(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項2記載の集塵カバーであって、前記開きストッパを解除して前記固定カバーと前記本体カバーを相互により大きな開き角度に回動させて、前記分離ロック部材のアンロック操作により相互に分離可能とした集塵カバー。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態を
図1〜
図26に基づいて説明する。
図1〜
図7に示すように本実施形態の集塵カバー20は、例えば石材やコンクリートブロックの切断や溝切り加工、あるいはアスファルト路面の切り込み加工等の切断作業に用いられる切断機2に取り付けられるもので、切断作業により発生する粉塵の周囲への飛散を防止することを主たる目的として用いられる。切断機2については従来構成と同様で足り、本実施形態において特に変更を要しない。以下、切断機2について簡単に説明する。
【0029】
図10には切断機2の内部構造が示されている。切断機2は、集塵カバー20の背面側に支持されている。切断機2は、ディスクグラインダと同等の構成を備えるもので、円筒形の本体ハウジング3に電動モータ4を内装した構成を備えている。本体ハウジング3の前部にギヤヘッド5が結合されている。
図1〜
図7に示すように本体ハウジング3の後部には、使用者が把持するハンドル部6が結合されている。ハンドル部6の下面にスイッチレバー6aが設けられている。ハンドル部6を把持した手の指先でこのスイッチレバー6aを上方へ引き操作すると電動モータ4が起動する。ハンドル部6の後部からは電源供給用の電源コード7が引き出されている。
【0030】
図10に示すように電動モータ4の出力軸に形成した駆動ギヤ4aは、従動ギヤ8としてのかさ歯車に噛み合わされている。従動ギヤ8はスピンドル9に結合されている。スピンドル9は、電動モータ4の出力軸に対して直交する軸線回りに回転自在に支持されている。スピンドル9は、軸受11,12を介してギヤヘッドハウジング10に回転自在に支持されている。スピンドル9の先端部はギヤヘッドハウジング10から集塵カバー20内に突き出されている。この突き出し部分に円形の回転刃具15が取り付けられている。回転刃具15は、ダイヤモンドホイールと称される刃物で、
図2において白抜き矢印で示すように反時計回り方向に回転する。回転刃具15は、インナフランジ13とアウタフランジ14で挟み込まれて、スピンドル9のねじ軸部9aに固定されている。ねじ軸部9aに対するアウタフランジ14のねじ結合を外すことにより回転刃具15をスピンドル9から取り外すことができる。
【0031】
スピンドル9を回転支持する軸受12は、軸受ホルダ16に保持されている。軸受ホルダ16は、ギヤヘッドハウジング10の開口部に固定されている。軸受ホルダ16の外周にクランプ部17を締め付けることにより、当該切断機2に集塵カバー20が結合されている。後述するように切断機2は、集塵カバー20の本体カバー23に結合されている。切断機2は、スピンドル9の軸線(出力軸線)を左右方向に沿わせた横倒し姿勢で本体カバー23の背面側(外側壁部23L)に結合されている。
【0032】
図7〜
図9に示すようにギヤヘッドハウジング10の上面には、フロントグリップ18が設けられている。使用者は、一方の手でハンドル部6を把持し、他方の手でこのフロントグリップ18を把持することにより、当該切断機2を安定した姿勢で保持することができ、これにより切断作業を精確かつ迅速に行うことができる。
【0033】
集塵カバー20は、回転刃具15の左右両側部と上側周方向を遮蔽して切断部位Cで発生する粉塵の周囲への飛散を防止することを主たる機能とするもので、
図1〜
図7に示すように切断面Wに当接させる鋼板製のベース21と、ベース21に固定された樹脂製の固定カバー22と、固定カバー22に対して上下に回動可能に支持された本体カバー23を備えている。本体カバー23は、固定カバー22に対して回動支軸24を介して上下に回動可能に支持されている。回動支軸24は、ベース21の前端部付近において左右幅方向に跨って回転自在に支持されている。回動支軸24は、前輪25の車軸として利用されている。回動支軸24の左右両端部にそれぞれ前輪25が取り付けられている。左右の前輪25は、それぞれ切断面Wに接地している。
【0034】
ベース21の後端部付近には、後輪軸26が支持されている。この後輪軸26は、回動支軸24と平行で、左右幅方向に跨って回転自在に支持されている。この後ろ側の後輪軸26の左右両端部にそれぞれ後輪27が取り付けられている。左右の後輪27もそれぞれ切断面Wに接地している。左右の前輪25と左右の後輪27によって、ベース21が切断面Wに対して僅かに浮いた状態で接地され、これにより切断面Wに沿ってスムーズに移動可能となっている。
図2及び
図6に示すようにベース21の中央には、矩形の窓部21aが設けられている。この窓部21aを経て回転刃具15の下部が当該ベース21の下面側に突き出される。
【0035】
ベース21の上面に固定された固定カバー22は、窓部21aの左右両側から立ち上がって回転刃具15の左右側方を覆う内側壁部22L,22Rと、左右の内側壁部22L,22Rの主として後部側を相互に結合して回転刃具15の主として後部側の周囲を覆う内側周縁部22Eを有している。切断機2を取り付けた本体カバー23は、固定カバー22の左右の内側壁部22L,22Rの外側に位置する左右の外側壁部23L,23Rと、左右の外側壁部23L,23Rの端縁間を相互に結合して回転刃具15の上側ほぼ半周の範囲を覆う外側周縁部23Eを有している。
図10,12,13,15,16に示すように固定カバー22の左側の内側壁部22Lには、切断機2のスピンドル9を通過させるための逃がし部22cが設けられている。逃がし部22cは、回動支軸24を中心とする円弧に沿って湾曲する状態に設けられている。逃がし部22cは、内側壁部22Lの上部に開口されている。
【0036】
本体カバー23の右側(正面側)の外側壁部23Rと外側周縁部23Eは樹脂成形により製作されている。本体カバー23の左側(背面側)の外側壁部23Lには鋼板が用いられている。
