特許第6704850号(P6704850)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704850
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】人工核酸分子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/67 20060101AFI20200525BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20200525BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20200525BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20200525BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20200525BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20200525BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20200525BHJP
【FI】
   C12N15/67 ZZNA
   C12N5/10
   A61K48/00
   A61K35/12
   A61K31/7105
   A61K35/76
   !C12P21/02 C
【請求項の数】26
【全頁数】118
(21)【出願番号】特願2016-543590(P2016-543590)
(86)(22)【出願日】2014年12月30日
(65)【公表番号】特表2017-502670(P2017-502670A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】EP2014003480
(87)【国際公開番号】WO2015101414
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2017年12月27日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2013/003946
(32)【優先日】2013年12月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509014386
【氏名又は名称】キュアバック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・テース
【審査官】 鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0181427(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/143699(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/143700(WO,A2)
【文献】 国際公開第2013/143698(WO,A1)
【文献】 RNA Biology,2012年,Vol. 9, No. 11,pp. 1319-1330
【文献】 Biochim. Biophys. Acta,1996年,Vol. 1305,pp. 151-162
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12N 5/10
C12P 21/00−21/08
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)と、
b.リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR又はリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの機能的変異体に由来する核酸配列を含む少なくとも1つの3’−非翻訳領域エレメント(3’−UTRエレメント)と、
c.更なる5’−末端エレメントとして5’−UTRとを含み、
前記リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの機能的変異体に由来する核酸配列が、その機能的変異体が由来する自然界に存在する3’−UTRに由来する核酸配列と少なくとも90%同一であり、
前記5’−UTRが、5’−TOP UTRであり、5’TOPモチーフを含まないことを特徴とする人工核酸分子。
【請求項2】
前記少なくとも1つの3’−UTRエレメントが、前記人工核酸分子からのタンパク質産生の増強、安定化、及び延長の少なくともいずれかを行う請求項1に記載の人工核酸分子。
【請求項3】
前記3’−UTRが、前記ORFと異種である請求項1から2のいずれかに記載の人工核酸分子。
【請求項4】
前記少なくとも1つの3’−UTRエレメントが、脊椎動物のリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR、哺乳類のリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR、霊長類のリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR、ヒトのリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRを含む真核生物のリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR、又はマウスのリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRを含むげっ歯類のリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRに由来する核酸配列を含む請求項1から3のいずれかに記載の人工核酸分子。
