特許第6704788号(P6704788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704788
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ディジタル振幅変調装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/36 20060101AFI20200525BHJP
   H03C 1/00 20060101ALI20200525BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20200525BHJP
   H04B 17/18 20150101ALI20200525BHJP
   H03F 1/52 20060101ALI20200525BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20200525BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   H04L27/36
   H03C1/00 A
   H04B1/04 N
   H04B17/18
   H03F1/52
   H03F3/24
   H03F3/68 220
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-103400(P2016-103400)
(22)【出願日】2016年5月24日
(65)【公開番号】特開2017-212540(P2017-212540A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】片山 誠記
(72)【発明者】
【氏名】関口 芳充
【審査官】 高野 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−139208(JP,A)
【文献】 特開2015−133546(JP,A)
【文献】 特許第5342033(JP,B2)
【文献】 特許第5575189(JP,B2)
【文献】 特許第5638597(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/00−27/38
H03C 1/00
H04B 1/04
H04B 17/18
H03F 1/52
H03F 3/24
H03F 3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された音声信号に基づいてオン/オフ制御され、オン制御状態において入力されたキャリア信号の電力増幅を行う並列接続された複数の電力増幅器を有する電力増幅部と、
前記オン制御状態にある複数の電力増幅器の出力を合成して合成出力信号を出力する合成部と、
前記合成出力信号の電圧値及び電流値を測定する第1測定部と、
前記合成出力信号のフィルタリングを行ってRF帯の振幅変調信号として信号出力端子から出力するフィルタ部と、
前記振幅変調信号の電圧値及び電流値を測定する第2測定部と、
アナログ回路およびディジタル回路の複合回路として構成され、前記第1測定部の測定結果及び前記第2測定部の測定結果に基づいて演算を行って前記合成部の異常を検出し、前記電力増幅部を保護するための制御信号を出力する保護部と、
前記制御信号に基づいて、前記電力増幅部の複数の電力増幅器のオン/オフ制御を行う制御部と、を備え
前記保護部は、前記合成出力信号の電圧値あるいは電流値のうち少なくともいずれか一方及び前記振幅変調信号の電圧値あるいは電流値のうちのうち少なくともいずれか一方の組み合わせにより前記演算を行う、
ディジタル振幅変調装置。
【請求項2】
前記保護部は、前記合成出力信号の電流値を電流値CPiとし、前記振幅変調信号の電流値を電流値SPiとし、電圧値を電圧値SPvとし、前記演算の結果を演算値Vmとした場合に、
Vm=CPi−SPi
あるいは、
Vm=CPi−SPv
に基づいて前記制御信号を出力する、
請求項1記載のディジタル振幅変調装置。
【請求項3】
前記フィルタ部はバンドパスフィルタを備えている、
請求項1又は請求項2記載のディジタル振幅変調装置。
【請求項4】
前記バンドパスフィルタとして90度位相型バンドパスフィルタを備えている、
請求項3記載のディジタル振幅変調装置。
【請求項5】
前記保護部は、前記演算を行って演算値を出力する演算出力部と、
アナログ回路として構成され、前記演算値が所定の異常状態に相当する第1基準値を超えた場合に全ての前記電力増幅器をオフ制御状態とするための第1制御信号を前記電力増幅器が前記所定の異常状態を前記オン制御状態で許容できる最小許容時間の経過前に出力する第1保護部と、
アナログ回路及びディジタル回路の複合回路として構成され、前記演算値に基づき算出された保護指標が、前記第1基準値より低い、所定の第2基準値を越えた場合に、並列してオン制御状態とすることが可能な前記電力増幅器の上限台数を制御するための第2制御信号を出力し、前記演算値が、前記第1基準値と同程度である、第3基準値以上となった場合に、初期状態もしくは前記上限台数の範囲内で前記電力増幅器をオン/オフ制御するための第3制御信号を前記第1制御信号の出力期間中に出力する第2保護部と、
前記第1制御信号、前記第2制御信号及び前記第3制御信号に基づいて、前記電力増幅部の複数の電力増幅器のうち前記オン制御状態にある前記電力増幅器を、前記音声信号に基づいてオン/オフ制御する制御部と、
を備えた請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載のディジタル振幅変調装置。
【請求項6】
入力された音声信号に基づいてオン/オフ制御され、オン制御状態において入力されたキャリア信号の電力増幅を行う並列接続された複数の電力増幅器を有する電力増幅部と、前記オン制御状態にある複数の電力増幅器の出力を合成して合成出力信号を出力する合成部と、前記合成出力信号のフィルタリングを行ってRF帯の振幅変調信号として信号出力端子から出力するフィルタ部と、アナログ回路およびディジタル回路の複合回路として構成され、前記合成部の異常を検出し、前記電力増幅部を保護するための制御信号を出力する保護部と、を備えたディジタル振幅変調装置で実行される方法であって、
前記合成出力信号の電圧値及び電流値を測定する過程と、
前記振幅変調信号の電圧値及び電流値を測定する過程と、
前記合成出力信号の電圧値の測定結果及び前記振幅変調信号の電圧値の測定結果、あるいは、前記合成出力信号の電流値の測定結果及び前記振幅変調信号の電流値の測定結果に基づいて演算を行い、前記演算に基づいて、前記電力増幅部の複数の電力増幅器のオン/オフ制御を行う過程と、を備え、
前記演算は、前記合成出力信号の電圧値あるいは電流値のうち少なくともいずれか一方及び前記振幅変調信号の電圧値あるいは電流値のうちのうち少なくともいずれか一方の組み合わせにより行う、
