【実施例】
【0039】
以下、実施例、比較例に基づき、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製:NG−150、平均粒径:100μm)100g、炭化珪素粉末B(大平洋ランダム社製:NG−220、平均粒径:60μm)100g、炭化珪素粉末C(屋久島電工社製:GC−1000F、平均粒径:10μm)100g、及びシリカゾル(日産化学社製:スノーテックス)30gを秤取し、攪拌混合機で30分間混合した後、190mm×140mm×5.5mmの寸法の平板状に圧力10MPaでプレス成形した。
【0041】
得られた成形体を、温度120℃で2時間乾燥後、大気中、温度950℃で2時間焼成して、相対密度が65%の多孔質炭化珪素成形体を得た。得られた多孔質炭化珪素成形体は、平面研削盤でダイヤモンド製の砥石を用いて、4.8mmの厚みに面加工した後、マシニングセンターで外形寸法が183×133mmに外周部を加工した。得られた多孔質炭化珪素成形体の3点曲げ強度を測定した結果、10MPaであった。
【0042】
得られた多孔質炭化珪素成形体の外周の両長辺(外周部に占めるアルミニウム−セラミックスファイバー複合体の割合:58面積%)にムライト質のセラミックスファイバー(平均繊維径15μm、平均アスペクト比120、体積率5体積%)を隣接して配置し、両面をカーボンコートした210mm×160mm×0.8mmの寸法のステンレス板で挟んで、30枚を積層した後、両側に6mm厚みの鉄板を配置して、M10のボルト6本で連結して面方向の締め付けトルクが3Nmとなるようにトルクレンチで締め付けて一つのブロックとした。次に、一体としたブロックを電気炉で600℃に予備加熱した後、あらかじめ加熱しておいた内径400mmφのプレス型内に収め、シリコンを12質量%、マグネシウムを0.8質量%含有するアルミニウム合金の溶湯を注ぎ、100MPaの圧力で20分間加圧して炭化珪素質多孔体にアルミニウム合金を含浸させた。25℃まで冷却した後、湿式バンドソーにて離型板の形状に沿って切断し、挟んだステンレス板をはがした後、含浸時の歪み除去のために530℃の温度で3時間アニール処理を行い、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0043】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体の縁周部8カ所に直径7mmの貫通穴、4カ所にφ10−4mmの皿穴を加工し、外周のアルミニウム部およびアルミニウム−セラミックスファイバー複合体部をNC旋盤で加工して、187mm×137mm×5.0mmの形状とした。次に、このアルミニウム−炭化珪素質複合体に反りを付与するため、カーボン製で曲率半径が15000mmの球面を設けた凹凸型を準備した。この凹凸型を熱プレス機に装着し、加熱して型の表面温度を470℃とした。この凹凸型の間に前記複合体を配置し400KPaでプレスした。この際、当該複合体の側面に熱電対を接触させ測温した。複合体の温度が450℃になった時点から3分間保持後、加圧を解除し、50℃まで自然冷却した。次に、歪み除去のために、電気炉で350℃の温度で1時間アニール処理を行った。得られた複合体は、輪郭形状測定機(東京精密社製;コンターレコード1600D−22)を使用し、長さ10cm当たりの反り量を測定した結果、長さ10cm当たり80μmの反り量が付加されていた。
【0044】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体を圧力0.4MPa、搬送速度1.0m/minの条件でアルミナ砥粒にてブラスト処理を行い清浄化した後、無電解Ni―P及びNi−Bめっきを行った。複合体表面に8μm厚(Ni−P:6μm+Ni−B:2μm)のめっき層を形成した。
【0045】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体より、研削加工により熱膨張係数測定用試験体(縦20mm、横4mm、厚み4mmの板状体)、熱伝導率測定用試験体(縦10mm、横10mm、厚み1mmの板状体)、強度測定用試験体(縦40mm、横4mm、厚み3mmの板状体)を作製した。それぞれの試験体を用いて、第一相について、25℃〜150℃の熱膨張係数を熱膨張計(セイコー電子工業社製;TMA300)により測定し、25℃の熱伝導率をレーザーフラッシュ法(理学電機社製;TC−7000)により測定し、25℃の3点曲げ強度を抗折強度計(今田製作所製;SV−301)により測定した。得られた結果を表1に示す。
【0046】
