特許第6704838号(P6704838)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704838
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】蓄電システムに備えられた電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20200525BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20200525BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20200525BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20200525BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20200525BHJP
【FI】
   H02J7/34 G
   H02J9/06 110
   H02J7/00 302A
   H02M3/28 V
   H02M3/28 U
   H02M3/28 C
   H02M7/48 R
   H02M7/48 M
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-222577(P2016-222577)
(22)【出願日】2016年11月15日
(65)【公開番号】特開2018-82545(P2018-82545A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直久
(72)【発明者】
【氏名】和佐 侑真
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−177731(JP,A)
【文献】 特開2013−251963(JP,A)
【文献】 特開平01−122327(JP,A)
【文献】 特開2008−054473(JP,A)
【文献】 米国特許第06175311(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/34
H02J 7/00
H02J 9/06
H02M 3/28
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電圧または蓄電池の放電電圧を負荷に供給する蓄電システムにおいて、前記蓄電システムの制御を担う制御部に所定の電源電圧を供給する電源装置であって、
前記系統電圧の整流および平滑によって得た第1直流電圧を出力する第1電源部と、
前記第1直流電圧よりも低い第2直流電圧を出力する第2電源部と、
前記第1電源部および前記第2電源部の双方に接続され、ダイオードの整流作用によって選択された前記第1直流電圧および前記第2直流電圧のうちの大きい方をスイッチングする、スイッチング素子およびトランスの一次巻線からなるスイッチング部と、
前記スイッチングにより前記トランスの他の巻線に誘起された電圧を直流化して前記所定の電源電圧を生成する少なくとも1つの電源電圧生成部と、
を備え、
前記第2電源部は、前記系統電圧の整流および平滑により得られた第3直流電圧および前記放電電圧のうちの大きい方から前記第2直流電圧を生成する昇圧チョッパ回路からなり、
(1)前記系統電圧が正常範囲内に収まっている場合は、前記第2電源部が前記第3直流電圧から前記第2直流電圧を生成するとともに、前記スイッチング部が前記第1直流電圧をスイッチングし、(2)前記系統電圧が前記正常範囲の下限を下回っている場合は、前記第2電源部が前記放電電圧から前記第2直流電圧を生成するとともに、前記スイッチング部が前記第2直流電圧をスイッチングする
ことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記昇圧チョッパ回路は、入力された電圧を検出する電圧検出部を含み、前記電圧検出部によって検出した電圧が予め設定された閾値を下回った場合は、昇圧チョッパ動作によって前記第2直流電圧を生成し、それ以外の場合は、前記昇圧チョッパ動作によってではなく入力された電圧を通過させることによって前記第2直流電圧を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記系統電圧が前記正常範囲内に収まっているときの前記第3直流電圧の下限よりも前記放電電圧の上限が小さく、かつ、前記閾値が前記放電電圧の上限および下限の間に設定されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記第1直流電圧を得るための前記系統電圧の整流はダイオードブリッジで行われ、
前記第3直流電圧を得るための前記系統電圧の整流は前記ダイオードブリッジを構成する一部のダイオードを利用して行われる、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、系統電圧または蓄電池の放電電圧を負荷に供給する蓄電システムにおいて、蓄電システムの制御を担う制御部に所定の電源電圧を供給する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安価な深夜電力で充電しておいた蓄電池を電力需要が大きい昼間に放電させることで、電力需要の平準化と電気料金の低減とを図った蓄電システムの利用が進められている。図4に、従来の蓄電システムの一例として、特許文献1に開示された蓄電システム20を示す。蓄電システム20は、主に、系統Gからの系統電力を直流化して蓄電池Bを充電する機能と、蓄電池Bの放電電力を交流化して逆潮流しないように負荷Rに供給する機能とを有する双方向電力変換部11と、双方向電力変換部11を制御する制御部12と、制御部12に所定の電源電圧を供給する電源装置13とを備えている。
【0003】
電源装置13は、AC/DCコンバータ14と、DC/DCコンバータ15と、スイッチ手段16とを有する。系統Gに停電が発生していない通常時において、スイッチ手段16は、AC/DCコンバータ14とDC/DCコンバータ15とを接続する。このとき、DC/DCコンバータ15は、AC/DCコンバータ14から供給される系統電力由来の電力に基づいて制御部12に所定の電源電圧を供給する。一方、系統Gに停電が発生している停電時において、スイッチ手段16は、蓄電池BとDC/DCコンバータ15とを接続する。このとき、DC/DCコンバータ15は、蓄電池Bの放電電力に基づいて制御部12に所定の電源電圧を供給する。
【0004】
この蓄電システム20によれば、停電時においても制御部12に電源電圧を供給し続けて双方向電力変換部11を作動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−175801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、停電が発生したことを検知してスイッチ手段16を切り替えるにはある程度の時間を要する。このため、この蓄電システム20では、AC/DCコンバータ14内に設けた大容量コンデンサ(不図示)によってAC/DCコンバータ14の出力保持時間を長くしておかないと、スイッチ手段16が蓄電池BとDC/DCコンバータ15とを接続して放電電力がDC/DCコンバータ15に供給され始める前にAC/DCコンバータ14からの電力供給が途絶え、制御部12に供給する電源電圧に空白期間が生じるおそれがある。
【0007】
また、この蓄電システム20は、通常時にAC/DCコンバータ14とDC/DCコンバータ15とが直列に接続されるので、AC/DCコンバータ14およびDC/DCコンバータ15の両方で損失が発生し、電力変換効率が低下するという問題も有している。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、停電時においても制御部に電源電圧を途切れることなく供給し続けることができ、しかも、従来のものに比べて通常時の電力変換効率が高い電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る電源装置は、系統電圧または蓄電池の放電電圧を負荷に供給する蓄電システムにおいて、当該蓄電システムの制御を担う制御部に所定の電源電圧を供給する電源装置であって、系統電圧の整流および平滑によって得た第1直流電圧を出力する第