および第2処理ユニットを制御する制御ユニットとを含み、
前記制御ユニットは、気泡解消動作の計画が指示されると、前記気泡解消動作計画に対
応する処理区画で気泡解消動作を計画すると共に、前記気泡解消動作の計画後に、前記第1または第2処理区画で基板処理の計画が指示されると、前記気泡解消動作計画と干渉しない処理区画を選択し、前記選択された処理区画で前記基板処理を計画するようにプログラムされている、基板処理装置を提供する。
【0017】
この構成によれば、気泡解消動作の計画後、基板処理の計画が指示されたときに、気泡解消動作計画に干渉しない処理区画を選択し、この処理区画に属する処理ユニットを用いた基板処理を計画することができる。この結果、複数の処理区画を有効に利用して基板処理を実行することができ、気泡解消動作の実行に伴う基板処理装置の停止時間を抑制または防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解的な平面図である。
図2図2は、図1の切断面線II−IIに対応する図解的な断面図である。
図3図3は、前記基板処理装置内の薬液配管系を説明するための系統図である。
図4図4は、前記基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図5図5は、薬液供給路に配置される流量計の構成例を説明するための図解的な断面図である。
図6図6は、前記基板処理装置に備えられるコンピュータによる処理例を説明するためのフローチャートである。
図7図7は、前記基板処理装置に備えられるコンピュータによる処理例を説明するためのフローチャートである。
図8A図8Aは、スケジューリングに際して作成される仮タイムテーブルの一例を示す。
図8B図8Bは、スケジューリングに際して作成される仮タイムテーブルの他の例を示す。
図8C図8Cは、スケジューリングに際して作成される仮タイムテーブルのさらに他の例を示す。
図9図9は、泡抜き処理(気泡解消動作)のスケジューリングの一例を示す。
図10A図10Aは、基板処理のスケジューリングの一例を示す。
図10B図10Bは、基板処理のスケジューリングの一例を示す。
図11A図11Aは、泡抜き処理および基板処理を含むスケジューリングの一例を示す。
図11B図11Bは、泡抜き処理および基板処理を含むスケジューリングの一例を示す。
図12図12は、泡抜き処理および基板処理を含むスケジューリングの他の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解的な平面図である。また、図2は、図1の切断面線II−IIに対応する図解的な断面図である。
この基板処理装置1は、キャリヤ保持部2と、インデクサ部3と、処理部4とを含む。キャリヤ保持部2は、複数枚の基板Wを収容可能な基板収容器であるキャリヤCをそれぞれ保持する複数のロードポートLPを含む。インデクサ部3は、インデクサロボットIRを含む。インデクサロボットIRは、キャリヤ保持部2に保持されたキャリヤCから未処理の基板Wを取り出して処理部4に渡す搬入動作と、処理部4から処理済みの基板Wを受け取ってキャリヤ保持部2に保持されたキャリヤCに収納する収納動作とを実行する。
【0020】
処理部4は、複数の処理ユニットMPC1〜MPC24(以下総称するときには「処理ユニットMPC」という。)と、第1主搬送ロボットCR1(第1搬送ロボット)と、第2主搬送ロボットCR2(第2搬送ロボット)と、第1受け渡しユニットPASS1と、第2受け渡しユニットPASS2とを含む。処理部4内には、平面視において、インデクサ部3から直線状に延びた搬送路5が形成されている。この搬送路5内に、インデクサ部3側から順に、第1受け渡しユニットPASS1、第1主搬送ロボットCR1、第2受け渡しユニットPASS2および第2主搬送ロボットCR2が配置されている。第1受け渡しユニットPASS1は、インデクサロボットIRと第1主搬送ロボットCR1との間での基板Wの受け渡しを仲介するユニットである。第2受け渡しユニットPASS2は、第1主搬送ロボットCR1と第2主搬送ロボットCR2との間での基板Wの受け渡しを仲介するユニットである。
【0021】
インデクサロボットIR、第1主搬送ロボットCR1および第2主搬送ロボットCR2は、キャリヤ保持部2と処理ユニットMPCとの間で基板Wを搬送する基板搬送ユニットを構成している。
複数の処理ユニットMPCは、複数のユニットタワーTW1〜TW6(以下総称するときには「ユニットタワーTW」という。)を形成するように分散して配置されている。各ユニットタワーTWは、複数の処理ユニットMPCを複数層(この実施形態では4層)に積層して形成されている。この実施形態では、各ユニットタワーTWは、4個の処理ユニットMPCを上下方向に積層して形成されている。複数のユニットタワーTWは、搬送路5の両側に振り分けられており、搬送路5に沿って配列されている。具体的には、この実施形態では、搬送路5の一方側に3個のユニットタワーTW1,TW3,TW5が配列されており、搬送路5の他方側に3個のユニットタワーTW2,TW4,TW6が配列されている。そして、搬送路5を挟んで3対のユニットタワーTW1,TW2;TW3,TW4;TW5,TW6がそれぞれ対向している。したがって、各対のユニットタワーTW1,TW2;TW3,TW4;TW5,TW6は、インデクサ部3との間の基板搬送距離がほぼ等しく、それに応じて、インデクサ部3との間の基板搬送時間がほぼ等しい。
【0022】
インデクサ部3からの距離が等しい各対のユニットタワーTW1,TW2;TW3,TW4;TW5,TW6は、処理区画PZ1,PZ2,PZ3(以下総称するときには「処理区画PZ」という。)をそれぞれ形成している。すなわち、インデクサ部3に最も近い位置で搬送路5を挟んで対向する一対のユニットタワーTW1,TW2は、第1処理区画PZ1を形成している。次にインデクサ部3に近い位置で搬送路5を挟んで対向する一対のユニットタワーTW3,TW4は、第2処理区画PZ2を形成している。次にインデクサ部3に近い位置、この実施形態ではインデクサ部3から最も遠い位置で搬送路5を挟んで対向する一対のユニットタワーTW5,TW6は、第3処理区画PZ3を形成している。
【0023】
第1処理区画PZ1とインデクサ部3との間に第1受け渡しユニットPASS1が配置されている。第1受け渡しユニットPASS1に対してインデクサ部3とは反対側に第1主搬送ロボットCR1が配置されている。第1主搬送ロボットCR1は、第1処理区画PZ1に近い位置、より具体的には第1処理区画PZ1を形成する一対のユニットタワーTW1,TW2の間の位置に配置されている。第1主搬送ロボットCR1に対して第1受け渡しユニットPASS1とは反対側に第2受け渡しユニットPASS2が配置されている。これにより、第1主搬送ロボットCR1は、第1受け渡しユニットPASS1、第1処理区画PZ1のユニットタワーTW1,TW2、および第2受け渡しユニットPASS2に対向するように配置されている。
【0024】