【請求項5】
前記オープンリーディングフレーム(ORF)が、レポーター遺伝子をコードしておらず、又はレポーター遺伝子に由来していない請求項1から4のいずれかに記載の人工核酸分子。
【請求項6】
前記オープンリーディングフレーム(ORF)が、リボソームタンパク質をコードしていない請求項1から5のいずれかに記載の人工核酸分子。
【請求項7】
前記3’−UTRが、ポリ(A)配列もポリアデニル化シグナルも含まないか、又は
前記3’−UTRが、ポリ(A)配列及びポリアデニル化シグナルの少なくともいずれかを更に含む請求項1から6のいずれかに記載の人工核酸分子。
【請求項8】
前記少なくとも1つの3’−UTRエレメントが、リボソームタンパク質L9(RPL9)、リボソームタンパク質L3(RPL3)、リボソームタンパク質L4(RPL4)、リボソームタンパク質L5(RPL5)、リボソームタンパク質L6(RPL6)、リボソームタンパク質L7(RPL7)、リボソームタンパク質L7a(RPL7A)、リボソームタンパク質L11(RPL11)、リボソームタンパク質L12(RPL12)、リボソームタンパク質L13(RPL13)、リボソームタンパク質L23(RPL23)、リボソームタンパク質L18(RPL18)、リボソームタンパク質L18a(RPL18A)、リボソームタンパク質L19(RPL19)、リボソームタンパク質L21(RPL21)、リボソームタンパク質L22(RPL22)、リボソームタンパク質L23a(RPL23A)、リボソームタンパク質L17(RPL17)、リボソームタンパク質L24(RPL24)、リボソームタンパク質L26(RPL26)、リボソームタンパク質L27(RPL27)、リボソームタンパク質L30(RPL30)、リボソームタンパク質L27a(RPL27A)、リボソームタンパク質L28(RPL28)、リボソームタンパク質L29(RPL29)、リボソームタンパク質L31(RPL31)、リボソームタンパク質L32(RPL32)、リボソームタンパク質L35a(RPL35A)、リボソームタンパク質L37(RPL37)、リボソームタンパク質L37a(RPL37A)、リボソームタンパク質L38(RPL38)、リボソームタンパク質L39(RPL39)、リボソームタンパク質、ラージ、P0(RPLP0)、リボソームタンパク質、ラージ、P1(RPLP1)、リボソームタンパク質、ラージ、P2(RPLP2)、リボソームタンパク質S3(RPS3)、リボソームタンパク質S3A(RPS3A)、リボソームタンパク質S4、X連鎖(RPS4X)、リボソームタンパク質S4、Y連鎖1(RPS4Y1)、リボソームタンパク質S5(RPS5)、リボソームタンパク質S6(RPS6)、リボソームタンパク質S7(RPS7)、リボソームタンパク質S8(RPS8)、リボソームタンパク質S9(RPS9)、リボソームタンパク質S10(RPS10)、リボソームタンパク質S11(RPS11)、リボソームタンパク質S12(RPS12)、リボソームタンパク質S13(RPS13)、リボソームタンパク質S15(RPS15)、リボソームタンパク質S15a(RPS15A)、リボソームタンパク質S16(RPS16)、リボソームタンパク質S19(RPS19)、リボソームタンパク質S20(RPS20)、リボソームタンパク質S21(RPS21)、リボソームタンパク質S23(RPS23)、リボソームタンパク質S25(RPS25)、リボソームタンパク質S26(RPS26)、リボソームタンパク質S27(RPS27)、リボソームタンパク質S27a(RPS27a)、リボソームタンパク質S28(RPS28)、リボソームタンパク質S29(RPS29)、リボソームタンパク質L15(RPL15)、リボソームタンパク質S2(RPS2)、リボソームタンパク質L14(RPL14)、リボソームタンパク質S14(RPS14)、リボソームタンパク質L10(RPL10)、リボソームタンパク質L10a(RPL10A)、リボソームタンパク質L35(RPL35)、リボソームタンパク質L13a(RPL13A)、リボソームタンパク質L36(RPL36)、リボソームタンパク質L36a(RPL36A)、リボソームタンパク質L41(RPL41)、リボソームタンパク質S18(RPS18)、リボソームタンパク質S24(RPS24)、リボソームタンパク質L8(RPL8)、リボソームタンパク質L34(RPL34)、リボソームタンパク質S17(RPS17)、リボソームタンパク質SA(RPSA)、ユビキチンA−52残基リボソームタンパク質融合生成物1(UBA52)、遍在的に発現するFinkel−Biskis−Reillyマウス肉腫ウイルス(FBR−MuSV)(FAU)、リボソームタンパク質L22様1(RPL22L1)、リボソームタンパク質L39様(RPL39L)、リボソームタンパク質L10様(RPL10L)、リボソームタンパク質L36a様(RPL36AL)、リボソームタンパク質L3様(RPL3L)、リボソームタンパク質S27様(RPS27L)、リボソームタンパク質L26様1(RPL26L1)、リボソームタンパク質L7様1(RPL7L1)、リボソームタンパク質L13aシュードジーン(RPL13AP)、リボソームタンパク質L37aシュードジーン8(RPL37AP8)、リボソームタンパク質S10シュードジーン5(RPS10P5)、リボソームタンパク質S26シュードジーン11(RPS26P11)、リボソームタンパク質L39シュードジーン5(RPL39P5)、リボソームタンパク質、ラージ、P0シュードジーン6(RPLP0P6)、及びリボソームタンパク質L36シュードジーン14(RPL36P14)からなる群から選択される配列の3’−UTRに由来する核酸配列を含む請求項1から7のいずれかに記載の人工核酸分子。
