【文献】
CHANG,NATURE BIOTECHNOLOGY,2006年 7月16日,V24 N8,P1017-1021
【文献】
DIAS, Jessica et al.,Generation of Red Blood Cells from Human Induced Pluripotent Stem Cells,STEM CELLS AND DEVELOPMENT,2011年,Vol. 20, No. 9,p. 1639-1646
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
培地中で増殖し、最終的に成熟する能力を維持する、広範囲に自己再生するヒト赤芽球(ESRE)の単離された集団であり、ここで、前記ESREは、不死化されていない、少なくとも30回の細胞分裂を受けることができる、完全赤血球前駆細胞の集団から誘導され、更に、ここで前記ESREの集団が、限定的な自己再生を受けた赤芽球、及び初期前赤芽球と比較して、Bmi−1のより高い発現レベルを示す、前記単離された集団。
前記ESREが、因子IX、因子VIIIc、フォンウィルブランド因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、タンパク質C、タンパク質S、アンチトロンビンIII、及び、それらの任意の組み合わせからなる群から選択される因子を発現するように、遺伝的に改変される、請求項1に記載の前記ESREの単離された集団。
前記ヒト細胞が、胚性幹細胞、誘導多能性幹(iPS)細胞、成体幹細胞、臍帯細胞、骨髄細胞、及び、それらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載の前記方法。
哺乳動物に遺伝子を送達するための試薬の調製における遺伝子送達ビヒクルの使用であって、ここで、前記ビヒクルは、請求項2に記載の前記遺伝子改変ESREを含む、使用。
前記対象から得られた前記細胞が、胚性幹細胞、iPS細胞、成体幹細胞、臍帯血細胞、骨髄細胞、及び、それらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の使用。
前記因子が、第VIII因子、または第VIIIa因子、第V因子、第Va因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、フォンウィルブランド因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、タンパク質C、タンパク質S、アンチトロンビンIII、及び、それらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項19に記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1A及び
図1Bを含み、哺乳類の赤血球生成を示す一連の画像である。(
図1A)生体内での定常状態の赤血球生成は、赤血球前駆細胞(BFU−E、CFU−E)、及び、網状赤血球(retics)を形成するために除核する赤血球前駆体(ProE、BasoE、PolyE及びOrthoE)の限られた増殖で特徴付けられる。(
図1B)臍帯血と成体骨髄の生体外での培養が、制限された自己再生能力を持つ赤芽球を生成させる。
【
図2】
図2A及び
図2Bを含み、マウスの広範囲に自己再生する赤芽球(ESRE)を示す一連の画像である。(
図2A)成体骨髄からの赤芽球培養物は、制限された自己再生を示す。これとは対照的に、E9.5マウス卵黄嚢及びE14.5肝臓からの赤芽球の培養物は、広範な自己再生を受ける。(
図2B)増殖性赤芽球は、c−Kitを高レベルで発現し、前赤芽球の形態を有している。分化すると、TER119の発現が増加し、細胞が網状赤血球に成熟する。
【
図3】マウス骨髄からの未成熟造血骨髄前駆細胞(LSK)で、または、UBC−GFPマウス由来のESREで、IV注射を受けたNSGマウスにおける、網状赤血球及び成熟RBCの循環を示す画像である。生体内での分化の際に、ESREは、野生型のRBCとサイズ及び形態で類似したGFP+RBCの過渡波を発生させる(右パネル)。
【
図4-1】
図4A〜4Iを含み、ヒトのH1 ES/EBにおける赤血球出現の可能性を示す一連の画像である。(
図4A)赤血球前駆細胞の2つの連続波が、ヒトのEBから生成する。(
図4B)形態(上)及び赤血球コロニーの細胞組成(下)は、原始的及び完全な赤血球の同一性と一致した形態を明らかにした。(
図4C)11日〜19日目のEB(EBD11、EBD19)からの5赤血球コロニーの遺伝子発現解析。11日目〜16日目のEBの赤血球コロニーは、主に、胚ε−グロビン遺伝子(上パネル)を発現するが、グルココルチコイド受容体(GR、Nr3c1遺伝子:下パネル)を発現しない。これとは対照的に、17日目及び19日目のEBからの赤血球コロニーは、主に、胎児γ−グロビン遺伝子(上パネル)、並びに、GR(下パネル)を発現する。(
図4D)上パネル:19日間の生体外で分化したH1ヒトES細胞由来のヒト赤芽球の自己再生。下パネル:EPO及びインスリン中で分化したヒト赤芽球は、生体外で網状赤血球に成熟する。(
図4E)血液細胞運命への胚様体(EB)としてのヒトESCの無血清分化のためのスキーム。
図4F〜4Hは、ヒト完全自己再生赤芽球の画像である。(
図4F)ヒトの自己再生赤芽球(SR)は、赤血球の特異的マーカーCD235aを発現し、大規模な核(DAPI)を含有する。これらの細胞の生体外分化(Diff)の結果は、DNAを欠く小RBCをもたらす。(
図4G)自己再生(SR)及び分化した(Diff)hESC由来の赤血球細胞で発現したβ様グロビンのmRNAの相対レベル。ヒト赤芽球の成熟は、胎児γ−グロビンから成体β−グロビンへのグロビン「スイッチ」に関連する。(
図4H)マウスESRE(GFP標識化)は、完全に生体内で成熟し、数週間に亘って生体内でRBCのように循環することができる。(
図4I)赤芽球の増殖の形態(増殖の36日目)が示されている。
【
図4-2】
図4A〜4Iを含み、ヒトのH1 ES/EBにおける赤血球出現の可能性を示す一連の画像である。(
図4A)赤血球前駆細胞の2つの連続波が、ヒトのEBから生成する。(
図4B)形態(上)及び赤血球コロニーの細胞組成(下)は、原始的及び完全な赤血球の同一性と一致した形態を明らかにした。(
図4C)11日〜19日目のEB(EBD11、EBD19)からの5赤血球コロニーの遺伝子発現解析。11日目〜16日目のEBの赤血球コロニーは、主に、胚ε−グロビン遺伝子(上パネル)を発現するが、グルココルチコイド受容体(GR、Nr3c1遺伝子:下パネル)を発現しない。これとは対照的に、17日目及び19日目のEBからの赤血球コロニーは、主に、胎児γ−グロビン遺伝子(上パネル)、並びに、GR(下パネル)を発現する。(
図4D)上パネル:19日間の生体外で分化したH1ヒトES細胞由来のヒト赤芽球の自己再生。下パネル:EPO及びインスリン中で分化したヒト赤芽球は、生体外で網状赤血球に成熟する。(
図4E)血液細胞運命への胚様体(EB)としてのヒトESCの無血清分化のためのスキーム。
図4F〜4Hは、ヒト完全自己再生赤芽球の画像である。(
図4F)ヒトの自己再生赤芽球(SR)は、赤血球の特異的マーカーCD235aを発現し、大規模な核(DAPI)を含有する。これらの細胞の生体外分化(Diff)の結果は、DNAを欠く小RBCをもたらす。(
図4G)自己再生(SR)及び分化した(Diff)hESC由来の赤血球細胞で発現したβ様グロビンのmRNAの相対レベル。ヒト赤芽球の成熟は、胎児γ−グロビンから成体β−グロビンへのグロビン「スイッチ」に関連する。(
図4H)マウスESRE(GFP標識化)は、完全に生体内で成熟し、数週間に亘って生体内でRBCのように循環することができる。(
図4I)赤芽球の増殖の形態(増殖の36日目)が示されている。
【
図4-3】
図4A〜4Iを含み、ヒトのH1 ES/EBにおける赤血球出現の可能性を示す一連の画像である。(
図4A)赤血球前駆細胞の2つの連続波が、ヒトのEBから生成する。(
図4B)形態(上)及び赤血球コロニーの細胞組成(下)は、原始的及び完全な赤血球の同一性と一致した形態を明らかにした。(
図4C)11日〜19日目のEB(EBD11、EBD19)からの5赤血球コロニーの遺伝子発現解析。11日目〜16日目のEBの赤血球コロニーは、主に、胚ε−グロビン遺伝子(上パネル)を発現するが、グルココルチコイド受容体(GR、Nr3c1遺伝子:下パネル)を発現しない。これとは対照的に、17日目及び19日目のEBからの赤血球コロニーは、主に、胎児γ−グロビン遺伝子(上パネル)、並びに、GR(下パネル)を発現する。(
図4D)上パネル:19日間の生体外で分化したH1ヒトES細胞由来のヒト赤芽球の自己再生。下パネル:EPO及びインスリン中で分化したヒト赤芽球は、生体外で網状赤血球に成熟する。(
図4E)血液細胞運命への胚様体(EB)としてのヒトESCの無血清分化のためのスキーム。
図4F〜4Hは、ヒト完全自己再生赤芽球の画像である。(
図4F)ヒトの自己再生赤芽球(SR)は、赤血球の特異的マーカーCD235aを発現し、大規模な核(DAPI)を含有する。これらの細胞の生体外分化(Diff)の結果は、DNAを欠く小RBCをもたらす。(
図4G)自己再生(SR)及び分化した(Diff)hESC由来の赤血球細胞で発現したβ様グロビンのmRNAの相対レベル。ヒト赤芽球の成熟は、胎児γ−グロビンから成体β−グロビンへのグロビン「スイッチ」に関連する。(
図4H)マウスESRE(GFP標識化)は、完全に生体内で成熟し、数週間に亘って生体内でRBCのように循環することができる。(
図4I)赤芽球の増殖の形態(増殖の36日目)が示されている。
【
図4-4】
図4A〜4Iを含み、ヒトのH1 ES/EBにおける赤血球出現の可能性を示す一連の画像である。(
図4A)赤血球前駆細胞の2つの連続波が、ヒトのEBから生成する。(
図4B)形態(上)及び赤血球コロニーの細胞組成(下)は、原始的及び完全な赤血球の同一性と一致した形態を明らかにした。(
図4C)11日〜19日目のEB(EBD11、EBD19)からの5赤血球コロニーの遺伝子発現解析。11日目〜16日目のEBの赤血球コロニーは、主に、胚ε−グロビン遺伝子(上パネル)を発現するが、グルココルチコイド受容体(GR、Nr3c1遺伝子:下パネル)を発現しない。これとは対照的に、17日目及び19日目のEBからの赤血球コロニーは、主に、胎児γ−グロビン遺伝子(上パネル)、並びに、GR(下パネル)を発現する。(
図4D)上パネル:19日間の生体外で分化したH1ヒトES細胞由来のヒト赤芽球の自己再生。下パネル:EPO及びインスリン中で分化したヒト赤芽球は、生体外で網状赤血球に成熟する。(
図4E)血液細胞運命への胚様体(EB)としてのヒトESCの無血清分化のためのスキーム。
図4F〜4Hは、ヒト完全自己再生赤芽球の画像である。(
図4F)ヒトの自己再生赤芽球(SR)は、赤血球の特異的マーカーCD235aを発現し、大規模な核(DAPI)を含有する。これらの細胞の生体外分化(Diff)の結果は、DNAを欠く小RBCをもたらす。(
図4G)自己再生(SR)及び分化した(Diff)hESC由来の赤血球細胞で発現したβ様グロビンのmRNAの相対レベル。ヒト赤芽球の成熟は、胎児γ−グロビンから成体β−グロビンへのグロビン「スイッチ」に関連する。(
図4H)マウスESRE(GFP標識化)は、完全に生体内で成熟し、数週間に亘って生体内でRBCのように循環することができる。(
図4I)赤芽球の増殖の形態(増殖の36日目)が示されている。
【
図5】
図5A〜5Cを含み、制限された、対、広範な赤血球自己再生でのp53の生物学を実証する一連の画像である。(
図5A)制限下、または、広範囲のいずれかの自己再生を受ける赤芽球のマイトマイシンCに対する応答。(
図5B)非アポトーシス及び0.1uMマイトマイシンCに暴露されたアポトーシス自己再生赤芽球のイメージングフローサイトメトリー。アポトーシス細胞は、核小疱を形成する。(
図5C)マイトマイシンC、または、ビヒクルで処置した赤芽球におけるp53応答性遺伝子の発現(qPCR)。アポトーシスエフェクターPERPは、ESREにより発現されない。nd=検出せず。
【
図6】p53タンパク質の免疫組織化学的な局在化を示した画像である。上パネル:照射されたマウス脾臓細胞におけるp53は、主に、核である。中間パネル:制限された自己再生を受けた赤芽球におけるp53は、細胞質及び核の両方である。下パネル:広範囲の自己再生を受けた赤芽球におけるp53は、主に、細胞質である。
【
図7】Bmi−1を過剰発現するヒト胎児肝細胞が、75日以上の間、増殖し続けたことを実証した画像である。
【
図8】後期赤芽球への、Bmi−1を過剰発現し、さらに、網状赤血球を形成するために除核する、増殖したヒト胎児肝細胞の成熟を示した画像である。
【
図9】Bmi−1を過剰発現する細胞を含む培養からのヒト赤芽球の例を示す画像である。
【
図10】StemSpan増殖培地からの脂質補充の中止が赤芽球増殖を遅らせることを示すチャートである。
【
図11】StemPro34型拡張培地からの脂質補充の中止が、制限された自己再生(SRE)を受けた赤芽球の、「広範囲」の段階に突入し、ESREとなる能力をブロックすることを示すチャートである。
【
図12】ESREが、5日間の脂質補充がある場合と、ない場合で培養したとき、Bmi1の転写レベルは、脂質を含む対照となる培養物と比較して、「無脂質」状態では減少したことを示すチャートである。
【
図13A】
図13A及び
図13Bを含む、成体マウス細胞におけるBmi−1の誘導発現が、強化された自己再生につながることを示す一連のチャートである。
図13Aは、Bmi−1の過剰発現を感染させた(野生型成体マウス由来の)成体骨髄細胞が、空のベクターの対照群と比較して、少なくとも2倍長く増殖し続けていることを示す。
図13Bは、Bmi−1の過剰発現を感染させた(タンパク質4.1ノックアウトマウス由来の)マウス成体骨髄細胞は、空ベクター対照群と比較して、少なくとも30日以上増殖し続けていることを示す。
【
図13B】
図13A及び
図13Bを含む、成体マウス細胞におけるBmi−1の誘導発現が、強化された自己再生につながることを示す一連のチャートである。
図13Aは、Bmi−1の過剰発現を感染させた(野生型成体マウス由来の)成体骨髄細胞が、空のベクターの対照群と比較して、少なくとも2倍長く増殖し続けていることを示す。
図13Bは、Bmi−1の過剰発現を感染させた(タンパク質4.1ノックアウトマウス由来の)マウス成体骨髄細胞は、空ベクター対照群と比較して、少なくとも30日以上増殖し続けていることを示す。
【
図14】増殖した細胞(タンパク質4.1ノックアウト細胞;増殖16日目;下のパネル)が、未成熟赤芽球(ギムザ染色)の形態を有することを示すチャートである。3日間赤血球成熟培地に置かれたとき、これらの未熟赤芽球は、後期赤芽球に成熟し、さらに、網状赤血球を形成するために除核する。これらのデータは、ESREが赤血球特有の疾患を研究するためのモデル系として機能することができる概念をサポートする。
【
図15】ヒト赤芽球におけるBmi−1の誘導発現が、その広範な自己再生につながることを示すチャートである。
【
図16A】
図16A〜16Cを含み、ESREの生成を実証する一連の概略図である。16Aは、ESREを生成するための2つの方法の概略図であり、それにより、1)ESREは、完全胚性造血前駆細胞の集団を増殖することから誘導することができ、または、2)胎児/成体造血前駆細胞へBmi1を形質導入し、及び、この細胞集団を増殖する。
図16Bは、ヒト胚性幹細胞の多機能状態から除核された赤血細胞への進行が、一連の異なった段階を含むことを示す概略図である。第一に、ヒトESCは、「完全赤血球前駆細胞」に向かって分化する。完全な可能性が見つかった場合、その後、これらの赤血球細胞は、赤芽球の自己再生を誘導するために、EPO、SCF、及びDEXでさらに培養される。また、これらの自己再生赤芽球は、最終的に成熟するために、それらの機能的能力を維持する。
図16Cは、成体骨髄からの完全赤血球前駆体が、Bmi1の過剰発現で形質導入されることを示す概略図であり、その後、Bmi1過剰発現による赤血球細胞は、赤芽球の広範な自己再生を誘導するために、EPO、SCF、及びDEXと一緒に培養を続ける。また、Bmi1の過剰発現を有するこれらの自己再生赤芽球は、最終的に成熟するその機能的能力を維持する。
【
図16B】
図16A〜16Cを含み、ESREの生成を実証する一連の概略図である。16Aは、ESREを生成するための2つの方法の概略図であり、それにより、1)ESREは、完全胚性造血前駆細胞の集団を増殖することから誘導することができ、または、2)胎児/成体造血前駆細胞へBmi1を形質導入し、及び、この細胞集団を増殖する。