法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ディジタル振幅変調装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中波放送用の送信装置においては、ディジタル振幅変調装置が用いられている。
ディジタル振幅変調装置は、並列に接続された複数の電力増幅器を備えている。
そして、外部から供給される音声信号等の変調信号の電圧振幅レベルに合わせて複数の電力増幅器をオン/オフ制御することで、同時にオン制御状態(増幅出力状態)とされる電力増幅器の台数を変更しながら、キャリア信号を増幅する。
【0003】
そして、同時にオン制御状態とされている電力増幅器の出力信号を合成することでAM(Amplitude Modulation)波を生成し、生成したAM波を所定の放送サービスエリアへ送出する。
【0004】
この種のディジタル振幅変調装置においては、電力増幅器が壊れたり、合成部が短絡したり、開放したり等の何らかの障害が発生すると、AM波の信号品質が劣化する可能性がある。
【0005】
このため、ディジタルでは、電力増幅器の破壊を防止するため、AM波の送信過程において電圧及び電流を測定し、測定結果に基づいてディジタル振幅変調装置内の機器を制御している。
例えば、落雷やケーブルの断線などの要因により、測定した電圧及び電流に基づいて算出した値(以下、判定用値という)が電力増幅器を破壊する恐れがある警告値の限界を超えた場合、送信回路のスイッチを切断することで出力電力を零にする方法や電力増幅器の送信電力を減力する方法等が知られている。
この場合において、判定用値としては、例えばSWR(定在波比:Standing Wave Ratio)値が使用され、SWR値の算出には、ディジタル回路やアナログ回路が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2992345号公報
【特許文献2】特許第5342033号公報
【特許文献3】特許第5575189号公報
【特許文献4】特許第5638597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、判定用値を用いて制御を行う従来のディジタル振幅変調装置においては、合成部が短絡した場合においては判定用値の信頼性が低下し誤判定(誤検知)が発生する虞があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、合成部が短絡した場合であっても、異常を確実に検出することが可能なディジタル振幅変調装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態のディジタル振幅変調装置は、入力された音声信号に基づいてオン/オフ制御され、オン制御状態において入力されたキャリア信号の電力増幅を行う並列接続された複数の電力増幅器を有する電力増幅部を備えている。
そして、合成部は、前記オン制御状態にある複数の電力増幅器の出力を合成して合成出力信号を出力する。
第1測定部は、合成出力信号の電圧値及び電流値を測定する。
フィルタ部は、合成出力信号のフィルタリングを行ってRF帯の振幅変調信号として信号出力端子から出力する。
第2測定部は、振幅変調信号の電圧値及び電流値を測定する。
これらの結果、アナログ回路およびディジタル回路の複合回路として構成された保護部は、前記第1測定部の測定結果及び前記第2測定部の測定結果に基づいて演算を行い、制御信号を制御部に出力する。
制御部は、音声信号、制御信号に基づいて、電力増幅部の複数の電力増幅器のオン/オフ制御を行う。
上記構成において、保護部は、合成出力信号の電圧値あるいは電流値のうち少なくともいずれか一方及び振幅変調信号の電圧値あるいは電流値のうちのうち少なくともいずれか一方の組み合わせにより前記演算を行う。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態のディジタル振幅変調装置の機能構成ブロック図である。
図2図2は、保護部の機能構成ブロック図である。
図3図3は、制御部の機能構成ブロック図である。
図4図4は、保護部及び制御部の処理手順を示すシーケンス図である。
図5図5は、電力増幅器に対する制御の時間遷移図である。
図6図6は、第2処理手順における保護部及び制御部の処理手順を示すシーケンス図である。
図7図7は、従来のディジタル振幅変調装置において生成されるオン/オフ制御信号の時間遷移を示す図である。
図8図8は、実施形態の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好適な実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態のディジタル振幅変調装置の機能構成ブロック図である。
ディジタル振幅変調装置10は、大別すると、制御部11、電力増幅部12、合成部13、第1測定部14、フィルタ部15、第2測定部16、保護部17、キャリア信号入力端子Tc及び音声信号入力端子Tsを備えている。
【0012】
キャリア信号入力端子Tcには、伝送信号としてのキャリア信号Scが入力される。
音声信号入力端子Tsには、変調信号である音声信号Ssが入力される。
制御部11は、後述するようにディジタル振幅変調装置10全体の制御を行う。
【0013】
電力増幅部12は、n台の電力増幅器(PA:Power Amplifier)12−1〜12−nを備えている。キャリア信号入力端子101に入力されたキャリア信号は、制御部11を介して電力増幅器12−1〜12−nにそれぞれ入力される。
【0014】
電力増幅器12−1〜12−nは、それぞれ制御部11の制御下で音声信号Ssに基づいてオン/オフ制御される。そして、電力増幅器12−1〜12−nは、オン制御状態で駆動状態となり、入力されたキャリア信号Scを予め設定されたレベルに増幅する。また、電力増幅器12−1〜12−nは、オフ制御状態で、停止状態となり、その出力が禁止される。
【0015】
合成部13は、電力増幅器12−1〜12−nの出力信号が入力され、増幅されたキャリア信号を合成して合成増幅キャリア信号Sacを生成し、第1測定部14へ出力する。
【0016】
第1測定部14は、合成部13から入力される合成増幅キャリア信号Sacの電圧値CPv及び電流値CPiを測定し、測定信号Sm1として保護部17へ出力する。
フィルタ部15は、合成部13で合成された合成信号のフィルタリング(濾波)することで、合成信号に含まれるノイズ等の不要な成分を抑圧してフィルタリング合成信号Sfacを出力する。そして、フィルタ部15は、フィルタリング合成信号Sfacを、振幅変調されたRF帯の放送波(AM波)として、第2測定部16を介し、信号出力端子Toutから出力する。
信号出力端子Toutの後段には、図示しない整合回路、フィルタ、リジェクタ及びトラップ回路等が設けられており、これらを介して図示しない送信アンテナが接続される。
【0017】
これと並行して、第2測定部16は、フィルタ部15から入力される放送波であるフィルタリング合成信号Sfacの電圧値SPv及び電流値SPiを測定し、測定信号Sm2として保護部17へ出力する。