【請求項9】
前記少なくとも1つの3’−UTRエレメントが、配列番号10〜配列番号205からなる群から選択される核酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の同一性を有する核酸配列を含むか又はからなる請求項1から8のいずれかに記載の人工核酸分子。
【請求項10】
5’−キャップ構造、ポリ(C)配列、ヒストンステムループ、及びIRESモチーフの少なくともいずれかを更に含む請求項1から9のいずれかに記載の人工核酸分子。
【請求項11】
前記ヒストンステムループが、配列番号5に係る配列を含む請求項10に記載の人工核酸分子。
【請求項12】
前記人工核酸分子が、少なくとも部分的にG/C改変されており、及び/又は、前記オープンリーディングフレームが、コドンが最適化されている領域を含む請求項1から11のいずれかに記載の人工核酸分子。
【請求項13】
前記オープンリーディングフレームのG/C含量が、野生型オープンリーディングフレームに比べて増加している、及び/又は、前記オープンリーディングフレームのコドンが最適化されている請求項12に記載の人工核酸分子。
【請求項14】
RNA分子である請求項1から13のいずれかに記載の人工核酸分子。
【請求項15】
mRNA分子である請求項1から14のいずれかに記載の人工核酸分子。
【請求項16】
a.オープンリーディングフレーム及びクローニングサイトの少なくともいずれかと、
b.リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR又はリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの機能的変異体に由来する核酸配列を含む少なくとも1つの3’−非翻訳領域エレメント(3’−UTRエレメント)と、
c.更なる5’−末端エレメントとして5’−UTRとを含み、
前記リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの機能的変異体に由来する核酸配列が、その機能的変異体が由来する自然界に存在する3’−UTRに由来する核酸配列と少なくとも90%同一であり、
前記5’−UTRが、5’−TOP UTRであり、5’TOPモチーフを含まないことを特徴とするベクター。
【請求項17】
前記オープンリーディングフレーム、前記少なくとも1つの3’−UTRエレメント、及び/又は前記5’−UTRは、前記人工核酸分子に関して、請求項2から15のいずれかで定義される特徴のいずれか1つによって特徴付けられる請求項16に記載のベクター。
【請求項18】
プラスミドベクター又はウイルスベクターある請求項16から17のいずれかに記載のベクター。
【請求項19】
請求項2から15のいずれかに記載の人工核酸分子を含む請求項16から18のいずれかに記載のベクター。
【請求項20】
請求項1から15のいずれかに記載の人工核酸分子又は請求項16から19のいずれかに記載のベクターを含むことを特徴とする細胞。
【請求項21】
請求項1から15のいずれかに記載の人工核酸分子、請求項16から19のいずれかに記載のベクター、又は請求項20に記載の細胞を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項22】
1以上の薬学的に許容できるビヒクル、希釈剤、賦形剤、及び1以上のアジュバントの少なくともいずれかを更に含む請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
医薬として使用するための請求項1から15のいずれかに記載の人工核酸分子、請求項16から19のいずれかに記載のベクター、請求項20に記載の細胞、又は請求項21から22のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項24】
ワクチンとして使用するための又は遺伝子治療において使用するための請求項1から15のいずれかに記載の人工核酸分子、請求項16から19のいずれかに記載のベクター、請求項20に記載の細胞、又は請求項21から22のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項25】
請求項1から15のいずれかに記載の人工核酸分子、請求項16から19のいずれかに記載のベクター、請求項20に記載の細胞、及び請求項21から22のいずれかに記載の医薬組成物の少なくともいずれかを含むことを特徴とするキット又はキットオブパーツ。
【請求項26】