図7に示すように、背面側の外側壁部23Lは、樹脂製の外側周縁部23Eの左端縁に対して固定ねじ23fで複数個所ねじ止めされて結合されている。切断機2を結合するためのクランプ部17は、左側の外側壁部23Lに溶接により結合されている。
図10に示すように本体カバー23の左側の外側壁部23Lには、クランプ部17の内周孔に整合して円形の逃がし孔23hが設けられている。本体カバー23の逃がし孔23hと固定カバー22の逃がし部22cを経てスピンドル9が当該集塵カバー20の内側に突き出されている。スピンドル9から回転刃具15を取り外し、クランプ部17を緩めることにより、切断機2を当該集塵カバー20から取り外すことができる。
【0037】
本体カバー23は、圧縮ばね30を介して固定カバー22に対して上方へ回動する方向に付勢されている。
図15及び
図16に示すように圧縮ばね30は、固定カバー22の右側の内側壁部22Rであって、回転刃具15に対して切断機2とは反対側の側面に取り付けたばねホルダ33の内側(ばね保持部31)に保持されている。ばねホルダ33は、本体カバー23の回動支軸24を中心とする円弧に沿って取り付けられている。ばねホルダ33は、回転刃具15の回転中心(スピンドル9)に対して回動支軸24とは反対側に取り付けられている。このばねホルダ33(ばね保持部31)により、圧縮ばね30は、回転刃具15の回転中心に対して回動支軸24とは反対側の領域において、回動支軸24を中心とする円弧に沿って伸縮可能に保持されている。
【0038】
ばねホルダ33は、2本の固定ねじ33aで固定カバー22の右側の内側壁部22Rに固定されている。ばねホルダ33の上部には、圧縮ばね30の抜け出しを防止するための抜け止め部33cが設けられている。抜け止め部33cには、圧縮ばね30を押圧するための押圧部32が進入するための押圧部進入路33bが設けられている。押圧部32は、本体カバー23の右側壁部23Rの内面に一体に設けられている。押圧部32も、回動支軸24を中心とする円弧に沿って湾曲する状態に設けられている。
【0039】
本体カバー23を固定カバー22に対して上下に回動させると、押圧部32がばねホルダ33内において一体で上下に変位する。本体カバー23を下方へ回動させると押圧部32で圧縮ばね30の上端部が下方へ押されるため、本体カバー23に対して上方へ回動させる方向(固定カバー22を下方へ回動させる方向)の付勢力が発生する。本体カバー23を上方へ回動させると押圧部32が一体で上方へ変位するため圧縮ばね30が伸長してその付勢力が徐々に小さくなる。
【0040】
ここで、例えば使用者がハンドル部6を把持して切断機2を集塵カバー20ごと持ち運ぶ際には、圧縮ばね30の付勢力により固定カバー22が本体カバー23に対して下方へ回動し、回動支軸24を介して本体カバー23にぶら下がった状態となる。これに対して、切断作業時には、切断面Wにベース21を当接させて固定カバー22を固定し、この固定カバー22に対して本体カバー23を切断機2ごと上下に回動させる。このように例えば持ち運び時と作業時では、相互に回動可能に結合された固定カバー22と本体カバー23の回動動作の基準(固定側)が入れ替わる。本明細書では、回動動作の基準を適宜入れ替えて用いる。また、この明細書では、本体カバー23と固定カバー22との相互の回動動作の方向に関して、回転刃具15をベース21の下面側へ突き出させる方向を閉じ方向と言い、回転刃具15のベース21の下面側への突き出し量を小さくする方向を開き方向と言う。従って、本体カバー23の下動動作(固定カバー22に接近する動作)は閉じ方向の回動動作とも言い、上動動作(固定カバー22から離間する動作)は開き方向の回動動作とも言う。
【0041】
切断機2を取り付けた本体カバー23は、圧縮ばね30の付勢力により固定カバー22に対して上方へ回動する方向(相互に開き方向)に付勢されている。
図16に示すように圧縮ばね30の上端部に押圧部32が押圧されることにより付勢力が発生する。
図3,4に示すように本体カバー23を固定カバー22に対して上方へ一定角度(本実施形態では開き規制角度θ
0)だけ回動させると、回転刃具15の下部側がベース21の下面側に突き出されない状態であって集塵カバー20内に収容された状態となる。これに対して
図1に示すように、ハンドル部6を把持して本体カバー23を圧縮ばね30の付勢力に抗して押し下げると、回転刃具15がベース21の下面側へ突き出されて切断面Wに切り込まれる。
【0042】
固定カバー22に対して本体カバー23を上方へ大きく回動させることにより、押圧部32を押圧部進入路33bを経てばね保持部31内から退出させることができる。押圧部32をばね保持部31内から退出させると、圧縮ばね30はさらに伸長してその上端部が抜け止め部33cに押圧され、従ってばね保持部31内に沿ってそのまま保持された状態となる。このため、その後本体カバー23を下方へ回動させれば、押圧部32が押圧部進入路33bを経てばね保持部31内に進入し、これにより圧縮ばね30の上端部が再び押圧されて本体カバー23を上方へ回動させる方向の付勢力が発生する。
【0043】
図3,4に示すように固定カバー22に対して本体カバー23を一定角度(本実施形態では開き規制角度θ
0)だけ上方へ回動させると、本体カバー23のそれ以上の上方への回動動作が、開きストッパ40により規制される。
図3に示すように固定カバー22の右側壁部22Rには、一段高い段差部22aが設けられている。この段差部22aは、回動支軸24を中心とする円弧に沿って湾曲して設けられている。この段差部22aの中央に開きストッパ40が設けられている。開きストッパ40は、当該固定カバー22の成形時に切り起こし爪状に形成されており、先端に係合爪部40aが設けられている。係合爪部40aが本体カバー23の右側壁部23Rの内面に設けた係合部に係合して当該本体カバー23に対する固定カバー22の開き方向への相対的な開き方向への回動が規制される。
【0044】
上記開きストッパ40は、例えば使用者がハンドル部6を把持して切断機2を集塵カバー20ごと持ち運ぶ際に、固定カバー22を本体カバー23に対して開きストッパ40で開き方向の回動範囲を一定角度に規制した状態であって、回動支軸24を介して固定カバー22を本体カバー23にぶら下げた状態とすることができる。但し、この状態でも、固定カバー22と本体カバー23は開き規制角度θ
0まで相互に開いた状態となっているため、回転刃具15はベース21の下面側に突き出さない状態となっている。