第2受け渡しユニットPASS2に対して第1主搬送ロボットCR1とは反対側に第2主搬送ロボットCR2が配置されている。第2主搬送ロボットCR2は、第2処理区画PZ2および第3処理区画PZ3に近い位置、より具体的には第2および第3処理区画PZ2,PZ3を形成する2対のユニットタワーTW3,TW4;TW5,TW6に取り囲まれる位置に配置されている。これにより、第2主搬送ロボットCR2は、第2受け渡しユニットPASS2、ならびに第2および第3処理区画PZ2,PZ3のユニットタワーTW3〜TW6に対向するように配置されている。
【0025】
インデクサロボットIRは、この実施形態では水平多関節アーム型のロボットである。インデクサロボットIRは、基板Wを保持するハンド11と、ハンド11に結合された多関節アーム12と、多関節アーム12を鉛直な回転軸線13まわりに回転させるアーム回転機構(図示せず)と、多関節アーム12を上下動させるアーム昇降機構(図示せず)とを含む。このような構成によって、インデクサロボットIRは、任意のロードポートLPに保持されたキャリヤCおよび第1受け渡しユニットPASS1にハンド11をアクセスさせ、そのアクセス先に対して基板Wを搬入/搬出する。それにより、インデクサロボットIRは、処理部4(より正確には第1受け渡しユニットPASS1)と任意のキャリヤCとの間で基板Wを搬送する。
【0026】
第1主搬送ロボットCR1および第2主搬送ロボットCR2には、ほぼ同様の構成を有する基板搬送ロボットを用いることができる。このような基板搬送ロボットは、好ましくは、基板Wを保持する一対のハンド21,22と、一対のハンド21,22を水平方向(放射方向)にそれぞれ進退させる一対のハンド進退機構23,24と、一対のハンド進退機構23,24を鉛直な回転軸線25まわりに回転させるハンド回転機構(図示せず)と、ハンド進退機構23,24を上下動させるハンド昇降機構(図示せず)とを含む。これにより、一方のハンド21,22でアクセス先から基板Wを取り出し、他方のハンド21,22でアクセス先に対して基板Wを搬入できる。このような構成の基板搬送ロボットを第1主搬送ロボットCR1に適用することにより、第1主搬送ロボットCR1は、第1受け渡しユニットPASS1、第1処理区画PZ1のユニットタワーTW,TW2を形成する複数の処理ユニットMPC、および第2受け渡しユニットPASS2に対して、ハンド21,22を直接アクセスさせ、そのアクセス先に対して基板Wを搬入/搬出することができる。また、上記のような構成の基板搬送ロボットを第2主搬送ロボットCR2に適用することにより、第2主搬送ロボットCR2は、第2受け渡しユニットPASS2、ならびに第2および第3処理区画PZ2,PZ3のユニットタワーTW3〜TW6を形成する複数の処理ユニットMPCに対してハンド21,22を直接アクセスさせ、そのアクセス先に対して基板Wを搬入/搬出することができる。
【0027】
第1および第2受け渡しユニットPASS1,PASS2は、基板Wを一時的に保持する基板載置台15を備えている。
第1処理区画PZ1、第2処理区画PZ2および第3処理区画PZ3にそれぞれ対応して3個の薬液キャビネットCC1,CC2,CC3(薬液供給源。処理流体供給源の一例。以下総称するときには「薬液キャビネットCC」という。)が設けられている。第1薬液キャビネットCC1は、第1処理区画PZ1を形成する複数の処理ユニットMPCに対して、基板Wを処理するための薬液(処理流体の一例)を供給する。すなわち、第1薬液キャビネットCC1は第1処理区画PZ1に含まれる複数の処理ユニットMPCによって共有されている。同様に、第2薬液キャビネットCC2は第2処理区画PZ2を形成する複数の処理ユニットMPCに対して、基板Wを処理するための薬液を供給する。すなわち、第2薬液キャビネットCC2は第2処理区画PZ2に含まれる複数の処理ユニットMPCによって共有されている。さらに同様に、第3薬液キャビネットCC3は第3処理区画PZ3を形成する複数の処理ユニットMPCに対して、基板Wを処理するための薬液を供給する。すなわち、第3薬液キャビネットCC3は第3処理区画PZ3に含まれる複数の処理ユニットMPCによって共有されている。
【0028】
第1〜第3薬液キャビネットCC1,CC2,CC3は、図1においては、処理部4の一側方に描いてあるが、他の場所に配置されてもよい。たとえば、第1〜第3薬液キャビネットCC1,CC2,CC3の一部または全部が、インデクサ部3とは反対側において搬送路5の端部付近に配置されてもよい。また、第1〜第3薬液キャビネットCC1,CC2,CC3の一部または全部が、処理ユニットMPC等を含む基板処理装置本体が配置される床面よりも下方の階下のスペースに配置されてもよい。すなわち、装置全体の占有面積を縮小するために、基板処理装置本体に対して立体的に薬液キャビネットCCを配置してもよい。
【0029】
図3は、基板処理装置1内の薬液配管系を説明するための系統図である。処理ユニットMPCは、処理チャンバ31と、処理チャンバ31内に配置された処理カップ32と、処理カップ32内に配置されたスピンチャック33と、基板Wに薬液を供給する薬液ノズル34とを含む。スピンチャック33は、処理対象の1枚の基板Wを水平姿勢で保持して鉛直な回転軸線36まわりに回転させるように構成されている。薬液ノズル34は、処理チャンバ31内に配置されており、スピンチャック33に保持されている基板Wの上面に向けて薬液およびリンス液をそれぞれ吐出する。薬液ノズル34には、薬液供給配管40を介して薬液キャビネットCCから薬液が供給される。
【0030】
薬液キャビネットCCは、処理区画PZ毎に一つずつ設けられている。薬液配管系は、薬液キャビネットCCから処理ユニットMPCに薬液を供給する薬液供給配管40を含む。
薬液供給配管40は、一つの処理区画PZを構成する2つのユニットタワーTWに跨がって門形に配置された主供給路41を含む。主供給路41は、一方のユニットタワーTWに沿って立ち上げられた立ち上がり部41Aと、この立ち上がり部41Aに結合され、搬送路5の上方で他方のユニットタワーTWに渡る渡り部41Bと、この渡り部41Bに結合され、当該他方のユニットタワーTWに沿って垂れ下がる垂れ下がり部41Cとを含む。薬液キャビネットCCの薬液出口51に主供給路41の入口部が結合され、薬液キャビネットCCの薬液帰還口52に主供給路41の出口部が結合されている。薬液供給配管40は、さらに、立ち上がり部41AからユニットタワーTWを構成する複数の処理ユニットMPCにそれぞれ分岐した複数の分岐供給路42と、垂れ下がり部41CからユニットタワーTWを構成する複数の処理ユニットMPCにそれぞれ分岐した複数の分岐供給路43とを含む。各分岐供給路42,43には、流量調整バルブ45、流量計46、および薬液バルブ47が介装されている。各分岐供給路42,43の先端は、処理ユニットMPC内に導入されており、薬液ノズル34に結合されている。流量調整バルブ45は、分岐供給路42,43を流れる薬液の流量を調整するためのバルブである。流量計46は、分岐供給路42,43を流通する薬液の流量を計測する装置である。薬液バルブ47は、分岐供給路42,43を開閉し、それによって薬液ノズル34からの薬液の吐出/停止を制御するためのバルブである。
【0031】