【0018】
保護部17は、第1測定部14が出力した測定信号Sm1及び第2測定部16が出力した測定信号Sm2に基づいて、所定の手順により、演算値Vmを演算し出力する演算部として機能する演算出力部17Aを備えている。
【0019】
また、保護部17は、後述するようにアナログ回路として構成され、演算値Vmに基づいて、オン制御状態にある全ての電力増幅器12−x(x:1〜n)をオフ制御状態とする、すなわち、全ての電力増幅器12−1〜12−nをオフ制御状態とするための第1制御信号SC1を出力する第1保護部として機能するファスト(fast)プロテクション部17Bを備えている。
【0020】
さらに、保護部17は、アナログ回路及びディジタル回路の複合回路として構成され、演算値Vmに基づいて、並列してオン制御状態とすることが可能な電力増幅器の最大台数(上限台数)を制御するための第2制御信号SC2及び初期状態もしくは第2制御信号SC2で規定される上限台数の範囲内で電力増幅器12−x(x:1〜n)をオン/オフ制御状態とするための第3制御信号SC3及び電力増幅部12の状態を状態変更前の状態に戻すための再起動信号SRSを出力する第2保護部として機能するスロー(slow)プロテクション部17C、を備えている。
【0021】
ここで、保護部17の構成についてより詳細に説明する。
図2は、保護部17の機能構成ブロック図である。
演算出力部17Aは、例えば、オペアンプなどのアナログICから構成されるアナログ回路として構成され、測定値入力端子T11を備える。
【0022】
測定値入力端子T11には、第1測定部14が測定した合成増幅キャリア信号Sacの電圧値CPv及び電流値CPiが測定値として入力される。
また測定値入力端子T12には、第2測定部16が測定したフィルタリング合成信号Sfacの電圧値SPv及び電流値SPiが測定値として入力される。
【0023】
これにより、演算出力部17Aは、測定値入力端子T11から入力された電流値CPiと、測定値入力端子T12から入力された電流値SPiの差を演算値Vmとして出力する。
すなわち、
Vm=CPi−SPi
として出力する。また、測定値入力端子T12から入力された電流値SPiに代えて電圧値SPvを用い、
Vm=CPi−SPv
として出力するようにすることも可能である。
【0024】
ファストプロテクション部17Bは、例えば、オペアンプやコンパレータなどのアナログICから構成されるアナログ回路を用いて構成された制御出力部171及び第1制御信号出力端子T13を備える。
【0025】
ここで、制御出力部171は、演算出力部17Aが出力する演算値Vm(=CPi−SPi又はCPi−SPv)が、予め設定された所定の異常状態に相当する閾値である第1基準値以上となる場合、オン制御状態にある全ての電力増幅器12−x(x:1〜n)をオフ制御状態とするための第1制御信号SC1を第1制御信号出力端子T13から制御部11に出力する。
【0026】
このとき、第1制御信号SC1のパルス幅は、アナログ回路及びディジタル回路の複合回路として構成されたスロープロテクション部17Cにおける演算遅延時間よりも長く設定される。これは、スロープロテクション部17Cによる保護が開始される前にファストプロテクション部17Bの保護が解除されるのを防止するためである。
【0027】
スロープロテクション部17Cは、例えば、オペアンプやA/DコンバータなどのアナログICから構成されるアナログ回路と、CPU、CPLD及びFPGA等のディジタル回路の複合回路として構成されている。
【0028】
そして、スロープロテクション部17Cは、演算部172、記憶部173、上限制御部174、第2制御信号SC2を出力する第2制御信号出力端子T14、判定部175、再起動部176、カウンタ部177及び第3制御信号SC3及び再起動信号SRSを出力する第3制御信号出力端子T15を備えている。
【0029】
スロープロテクション部17Cの演算部172は、演算出力部17Aが出力する演算値Vm(=CPi−SPi又はCPi−SPv)に基づいてSWR(定在波比:Standing Wave Ratio)、反射係数又は反射電力等の評価値Vxを算出する。
ここで演算部172においては、評価値Vxは、あらかじめ記憶部173に格納された初期状態の評価値Vx0により補正が行われ、上限制御部174へ出力される。
【0030】
この演算部172は、評価値Vxの補正が行われることで、演算出力部17Aならびにスロープロテクション部17Cを構成するアナログ回路で構成された演算・平滑回路などの誤差やA/Dコンバータなどの回路における雑音の影響を除去することが可能となり、より正確な評価値Vxを算出することが可能となる。
【0031】
なお、反射係数を評価値Vxとして算出する場合には、記憶部173には、初期状態の反射係数(=初期状態の評価値Vx0)の他、初期状態のインピーダンスや出力電力などを記憶することで、測定時のインピーダンスや出力電力・反射電力などを算出することが可能となる。
【0032】
そして、上限制御部174は、複数の第2基準値Vref2を予め記憶しており、演算部172から出力されたSWR、反射係数、反射電力等の評価値Vxが第2基準値Vref2を超えると、第2基準値に応じたオン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数を上限値として設定する。
例えば、第2基準値Vref2として、二つの値、第2基準値Vref2A、Vref2B(Vref2A>Vref2B)があるとする。
【0033】
この場合に、
第2基準値Vref2A>評価値Vx>第2基準値Vref2B
であれば、上限制御部174は、並列してオン制御状態とすることが可能な電力増幅器の最大台数(上限台数)をn/2台とする。例えば、n=10であれば、並列してオン制御状態とすることが可能な電力増幅器の最大台数(上限台数)を5台とする第2制御信号SC2を第2制御信号出力端子T14から出力する。
【0034】
また、
評価値Vx>第2基準値Vref2A>第2基準値Vref2B
であれば、上限制御部174は、並列してオン制御状態とすることが可能な電力増幅器の最大台数(上限台数)をn/5台とする。例えば、n=10であれば、並列してオン制御状態とすることが可能な電力増幅器の最大台数を2台とする第2制御信号SC2を第2制御信号出力端子T14から出力する。なお、第2基準値Vref2は、装置により適宜設定される。
【0035】
また、スロープロテクション部17Cに、第1測定部14及び第2測定部16が測定する測定値から演算出力部17Aが出力する演算値Vm(=CPi−SPi又はCPi−SPv)を生成する機能を持たせるように構成することも可能である。この構成を採った場合、第1測定部14及び第2測定部16が測定する測定値(電圧値及び電流値)は、演算出力部17Aを介さずに演算部172に直接入力され、この演算部172は、演算値Vm(=CPi−SPi又はCPi−SPv)を生成し、判定部175に出力する。
【0036】
判定部175は、入力された演算値Vm(=CPi−SPi又はCPi−SPv)が予め設定された閾値である第3基準値Vref3以上となる場合、第3制御信号SC3を生成する。