【0045】
開きストッパ40は指先で押し込むことにより、係合爪部40aの本体カバー23側の係合部に対する係合状態を解除することができる。係合爪部40aの係合状態を解除することにより、開き規制角度θ
0を超えて固定カバー22を本体カバー23に対して開き方向にさらに回動させることができる。開きストッパ40の係合爪部40aを外して固定カバー22を本体カバー23に対してさらに開き方向に分離可能開き角度θ
1(本実施形態では約45°)まで回動させることにより、当該本体カバー23と固定カバー22を相互に分離することができる。本体カバー23と固定カバー22を相互に分離することにより、回転刃具15を大きく露出させることができ、これにより回転刃具15の交換等の作業を楽に行うことができる。
【0046】
図11〜
図13に示すように、本体カバー23の前端部には、支持溝部23aが設けられている。支持溝部23aは、本体カバー23の左右の外側壁部23L,23Rに対称に設けられている。左右の支持溝部23aに回動支軸24が跨って挿通されて、本体カバー23が固定カバー22に対して相対的に回動可能に結合されている。左右の支持溝部23aは、前端角部から切り込み形成されている。このため、回動支軸24はその径方向に相対移動させて左右の支持溝部23aから抜き出すことができる。左右の支持溝部23a内から回動支軸24を径方向に相対移動させて抜き出すことにより、本体カバー23と固定カバー22を相互に分離することができる。
【0047】
図11〜
図13に示すように本体カバー23の鋼板製の外側壁部23Lの前端部には、支持溝部23a内における回動支軸24の径方向の変位(抜け出し)を規制する分離ロック部材41が設けられている。分離ロック部材41は支軸42を中心にして上下に傾動操作可能に設けられている。分離ロック部材41の下部には、鉤形の係合部41aが設けられている。
図11及び
図12に示すようにこの係合部41aが回動支軸24の下側に位置して支持溝部23aを塞いだ状態では、回動支軸24の支持溝部23a内における径方向の変位が規制された状態となる。支持溝部23a内における回動支軸24の径方向の変位が規制されることにより、本体カバー23に対して固定カバー22が上下に回動可能に結合された状態に保持される。
【0048】
分離ロック部材41は、捩りばね43により係合部41aを回動支軸24の下側に位置させるロック方向(
図11〜
図13において時計回り方向)に付勢されている。捩りばね43の一端は、外側壁部23Lに切り起こし状に設けたばね係合部44に引き掛けられている。分離ロック部材41の上部には、使用者が指先を押し当ててアンロック方向に回動操作するための操作部41bが設けられている。
図13に示すように操作部41bに指先を押し当てて当該分離ロック部材41を捩りばね43に抗してアンロック側(
図11〜
図13において反時計回り方向)に傾動操作すると、係合部41aが支持溝部23aを塞いだ位置から外れる。
【0049】
上記ばね係合部44は、捩りばね43の一端側を引き掛けておくばね引き掛け部としての機能と、分離ロック部材41のアンロック側への傾動範囲を規制するレバーストッパとしての機能を有している。このばね係合部44により、分離ロック部材41のアンロック側への傾動角度は一定角度に規制されている。このため、
図13に示すように分離ロック部材41の係合部41aを支持溝部23aから完全に退避させるためには、先ず本体カバー23を固定カバー22に対して相対的に約45°の開き角度(分離可能開き角度θ
1)まで回動させる必要があり、従って本体カバー23を固定カバー22から分離するためには、本体カバー23を固定カバー22に対して相対的に約45°の開き角度まで回動させることが条件となっている。
【0050】
本体カバー23を固定カバー22に対して分離可能開き角度θ
1(約45°)まで開き方向に回動させた状態で、分離ロック部材41をアンロック側に傾動操作すると、その係合部41aが支持溝部23aを塞いだ位置から完全に外れる。支持溝部23aから係合部41aが完全に外れることにより、支持溝部23a内における回動支軸24の径方向の相対変位(抜け出し)が許容された状態となる。このため、分離ロック部材41をアンロック側に傾動操作した状態で、回動支軸24を相対的に支持溝部23a内から抜き出す方向に本体カバー23若しくは固定カバー22を移動させることにより、本体カバー23と固定カバー22を相対的に分離することができる。本体カバー23から固定カバー22を分離すると、スピンドル9のねじ軸部9a、アウタフランジ14及び回転刃具15が本体カバー23の右側の外側壁部23Rに半円形に大きく切り欠いて設けた作業用窓部23Sを経て露出される。使用者はこの作業用窓部23Sを経て回転刃具15の交換作業等を迅速かつ楽に行うことができる。
【0051】
このように、分離ロック部材41をアンロック操作することにより始めて本体カバー23から固定カバー22を分離することができるのであり、分離ロック部材41をアンロック操作しない限り、固定カバー22と本体カバー23は結合状態にロックされる。このことから、例えば使用者がハンドル部6を把持して切断機2を集塵カバー20ごと持ち運ぶ際に、不用意に開きストッパ40を押し操作し、その結果本体カバー23に対して固定カバー22が下方へ大きく回動した場合であっても当該固定カバー22が本体カバー23からそのまま脱落してしまうことを防止することができる。
【0052】
図1,3,14〜18に示すように、固定カバー22の右側の内側壁部22Rには、本体カバー23の下動端位置(下死点)を規制して回転刃具15の切断面Wに対する切り込み深さを調整するための深さ調整ストッパ50が設けられている。深さ調整ストッパ50は、固定カバー22の段差部22aとばねホルダ33との間に形成される溝部22d内を移動可能に設けられている。溝部22dは、回動支軸24を中心とする円弧に沿って形成されている。
図14〜