次いで、得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体の外周アルミニウム−セラミックスファイバー複合体部(第二相)より、研削加工により熱膨張係数測定用試験体(縦20mm、横4mm、厚み4mmの板状体)、強度測定用試験体(縦40mm、横4mm、厚み3mmの板状体)を作製した。それぞれの試験体を用いて、第二相について、25℃〜150℃の熱膨張係数を熱膨張計(セイコー電子工業社製;TMA300)により測定し、25℃および150℃の3点曲げ強度を抗折強度計(今田製作所製;SV−301)により測定した。得られた結果を表1に示す。
【0047】
実施例1のめっき品を用いて、温度350℃に加熱したホットプレートに当該めっき品を載せ、物温が350℃に達した後、10分間保持した後、25℃まで自然冷却するヒートサイクル試験を10回行った。実施例1のヒートサイクル試験後、アルミニウム−炭化珪素質複合体にうねりや窪み形状は確認されなかった。また、外周部を目視で確認したところ、クラックは存在せず、超音波探傷装置にて内部探傷検査を行ったが、アルミニウム−炭化珪素質複合体にクラックは存在しなかった。
【0048】
次いで、実施例1のめっき品にAl回路基板を鉛フリーはんだで接合した後、−40℃と125℃の恒温槽に30分間保持するヒートサイクル試験(500回)を行った後に、外観及び接合状態を超音波探傷により確認したところ、接合層である半田にクラックは確認されなかった。得られた結果を表2に示す。
【0049】
[実施例2]
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製:NG−150、平均粒径:100μm)100g、炭化珪素粉末B(大平洋ランダム社製:NG−220、平均粒径:60μm)100g、炭化珪素粉末C(屋久島電工社製:GC−1000F、平均粒径:10μm)100g、及びシリカゾル(日産化学社製:スノーテックス)30gを秤取し、攪拌混合機で30分間混合した後、190mm×140mm×5.5mmの寸法の平板状に圧力10MPaでプレス成形した。
【0050】
得られた成形体を、温度120℃で2時間乾燥後、大気中、温度950℃で2時間焼成して、相対密度が65%の多孔質炭化珪素成形体を得た。得られた多孔質炭化珪素成形体は、平面研削盤でダイヤモンド製の砥石を用いて、4.8mmの厚みに面加工した後、マシニングセンターで外形寸法が183×133mmに外周部を加工した。得られた多孔質炭化珪素成形体の3点曲げ強度を測定した結果、10MPaであった。
【0051】
多孔質炭化珪素成形体の外周の両長辺および両短辺(外周部に占めるアルミニウム−セラミックスファイバー複合体の割合:100面積%)にムライト質のセラミックスファイバー(平均繊維径15μm、平均アスペクト比120、体積率5体積%)を隣接して配置し、実施例1と同様にして、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0052】
実施例2のめっき品を用いて、温度350℃に加熱したホットプレートに当該めっき品を載せ、物温が350℃に達した後、10分間保持した後、25℃まで自然冷却するヒートサイクル試験を10回行った。
【0053】
次いで、実施例2のめっき品にAl回路基板を鉛フリーはんだで接合した後、−40℃と125℃の恒温槽に30分間保持するヒートサイクル試験(500回)を行った。得られた結果を表2に示す。
【0054】
[実施例3]
セラミックスファイバーの体積率を20体積%としたこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0055】
実施例3のめっき品を用いて、温度350℃に加熱したホットプレートに当該めっき品を載せ、物温が350℃に達した後、10分間保持した後、25℃まで自然冷却するヒートサイクル試験を10回行った。
【0056】
次いで、実施例3のめっき品にAl回路基板を鉛フリーはんだで接合した後、−40℃と125℃の恒温槽に30分間保持するヒートサイクル試験(500回)を行った。得られた結果を表2に示す。
【0057】
[実施例4]
実施例1のアルミニウム−炭化珪素質複合体を平面研削盤にてダイヤモンド製の砥石を用いて1.0mm研削加工してアルミニウム−炭化珪素質複合体を露出させ、187×137×4mmの形状とした。次に、得られた加工体は、加工時の歪み除去のために、電気炉で530℃の温度で1時間アニール処理を行った。次いで、圧力0.4MPa、搬送速度1.0m/minの条件でアルミナ砥粒にてブラスト処理を行い清浄化した後、無電解Ni―P及びNi−Bめっきを行った。複合体表面に8μm厚(Ni−P:6μm+Ni−B:2μm)のめっき層を形成した。