そして、第3制御信号SC3のステータスは、STOP(第3制御信号SC3により電力増幅器12−Xがオフ制御状態)となる。
【0037】
判定部175は、生成した第3制御信号SC3を第3制御信号出力端子T15から制御部11へ出力するとともに、第3制御信号SC3を再起動部176へ出力する。
再起動部176は、第3制御信号SC3が入力されると、第3制御信号SC3が入力されてから所定時間の経過後に、第3制御信号SC3のステータスを変更するため再起動信号SRSを第3制御信号出力端子T15から制御部11へ出力する。
ここで、再起動部176における所定時間とは、第3制御信号SC3のステータスがSTOP(異常検出状態)となった後に、再起動信号SRSが出力されるまでの時間であり、その時間はスロープロテクション部17Cの演算遅延時間より長い時間である。
【0038】
再起動信号SRSは、所定のパルス幅の間、入力された演算値Vm(=CPi−SPi又はCPi−SPv)が予め設定された閾値である第3基準値Vref3以上となる前の状態と並列にオン制御する電力増幅器12−1〜12−nの上限値が同じ台数(初期状態)、もしくは第2制御信号SC2で指示された上限台数となる状態となるように、制御部11に対して第3制御信号SC3のステータスをRUNに変更する指示となる。ここで、所定のパルス幅の間とは、電力増幅器12−1〜12−nの最小許容時間(例えば、負荷が短絡することで電力増幅器12−1〜12−nへ過電流が供給され、電力増幅器12−1〜12−nが発熱し、電力増幅部12が破損に至ることがない最小の時間:例えば、100μs)に比べて短い時間に相当する時間である。
【0039】
そして、第3制御信号SC3のステータスがRUNとなると、第3制御信号SC3により、音声信号の電圧振幅レベルに応じて、初期状態もしくは第2制御信号SC2に指定された(並列してオン制御状態とすることが可能な)上限台数の範囲内で電力増幅器12−x(x:1〜n)がオン制御状態あるいはオフ制御状態とされる。
【0040】
再起動部176は、所定のパルス幅の間に相当する時間の経過後に、第3制御信号SC3のステータスを変更するための再起動信号SRSを第3制御信号出力端子T15から制御部11へ出力する。
【0041】
これにより、再起動部176は、第3制御信号SC3のステータスを変更することで、制御部11に対して、電力増幅器12−1〜12−nのオフ制御の指示をすることとなる。そして、第3制御信号SC3のステータスはSTOP(第3制御信号SC3により電力増幅器12−Xがオフ制御状態)となる。
【0042】
再起動部176は、再起動信号SRSを制御部11に対して出力すると、再起動回数をカウントするカウンタ部177のカウント値をインクリメントする。
従って、再起動部176は、演算値Vm(=CPi−SPi又はCPi−SPv)が第3基準値Vref3を超えている場合、再起動信号SRSをスロープロテクション部17Cによる演算遅延時間よりも長い時間(所定時間)と電力増幅器12−1〜12−nの最小許容時間よりも短い時間(所定パルス幅の間に相当する時間)と、を組としたうえで、繰り返し出力し、再起動信号SRSを出力する度もしくは再起動信号SRSの組を出力する度にカウンタ部177のカウント値をインクリメントする。
【0043】
再起動部176は、カウンタ部177のカウント値が予め設定した上限回数に達するまでに、演算値Vm(=CPi−SPi又はCPi−SPv)が第3基準値Vref3以上となる状態が維持されている場合、第3制御信号SC3のステータスはSTOPのまま(第3制御信号SC3により電力増幅器12−Xがオフ制御状態を保ったまま)、再起動信号SRSの出力を終了する。なお、再起動信号SRSの出力前に、演算値Vm(=CPi−SPi又はCPi−SPv)が第3基準値Vref3以上となる異常状態が解消されれば、第3制御信号SC3の生成は終了し、カウント値はリセットされる。
【0044】
上記構成において、さらに、再起動部176に、カウンタ部177のカウント値に対する複数のカウント閾値を予め記憶させ、カウント値が上限回数に達する前までに、オン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限値を制御(カウント閾値を超える毎により減力方向、すなわち、上限値を小さく)しながら、出力電力を出力するように、制御部11に対して指示することも可能である。
【0045】
初期状態を例として説明を行う。
例えば、あるカウント閾値ThA(カウント閾値ThA<上限回数)を想定した場合、カウンタ部177のカウント値がカウント閾値ThAより小さい状態においては、並列してオン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限値を、演算値Vm(=CPi−SPi又はCPi−SPv)が第3基準値Vref3以上となる前と同じ台数(初期状態)とする。また、カウンタ部177のカウント値がカウント閾値ThA以上となった場合には、オン制御対象の電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限値を初期状態の1/2(自動減力機能)とする。
【0046】
このように、スロープロテクション部17Cを構成する再起動部176及びカウンタ部177並びに並列してオン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限値を減少させる自動減力機能をディジタル回路で実現している。したがって、スロープロテクション部17Cを、ファストプロテクション部17Bと同様のアナログ回路のみで構成する場合と比較して、回路規模の増大を抑えることが可能となっている。
【0047】
さらに、アナログ回路及びディジタル回路の複合回路にファストプロテクション部17Bの機能を持たせた場合には演算遅延量が発生するが、この点については、アナログ回路で構成したファストプロテクション部17Bに保護処理を任せているため、当該演算遅延量による影響はない。
【0048】
ここで、第2制御信号SC2が出力されるのは、第1制御信号SC1及び第3制御信号SC3が出力されない場合である。ただし、第2制御信号SC2が出力された状態では、第1制御信号SC1及び第3制御信号SC3を出力することが可能となり、この場合、並列してオン制御状態とすることが可能な増幅部の電力増幅器の上限台数は、第2制御信号SC2で指示された値が初期状態の台数となる。
具体的には、例えば、第3基準値Vref3≒第1基準値Vref1>保護指標≧第2基準値Vref2の場合、第2制御信号SC2のみが出力される。
ここで保護指標とは、演算値Vm(=CPi−SPi又はCPi−SPv)や評価値Vxのことを示している。
【0049】
したがって、ファストプロテクション部17Bと、スロープロテクション部17Cとの間の保護指標である演算値Vm(=CPi−SPi又はCPi−SPv)や評価値Vxの違い、雑音などの影響、ならびにスロープロテクション部17Cにおける雑音などの影響を除去することとなる。
【0050】