図16Bは、ヒト胚性幹細胞の多機能状態から除核された赤血細胞への進行が、一連の異なった段階を含むことを示す概略図である。第一に、ヒトESCは、「完全赤血球前駆細胞」に向かって分化する。完全な可能性が見つかった場合、その後、これらの赤血球細胞は、赤芽球の自己再生を誘導するために、EPO、SCF、及びDEXでさらに培養される。また、これらの自己再生赤芽球は、最終的に成熟するために、それらの機能的能力を維持する。
図16Cは、成体骨髄からの完全赤血球前駆体が、Bmi1の過剰発現で形質導入されることを示す概略図であり、その後、Bmi1過剰発現による赤血球細胞は、赤芽球の広範な自己再生を誘導するために、EPO、SCF、及びDEXと一緒に培養を続ける。また、Bmi1の過剰発現を有するこれらの自己再生赤芽球は、最終的に成熟するその機能的能力を維持する。
【
図16C】
図16A〜16Cを含み、ESREの生成を実証する一連の概略図である。16Aは、ESREを生成するための2つの方法の概略図であり、それにより、1)ESREは、完全胚性造血前駆細胞の集団を増殖することから誘導することができ、または、2)胎児/成体造血前駆細胞へBmi1を形質導入し、及び、この細胞集団を増殖する。
図16Bは、ヒト胚性幹細胞の多機能状態から除核された赤血細胞への進行が、一連の異なった段階を含むことを示す概略図である。第一に、ヒトESCは、「完全赤血球前駆細胞」に向かって分化する。完全な可能性が見つかった場合、その後、これらの赤血球細胞は、赤芽球の自己再生を誘導するために、EPO、SCF、及びDEXでさらに培養される。また、これらの自己再生赤芽球は、最終的に成熟するために、それらの機能的能力を維持する。
図16Cは、成体骨髄からの完全赤血球前駆体が、Bmi1の過剰発現で形質導入されることを示す概略図であり、その後、Bmi1過剰発現による赤血球細胞は、赤芽球の広範な自己再生を誘導するために、EPO、SCF、及びDEXと一緒に培養を続ける。また、Bmi1の過剰発現を有するこれらの自己再生赤芽球は、最終的に成熟するその機能的能力を維持する。
【
図17】広範囲の自己再生を受ける可能性を最大化するヒト培養条件の最適化を示すチャートである。9日目の胚様体(EB)からの原始赤血球細胞は、増殖培地(StemSpan;EPO、SCF、Dex、IGF1、ExCyte)で、自己再生することができない。これらの赤血球細胞は、自己再生細胞分裂より、むしろ最終的な赤血球の成熟を受ける。「StemSpan培地」中で、16日目または38日目からの誘導されたEBの完全赤芽球は、2〜3週間自己再生する。ヒト化「StemSpan−ACF培地」中で、EB38日目から誘導された完全赤芽球は、約5〜6週間、自己再生を続行する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、広範囲に自己再生でき、及び、赤血細胞(RBC)に分化する能力を未だ、保持することができる、ヒト細胞集団の生成の発見に関する。これらの細胞は、本明細書では、広範囲に自己再生する赤芽球(ESRE)と称される。本発明の細胞は、とりわけ、RBCの再生可能な供給源として機能する。
【0041】
一実施形態において、本発明のESREは、完全赤血球前駆体の可能性の出現につながる分化手順を使用して、幹細胞を分化することから生成される。一実施形態において、この方法は、ESREを生体外で生成することが可能な赤血球前駆体の可能性を生成する条件で幹細胞を培養することを含む。一実施形態において、ESREは、増殖培地に分化した幹細胞を配置することによって生成される。一実施形態において、増殖培地は、EPO、SCF、デキサメタゾン、インスリン様成長因子−1、及び脂質混合物を補充した無血清培地を含む。一実施形態において、本発明の増殖培地中で分化した幹細胞の培養が、分化することなく増殖し続ける、即ち、それらは自己再生分裂を受ける、赤血球前駆体の成長をもたらす。一実施形態において、これらの自己再生赤芽球は、少なくとも45日間連続して自己再生を続行する。一実施形態において、ESREは、不死化されていない。本発明のESREは、その後、RBCに分化することができる。一実施形態において、分化培地中のESREの配置が、後期赤芽球及び網状赤血球への成熟をもたらす。一実施形態において、生体内に注入された場合、ESREが分化する。
【0042】
一実施形態において、本発明のESREの生成及び維持は、細胞におけるBmi−1を活性化する薬剤を細胞に提供することにより改良される。これは、本発明が、Bmi−1が赤血球自己再生の中心的な調節剤であるという発見に部分的に基づいているからである。即ち、限定された(SRE)自己再生を受けた赤芽球、並びに、初期の複数集団の前赤芽球(ProE)に比較して、ESREは、Bmi−1の高い発現レベルを示すことが観察された。更に、Bmi−1を過剰発現する細胞は、75日間以上に亘って増殖し続けたことが観察された。従って、一実施形態において、本発明は、赤血球自己再生を調節するための方法を含む。一実施形態において、方法は、赤血球前駆体の可能性、Bmi−1、または、その変異体、若しくはその断片、及び/または、細胞の赤血球自己再生を調整するのに十分な量のBmi−1調節剤を有する、細胞を提供すること;及び赤血球の自己再生の調節のために十分な時間で細胞を培養することを含む。一実施形態において、細胞の赤血球自己再生を調節することは、細胞の増殖を促進する。
【0043】
本発明の一実施形態において、Bmi−1、または、その変異体若しくはその断片、及び/または、Bmi−1調節剤は、小分子、脂質分子、糖、及びその複合体からなる群から選択される。
【0044】
別の実施形態において、Bmi−1調節剤は、脂質、リポタンパク質、コレステロール、リン脂質及び脂肪酸を含むが、それらに限定されない。一実施形態において、脂質、リポタンパク質、コレステロール、リン脂質、及び脂肪酸の混合物は、赤血球自己再生を調節するために細胞培養物に補充することができる脂質の供給源である。一実施形態において、Bmi−1調節剤は、ヘッジホッグリガンドである。別の実施形態において、Bmi−1調節剤は、25−ヒドロキシコレステロールである。
【0045】
一実施形態において、Bmi−1の活性化は、臍帯血細胞または骨髄細胞からESREを生成するために使用することができる。
【0046】
別の実施形態において、本発明は、赤血球の自己再生を調節する薬剤をスクリーニングするための方法を提供する。方法は、(i)薬剤のための候補物質を提供する段階;(ii)Bmi−1を含む細胞を物質に曝露する段階;及び(iii)Bmi−1が調整されるか、否かを決定する段階を含み、ここで、Bmi−1が調整されるとき、物質は、赤血球自己再生を調節することができる薬剤であると判定される。
【0047】
本発明は、また、赤血球細胞(RBC)へのESREの分化の間に生成された任意の細胞型、または、RBCの少なくとも1つの特性を示す細胞を含むESREの子孫を含む。一実施形態において、本発明は、ESRE、及び、その子孫細胞を作製する方法を含む。別の実施形態において、本発明は、ESREを誘導するためだけでなく、ESREの子孫のための培養系を含む。様々な実施形態において、本発明は、RBCを必要とする対象を治療するために、ESRE及びその子孫を使用する方法を含む。一実施形態において、本発明のESREは、RBCの生成を可能にする。本発明の細胞は、RBCの制限のない供給源を提供する。
【0048】
一実施形態において、本発明は、幹細胞、または等価の細胞からの増加した数の赤血球前駆細胞を生成または作成するための組成物及び方法を提供する。一実施形態において、本発明は、RBCを作製するための新しい方法論を提供する。別の実施形態において、本発明は、赤血球系統に向かって関連づけられた幹細胞分化の傾向を増加させる方法を教示する。
【0049】
一実施形態において、本発明は、組成物、製造された製品(物品)、及び/または、その子孫を含む胚様体(EB)、若しくは、幹細胞;十分な量の成長因子;ESREの形成(またはそれへの分化)を誘導するための、赤血球系統の関与を促進するための組成物または薬剤、または、その等価物を含む細胞の単離物、混合物、または、培養物を提供する。
【0050】
本発明は、ESREを作製するために、組成物、製造された製品、または本発明の細胞の単離体、混合物または培養物の使用を提供する。
【0051】
一実施形態において、本発明のESREは、赤血球膜の障害、グロビン遺伝子発現の障害、及び赤血球成熟の障害を含む、赤血細胞に固有の疾患の生物学を研究するために使用することができる。
【0052】
一実施形態において、本発明のESREは、所望の遺伝子、及び/または、タンパク質を発現するためのビヒクルとして使用することができる。例えば、本発明のESRE由来のRBCは、所望の遺伝子、及び/または、タンパク質を発現するためのビヒクルとして使用することができる。所望の遺伝子は、遺伝的に、幹細胞の段階で改変することができる(例えば、発明のESREに到達する前に)。あるいは、本発明のESREは、所望の遺伝子を発現させるために、自己再生段階で遺伝的に改変することができる。
【0053】
定義
特に指示のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、一般的に、本発明が属する技術分野の当業者により理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法及び材料は、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料が記載される。
【0054】
本明細書で使用される場合、以下の各々の用語は、本項でそれと関連する意味を有する。
【0055】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書において、1つ若しくはそれ以上(すなわち、少なくとも1つ)の冠詞の文法上の目的語を意味するために使用される。一例として、「an element(要素)」は、1つの要素またはそれ以上の要素を意味する。
【0056】
量、持続時間などの測定可能な値を意味する場合、本明細書中で使用される「約」は、指定された値からの±20%、または、±10%、より好ましくは、±5%、さらにより好ましくは、±1%、及び、尚、より好ましくは、±0.1%の変動を、その様な変動が開示された方法を実施するのに適切であるため、包含することを意味する。
【0057】
用語「異常」は、生物、組織、細胞またはそれらの構成要素の文脈で使用するとき、「正常な」(期待した)それぞれの特徴を提示する、それら生物、組織、細胞またはそれらの構成要素から、少なくとも1つの観察可能な若しくは検出可能な特徴(例えば、年齢、処置、時刻など)において異なる生物、組織、細胞またはそれらの構成要素を指す。一つの細胞または組織タイプに対して、正常な、または、期待される特徴は、異なった細胞または組織タイプに対して、異常であるかもしれない。
【0058】
本明細書で使用する場合、「自家」とは、物質が後に再導入される個体と同一の個体由来の生物学的物質を指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、「同種異系」とは、物質が導入される個体の同種の個体と遺伝的に異種の個体由来の生物学的物質を指す。
【0060】
本明細書で使用する用語「基礎培地」とは、アミノ酸、ビタミン、塩、及び、培養中の細胞の増殖をサポートするのに有効である栄養剤の溶液を指すが、追加の化合物を補充しなければ、通常、これらの化合物は、細胞の成長をサポートしない。栄養剤は、細胞により代謝できる炭素源(例えば、グルコースなどの糖)、並びに、細胞の生存に必要な他の化合物が挙げられる。これらは、細胞自体が、化合物(例えば、必須アミノ酸)を合成するのに必要な単数若しくは複数のタンパク質をコードする1つ若しくはそれ以上の遺伝子の非存在のために合成できない化合物であり、または、細胞が合成できる化合物に関しては、特定の発生状態のため、生合成に必要なタンパク質をコードする単数若しくは複数の遺伝子は、十分なレベルまで発現していない。霊長類の胚性幹細胞の成長をサポートする任意の基礎培地が、実質的に未分化状態で使用することができるが、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ノックアウト−DMEM(KO−DMEM)、及びDMEM/F12などの多くの基礎培地が、哺乳動物の細胞培養の当該分野では、公知である。
【0061】
用語「Bmi−1」は、発生を通して多くの遺伝子の転写抑圧的な状態を維持するために必要な複合体クラスである、ポリコーム群多タンパク質PRC−1様複合体の構成成分を意味する。Bmi−1は、成体自己再生造血幹細胞の維持のために必要とされる(Park et al.,2003 Nature 423:302−305)。
【0062】
本明細書で意図するように、「細胞培養培地」という語句は、真核細胞、特に哺乳動物細胞、より詳細にはヒト細胞の成長を維持しやすい任意の培地、特に、任意の液体培地に関する。
【0063】
用語「細胞」及び「細胞の集団」は、相互に交換可能に使用され、複数の細胞、即ち、1個より多くの細胞を意味する。集団は、1つの細胞型を含む純粋な集団であってもよい。あるいは、集団は、1つより多くの細胞型を含んでもよい。本発明において、細胞集団が含んでもよい細胞型の数に制限はない。
【0064】
本明細書で意図する通り、「造血系統の細胞」という語句は、哺乳動物、特にヒトの血液中に見出される細胞に関し、及び、分化時に、そのような血液細胞を生成しやすい細胞に関する。より具体的には、本発明に基づく「造血系統の細胞」という語句は、赤血球系列の細胞、すなわち、赤血細胞(赤血球とも呼ばれる)、及び、分化時に、直接的に、即ち、1段階で、または、間接的に、即ち、数段階のいずれかで、赤血細胞を生成しやすい細胞に関する。当業者によく知られているように、赤血球系列の細胞は、特に、分化の上昇する程度で分類されて、胚性幹細胞、造血幹細胞(HSC)、プロ赤芽球、赤芽球、網状赤血球、除核細胞(特に、除核網状赤血球)、及び、赤血細胞を含む。本発明に基づく造血系統の細胞は、その結果、特に、幹細胞、特に、胚性幹細胞(ESC)、造血幹細胞(HSC)、誘導多能性幹(iPS)細胞などの成体幹細胞、並びに、胚様体、また、プロ赤芽球、赤芽球、網状赤血球、及び、除核細胞(特に除核網状赤血球)を包含する。好ましくは、本発明の造血系統の細胞はヒト細胞である。
【0065】
本明細書で使用する場合、用語「凝固因子」は、対象における出血症状の持続時間を予防し、または、減少させる分子、若しくは、その類似体を指す。
【0066】
本明細書で使用される用語「コンパレータ制御」は、疾患状態、例えば、単数若しくは複数の癌性、非癌性状態が知られている対象から事前に収集した、及び保存した試料を用いて、試験試料と同時に決定され得る発現または活性のレべルに関する。
【0067】
用語「分化細胞」は、細胞の分化プロセスにおいて、より特殊化していない細胞型(例えば、幹細胞またはESRE)の細胞由来の、より特殊化した細胞型の細胞を指す。
【0068】
「分化培地」は、完全に分化していない幹細胞、ESRE、または、他のそのような前駆細胞が、培地中で培養した場合、分化した細胞の幾つか、または、すべての特徴を有する細胞に発達するように、添加剤を含むか、または添加剤が欠如した細胞成長培地を参照するために本明細書中で使用される。
【0069】
「疾患」は、動物の健康状態であり、ここで、動物が恒常性を維持することが不可能であり、病気が、その後、改善されない場合、その結果、動物の健康は悪化し続ける。
【0070】
これとは対照的に、動物における「障害」は、動物が恒常性を維持することができるが、しかし障害のない状態にあるよりも、むしろ、動物の健康状態があまり良好でない健康状態である。未治療に放置しても、障害は必ずしも動物の健康状態の更なる低下を引き起こすことにはならない。
【0071】
疾患または障害は、疾患または障害の徴候または症状の深刻度、そのような徴候または症状を患者が経験する頻度、またはその両者が低減するならば、「緩和」される。
【0072】
本明細書で使用する用語「赤血球前駆細胞」とは、赤血細胞に分化することができる赤血細胞の前駆細胞を指す。
【0073】
本明細書で用いる用語「広範囲に増殖した」は、少なくとも約30、または、それ以上の細胞集団に倍加することを経験した細胞集団を指し、ここで、細胞が非老化であり、不死化されず、元となる細胞種で見られる正常な核型を維持し続ける。
【0074】
本明細書で使用する場合、「説明資料」は、出版物、記録、図面、または化合物、組成物、ベクター、または本明細書に引用した様々な疾患若しくは障害の緩和をもたらすためのキット中の本発明の送達系の有用性を伝達するために使用することができる任意の他の表現媒体を含む。場合により、または、交互に、説明資料は、哺乳動物の細胞または組織における疾患または障害を緩和する1つ若しくはそれ以上の方法を記述することができる。本発明のキットの説明資料は、例えば、本発明の同定された化合物、組成物、ベクター、または送達系を含む容器に貼り付けることができる、または、同定された化合物、組成物、ベクター、または送達系を含む容器と一緒に出荷することができる。また、説明資料は、説明資料及び化合物が、レシピエントの協力により使用することを意図して、容器とは別に出荷することもできる。