1電源部と、第1直流電圧よりも低い第2直流電圧を出力する第2電源部と、第1電源部および第2電源部の双方に接続され、ダイオードの整流作用によって選択された第1直流電圧および第2直流電圧のうちの大きい方をスイッチングする、スイッチング素子およびトランスの一次巻線からなるスイッチング部と、当該スイッチングによりトランスの他の巻線に誘起された電圧を直流化して所定の電源電圧を生成する少なくとも1つの電源電圧生成部とを備え、第2電源部は、系統電圧の整流および平滑により得られた第3直流電圧および放電電圧のうちの大きい方から第2直流電圧を生成する昇圧チョッパ回路からなり、(1)系統電圧が正常範囲内に収まっている場合は、第2電源部が第3直流電圧から第2直流電圧を生成するとともに、スイッチング部が第1直流電圧をスイッチングし、(2)系統電圧が正常範囲の下限を下回っている場合は、第2電源部が放電電圧から第2直流電圧を生成するとともに、スイッチング部が第2直流電圧をスイッチングすることを特徴とする。
【0010】
この構成では、スイッチング部が、ダイオードの整流作用によって選択された第1直流電圧および第2直流電圧のうちの大きい方をスイッチングする。このため、この構成によれば、大容量コンデンサを設けなくても、スイッチング部のスイッチング対象が第1直流電圧から第2直流電圧に、または第2直流電圧から第1直流電圧に切り替わる際に、空白期間が生じることはない。さらに、この構成では、系統電圧が正常範囲内に収まっている通常時に、スイッチング部における1回の電力変換で系統電圧を制御部に出力すべき所定の電源電圧に変換する。このため、この構成によれば、電力変換を2回行う場合に比べて、通常時の電力変換効率を向上させることができる。
【0011】
上記電源装置の昇圧チョッパ回路は、入力された電圧を検出する電圧検出部を含み、電圧検出部によって検出した電圧が予め設定された閾値を下回った場合は、昇圧チョッパ動作によって第2直流電圧を生成し、それ以外の場合は、昇圧チョッパ動作によってではなく入力された電圧を通過させることによって第2直流電圧を生成するよう構成されていることが好ましい。
【0012】
この構成では、昇圧チョッパ回路に入力される電圧が予め設定された閾値を下回った場合に、昇圧チョッパ回路において昇圧チョッパ動作が行われる。逆に言うと、昇圧チョッパ回路に入力される電圧が閾値以上であれば、昇圧チョッパ動作は行われない。このため、この構成によれば、昇圧チョッパ動作による損失を低減することができる。
【0013】
上記電源装置は、系統電圧が正常範囲内に収まっているときの第3直流電圧の下限よりも放電電圧の上限が小さく、かつ、閾値が放電電圧の上限および下限の間に設定されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、系統電圧が正常範囲内に収まっている通常時に、蓄電池の電力が消費されるのを防ぐことができる。また、この構成によれば、系統電圧の大幅な低下により昇圧チョッパ回路に入力される電圧が第3直流電圧から蓄電池の放電電圧に切り替わった後においても、蓄電池の放電が進んで当該蓄電池の放電電圧が閾値を下回るまでの間は、昇圧チョッパ動作が行われないので、昇圧チョッパ動作による損失を低減することができる。
【0015】
上記電源装置は、第1直流電圧を得るための系統電圧の整流をダイオードブリッジで行うとともに、第3直流電圧を得るための系統電圧の整流を当該ダイオードブリッジを構成する一部のダイオードを利用して行うよう構成されていることが好ましい。
【0016】
この構成では、第1直流電圧を得るための整流に用いられるダイオードブリッジの一部を流用して第3直流電圧を得るための整流が行われる。したがって、この構成によれば、第3直流電圧を得るための部品の数を低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、停電時においても制御部に電源電圧を途切れることなく供給し続けることができ、しかも、従来のものに比べて通常時の電力変換効率が高い電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る電源装置を備えた蓄電システムのブロック図である。
図2】本発明の実施例に係る電源装置の回路図である。