薬液キャビネットCCは、薬液を貯留する薬液タンク55と、薬液タンク55から薬液を汲み出して主供給路41へと圧送するポンプ56と、薬液タンク55と薬液出口51との間の薬液経路57に介装された温度調節器(ヒータ)58とを含む。薬液タンク55からポンプ56によって汲み出された薬液は、薬液経路57および薬液供給配管40を通って処理ユニットMPCに供給される。処理ユニットMPCで使用されなかった薬液は、薬液供給配管40を通って薬液タンク55へと戻り、それにより、薬液が循環する。この薬液の循環経路に温度調節器58が介装されているので、ポンプ56を駆動して薬液を循環することにより、薬液タンク55内の薬液の温度を維持できる。主供給路41への薬液の圧送は、ポンプ56を用いる構成のほかにも、密閉形の薬液タンク55の内部を加圧気体(たとえば窒素等の不活性ガス)で加圧する構成によって行うこともできる。
【0032】
図4は、基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。基板処理装置1は、制御ユニットとしてのコンピュータ60を備えている。コンピュータ60は、処理ユニットMPC1〜MPC8;MPC9〜MPC16;MPC17〜MPC24、薬液キャビネットCC1,CC2,CC3、主搬送ロボットCR1,CR2およびインデクサロボットIRを制御する。コンピュータ60は、パーソナルコンピュータ(FAパソコン)の形態を有していてもよい。コンピュータ60は、制御部61と、出入力部62と、記憶部63とを備えている。制御部61は、CPU等の演算ユニットを含む。出入力部62は、表示ユニット等の出力機器と、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル等の入力機器とを含む。さらに、出入力部62は、外部コンピュータであるホストコンピュータ64との通信のための通信モジュールを含む。記憶部63は、固体メモリデバイス、ハードディスクドライブ等の記憶装置を含む。
【0033】
制御部61は、スケジューリング機能部65と、処理実行指示部66とを含む。スケジューリング機能部65は、基板WをキャリヤCから搬出し、処理ユニットMPC1〜MPC24のうちの一つ以上でその基板Wを処理した後、その処理後の基板WをキャリヤCに収容するために、基板処理装置1のリソースを時系列に従って作動させるための計画(スケジュール)を作成する。処理実行指示部66は、スケジューリング機能部65によって作成されたスケジュールに従って、基板処理装置1のリソースを作動させる。リソースとは、基板処理装置1に備えられ、基板の処理のために用いられる各種のユニットであり、具体的には、処理ユニットMPC1〜MPC24、インデクサロボットIR、主搬送ロボットCR1,CR2、薬液キャビネットCC1,CC2,CC3およびそれらの構成要素を含む。
【0034】
記憶部63は、制御部61が実行するプログラム70と、ホストコンピュータ64から受信したプロセスジョブデータ(プロセスジョブ情報)80と、スケジューリング機能部65によって作成されたスケジュールデータ81と、処理ユニットMPCおよび処理区画PZの使用履歴データ82とを含む各種データ等を記憶するように構成されている。
記憶部63に記憶されたプログラム70は、制御部61をスケジューリング機能部65として作動させるためのスケジュール作成プログラム71と、制御部61を処理実行指示部66として作動させるための処理実行プログラム72とを含む。
【0035】
プロセスジョブデータ80は、各基板Wに付与されたプロセスジョブ(PJ)符号と、プロセスジョブ符号に対応付けられたレシピとを含む。レシピは、基板処理内容を定義したデータであり、基板処理条件および基板処理手順を含む。より具体的には、基板種情報、並行処理ユニット情報、使用処理液情報、処理時間情報等を含む。基板種情報は、処理対象の基板Wの種類を表す情報である。基板Wの種類の具体例は、製品を作り込むために使用される製品基板、処理ユニットMPCのメンテナンス等のために使用され、製品の製造には使用されない非製品基板などである。並行処理ユニット情報とは、使用可能な処理ユニットMPCを指定する処理ユニット指定情報であり、指定された処理ユニットMPCによる並行処理が可能であることを表す。すなわち、指定処理ユニットのうちのいずれかで基板Wを処理すればよい。使用処理液情報とは、基板処理のために用いる処理液の種類を指定する情報である。具体例は、薬液の種類および薬液の温度を指定する情報である。処理時間情報とは、処理液を供給する継続時間などである。使用処理液情報および処理時間情報は、処理条件情報の例である。
【0036】
プロセスジョブとは、共通の処理が施されるべき1枚または複数枚の基板Wに対して行われる当該処理をいう。プロセスジョブ符号とは、プロセスジョブを識別するための識別情報(基板群識別情報)である。すなわち、共通のプロセスジョブ符号が付与された複数枚の基板Wには、当該プロセスジョブ符号に対応付けられたレシピによる共通の処理が施される。たとえば、処理順序(キャリヤCからの払い出し順序)が連続している複数枚の基板Wに対して共通の処理が施されるとき、それらの複数枚の基板Wに対して共通のプロセスジョブ符号が付与される。ただし、異なるプロセスジョブ符号に対応する基板処理内容(レシピ)が同じである場合もあり得る。
【0037】
制御部61は、各基板Wに対するプロセスジョブデータを、ホストコンピュータ64から出入力部62を介して取得し、記憶部63に記憶させる。プロセスジョブデータの取得および記憶は、各基板Wに対するスケジューリングが実行されるよりも前に行われればよい。たとえば、キャリヤCがロードポートLP1〜LP4に保持された直後に、ホストコンピュータ64から制御部61に当該キャリヤCに収容された基板Wに対応するプロセスジョブデータが与えられてもよい。スケジューリング機能部65は、記憶部63に格納されたプロセスジョブデータ80に基づいて各プロセスジョブを計画し、その計画を表すスケジュールデータ81を記憶部63に格納する。処理実行指示部66は、記憶部63に格納されたスケジュールデータ81に基づいて、インデクサロボットIR、主搬送ロボットCR1,CR2、処理ユニットMPC1〜MPC24、および薬液キャビネットCC1,CC2,CC3を制御することにより、基板処理装置1にプロセスジョブを実行させる。
【0038】
制御部61には、各処理ユニットMPCから流量計46の出力信号が入力される。それにより、制御部61は、各処理ユニットMPCにおいて適正流量の薬液が吐出されているかどうかを監視する。また、制御部61は、各処理ユニットMPCの薬液バルブ47を開閉する。それにより、制御部61は、各処理ユニットMPCにおける薬液の吐出を制御する。また、制御部61は、流量計46における泡噛みを予防するために、定期的に、または出入力部62からの指示入力に応じて、泡抜き処理を実行する。この泡抜き処理のために、制御部61は、処理ユニットMPCの薬液バルブ47を開閉する。
【0039】
