(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記チューブの前記吐出口に対応する位置に配置され、前記チューブ内の前記灌漑用液体を前記吐出口から前記チューブ外に吐出させるためのエミッタをさらに有する、請求項1に記載の点滴灌漑システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る点滴灌漑システムについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
[実施の形態1]
実施の形態1では、チューブ内の灌漑用液体を定量的にチューブ外に吐出させるためのエミッタを有さない点滴灌漑システムについて説明する。
【0014】
(点滴灌漑システムの構成)
図1は、実施の形態1に係る点滴灌漑システム100の構成を示す模式図である。なお、
図1の矢印は、灌漑用液体の流れる方向を示している。
図1に示されるように、点滴灌漑システム100は、貯蔵タンク110、チューブ120、ポンプ130、フィルタ部140、バルブ150、温度センサ160および制御部170を有する。本実施の形態では、バルブ150および制御部170により、バルブ150より下流側に配置されているチューブ120内の灌漑用液体の流量を調整するための流量調整部が構成されている。
【0015】
貯蔵タンク110は、灌漑用液体の供給源である。灌漑用液体の例には、水、液体肥料、農薬およびこれらの混合液が含まれる。灌漑用液体の温度が高いほど、灌漑用液体の粘度は低くなって、灌漑用液体はチューブ120内を流れやすくなる傾向にある。
【0016】
チューブ120は、貯蔵タンク110からの灌漑用液体を流通させるための管であり、灌漑用液体が流れる流路を構成している。チューブ120は、送液用の5つの第1チューブ121a〜eおよび4つの点滴灌漑用の第2チューブ122を有する。
【0017】
第1チューブ121a〜eには、灌漑用液体を外部に吐出するための吐出口123が形成されていない。第1チューブ121a〜eは、流路の上流部を構成しており、貯蔵タンク110および第2チューブ122を接続している。本実施の形態では、第1チューブ121aの上流端は、貯蔵タンク110に接続されている。
【0018】
第1チューブ121の数は、特に限定されず、必要に応じて適宜設定されうる。本実施の形態では、第1チューブ121の数は、5つである。第1チューブ121aは、貯蔵タンク110およびポンプ130の間に配置されている。第1チューブ121bは、ポンプ130およびフィルタ部140の間に配置されている。第1チューブ121cは、フィルタ部140およびバルブ150の間に配置されている。第1チューブ121dは、バルブ150および第1チューブ121eの間に配置されている。第1チューブ121eは、第1チューブ121dおよび第2チューブ122の間に配置されている。4つの第2チューブ122は、第1チューブ121eの軸方向において、所定の間隔で接続されている。第1チューブ121a〜eの材料は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンである。
【0019】
第2チューブ122には灌漑用液体を外部に吐出するための吐出口123が形成されている。第2チューブ122は、流路の下流部を構成しており、土壌上または土壌中に配置される。第2チューブ122の数は、特に限定されず、土壌の面積に応じて適宜設定されうる。本実施の形態では、第2チューブ122の数は、4つである。第2チューブ122の材料は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンである。
【0020】
第1チューブ121a〜eおよび第2チューブ122の材料は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。本実施の形態では、第1チューブ121a〜eおよび第2チューブ122の材料は、互いに同じである。
【0021】
