特許第6704827号(P6704827)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704827
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】直線駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/24 20060101AFI20200525BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   F16H25/24 G
   F16H25/20 E
   F16H25/24 H
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-193159(P2016-193159)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-54063(P2018-54063A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】畑迫 裕之
(72)【発明者】
【氏名】春日 孝文
(72)【発明者】
【氏名】植木 貴久
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−159124(JP,A)
【文献】 特開2013−151952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/24
F16H 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって回転駆動されるリードスクリューと、このリードスクリューに螺合されたナットと、上記リードスクリューと平行に配置されたガイド軸と、このガイド軸に移動自在に設けられるとともに上記ナットの外周に係合して当該ナットの回転を規制する規制部と上記ナットの端面から上記ナットのスラスト力を受ける壁部が形成されたスライド板とを備えた直線駆動装置において、
上記ナットの端面に、上記壁部に線接触または点接触する突部を設けたことを特徴とする直線駆動装置。
【請求項2】
上記突部が設けられた上記端面は、作動停止状態において上記スライド板側からスラスト荷重が作用する端面であることを特徴とする請求項1に記載の直線駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードスクリューの回転によってスライダ板を直線移動させるための直線駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータの回転運動を直線運動に変換して、ガイド板等の移動体を直線方向に往復移動させる従来の直線駆動装置として、例えば図5図7に示すような、ステッピングモータ10によって回転駆動されるリードスクリュー11と、このリードスクリュー11に螺合されたナット12と、リードスクリュー11と平行に配置されたガイド軸13と、このガイド軸13に移動自在に設けられるとともに、リードスクリュー11およびナット12が挿通されるU字状の溝部15が形成されたスライド板14とを備えた直線駆動装置が知られている。
【0003】
ここで、ナット12は、外周面に平坦な切り欠き部12aが直径方向の対向位置に形成されており、これらの切り欠き部12aをスライド板14のU字状の溝部15の対向壁を形成する規制壁(規制部)16間に位置させて挿入されている。これにより、ナット12は回転が阻止された状態で溝部15内に配置されている。
【0004】
また、スライド板14内には、ナット12の両端面の外周部分と対向する位置に、U字状の壁部17が設けられている。
【0005】
この結果、上記直線駆動装置によれば、ステッピングモータ10によってリードスクリュー11を回転させると、規制壁16によって回転を阻止されたナット12がリードスクリュー11に沿って直線方向に移動し、そのスラスト力が壁部17からスライド板14に伝達されることによりスライド板14をガイド軸13に沿って直線移動させることができる。なお、この種の直線駆動装置の構成は、例えば下記特許文献1においても開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−151952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記構成からなる直線駆動装置においては、例えば、常時スライド板14側から図中矢印方向にスラスト荷重Fが作用している場合には、スライド板14の壁部17と当接しているナット12の端面12bに上記スラスト荷重Fが作用している。
【0008】