図5は、流量計46の構成例を説明するための図解的な断面図である。この例では、流量計46は超音波流量計である。流量計46は、分岐供給路42,43の外周面に配置された第1センサ91および第2センサ92を含む。第1および第2センサ91,92は、分岐供給路42,43の流路90の流れ方向に沿って間隔を開けて配置され、かつ、流路を挟んで対向するように配置されている。第1および第2センサ91,92は、たとえば超音波を発生および受信できる圧電素子からなる。すなわち、第1センサ91が超音波を発生し、その超音波を第2センサ92で検出できる。反対に、第2センサ92が超音波を発生し、その超音波を第1センサ91で検出できる。第1センサ91から超音波を発生してから第2センサ92がその超音波を検出するまでの時間α1が計測される。また、第2センサ92から超音波を発生してから第1センサ91がその超音波を検出するまでの時間α2が検出される。時間α1,α2は、流路90中の流体が静止していれば互いに等しく、流路90中の流体が有意な流速Vを有する場合には、その流速Vに依存して相違する。したがって、時間α1,α2を計測することによって、流路90中の流量を求めることができる。
【0040】
超音波の伝搬速度は、流路90を占める流体の種類に依存する。すなわち、流路90の全体が薬液で満たされていれば、時間α1,α2を計測することによって、正確な流量を求めることができる。その一方で、流路90に気泡93が捕捉され、いわゆる泡噛みが生じると、もはや正確な流量を求めることができない。
このような泡噛みは、異常な流量値となって表れるので、コンピュータ60は、流量計46の出力信号を監視することによって、流量計46における泡噛みを検出することができる。コンピュータ60は、泡噛みを検出するとアラームを発生する。たとえば、コンピュータ60は、出入力部62のディスプレイにアラーム表示を出力する。
【0041】
このようなアラーム表示が出力された場合には、泡噛みが生じた流路90に大流量の薬液を圧送することによって、流路90内の気泡93を押し出す必要がある。具体的には、作業者は、出入力部62を操作することによって、次の手順を実行する。
手順1:基板処理運転を停止する。
手順2:泡噛みが生じた流量計46に対応する処理ユニットMPCから処理途中の基板Wを取り出す。
【0042】
手順3:全ての処理ユニットMPCの薬液ノズル34に接続された薬液バルブ47を閉じる。
手順4:泡噛みが生じた流量計46に対応する薬液バルブ47を開く。
これにより、薬液キャビネットCCから一つの処理ユニットMPCの分岐供給路42,43に向けて薬液が圧送され、その薬液が、泡噛みが生じた流量計46の流路を通って薬液ノズル34から吐出される。それにより、流量計46の流路90内の気泡93が薬液とともに薬液ノズル34へと流れて排出される。
【0043】
その後、作業者は、手順4で開いた薬液バルブ47を閉じ、基板処理装置1の通常運転を再開する。
このような手順では、基板処理運転を停止して気泡93を除去するための作業を行う必要がある。そのため、全ての処理ユニットMPCでの処理が停止するので、基板処理装置1の稼働率が低下する。また、手順2で取り出した基板Wが無駄になるおそれもある。
【0044】
そこで、この実施形態では、アラームを待つことなく、すなわち、流量計46の異常の有無に拘わらず、薬液供給配管40内、とくに流量計46の流路から気泡を除去するための泡抜き処理が予防的に行われる。
図6および図7は、スケジューリング機能部65による処理例を説明するためのフローチャートである。より具体的には、制御部61(コンピュータ60)がスケジュール作成プログラム71を実行することによって、所定の制御周期で繰り返し行われる処理が表されている。換言すれば、スケジュール作成プログラム71には、図6および図7に示す処理をコンピュータ60に実行させるようにステップ群が組み込まれている。
【0045】
ホストコンピュータ64は、プロセスジョブデータを制御部61に与えて、そのプロセスジョブデータによって定義されるプロセスジョブの開始、すなわち基板処理の開始を指示する。制御部61は、そのプロセスジョブデータを受信して記憶部63に格納する。そのプロセスジョブデータを用いて、スケジューリング機能部65は、プロセスジョブを実行するためのスケジューリングを行う。プロセスジョブの開始は、作業者が、出入力部62の操作部を操作して指示することもできる。さらに、ホストコンピュータ64は、たとえば一定時間間隔で流量計46の泡噛みを予防するための泡抜き処理の開始を指示する。この泡抜き処理の開始も、作業者が、出入力部62の操作部を操作して指示することもできる。あるいは、コンピュータ60が流量計46の出力信号に基づいて泡噛みを検出したときに、コンピュータ60から泡抜き処理の開始を指示することもできる。
【0046】
図6に示すように、スケジューリング機能部65は、指示入力があると(ステップS1)、与えられた指示が基板処理(プロセスジョブ)であるか泡抜き処理であるかを判断する(ステップS2)。基板処理であれば、既に指示受付済みの泡抜き処理があるかどうかを判断する(ステップS3)。指示受付済みの泡抜き処理があれば(ステップS3:YES)、スケジューリング機能部65は、泡抜き処理を計画し(ステップS4)、その後に、基板処理(プロセスジョブ)のための計画を実行する(ステップS5)。一方、与えられた指示が泡抜き処理であれば(ステップS2)、先に指示を受け付けて計画中の基板処理があるかどうかを判断する(ステップS6)。計画中の基板処理がなければ(ステップS6:NO)、泡抜き処理のスケジューリングを開始する(ステップS4)。計画中の基板処理があれば(ステップS6:YES)、その基板処理のスケジューリングが完了するまで待機し(ステップS7)、その後に、泡抜き処理のスケジューリングを行う(ステップS4)。このような処理により、基板処理動作との干渉を回避するように泡抜き処理を計画できる。泡抜き処理のスケジューリングが完了次第、処理実行指示部66は、その計画された泡抜き処理を実行する(ステップS8)同様に、基板処理のスケジューリングが完了次第、処理実行指示部66は、その計画された基板処理を実行する(ステップS9)。
【0047】
基板処理の計画に関する詳細な流れが図7に示されている。スケジューリング機能部65は、プロセスジョブデータに対応する基板Wの1枚ずつについて、順にスケジューリングを実行する。まず、スケジューリング機能部65は、プロセスジョブデータに対応するレシピを参照し、そのレシピの並行処理ユニット情報に基づいて、基板Wの処理のために使用可能な1つ以上の処理ユニットMPCを特定する(ステップS51)。次いで、スケジューリング機能部65は、基板処理に用いるべき一つの処理区画PZを選択するための処理区画選択処理を実行する(ステップS52)。たとえば、処理区画選択処理では、複数の処理区画PZ1,PZ2,PZ3が均等に選択されるようにいずれか一つの処理区画PZが選択される。また、ステップS52では、基板処理を実行する区画PZが泡抜き処理実行中の処理区画PZと干渉しないように、基板処理に用いるべき一つの処理区画PZを選択するようにしてもよい(詳細は、図11Aおよび図11Bを用いて後述する)。
【0048】