前述のとおり、第2チューブ122は、灌漑用液体を吐出するための吐出口123を有する。吐出口123の数および位置は、灌漑用液体が供給される土壌の面積に応じて適宜調整されうる。本実施の形態では、吐出口123の数は、1つの第2チューブ122当り3つである。吐出口123の形状および大きさは、第2チューブ122内の灌漑用液体を第2チューブ122外に滴下することができればよい。吐出口123の例には、第2チューブ122の軸方向において、所定の間隔(例えば、200mm〜500mm)で形成された貫通孔が含まれる。当該貫通孔の直径は、灌漑用液体を吐出することができれば特に限定されず、例えば、1.5mmである。また、異物によって当該貫通孔が目詰まりを生じるのを抑制する観点から、不織布が、貫通孔上に配置されていてもよいし、カバーが、灌漑用液体を流通させうる隙間を挟んで貫通孔上に配置されていてもよい。
【0022】
吐出口123の他の例には、第2チューブ122の全体に形成された微細孔が含まれる。このとき、灌漑用液体は、第2チューブ122の表面から染み出すように吐出される。当該微細孔の直径は、灌漑用液体を吐出することができれば特に限定されず、例えば、60μmである。
【0023】
ポンプ130は、貯蔵タンク110からチューブ120内に灌漑用液体を供給する。ポンプ130は、貯蔵タンク110より下流に配置されており、第1チューブ121aを介して貯蔵タンク110に接続されている。ポンプ130は、灌漑用液体を貯蔵タンク110から吸引するとともに、ポンプ130の下流側に灌漑用液体を送り出すことができればよく、公知のポンプから適宜選択されうる。ポンプ130の種類の例には、ギヤポンプ、ねじポンプ、ベーンポンプ、ダイヤフラムポンプ、ピストンポンプおよびプランジャーポンプが含まれる。
【0024】
フィルタ部140は、貯蔵タンク110からの灌漑用液体中に含まれる異物を除去する。フィルタ部140は、濾材および固定部を有する。濾材は、灌漑用液体中の異物を除去するための部材である。濾材の種類は、フィルタ部140により異物を除去できれば特に限定されず、例えば、樹脂製の不織布である。固定部は、濾材を流路内において保持しつつ、灌漑用液体を濾材に通過させるための部材である。異物の例には、泥や砂、ゴミなどの浮遊物および微生物が含まれる。フィルタ部140により異物を除去することによって、浮遊物の蓄積や、微生物の繁殖などによるチューブ120内で生じる目詰まりを抑制することができる。フィルタ部140は、点滴灌漑システム100の各構成要素への異物の影響を除去する観点から、各構成要素の上流側に配置されていることが好ましい。本実施の形態では、フィルタ部140は、ポンプ130およびバルブ150の間の流路に配置されている。
【0025】
バルブ150は、バルブ150より下流側に配置されているチューブ120内の灌漑用液体の流量を調整する。バルブ150は、流路を開閉することにより、チューブ120内の灌漑用液体の流量を調整する。バルブ150は、ポンプ130およびフィルタ部140より下流に配置されており、第1チューブ121cを介してフィルタ部140に接続されている。バルブ150の種類は、バルブ150により灌漑用液体の流量を調整することができれば特に限定されず、公知のバルブから適宜選択されうる。バルブ150の種類の例には、ゲートバルブ、グローブバルブ、ボールバルブ、バタフライバルブ、ニードルバルブ、ストップバルブ、チェックバルブ、スライドバルブ、ピストンバルブおよびロータリーバルブが含まれる。
【0026】
温度センサ160は、吐出口123から吐出される灌漑用液体の温度を測定する。温度センサ160の位置は、温度センサ160が吐出口123から吐出される灌漑用液体の温度を測定することができれば特に限定されない。したがって、温度センサ160は、吐出口123に配置される必要は無く、吐出口123から吐出される時の灌漑用液体の温度と同程度の温度の灌漑用液体が存在する箇所に配置されてもよい。たとえば、温度センサ160は、吐出口123から吐出される直前の灌漑用液体の温度を測定してもよいし、吐出口123から吐出された直後の灌漑用液体の温度を測定してもよい。前者の場合、温度センサ160は、吐出口123の近傍において第2チューブ122に形成されている貫通孔から挿入されていてもよい。後者の場合、温度センサ160は、吐出口123の開口部の近傍において、第2チューブ122外に配置されていてもよい。詳細については後述するが、流路の上流側から下流側に亘って配置されている各吐出口123からの灌漑用液体の吐出量を適切に調整する観点から、温度センサ160は、流路の最も下流側の吐出口123から吐出される灌漑用液体の温度を測定することが好ましい。
【0027】