【0075】
本明細書で意図する、用語「成長」は、培養細胞の増殖に関連する。本明細書で意図する、用語「分化」は、培地で培養した細胞が最初に細胞培養培地に播種するために使用される細胞には存在しない細胞特徴を取得することに関する。本明細書で意図する、「分化」とは、特に、更に赤血細胞への分化に向かう経路に細胞を関係付ける特徴の取得を意味する。その結果、本発明の細胞培養培地は、胚性幹細胞などの未分化細胞、造血幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPS)などの成体幹細胞、または、胚様体を成長させるために、及び、網状赤血球、除核細胞、または、赤血細胞にそれらを分化させるために、特に有用である。
【0076】
本明細書で使用する、止血障害は、自発的に、または、フィブリン血栓を形成する能力の障害または不能に起因する外傷の結果としてのいずれかで、出血する傾向により特徴付けられる、遺伝性または後天性の状態を意味する。その様な障害の例としては、血友病が挙げられる。三つの主要な形態は、血友病A(第VIII因子欠損症)、血友病B(第IX因子欠損症、または「クリスマス病」)、及び、血友病C(第XI因子欠損症、軽度の出血傾向)、フォン・ヴィレブランド病、第XI因子欠損症(PTA欠損症)、第XII因子欠損症、フィブリノゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子、または、第XIII因子の欠損または構造異常であり、ベルナール・スーリエ症候群は、GPIbの欠陥や欠損症である。vWFのための受容体であるGPIbは、欠陥があると初期血栓形成(初期止血)の欠如につながり、出血傾向を増加させ、グランツマン及びナエゲイ(グランツマン血小板無力症)の血小板無力症に導くことになる。肝不全(急性及び慢性型)では、肝臓による凝固因子の不十分な生成がある。これは、出血リスクを増加させるかもしれない。
【0077】
「単離された細胞」とは、他の成分から分離された細胞、及び/または、組織または哺乳動物における単離された細胞に自然に付随する細胞を指す。
【0078】
用語「患者」、「対象」、「個体」などは本明細書において交換可能に使用され、そして、任意の動物、または、本明細書に記載の方法に従い、生体外またはその場でのその細胞を指す。ある非限定の実施形態において、患者、対象または個体は、ヒトである。
【0079】
本明細書で使用する場合、「実質的に精製された」細胞は、本質的に他の細胞型が存在しない細胞である。従って、実質的に精製された細胞は、それが通常はその天然に存在する状態に関連付けられている他の細胞型から、精製された細胞を指す。
【0080】
本明細書で用いられる用語「自己再生の実質的な能力」は、細胞の子孫の複数世代の生成をもたらす細胞分裂の多数のサイクルを実行する能力を有することを意味する(従って、各細胞分裂で、1つの細胞が、2つの「娘細胞」を生成し、ここで、少なくとも1つの娘細胞が、更に細胞分裂を行うことが可能である)。「自己再生のための実質的な能力」の一つの尺度は、少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、またはそれ以上の細胞倍加を経験する細胞集団の能力で示される。「自己再生の実質的な能力」の別の尺度は、細胞培養継代後の組織培養容器において、再集団化する、または、コンフルエンスに近づく、細胞集団の能力の維持により示される(同一または類似の培養条件が維持される場合)。従って、「自己再生のための実質的能力」の例は、細胞集団が早期の細胞培養倍加の間(細胞集団が、約10回より多くの集団倍加を受ける前など)、このような再集団化のために必要な時間の、少なくとも約25%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%の時間の期間中に組織培養皿に再集団化し続けるときに実証される。「自己再生のための実質的能力」の別の尺度は、集団倍加時間の一定した速度、または、集団倍加時間の一定した、及び比較的速い速度の維持である。
【0081】
「試験薬剤」、または、そうでなければ、本明細書で使用される「試験化合物」は、本明細書に記載の1つ若しくはそれ以上のアッセイにおいてスクリーニングされるべき薬剤または化合物を指す。試験薬剤は、有機小分子、公知の医薬品、ポリペプチド;オリゴ糖及び多糖類などの炭水化物;ポリヌクレオチド;脂質またはリン脂質;脂肪酸;ステロイド;または、アミノ酸類似体を含む多様な一般タイプの化合物を含むが、それらに限定されない。試験薬剤は、天然産物ライブラリー及びコンビナトリアルライブラリーなどのライブラリーから得ることができる。また、短時間で数千の化合物のスクリーニングを可能にする自動化アッセイの方法が公知である。
【0082】
「治療的」処置は、病状の徴候または症状を示す対象に、それらの徴候または症状を減少させるか、または、排除する目的で、投与される処置である。
【0083】
本明細書で使用するように、「疾患または障害を処置する」は、疾患または障害の徴候または症状の患者が経験する頻度、または重症度を低下させることを意味する。
【0084】
本明細書で使用される語句「治療上有効量」は、疾患または障害を予防または治療(発病の遅延または予防;進行の予防;阻止、減少または逆転)するのに、十分な量または有効な量を指す。
【0085】
範囲:本開示を通して、本発明の様々な態様が、範囲形式で提示することができる。範囲形式での記載は、単に、便宜上、及び、簡潔さのためであることを理解すべきであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではない。したがって、範囲の記載は、具体的には、すべての可能なサブ範囲、並びに、その範囲内の個々の数値を開示していると考えるべきである。たとえば、1〜6などの範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など、並びに、その範囲内の個々の数字、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6などの具体的に開示されたサブ範囲を有すると考えるべきでる。これは、範囲の広さにかかわらず適用される。
【0086】
説明
本発明は、広範囲に自己再生でき、及び、未だ、赤血細胞(RBC)に分化する能力を保持することができるヒト細胞集団の生成の発見に関する。これらの細胞は、本明細書では、広範囲に自己再生する赤芽球(ESRE)と称される。本発明の細胞は、とりわけ、輸血可能なRBCの再生可能な供給源として、機能する。
【0087】
一実施形態において、本発明のESREは、初期赤芽球を表すが、除核RBCを生成する能力を維持しながら、限界のない増殖能を保持する細胞である。従って、ESREは、血液を生成するための供給源として機能する。
【0088】
一実施形態において、本発明のESREは、完全赤血球前駆体の可能性の出現につながる分化手順を使用して、幹細胞の分化から生成される。幹細胞の例としては、胚性幹細胞、成体幹細胞、iPS細胞などを含むが、それに限定されない。典型的な幹細胞の更なる非限定的な例としては、異なる成体または胚性幹細胞;全能性、多能性、若しくは、多分化能性幹細胞または始原細胞もしくは前駆細胞;臍帯血幹細胞;胎盤幹細胞;骨髄幹細胞;羊水幹細胞;神経幹細胞;循環する末梢血幹細胞;間葉系幹細胞;胚性幹細胞;脂肪組織由来の幹細胞;剥離歯由来の幹細胞由来;毛包幹細胞;皮膚幹細胞;単為生殖的に誘導した幹細胞;再プログラムした幹細胞;及び、側集団の幹細胞を含む。
【0089】
ある実施形態において、本発明で使用される幹細胞は多能性である。一実施形態において、多能性幹細胞は、胚幹細胞または胚由来の細胞である。ある実施形態において、多能性幹細胞は、誘導された多能性幹細胞である。ある実施形態において、多能性幹細胞は、成体幹細胞である。ある実施形態において、多能性幹細胞は、ヒト細胞である。ある実施形態において、多能性幹細胞は、分化する前に、遺伝的に操作される。
【0090】
一実施形態において、本発明のESREに幹細胞を分化することは、胚様体(EB)の生成、及び、造血系統への分化の形成を誘導する条件下で幹細胞を培養することを含む。一実施形態において、幹細胞の分化は、所望の造血運命を生成するための成長因子の逐次適用を含む。
【0091】
輸血用の利用可能な血液のために、重要な必要性がある。本発明は、RBCのための再生可能な供給源として機能するヒトESREを生成するための方法及び組成物を提供する。一実施形態において、本発明のESRE由来のRBCは、輸血可能なRBCの源である。従って、一実施形態において、本発明の細胞は、血液銀行及び輸血に有用である。本発明の細胞及び方法は、また、献血に関する伝統的な依存性を超え、安全で信頼性の高い進歩を提供し、及び、利用可能な血液の深刻な不足を防ぐのを助ける。
【0092】
本発明は、本発明の細胞を生成するために、完全赤血球の運命に対して、原始赤血球の運命を過ぎた幹細胞と区別することが必要であるという発見に基づいている。
【0093】
一実施形態において、この方法は、ESREを生体外で生成することが可能な赤血球前駆体の可能性を発生する条件で幹細胞を培養することを含む。これらのESREは、その後、望ましい分化細胞、例えば、RBCに分化させることができる。
【0094】
一実施形態において、ESREは、本発明のESREに出発細胞集団の分化を促進する条件下で、出発細胞集団を培養することにより生成される。一実施形態において、出発細胞源は、幹細胞の任意のタイプとすることができる。一実施形態において、幹細胞は、ヒト多能性幹細胞である。
【0095】
一実施形態において、本発明のESREへのヒト多能性幹細胞の分化は、造血運命を生成するための成長因子の逐次適用を含む方法により生体外で達成される。また、培地には、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invistrogen社)を、細菌汚染を防ぐために含む。一実施形態において、培養の最初の段階は、少なくとも2つの成長因子の存在下で無血清培地中でヒト多能性幹細胞を含む細胞培養物を培養することを含有し、ここで、成長因子は、胚様体へのヒト多能性幹細胞の分化を誘導するのに十分な量である。一実施形態において、成長因子は、胚様体へのヒト多能性幹細胞の分化を誘導するのに十分な時間で存在する。一実施形態において、少なくとも2つの成長因子は、BMP4及びVEGFを含む。従って、本発明は、BMP4を約25ng/mlの濃度で;VEGFを約50ng/mLの濃度で含む、造血系細胞の成長、及び/または、分化のための細胞培養培地に関する。一実施形態において、培養の第一段階は、約2日間(48時間)、細胞を培養することを含む。別の実施形態において、BMP4は、約10ng/mL〜約50ng/mLの濃度範囲であり;VEGFは、約25ng/mL〜約100ng/mLの濃度範囲である。
【0096】
一実施形態において、培養の第二段階は、少なくとも3つの成長因子の存在下で無血清培地中での培養の第一段階からの細胞を含む細胞培養物を培養することを含有し、ここで、成長因子は、中胚葉分化経路に沿って分化の第一段階からの細胞の分化を誘導するのに十分な量である。一実施形態において、成長因子は、中胚葉分化経路に沿って、培養の第一段階からの細胞の分化を誘導するのに十分な時間で存在する。一実施形態において、少なくとも3つの成長因子は、BMP4、VEGF、bFGF、及び、Flt3Lを含む。従って、本発明は、造血系の細胞の成長、及び/または、分化のため、約25ng/mL濃度のBMP4;約50ng/mL濃度のVEGF;20ng/mL濃度のbFGF;約10ng/ml濃度のFlt3Lを含む細胞培養培地に関する。別の実施形態において、BMP4は、約10ng/mL〜約50ng/mLの濃度範囲であり;VEGFは、約25ng/mL〜約100ng/mlの濃度範囲であり;bFGFは、約5ng〜約50ng/mLの濃度範囲であり;Flt3Lは、2ng/mL〜約30ng/mLの濃度範囲である。また、培地は、細菌汚染を防ぐために1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invistrogen社)を含有することができる。一実施形態において、培養の第二段階は、2日間(48時間)細胞を培養することを含む。
【0097】
一実施形態において、培養の第三段階は、少なくとも4つの成長因子の存在下で無血清培地中での培養の第二段階からの細胞を含む細胞培養物を培養することを含み、ここで、成長因子は、造血分化経路に沿って分化の第二段階からの細胞の分化を誘導するのに十分な量である。一実施形態において、成長因子は、造血分化経路に沿って分化の第二段階からの細胞の分化を誘導するのに十分な時間で存在する。一実施形態において、少なくとも4つの成長因子は、bFGF、VEGF、Flt3L、及び、SCFを含む。従って、本発明は、約20ng/mLの濃度のbFGF;約50ng/mLの濃度のVEGF;約10ng/mlの濃度のFlt3L;約50ng/mlの濃度のSCFを含む造血系の細胞の成長、及び/または、分化のための細胞培養培地に関する。別の実施形態において、bFGFは、約5ng/mL〜約50ngの濃度範囲であり;VEGFは、約25ng/mL〜約100ngの濃度範囲であり;Flt3Lは、2ng/mL〜約30ng/mLの濃度範囲であり;SCFは、約25ng/mL〜約100ng/mLの濃度範囲である。また、培地は、細菌汚染を防ぐために1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen社)を含有する。一実施形態において、培養の第三段階は、2日間(48時間)、細胞を培養することを含む。
【0098】
一実施形態において、ES細胞の分化の第四段階は、少なくとも7つの成長因子の存在下で、無血清培地中で培養することを含み、ここで、成長因子は、造血分化経路に沿ってさらに培養の第三段階からの細胞の分化を誘導するのに十分な量である。一実施形態において、成長因子は、造血分化経路に沿ってさらに培養の第三段階からの細胞の分化を誘導するのに十分な時間で存在する。一実施形態において、少なくとも7つの成長因子は、VEGF、SCF、IL6、TPO、IL11、IGF1、及びEPOが含まれる。従って、本発明は、約50ng/mLの濃度のVEGF;約50ng/mLの濃度のSCF;約10ng/mLの濃度のIL6;約100ng/mLの濃度のTPO;約5ng/mLの濃度のIL11;約25ng/mLの濃度のIGF1;約0.05U/mLの濃度のEPOを含む、造血系の細胞の成長、及び/または、分化のための細胞培養培地に関する。一実施形態において、VEGFは、約25ng/mL〜約100ng/mLの濃度範囲であり;SCFは、約25ng/mL〜約100ng/mLの濃度範囲であり;IL6は、約2ng/mL〜約50ng/mLの濃度範囲であり;TPOは、約50ng/mL〜約200ng/mLの濃度範囲であり;IL11は、約2ng/mL〜約20ng/mLの濃度範囲であり;IGF1は、約10ng/mL〜約50ng/mLの濃度範囲であり;EPOは、約0.01U/mL〜約0.2U/mLの濃度範囲である。また、媒地は、汚染を避けるために、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invistrogen社)を含有する。一実施形態において、培養の第四段階は、2日間(48時間)、細胞を培養することを含む。
【0099】
一実施形態において、培養の5段階は、少なくとも3つの成長因子の存在下で無血清培地中での培養の第四段階からの細胞を含む細胞培養物を培養することを含み、ここで、成長因子は、造血成熟経路に沿って培養の第四段階からの細胞の分化を誘導するのに十分な量である。一実施形態において、成長因子は、造血成熟経路に沿って培養の第四段階からの細胞の分化を誘導するのに十分な時間で存在する。一実施形態において、少なくとも3つの成長因子は、SCF、IGF1、及び、EPOを含む。従って、本発明は、約100ng/mLの濃度のSCF;約25ng/mLの濃度のIGF1;約2U/mLの濃度のEPOを含む、造血系の細胞の成長、及び/または、分化のための細胞培養培地に関する。一実施形態において、SCFは、約50ng/mL〜約200ng/mLの濃度範囲であり;IGF1は、約10ng/mL〜約50ng/mLの濃度範囲であり;EPOは、約0.05U/mL〜約5U/mLの濃度範囲である。一実施形態において、培養の第五段目は、8日目〜38日目で、細胞を培養することを含む。
【0100】
一実施形態において、本発明は、表1に記載の分化手順を提供する。
【表1】
【0101】
しかし、本発明は、表1に記載されたヒトES細胞の分化に限定されない。むしろ、本発明は、本発明のESREにより得られる中胚葉/血液の運命へのヒトES細胞の分化に対する代替アプローチを含む。これは、本発明がhESCから出現する完全赤血球前駆細胞は、差次的遺伝子発現及び細胞形態により原始的赤血球前駆細胞と区別できるという発見に、部分的に、基づいているためである。