一方、リードスクリュー11は、製造過程において正確に直線状に加工することが困難であり、実際の製品においては僅かの撓みが生じている。この結果、ステッピングモータ10によってリードスクリュー11を回転させる際に、リードスクリュー11は上記撓みに起因して軸線と直交する方向に振れが生じ、このリードスクリュー11の振れがナット12の端面12bと壁部17との間の摩擦力によってスライド板14に伝達され、当該スライド板14がガイド軸13を中心に揺動することにより、スライド板14に連結されている部品に誤動作が生じてしまうという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、リードスクリューに振れが生じた場合に、これに起因するガイド板の揺動を防止あるいは大幅に抑制することができる直線駆動装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、モータによって回転駆動されるリードスクリューと、このリードスクリューに螺合されたナットと、上記リードスクリューと平行に配置されたガイド軸と、このガイド軸に移動自在に設けられるとともに上記ナットの外周に係合して当該ナットの回転を規制する規制部と上記ナットの端面から上記ナットのスラスト力を受ける壁部が形成されたスライド板とを備えた直線駆動装置において、上記ナットの端面に、上記壁部に線接触または点接触する突部を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記突部が設けられた上記端面は、作動停止状態において上記スライド板側からスラスト荷重が作用する端面であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1または2に記載の発明によれば、ナットからのスラスト力をスライド板の壁部を介して伝達する上記ナットの端面に、上記壁部に線接触または点接触する突部を設けているために、互いに当接する上記突起と壁部との間の摩擦力が小さくなり、この結果リードスクリューに振れが生じた場合にも、上記突起とスライド板の壁部との間に滑りが生じることにより、上記リードスクリューの振れに起因してスライド板が揺動することを防止あるいは大幅に抑制することができる。
【0013】
ちなみに、上記リードスクリューの振れは、モータの起動時に大きく生じる。このため、請求項2に記載の発明のように、作動停止状態においてスライド板側からスラスト荷重が作用している場合には、当該スライド板の壁部と密着する側のナットの端面のみに上記突起を設けることにより、確実に上記スライド板の揺動防止あるいは抑制効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態におけるナットを示す斜視図である。
図2図1のナットを装着した直線駆動装置を示す正面図である。
図3】本発明の他の実施形態におけるナットを示す斜視図である。
図4図3のナットを装着した直線駆動装置を示す正面図である。
図5】従来の直線駆動装置を示す側面図である。
図6図5のナットを示す斜視図である。
図7図5の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1および図2は、本発明の直線駆動装置の一実施形態を示すもので、他の構成部分については、図5に示したものと同様であるために、以下同一符号を用いてその説明および図示を省略する。
【0016】
この直線駆動装置が、図5図7に示した従来のものと相違する点は、ナットの形状にある。
すなわち、この直線駆動装置においは、作動停止状態において上記スライド板14側からスラスト荷重Fが作用するナット1の端面1bに、当該端面1bから円柱面状に突出する2つの突起2が一体に形成されている。
【0017】
これら突起2は、ナット1の切り欠き部1aをスライド板14の溝部15の規制壁(規制部)16に対向させて挿入した際に、稜線が当該規制壁16と直交するナット1の直径方向に位置するように配置されている。
【0018】
また、図3および図4は、本発明の他の実施形態を示すもので、この直線駆動装置においては、同様に、作動停止状態において上記スライド板14側からスラスト荷重Fが作用するナット3の端面3bに、当該端面3bから半球状に突出する3つの突起4が一体に形成されている。
【0019】
ここで、上記突起4は、溝部15の開口部側を除いて、周方向に等間隔をおいた3箇所、具体的には切り欠き部3aが形成されている部分の外周部中央と、これらの周方向の中間に位置する外周部の合計3箇所に形成されている。
【0020】
上記構成からなる直線駆動装置によれば、ナット1、3からのスラスト力をスライド板14の壁部17を介して伝達するナット1、3の端面1b、3bに、壁部17に線接触する突部2または点接触する突部4を設けているために、突部2、4と壁部17との間の摩擦力が小さくなり、この結果リードスクリュー11に振れが生じた場合にも、上記突部2、4とスライド板14の壁部17との間に滑りが生じることにより、リードスクリュー11の振れに起因してスライド板14が揺動することを防止あるいは大幅に抑制することができる。
【0021】
特に、本実施形態においては、作動停止状態においてスライド板14側からスラスト荷重Fが作用している場合に、スライド板14の壁部17と密着する側のナット1、3の端面1b、3bに突起2、4を設けているため、確実に上記スライド板14の揺動防止あるいは抑制効果を得ることができる。
【0022】
なお、上記実施形態においては、いずれもナット1、3の外周面に切り欠き部1a、3aを形成するとともに、スライド板14の溝部15に、上記切り欠き部1a、3aと対向する規制壁(規制部)16を設けることによりナット1、3の回転を阻止する構造とした場合に付いてのみ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ナット1、3の回転を阻止する様々な形態の規制部を採用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1、3 ナット
1b、3b 端面
2、4 突起
10 ステッピングモータ(モータ)
11 リードスクリュー
13 ガイド軸
14 スライド板
16 規制壁(規制部)
17 壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7