次に、スケジューリング機能部65は、1枚の基板Wを処理するための仮タイムテーブルを作成する(ステップS53)。たとえば、処理区画選択処理において第1処理区画PZ1が選択され、プロセスジョブデータに対応するレシピの並行処理ユニット情報に第1処理区画PZ1の全ての処理ユニットMPC1〜MPC8が含まれているとする。すなわち、当該レシピに従う基板処理が、8個の処理ユニットMPC1〜MPC8のいずれにおいても実行可能である場合を考える。この場合、当該基板Wが処理を受けるために通る経路は、8通りである。すなわち、その基板Wの処理のために選択し得る経路は、処理ユニットMPC1〜MPC8のいずれかを通る8個の経路である。そこで、スケジューリング機能部65は、その8個の経路に対応した仮タイムテーブルを当該1枚の基板Wに対して作成する。
【0049】
処理ユニットMPC1を通る経路に対応した仮タイムテーブルを図8Aに示す。この仮タイムテーブルは、インデクサロボットIRによるキャリヤCからの基板Wの搬出(Get)を表すブロックB1と、インデクサロボットIRによる当該基板Wの第1受け渡しユニットPASS1への搬入(Put)を表すブロックB2と、第1主搬送ロボットCR1による第1受け渡しユニットPASS1からの当該基板Wの搬出(Get)を表すブロックB3と、第1主搬送ロボットCR1による当該基板Wの処理ユニットMPC1への搬入(Put)を表すブロックB4と、処理ユニットMPC1による当該基板Wに対する処理を表す処理ブロックB5と、第1主搬送ロボットCR1による処理ユニットMPC1からの処理済みの基板Wの搬出(Get)を表すブロックB6と、第1主搬送ロボットCR1による当該基板Wの第1受け渡しユニットPASS1への搬入(Put)を表すブロックB7と、インデクサロボットIRによる当該基板Wの第1受け渡しユニットPASS1からの搬出(Get)を表すブロックB8と、インデクサロボットIRによる当該基板WのキャリヤCへの搬入(Put)を表すブロックB9とを含む。スケジューリング機能部65は、これらのブロックを時間軸上で重なり合いのないように順番に配置することによって、仮タイムテーブルを作成する。さらに、図8Aの仮タイムテーブルは、処理ブロックB5が配置された期間中の所定の薬液処理期間において、第1薬液キャビネットCC1からの薬液の供給を表す薬液供給ブロックB10を含む。
【0050】
処理ブロックB5について詳述すると、処理ブロックB5は例えば以下のような複数の工程を含んでいる。例えば、第1主搬送ロボットCR1(または第2主搬送ロボットCR2)によって処理ユニットMPCに搬送された基板Wをスピンチャック33(図3参照)に固定する基板固定工程、スピンチャック33に固定された基板Wに向けて薬液キャビネットCCから汲み出された薬液を薬液ノズル34から供給する工程、薬液をリンス液に置換する置換工程、リンス液を乾燥させる乾燥工程、およびスピンチャック33による基板Wの固定を解除する固定解除工程などを含んでいる。このように処理ブロック5は薬液供給工程以外の工程を含んでいるため、処理ブロックB5は薬液供給ブロック10よりも時間的にい。また、薬液供給ブロック10の前に基板固定工程などが実行されるため、薬液供給ブロックB10は処理ブロックB5の開始から所定時間遅延して開始する。
【0051】
図示は省略するが、スケジューリング機能部65は、同じ基板Wに対して、処理ユニットMPC2〜MPC8をそれぞれ通る経路に対応した同様の仮タイムテーブル(処理ブロックを処理ユニットMPC2〜MPC8にそれぞれ配置した仮タイムテーブル)を作成する。こうして、一枚の基板Wに対して合計8経路分の仮タイムテーブルが作成される。
作成された仮タイムテーブルは、スケジュールデータ81の一部として記憶部63に格納される。仮タイムテーブルの作成段階では、別の基板Wに関するブロックとの干渉(時間軸上での重なり合い)は考慮されない。
【0052】
スケジューリング機能部65は、1枚の基板Wに対応した全ての仮タイムテーブルを作成し終えると(ステップS54)、本スケジューリングを実行する(ステップS55〜S58)。本スケジューリングとは、作成された仮タイムテーブルのブロックを、各リソースの他のブロックと重複しないように、時間軸上に配置することである。ただし、薬液キャビネットCCは、対応する処理区画PZの全ての処理ユニットMPCに薬液を供給できる能力を備えているので、薬液キャビネットCCに関しては薬液供給ブロックの重複配置が許される。本スケジューリングによって作成されたスケジュールデータは記憶部63に格納される。
【0053】
さらに具体的に説明すると、スケジューリング機能部65は、当該基板Wに対応して作成済みの複数の仮タイムテーブルのうちの一つを選択し、当該仮タイムテーブルを構成するブロックを一つ取得する(ステップS55)。このとき取得されるブロックは、未配置のブロックのうち仮タイムテーブルの時間軸上で最も早い位置に配置されているブロックである。さらに、スケジューリング機能部65は、当該取得したブロックを配置できる位置を検索し(ステップS56)、その検索された位置に当該ブロックを配置する(ステップS57)。各ブロックは、同一リソースが同じ時間に重複して使用されないようにしながら、時間軸上で最も早い位置に配置される。同様の動作が、選択した仮タイムテーブルを構成する全てのブロックに関して繰り返し実行される(ステップS58)。こうして、選択した仮タイムテーブルを構成する全てのブロックが配置されることにより、その仮タイムテーブルに対応した本スケジューリングが完了する。この本スケジューリングが、作成された全ての仮タイムテーブルについて実行される(ステップS59)。すなわち、当該基板Wを処理する可能性のある処理ユニットMPC1〜MPC8で基板Wを処理することとした全ての場合、すなわち8通りの場合について、本スケジューリングが実行される。
【0054】
この8通りの本スケジューリングを終えると、処理ユニット選択処理が行われる(ステップS60)。処理ユニット選択処理では、一つの本スケジューリング、すなわち、一つの処理ユニットMPCを通る本スケジューリングが選択され、それによって1枚の基板Wを処理する処理ユニットMPCが選択される。処理ユニット選択処理では、その基板Wを処理してキャリヤCに戻す時刻が最も早い一つの本スケジューリングが選択される。もしも、キャリヤCに基板Wが戻る時刻が等しい複数の本スケジューリングが存在するときには、前回の使用からの使用間隔が最も長い処理ユニットMPC、すなわちユニット最終使用時刻が最も古い処理ユニットMPCを用いる本スケジューリングが選択される。これにより、一つの処理区画PZ内の処理ユニットMPCが均等に使用されるように、処理ユニットMPCを選択できる。
【0055】
こうして、一つの仮タイムテーブルに対応した一つの本スケジューリングが選択されると、当該1枚の基板Wに対するスケジューリングが完了する。そして、選択された本スケジューリングを表すスケジューリングデータは、記憶部63に格納される。処理実行指示部66は、その後の任意のタイミングで、当該基板Wに対する処理を実際に開始する(ステップS62)。すなわち、インデクサロボットIRによってキャリヤCから基板Wを搬出し、主搬送ロボットCR1,CR2によって処理ユニットMPCへと基板Wを搬送する基板搬送動作が開始される。
【0056】
同様の動作が、プロセスジョブを構成する全ての基板Wに対して、順に実行される(ステップS61)。