【0102】
ヒトES細胞を中胚葉/血液運命に分化するための例示的な代替アプローチは、ヒト胎児肝クローンB(FH−B−hTERT)細胞とES細胞を共培養すること;ES細胞におけるHoxB4の発現を増加させること;ES細胞の分化中、DKKのようなアンタゴニストを使用してWntシグナル伝達経路を阻害すること;及び、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)欠損間質細胞株OP9で、ES細胞を共培養することを含むが、それらに限定されない。参照:Olivier et al.,2006,Exp.Hematol.1635−1642、Kyba et al.,2002,Cell 109:29−37、Paluru et al.,2014,Stem Cell Res.12:441−451、及びVodyanik et al.,2005,Blood 105:617−626;これらのそれぞれは、その全体を参照することにより、本明細書に組み入れたものとする。
【0103】
ESREの生成:
一実施形態において、ESREは、本明細書の他の場所で考察したES細胞の分化手順に起因する完全赤血球前駆細胞集団に由来する。一実施形態において、完全赤血球前駆細胞集団は、表1の手順からのES細胞の分化の約17〜40日の間に発生する。これらの完全赤血球前駆細胞は、EPO(10U/ml)及びSCF(100ng/ml)を補充したメチルセルロースでコロニーアッセイを実施することにより認識できる。
【0104】
一実施形態において、ESREは、増殖培地に分化したES細胞を配置することにより生成される。一実施形態において、増殖培地は、2U/mLのヒト組換えEPO(Amgen社)、100ng/mLのヒト組換えSCF(PeproTech社)、10
−6Mのデキサメタゾン(Sigma社)、40ng/mLのヒト組換えインスリン様成長因子−1(PeproTech社)、0.4%脂質混合物EX−CYTE(Millipore社)及び、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen社)を補充したStemSpan(商標)−ACF(Stem Cell Technologies社)を含む。一実施形態において、ヒトES細胞は、ESREが生体外培養することにより生成できる完全赤血球の可能性を含むために、約17〜40日間分化される。一実施形態において、本発明の増殖培地中で分化したES細胞の培養は、分化することなく増殖し続ける赤血球前駆体の増殖をもたらし、即ち、それらが自己再生分裂を受ける。一実施形態において、これらの自己再生赤芽球は、少なくとも45日間連続して自己再生を続行する。
【0105】
一実施形態において、所望の細胞集団(例えば、自己再生赤芽球)の増殖は、細胞中のBmi−1を調節することにより調節できる。これは、本発明の一部が、Bmi−1は、赤血球自己再生の中心的な調節剤であるという発見に基づいているからである。従って、本発明は、赤血球自己再生を調節するための方法を提供する。一実施形態において、方法は、(i)自己再生赤芽球に、自己再生赤芽球の増殖を調節するために十分な量のBmi−1、または、その変異体、若しくは、その断片、及び/または、Bmi−1調節剤を提供し;及び(ii)増殖の調節のために十分な時間で自己再生赤芽球を培養する段階を含む。自己再生赤芽球に、Bmi−1、または、その変異体、若しくは、その断片、及び/または、Bmi−1調節剤を提供するための技術は、当該分野で周知である。例えば、技術は、媒地中で細胞を培養すること、及び培地に薬剤を提供することを含む。本発明は、これに限定されない。増殖調節を行うのに十分な量は、適切に、当業者によって決定されることができる。自己再生赤芽球は、当該分野で周知の一般的な技術を用いて培養することができる。増殖の調節のための十分な時間は、本明細書の視点で当業者により、適切に決定することができる。
【0106】
従って、本発明の別の態様によれば、増殖の調節のために十分な量のBmi−1またはその変異体もしくは断片、及び/または、Bmi−1調節剤を含む、自己再生赤芽球の増殖を調節するための組成物が提供される。
【0107】
好ましくは、本発明は、自己再生赤芽球の増殖を促進するための組成物及び方法を提供する。本発明は、当該分野で顕著な効果を提供する。本明細書で使用する場合、用語「増殖の促進」は、自己再生赤芽球の自己再生を促進することを指す。細胞集団に関連した用語「増殖の促進」は、未分化状態を維持する自己再生赤芽球の割合が細胞集団において増加することを意味する。細胞を観察することにより、増殖の促進が発生するか、否かを決定できる。
【0108】
本発明で使用するためのBmi−1、または、その変異体、若しくは、その断片、及び/または、Bmi−1の調節剤は、外因性または内因性であり得る。好ましくは、薬剤は、外因性である。本発明では、外因性のBmi−1、または、その等価物が細胞に提供され、それにより、細胞の増殖を調節(特に促進)することを可能にする。この効果は、従来予測することができなかった。本発明のBmi−1、または、その変異体、若しくは、その断片、及び/または、Bmi−1調節剤は、内因性であってもよい。この場合には、内因性のBmi−1は、その効果を高めるために、外因性薬剤を補充してもよい。
【0109】
本発明での使用のためのBmi−1、及び、その変異体、若しくは、その断片、及び/または、Bmi−1調節剤は、核酸、または、タンパク質、若しくは、他の形態であってもよい(例えば、小分子、脂質分子、糖、または、その複合体)。
【0110】
別の実施形態において、本発明のBmi−1調節剤は、Bmi−1の活性化剤を含む。そのような活性化剤は、当該分野で公知の技術を用いて、物質のライブラリーを選別することにより得られる。そのようなBmi−1活性化剤の例としては、Bmi−1のリン酸化状態を制御することができる分子、転写レベルでのBmi−1の発現を制御することができる分子などを含むが、それらに限定されない。
【0111】
一実施形態において、本発明のESREの生成及び維持は、細胞におけるBmi−1を活性化する薬剤を細胞に提供することにより改善される。一実施形態において、自己再生赤芽球においてBmi−1を活性化することは、細胞が75日間以上増殖し続けることを可能にする。
【0112】
しかし、本発明は、自己再生を促進するために、及び/または、自己再生赤芽球の自己再生を促進するために、Bmi−1を活性化することに限定するべきではない。むしろ、本発明は、自己再生を促進する、及び/または、自己再生赤芽球の自己再生を促進するためにヘッジホッグを調整することを含む。
【0113】
ヘッジホッグリガンドは、ヘッジホッグ経路においてシグナルを誘導することにより、ヘッジホッグを調節することができ、そして本発明の組成物及び方法において有用であり得る。非限定のヘッジホッグリガンドの例は、ソニックヘッジホッグ(Shh)、デザートヘッジホッグ(Dhh)、インディアンヘッジホッグ(Ihh)、ティギー・ウィンクルヘッジホッグ(Thh)、プルモルファミン、及びオキシステロールを含む。オキシステロールは、天然に発生するコレステロールの酵素的及び非酵素的酸化から誘導される分子である。オキシステロールの例としては、20(S)−ヒドロキシコレステロール(20(S)−OHC)、7β−ヒドロキシコレステロール(7β−OHC)、19−ヒドロキシコレステロール(19−OHC)、22(R)−ヒドロキシコレステロール(22(R)−OHC)、22(S)−ヒドロキシコレステロール(22(S)−OHC)、24−ヒドロキシコレステロール(24−OHC)、25−ヒドロキシコレステロール(25−OHC)、26−ヒドロキシコレステロール(26−OHC)、天然の20(S)−ヒドロキシコレステロール(nat−20(S)−OHC)、天然の20(R)−ヒドロキシコレステロール(nat−20(R)−OHC)、天然の末端にアルキン基を有する20(S)−ヒドロキシコレステロール(nat−20(S)−yne)、及び天然の20(S)−ヒドロキシコレステロールのエナンチオマー(ent−20(S)−OHC)を含むが、それらに限定されない。参照:Moon et al.,2011,Cell Res.21:1305−1315、Nachtergaele et al.,2012,Nat.Chem.Biol.8:211−220、及びWang et al.,2012,Oncogene 31:187−199;これらのそれぞれは、その全体を参照することにより、本明細書に組み入れたものとする。
【0114】
更に、当業者は、本明細書に例示した本開示及び方法を備えるとき、ヘッジホッグリガンドは、生化学及び細胞生物学の分野で公知の基準により同定することができるので、将来発見されるリガンドも含まれることを認識するであろう。従って、本発明は、本明細書に例示または開示される特定のヘッジホッグリガンド活性体に何ら限定されるものではなく、むしろ、本発明は、当該分野で知られるように、及び、将来、発見されるように有用であることが、通常の技術者(routineer)により理解されるこれらの活性化剤を包含する。
【0115】
従って、本発明の一態様は、自己再生赤芽球の自己再生の発生、及び/または、促進を行なうために、臍帯血細胞または骨髄細胞において、Bmi−1を活性化する方法を提供する。別の態様において、本発明は、自己再生赤芽球の自己再生を発生し、及び/または、自己複製を促進するために、臍帯血細胞または骨髄細胞においてヘッジホッグを調節する方法を提供する。
【0116】
ESREからのRBCの生成:
一実施形態において、分化培地におけるESREの配置は、それらの後期赤芽球及び網状赤血球への成熟をもたらす。
【0117】
本発明は、時間の広範な期間、ヒト赤芽球を増殖するための組成物及び方法を提供する。これは、本発明が広範な自己再生を受けることができるが、未だ、RBCに分化する能力を保持することができる、ESREを生成する組成物及び方法を提供するためである。本発明のESREは、生体外で、成熟赤血球を大量に製造するために使用することができる。
【0118】
一実施形態において、本発明は、赤血球細胞と多能性幹細胞由来の除核赤血球細胞を作製し、及び、使用するための組成物及び方法を提供する。
【0119】
従って、本発明は、また、ヒトESREに対して分化した細胞を提供し、ここで、細胞は、ヒトESREの子孫である。ESREの「子孫」は、クローン増殖または分化の結果としてESRE由来の任意の、及び、全ての細胞を指す。本明細書で使用する場合、「始原細胞」は、一連の細胞分裂により、異なる細胞系譜を発生させることを約束する親細胞である。特定の始原細胞型は、時には、マーカーによって同定することができる。「前駆細胞」は、別の細胞がそれから形成された細胞を指す。それは、後に、発生的に成熟した細胞の存在に先行する細胞を包含する。細胞分裂によって特徴付けられる始原細胞の成熟とは対照的に、前駆細胞の発生成熟は、差次的遺伝子発現、またはサイズ、形態、若しくは、位置の変更を含む、任意の数のプロセスまたは事象を含むが、それらに限定されない。本明細書で使用する場合、始原細胞及び前駆細胞の両方は、多能性幹細胞からの子孫であり、多能性幹細胞とは異なる。「発生中間体」の細胞は、多能性幹細胞とは異なり、最終的に分化した細胞型である始原細胞または前駆細胞のいずれかである任意の細胞を指す。
【0120】
本発明のESREには、ESREの集団、及び、複数のESRE(及びその子孫)、及び、ESREの培養物(細胞培養物、及び、子孫の培養物)が挙げられる。ESREの集団、または複数のESRE、またはESREの培養物(またはその子孫)は、このような細胞の集まりがあることを意味する。様々な実施形態において、ESRE集団、複数のESREまたは、ESREの培養物(またはその子孫)は、集団、複数または、培養物における細胞の全数の少なくとも25%、50%、75%、90%、または、それ以上を表すヒトESREを含む。
【0121】
ESREの集団または複数のESREで、またはESREの培養物において、大部分の細胞は、存在するすべての細胞とは限らないが、ESREを示す特定の発現型マーカーを発現するかもしれず、または、しないかもしれない。このような細胞は、一般的に、存在するESRE総数のより小さいパーセンテージの集団、複数または、培養物に存在する。様々な実施形態において、ESRE集団、複数のESREまたは、ESREの培養物は、約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%〜95%、若しくはそれ以上の(例えば、96%、97%、98%など)の細胞が特定の発現型マーカーを発現する細胞を含む。
【0122】
所定の発現型のマーカーの存在または非存在は、本明細書の他の箇所に開示される方法を用いて決定することができる。それ故、所定の発現型のマーカーの存在または非存在は、マーカーに結合する抗体により決定することができる。従って、マーカーの発現が、所定のESRE集団、複数のESREまたは、ESREの培養物中に存在しているどの、または、どれだけ多くのESREが、マーカーを発現するかを示すために、それぞれのマーカーに結合する抗体により決定することができる。これら、及び、他の発現型マーカーを検出するさらなる方法は、当業者に公知である。
【0123】
一実施形態において、本発明は、本発明の方法により生成されるESREを提供する。一実施形態において、本発明は、本発明の方法により生成される赤血球細胞を提供する。一実施形態において、本発明は、本発明の方法により生成されるRBCを提供する。
【0124】
本発明のESREは、輸血のための安全で、十分な細胞の代替供給源だけでなく、欠陥RBC(例えば、低酸素症及び鎌状赤血球貧血症)が関与する状態の治療用に提供するために、十分な量のRBCを生成する機会を提供する。
【0125】
細胞の培養
本発明は、除核赤血細胞(RBC)を生成する能力を維持する間、形態学的に、約束された初期赤芽球を表すが、しかし、制限のない増殖能を保持すると思われるヒト細胞集団が生成されたことの予想外の発見から生じる。従って、ESREは、血液の生体外生成のための実行可能な系として機能する。一実施形態において、ESREは、少なくとも45日間、連続した自己再生を示す。
【0126】
本発明は、また、ヒト赤芽球が長時間(例えば、連続培養の45日間を通して)に亘って、ヒト胚性幹細胞、ヒト誘導多能性幹(iPS)細胞などから、RBC、または、網状赤血球の大量生成を可能にするために増殖することができたという発見に基づく。一実施形態において、本発明は、ヒトESREを製造する組成物及び方法を提供し、それにより、ESREが膨大な量のRBCの発生源を提供する。
【0127】
ESREの細胞培養物は、様々な形式を取ることができる。例えば、「接着培養」は、適切な成長培地と接触している細胞が存在し、基材に接着しながら、生存または増殖可能な培地を指す。同様に、「連続流培養」は、細胞の生存性、例えば成長を維持するために、新鮮な培地の連続流中の細胞の培養を指す。
【0128】
一実施形態において、本発明は、少なくともESRE由来のRBCを有する培養系を含む。本明細書の他の箇所で記載した様々な実施形態において、本発明は、RBC細胞分化の分析を実施し、RBC細胞分化の調節剤をスクリーニングし、同定し、そして、RBC細胞分化の調節剤の効果を監視するために、本発明のESRE由来RBC細胞培養系を使用する方法を含む。
【0129】
本発明の培養系は、細胞を培養するために有用な、当該分野で公知のいずれかの種類の基質、表面、足場、または、容器を含むことができる。このような容器の非限定的な例としては、細胞培養プレート、皿、フラスコを含む。その他の好適な基材、表面、及び、容器は、以下の文献で、Culture of Animal Cells:a manual of basic techniques(3rd edition),1994,R.I.Freshney(ed.),Wiley−Liss,Inc.;Cells:a laboratory manual(vol.1),1998,D.L.Spector,R.D.Goldman,L.A.Leinwand(eds.),Cold Spring Harbor Laboratory Press;Embryonic Stem Cells,2007,J.R.Masters,B.O. Palsson and J.A.Thomson(eds.),Springer;Stem Cell Culture,2008,J.P.Mather(ed.)Elsevier;及び、Animal Cells:culture and media,1994,D.C.Darling,S.J.Morgan John Wiley and Sons,Ltd、に記載されている。いくつかの実施形態において、培養系は、二次元足場を含む。他の実施形態において、培養系は、三次元足場を含む。
【0130】