図3】本発明の変形例に係る電源装置の回路図である。
図4】従来の電源装置を備えた蓄電システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る電源装置の実施例について説明する。
【0020】
図1に、本発明の実施例に係る電源装置1Aを備えた蓄電システム10を示す。蓄電システム10は、系統Gからの系統電力を直流化して蓄電池Bを充電する機能と、蓄電池Bの放電電力を交流化して逆潮流しないように負荷Rに供給する機能とを有する双方向電力変換部11と、双方向電力変換部11を制御する制御部12と、制御部12に所定の電源電圧を供給する電源装置1Aとを備えている。電源装置1Aには、系統Gの系統電圧および蓄電池Bの放電電圧が入力される。また、制御部12は、後述する第1制御部12aおよび第2制御部12bからなる。
【0021】
図2に示すように、本実施例に係る電源装置1Aは、系統Gの系統電圧の直流化によって得た第1直流電圧を出力する第1電源部2と、第2直流電圧を出力する第2電源部3と、第1電源部2および第2電源部3の双方に接続され、第1直流電圧および第2直流電圧のうちの大きい方をスイッチングするスイッチング部6と、第1制御部12aに所定の電源電圧を供給する第1電源電圧生成部7aと、第2制御部12bに所定の電源電圧を供給する第2電源電圧生成部7bとを備えている。
【0022】
また、電源装置1Aは、カソード同士が接続された2つの整流ダイオードD1,D2と、蓄電池Bに接続された逆流防止ダイオードD3と、第2電源部3の入力に並列接続された平滑コンデンサC2とを備えている。整流ダイオードD1,D2のカソードは、逆流防止ダイオードD3のカソードに接続されている。
【0023】
第1電源部2は、ダイオードブリッジDB1および平滑コンデンサC1を含んでいる。第1電源部2は、これらにより系統電圧を整流および平滑して第1直流電圧を生成する。系統電圧がAC200[V]の場合、第1直流電圧は200[V]×√2≒283[V]となる。ただし、系統電圧は、±20%の範囲内で変動することがある。このため、第1直流電圧も160[V]×√2≒226[V]〜240[V]×√2≒339[V]の範囲内で変動することがある。
【0024】
整流ダイオードD1,D2および平滑コンデンサC2、並びに、ダイオードブリッジDB1を構成する4つのダイオードのうち低電位側の直流ラインに接続された2つのダイオードは、系統電圧を整流および平滑して第3直流電圧を生成する。すなわち、整流ダイオードD1,D2の2つのダイオードと、ダイオードブリッジDB1を構成する4つのダイオードのうち低電位側の直流ラインに接続された2つのダイオードとの合計4つのダイオードがブリッジ整流ダイオードを構成し、当該ブリッジ整流ダイオードと平滑コンデンサC2とにより系統電圧が直流化され、直流化後の電圧が第3直流電圧として平滑コンデンサC2の両端に現れる。第1直流電圧と同様、第3直流電圧も226[V]〜339[V]の範囲内で変動することがある。
【0025】
第2電源部3は、コイルL、整流ダイオードD4、第1スイッチング素子Q1、平滑コンデンサC1およびスイッチング制御部5からなる昇圧チョッパ回路と、電圧検出部4とを含んでいる。なお、平滑コンデンサC1は、第1電源部2の構成要素でもある。
【0026】
第3直流電圧が蓄電池Bの放電電圧よりも大きい場合は、平滑コンデンサC2の両端に現れた第3直流電圧が昇圧チョッパ回路の入力電圧となる。一方、蓄電池Bの放電電圧が第3直流電圧よりも大きい場合は、平滑コンデンサC2の両端に現れた蓄電池Bの放電電圧が昇圧チョッパ回路の入力電圧となる。昇圧チョッパ回路に入力される電圧は、整流ダイオードD1,D2、逆流防止ダイオードD3およびダイオードブリッジDB1の整流作用によって、空白期間なしに自動的に切り替わる。
【0027】
本実施例では、蓄電池Bの放電電圧が144[V]〜196.8[V](満充電時)の範囲内で変動する。前述した通り、通常時の第3直流電圧の下限は226[V]なので、通常は、第3直流電圧が昇圧チョッパ回路に入力される。逆に言うと、停電により系統電圧、ひいては第3直流電圧が大幅に低下した場合に限って、蓄電池Bの放電電圧が昇圧チョッパ回路に入力される。
【0028】