処理区画選択処理(ステップS52)において、第2処理区画PZ2が選択されると、スケジューリング機能部65は、1枚の基板Wに対して、処理ユニットMPC9〜MPC16をそれぞれ通る経路に対応した仮タイムテーブル(処理ブロックを処理ユニットMPC9〜MPC16にそれぞれ配置した仮タイムテーブル)を作成する。それにより、一枚の基板Wに対して合計8経路分の仮タイムテーブルが作成される。処理ユニットMPC9を通る経路に対応した仮タイムテーブルを図8Bに示す。この仮タイムテーブルは、インデクサロボットIRによるキャリヤCからの基板Wの搬出(Get)を表すブロックB1と、インデクサロボットIRによる当該基板Wの第1受け渡しユニットPASS1への搬入(Put)を表すブロックB2と、第1主搬送ロボットCR1による第1受け渡しユニットPASS1からの当該基板Wの搬出(Get)を表すブロックB3と、第1主搬送ロボットCR1による第2受け渡しユニットPASS2への搬入(Put)を表すブロックB11と、第2主搬送ロボットCR2による第2受け渡しユニットPASS2からの当該基板Wの搬出(Get)を表すブロックB12と、第2主搬送ロボットCR2による当該基板Wの処理ユニットMPC9への搬入(Put)を表すブロックB13と、処理ユニットMPC9による当該基板Wに対する処理を表す処理ブロックB5と、第2主搬送ロボットCR2による処理ユニットMPC9からの処理済みの基板Wの搬出(Get)を表すブロックB14と、第2主搬送ロボットCR2による当該基板Wの第2受け渡しユニットPASS2への搬入(Put)を表すブロックB15と、第1主搬送ロボットCR1による第2受け渡しユニットPASS2からの当該基板の搬出(Get)を表すブロックB16と、第1主搬送ロボットCR1による当該基板Wの第1受け渡しユニットPASS1への搬入(Put)を表すブロックB7と、インデクサロボットIRによる当該基板Wの第1受け渡しユニットPASS1からの搬出(Get)を表すブロックB8と、インデクサロボットIRによる当該基板WのキャリヤCへの搬入(Put)を表すブロックB9とを含む。スケジューリング機能部65は、これらのブロックを時間軸上で重なり合いのないように順番に配置することによって、仮タイムテーブルを作成する。さらに、図8Bの仮タイムテーブルは、処理ブロックが配置された期間中の所定の薬液処理期間において、第2薬液キャビネットCC2からの薬液の供給を表す薬液供給ブロックB10を含む。
【0057】
処理区画選択処理(ステップS52)において、第3処理区画PZ3が選択されると、スケジューリング機能部65は、1枚の基板Wに対して、処理ユニットMPC17〜MPC24をそれぞれ通る経路に対応した仮タイムテーブル(処理ブロックを処理ユニットMPC17〜MPC24にそれぞれ配置した仮タイムテーブル)を作成する。それにより、一枚の基板Wに対して合計8経路分の仮タイムテーブルが作成される。処理ユニットMPC17を通る経路に対応した仮タイムテーブルを図8Cに示す。この仮タイムテーブルは、図8Bの仮タイムテーブルとほぼ同様である。ただし、処理ユニットMPC17を通る点、および薬液供給を表す薬液供給ブロックが第3薬液キャビネットCC3に対して配置されている点が異なる。
【0058】
図9は、泡抜き処理のスケジューリングの一例を示す。この例では、薬液キャビネットCC1を共有する第1処理区画PZ1の処理ユニットMPC1〜MPC8に関して泡抜き処理が計画されている。スケジューリング機能部65は、処理ユニットMPC1〜MPC8に対して、時間軸上で重なり合わないように、泡抜き処理ブロックを順に配置する。それにより、処理ユニットMPC1〜MPC8に対して順に実行される泡抜き処理が計画される。
【0059】
泡抜き処理は、この実施形態では、一つの薬液キャビネットCCから予め定める数(この実施形態では一つ)の処理ユニットMPCに対してのみ薬液を圧送する処理である。それにより、薬液供給配管40を通ってただ一つの流量計46を通るように薬液が大流量で流れ、それによって、当該流量計46およびそれが配置されている分岐供給路42,43内の気泡が解消される。泡抜き処理には、対象の処理ユニットMPCに接続された薬液キャビネットCCが使用されるので、泡抜き処理の期間に対応する長さの薬液供給ブロックが対応する薬液キャビネットCCに対して配置される。
【0060】
より具体的には、処理ユニットMPC1に対する泡抜き処理とは、第1処理区画PZ1において、処理ユニットMPC1の薬液バルブ47を開き、第1処理区画PZ1に属する他の全ての処理ユニットMPC2〜MPC8の薬液バルブ47を閉じた状態を一定時間継続する処理である。したがって、コンピュータ60は、処理ユニットMPC1〜MPC8の薬液バルブ47を制御することによって、泡抜き処理を実行する。他の処理ユニットMPCに対する泡抜き処理も同様である。
【0061】
図10Aおよび図10Bに基板処理のスケジューリングの一例を示す。この例では、ホストコンピュータ64から与えられるプロセスジョブデータが、処理ユニットMCP1〜MPC24を並行処理ユニットに指定するレシピを適用して4枚の基板W1〜W4を処理することを規定する場合を想定している。
1枚目の基板W1の処理を計画するとき、第1〜第3処理区画PZ1,PZ2,PZ3はいずれも基板処理のために使われていないので、スケジューリング機能部65は、たとえば最も番号の小さい第1処理区画PZ1を選択し、第1処理区画PZ1における有効な処理ユニットMPC1〜MPC8をそれぞれ通る8個の経路をそれぞれ表す8個の仮タイムテーブルを作成する。スケジューリング機能部65は、それらの仮タイムテーブルの各々に対して本スケジューリングを実行して、一つの処理ユニットMPC(たとえば処理ユニットMPC1)で1枚目の基板W1を処理する計画を作成する。処理ユニットMPC1での基板W1の処理が終了する時刻が、処理ユニットMPC1のユニット最終使用時刻t1であり、かつ第1処理区画PZ1の区画最終使用時刻T1となる。これらの時刻t1,T1は、使用履歴データ82(図4参照)の例である。同様に、他の処理ユニットMPCおよび処理区画PZに関しても、使用履歴データ82として、ユニット最終使用時刻および区画最終使用時刻が記憶部63に記憶される。
【0062】
2枚目の基板W2の処理を計画するとき、第1処理区画PZ1については一枚の基板W1の処理が計画済みであり、第2および第3処理区画PZ2,PZ3については基板処理が未計画である。そこで、スケジューリング機能部65は、基板処理が未計画の処理区画PZ2,PZ3のうちでより番号の小さい第2処理区画PZ2を選択し、第2処理区画PZ2における有効な処理ユニットMPC9〜MPC16をそれぞれ通る8個の経路をそれぞれ表す8個の仮タイムテーブルを作成する。スケジューリング機能部65は、それらの仮タイムテーブルの各々に対して本スケジューリングを実行して、一つの処理ユニットMPC(たとえば処理ユニットMPC9)で2枚目の基板W2を処理する計画を作成する。処理ユニットMPC9での基板W2の処理を終了する時刻が、処理ユニットMPC19のユニット最終使用時刻t9であり、かつ第2処理区画PZ2の区画最終使用時刻T2となる。
【0063】