ただし、保護減力の状態(並列してオン制御状態とすることが可能な電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限が第2制御信号SC2により設定されている状態)から、保護指標≧第3基準値Vref3≒第1基準値Vref1となった場合には、第2制御信号SC2で指示された並列してオン制御状態とする電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限値は維持した状態で動作する。
【0051】
図3は、制御部11の機能構成ブロック図である。
制御部11は、図3に示すように、電力制御部111、信号制御部112、割込部113、キャリア信号入力端子T21、音声信号入力端子T22、制御信号出力端子T23、制御信号入力端子T24、T25を備える。ここで、第1制御信号入力端子T24には、第1制御信号SC1が入力され、第2制御信号入力端子T25には、第2制御信号SC2が入力され、制御信号入力端子T26には、第3制御信号SC3及び再起動信号SRSが入力される。
【0052】
電力制御部111は、音声信号入力端子T22に入力される変調信号である音声信号SSと、スロープロテクション部17Cから出力され、制御信号入力端子T25入力される第2制御信号SC2、第3制御信号SC3及再起動信号SRSが入力される。
【0053】
電力制御部111は、音声信号の電圧振幅レベルに応じ、第2制御信号SC2で指示された並列してオン制御状態とすることが可能な増幅部の上限台数以内において、電力増幅器12−1〜12−nのいずれをオン制御するかを決定する。
もしくは、電力制御部111は、第3制御信号SC3が生成されない状態(初期状態)もしくは第3制御信号SC3のステータスがRUNの時には初期状態又は自動減力状態もしくは第2制御信号SC2で指示された並列してオン制御状態とすることが可能な増幅部の上限台数以内において、音声信号の電圧振幅レベルに応じ、電力増幅器12−1〜12−nのいずれをオン制御するかを決定する。
また、第3制御信号SC3のステータスがSTOPの時には、オン制御状態にある全ての電力増幅器12−x(x:1〜n)をオフ制御状態とする。つまり、電力制御部111は、ステータスがSTOPの第3制御信号SC3又は第3制御信号SC3のステータスをSTOPに変更する再起動信号SRSを受け取った際は、オン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限値を0とすることで、ディジタル振幅変調装置10を等価的に出力停止状態とすることが可能となる。
【0054】
そして、電力制御部111は、電力増幅器12−1〜12−nのうちいずれか一つ又は複数の電力増幅器をオン/オフ制御するかを示す情報INFを信号制御部112へ出力する。
信号制御部112は、キャリア信号入力端子T21に入力されるキャリア信号Scと、電力制御部111から出力される情報INFとが入力される。
【0055】
そして信号制御部112は、入力された情報INFを参照し、キャリア信号Scの周波数に従い、オン制御する電力増幅器に対してはオン制御状態とするオン/オフ制御信号Son/Soffを出力し、オフ制御する電力増幅器に対してはオフ制御状態とするオン/オフ制御信号Son/Soffを出力する。
【0056】
このとき、オン/オフ制御信号Son/Soffについては、キャリア信号のレベルあるいはキャリア信号の位相を変更することで電力増幅器を制御するオン/オフ制御信号Son/Soffがある。キャリア信号の信号レベルあるいは位相を変更するいずれの制御方法を採用するかは、装置により任意に設定可能である。
【0057】
割込部113は、信号制御部112が生成したオン/オフ制御信号Son/Soffと、ファストプロテクション部17Bから出力されて制御信号入力端子T24に入力される第1制御信号SC1とが入力される。
【0058】
そして、割込部113は、信号制御部112から入力されたオン/オフ制御信号Son/Soffよりも、緊急性が高い第1制御信号SC1を優先して扱い、第1制御信号SC1により出力することが指示されるオフ制御信号Soffを全ての電力増幅器12−1〜12−nへ出力する。ここで、第1制御信号SC1が生成されない、もしくは、第1制御信号SC1のステータスがRUN状態の場合、割込部113は、信号制御部112から入力されたオン/オフ制御信号Son/Soffを出力する。
【0059】
なお、図3に示した制御部11の構成は一例であり、例えば、電力制御部111のオン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数を算出する機能と、電力増幅器12−1〜12−nのいずれをオン/オフ制御するかの情報を算出する機能とを分離して設けるように構成することも可能である。
【0060】
ここで、実施形態の動作説明に先立ち、従来における問題点及び実施形態の動作原理について説明する。
従来において、電力増幅器が破壊されるのを防止するための異常検出を行う方法として、電力増幅器の出力を合成する合成部の出力である合成増幅キャリア信号Sacの電流値CPiのみを用いて異常検出(合成過電流の検出)を行う方法が提案されていた。
【0061】
この方法によれば、合成部を構成している合成トランス内において短絡(ショート)が発生した場合に、合成トランスのインダクタンス成分により、瞬時的な電流値CPiの増加が抑制され頭打ちとなるため、異常検出閾値を下げると、過変調時等に誤検出がされてしまう虞があった。
【0062】
これを解決するために、合成増幅キャリア信号Sacの電圧値CPv及び電流値CPiを用いる方法が提案されている。
これは、例えば、電圧値CPvと電流値CPiとの差分ΔCP、すなわち、
ΔCP=CPv−CPi
が大きくなることを利用して異常を検出する方法が提案されている。この検出方法の原理としては、電圧値CPvは変動が少なく、異常時には、電流値CPiのみが大きく変動することを利用していた。
【0063】
しかしながら、合成部の後段に接続するフィルタ部としてのバンドパスフィルタとして、90度位相型のバンドパスフィルタを用いた場合、フィルタ部の出力部が短絡(ショート)した場合に、フィルタ部(バンドパスフィルタ)の入力部が見かけ上オープンの場合と同一となるため、電圧値CPvが増加し、電流値CPiが減少することとなる。
【0064】
したがって、電圧値CPv及び電流値CPiの双方とも差分ΔCPを増加する方向に働き、フィルタ部(バンドパスフィルタ)の異常が合成部の異常として検出されてしまい、誤検出の可能性が高くなるという問題点があった。
【0065】
そこで、本実施形態においては、フィルタ部の異常の影響を低減しつつ、合成部の異常(合成過電流の検出)を確実に行うことを可能とするために、合成増幅キャリア信号Sacの電流値CPiとフィルタリング合成信号Sfacの電流値SPiあるいは電圧値SPvとの差分ΔCSを用いることとした。すなわち、
ΔCS=CPi−SPi
あるいは、
ΔCS=CPi−SPv
を用いることとした。
【0066】