スイッチング制御部5が第1スイッチング素子Q1を連続的にスイッチングさせると、昇圧チョッパ回路は入力された電圧を昇圧する。一方、スイッチング制御部5が第1スイッチング素子Q1をスイッチングさせない場合、昇圧チョッパ回路は入力された電圧をそのまま通過させる。これらの動作により、第2電源部3は第2直流電圧を生成する。
【0029】
第2電源部3の電圧検出部4は、昇圧チョッパ回路に入力された電圧と予め設定された閾値Vtとの大小関係を判定し、その結果をスイッチング制御部5に伝達する。スイッチング制御部5は、昇圧チョッパ回路に入力された電圧が閾値Vt以上である場合は、第1スイッチング素子Q1をスイッチングさせない(オフ状態に維持する)。この場合、第2電源部3は、入力された電圧を第2直流電圧としてそのまま出力する。ただし、コイルLおよび整流ダイオードD4において電圧降下が発生するので、第2直流電圧は第3直流電圧(=第1直流電圧)よりも僅かに低くなる。一方、スイッチング制御部5は、昇圧チョッパ回路に入力された電圧が閾値Vt未満である場合は、スイッチング素子Q1をスイッチングさせて入力された電圧を閾値Vtまで昇圧する。この場合、第2電源部3は、閾値Vtまで昇圧した後の電圧を第2直流電圧として出力する。
【0030】
本実施例では、閾値Vtが168[V]に設定されている。すなわち、閾値Vtは、蓄電池Bの放電電圧の下限(144[V])と上限(196.8[V])の間に設定されている。停電により昇圧チョッパ回路の入力電圧が第3直流電圧から蓄電池Bの放電電圧に切り替わっても、蓄電池Bの放電電圧が閾値Vtを下回るまでの間は昇圧チョッパ動作が行われないので、その間の昇圧チョッパ動作による損失が発生することはない。
【0031】
平滑コンデンサC1の両端には、整流ダイオードD4およびダイオードブリッジDB1の整流作用によって選択された、第1直流電圧および第2直流電圧のうちの大きい方が現れる。第1直流電圧が第2直流電圧よりも大きい場合、すなわち、平滑コンデンサC1の両端に第1直流電圧が現れる場合、第2電源部3は無負荷で動作していると言える。
【0032】
スイッチング部6は、トランスTの一次巻線T1および第2スイッチング素子Q2の直列回路を含んでいる。不図示のスイッチング制御回路が第2スイッチング素子Q2を連続的にスイッチングさせると、平滑コンデンサC1の両端に現れた第1直流電圧または第2直流電圧がスイッチングされ、トランスTの他の巻線、すなわち、二次巻線T2およびもうひとつの一次巻線T3に交流電圧が誘起される。
【0033】
第1電源電圧生成部7aは、一次巻線T3、整流ダイオードD5および平滑コンデンサC3を含んでいる。整流ダイオードD5および平滑コンデンサC3は、第2スイッチング素子Q2のスイッチングにより一次巻線T3に誘起された交流電圧を整流および平滑する。そして、これにより得られた直流電圧は、第1制御部12aに電源電圧として供給される。
【0034】
同様に、第2電源電圧生成部7bは、二次巻線T2、整流ダイオードD6および平滑コンデンサC4を含んでいる。整流ダイオードD6および平滑コンデンサC4は、第2スイッチング素子Q2のスイッチングにより二次巻線T2に誘起された交流電圧を整流および平滑する。そして、これにより得られた直流電圧は、第2制御部12bに電源電圧として供給される。
【0035】
本実施例に係る電源装置1Aの動作について、さらに詳しく説明する。
【0036】
[条件1]系統G:正常
この条件では、第3直流電圧の下限(226[V])が蓄電池Bの放電電圧の上限(196.8[V])よりも大きいので、蓄電池Bの放電電圧の多寡にかかわらず、第3直流電圧が第2電源部3の入力電圧となる。また、この条件では、第2電源部3の入力電圧が閾値Vt(168[V])よりも大きいので、第2電源部3は第3直流電圧を第2直流電圧としてそのまま出力する(ただし、第2直流電圧は、コイルLおよび整流ダイオードD4における電圧降下の分だけ第3直流電圧よりも僅かに小さい)。したがって、平滑コンデンサC1の両端には、第3直流電圧よりも僅かに大きい第1直流電圧が現れる。そして、第2電源部3は無負荷で動作する。
【0037】
[条件2]系統G:停電、168[V]≦蓄電池Bの放電電圧≦196.8[V]