3枚目の基板W3の処理を計画するとき、第1および第2処理区画PZ1,PZ2に対しては基板処理が計画済みであるので、スケジューリング機能部65は、第3処理区画PZ3を選択し、第3処理区画PZ3における有効な処理ユニットMPC17〜MPC24をそれぞれ通る8個の経路をそれぞれ表す8個の仮タイムテーブルを作成する。スケジューリング機能部65は、それらの仮タイムテーブルの各々に対して本スケジューリングを実行して、一つの処理ユニットMPC(たとえば処理ユニットMPC17)で3枚目の基板W3を処理する計画を作成する。処理ユニットMPC17での基板W3の処理を終了する時刻が、処理ユニットMPC17のユニット最終使用時刻t17であり、かつ第3処理区画PZ3の区画最終使用時刻T3となる。
【0064】
4枚目の基板W4(図10B参照)の処理を計画するとき、スケジューリング機能部65は、第1〜第3処理区画PZ1,PZ2,PZ3の区画最終使用時刻T1,T2,T3を比較し、最も古い区画最終使用時刻T1(図10A参照)に対応する第1処理区画PZ1を選択する。さらに、スケジューリング機能部65は、第1処理区画PZ1における有効な処理ユニットMPC1〜MPC8をそれぞれ通る8個の経路をそれぞれ表す8個の仮タイムテーブルを作成する。スケジューリング機能部65は、それらの仮タイムテーブルの各々に対して本スケジューリングを実行して、一つの処理ユニットMPCを選択する。図10Bの例では、第1主搬送ロボットCR1が基板W4を搬入できる時刻a1では、第1処理区画PZ1の処理ユニットMPC1〜MPC8はいずれも基板Wを処理していないので、いずれの処理ユニットMPC1〜MPC8においても基板W4の処理を計画することができ、かつ基板処理終了推定時刻(キャリヤCに基板W4が戻される時刻)も実質的に等しい。一方、処理ユニットMPC1のユニット最終使用時刻t1は、初期値以外の有意値であり、他の処理ユニットMPC2〜MPC8のユニット最終使用時刻はいずれも初期値である。そこで、スケジューリング機能部65は、処理ユニットMPC2〜MPC8のうち、最も番号の小さい処理ユニットMPC2を通る仮タイムテーブルを用いた本スケジューリングを選択し、その処理ユニットMPC2で4枚目の基板W4を処理する計画を作成する。処理ユニットMPC2での基板W4の処理が終了する時刻が、処理ユニットMPC2のユニット最終使用時刻t2であり、これはユニット最終使用時刻t1よりも後の時刻であるので、第1処理区画PZ1の区画最終使用時刻T1=t2となる。
【0065】
図11Aおよび図11Bは、第1処理区画PZ1に対する泡抜き処理の指示に続いて、その計画が完了する前に基板処理(プロセスジョブ)の指示が与えられた場合のスケジューリング例を示す。スケジューリング機能部65は、図9の場合と同様にして、時刻t0に泡抜き指示が入力されると(図6のステップS1の「指示入力あり?」で「YES」、ステップS2の「基板処理/泡抜き?」で「泡抜き処理」)、薬液キャビネットCC1を共有する第1処理区画PZ1の処理ユニットMPC1〜MPC8の泡抜き処理を時刻t1〜時刻t10の期間に実行する計画を作成する(図6のステップS2で「泡抜き処理」、ステップS6の「基板処理計画中?」で「NO」、ステップS4で「泡抜き処理を計画」)。この泡抜き処理のスケジューリングを終えた後の時刻t2に、基板処理指示が入力されると、スケジューリング機能部65は、プロセスジョブを計画する(図6のステップS1の「指示入力あり?」で「YES」、ステップS2の「基板処理/泡抜き?」で「基板処理」、ステップS3の「泡抜き処理受付済み?」で「YES」、ステップS5で「基板処理を計画」)。
【0066】
1枚目の基板W1を処理ユニットMPCに搬入できる最先のタイミング(時刻t3)では、第1処理区画PZ1で泡抜き処理が行われているので、第1薬液キャビネットCC1を薬液処理のために用いることができない。すなわち、スケジューリング機能部65は、第1処理区画PZ1に属する処理ユニットMPC1〜PMC8のいずれにも基板W1を搬送する計画を作成することができない。そこで、スケジューリング機能部65は、計画済みの泡抜き処理と干渉させずに基板処理を計画することのできる処理区画PZを探索する(図7のステップS52の「処理区画選択」)。ここでは、泡抜き処理が計画されている第1処理区画PZ1以外の処理区画PZである第2処理区画PZ2の処理ユニットMPC(図11Aの例では処理ユニットMPC9)で基板W1を処理する計画を作成する。すなわち、スケジューリング機能部65は、処理ユニットMPC9に対して時刻t4から開始する処理ブロックを配置し、この処理ブロックに対応する薬液供給ブロックを第2薬液キャビネットCC2に対して配置する。なお、先述したように処理ブロックの全体の期間において薬液が使われるわけではないので、薬液供給ブロックは、処理ブロック内の当該処理ブロックよりも短い期間に相当する長さを有する。すなわち、時刻t4から所定時刻遅延した時刻t5から開始する薬液供給ブロックを第2薬液キャビネットCC2に対して配置する。
【0067】
図11Bに示すように、2枚目の基板W2を処理ユニットMPCに搬入できる最先のタイミング(時刻t6)では、第1処理区画PZ1での泡抜き処理は未了である(時刻t10以前)が、基板処理のために薬液の使用を開始するタイミング(時刻t11)には、第1処理区画PZ1の泡抜き処理が完了するため、第1薬液キャビネットCC1の利用が可能である。そこで、スケジューリング機能部65は、第1処理区画PZ1の処理ユニットMPC(図11Bの例では処理ユニットMPC1)で基板W2を処理する計画を作成する。すなわち、スケジューリング機能部65は、処理ユニットMPC1に対して時刻t6から開始する処理ブロックを配置し、この処理ブロックに対応する薬液供給ブロックを時刻t11から開始するように第1薬液キャビネットCC1に対して配置する。
【0068】
このようにして、泡抜き処理と干渉しないように基板処理が計画される。
図12は、基板処理(プロセスジョブ)の指示(時刻t0)に続いて、その計画が完了する前に第1処理区画PZ1に対する泡抜き処理の指示(時刻t01)が与えられた場合のスケジューリング例を示す。スケジューリング機能部65は、泡抜き処理の計画を保留して、図10Aおよび図10Bの場合と同様にして、4枚の基板W1〜W4の処理を計画する。すなわち、スケジューリング機能部65は、時刻t0に基板処理の指示があると(図6のステップS1の「指示入力あり?」で「YES」、ステップS2の「基板処理/泡抜き?」で「基板処理」)、以下のように基板処理を計画する(図6のステップS2の「基板処理/泡抜き?」で「基板処理」、ステップS3の「泡抜き処理受付済み?」で「NO」、ステップS5で「基板処理を計画」)。
【0069】
まず、1枚目の基板W1のための処理ブロックを処理ユニットMPC1で時刻t1から開始するように配置する。さらに、この処理ブロックに対応する薬液供給ブロックを第1薬液処理キャビネットCC1で時刻t11〜時刻t12の期間に配置する。
次に、2枚目の基板W2のための処理ブロックを処理ユニットMPC9で時刻t2から開始するように配置する。さらに、この処理ブロックに対応する薬液処理ブロックを第2薬液処理キャビネットCC2で時刻t21〜時刻t22の期間に配置する。