ヒトESRE及びその子孫は、単離した、または精製した、個々の細胞、及び細胞集団及び複数の細胞を含む。本明細書で使用する場合、用語「単離した」、または、「精製した」は、天然の状態から「ヒトの手により」、作られた、または、改変されたことを指す(即ち、それは、元の天然の生体内環境の1つ若しくはそれ以上の構成要素から除去、または、分離されたとき)。単離された組成物は、組成物が天然に存在する生物の他の生物学的成分から、実質的に、分離される必要はない。単離された細胞の例としては、ヒトなどの対象から得られたESREであろう。「単離された」は、また、組成物、例えば、一つまたはそれ以上の汚染物質(即ち、細胞とは異なる、材料及び物質)から分離されたESREを指す。ESREの集団、複数のESREまたは、ESREの培養物(またはそれらの子孫)は、一般的には、天然に関連している細胞及び物質を実質的に含まない。用語「精製された」は、一般的に、多くの、大半の、若しくは、全ての天然に関連する物質が排除された組成物を指す。従って、ESREまたはその子孫は、他の組織成分から分離したときに、実質的に精製されたと見なされる。従って、精製されたというのは、絶対的な純度を必要とはしない。更にその上、「精製された」組成物は、1つ若しくはそれ以上の他の分子と組み合わせることができる。それ故、用語「精製された」とは、組成物の組み合わせを排除しない。精製されたというのは、数値または質量で、少なくとも、約20%、30%、40%、50%、60%、またはそれ以上であり得る。純度は、また、約70%若しくは80%、若しくはそれ以上にすることができ、そして、例えば、90%、またはそれ以上にも大きくすることができる。純度は、例えば、薬学的担体中では、重量%での細胞または分子の量が、重量で、質量の50%、または60%より少ない量であり得るが、通常、天然に関連している他の構成成分と比較して、細胞または分子の相対的割合が大きくなるであろう。細胞の集団または細胞の組成物の純度は、当業者に知られる適切な方法により評価することができる。
【0131】
本発明のESRE及びその子孫は、滅菌され、及び滅菌環境に維持することができる。その様なESRE、その複数、集団、及び培養物は、また、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)の投与に好適な液体培地など培地に含まれ得る。
【0132】
ESRE及びその分化した子孫を生成するための方法が、本明細書に提供される。一実施形態において、方法は、組織または血液試料を得ること、試料から1つ若しくはそれ以上の細胞をクローニングすること、形態または成長速度または発現型マーカーの発現プロフィールに基づいて、1つ若しくはそれ以上の細胞を選択することを含み、それにより、ESREを単離する。
【0133】
ESRE集団及び複数のESREの製造方法も、また、提供される。このような方法で、所望数の細胞分裂のために、ESREを増殖し(倍化し)、それにより、増大した数の、または、集団の、または、複数のESREを生成する。細胞培養物内のESREの相対的な割合または量は、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上のESREを、細胞の集団または複数の細胞で含む。
【0134】
ESREからESREの分化した子孫細胞(例えば、始原細胞、前駆細胞、発生中間体、分化した細胞、RBC)を生成するための方法もまた、提供される。
【0135】
様々な実施形態において、ESRE由来のRBCの製造方法は、1)幹細胞からESREを生成すること、2)ESREをRBCに分化することを含む多段階の方法を含む。一実施形態において、本発明は、ESRE由来のRBC細胞を含む。一実施形態において、本発明は、ESRE由来のRBC細胞を製造する方法を含む。一実施形態において、ESREは、少なくとも30日の連続培養を通して増殖することができる。一実施形態において、ESREは、少なくとも35日の連続培養を通して増殖することができる。一実施形態において、ESREは、少なくとも40日の連続培養を通して増殖することができる。一実施形態において、ESREは、少なくとも45日の連続培養を通して増殖することができる。一実施形態において、ESREは、少なくとも50日の連続培養を通して増殖することができる。一実施形態において、ESREは、少なくとも55日の連続培養を通して増殖することができる。一実施形態において、ESREは、少なくとも60日の連続培養を通して増殖することができる。一実施形態において、ESREは、少なくとも65日の連続培養を通して増殖することができる。一実施形態において、ESREは、少なくとも70日の連続培養を通して増殖することができる。一実施形態において、ESREは、少なくとも75日の連続培養を通して増殖することができる。一実施形態において、ESREは、少なくとも80日の連続培養を通して増殖することができる。一実施形態において、ESREは、少なくとも85日の連続培養を通して増殖することができる。一実施形態において、ESREは、少なくとも90日の連続培養を通して増殖することができる。一実施形態において、ESREは、少なくとも95日の連続培養を通して増殖することができる。一実施形態において、ESREは、少なくとも100日の連続培養を通して増殖することができる。
【0136】
様々な実施形態において、ESRE由来のRBCの製造方法は、1)幹細胞からESREを生成し、2)ESREをRBCに分化することを含む多段階の方法である。一実施形態において、本発明は、幹細胞由来のRBC細胞を含む。一実施形態において、本発明は、幹細胞由来のRBC細胞を作製する方法を含む。一実施形態において、RBCは、少なくとも約30日、35日、40日、45日、50日、55日、60日、65日、70日、75日、80日、85日、90日、95日、または100日中に本発明に基づく幹細胞から生成される。
【0137】
ESRE由来のRBCの品質は、形態学的に検出され、並びに、細胞分化関連マーカーが発現される。ESRE由来のRBCの生体内で機能する能力は、動物モデルを用いて、または、臨床試験中に使用して研究することができる。
【0138】
様々な実施形態において、貯蔵する、貯蔵された、保存する、及び、保存された幹細胞、及び馴化培地は、例えば、個々のESRE、または、その子孫、ESREの集団または複数のESREまたはそれらの子孫、ESREの培養物またはその子孫、ESREの共培養物及びESREの混合集団またはそれらの子孫、並びに、他の細胞型及び馴化培地などの、冷凍する(冷凍された)、または、貯蔵する(貯蔵された)ESRE、及び、馴化培地を含む。ESRE、その子孫、及びそれらの馴化培地は、例えば−20℃以下、例えば、−70℃などの極低温条件下で保存または凍結することができる。このような条件の下での保存または貯蔵は、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの膜または細胞の保護剤を含むことができる。
【0139】
ESRE、ESREの集団、または複数のESRE、またはESREの培養物、ESREの子孫(例えば、任意のクローン子孫、または、いずれか、若しくは、全ての種々の発生、成熟及び分化段階)、及び、ESRE細胞の馴化培地は、様々な用途のために使用でき、治療及び治療法を含む本発明の方法に従って使用することができる。従って、本発明は、ESRE、ESREの集団、及び、複数のESRE、及び、ESREの培養物、ESREの子孫、及び、ESREの馴化培地を用いる生体内及び生体外治療、及び、治療方法を提供する。
【0140】
ESRE、ESREの集団、または、複数のESRE、または、ESREの培養物、ESREの子孫(例えば、任意のクローン子孫、または、いずれか、若しくは、全ての種々の発生、成熟及び分化段階)、及びESRE細胞の馴化された培地は、細胞ベース、または、培地ベースの治療として、インプラントまたは移植して対象に効果をもたらすために、対象に投与し、または使用できる。
【0141】
治療
本発明は、生体外、及び、生体内の両方の設定で、本発明の細胞の使用を企図する。従って、本発明は、研究目的のための、及び、医学的/獣医学的目的のための、本発明の細胞の使用のために、提供される。研究の設定では、実用的応用の膨大な数が、技術のために存在する。このような応用の一例は、大規模なRBCを生成するために、本発明の細胞を使用することである。RBCを大量に生成することは、少なくとも臨床輸血のために有益である。
【0142】
一実施形態において、本発明の組成物及び方法から生成されたRBCは、成体及び機能的天然型RBCの特徴を有している。いくつかの例においては、本発明の組成物及び方法から生成されたRBCは、成体及び機能的天然型RBCのすべての特徴を有している。
【0143】
一実施形態において、従って、本発明は、(網状赤血球及び成熟赤血細胞を含む)除核赤血球を生成するための生体外の方法を提供する。
【0144】
本発明の方法は、除核した赤血球の均一な集団の大量生成を可能にする。潜在的な細胞収率は、輸血のための臨床要件に適合している。いくつかの例では、細胞の増殖、及び、RBCの生成のレベルは、10
7〜10
60倍であることが可能である。供給及び感染の安全性の面での輸血用の関心とは別に、本発明により、一人のドナー及び/または自家輸血患者由来の数個のユニットを、容易に、製造することができる。
【0145】
本発明は、また、輸血効果に関して有利である。120日に近い寿命を持つ似たような年齢の細胞集団の注入ができ、一方、ドナーから得られたRBCの平均半減期は、変動可能な年齢の細胞の同時存在に起因して28日間である。これは、必要とする輸血の数を低下させるであろう。
【0146】
いくつかの実施形態では、ESREまたはその子孫は、対象に対して自家性であることが可能である。即ち、方法で使用されるESRE(または馴化培地を生成するために)は、方法に従って治療される対象からの細胞から得られるか、または、誘導される。他の実施形態では、ESRE、ESREの子孫、または、ESREの馴化培地、または、それらの子孫は、対象に対して同種異系であり得る。即ち、方法において使用されるESRE(または馴化培地を生成するためには)は、方法に従って治療される対象とは異なる対象からの細胞から得られるか、または、誘導される。
【0147】
本発明の方法は、また、追加の医薬品または生物製剤の投与のその前に、同時に、若しくは、その後に、ESRE、ESREの子孫、または、ESREの馴化培地の投与を含む。医薬品または生物製剤は、ESREまたはその子孫を活性化または刺激する可能性がある。このような薬剤の非限定的な例としては、例えば、EPO、SCF、及びIGF1が挙げられる。
【0148】
遺伝子改変
遺伝的に改変されたか否かにかかわらず本発明の細胞は、止血障害などの血液の疾患または障害を治療するために用いることができる。一実施形態において、本発明の細胞は、止血障害を有する対象における急性の出血エピソードを治療するために使用することができる。
【0149】
遺伝子治療との関連で、本発明の細胞は、レシピエントへの細胞の送達の前に、目的とする遺伝子を用いて処置することができる。いくつかの場合において、このような細胞ベースの遺伝子送達は、対象への組換えタンパク質の投与、または遺伝子療法の形態などの対象への遺伝子送達の他の手段の重要な利点を提示することができる。細胞内に予め挿入された治療遺伝子の送達は、対象の標的細胞への遺伝子治療ベクターの侵入に関連する問題を回避する。
【0150】
従って、本発明は、本発明の方法に従って培養された遺伝的に改変された細胞の使用を提供する。遺伝子改変は、例えば、外来遺伝子(「導入遺伝子」)の発現、または、内因性遺伝子の発現の変化をもたらし得る。そのような遺伝子改変は、治療上の利益を有することができる。あるいは、遺伝子改変は、本発明の組成物の個体への移植後、例えば、そのように改変された細胞を追跡または同定するための手段を提供することができる。細胞を追跡することは、移植され、遺伝的に改変された細胞の移行、同化、及び、生存の追跡を含んでもよい。遺伝子改変は、また、少なくとも第二の遺伝子を含むことができる。第二の遺伝子は、例えば、選択可能な抗生物質耐性遺伝子または別の選択可能マーカーをコードすることができる。
【0151】
細胞を追跡するのに有用なタンパク質には、緑色蛍光タンパク質(GFP)、他の蛍光タンパク質(例えば、強化緑色、シアン、黄色、青色、及び、赤色蛍光タンパク質;(クローンテック社、Palo Alto、CA)のいずれか、または他のタグタンパク質(例えば、LacZ、FLAGタグ、Myc、His
6など)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0152】
細胞の遺伝子改変の目的が、生物学的に活性な物質の生成のためである場合、物質は、一般的に、特定の障害の治療に有用であるものになる。例えば、血液または骨に関連する特定の因子産物を分泌するように、遺伝的に細胞を改変することが望ましいことがある。
【0153】
本発明の細胞は、遺伝的に、凝固因子のような分子を生成するために、細胞に導入された外因性の遺伝物質を有することにより、改変することができる。更に、そのような分子を生成するために細胞を遺伝的に改変することにより、細胞は、それを必要とする哺乳動物に移植したとき、哺乳動物への付加的な治療効果を得ることができる。例えば、遺伝的に改変された細胞は、哺乳動物における移植部位を隣接する細胞に有益となる分子を分泌することができる。
【0154】
本発明の細胞は、遺伝的に、当業者に公知の任意の方法を用いて改変することができる。参照:例えば、Sambrook et al.(2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor,New York)、及びAusubel et al,.Eds,(1997, Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,NY)。例えば、細胞は、核酸が、導入遺伝子が細胞内で発現されるのに適切な条件下で細胞に導入されるように、導入遺伝子を含む核酸を含有する発現ベクターに曝露され得る。導入遺伝子は、一般的に、適切なプロモーターに操作可能に連結されたポリヌクレオチドを含む発現カセットである。ポリヌクレオチドは、タンパク質をコードすることができ、またはそれは、生物学的に活性なRNA(例えば、アンチセンスRNAまたはリボザイム)をコードすることができる。
【0155】
発現カセット内で、コーディングポリヌクレオチドは、適切なプロモーターに、操作可能に連結される。適切なプロモーターの例としては、原核生物プロモーター及びウイルスプロモーター(例えば、レトロウイルスのITR、LTR、ヘルペスウイルスIEp(例えば、ICP4−IEp及びICP0−IEEp)、サイトメガロウイルス(CMV)IEpなどの即時型初期ウイルスプロモーター(IEp);及び、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターなどの他のウイルスプロモーター;及び、マウス白血病ウイルス(MLV)プロモーター)を含む。他の適切なプロモーターは、エンハンサーなどの真核生物プロモーター(例えば、ウサギβ−グロビン調節エレメント);構成的に活性なプロモーター(例えば、β−アクチンプロモーターなど);シグナル特異的プロモーター(例えば、RU486に応答するプロモーターなどの誘導性プロモーター)、及び、組織特異的プロモーターである。事前定義された細胞の関連で、遺伝子発現を駆動するのに適切なプロモーターを選択することは、当該分野の範囲内である。発現カセットは、1つより多くのコードポリヌクレオチドを含むことができ、そして、それは、必要に応じて、他の要素(例えば、ポリアデニル化配列、膜挿入シグナルまたは分泌リーダーをコードする配列、リボソームエントリー配列、転写調節エレメント(例えば、エンハンサー、サイレンサーなど)など)を含むことができる。
【0156】
導入遺伝子を含む発現カセットは、細胞に導入遺伝子を送達するのに適した遺伝子ベクターに組み込むべきである。望ましい最終用途に応じて、任意のそのようなベクターは、遺伝的に細胞を改変するために用いることができる(例えば、プラスミド;裸のDNA;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、パピローマウイルス、レトロウイルスなどのウイルス)。そのようなベクター内の望ましい発現カセットを構築する任意の方法を使用することができ、その多くが当該分野で公知である(例えば、直接クローニング、相同組換えなど)。ベクターの選択が、主に、一般的に当該分野で公知の、細胞内にベクターを導入するために使用される方法を決定する(例えば、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、遺伝子銃、エレクトロポレーション、DEAEデキストラン、または、脂質キャリア媒介トランスフェクション、ウイルスベクターによる感染などにより)。