温度センサ160は、測定結果を無線または有線によって、制御部170に送信する。温度センサ160の数は、特に限定されない。温度センサ160の数は、例えば、第2チューブ122の数と同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施の形態では、温度センサ160の数は、1つである。温度センサ160の種類は、灌漑用液体の温度を測定することができれば特に限定されない。温度センサ160の種類の例には、熱電対およびサーミスタ熱電対が含まれる。
【0028】
制御部170は、ポンプ130の駆動を制御するとともに、バルブ150の開閉(本実施の形態では、バルブ150の開放時間)を制御する。本実施の形態では、制御部170は、温度センサ160の測定結果に基づいて、バルブ150の開放時間を調整することで、吐出口123からの灌漑用液体の吐出量(流量)がある程度一定となるように、チューブ120内の灌漑用液体の流量を調整する。制御部170は、制御装置、記憶装置、入力装置および出力装置を含む公知のコンピュータやマイコンなどによって構成される。
【0029】
(点滴灌漑システムの動作)
次いで、点滴灌漑システム100の動作について説明する。まず、制御部170がポンプ130を駆動させた際の、灌漑用液体の流れについて説明する。ポンプ130が駆動されると、貯蔵タンク110内の灌漑用液体は、第1チューブ121a、121bを通ってフィルタ部140に到達する。灌漑用液体がフィルタ部140を通過するとき、灌漑用液体に含まれる異物が除去される。フィルタ部140を通過した灌漑用液体は、第1チューブ121cを通ってバルブ150に到達する。バルブ150を通過した灌漑用液体は、第1チューブ121d、121eおよび第2チューブ122を通って吐出口123に到達する。吐出口123に到達した灌漑用液体は、吐出口123から第2チューブ122外に吐出され、土壌に供給される。
【0030】
上記のように点滴灌漑システム100を稼働させている間、制御部170は、吐出口123から吐出される灌漑用液体の温度を測定する。具体的には、制御部170は、温度センサ160に接触した灌漑用液体の温度に関するデータを取得する。そして、制御部170は、温度センサ160により測定された灌漑用液体の測定結果に基づいて、チューブ120内の灌漑用液体の流量を調整する。具体的には、制御部170は、バルブ150の開放時間を調整することにより、チューブ120内の灌漑用液体の流量を調整する。
【0031】
ここで、温度センサ160の測定結果に基づいて、チューブ120内の灌漑用液体の流量を調整する方法について説明する。一般的に、バルブ150の開放時間を長くすることにより、バルブ150より下流側のチューブ120に供給される灌漑用液体の流量を増加させることができる。そして、灌漑用液体の温度が高い場合と、灌漑用液体の温度が低い場合とにおいて、バルブ150を同じ時間開放すると仮定する。灌漑用液体は、温度の上昇に応じて粘度が低下するため、灌漑用液体の温度が高い場合は、バルブ150を通過し、吐出口123から吐出される灌漑用液体の吐出量は増加する。したがって、灌漑用液体の温度が高い場合、制御部170は、灌漑用液体の温度に起因する灌漑用液体の吐出量の増加を考慮して、チューブ120内の灌漑用液体の流量が減少するようにバルブ150の開放時間を短くする。これにより、チューブ120外に吐出される灌漑用液体の吐出量を、一定となるように調整することができる。一方、灌漑用液体は、温度の低下に応じて粘度が増大するため、灌漑用液体の温度が低い場合は、バルブ150を通過し、吐出口123から吐出される灌漑用液体の吐出量は減少する。したがって、灌漑用液体の温度が低い場合、制御部170は、灌漑用液体の温度に起因する灌漑用液体の吐出量の減少を考慮して、チューブ120内の灌漑用液体の流量が増加するようにバルブ150の開放時間を長くする。
【0032】
また、点滴灌漑システム100では、流路(チューブ120)の長さが長いほど、上流側を流れる灌漑用液体の温度と、下流側を流れる灌漑用液体の温度との温度差が大きくなる。したがって、流路の上流側から下流側に亘って配置されている各吐出口123からの灌漑用液体の吐出量を適切に調整する観点からは、温度センサ160は、前述のとおり流路の最も下流側の吐出口123から吐出される灌漑用液体の温度を測定することが好ましい。これにより、温度環境の変化に起因する灌漑用液体の吐出量の変化量が最も多い下流部においても、吐出口123からの灌漑用液体の吐出量を適切に調整することができる。結果として、流路の上流側から下流側に亘って、各吐出口123からの灌漑用液体の吐出量を一定にすることができる。