図18に示すように深さ調整ストッパ50は、矩形ブロック体形状のストッパフレーム51と、ストッパフレーム51に移動可能に支持されたストッパ部材52を備えている。ストッパフレーム51は、その後部に支持縁部51aを備えている。この支持縁部51aがばねホルダ33の前面に設けた支持溝部33dに挿入されている。ばねホルダ33の支持溝部33dは、当該ばねホルダ33の湾曲する前面(湾曲内周面)に沿って上下に長く延びている。この支持溝部33d内を支持縁部51aが移動可能な範囲でストッパフレーム51ひいては当該深さ調整ストッパ50が移動可能に支持されている。ストッパフレーム51の支持縁部51aをばねホルダ33の支持溝部33d内に位置させることにより、当該深さ調整ストッパ50の段差部22aとばねホルダ33との間からの抜け止めがなされている。
【0053】
ストッパ部材52はストッパフレーム51に対して回動支軸24の放射方向に沿って移動可能に支持されている。ストッパ部材52は、ストッパフレーム51の底部との間に介装した圧縮ばね53によって、その先端部を前側に突き出す方向に付勢されている。深さ調整ストッパ50の前方であって溝部22dの前側壁部となる段差部22aの後部には、係合凹部22bが設けられている。図示するように係合凹部22bは、段差部22aの後部に沿って複数設けられている。本実施形態の場合、複数の係合凹部22bは、概ね等間隔で設けられている。ストッパ部材52の先端部が圧縮ばね53により突き出されて何れかの係合凹部22b内に嵌り込むことにより、当該深さ調整ストッパ50が上下に変位不能に固定される。使用者が指先でストッパ部材52を圧縮ばね53に抗して後退させることによりその先端部を係合凹部22b内から退出させることができる。指先でストッパ部材52を退出させることにより、ストッパフレーム51ひいては当該深さ調整ストッパ50を上下に移動させることができる。上下に移動させた任意の位置でストッパ部材52の先端部を圧縮ばね53の付勢力で係合凹部22b内に嵌め込むことにより当該深さ調整ストッパ50の位置を固定することができる。
【0054】
本体カバー23を下方へ回動させると、作業用窓部23Sの後部側であって溝部23eの下端部に設定したストッパ当接部23bが深さ調整ストッパ50のストッパフレーム51に当接して、当該本体カバー23及び切断機2の下動端位置が規制される。深さ調整ストッパ50により切断機2ひいては回転刃具15の下動端位置が規制されることにより、回転刃具15のベース21の下面からの突き出し量が規制され、従って回転刃具15の切断面Wに対する切り込み深さを段階的に調整することができる。
図1,3,14〜18では、最も下側の係合凹部22b内にストッパ部材52の先端部を嵌め込んだ位置に深さ調整ストッパ50が固定されている。このため、本体カバー23の下動端位置は最も下側に設定され、従って回転刃具15の切断面Wに対する切り込み深さが最大に設定された状態となっている。図では省略されているが各係合凹部22bには、対応する切り込み深さを示すための目盛りが数値と共に表示されている。
【0055】
上記したようにストッパフレーム51は矩形ブロック体形状を有している。また、ばねホルダ33の内周面は回動支軸24を中心とする円弧形に湾曲している。一方、ストッパフレーム51の上面に本体カバー23のストッパ当接部23bが当接されると、ストッパフレーム51は、係合凹部22bに係合させたストッパ部材52の先端部側を支点にして図において反時計回り方向に傾く。ストッパフレーム51が回動支軸24とは異なるストッパ部材52の先端部側を支点にして傾く結果、当該ストッパフレーム51の後上角部51bがばねホルダ33の内周面に食い込むようにして当接されて本体カバー23の自重が受けられ、これにより当該本体カバー23の下降端位置が確実に規制されて切断作業を精確な切り込み深さで迅速に行うことができる。
【0056】
本実施形態の集塵カバー20は、上記の深さ調整ストッパ50に加えて、固定カバー22と本体カバー23を相互に任意の開閉角度で回動不能に固定するための固定ストッパ60を備えている。また、本実施形態の集塵カバー20は、前記したように固定カバー22と本体カバー23を相互に分離可能とする構成に加えて、両カバー22,23を任意の開閉角度で相互に固定するための固定ストッパ60を備える点で新規かつ有用な特徴を有している。
図14〜
図18に示すように固定ストッパ60は、ベース64と操作部材61とロックピン62を備えている。本体カバー23の右側の外側壁部23Rには、固定カバー22の右側の内側壁部22Rに設けた段差部22aを覆う段差カバー部23cと、同じく固定カバー22の右側の内側壁部22Rに設けたばね保持部31を覆うホルダカバー部23dが側方へ盛り上がる状態に設けられている。段差カバー部23cとホルダカバー部23dとの間に、円弧形に湾曲する溝部23eが設けられている。この溝部23eは固定カバー22の溝部22d内に進入している。溝部23eの下端が、前記した深さ調整ストッパ50に当接するストッパ当接部23bとなっている。
【0057】
固定ストッパ60は、上記溝部23e内に設けられている。ベース64は、溝部23e内に嵌めこまれて固定されている。ベース64の前側にはスライド溝部が設けられている。操作部材61は、ベース64上に上下に一定の範囲でスライド操作可能に保持されている。操作部材61の前側の側部にはスライド縁部が設けられている。スライド縁部をスライド溝部に進入させて当該操作部材61がベース64に対して上下に一定の範囲でスライド可能に支持されている。操作部材61は、圧縮ばね63により上方へスライドする方向に付勢されている。圧縮ばね63は、操作部材61の後面61aと、ベース64の上面下部に設けたばね係合部64aとの間に介装されている。操作部材61は、圧縮ばね63に抗して指先で下方(ロック位置側)へスライド操作することができる。操作部材61をロック位置側にスライド操作すると、固定カバー22と本体カバー23の相互の開閉動作がロックされて、回転刃具15の位置が固定される。
【0058】
操作部材61の後ろ側の側面には、作動凹部61bが設けられている。作動凹部61bは、下側が深く、上側に至るほど徐々に浅くなっている。作動凹部61bに対向してロックピン62が配置されている。ロックピン62は、本体カバー23のホルダカバー部23dに設けた保持孔23gに保持されている。保持孔23gは、ホルダカバー部23dの前側壁部を貫通して設けられている。ロックピン62は、少なくともホルダカバー部23dの前側壁部の肉厚よりも大きな直径を有している。このため、ロックピン62は、ホルダカバー部23dの前側壁部から肉厚方向にはみ出している。