【0157】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、及び他のDNAまたはRNAポリメラーゼ媒介技術を含む、生体外増幅方法を介して当業者を指導するのに十分な技術の例は、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,volumes 1−3(3rd ed.,Cold Spring Harbor Press,NY 2001)に見出される。
【0158】
タンパク質のための核酸は、クローン化されると、当業者は、さまざまな方法で、単数若しくは複数の組換え遺伝子を発現することができる。当業者は所望の導入遺伝子を発現させるために利用可能な多数の発現系に精通していることが予想される。
【0159】
一実施形態において、望ましい導入遺伝子は、凝固因子である。凝固因子は、凝固活性を有するか、または凝固活性を有する分子を活性化する任意の分子を含むことができる。凝固因子は、ポリペプチド、小有機分子、または無機小分子で構成することができる。凝固因子は、それが、少なくともいくつかの凝固活性を維持する限り、変異された凝固因子、または、凝固因子の類似体であり得る。凝固因子は、例として、しかし限定ではなく、Bドメインを削除した第VIII因子を含む第VII因子、第IX因子(米国特許第4,994,371号)、第XI因子、第XII因子、フィブリノゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子、または、第XIII因子であることができる。一実施形態において、凝固因子は、第VII因子または第VIIa因子である。別の実施形態において、凝固因子は、変異第VII因子、または、第VIIa因子である(参照:例えば、Persson, et al.2001,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:13583)。凝固因子は、外因性経路に関与する因子であり得る。凝固因子は、内因性経路に関与する因子であり得る。或いは、凝固因子は、外因性及び内因性経路の両方に関与する要因となり得る。
【0160】
凝固因子は、ヒト凝固因子、または、例えば、非ヒト霊長類、ブタ、または任意の哺乳動物由来の非ヒト凝固因子であり得る。凝固因子は、キメラ凝固因子であり得る。例えば、凝固因子は、ヒト凝固因子の一部及びブタの一部、または任意の非ヒト凝固因子、または、第一の非ヒト凝固因子の一部及び第二の非ヒト凝固因子の一部を含むことができる。
【0161】
治療
本発明の細胞は、遺伝的に改変されたかどうかにかかわらず、任意の止血障害を治療するために用いることができる。一実施形態において、本発明の細胞を投与することにより、治療することができる止血障害は、血友病A、血友病B、フォン・ヴィレブランド病、第XI因子欠損症(PTA欠損症)、第XII因子欠損症、並びに、フィブリノゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子、または第XIII因子における欠損、または、構造異常が挙げられるが、それらに限定されない。
【0162】
本発明の細胞は、止血障害を有する対象を、予防的に、治療するのに使用することができる。本発明の細胞は、止血障害を有する対象において、急性の出血エピソードを治療するために使用することができる。
【0163】
一実施形態において、止血障害は、凝固因子の欠損、例えば、第IX因子、第VII因子、第VII因子欠損の結果である。別の実施形態において、止血障害は、欠損のある凝固因子、例えば、欠損のあるフォンウィルブランド因子の結果でもあり得る。
【0164】
別の実施形態において、止血障害は、後天性の障害でもあり得る。後天性障害は、基礎となる二次疾患または状態から発生するかも知れない。無関係の状態は、癌、自己免疫疾患、または妊娠などが一例としてあり得るが、これらは限定ではない。後天性の障害は、高齢から、または、基礎となる二次障害を治療(例えば癌化学療法)するための薬物治療からもたらされる。
【0165】
別の実施形態において、本発明は、第二の因子と組み合わせて、少なくとも一つの凝固因子を発現するように遺伝的に改変された本発明の細胞の治療上有効量を投与することを含む、止血障害を有する対象を治療する方法に関し、ここで、第2の因子は、止血を促進する少なくとも一つの他の凝固因子、または、薬剤であり得る。一実施形態において、止血を促進する第二の因子または薬剤は、実証された凝固活性を有する任意の治療であることができる。例として、しかし限定ではないが、凝固因子または止血剤は、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、プロトロンビン、フィブリノゲン、フォンウィルブランド因子、または、組換え可溶性組織因子(rsTF)、若しくは、上記の任意の活性化形態を含むことができる。止血剤の凝固因子は、また、抗線維素溶解薬、例えば、ε−アミノカプロン酸、トラネキサム酸を含むことができる。
【0166】
生体外スクリーニング方法
本発明によれば、本発明の細胞は、遺伝子プロモーターに操作可能に結合された検出可能なレポーターを含む、組換えプロモーター(例えば、グロビン遺伝子プロモーター)を含むように操作される。候補薬剤は、宿主細胞の生体外細胞培養物に加えられ、そして、レポーター遺伝子の活性を測定する。様々な生体外系は、所望のプロモーターの制御下で、レポーター遺伝子の発現に対する新規化合物の効果を分析するために使用することができる。
【0167】
本発明における使用のためのレポーター遺伝子は、クロラムフェニコールトランスフェラーゼ(CAT)、β−ガラクトシダーゼ(β−GAL)、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びその誘導体、黄色蛍光タンパク質及びその誘導体を含むが、それらに限定されない、検出可能なタンパク質、アルカリホスファターゼ、検出可能な産物を生成するように適合させることができる他の酵素、及び、例えば、免疫学的に(免疫測定法により)検出することができる他の遺伝子産物をコードする。
【0168】
本発明の宿主細胞のスクリーニング系は、2種類のアッセイ:直接活性化アッセイ(アゴニストのスクリーニング)、及び、阻害アッセイ(アンタゴニストのスクリーニング)を可能にする。アゴニストのスクリーニングは、試験化合物を接触させた宿主細胞によるレポーター遺伝子の発現レベルの変化を検出することを含み、一般的に、レポーター遺伝子の発現が低下する。レポーター遺伝子が発現される場合、試験化合物は、プロモーターに影響を与えていない。レポーター遺伝子の発現が減少した場合、試験化合物は、プロモーターに対する抑制薬を開発するための候補である。
【0169】
本発明の薬剤は、細胞ベース、または、無細胞のアッセイを限定なしで含む、ハイスループットアッセイにおけるスクリーニングにより同定される。異なるタイプアッセイが、異なるタイプの薬剤を検出するために使用可能であることは、当業者により理解されるであろう。短期間で数万の化合物のスクリーニングを可能にするように自動化アッセイのいくつかの方法が近年開発されている(参照:例えば、米国特許第5,585,277号;同第5,679,582号;及び同第6,020,141号)。そのようなハイスループットスクリーニング法が、特に好ましい。或いは、本明細書で記載したものなどの単純なレポーター遺伝子ベースの細胞アッセイは、また、非常に望ましい。本発明により提供される、薬剤を試験するためのハイスループットスクリーニングアッセイの使用は、精製されたポリペプチドが多量に利用可能性になり、大幅に促進される。
【0170】
実験実施例
本発明は、以下の実験実施例を参照してさらに詳細に説明する。これらの実施例は、例示のみの目的で提供され、特に指示のない限り、限定することを意図するものではない。従って、本発明は、決して、以下の実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書中に提供される教示の結果として明らかとなるあらゆる変更も包含すると解釈されるべきである。
【0171】
更なる説明なしで、当業者は、前述の説明及び以下の例示的な実施例を使用して、本発明の化合物を作製し、利用し、及び、特許請求範囲の方法を実施することができることが考えられる。従って、以下の実施例は、具体的には、本発明の好ましい実施形態を具体的に指摘し、そしていかなる方法でも開示の残りを限定するものとして解釈すべきではない。
【0172】
[実施例1]
広範囲に自己再生する赤芽球(ESRE)
本明細書中に提示された結果は、広範囲に自己再生する赤芽球(ESRE)の開発、及び、特徴付けを示す。結果は、ESREが、初期赤芽球を表すが、除核赤血細胞(RBC)を生成する能力を維持しながら、明らかに制限のない増殖能を保持する細胞であることを示している。従って、ESREは、血液の生体外生成のための実行可能な系の基盤として機能する約束を提供する。
【0173】
実験は、(1)ヒトRBCの生成を可能にする;(2)非常に高価な成長因子、及び、試薬を含む、大規模培養の現在の非常に高いコストは、より実用的なレベルまで低減可能であることを実証する;及び(3)ESREが薬物スクリーニング及び生物工学における実用的な利点を持つ赤血球生成のための生体外モデルとして使用できることを実証する様に設計された。
【0174】
完全定常状態の赤血球生成
ヒトは、約2.5×10
13のRBCの定常状態赤血球量を維持するために、秒あたり、200万以上のRBCを合成する。
図1Aにまとめたように、RBCのこれらの膨大な数は、半固体培地中の赤血球細胞のコロニーを形成することが可能な、系統的に拘束された前駆細胞に分化するより少数の造血幹細胞(HSC)から誘導される。未成熟の赤血球前駆細胞(BFU−E)が、形態学的に認識可能な赤血球前駆細胞に成熟する後期赤血球前駆細胞(CFU−E)に分化する。これらの前赤芽球は、順番に、物理的に、骨髄でマクロファージ細胞と相互作用し、3〜4回の成熟細胞分裂を受け(その間にヘモグロビンを蓄積する)、サイズが減少し、そしてそれらの核を凝縮する(Bessis et al,,1978,Blood Cells 4:155−174)。CFU−E、及び、未成熟の赤血球前駆体は、その生存のためにサイトカインであるエリスロポエチン(EPO)に非常に依存している(Koury and Bondurant,1990,Science 248:378−381)。最も成熟した赤血球前駆細胞は、正染性赤芽球と呼ばれるが、若いRBC(網状赤血球)を形成するために、核押し出しを受ける。網状赤血球は、すべての細胞小器官を失い、両凹形状をとるようにその細胞骨格を再構築し、そして、血流に入り、120日間、成熟したRBCとして循環する。
【0175】
赤芽球の自己再生
赤血球「前駆細胞」は、EPO、SCF及びデキサメタゾンを用いて培養したとき、生体外での増幅が、相対的に制限されるように(10
5〜10
6倍)誘導することができる(von Lindern et al.,1999,Blood 94:550−559;
図1B、上部)。グルココルチコイドが赤血球分化を阻害しながら、EPO受容体(EPOR)、及び、SCF受容体(ckit)により開始されたシグナル伝達経路は、赤血球前駆細胞の生存、及び、増殖を強化するために相乗作用する(Panzenbock et al.,1998,Blood 92:3658−3668;von Lindern et al.,1999,Blood 94:550−559)。これらの培養骨髄由来の赤血球「前駆細胞」は、EPO単独での存在下で培養したとき、除核赤血球に分化する能力を保持し、SCF及びデキサメタゾンが、赤芽球の自己再生を刺激することを示す。
【0176】
マウス卵黄嚢及び早期の胎児の肝臓由来の赤血球細胞が、EPO、SCF、デキサメタゾンで培養したとき、制限された増殖のみならず、生体外での広範な増殖(10
7〜10
60倍)を可能にすることが発見されている(England et al.,2011,Blood 117:2708−2717;
図1B、下部;
図2A)。更にその上、この増殖能は、後期の胎児肝臓、または、出生後の骨髄由来の培養物中に以前に見られたものよりもはるかに大きい。これらの細胞は、それらの生体外での培養を通して、前赤芽球細胞の形態を維持し(
図2B)、そして、それらは、細胞表面に低レベルのter119(後期赤血球成熟のマーカー)で、ckit(CD117)を大量に発現する(
図2B)。CFSEの標識化研究は、培養中の大多数の赤芽球が、毎日分割することを示している(England et al.,2011,Blood 117:2708−2717)。毎日の細胞分裂を伴う何ヶ月にもわたる長期培養にもかかわらず、これらの未熟赤芽球は、EPO、SCF、及びデキサメタゾンに依存したままであり、デキサメタゾンを欠く培地に移したとき、除核RBC(始原細胞あたり8〜16個のRBC)に成熟する可能性を維持する(
図2B)。赤血球成熟は、ckitの損失、及び、ter119の細胞表面発現の上方調節に関連付けられる(
図2B)。まとめると、これらの知見は、これらの増殖する赤血球の細胞が、1)対称的自己再生細胞の分裂を受け;2)RBCの上流で、3〜4回のみの細胞分裂を受け、成熟の前赤芽球の段階にあり;及び、3)生体外で、網状赤血球に成熟することができることを示す。これらの細胞は、「広範囲に自己再生する赤芽球」(ESRE)と呼ばれる。その胚起源に関係なく、ESRE由来の網状赤血球は、骨髄で生成した、完全RBCに似た、成人型(α、β1、及びβ2)グロビンを発現する。
【0177】
造血系の開発
成体細胞では、すべての血液細胞は、それぞれ、マウス及びヒト胚における、E10.5、及び、妊娠5週目で始まるいくつかの血管床において、「造血」内皮から細胞クラスターとして初めて出現するHSCに由来する(Muller et al.,1994,Immunity 1:291−301;Ivanovs et al.,2011,J Exp Med 208,2417−2427)。HSCは、その後、生涯造血を維持するために、胎児の肝臓及び周産期の骨髄に播種する。
【0178】
プレHSCの造血
HSCの前にマウス胚の卵黄嚢で生じる造血前駆細胞の2つの過渡波が同定されている(Palis et al.,1999,Development 126:5073−5084)。最初の波は、マウスで最初の大規模な、有核原始RBCを生成する原始的赤血球前駆細胞で構成されている。複数の骨髄前駆細胞を伴う第二波は、完全赤血球前駆細胞(BFU−E)で構成されている(Palis et al.,1999,Development126:5073−5084;Palis et al.,2001,Proc Natl Acad Sci USA 98:4528−4533)。赤血球生成の過渡的、原始的、及び、完全な波は、ヒト及びゼブラフィッシュの胚で同定されており(Migliaccio et al.,1986,J Clin Invest 78:51−60;Bertrand et al.,2007,Development 134:4147−4156)、プレHSC造血の進化的保存性を示す。マウスES細胞(Keller et al.,1993,Mol Cell Biol 13:473−486)、及び、ヒトES細胞(
図3参照)における類似の知見は、分化ES細胞が、プレHSC胚の造血を再現するという仮定に導いた。マウス胚及びマウスES細胞の研究は、ESREが、完全赤血球系統から生成し、及び、GR発現を欠き、生体外で自己再生することができない原始赤血球系統からは、生成されないことを示す(England et al.,2011,Blood 117:2708−2717)。従って、ESREは、胚卵黄嚢に源を発し、その後、初期の胎児肝臓に移行する、完全赤血球生成の過渡波に対応して、赤血球開発の狭い範囲から排他的に誘導することができる。
【0179】
マウスESREは、生体内での成熟RBCの波を生成することができる
生体内で分化するESREの能力をテストするために、ESRE培養物は、UBC−GFPマウスから作成した。UBC−GFPマウスの骨髄から選別した対照のLSK細胞は、他のレシピエントのNSGマウスにIV注射し、そして永続的な網状赤血球及び成熟RBCを、5日目から生じ、その生着と一貫している(
図3、黒線)。重要なことに、UBC−GFP由来のESREは、77日間の自己再生培養で成長し、レシピエントのNSGマウスにIV注射した。これらのGFP+ESREは、網状赤血球及び成熟RBCの過渡波に5日目に始まる上昇を起こした(
図3、赤線)。イメージングフローサイトメトリーによる、これらESRE由来のRBCの分析は、野生型(非GFP)RBCと比較した場合、それらは通常のサイズ及び形状を有することを示す(
図3、右側パネル)。まとめると、これらのデータは、ESREは、長期培養にもかかわらず、変換されず、完全に成熟したRBCに生体内で分化することができるという証拠を提供する。
【0180】
分化するヒトES/EBにおける原始的及び完全/EMPの出現
未分化H1(WA01、WiCell Research Institute)ヒトES細胞は、フィーダー無しで、毎日培地を変える、マトリゲル被覆プレート上の、mTeSR1培地(Stem Cell Technologies社)で培養した。表1に概略を示したとおり、細胞は、酵素により、コラゲナーゼIVで収穫し、毎週継代し、無血清条件下での血液細胞の運命に分化した。結果は、このヒトES細胞の分化手順が、赤血球前駆細胞の2波の出現につながったことを示し(