【0058】
実施例4のめっき品を用いて、温度350℃に加熱したホットプレートに当該めっき品を載せ、物温が350℃に達した後、10分間保持した後、25℃まで自然冷却するヒートサイクル試験を10回行った。
【0059】
次いで、実施例4のめっき品にAl回路基板を鉛フリーはんだで接合した後、−40℃と125℃の恒温槽に30分間保持するヒートサイクル試験(500回)を行った。得られた結果を表2に示す。
【0060】
[実施例5、6]
アルミニウム炭化珪素質複合体中の炭化珪素の含有率を50体積%、80体積%としたこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0061】
実施例5、6のめっき品を用いて、温度350℃に加熱したホットプレートに当該めっき品を載せ、物温が350℃に達した後、10分間保持した後、25℃まで自然冷却するヒートサイクル試験を10回行った。
【0062】
次いで、実施例5,6のめっき品にAl回路基板を鉛フリーはんだで接合した後、−40℃と125℃の恒温槽に30分間保持するヒートサイクル試験(500回)を行った。得られた結果を表2に示す。
【0063】
[実施例7、8]
多孔質炭化珪素質成形体を平面研削盤でダイヤモンド製の砥石を用いて、1.8mm、5.8mmの厚みに面加工し、アルミニウム−炭化珪素質複合体の厚みを2.0mm、6.0mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0064】
実施例7、8のめっき品を用いて、温度350℃に加熱したホットプレートに当該めっき品を載せ、物温が350℃に達した後、10分間保持した後、25℃まで自然冷却するヒートサイクル試験を10回行った。
【0065】
次いで、実施例7,8のめっき品にAl回路基板を鉛フリーはんだで接合した後、−40℃と125℃の恒温槽に30分間保持するヒートサイクル試験(500回)を行った。得られた結果を表2に示す。
【0066】
[実施例9]
セラミックスファイバーの平均繊維径を20μm、平均アスペクト比を100、体積率を5体積%としたこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0067】
実施例9のめっき品を用いて、温度350℃に加熱したホットプレートに当該めっき品を載せ、物温が350℃に達した後、10分間保持した後、25℃まで自然冷却するヒートサイクル試験を10回行った。
【0068】
次いで、実施例9のめっき品にAl回路基板を鉛フリーはんだで接合した後、−40℃と125℃の恒温槽に30分間保持するヒートサイクル試験(500回)を行った。得られた結果を表2に示す。
【0069】
[比較例1]
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製:NG−150、平均粒径:100μm)100g、炭化珪素粉末B(大平洋ランダム社製:NG−220、平均粒径:60μm)100g、炭化珪素粉末C(屋久島電工社製:GC−1000F、平均粒径:10μm)100g、及びシリカゾル(日産化学社製:スノーテックス)30gを秤取し、攪拌混合機で30分間混合した後、190mm×140mm×5.5mmの寸法の平板状に圧力10MPaでプレス成形した。
【0070】
得られた成形体を、温度120℃で2時間乾燥後、大気中、温度950℃で2時間焼成して、相対密度が65%の多孔質炭化珪素成形体を得た。得られた多孔質炭化珪素成形体は、平面研削盤でダイヤモンド製の砥石を用いて、4.8mmの厚みに面加工した後、マシニングセンターで外形寸法が183×133mmに外周部を加工した。得られた多孔質炭化珪素成形体の3点曲げ強度を測定した結果、10MPaであった。
【0071】
得られた多孔質炭化珪素成形体の外周の片長辺(外周部に占めるアルミニウム−セラミックスファイバー複合体の割合:29面積%)にムライト質のセラミックスファイバー(平均繊維径15μm、平均アスペクト比120、体積率5体積%)を隣接して配置し、実施例1と同様にして、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0072】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体を圧力0.4MPa、搬送速度1.0m/minの条件でアルミナ砥粒にてブラスト処理を行い清浄化した後、無電解Ni―P及びNi−Bめっきを行った。複合体表面に8μm厚(Ni−P:6μm+Ni−B:2μm)のめっき層を形成した。