【0059】
図18に示すように操作部材61が圧縮ばね63の付勢力により上側のアンロック位置に位置する状態では、作動凹部61bの下側の深い部位がロックピン62に対向する状態となっている。このため、ロックピン62は、作動凹部61bの下側の深い部位に進入して、ホルダカバー部23dの内側にはみ出さない状態となっている。これに対して、
図18に示すように操作部材61を圧縮ばね63の付勢力に抗して下側のロック位置にスライド操作すると、作動凹部61bの上側の浅い部位がロックピン62に対向する状態となる。このため、ロックピン62は、作動凹部61bの浅い部位に押されてホルダカバー部23dの内側にはみ出す状態となる。
【0060】
固定カバー22に対する本体カバー23の任意の相対回動位置(相互の開き角度)において、操作部材61のロック位置側(下向き)へのスライド操作により、ロックピン62が作動凹部61bの浅い部位に押されてホルダカバー部23dの内側に押されると、当該ロックピン62は図示するようにばねホルダ33の前面に押し付けられる。こうして本体カバー23側の作動凹部61bと、固定カバー22側のばねホルダ33の前面との間にロックピン62が強固に挟み込まれる(食い込まれる)ことにより、本体カバー23の下向きの回動動作若しくは固定カバー22の上向きの回動動作が規制されて両カバー22,23が任意の開き角度でロックされる。また、ロックピン62の食い込みにより、操作部材61はロック位置に保持される。
【0061】
固定ストッパ60は、深さ調整ストッパ50と同じく、回転刃具15のベース21の下面からの突き出し量であって、切断面Wに対する切り込み深さを調整する機能を有している。深さ調整ストッパ50では切り込み深さを段階的に調整可能とする機能を有するが、固定ストッパ60によれば、任意の切り込み深さで回転刃具15を固定することができる。
【0062】
深さ調整ストッパ50により設定される切り込み深さは、本体カバー23を下動させて回転刃具15の切断面Wに対する切り込み深さを徐々に大きくする場合に切り込み深さの上限として機能する。これに対して、固定ストッパ60により設定した切り込み深さは、当初よりベース21の下面側に回転刃具15を一定量突き出させて、この突き出し部分を切断面Wの端から切り込ませていく切断形態であって本体カバー23の下動動作を伴わない切断形態について有効に機能する。
【0063】
ロック位置に保持された操作部材61を上側へ押し操作すると、作動凹部61bの浅い部位に対するロックピン62の食い込み状態(ロック状態)が解除されて、当該操作部材61が圧縮ばね63の付勢力により上側のアンロック位置に戻される。
【0064】
本体カバー23の後部には、集塵機CLを接続するための集塵口70が設けられている。集塵機CLは、集塵ホースHを介して集塵口70に接続される。切断部位Cで発生した粉塵は回転刃具15の回転による旋回風により集塵カバー20内において上方へ吹き上げられ、その後集塵機CLによって強制的に集塵されて周囲への飛散が防止される。
【0065】
図2及び
図4に示すように固定カバー22の後部には、後部補強板80が設けられている。この後部補強板80は、鋼板製のベース21の一部を切り起こして設けたもので、窓部21aの後部から上方へ起立している。後部補強板80の上部側は、固定カバー22の内側周縁部22Eの内面に当接されている。この後部補強板80は、回転刃具15の後部側の周縁に沿って位置している。この後部補強板80によって当該固定カバー22の主として後部側のベース21に対する支持剛性の補強がなされている。
【0066】
本体カバー23の前部及び上部に沿って粉塵案内板81が設けられている。この粉塵案内板81には、左右の側壁部23L,23R間を塞ぐ幅の帯状鋼板が用いられている。粉塵案内板81の前部には、その一部を切り起こして設けた前部案内部81aが設けられている。前部案内部81aは、回転刃具15の肉厚よりも大きな幅で切り起こし形成されている。前部案内部81aは、ベース21の窓部21aの前端部付近から上方へ湾曲形に起立する状態に配置されており、その上端部は本体カバー23の外側周縁部23Eの内面に当接されている。前部案内部81aが切り起こされることにより、その後方に粉塵案内口81bが設けられている。この粉塵案内口81bは、切断部位Cの真上において、回転刃具15の肉厚よりも大きな幅で形成されている。粉塵案内板81の上部側は、粉塵案内口81bの上端部付近から集塵口70の手前に至る範囲において、外側周縁部23Eとほぼ平行に配置されている。粉塵案内板81の上部側と外側周縁部23Eとの間に、集塵通路82が形成されている。
【0067】
切断部位Cから上方へ吹き上げられた粉塵は、粉塵案内口81bを経て前部案内部81aに吹き当てられることにより集塵通路82に案内される。集塵通路82に吹き込まれた粉塵は集塵口70に向けて後方へ案内される。集塵通路82を経て集塵口70に案内された粉塵は、当該集塵口70に接続した集塵機CLにより強制的に集塵される。集塵通路82から洩れて固定カバー22の後部に流れた粉塵の一部は、窓部21aから当該集塵カバー20の外部(切断面W上)へ排出される。固定カバー22側の後部補強板80と同様、鋼板製の粉塵案内板81は、左右の外側壁部23L,23R間に挟みこまれていることにより当該本体カバー23の補強材として機能し、これにより当該集塵カバー20の耐久性が高められている。
【0068】
ベース21の窓部21aを経て排出された粉塵若しくは切断面W上に堆積した粉塵は、以下説明する補助集塵ノズル85によって集塵口70に集塵される。
図20に示すように補助集塵ノズル85は、本体カバー23の後部に沿って配置されている。補助集塵ノズル85には、取り付けベース部85aが設けられている。この取り付けベース部85aが本体カバー23の集塵口70付近にねじ止めされている。図示するように取り付けベース85aよりも上側において補助集塵ノズル85の上部は後方の集塵口70に向けてL字形に屈曲している。屈曲角部には、通気孔85bが設けられている。補助集塵ノズル85の屈曲先端部は、集塵口70に向けられている。
【0069】