【0033】
以上のとおり、本実施の形態に係る点滴灌漑システム100は、チューブ120内の灌漑用液体の流量を調整して、吐出口123から吐出される灌漑用液体の吐出量を一定にすることができる。
【0034】
(効果)
本実施の形態に係る点滴灌漑システム100は、灌漑用液体の温度に応じてチューブ120内の灌漑用液体の流量を調整することによって、灌漑用液体の吐出量を一定となるように調整することができる。したがって、点滴灌漑システム100は、周囲の環境により灌漑用液体の温度が変化したとしても、灌漑用液体を定量的に吐出することができる。従来の点滴灌漑システムでは、土壌の水分量に応じて灌漑用液体の吐出量を調整しているのに対して、本実施の形態に係る点滴灌漑システム100では、灌漑用液体の温度に応じて灌漑用液体の吐出量を調整している。一般的に、土壌の水分量を測定するための測定機器と比較して、温度センサ160は安価であるため、本実施の形態によれば、点滴灌漑システム100の低コスト化を実現することができる。
【0035】
[実施の形態2]
実施の形態2では、チューブ内の灌漑用液体を定量的にチューブ外に吐出させるためのエミッタを有する点滴灌漑システムについて説明する。本実施の形態に係る点滴灌漑システムで使用されるエミッタは、チューブ内の灌漑用液体の圧力によるフィルムの変形に応じて、流路内の灌漑用液体の流量を減少させる流量減少部(後述の実施の形態3参照)を有さない。
【0036】
実施の形態2に係る点滴灌漑システム200は、エミッタ280を有する点のみが実施の形態1に係る点滴灌漑システム100と異なる。そこで、実施の形態1と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0037】
(点滴灌漑用チューブおよびエミッタの構成)
図2は、実施の形態2に係る点滴灌漑システム200の構成を示す模式図である。
図3は、実施の形態2に係る点滴灌漑システム200の部分拡大断面図である。
図3は、
図2において破線で示される領域の部分拡大断面図であり、チューブ120の軸方向に沿う垂直断面図である。
【0038】
図2および
図3に示されるように、点滴灌漑システム200は、貯蔵タンク110、チューブ120、ポンプ130、フィルタ部140、バルブ150、温度センサ160、制御部170およびエミッタ280を有する。
【0039】
エミッタ280は、チューブ120内の灌漑用液体を吐出口123から定量的にチューブ120外に吐出させる。エミッタ280は、チューブ120の吐出口123に対応する位置に配置されている。本実施の形態では、エミッタ280は、吐出口123を覆うように第2チューブ122の内壁面に接合されている。
【0040】
エミッタ280の形状は、第2チューブ122の内壁面に密着して、吐出口123を覆うことができれば特に限定されない。本実施の形態では、第2チューブ122の軸方向に垂直なエミッタ280の断面における、第2チューブ122の内壁面に接合する裏面の形状は、第2チューブ122の内壁面に沿うように、第2チューブ122の内壁面に向かって凸の略円弧形状である。エミッタ280の平面視形状は、四隅がR面取りされた略矩形状である。エミッタ280の大きさは、特に限定されない。本実施の形態では、エミッタ280の長辺方向の長さは25mmであり、短辺方向の長さは8mmであり、高さは2.5mmである。
【0041】
エミッタ280は、互いに裏表の関係にある第1の面2801および第2の面2802を有する。エミッタ280には、第1の凹部2803、貫通孔2804、第2の凹部2805が形成されている。第1の凹部2803は、第1の面2801に形成されている。第2の凹部2805は、第2の面2802に形成されている。第1の凹部2803および第2の凹部2805は、貫通孔2804を介して互いに連通している。本実施の形態では、エミッタ280の第2の面2802と、第2チューブ122の内壁面とが互いに接合されている。
【0042】
エミッタ280は、取水部281、接続流路282、減圧流路283および吐出部284を有する。
【0043】
取水部281は、灌漑用液体をエミッタ280内に取り入れる。本実施の形態では、取水部281は、第1の凹部2803と、第1の凹部2803の底面に形成されている貫通孔2804とによって構成されている。
【0044】