この場合、合成部を構成している合成トランス内において短絡(ショート)が発生した場合には、合成増幅キャリア信号Sacの電流値CPiは増加し、フィルタリング合成信号Sfacの電流値SPiあるいは電圧値SPvは減少し、合成増幅キャリア信号Sacの電流値CPiのみを用いて検出する場合でも異常検出が容易となる。
【0067】
さらにフィルタ部の出力部が短絡(ショート)した場合には、合成増幅キャリア信号Sacの電流値CPiは減少し、フィルタリング合成信号Sfacの電流値SPiあるいは電圧値SPvも減少するので、差分ΔCSは増加せず、異常が誤検出されるのを抑制できる。
【0068】
次に、ディジタル振幅変調装置100における電力増幅器12−1〜12−nの制御動作を説明する。
以下においては、保護部17及び制御部11の処理手順に従い説明する。
まず、保護指標≧第3基準値Vref3≒第1基準値Vref1である場合について説明する。この状態は、第2の制御信号は出力されず、第1制御信号SC1、第3制御信号SC3及び再起動信号SRSが出力される。
【0069】
この状態における処理手順を以下、第1処理手順と称する。
第1処理手順においては、保護指標<第3基準値Vref3≒第1基準値Vref1となっている状態を正常状態とし、保護指標≧第3基準値Vref3≒第1基準値Vref1となっている状態を異常状態とする。
【0070】
図4は、保護部17及び制御部11の処理手順を示すシーケンス図である。
図5は、電力増幅部12に対する制御の時間遷移図である。
ここで、図5に示すように、電力増幅部12の電力増幅器12−x(1〜n)におけるオン/オフ制御信号Son/Soffは、時刻Taまでは、制御状態に応じたある周期をもってオン制御状態とオフ制御状態とを繰り返しているものとする。
【0071】
まず、図4において、演算出力部17Aは、第2測定部16で測定された測定値を演算し、ファストプロテクション部17B及びスロープロテクション部17Cへ出力する(ステップS41)。
【0072】
ファストプロテクション部17Bは、図5の時刻Taにおいて何らかの異常が発生し、異常状態(保護指標≧第1基準値Vref1)になったと判断すると、時刻Tbにおいて、第1制御信号SC1を生成し、第1制御信号SC1のステータスをSTOP(オン制御状態にある全ての電力増幅器12−x(x:1〜n)がオフ制御状態となる)とする。そして、ファストプロテクション部17Bは、図4に示すように、生成した第1制御信号SC1を制御部11へ出力する(ステップS42)。
【0073】
なお、第1制御信号SC1はある幅を持ったパルス状の信号であるため、あるタイミングで、第1制御信号SC1のステータスはRUN(第1制御信号SC1が生成されない状態と同様に、音声信号の電圧振幅レベルに応じ、いずれか一つ又は複数の電力増幅器がオン/オフ制御状態となる)となる。ここで、ある幅とは、例えば800μsであり、スロープロテクション部17Cにおける演算遅延時間よりも長い時間とされている。このため、スロープロテクション部17Cによる保護が開始される前にファストプロテクション部17Bの保護が解除されることはない。
【0074】
このとき、異常が発生してから第1制御信号SC1を出力するまでの時間、すなわち、制御出力部171の演算処理量はTb−Ta=15μs程度であり、電力増幅器12−xの最小許容時間(例えば、100μs)に比べて小さい。
制御部11は、第1制御信号SC1を受けると、割込部113から電力増幅器12−xへオフ制御信号Soffを出力する(ステップS43)。この結果、オン制御状態にある全ての電力増幅器12−x(x:1〜n)がオフ制御状態となる。
【0075】
スロープロテクション部17Cは、図5の時刻Taにおいて発生した何らかの異常により、異常状態(保護指標≧第3基準値Vref3)になったと判断すると、演算処理のために発生する演算遅延時間を経て時刻Tcにおいて、第3制御信号SC3を生成する。そして、スロープロテクション部17Cは、第3制御信号SC3のステータスをSTOP(第3制御信号SC3により電力増幅器12−Xがオフ制御状態となる)とし、第3制御信号SC3を制御部11へ出力する(ステップS44)。
【0076】
このとき、異常が発生してから第3制御信号SC3を出力するまでの時間、すなわち、判定部175の演算遅延時間は、例えば、Tc−Ta=500μsであり、電力増幅器12−xの最小許容時間(例えば、100μs)に比べて大きい。
【0077】
制御部11は、第3制御信号SC3を受けると、オン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限値を0とすることで、等価的に、出力停止状態となることを利用したオフ制御信号Soffを電力増幅器12−xへ出力する(ステップS45)。
【0078】
電力増幅器12−xに対する制御では、図5に示すように、制御部11は、オフ制御信号を生成し、第1制御信号SC1に由来するオフ制御信号Soffの出力が終了した後も第3制御信号SC3に由来したオフ制御信号Soffを出力している。
この結果、電力増幅器12−xはオフ制御状態を継続している。
【0079】
続いて、スロープロテクション部17Cは、第3制御信号SC3の出力後、所定時間が経過して時刻Tdとなると、再起動信号SRSを生成し、出力する(ステップS46)。この再起動信号SRSは、第3制御信号SC3のステータスを、STOPからRUN(第3制御信号SC3により、音声信号の電圧振幅レベルに応じて、電力増幅器12−x(x:1〜n)がオン/オフ制御状態となる)とする。
ここで、所定の時間は、例えば、Td−Tc=600μsであり、判定部175の演算遅延時間である500μsより長い。
【0080】
制御部11は、再起動信号SRSが入力されると、第3制御信号SC3のステータスがRUNに変化し、音声信号の電圧振幅レベルに応じて、電力増幅器12−x(x:1〜n)がオン/オフ制御状態となるオン/オフ制御信号Son/Soffを出力する(ステップS47)。
【0081】
スロープロテクション部17Cは、第3制御信号SC3のステータスを、RUNからSTOPとする再起動信号SRSを、例えば5μsの所定のパルス幅の間が経過した後に制御部11へ出力する(ステップS48)とともに、再起動回数のカウント値をインクリメントならびに状態の判別を実施する(ステップS49)。
【0082】
ここで、状態の判別とは、スロープロテクション部17Cにおいて、ステップS47により出力状態となった状態における保護指標を算出し、保護指標が第3基準値Vref3以上(保護指標≧第3基準値Vref3)となっている異常状態が解消したか否かを判別することである。
【0083】
なお、所定のパルス幅の間(例えば、5μs)は、電力増幅器12−xの最小許容時間(例えば、100μs)に比べて小さいため、出力状態において、異常状態であっても電力増幅器が破損に至ることはない。
【0084】
ステップS48で生成された再起動信号SRSは、第3制御信号のステータスをRUNからSTOPへ変更させる。制御部11は、再起動信号SRSを受けると、オン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限値を0とすることで、等価的に、出力停止状態となることを利用したオフ制御信号Soffを電力増幅器12−xへ出力する(ステップS410)。