補助集塵ノズル85の取り付けベース部85aよりも下側の部分は、下方へ湾曲形状に延びている。補助集塵ノズル85の取り付けベース85aよりも下側の部分は、固定カバー22の後部に設けた筒形のノズル案内部86内に挿通されている。ノズル案内部86は固定カバー22の内側周縁部22Eの内側に沿って設けられている。ノズル案内部86は、本体カバー23側の補助集塵ノズル85と同じ曲率の円弧に沿って設けられている。このため、固定カバー22に対して本体カバー23を上下に回動させると、補助集塵ノズル85の取り付けベース85aよりも下側の湾曲部分が、ノズル案内部86内を上下動する。
図20に示すように本体カバー23を下降端位置まで下動させると、補助集塵ノズル85の下端部(補助集塵口85c)は、ベース21に設けた補助集塵孔87の真上に至る。
【0070】
切断加工時において、切断部位Cから吹き上げられた粉塵は、集塵通路82を経て集塵口70に案内されて集塵機CLの吸引力(集塵力)により強制的に集塵される。集塵通路82から洩れた粉塵の一部は、後部側に流れた後に窓部21aを経て切断面W上に排出される。この排出された粉塵及び切断面W上に堆積する粉塵は、補助集塵孔87を経て補助集塵ノズル85によって集塵される。集塵口70に接続した集塵機CLの吸引力は、補助集塵ノズル85の屈曲角部に設けた通気孔85bの作用により当該補助集塵ノズル85の内部に吸引力を発生させる。この補助集塵ノズル85の吸引力により、切断面W上の粉塵が吸引される。補助集塵ノズル85で吸引された粉塵は、集塵口70を経て集塵機CLにより強制的に集塵される。
【0071】
図1,3,15〜18に示すように固定カバー22の右側の内側壁部22Rの下部であって、切断部位Cの側方には、切断部位Cを目視するための覗き窓部90が設けられている。固定カバー22の右側の内側壁部22Rの下部であって、使用者が切断部位Cを目視しやすい部位が切り欠かれて覗き窓部90が設けられている。覗き窓部90は、使用者が切断部位Cを透視できる透明カバー91で塞がれている。透明カバー91には、透明な樹脂板が用いられている。透明カバー91は内側壁部22Rに対して支軸92を介して上下に回動可能に支持されている。透明カバー91の上部には、当該透明カバー91を上下に回動操作する際に使用者が指先で摘むための摘み部91aが設けられている。
【0072】
覗き窓部90の前部には、透明カバー91を閉じ位置に保持するためのカバー係合部93が設けられている。覗き窓部90の上部には、透明カバー91の内面に付着した粉塵を拭い取るための粉塵除去部94が設けられている。粉塵除去部94には、フェルト材が用いられている。粉塵除去部94は、覗き窓部90の上部に沿って前後に長い領域にわたって貼り付けられている。使用者は、透明カバー91を経て切断部位Cを覗き見ることにより回転刃具15の刃先を切断面Wの切断部位C(スミ線)に精確に位置合わせすることができ、ひいては精確な切断作業を迅速に行うことができる。
【0073】
切断部位Cから発生した粉塵が透明カバー91の内面に付着して視認性が低下した場合には、使用者は摘み部91aを摘んで透明カバー91を上方へ回動(開放)させることによっても切断部位Cを目視することができる。透明カバー91を上方へ開放すると、当該透明カバー91の内面に粉塵除去部94が摺接されて、当該内面に付着した粉塵が拭い取られる。透明カバー91を複数回上下動させることにより、内面に付着した粉塵を確実に拭き取ることができる。このように、粉塵除去部94は、透明カバー91の内面に付着した粉塵を拭き取るためのワイパーとして機能する。開放した透明カバー91は、下方へ回動させて閉じると、その前部がカバー係合部93に係合されて閉じ位置に保持される。透明カバー91の閉じ状態において、当該透明カバー91と内側壁部22Rとの隙間が粉塵除去部94によって塞がれる。これにより切断部位Cで発生した粉塵の飛散が防止される。
【0074】
このように透明カバー91を上方へ開放する操作のみで、その内面に付着した粉塵が粉塵除去部94によって拭き取られる。このため、当該透明カバー91を取り外す等の面倒な作業をすることなく、回転刃具15を一旦停止させて透明カバー91を上下動させるだけで切断部位Cの視認性を回復して切断作業をそのまま続行することができ、この点で当該集塵カバー20の使い勝手を高めることができ、ひいては切断作業の作業性を高めることができる。
【0075】
以上のように構成した本実施形態の集塵カバー20によれば、本体カバー23と固定カバー22は、分離ロック部材41をアンロック操作することにより、相互に分離することができる。逆に、分離ロック部材41をアンロック操作しない限り、本体カバー23と固定カバー22を相互に分離することができない。このため、当該集塵カバー20を例えば持ち運ぶ際に、本体カバー23と固定カバー22が不用意に分離されてしまうことがない。分離ロック部材41をアンロック操作して固定カバー22を本体カバー23から分離することにより、回転刃具15の取り付け、取り外し作業を迅速かつ楽に行うことができる。
【0076】
また、例示した集塵カバー20によれば、本体カバー23と固定カバー22との間に、相互の開き方向への回動動作を規制する開きストッパ40が設けられている。この開きストッパ40によれば、本体カバー23と固定カバー22の相互の開き角度について、分離可能な開き角度(分離可能開き角度θ
1)よりも小さな開き角度(開き規制角度θ
0)で相互の開き方向へ回動動作が規制される。このため、分離ロック部材41をアンロック操作して本体カバー23と固定カバー22とを相互に分離するためには、先ずこの開きストッパ40を解除操作する必要があり、この点で両カバー22,23の不用意な分離をより一層確実に防止することができる。
【0077】
さらに、例示した集塵カバー20によれば、左右の前輪25を支持する車軸を、本体カバー23と固定カバー22を相互に回動可能に支持するための回動支軸24として利用する構成となっている。しかも、この回動支軸24を、支持溝部23a内に挿通させて本体カバー23を固定カバー22に対して回動可能に支持する構成となっている。これにより、当該集塵カバー20の前部付近の構成の簡略化を図りつつ、本体カバー23と固定カバー22を相互に回動可能かつ分離可能として、その使い勝手を高めることができる。
【0078】