接続流路282は、取水部281および減圧流路283を接続する。接続流路282は、取水部281および吐出部284を繋ぐ流路内に配置されている。接続流路282の上流端は、取水部281に接続されており、接続流路282の下流端は、減圧流路283の上流端に接続されている。接続流路282は、第2の凹部2805の開口部が第2チューブ122によって閉塞されることで形成される。
【0045】
減圧流路283は、取水部281から取り入れられた灌漑用液体の流量を減少させつつ、吐出部284に導く。減圧流路283も、取水部281および吐出部284を繋ぐ流路内に配置されている。減圧流路283の上流端は、接続流路282の下流端に接続されており、減圧流路283の下流端は、吐出部284に接続されている。減圧流路283も、第2の凹部2805の開口部が第2チューブ122によって閉塞されることで形成される。
【0046】
減圧流路283の平面視形状は、ジグザグ形状である。減圧流路283には、互いに対向する一対の内側面から突出する略三角柱形状の凸部2831が、灌漑用液体の流れ方向に沿って交互に配置されている(
図3では、一方の内側面から突出する凸部2831のみ示されている)。
【0047】
吐出部284は、灌漑用液体をエミッタ280外に吐出する。吐出部284は、エミッタ280の第2の面2802において、吐出口123に対向するように配置されている。これにより、吐出部284に到達した灌漑用液体は、第2チューブ122の吐出口123から第2チューブ122外に吐出される。吐出部284は、エミッタ280の第2の面2802に形成されている第2の凹部2805により構成されている。
【0048】
エミッタ280は、可撓性を有する材料で形成されていてもよいし、可撓性を有しない材料で成形されていてもよい。エミッタ280の材料の例には、樹脂およびゴムが含まれる。当該樹脂の例には、ポリエチレンおよびシリコーンが含まれる。エミッタ280の可撓性は、弾性を有する樹脂材料の使用によって調整されうる。エミッタ280の可撓性の調整方法の例には、弾性を有する樹脂の選択や、硬質の樹脂材料に対する弾性を有する樹脂材料の混合比の調整などが含まれる。エミッタ280は、例えば、射出成形によって製造されうる。
【0049】
(点滴灌漑システムの動作)
次いで、点滴灌漑システム200の動作について説明する。灌漑用液体が貯蔵タンク110から第2チューブ122に到達するまでの過程は、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。第2チューブ122内のエミッタ280に到達した灌漑用液体は、取水部281からエミッタ280内に取り込まれる。取水部281から取り込まれた灌漑用液体は、接続流路282を通って減圧流路283に流れ込む。灌漑用液体は、減圧流路283で減圧されつつ、吐出部284に流れ込む。最後に、吐出部284に流れ込んだ灌漑用液体は、第2チューブ122の吐出口123から第2チューブ122外に吐出される。
【0050】
本実施の形態でも、制御部170は、灌漑用液体の温度が高いほど灌漑用液体の流量が減少するように、また灌漑用液体の温度が低いほど灌漑用液体の流量が増加するように、バルブ150の開放時間を調整して、チューブ120内の灌漑用液体の流量を調整する。
【0051】
以上のとおり、本実施の形態に係る点滴灌漑システム200も、チューブ120内の灌漑用液体の流量を調整して、吐出口123から吐出される灌漑用液体の吐出量を一定にすることができる。
【0052】
(効果)
本実施の形態に係る点滴灌漑システム200は、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0053】
なお、実施の形態2では、チューブ120の内壁面に接合されるエミッタ280を有する点滴灌漑システム200について説明したが、本発明に係る点滴灌漑システムはこの態様に限定されない。たとえば、エミッタは、第2チューブ122の外側から吐出口123に配置されるエミッタ(例えば米国特許第4718608号明細書を参照)であってもよい。
【0054】
[実施の形態3]
実施の形態3でも、チューブ内の灌漑用液体を定量的にチューブ外に吐出させるためのエミッタを有する点滴灌漑システムについて説明する。本実施の形態に係る点滴灌漑システムで使用されるエミッタは、チューブ内の灌漑用液体の圧力によるフィルム(ダイヤフラム)の変形に応じて、流路内の灌漑用液体の流量を減少させる流量減少部を有する。
【0055】