図4A)、それは、一般的に、原始的で及び完全赤血球とそれぞれ関連した形態、及び、細胞の含有量を有するコロニーを含んでいた(
図4B)。11日〜19日目のEBからの5つの分離したコロニーの遺伝子発現を解析した。
図4Cで示す通り、11日目と14日目のEBからのコロニーは、主にε−グロビンを発現したが、グルココルチコイド受容体(GR)をコードする遺伝子であるNr3c1を発現しなかった。これらのデータは、原始的赤芽球が、主に、胚性グロビンを発現するが、GRを発現しないマウスでの知見と一致していた(England et al.,2011,Blood 117:2708−2717)。17日、及び、19日目のEBからのコロニーは、主に、γ−グロビン、並びに、GRを発現し、完全赤血球の識別と一致した(
図4B)。これらのデータは、マウスの卵黄嚢で見られる原始的及び完全赤血球生成(Palis et al.,1999,Development 126:5073−5084)、及び、マウスES細胞分化(Keller et al.,1993,Mol Cell Biol 13:473−486)の連続波と一致する。実験は、さらに、正常な胚造血を通して、ヒトES細胞を分化するとき、造血の動態を特徴づけるように設計した。いかなる特定の理論に縛られることを望まないが、ヒトES細胞における造血可能性の出現が、原始的EMP/完全(プレHSC)造血波の重複により特徴づけられる。
【0181】
赤血球系統特異的マーカーは、さらに、原始的及び完全赤血球細胞を区別するために使用される。実験は、ヒトES細胞の分化から出現する赤血球前駆細胞の第一及び第二の波に由来するコロニー中で、差動的に発現される遺伝子を試験するように設計することができる。ヒトES細胞を分化時に出現する原始的及び完全赤血球可能性を明確に区別するための、2〜4つの赤血球系統特異的マーカーを同定することが望ましい。
【0182】
いかなる特定の理論に縛られることを望まないが、ヒトES細胞を分化することは、初期胚事象を再現し、そして、原始的、及び、EMP/完全造血前駆細胞集団の発生の両方につながると考えられている。更に、赤血球系統特異的マーカーのセットは、原始的及び完全赤血球細胞のカテゴリ識別を容易にすることができると期待されている。
【0183】
自己再生する完全赤芽球は、H1ヒトES細胞から誘導できる
H1のヒトES/EBにおける完全赤血球形成の出現を定義することにより、赤芽球の自己再生培養は、16〜19日目のEB細胞を用いて、開始した(EPO、SCF、デキサメタゾン)。最初の培養は、20〜30日間増殖し続けた未熟赤芽球の均一な集団を発生させた(
図4D、上パネル)。EPO及びインスリンを含有する成熟培地に置かれたとき、これらの赤芽球は、正染性赤芽球及び網状赤血球に分化した(
図4D、下部パネル)。自己再生ヒト赤芽球は、低いレベルのε−グロビンと一緒に、主として、γ−グロビンを発現し、そして、成熟時に成人β−グロビン遺伝子を上方調節した。これらのデータは、完全自己再生の赤芽球が、ヒトES/EBから生成され得ることの重要な証拠を提供する。
【0184】
ヒトESREを生成し、その増殖及び成熟を最適化する
ヒトES細胞から大規模な自己再生能を持つ赤芽球を誘導することは、ヒト胚を使用した実際的かつ倫理的な問題を回避することができる。結果は、現在のヒトES分化手順(表1)がヒト自己再生の赤芽球のその後の発生を促進することを示している(
図4D)。これらの赤芽球は、広範の期間に、自己再生可能であることを示すことが重要である。ヒト臍帯血からの赤芽球の培養物は、以前に他者が定義した通り、すべての赤芽球が自発的に分化する前に、10〜15日間維持することができ、これは、それらの制限された自己再生能力と一致する(von Lindern et al.,1999,Blood 94:550−559)。いかなる特定の理論に縛られることを望まないが、ESRE培養が広範な自己再生をする証拠として、少なくとも3倍長く確実に増殖し続けることが望ましい。場合によっては、45日以上の間自己再生するヒトES細胞からの赤芽球培養物を生成することが望ましい。
【0185】
ESRE培養物は、本明細書の他の箇所で考察するように、EB分化の特定日から分化したヒトES細胞を使用して開始される。例示的な現在の無血清のヒトESRE培養条件は、StemSpan(Stem Cell Technologies社)、EPO(2U/ml)、SCF(100ng/ml)、デキサメタゾン(10
−6M)、IGF1(40ng/ml)及びExCyte(0.4%;Millipore社)を含む。培養物は、細胞数、生存率の測定、新鮮な培地での部分体積変化を毎日監視する。以前に他者(von Lindern,1999)が定義した通り、すべての赤芽球が自発的に分化する前に、ヒト臍帯血由来の赤芽球の培養物は、10〜15日間維持することができ、これはその制限された自己再生能力と一致する。ヒトES細胞由来の赤芽球培養物は、毎日監視され、そして、制限された自己再生能力のみならず、広範囲の自己再生能力を備えた赤芽球を生成する能力について試験する。胚、胎児及び成体グロビン遺伝子の発現は、自己再生細胞の「完全」赤血球(主にγ−、及び、β−グロビンの発現)の性質を確認するために、qPCRにより特徴付けられる。原始的、対、完全赤血球細胞のより明確なマーカーは、完全赤芽球の識別を容易にすることができる。
【0186】
重要な目標は、大規模な自己再生を受ける胚赤芽球の可能性を最大にするために、ヒト赤芽球の培養条件を最適化することである。現在の手順は、基礎培地としてのStemSpanのSFEMに依存する。本明細書中に提示された結果は、具体的に、StemSpan(商標)−ACF(Stem Cell Technologies社)を含む増殖培地が、ヒトES細胞由来のヒト赤芽球の生体外での広範な自己再生をサポートすることを示している。マウスESREの増殖をサポートする基礎培地(StemSpan(商標)−SFEM)は、ヒト赤芽球の広範な増殖自己再生をサポートしない。StemSpan(商標)−ACFとは異なり、StemSpan SFEMII、及び、QBSF60(Quality Biological社)を含む、その他の基礎培地の初期の研究では、大規模なヒト赤芽球の自己再生をもたらさなかった。従って、マウス細胞を培養するための手順は、ヒト細胞の培養に適用することはできない。
【0187】
自己再生培養物がヒトESCから誘導することができる効率を向上させるために必要な他の試薬を試験することができる。これは、非常に強力なグルココルチコイド剤であるプロピオン酸フルチカゾンなどの別のステロイドが含まれる。マウスESREの我々の予備的研究は、一番低くて10
−9Mのフルチカゾンの用量が、10
−6Mのデキサメタゾンと同等に有効で赤芽球の自己再生をサポートすることを示した。ExCyte(Millipore社)、及び、ヒトLDLは(Stem Cell Technology社)を含む、様々な脂質添加物も、また、ヒト赤芽球の自己再生のサポートを最適化するために試験することができる。
【0188】
ヒト赤芽球の培養条件は、広範な自己再生を受ける胚赤芽球の可能性を最大にするように最適化される。培養条件は、HEMA
def、及び、HEMA
ser培養条件などの他の成体由来のヒト赤芽球により生じた培養条件と比較される(Migliaccio,2010)。非常に強力なグルココルチコイド剤であるプロピオン酸フルチカゾンを含む、異なったステロイドに対する用量応答は、赤芽球自己再生をサポートするために試験することができる。ExCyte(Millipore社)及びヒトLDL(Stem Cell Technology社)を含む、種々の脂質の添加剤は、ヒト赤芽球の自己再生を最適にサポートするために試験することができる。
【0189】
ESREは、培養されたRBCを生成する赤芽球の再生可能な供給源として役立つと考えられている。分化する/分化されたヒトES細胞の培養物において、完全赤血球前駆細胞を同定することにより、自己再生ヒト赤芽球の培養物、及び、最終的にヒトESREが生成できる。研究は、自己再生赤芽球をヒトES細胞から生成することができることを示している。本明細書中の他の場所で考察したように、ヒトES/iPS細胞に由来する、ヒト赤芽球の自己再生培養物の最適化が、ヒトESREの生成を促進することが期待される。ESREはp53を欠いた胎児及び成体マウスから生成されているので(von Lindern,2001;Schmidt,2005)、ヒトES細胞からESREを生成するための別のアプローチは、p53のノックダウンである。ヒトES細胞またはヒトES細胞由来の自己再生赤芽球の分化において、必要に応じて、ヒト新生児及び成体供給源からESREを使用することができる。
【0190】
網状赤血球への自己再生ヒト胚性赤芽球の分化を特徴づける
マウス自己再生の胚性赤芽球は、EPO及びインスリンを含む無血清培地を使用して生体外で、RBCに分化させることができる(England et al.,2011,Blood 117:2708−2717)。複数の手順が、網状赤血球へヒト未熟赤芽球を分化するために利用可能である(Giarratana 2011)。これらの手順は、2、3または4つの連続相を含む。イメージングフローサイトメトリーは、細胞サイズ、核凝縮、網状赤血球成熟に関連する細胞形状変化、RNA及びミトコンドリアの含量の進行性喪失、及び、除核率を含むRBC成熟のパラメータを定量化するために使用される。胚性、胎児及び成体ヘモグロビンは、セルロースアセテート電気泳動により定量化することができる。ベンジジン陽性、分光光度法によるヘモグロビン含有量、及び、qPCRによるグロビン遺伝子発現は、また、生体外で分化したヒトRBCで決定できる。
【0191】
生体内で分化する自己再生赤芽球の能力は、また、免疫不全(NSG)マウスモデルを用いて分析することができる。ヒトES細胞由来の1億の自己再生赤芽球は、成体NSGマウスにIV注射し、末梢血は、ヒト(グリコホリンA+)、対、マウス(ter119+)のRBCの数をFACSにより決定するために、2日おきにサンプリングした。ヒトのRBCが、もはや検出できなくなるまで分析を続行する。生体外で分化されたESREの輸血製品として機能する能力を試験するために、ESRE由来の網状赤血球が、成体NSGマウスに注入され、その数は経時的に追跡される。ヒトRBC機能の研究のために、生体内での実験モデルの妥当性が、最近出版された(Kobari,2012)。イメージングフローサイトメトリーは、循環ヒトRBCのサイズ及び形態を分析するために使用される。
【0192】
生体外分化の研究は、現在、ヒトES細胞から誘導されているヒト自己再生赤芽球を用いて実施できる。広範なヒト自己再生赤芽球は、また、網状赤血球に分化するそれらの潜在能力について試験することができる。限定的、及び、広範ないずれかの自己再生を受けたマウスの赤芽球は、一般的に、90%〜95%の高い除核率で生体外での分化が可能である(England et al.,2011,Blood 117:2708−2717)。予備的結果は、ヒト赤芽球が高い除核率を再現することを示唆している。グルココルチコイドの作用に拮抗する分子は、赤血球前駆体の分化の任意の固有的な残留阻害を克服するために使用することができる(Lieberbauer,2005;Miharada,2006)。赤芽球の生体外分化に対する代替のアプローチは、間質細胞、特にMS5細胞との共培養を含む(Giarratana,2005)。しかしながら、除核率が、一貫して、50〜60%未満であり、または、成熟RBCのパラメータ、例えば、ヘモグロビン含有量が、正常なRBCのそれに接近していない場合、これらの代替的なアプローチが使用される。
【0193】
EPO及びインスリンを使用して、胚ヒト赤芽球の生体外での分化を最適化する
イメージングフローサイトメトリーは、細胞のサイズ、核凝縮、網状赤血球の成熟に関連する細胞形状の変化、RNA及びミトコンドリア含量の進行性喪失、及び、除核率を含む、RBC成熟のパラメータを定量するために使用することができる。胚性、胎児及び成体ヘモグロビンは、セルロースアセテート電気泳動によって定量化できる。ベンジジン陽性、分光光度法によるヘモグロビン含量、及び、qPCRによるグロビン遺伝子発現は、また、生体外で分化したヒトRBCで決定できる。また、RBC変形能は、マイクロピペットアッセイを用いて、分析することができる。
【0194】
ヒトESREの誘導、及び、成長、並びに、ヒト赤芽球の培養方法
マウスの胚形成の間に、原始的及び完全赤血球前駆細胞の連続波が、恒常的な造血幹細胞由来の血液系が確立される前に、必要なRBCを提供するために卵黄嚢で出現する。ヒトの胚における研究は、原始的及び完全赤血球系統が同様に卵黄嚢に出現することを示す。いかなる特定の理論に縛られることを望まないが、ESCは、哺乳類の胚に見られる初期の造血個体発生を再現すると考えられる。卵黄嚢及びESCの中で完全赤血球前駆細胞は、ESREの供給源となる。
【0195】
実験は、hESCから出現する完全赤血球前駆細胞は、差次的遺伝子発現及び細胞形態により原始的赤血球前駆細胞と区別することができるという仮説をテストするために設計された。例えば、実験で使用される代表的な無血清のhESCの分化手順は、
図4Eに概説されているが、それは、赤血球前駆細胞の2つの波が、H1のhESC(
図4A)に出現することを示している。第一波からの赤血球前駆細胞は、胚様体(EB)培養の6〜15日目で出現し、主に、胚(ε)グロビンを発現するが、Nr3c1を発現しないRBCのコロニーを生成し(
図4C)、これは、原始的赤血球の識別に一致する。これとは対照的に、コロニーは、16日目の後に、第二波から誘導され、主に、胎児(γ)グロビン及びNr3c1を発現し(
図4C)、これは、完全赤血球の識別と一致する。
【0196】
hESC/EBから出現する赤血球前駆細胞の2つの波は、メチルセルロースでクローン性コロニーアッセイを使用して特徴化することができる。個々のコロニーを構成する細胞の形態及び遺伝子発現も分析することができる。原始的及び完全赤血球前駆細胞を区別することを助ける候補遺伝子の例は、表2に示されている以下の遺伝子を含むが、それらに限定されない。
【表2】
【0197】
この手順は、また、完全赤血球前駆体出現の再現性とタイミングを決定するために、幾つかの他のNIHで承認されたhESC株、並びに、ヒトiPS細胞株では、原始的で及び完全赤血球前駆体出現の動態を描写するために適用することができる。
【0198】
いかなる特定の理論に縛られることを望まないが、hESC/EBが、差次的遺伝子発現、及び、細胞形態により区別することができる原始的及び完全赤血球前駆細胞の重複波を生成すると考えられている。例えば、成熟した原始的赤芽球はより大きく、そして、核:細胞質の比が完全赤芽球に比較して小さい。異なるhESC株における血球出現の動態は変化するが、赤血球前駆細胞の2つの波の連続出現が保存されていると考えられている。
【0199】
完全赤血球前駆細胞を含むhESC由来の分化したhEBは、ヒトESREの供給源として機能する。本明細書中に提示された結果は、完全赤血球前駆細胞は、分化の16日後に、H1 hESC/EBに出現するという証拠を提供する(
図4B、4C)。無血清自己再生赤芽球培養(EPO、SCF、Dex)は、16日目のhESC/EBからの細胞で開始した。これらの初期培養は、24〜30日間の自己再生を継続する赤芽球の均質な集団の成長につながった。フローサイトメトリーは、赤血球前駆体の成熟に関連する、形態学的、及び、免疫発現的特徴を視覚化及び定量化するために使用した。
図4Fに示すように、増殖性赤芽球は、大きい核を有する大きい未熟細胞である(上部パネル)。これらの細胞は、「完全」赤血球の識別からなる、主に、胎児(γ)グロビン(
図4G)を発現する。成熟培地(EPO、血清)中のこれらの自己再生赤芽球の分化は、成体(β)グロビン遺伝子の発現(
図4G)を上方調節した、小型の除核されたRBC(
図4F、下パネル)をもたらした。
【0200】
マウスESREが、生体内でRBCに分化することができることが見出されている。GFP+ESREの輸血は、網状赤血球(若いRBC)の過渡波をもたらし、循環を40日間超維持する成熟RBCの集団がその後に続く(
図4H)。これらのデータは、ESREは、1)非悪性であり、2)5〜6日間で生体内で完全に成熟することができ、及び3)循環における長い機能寿命で通常のRBCを生成することができるという概念をサポートする。
【0201】
hESC/EB由来の赤芽球は、その広範な自己再生をサポートする条件下で培養される。グルココルチコイド受容体(GR)を活性化し、赤血球の成熟を遮断する種々のGRアゴニストは、広範囲のヒト赤芽球の自己再生を促進する能力について試験される。培養赤芽球の細胞生存率(トリパン染色)、赤血球成熟(ベンジジン染色)、及び、細胞形態(ギムザ染色)は、定量することができる。ヒト臍帯血由来の赤芽球培養物は、これらの細胞が、約15日間自己再生するだけなので、「負」の対照として提供される。ヒト自己再生赤芽球は、ヘモグロビン含有量、酸素結合の親和性、及び、レーザー回折を用いたRBC変形能力のために分析される間質共培養を用いて生体外で分化される。ヒトRBCの生体内での機能は、ヒト特異的赤血球マーカーCD235を有する細胞を追跡する、免疫不全(NSG)マウスで試験することができる。