【0070】
3枚目の基板W3のための処理ブロックを処理ユニットMPC17で時刻t3から開始するように配置する。さらに、この処理ブロックに対応する薬液処理ブロックを第3薬液処理キャビネットCC3で時刻t31〜時刻t32の期間に配置する。
最後に、4枚目の基板W4のための処理ブロックを処理ユニットMPC2で時刻t4から開始するように配置する。さらに、この処理ブロックに対応する薬液処理ブロックを第1薬液処理キャビネットCC1で時刻t41〜時刻t42の期間に配置する。
【0071】
そして、その後に、計画済みの基板処理と干渉しないように、図9の場合と同様にして、第1処理区画PZ1の処理ユニットMPC1〜MPC8の泡抜き処理を計画する。より具体的には、第1処理区画PZ1で基板W1および基板W4の基板処理のための第1薬液キャビネットCC1の使用が終わる時刻t42から開始するように、処理ユニットMPC1から順に泡抜き処理ブロックが配置される。
【0072】
このようにして、先に受け付けた基板処理と干渉しないように泡抜き処理が計画される。
以上のように、この実施形態の基板処理装置1は、処理液によって基板Wを処理する複数の処理ユニットMPCと、処理ユニットMPCに処理液の一例としての薬液を供給する薬液キャビネットCCと、薬液キャビネットCCから処理ユニットMPCへと薬液を導く薬液供給配管40とを含む。薬液供給配管40は、薬液キャビネットCCに接続された主供給路41と、主供給路41から複数の処理ユニットMPCにそれぞれ分岐した複数の分岐供給路42,43とを含む。各分岐供給路42,43には、分岐供給路42,43の流路を流通する薬液の流量を検出する流量計46と、分岐供給路42,43を開閉して処理ユニットMPC(とくに薬液ノズル34)への薬液の供給を制御する薬液バルブ47とが配置されている。制御ユニットとしてのコンピュータ60は、複数の薬液バルブ47を制御し、流量計46の異常発生の有無に拘わらず、分岐供給路42,43の流路における気泡を解消するための気泡解消動作(泡抜き処理)を計画し、その計画に基づいて複数の薬液バルブ47を制御する。
【0073】
この構成により、流量計46の異常の有無に拘わらず、分岐供給路42,43の流路内の気泡を解消するための気泡解消動作のために、薬液バルブ47が制御される。すなわち、流量計46での異常発生を待つことなく、気泡解消動作が予め計画されて予防的に実施される。これにより、流量計46の異常に伴う基板処理装置1の運転停止を抑制または防止できるので、基板処理装置1の稼働率を向上できる。また、分岐供給路42,43で気泡が捕獲されて基板処理に影響を及ぼす前に、分岐供給路42,43の気泡を解消できるので、基板Wが無駄になることを抑制または防止できる。
【0074】
また、この実施形態では、コンピュータ60は、処理ユニットMPCでの基板処理動作を計画し、前記基板処理動作との干渉を回避するように泡抜き処理を計画する。これにより、基板処理動作への影響を抑制しながら、気泡解消動作を予防的に行うことができる。したがって、基板処理装置1の稼働率の低下を抑制しながら予防的な気泡解消動作を実行できる。
【0075】
さらに、この実施形態に係る基板処理装置1は複数の処理区画PZ1〜PZ3毎に独立した薬液配管40を備えている。また、気泡解消動作の開始可否を薬液配管40毎に判断している。たとえば、図12の例では、第1処理区画PZ1における液抜き処理の開始タイミングを第1処理区画PZ1の薬液キャビネットCC1の使用が停止する時刻t42に設定している。この時刻t42は、他の処理区画PZ2およびPZ3の薬液キャビネットCC2およびCC3の使用が停止する時刻よりも以前である。このため、他の処理区画PZ2、PZ3での使用停止を待たずに迅速に第1処理区画PZ1での気泡解消動作を開始することができる。
【0076】
また、この実施形態においては、ある処理区画PZで気泡解消動作が計画されている場合には、気泡解消動作が計画されていない他の処理区画PZを探索し、その他の処理区画PZにおいて基板処理を実行するように基板処理を計画する。
これにより、基板処理の指示に続いて、泡抜き処理の指示が与えられた場合でも、計画済みの基板処理の完了を待つことなく泡抜き処理を開始することができる。これにより、泡抜き処理を前倒しで実行することが可能になる。
【0077】
図11A図11Bの例では、基板処理計画が指示されると、スケジューリング機能部65は複数の処理区画PZ1〜PZ3の中から既存の泡抜き処理計画と干渉することのない処理区画PZ内の処理ユニットMPC(基板W1は第2処理区画PZ2内の処理ユニットMPC9、基板W2は第1処理区画PZ1のMPC8)を選択して基板処理計画を立案している。
【0078】
これにより、泡抜き処理の指示に続いて、基板処理の指示が与えられた場合でも、計画済みの泡抜き処理の完了を待つことなく基板処理を開始することができる。これにより、基板処理を前倒しで実行することが可能になる。
以上、この発明の具体的な実施形態について説明してきたが、この発明は、以下に例示的に列挙するとおり、さらに他の形態で実施することもできる。
【0079】
たとえば、前述の実施形態では、第1処理区画PZ1,PZ2,PZ3に対応して第1、第2および第3薬液キャビネットCC1,CC2,CC3が設けられている。しかし、複数の処理区画PZが一つの薬液キャビネットを共有し、この一つの薬液キャビネットに複数の処理区画PZにそれぞれ対応した複数のポンプ等の圧送装置を設けてもよい。
また、前述の実施形態では、分岐供給路42,43を通る薬液の流量を検出する流量計46が処理液関連ユニットの一例であるが、処理液関連ユニットとしては、ほかにも、濃度センサ、液質センサ、圧力センサ、温度センサ、熱交換器等を例示することができる。これらは、分岐供給路42,43内での気泡の発生によりその動作または検出に支障が生じるおそれがある装置である。
【0080】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0081】
W 基板
MPC1〜MPC24 処理ユニット
TW1〜TW6 ユニットタワー
PZ1,PZ2,PZ3 第1、第2、第3処理区画
CC1,CC2,CC3 第1、第2、第3薬液キャビネット
1 基板処理装置
4 処理部
31 処理チャンバ
32 処理カップ
33 スピンチャック
34 薬液ノズル
36 回転軸線
40 薬液供給配管
41 主供給路
41A 立ち上がり部
41B 渡り部
41C 垂れ下がり部
42,43 分岐供給路
45 流量調整バルブ
46 流量計
47 薬液バルブ
51 薬液出口
52 薬液帰還口
55 薬液タンク
56 ポンプ
57 薬液経路
58 温度調節器
60 コンピュータ
61 制御部
62 出入力部
63 記憶部
64 ホストコンピュータ
65 スケジューリング機能部
66 処理実行指示部
70 プログラム
71 スケジュール作成プログラム
72 処理実行プログラム
80 プロセスジョブデータ
81 スケジュールデータ
90 流路
91 第1センサ
92 第2センサ
93 気泡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12