実施の形態3に係る点滴灌漑システム300は、エミッタ380を有する点のみが実施の形態1に係る点滴灌漑システム100と異なる。そこで、実施の形態1と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0056】
(点滴灌漑用チューブおよびエミッタの構成)
図2は、実施の形態3に係る点滴灌漑システム300の構成を示す模式図である。
図4は、実施の形態3に係る点滴灌漑システム300の部分拡大断面図である。
図4は、
図2において破線で示される領域の部分拡大断面図であり、チューブ120の軸方向に沿う垂直断面図である。
【0057】
図2および
図4に示されるように、点滴灌漑システム300は、貯蔵タンク110、チューブ120、ポンプ130、フィルタ部140、バルブ150、温度センサ160、制御部170およびエミッタ380を有する。
【0058】
エミッタ380は、チューブ120内の灌漑用液体を吐出口123から定量的にチューブ120外に吐出させる。エミッタ380は、チューブ120の吐出口123に対応する位置に配置されている。本実施の形態では、エミッタ380は、吐出口123を覆うように第2チューブ122の内壁面に接合されている。エミッタ380の形状および大きさの例は、実施の形態2のエミッタ280と同様である。
【0059】
図4に示されるように、エミッタ380は、エミッタ本体390およびフィルム395を有する。エミッタ本体390は、互いに裏表の関係にある第1の面3901および第2の面3902を有する。エミッタ本体390には、第1の凹部3903、第1の貫通孔3904、第2の凹部3905、第2の貫通孔3906、第3の凹部3907、第3の貫通孔3908および第4の凹部3909が形成されている。第1の凹部3903および第3の凹部3907は、第1の面3901に形成されている。第2の凹部3905および第4の凹部3909は、第2の面3902に形成されている。フィルム395は、エミッタ本体390の第1の面3901上に配置されている。
【0060】
第1の凹部3903および第2の凹部3905は、第1の貫通孔3904を介して互いに連通している。第2の凹部3905および第3の凹部3907は、第2の貫通孔3906を介して互いに連通している。第3の凹部3907および第4の凹部3909は、第3の貫通孔3908を介して互いに連通している。本実施の形態では、エミッタ本体390の第2の面3902と、第2チューブ122の内壁面とが互いに接合されている。
【0061】
エミッタ本体390は、取水部391、接続流路392、流量減少部393および吐出部394を有する。
【0062】
取水部391は、灌漑用液体をエミッタ本体390内に取り入れる。本実施の形態では、取水部391は、第1の凹部3903と、第1の凹部3903の底面に形成されている第1の貫通孔3904とによって構成されている。
【0063】
接続流路392は、取水部391および流量減少部393を接続する。接続流路392は、取水部391および吐出部394を繋ぐ流路内に配置されている。接続流路392の上流端は、取水部391に接続されており、接続流路392の下流端は、流量減少部393に接続されている。接続流路392は、第3の凹部3907の開口部が第2チューブ122によって閉塞されることで形成される。
【0064】
流量減少部393は、チューブ120内の灌漑用液体の圧力に応じて流路内の灌漑用液体の流量を調整する。流量減少部393の構成は、チューブ120内の灌漑用液体の圧力によるフィルム395の変形に応じて、流路内の灌漑用液体の流量を減少させることができれば特に限定されない。本実施の形態では、流量減少部393は、第2の貫通孔3906、第3の凹部3907、弁座部3931、連通溝3932、第3の貫通孔3908およびフィルム395の一部であるダイヤフラム3951によって構成されている。
【0065】
第3の貫通孔3908は、第3の凹部3907の底面の中央部分に配置されており、吐出部394に連通している。弁座部3931は、第3の凹部3907の底面において、第3の貫通孔3908を取り囲むように、ダイヤフラム3951に面して非接触に配置されている。弁座部3931は、チューブ120を流れる灌漑用液体の圧力が設定値以上の場合に、ダイヤフラム3951が密着できるように形成されている。
【0066】