また、分離ロック部材41は、捩りばね43によりロック側に付勢されている。このため、分離ロック部材41は、そのアンロック側への操作を解除すれば、ばね付勢力により自動的にロック側に戻される。係る自動復帰形の分離ロック部材41によれば、振動等による分離ロック部材41のアンロック側への不用意な回動動作を防止することができ、ひいては本体カバー23と固定カバー22が不用意に分離されてしまうことを防止することができる。さらに、分離ロック部材41は、ロック側にばね付勢されているためアンロック側への操作を解除すれば、自動的にロック側に戻されてロック側への戻し操作のし忘れがなくなり、この点でも本体カバー23と固定カバー22が不用意に分離されてしまうことを防止することができる。
【0079】
以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、開きストッパ40は省略してもよい。分離ロック部材41のみによっても本体カバー23と固定カバー22との不用意な分離動作を防ぐことができる。
【0080】
分離ロック部材41のアンロック側への傾動範囲を変更することにより、その係合部41aの支持溝部23aに対する退避量を調整することができ、これにより例示した分離可能開き角度θ
1(=約45°)を例えばより大きな角度に変更することができる。
【0081】
捩りばね43により分離ロック部材41をロック側に付勢する構成を例示したが、係る捩りばね43を省略して本体カバー23の外側壁部23Lに設けた係合凸部により分離ロック部材をロック位置とアンロック位置に保持する構成としてもよい。
【0082】
また、固定カバー22と本体カバー23を回動支持する回動支軸24として、前輪25を支持する車軸を利用する構成を例示したが、それぞれ別の軸を回動支軸、車軸として配置する構成としてもよい。
【0083】
さらに、本体カバー23の左側部に1つの分離ロック部材41を設けた構成を例示したが、本体カバー23の左右両側部にそれぞれ分離ロック部材45を設けた構成としてもよい。
図21及び
図22に、左右の2つの分離ロック部材45を備えた第2実施形態に係る集塵カバー20が示されている。第1実施形態と同様で、変更を要しない部材及び構成等については同位の符号を付して説明を省略する。左右の分離ロック部材45は、それぞれ第1実施形態と同じく、本体カバー23の前端部付近において共通の支軸46を介して前後に傾動可能に支持されている。
図23には、取り外した状態の分離ロック部材45が単独で示されている。両分離ロック部45は、第1実施形態と同じくその先端に鉤形の係合部45aを有している。
【0084】
左右一対の分離ロック部材45は結合部48を介して相互に一体化されている。結合部48は、本体カバー23の前面に沿って両分離ロック部材45間に跨った状態に配置されている。このため、左右の分離ロック部材45は、一体で前後に傾動する。結合部48の上部には、前方へ傾斜する操作部48aが設けられている。
【0085】
両分離ロック部材45は支軸46回りに装着した捩りばね(第1実施形態の捩りばね43に相当し、
図21,22では見えていない)によりロック側に付勢されている。両分離ロック部材45が捩りばねによりロック側に保持された状態では、当該両分離ロック部材45の係合部45aがそれぞれ回動支軸24の左右両側に引き掛けられてその支持溝部23a内における径方向の相対変位が規制された状態なり、従って本体カバー23が固定カバー22に対して分離不能にロックされた状態となる。ロック側の回動端位置は、第1実施形態と同じく、左側の分離ロック部材45に対応して設けたばね係合部44により規制される。
【0086】
逆に使用者は、結合部48の操作部48aを介して両分離ロック部材45を捩りばねに抗してアンロック側に一体で傾動操作することができる。両分離ロック部材45をアンロック側に傾動操作すると両係合部45aが回動支軸24の下方から退避して当該回動支軸24の支持溝部23a内における径方向の相対変位が許容される状態となり、従って本体カバー23を固定カバー22から分離可能な状態となる。
【0087】
図21に示すように結合部48の前面には、回転刃具15の厚さ方向(左右方向)の位置(刃先位置)を示す目盛り48bが表示されている。
図22に示すように結合部48には、指針部(インジケータ)49を取り付けることができる。指針部49は、結合部48に対して回転刃具15の厚さ方向(左右方向)に位置調整可能に取り付けることができる。スピンドル9に取り付けた回転刃具15の板厚の変化又は取り付け位置の変更に対応して指針部49を位置調整することができる。指針部49の位置調整は、目盛り48bに基づいて迅速かつ精確に行うことができる。こうして、予め指針部49を回転刃具15に位置合わせした上で、切断面Wに描いたスミ線にこの指針部49が一致するよう当該集塵カバー20ひいては切断機2を位置決めすることにより、回転刃具15をスミ線に精確に位置合わせすることができ、これにより精確な切断加工を行うことができる。
【0088】
以上のように構成した第2実施形態に係る左右一対の分離ロック部材45によれば、その係合部45aが回動支軸24の左右両端部に対してそれぞれ引き掛けられることから、当該両端部について支持溝部23a内における径方向の相対変位がより確実に規制される。このため、本体カバー23の固定カバー22に対する結合状態がより強固に維持されて、当該両カバー22,23の不用意な分離がより確実に防止される。
【0089】
左右の分離ロック部材45は、結合部48の操作部48aを介して一体で操作することができる。また、結合部48には回転刃具15の位置を示す指針部49が設けられている。この指針部49を用いて回転刃具15のスミ線合わせを行うことにより、精確な切断作業を迅速に行うことができる。
【0090】
図24及び
図25には、前記例示した開きストッパ40に変更を加えた第2実施形態に係る開きストッパ75が示されている。前記例示した開きストッパ40は、樹脂製の固定カバー22の成形時に右側部に切り起こし爪状に設けたもので、その先端に設けた係合爪部40aを本体カバー23の係合部に係合させることにより、当該本体カバー23に対して固定カバー22が開き規制角度θ
0を超えて回動されないように規制する構成となっている。係る第1実施形態の開きストッパ40が固定カバー22の右側部に設けられているのに対して、第2実施形態に係る開きストッパ75は、本体カバー23の後部に設けられている。