【0085】
電力増幅器12−xに対する制御では、図5に示すように、制御部11は、時刻Tdに、ステップS47の処理において、再起動信号SRSを受けると、音声信号の電圧振幅レベルに応じて、電力増幅器12−x(x:1〜n)がオン/オフ制御状態となるオン/オフ制御信号Son/Soffを出力する。その結果、電力増幅器12−xはオン制御状態となる。
【0086】
制御部11は、所定のパルス幅の間経過後の時刻Teに、ステップS48の処理において、再起動信号SRSを受けると、オン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限値を0とすることで、等価的に、出力停止状態となることを利用したオフ制御信号Soffを電力増幅器12−xへ出力する。その結果、電力増幅器12−xはオフ制御状態となる。
【0087】
ステップS49の判別において異常状態が回復しないと判別した場合、スロープロテクション部17Cは、時刻Teから所定時間が経過した時刻Tfにおいて、再度、再起動信号SRSを出力する(ステップS411)。この再起動信号SRSは、ステップS48の再起動信号SRSによりRUNからSTOPと変化したステータスを、STOPからRUNとする。
【0088】
なお、時刻Teから時刻Tfまでの時間は、例えば、600μsであり、判定部175の演算遅延時間である500μsより長いため、判別が終了する前に、再起動信号SRSが出力されることはない。
【0089】
制御部11は、再起動信号SRSが入力されると、第3制御信号SC3のステータスがRUNに変化し、音声信号の電圧振幅レベルに応じて、電力増幅器12−x(x:1〜n)がオン/オフ制御状態となるオン/オフ制御信号Son/Soffを出力する(ステップS412)。
【0090】
スロープロテクション部17Cは、第3制御信号SC3のステータスを、RUNからSTOPとする再起動信号SRSを、所定のパルス幅の間経過後の時刻Tgに制御部11へ出力する(ステップS413)とともに、再起動回数のカウント値をインクリメントならびに状態の判別を実施する(ステップS414)。
【0091】
ステップS413で生成された再起動信号SRSは、第3制御信号のステータスをRUNからSTOPへと変更させる。制御部11は、再起動信号SRSを受けると、オン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限値を0とすることで、等価的に、出力停止状態となることを利用したオフ制御信号Soffを電力増幅器12−xへ出力する(ステップS415)。
【0092】
図4及び図5で説明した動作においては、再起動処理を2回と設定していた。
したがって、再起動処理を2回実行した後も、保護指標≧第3基準値Vref3≒第1基準値Vref1の状態である異常状態が解消されない場合、スロープロテクション部17Cは、再起動処理を終了し、終了後においても、電力増幅器12−xはオフ制御状態を維持することとなる。
【0093】
ここで、第1実施形態の他の態様について説明する。
第1処理手順においては、再起動部176は、カウンタ部177のカウント値に対する複数のカウント閾値を記憶しており、上限回数に達する前までに、オン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限値を制御しながら、出力信号を出力するように制御することも可能である。
【0094】
以下、上記制御について説明する。
例えば、再起動処理について5回を上限回数と設定し、カウンタ部177のカウント閾値の一つが閾値値=1回である場合について説明する。
【0095】
まず、カウンタ部177のカウント値が1回未満である(カウント値<閾値1回)場合には、ステップS49に相当する処理において、オン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限値を正常状態の台数に設定する。
【0096】
一方、カウンタ部177のカウント値が1回以上である(カウント値≧閾値1回)場合には、ステップS412に相当する処理おいて、オン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限値を、例えば、初期状態の半分(n/2)とする。これにより、送信出力を自動的に減じる自動減力状態となり、異常状態の回復を目指すことができる。
【0097】
また、更に他の態様について説明する。
第2基準値Vref2≦保護指標<第3基準値Vref3≒第1基準値Vref1の状態を正常状態とすると、第2制御信号SC2で指示されたオン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限値が、正常状態のオン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限値の初期値(初期状態の値に相当する)となる。
【0098】
したがって、第1処理手順においては、ステップS49もしくはステップS412に相当する処理において、オン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限値を初期状態の台数に設定する場合には、第2の制御信号で指示されたオン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限値を使用することになる。
【0099】
次に、第3基準値Vref3≒第1基準値Vref1>保護指標≧第2基準値Vref2の場合、第2制御信号SC2のみが出力される状態での保護部17及び制御部11で行われる第2の処理手順(以下、第2処理手順という。)について説明する。
この第2処理手順における説明では、保護指標<第2基準値Vref2の状態を正常状態とし、第3基準値Vref3≒第1基準値Vref1>保護指標≧第2基準値Vref2の状態を異常状態とする。
【0100】
図6は、保護部17及び制御部11の第2処理手順を示すシーケンス図である。
図6は、第2処理手順における保護部17及び制御部11の処理手順を示すシーケンス図である。
まず、図6において、演算出力部17Aは、第2測定部16で測定された測定値を演算し、スロープロテクション部17Cへ出力する(ステップS61)。
スロープロテクション部17Cの演算部172では、演算出力部17Aが出力する演算値を基にSWR(定在波比:Standing Wave Ratio)、反射係数、反射電力等の評価値Vxを算出する(ステップS62)。ここで、保護指標とは、演算値Vmや評価値Vxのことを示しているため、評価値Vxを使用し、以下を説明する。
【0101】
演算部172では、評価値Vxは、あらかじめ記憶部173に格納された初期状態の評価値Vx0により、補正が行われ(ステップS63)、上限制御部174へ出力される。評価値Vxの補正が行われる。この結果、演算出力部17Aならびにスロープロテクション部17Cを構成するアナログ回路で構成された演算・平滑回路などの誤差やA/Dコンバータなどの回路における雑音の影響を除去することが可能となり、より正確な評価値を算出することが可能となる。