【0073】
比較例1のめっき品を用いて、温度350℃に加熱したホットプレートに当該めっき品を載せ、物温が350℃に達した後、10分間保持した後、25℃まで自然冷却するヒートサイクル試験を10回行ったところ、試験後にうねり形状が確認された。
【0074】
次いで、比較例1のめっき品にAl回路基板を鉛フリーはんだで接合した後、−40℃と125℃の恒温槽に30分間保持するヒートサイクル試験(500回)を行った後に、外観及び接合状態を超音波探傷により確認したところ、接合層である半田にクラックは確認されなかった。得られた結果を表2に示す。
【0075】
[比較例2]
アルミニウム炭化珪素質複合体中の炭化珪素の含有率を45体積%としたこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0076】
比較例2のめっき品を用いて、温度350℃に加熱したホットプレートに当該めっき品を載せ、物温が350℃に達した後、10分間保持した後、25℃まで自然冷却するヒートサイクル試験を10回行った。
【0077】
次いで、比較例2のめっき品にAl回路基板を鉛フリーはんだで接合した後、−40℃と125℃の恒温槽に30分間保持するヒートサイクル試験(500回)を行った後に、外観及び接合状態を超音波探傷により確認したところ、接合層である半田にクラックが確認された。
【0078】
[比較例3]
アルミニウム炭化珪素質複合体中の炭化珪素の含有率を85体積%としたこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体を超音波探傷装置にて内部探傷検査を行ったところ、アルミニウム−炭化珪素質複合体にクラックが確認された。
【0079】
[比較例4]
多孔質炭化珪素質成形体を平面研削盤でダイヤモンド製の砥石を用いて、1.3mmの厚みに面加工し、アルミニウム−炭化珪素質複合体の厚みを1.5mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体を超音波探傷装置により、内部探傷検査を行ったところ、アルミニウム−炭化珪素質複合体にクラックが確認された。
【0080】
[比較例5]
多孔質炭化珪素質成形体を平面研削盤でダイヤモンド製の砥石を用いて、6.3mmの厚みに面加工し、アルミニウム−炭化珪素質複合体の厚みを6.5mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0081】
比較例5のめっき品を用いて、温度350℃に加熱したホットプレートに当該めっき品を載せ、物温が350℃に達した後、10分間保持した後、25℃まで自然冷却するヒートサイクル試験を10回行った。
【0082】
次いで、比較例5のめっき品にAl回路基板を鉛フリーはんだで接合した後、−40℃と125℃の恒温槽に30分間保持するヒートサイクル試験(500回)を行った後に、外観及び接合状態を超音波探傷により確認したところ、接合層である半田にクラックが確認された。
【0083】
[比較例6]
セラミックスファイバーの平均繊維径を25μm、平均アスペクト比を90、体積率を5体積%としたこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体の外周を目視で確認したところ、外周アルミニウム−セラミックスファイバー複合体部にクラックが確認された。
【0084】
[比較例7]
セラミックスファイバーの平均繊維径を15μm、平均アスペクト比を120、体積率を25体積%としたこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0085】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体を圧力0.4MPa、搬送速度1.0m/minの条件でアルミナ砥粒にてブラスト処理を行い清浄化した後、無電解Ni―P及びNi−Bめっきを行った。複合体表面に8μm厚(Ni−P:6μm+Ni−B:2μm)のめっき層を形成した。
【0086】
比較例7のめっき品の外周を目視で確認したところ、外周アルミニウム−セラミックスファイバー複合体部に多数のめっき未着部が確認された。
【0087】
実施例、比較例の主要条件と結果を表1、2に示す。なお、実施例2〜9、比較例1〜7については、実施例1と同様にして、第一相の熱膨張係数、熱伝導率及び3点曲げ強度を測定した。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】