【0091】
第2実施形態の開きストッパ75は、帯板鋼板を素材とするストッパレバー76を備えている。図示するようにストッパレバー76は、緩やかな角度で山形に屈曲しており、その長手方向ほぼ中央に支点部76aを有している。支点部76aに対して上部側に操作部76bが設けられ、下部側にL字形に屈曲した係合部76cが設けられている。支点部76aの下側には支持柱部77が挿通されている。支持柱部77は、本体カバー23の後面(外側周縁部23E)に後方へ突き出す状態に固定されている。支持柱部77の後部にはフランジ78が固定されている。支持柱部77の周囲であってフランジ78とストッパレバー76との間に1つの圧縮ばね79が介装されている。圧縮ばね79の付勢力により、ストッパレバー76は、その支点部76aより下部側の平坦な部位を本体カバー23の後面に押し付ける方向(ロック側)に付勢されている。
【0092】
ストッパレバー76の係合部76cは、本体カバー23の後面に設けた溝孔23i内に進入している。また、操作部76bは、本体カバー23の後面に設けた保持部23jの内周側に挿通されている。これにより当該ストッパレバー76は、支持柱部77回りの回り止めがなされて、本体カバー23の後面に沿って上下に延びる向きに保持されている。
【0093】
図24に示すように圧縮ばね79の付勢力によりストッパレバー76がその支点部76aと係合部76cとの間を本体カバー23の後面に押し付けたロック位置に位置する状態では、係合部76cが溝孔23iを経て本体カバー23の内面側へ突き出された状態となる。逆に、
図25に示すように圧縮ばね79の付勢力に抗して操作部76bを押し操作することにより、ストッパレバー76をその支点部76aを支点にして図示反時計回り方向(アンロック側)に傾動させることができる。ストッパレバー76をアンロック側に傾動操作すると、係合部76cが溝孔23iから退出する方向に変位して本体カバー23の内面側から退出した状態となる。
【0094】
固定カバー22の後面側(内側周縁部22E)上部には、係合爪部80aが設けられている。係合爪部80aは、金属製の後部補強板80の上端部が僅かな寸法だけ後方へ張り出す方向に折り曲げられて設けられている。
図24に示すようにストッパレバー76を圧縮ばね79の付勢力によりロック位置に位置させた状態で本体カバー23を開き方向に回動させると、その係合部76cが係合爪部80aに係合して、当該本体カバー23のそれ以上の開き方向への回動が規制される。ストッパレバー76の係合部76cが係合爪部80aに係合することにより規制される本体カバー23の開き角度が、第1実施形態と同じく開き規制角度θ
0に設定されている。
【0095】
固定カバー22に対して本体カバー23を開き規制角度θ
0まで開いた状態で、操作部76bを圧縮ばね79に抗して押し操作してストッパレバー76をアンロック操作すると、係合爪部80aに対する係合部76cの係合が外れるため、開き規制角度θ
0を超えて本体カバー23を固定カバー22に対してさらに大きな角度で開くことができる。こうしてストッパレバー76をアンロック操作することにより、本体カバー23を固定カバー22に対して分離可能開き角度θ
1まで開くことができる。
【0096】
以上のように構成した第2実施形態に係る開きストッパ75によれば、本体カバー23に対して固定カバー22を回動支持する回動支軸24から最も離れた部位において、本体カバー23の後部と固定カバー22の後部との間で、係合部76cを係合爪部80aに係合させて本体カバー23の開き角度を規制する構成であるので、前記例示した第1実施形態に係る開きストッパ40よりも開き角度をより確実に規制することができる。
【0097】
しかも、何れも鋼板製の係合爪部80aに対して係合部76cを係合させる構成であることから、樹脂製の開きストッパ40に比して撓み(弾性変形)が小さく、この点でも開き角度の規制をより確実に行うことができる。また、第2実施形態に係る開きストッパ75は、当該集塵カバー20の左右幅方向のほぼ中央に設けられている。この点でも、左右幅方向中央よりも右側に設けた第1実施形態の開きストッパ40に比してより確実な開き角度の規制を行うことができる。
【0098】
次に、
図24〜
図26には、前記第1実施形態の粉塵案内板81に変更を加えた第2実施形態の粉塵案内板83が示されている。第1実施形態の粉塵案内板81は、底壁部の左側に沿って側壁部を有する断面L字形を有しているが、第2実施形態の粉塵案内板83は底壁部83bの右側に沿って側壁部83aを有する断面L字形を有している。右側の側壁部83aを有する粉塵案内板83が本体カバー23の外側周縁部23Eの内側に沿って設けられている。このため、
図26に示すように粉塵案内板83の右側の側壁部83aは、本体カバー23の右側の外側壁部23Rに沿って位置している。この粉塵案内板83によって集塵通路84が形成されている。第2実施形態の集塵通路84は、下方及び右側方を粉塵案内板83により区画され、左側方を外側壁部23Lで区画され、上方を本体カバー23の外側周縁部23Eで区画されている。
【0099】
第1実施形態とは異なり集塵通路84の右側方についても粉塵案内板83の右側の側壁部83aで区画されていることから、本体カバー23の右側の外側壁部23Rに設けた段差カバー部23c、ホルダカバー部23d及び溝部23e等による内側の凹凸形状部に対して集塵通路84が遮蔽されている。このため、切断部位Cから吹き上げられて集塵通路84内に進入した粉塵が本体カバー23の内側の凹凸形状部に吹き当てられて後方への流れが阻害されることがなくなる。
【0100】
図24及び
図25に示すように第1実施形態の粉塵案内板81と同じく第2実施形態の粉塵案内板83の後部側は、集塵口70までは至っていない。このため、粉塵案内板83の後部側と集塵口70との間には、集塵通路84が途切れた隙間88が存在している。固定カバー22に対して本体カバー23を下動させて回転刃具15の切り込み深さを最大に設定した状態においても、適切な開口の隙間88が確保されるよう、粉塵案内板81の後部側の位置及び内側周縁部22Eの上部の位置が設定されている。切断部位Cで発生した粉塵のうち、集塵通路84内に進入せず、回転刃具15の回転風により後方へ流れた粉塵がこの隙間88を経て集塵口70内に集塵される。