弁座部3931のダイヤフラム3951が密着可能な面の一部には、第3の凹部3907の内部と第3の貫通孔3908を連通する連通溝3932が形成されている。弁座部3931にダイヤフラム3951が接触することによって、第2の凹部3907から吐出部394に流れ込む灌漑用液体の流量を減少させる。弁座部3931の形状は、特に限定されず、例えば、円筒形状の凸部である。
【0067】
ダイヤフラム3951は、フィルム395の一部である。ダイヤフラム3951は、第3の凹部3907の内部と第2チューブ122の内部との連通を遮断するように、かつ第3の凹部3907の開口部を塞ぐように配置されている。ダイヤフラム3951は、可撓性を有し、第2チューブ122内の灌漑用液体の圧力に応じて、弁座部3931に接触するように変形する。たとえば、ダイヤフラム3951は、第2チューブ122内を流れる灌漑用液体の圧力が設定値を超えた場合に第3の凹部3907側に歪む。具体的には、ダイヤフラム3951は、灌漑用液体の圧力が高くなるにつれて、弁座部3931に向かって変形し、やがて弁座部3931に接触する。ダイヤフラム3951が弁座部3931に密着している場合であっても、ダイヤフラム3951は、第2の貫通孔3906および第3の貫通孔3908を連通する連通溝3932を完全には閉塞しないため、第2の貫通孔3906を介して接続流路392から送られてきた灌漑用液体は、連通溝3932および第3の貫通孔3908を通って、吐出部394に送られる。
【0068】
吐出部394は、灌漑用液体をエミッタ380外に吐出する。吐出部394は、エミッタ380の第2の面3902において、吐出口123に対向するように配置されている。これにより、吐出部394に到達した灌漑用液体は、第2チューブ122の吐出口123から第2チューブ122外に吐出される。吐出部394は、エミッタ380の第2の面3902に形成されている第4の凹部3909により構成されている。
【0069】
エミッタ本体390の材料の例は、実施の形態2のエミッタ280の材料と同様であるため、その説明を省略する。
【0070】
フィルム395(ダイヤフラム3951)は、灌漑用液体の圧力により変形する。このとき、フィルム395は、フィルム395の温度が高温なほど、変形しやすい。フィルム395は、第3の凹部3907の開口部を塞ぐようにエミッタ本体390の第1の面3901上に配置されている。
【0071】
フィルム395の形状および大きさは、エミッタ本体390や、エミッタ本体390に形成されている第3の凹部3907の形状および大きさに応じて適宜設定されうる。
【0072】
フィルム395は、可撓性を有する材料で形成されている。フィルム395の材料は、所望の可撓性に応じて適宜選択されうる。フィルム395の材料の例には、樹脂およびゴムが含まれる。当該樹脂の例には、ポリエチレンおよびシリコーンが含まれる。フィルム395の可撓性も、弾性を有する樹脂材料の使用によって調整されうる。フィルム395の可撓性の調整方法の例は、実施の形態2のエミッタ280の可撓性の調整方法と同じである。また、フィルム395の厚みは、所望の可撓性に応じて適宜設定されうる。フィルム395は、例えば、射出成形によって製造されうる。
【0073】
エミッタ本体390およびフィルム395は、いずれも可撓性を有する一種類の材料で成形されていることが好ましい。本実施の形態では、エミッタ本体390と、ダイヤフラム3951を含むフィルム395とは、可撓性を有する一種類の材料で別体として形成されている。このとき、フィルム395は、ダイヤフラム3951ではエミッタ本体390に接合されておらず、ダイヤフラム3951より外側の部分でエミッタ本体390に接合されている。エミッタ本体390とフィルム395との接合方法は、特に限定されない。エミッタ本体390とフィルム395との接合方法の例には、フィルム395を構成する樹脂材料の溶着や、接着剤による接着などが含まれる。
【0074】
(点滴灌漑システムの動作)
次いで、点滴灌漑システム300の動作について説明する。灌漑用液体が貯蔵タンク110から第2チューブ122に到達するまでの過程は、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。第2チューブ122内のエミッタ380に到達した灌漑用液体は、取水部391からエミッタ380(エミッタ本体390)内に取り込まれる。取水部391から取り込まれた灌漑用液体は、接続流路392を通って流量減少部393に到達する。
【0075】
ここで、流量減少部393の動作について説明する。