【0202】
いかなる特定の理論に拘泥するものではないが、培養条件の最適化は、臍帯血、ヒト赤芽球由来ではなく、hESC由来の広範な自己再生を促進すると考えられている。ESREは、p53遺伝子欠損胎児及び成体マウスから生成されているので、ヒト臍帯血液由来、または、骨髄由来赤芽球におけるp53のノックダウンは、ヒトESREを生成するための代替的なアプローチである。また、これらのヒト赤芽球は、それらの成体の対応物と同様に、動物モデルにおいて、生体外での除核RBCに分化することができ、そして、成体内で機能することができることが期待されている。
【0203】
生体外で分化したヒト胚性幹細胞由来のESRE
ヒトESC(WA01)は、酵素的(コラーゲンIVを用いて:Stem Cell Technologies社)及び機械的(セルスクレーパーを用いて)に、細胞の小さな塊に解離した。いくつかの例においては、表1に示すように、低酸素環境(5%:O
2)において、H1ヒト胚性幹細胞(WA01)を解離し、無血清の培地中で、順次培養した。ヒト胚性幹細胞は、最初に胚様体(EB)を形成し、続いて、造血系統に向かって分化する。EB分化の6日目からは、造血細胞は、懸濁液中に放出され、これらの細胞は、その後の赤芽球増殖培養のために回収した。
【0204】
赤芽球増殖培養は、幹細胞因子、エリスロポエチン及びデキサメタゾンを含む、本明細書の他の箇所で考察した条件下で維持した。いくつかの異なる培地は、ヒト赤芽球の継続的な自己再生を維持する能力について試験した。試験された4つの内の3つの異なる培地(StemSpan(Stem Cell Technologies社)、StemSpan SFEM−II(Stem Cell Technologies社)、及び、QBSF60(Quality Biologicals社)は、10〜15日間の赤芽球の増殖拡大をサポートしたが、4つの培地の1つ(StemSpan−ACF(Stem Cell Technologies社))は、50日間赤芽球の連続増殖をもたらした。増殖した赤芽球(36日目の増殖)の形態を、
図4Iに示す。これらの細胞は、高い核:細胞質比を有する前赤芽球の古典的な外観、及び、核を備えた開放クロマチン、及び深い好塩基性の細胞質を有する。これらの細胞の増殖は、ESREの識別と一致している。分化培地中のこれらの細胞の配置は、後期赤芽球及び除核赤血球の成熟をもたらした。
【0205】
一実験において、38日目のヒトH1胚様体から放出された赤芽球が得られ、そして、赤芽球の培養を開始した。簡単に説明すると、EB分化の38日目(WA01、継代番号38)から放出された細胞は、無血清のヒト赤血球増殖培地中で24ウェルの組織培養皿に再懸濁した。この培地は、2U/mLのヒト組換えEPO(Amgen社);100ng/mLのヒト組換えSCF(PeproTech社);10
−6Mのデキサメタゾン(Sigma社);40ng/mLのヒト組換えインスリン様成長因子−1(PeproTech社);0.4%の脂質混合物EX−CYTE(Millipore社)、及びペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen社)で補充された、StemSpan(商標)−ACF(Stem Cell Technologies社)を含む。増殖培地を新たに、毎週調製した。細胞は、部分的培地交換により、毎日、1×10
6以下の細胞/mLに維持した。
【0206】
本明細書中に提示された結果は、連続培養の50日を通してヒト赤芽球の成功した増殖を示している。これは、ESREがヒト胚性幹細胞に由来することができる原理の証明として機能する。本明細書に提示された結果に基づいて、実験は、ヒト赤芽球のための培養条件を最適化し、広範な自己再生を受ける胚赤芽球の可能性を最大化するために実施できる。
【0207】
本発明の開示に対して特有なのは、ESREが、具体的に、胚形成の間に出現する、最初の「完全」赤血球前駆細胞から誘導することができるという概念である。本明細書に提示された結果は、ESRE集団がヒト胚性幹細胞から生成することができるという証拠を提供する。ヒトESREは、臨床使用のために生体外で成熟赤血細胞を大量に製造するために使用することができる。
【0208】
[実施例2]
ヒト胎児グロビン発現の活性化因子についてスクリーニングするためのESREの使用
ESREの特徴である、RBCを生成するために、高効率で最終的に成熟する能力とともに通常の倍数性の維持を有する急速な増殖は、多くの実用的な応用を提供する。例えば、ESREが、人工的に操作されたタンパク質組成物を用いてRBCを誘導するために、安定的に組み込まれた導入遺伝子から誘導できる、または、siRNAノックダウンを行うことができる、更に、ESまたはiPSからESREを誘導する能力は、内因性遺伝子座内の標的化された変更もまた可能にする。このような操作は、ESRE技術の応用を表す。
【0209】
いくつかの例では、ESREは、ヒトβ−グロビン遺伝子の発現に影響を与えることができる化学物質のためのハイスループットスクリーニングを実行するために使用される。変異β−グロビン遺伝子(鎌状赤血球貧血でのような)、または、成体のβ−グロビン遺伝子の発現における有意な減少(β−サラセミア削除において)のいずれかを含む、β−異常ヘモグロビン症は、世界の遺伝性疾患の最も一般的なクラスを表す。変異対立遺伝子の効果は、しかしながら、容易に通常のβ−グロビン遺伝子の発現により逆転される。例えば、鎌状赤血球貧血のマウスモデルは、症状が軽減されるか、または、通常のβ−グロビンの過剰発現時に排除されることを実証するために使用されているが、ヘモグロビンSのためのヘテロ接合は、ほとんど、常に、良性状態である(Levasseur et al.,2003,Blood 102:4312−4319)。正常なβ−グロビン発現の提供に向けた臨床経路は、β−グロビン遺伝子クラスター内からの発現が、発生的に調節されているという事実に由来する。胚ε−グロビン及び胎児γ−グロビン遺伝子は、成体では沈黙しているが、潜在的に再活性化することができる。限られた範囲で、そのような「再活性化」治療は、現在、使用されているが、成人患者ではγ−グロビンの発現レベルで控えめな上昇を達成する利用可能な多くの薬剤が存在する(Bauer et al.,2012,Blood 120:2945−2953)。
【0210】
ESREにおけるヒト胎児γ−グロビン遺伝子の発現を上方調節する化合物に対する、ハイスループットの化学スクリーニングを実施できる。人工的に設計されたヒトβ−グロビン遺伝子座を保有するESREを使用することができる。成体β−グロビン遺伝子は、ウミシイタケルシフェラーゼ(Ren)のコード配列に置き換えられてきたが、この導入遺伝子において、胎児Aγ−グロビン遺伝子は、ホタルルシフェラーゼ(Luc)のコード配列で置換されている。これらの遺伝子置換は、対応するγ−、及び、β−グロビン制御配列により駆動される発現のための便利な読み出しを提供し、ハイスループット蛍光アッセイに使用することができる。変更されたヒトの導入遺伝子を保有するESREは、これらのマウスの交配から誘導される胚性赤血球組織から生成することができる。
【0211】
胎児γ−グロビンレベルを上昇させることのできる新薬の開発プロセスを開始し、その結果、多数のβ−異常ヘモグロビン症を軽減するのに加えて、このアプローチは、ESRE系がRBCの生成及び機能の障害のための新たな治療法のためのハイスループットスクリーニング用に使用できる原理の証明として機能する。
【0212】
[実施例3]
p53の生物学と広範な赤血球の自己再生
実験は、p53が制限された、及び、広範な自己再生を対比した赤芽球において、差次的に規制されているかどうかを決定するために実施した。制限された自己再生を有するをマウス赤芽球は、成体骨髄及び後期胎児の肝臓から培養し、培養の6〜9日目に分析し、E10.5の卵黄嚢由来の、199日間連続培養したESREと比較した。制限された、及び、広範囲に自己再生する赤芽球集団の両方は、毎日、同じ速度で増殖し、倍増した。培養赤芽球は、14時間の培養物に添加したマイトマイシンCを使用して、遺伝毒性傷害に供した。
図5Aで示す通り、ESREは、マイトマイシンCのすべての試験濃度で、制限下での自己再生した培養物よりもより多く生存可能であった。アポトーシス率は、核小疱形成した赤芽球を同定するために、イメージングフローサイトメトリーを用いて定量した(
図5B)。マイトマイシンCのすべての濃度において、アポトーシス率は、例えば、マイトマイシンCの0.1uMの用量で、制限された自己再生を受ける細胞よりESREで著しく低く、アポトーシスの割合は、ESREで17%、及び、制限された自己再生を受けた培養物に対しては52%及び62%であった。更に、いくつかのp53標的遺伝子のmRNA発現は、qPCRで定量した。マイトマイシンCの曝露は、全ての培養物中でのMdm2の、及び、ESRE中のみでのPUMAの上方調節と関連していた(
図5C、それぞれ、青色及び赤色バー)。注目すべきは、アポトーシスエフェクターPERPは、その定常状態での増殖中、または、マイトマイシンC曝露後のどちらにおいてもESREにより発現されなかった(
図5C、黒色バー)。
【0213】
対照である照射マウスの脾臓細胞中のp53は、主に、核である(
図6、上段パネル)。p53は、制限された自己再生を受けた赤芽球における細胞質、及び、核の両方で存在する(
図6、中段パネル)。著しく対照的に、p53は、ESREで、主に、細胞質である(
図6、下段パネル)。
図5のデータと合わせて、p53は、広範囲に自己再生した、対、制限された自己再生した赤芽球において、差次的に制御されると考えられている。従って、実験は、p53機能がESREにおいて下方調節され、その広範な自己再生能に寄与するという仮説を試験するように設計することができる。
【0214】
制限された自己再生、対、広範囲な自己再生を経験する野生型のp53及びp53なしの赤芽球におけるp53の機能を描写する
p53の機能のメカニズムのより良い理解は、赤血球前駆体の自己再生の規制への洞察を提供し、及び、臍帯血または成体末梢血の単核細胞から、ESREの生成を容易にするために潜在的な標的としてのp53を識別する。結果は、ESREが遺伝毒性ストレスに対しより寛容的であり(
図5A)、そして、p53それ自体及びp53の下流経路は、広範な自己再生、対、制限された自己再生を受けた赤芽球で差次的に規制されている(
図6、5C)証拠を提供する。p53、MDM2、または、MDM4のmRNAレベルにおける有意差は、制限された自己再生、対、広範な自己再生を受けたマウス、対、赤芽球において見い出されていないが、p53の翻訳後の調節は、劇的に異なるように見える。
【0215】
マイトマイシンC、並びに、1、2、4Gyでのγ線照射の両方を使用して、遺伝毒性傷害に対する、制限された自己再生、対、広範な自己再生を受けた赤芽球の差次的応答を確認するために、実験を実施した。細胞数、生存率、アポトーシス率、及び、細胞周期の状態は、イメージングフローサイトメトリーを使用して、ビヒクルで処置したもの/非照射の対照群赤芽球培養物に比較する。野生型、p53+/−、及び、p53−/−の同腹仔から誘導した自己再生の赤芽球の遺伝毒性ストレスに対する応答を、分析することができる。これらの実験は、赤芽球増殖の制限された相の間で、即ち、培養の最初の2週間の間で実施する。増殖率の変動、広範な自己再生培養を生成する性向、及び、p53+/−赤芽球における遺伝毒性ストレスに対する応答は、このプロセスのp53調節における役割のさらなる証拠を提供する。いかなる特定の理論に縛られることを望まないが、ヒト細胞におけるp53の欠如は、赤血球の成熟を妨害しないと考えられている。
【0216】
p53機能喪失のヒト臍帯血からのESRE生成を促進する能力
ShRNAを含むレンチウイルスベクター(OpenBiosystems社)は、広範な自己再生能力をそれらに付与するために、成体由来の自己再生赤芽球におけるp53をノックダウンするために使用することができる。qPCR及びウェスタンブロットにより分析した種々の程度でノックダウンしたp53を有する赤芽球の培養物は、広範囲に自己再生する能力を試験することができる。ESREにおける遺伝子発現のレンチウイルスによるノックダウンは、EPO、SCF、及び、デキサメタゾンでの自己再生を受けた赤芽球で20%〜95%の遺伝子ノックダウンを達成することができる。重要なことは、ピューロマイシンの選択が、自己再生能を妨害することである。
【0217】
p53をノックダウンするための実験は、10〜15日間、制限された自己再生を受けた臍帯血由来の自己再生するヒト赤芽球において実施することができる。いくつかのshRNAを含むレンチウイルスベクター(OpenBiosystems社)が、個別に、培養を開始した後、2〜4日以内に赤芽球に導入することができる。p53のノックダウンの程度は、qPCR及びウェスタンブロットにより分析することができ、そして、最も効果的な配列が、その後、使用された。
【0218】
いかなる特定の理論に縛られることを望まないが、p53は、広範な自己再生、対、制限された自己再生を経験したヒト赤芽球において差次的に調節され、及び、減弱したp53機能が、広範な赤芽球の自己再生に関連付けられ、かつ、寄与することが考えられている。細胞生存、細胞分裂、分化、及び老化における下流のp53の効果の一式を考慮すると、それは、具体的に、アポトーシスを変更することが期待されるPERP単独の下方調節が、p53のノックダウンと比較した場合、自己再生能を拡大するのにより効果的であることを証明する可能性は低い。
【0219】
本発明は、広範な自己再生能力を持つヒト赤芽球の生成に関するものである。本発明のESREは、分化した細胞生成物を生成するために使用することができ、血液単位が、2.5×10
12のRBCを含むので、診療所で、特に、規模が問題となる場合で、使用することができる。幾つかの例では、ESREの増殖、及び、分化のためにバイオリアクターを使用することが望ましい。本発明は、RBCの制限のない供給源を生成するために、組成物及び方法を提供する。成体組織からESREを生成する能力は、個別の血液細胞治療のための基礎を築く。また、本発明の細胞は、異常ヘモグロビン症、細胞骨格障害、及び、RBCの異常酵素症などの赤血球特有の疾患の生体外モデルの作成を可能にする。
【0220】
[実施例4]
Bmi−1は、赤血球自己再生の中心的な調節剤である
本明細書に提示される結果は、Bmi−1が赤血球自己再生の中心的な調節剤であることを示している。機能獲得型の実験は、ヒト胎児肝細胞においてBmi−1を発現するために実施した。実験は、また、骨髄由来細胞においてBmi−1を発現するように設計された。
【0221】
簡単に説明すると、9週目のヒト胎児肝細胞を解離させ、増殖培地を用いて培養した。増殖の6日後、ヒト細胞は、FUGWバックボーン(Addgene社)で、マウスのBmi−1を含むレンチウイルスを感染させた。空のベクターに感染した細胞は、増殖日38日目で増殖を止めたが、一方、Bmi−1の過剰発現に感染した細胞は、75日以上の間、増殖(明視野画像)を続けた(
図7)。これらの増殖細胞は、未熟な赤芽球(ギムザ染色)の形態を有する。5日間赤血球成熟培地に置かれたとき、これらの未熟赤芽球は、後期赤芽球に成熟し、さらに網状赤血球を形成するために除核される(
図8)。
図9は、Bmi−1の過剰増殖を含む培養からのヒト赤芽球の例を示す。
【0222】
[実施例5]
脂質の補充及び赤芽球の自己再生
本明細書に提示した結果は、赤芽球の自己再生の脂質補充の重要性を示している。例えば、StemSpan増殖培地からの脂質補充の中止が、赤芽球増殖を鈍化させたことが観察された(
図10)。StemPro34増殖培地からの脂質補充の中止は、「広範な」相に入り、そして、ESREになるためのSREの能力を封鎖した(
図11)。更に、ESREが、5日間、脂質補充有り、または、なしで培養した場合、Bmi1の転写レベルは、脂質を含む対照の培養物と比較して、「無脂質」状態では、低下したことが観察された(
図12)。
【0223】
本明細書に引用された各々及び全ての特許、特許出願、並びに、刊行物の開示は、その全体を参照することにより、本明細書に組み込まれたものとする。本発明は、特定の実施形態を参照して開示されてきたが、本発明の他の実施形態及び変更は、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者により考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、全てのそのような実施形態及び同等の変更を含むと解釈されるべきことを意図している。