この条件では、第3直流電圧がゼロなので、蓄電池Bの放電電圧が第2電源部3の入力電圧となる。また、この条件では、第2電源部3の入力電圧が閾値Vt(168[V])以上なので、第2電源部3は蓄電池Bの放電電圧を第2直流電圧としてそのまま出力する(ただし、コイルLおよび整流ダイオードD4において電圧降下が生じる)。さらに、この条件では、第1直流電圧もゼロである。したがって、平滑コンデンサC1の両端には第2直流電圧が現れる。その結果、第2電源部3は有負荷で動作し、蓄電池Bの放電電圧は低下していく。
【0038】
[条件3]系統G:停電、144[V]≦蓄電池Bの放電電圧<168[V]
この条件では、第3直流電圧がゼロなので、蓄電池Bの放電電圧が第2電源部3の入力電圧となる。また、この条件では、第2電源部3の入力電圧が閾値Vt(168[V])よりも小さいので、第2電源部3は昇圧チョッパ動作によって蓄電池Bの放電電圧を閾値Vtまで昇圧し、昇圧後の電圧を第2直流電圧として出力する。さらに、この条件では、第1直流電圧もゼロである。したがって、平滑コンデンサC1の両端には第2直流電圧が現れる。その結果、第2電源部3は有負荷で動作し、蓄電池Bの放電電圧は低下していく。
【0039】
条件1が成立しているとき(通常時)に停電が発生すると、蓄電池Bの放電電圧の多寡に応じて条件2または条件3が成立する。また、条件2が成立した状態が長く続くと、蓄電池Bの放電電圧が閾値Vtを下回り、条件3が成立する。条件2または条件3が成立しているとき(停電時)に停電が復旧すると、条件1が成立する。
【0040】
なお、条件3が成立しているときに蓄電池Bの放電電圧を昇圧するのは、スイッチング部6に供給される電圧が小さくなると、トランスTおよび第2スイッチング素子Q2に流れる電流が増加し、それに伴ってスイッチング部6における損失が増加するからである。
【0041】
このように、本発明の実施例に係る電源装置1Aによれば、ダイオードD4およびダイオードブリッジDB1の整流作用によって第1直流電圧および第2直流電圧のうちの大きい方が選択されるので、スイッチング部6のスイッチング対象が第1直流電圧から第2直流電圧に、または第2直流電圧から第1直流電圧に切り替わる際に、空白期間が生じることはない。また、この電源装置1Aによれば、系統電圧が正常範囲内に収まっている通常時に、スイッチング部6における1回の電力変換で系統電圧を各制御部12a、12bに出力すべき所定の電源電圧に変換するので、電力変換を2回行う場合に比べて、通常時の電力変換効率を向上させることができる。
【0042】
以上、本発明に係る電源装置の実施例について説明してきたが、本発明の構成はこの実施例に限定されるものではない。
【0043】
例えば、実施例に係る電源装置1Aは、2つの電源電圧生成部(第1電源電圧生成部7aおよび第2電源電圧生成7b)を備えていたが、電源電圧生成部の数は制御すべき制御部の数に応じて増減してもよい。
【0044】
また、実施例に係る電源装置1Aでは、整流ダイオードD1,D2とダイオードブリッジDB1の一部とを利用して系統電圧を整流したが、図3に示す電源装置1Bのように、整流ダイオードD1,D2の代わりにダイオードブリッジDB2を備え、ダイオードブリッジDB2のみで系統電圧を整流してもよい。ただし、この場合は部品点数が増大する。
【0045】
また、実施例に係る電源装置1Aにおける蓄電池Bの放電電圧の上下限および閾値Vtは単なる一例であり、変更することができる。ただし、放電電圧の上限は、通常時の第3直流電圧の下限(226[V])よりも小さく、かつ、閾値Vtは、蓄電池Bの放電電圧の上限と下限の間にあることが好ましい。
【符号の説明】
【0046】
1 電源装置
2 第1電源部
3 第2電源部
4 電圧検出部
5 スイッチング制御部
6 スイッチング部
7a 第1電源電圧生成部
7b 第2電源電圧生成部
10 蓄電システム
11 双方向電力変換部
12 制御部
12a 第1制御部
12b 第2制御部
B 蓄電池
G 系統
C1,C2,C3,C4 平滑コンデンサ
D1,D2,D4,D5,D6 整流ダイオード
D3 逆流防止ダイオード
DB1,DB2 ダイオードブリッジ
L コイル
Q1 第1スイッチング素子
Q2 第2スイッチング素子
T トランス
図1
図2
図3
図4