【0102】
そして、上限制御部174は、複数の第2基準値Vref2を予め記憶しており、演算部172から出力されたSWR、反射係数、又は反射電力のいずれかの値である評価値Vxが第2基準値Vref2を超えると、第2基準値Vref2に応じたオン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数を上限値として設定し、第2制御信号SC2として出力する(ステップS64)。
【0103】
制御部11は、第2制御信号SCが入力されると、オン制御する電力増幅器12−1〜12−nの台数の上限値を第2制御信号SC2で指示された値に設定することで、第2制御信号SC2に由来するオン/オフ制御信号Son/offを電力増幅器12−xへ出力する(ステップS65)。
【0104】
以上の説明のように、本実施形態では、演算出力部17Aは、アナログ回路を用いて構成され、測定値に基づいて演算値Vm(=CPi−SPi又はCPi−SPv)を出力する。そして、ファストプロテクション部17Bは、演算値Vm(=CPi−SPi又はCPi−SPv)が、予め設定された閾値である第1基準値Vref1以上となる場合、電力増幅器12−1〜12−nに対してオフ制御信号Soffを出力するための第1制御信号SC1を制御部11へ出力するようにしている。
【0105】
ここで、実施形態の効果について従来技術と比較して説明する。
本実施形態においては、フィルタ部の異常の影響を低減しつつ、合成部の異常(合成過電流の検出)を確実に行うことを可能とするために、合成増幅キャリア信号Sacの電流値CPiとフィルタリング合成信号Sfacの電流値SPiあるいは電圧値SPvとの差分ΔCSを用いることとしたので、合成部を構成している合成トランス内において短絡(ショート)が発生した場合には、検出感度が向上するとともに、フィルタ部の出力部が短絡(ショート)した場合には、影響を受けて異常が誤検出されるのを抑制できる。
【0106】
上記実施形態の説明においては、制御部11は、図3に示す構成を採る場合を例に説明したが、これに限られるものではない。
図8は、実施形態の変形例の説明図である。
図8において、図3と同様の部分には同一の符号を付すものとする。
本変形例において、制御部11Aは、大別すると、図8に示すように、電力制御部111、信号制御部112、割込部114、キャリア信号入力端子T21、音声信号入力端子T22、第1制御信号入力端子T24及び第2制御信号入力端子T25を備えている。
【0107】
割込部114は、第2制御信号入力端子T25に第2制御信号SC2が入力されると、入力された第2制御信号SC2に対応する並列してオン制御状態とすることが可能な電力増幅器の上限値(保護減力状態における上限値)を電力制御部111へ通知する。
【0108】
また、割込部114は、第2制御信号入力端子T25に第3制御信号SC3あるいは再起動信号SRSが入力されると、入力された第3制御信号SC3のステータスに応じて、並列してオン制御状態とすることが可能な電力増幅器の台数の上限値を、電力制御部111へ通知する。
【0109】
したがって、電力制御部111へ通知される、並列してオン制御状態とすることが可能な電力増幅器の台数の上限値は、(第2制御信号SC2で規定される)保護減力状態における上限値、初期状態の設定値、自動減力状態における上限値あるいは0台のうちのいずれかとなる。
【0110】
さらに、割込部114は、第1制御信号SC1が第1制御信号入力端子T24に入力されると、並列してオン制御する電力増幅器の台数の上限値を0台として、電力制御部111へ通知する。
【0111】
電力制御部111は、割込部114から指示された上限値を受け取り、音声信号Ssの電圧振幅レベルに応じ、通知された上限値以内で、電力増幅器12−1〜12−nのいずれをオン制御するかを算出する。電力制御部111は、電力増幅器12−1〜12−nのいずれをオン/オフ制御するかの情報を信号制御部112へ出力する。
【0112】
電力制御部111においては、第1制御信号SC1が指示するオン制御する電力増幅器の台数の上限値(0台)が優先される。これにより、制御部11は、ファストプロテクション部17Bからの第1制御信号SC1に迅速に対応することが可能となる。
すなわち、制御部11は、電力増幅器の最小許容時間(例えば、100μs)よりも短い期間で電力増幅器の保護動作を実行することが可能となり、電力増幅器の破壊を防ぐことが可能となる。
【0113】
また、第1実施形態では、再起動部176が、図5に示したように、所定のパルス幅(図5では、5μs)を有する再起動信号SRSを生成する場合を例に説明した。
しかしながら、例えば、再起動部176は、再起動信号SRSを出力するとともに、ファストプロテクション部17Bの制御出力部171に対し第1制御信号SC1のステータスを変更する処理を実施するように指示することも可能である。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0115】
例えば、以上の説明においては、フィルタ部15として90度位相型のバンドパスフィルタを用いることとしていたが、これに限られず、様々なフィルタを用いることが可能である。この場合においても、第1測定部14が測定した合成増幅キャリア信号Sacの電圧値CPvあるいは電流値CPiのうち少なくともいずれか一方及び第2測定部16が測定したフィルタリング合成信号Sfacの電圧値SPvあるいは電流値SPiのうちのうち少なくともいずれか一方を組み合わせて演算値Vmを算出するようにし、合成部13の異常検出にフィルタ部の異常の影響ができないように演算値Vmの演算方法を選択するようにすればよい。
【符号の説明】
【0116】
10 ディジタル振幅変調装置
11 制御部
11A 制御部
12−1〜12−n 電力増幅器
12 電力増幅部
13 合成部
14 第1測定部
15 フィルタ部
16 第2測定部
17 保護部
17A 演算出力部
17B ファストプロテクション部
17C スロープロテクション部
100 ディジタル振幅変調装置
101 キャリア信号入力端子
111 電力制御部
112 信号制御部
113、114 割込部
171 制御出力部
172 演算部
173 記憶部
174 上限制御部
175 判定部
176 再起動部
177 カウンタ部
CPi (合成増幅キャリア信号の)電流値
CPv (合成増幅キャリア信号の)電圧値
SC1 第1制御信号
SC2 第2制御信号
SC3 第3制御信号
Sm1 測定信号
Sm2 測定信号
SPi (フィルタリング合成信号の)電流値
SPv (フィルタリング合成信号の)電圧値
SRS 再起動信号
SS 音声信号
Sac 合成増幅キャリア信号(合成出力信号)
Sfac フィルタリング合成信号(振幅変調信号)
Vm 演算値
ΔCP 差分
ΔCS 差分
図1
図2
図3
図4
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図8