図5A、Bは、流量減少部393の動作を説明するためのエミッタ380の部分拡大断面図である。
図5Aは、第2チューブ122に灌漑用液体が送液されていない場合における断面図であり、
図5Bは、第2チューブ122内の灌漑用液体の圧力が所定の設定値以上である場合における断面図である。
【0076】
チューブ120内に灌漑用液体が送液される前は、フィルム395に灌漑用液体の圧力が加わらないため、ダイヤフラム3951は、変形していない(
図5A参照)。
【0077】
チューブ120内に灌漑用液体を送液し始めると、ダイヤフラム3951が変形し始める。灌漑用液体の圧力が所定の設定値未満である状態では、ダイヤフラム3951が弁座部3931に密着していないため、取水部391から取り入れられた灌漑用液体は、流路(接続流路392、流量減少部393)を通って吐出部394に到達し、第2チューブ122の吐出口123から第2チューブ122外に吐出される。
【0078】
第2チューブ122内における灌漑用液体の圧力がより高くなると、ダイヤフラム3951がさらに変形する。ダイヤフラム3951が弁座部3931に近接するため、流路を通って吐出される灌漑用液体の液量は減少する。そして、第2チューブ122内における灌漑用液体の圧力がさらに高くなり、所定の設定値以上になると、ダイヤフラム3951が弁座部3931に接触して、流路を閉塞する(
図5B参照)。この状態であっても、第2の貫通孔3906および第3の貫通孔3908は、連通溝3932を介して連通しているため、取水部391から取り入れられた灌漑用液体は、連通溝3932を通って、吐出部394に到達し、第2チューブ122の吐出口123から第2チューブ122外に吐出される。
【0079】
本実施の形態に係る点滴灌漑システム300では、制御部170によるチューブ120内の流量の調整方法が実施の形態1と異なる。そこで、本実施の形態に係る点滴灌漑システム300におけるチューブ120内の流量の調整方法について説明する。
【0080】
本実施の形態では、エミッタ380は、チューブ120内の灌漑用液体の圧力によるフィルム395の変形に応じて、流路内の灌漑用液体の流量を減少させる流量減少部393を有する。前述のとおり、流量減少部393を構成するフィルム395は、フィルム395の温度が高くなるほど歪みやすくなる。また、高温状態での使用によりフィルム395が変形すると、変形後の形状が長期(例えば、1日)に亘って保持される。このため、高温状態において変形したフィルム395は、一時的に変形前の元の形状に戻れなくなってしまい、ダイヤフラム3951および弁座部3931の間隔が狭い状態で維持される。この結果として、流量減少部393から吐出部394に流れ込む灌漑用液体の流量は減少し、第2チューブ122から吐出される灌漑用液体の吐出量が不足してしまうこととなる。
【0081】
灌漑用液体は、温度が高くなるほど粘度が低くなるため、チューブ120内を流れやすくなるものの、高温状態でのフィルム395の変形によって、全体として灌漑用液体の吐出量は減少してしまう。したがって、本実施の形態では、制御部170は、灌漑用液体の温度が高いほど灌漑用液体の流量が増加するように、また灌漑用液体の温度が低いほど灌漑用液体の流量が減少するように、バルブ150の開放時間を調整して、チューブ120内の灌漑用液体の流量を調整する。
【0082】
以上のとおり、本実施の形態に係る点滴灌漑システム300も、チューブ120内の灌漑用液体の流量を調整して、吐出口123から吐出される灌漑用液体の吐出量を一定にすることができる。
【0083】
(効果)
本実施の形態に係る点滴灌漑システム300も、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0084】
なお、実施の形態1〜3では、バルブ150の開放時間を調整することで、チューブ120内の灌漑用液体の流量を調整する点滴灌漑システム100、200、300について説明したが、チューブ120内の灌漑用液体の流量を調整する手段はこれに限定されない。たとえば、点滴灌漑システムは、ポンプ130の回転数を調整することでチューブ120内の流量を調整してもよいし、バルブ150の開口量を調整することでチューブ120内の流量を調整してもよい。
【0085】
また、実施の形態1〜3では、灌漑用液体の供給源が貯蔵タンク110である態様について説明したが、本発明に係る点滴灌漑システムはこの態様に限定されない。灌漑用液体の供給源の他の例には、川および池が含まれる。