使用説明書と、トランスフェクション用の細胞と、アジュバントと、医薬組成物の投与手段と、前記人工核酸分子、前記ベクター、前記細胞、又は前記医薬組成物を溶解又は希釈するための薬学的に許容できる担体及び薬学的に許容できる溶液の少なくともいずれかとを更に含む請求項25に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンリーディングフレームと、3’−非翻訳領域エレメント(3’−UTRエレメント)と、任意で、ポリ(A)配列及び/又はポリアデニル化シグナルとを含む人工核酸分子に関する。本発明は、更に、好ましくは遺伝子治療及び/又は遺伝子ワクチン接種の分野で使用するための、3’−UTRエレメントを含むベクター、前記人工核酸分子又は前記ベクターを含む細胞、前記人工核酸分子又は前記ベクターを含む医薬組成物、並びに前記人工核酸分子、前記ベクター、及び/又は前記医薬組成物を含むキットに関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療及び遺伝子ワクチン接種は、現代医学の最も有望且つ急速に発展している方法に属する。これらは、非常に広範囲に亘る疾患を治療するための非常に特異的且つ個人的な選択肢を提供することができる。具体的には、遺伝性の遺伝子疾患だけでなく、自己免疫疾患、癌性又は腫瘍関連疾患に加えて、炎症性疾患も、かかる治療アプローチの対象となり得る。また、これらアプローチによってかかる疾患の発症を早期に予防することも考えられる。
【0003】
遺伝子治療の背後にある主な概念的理論は、特定の疾患の病態に関連している遺伝子発現の欠陥を適切に調節することである。遺伝子発現の病理学的変化は、重要な遺伝子産物、例えば、ホルモン等のシグナル伝達因子、ハウスキーピング因子、代謝酵素、構造タンパク質等の欠失又は過剰産生を引き起こす場合がある。遺伝子発現の変化は、転写及び/又は翻訳の誤制御によるだけではなく、特定のタンパク質をコードしているORF内部の突然変異による場合もある。病理学的突然変異は、例えば、染色体の異常によって、又は点突然変異若しくはフレームシフト突然変異等のより特異的な突然変異によって引き起こされる場合があり、これらは全て、遺伝子産物の機能を限定したり、場合によっては、機能全てを失わせたりする。しかし、細胞の転写又は翻訳機構に関与しているタンパク質をコードしている遺伝子が突然変異によって影響を受ける場合、転写又は翻訳の誤制御が生じる場合もある。かかる突然変異は、制御機能を有する遺伝子の病理学的なアップレギュレーション又はダウンレギュレーションを導く場合がある。かかる制御機能を発揮する遺伝子産物をコードしている遺伝子は、例えば、転写因子、シグナル受容体、メッセンジャータンパク質等であり得る。しかし、かかる制御タンパク質をコードしている遺伝子の機能が失われても、特定の状況下では、欠陥のある遺伝子産物の更に下流で作用する他の因子を人工的に導入することによって復帰させることができる。また、異常のある遺伝子自体を置換することを介して、遺伝子治療によってかかる遺伝子の欠陥を補償することもできる。
【0004】
遺伝子ワクチン接種は、選択された抗原(例えば、細菌表面、ウイルス粒子、腫瘍抗原等の特徴的な成分)に対する所望の免疫応答を誘起する。一般的に、ワクチン接種は、現代医学の重要な偉業のうちの1つである。しかし、現在有効なワクチンを利用できる疾患は限定的な数でしかない。したがって、未だ毎年数百万の人々が、ワクチン接種によって予防することができない感染症に冒されている。
【0005】
一般的に、ワクチンは、「第1」世代、「第2」世代、及び「第3」世代のワクチンに更に分類することができる。「第1世代」のワクチンは、典型的に、全生物ワクチンである。これは、ウイルス、細菌等の生病原体及び弱毒化病原体又は殺病原体に基づく。生病原体及び弱毒化病原体のワクチンの主な問題点は、生命に危険を及ぼすような変異体に戻ってしまうリスクがあることである。したがって、かかる病原体は、たとえ弱毒化されていても、本質的に予測不可能なリスクを有している場合がある。死病原体は、特異的免疫応答を発生させるのに望ましいほど有効ではない場合がある。これらリスクを最小限に抑えるために、「第2世代」のワクチンが開発された。これは、典型的に、病原体に由来する所定の抗原又は組み換えタンパク質成分からなるサブユニットワクチンである。
【0006】
遺伝子ワクチン、即ち、遺伝子ワクチン接種用ワクチンは、通常、「第3世代」のワクチンとして理解される。これは、典型的に、インビボで病原体又は腫瘍抗原に特徴的なペプチド又はタンパク質(抗原)の断片を発現させる遺伝的に改変された核酸分子で構成される。遺伝子ワクチンは、患者に投与され、標的細胞によって取り込まれた後に発現する。投与された核酸が発現することにより、コードされているタンパク質が産生される。これらタンパク質が患者の免疫系によって外来タンパク質であると認識された場合、免疫応答が誘発される。
【0007】
上記から分かる通り、遺伝子治療及び遺伝子ワクチン接種の両方法は、本質的に、核酸分子を患者に投与し、次いで、コードされている遺伝情報を転写及び/又は翻訳させることに基づいている。或いは、遺伝子ワクチン接種又は遺伝子治療は、治療を受ける患者から特定の身体細胞を単離し、次いで、かかる細胞をエクスビボでトランスフェクトし、処理された細胞を前記患者に再投与することを含む方法を含んでいてもよい。
【0008】
DNA及びRNAは、遺伝子治療又は遺伝子ワクチン接種を行う際に、投与するための核酸分子として用いることができる。DNAは、比較的安定で取り扱いが容易であることが知られている。しかし、DNAの使用には、投与されたDNA断片が患者のゲノムに不所望に挿入されて、欠陥の生じた遺伝子の機能が失われてしまう等の突然変異誘発事象の可能性があるというリスクがある。更なるリスクとして、抗DNA抗体の不所望な産生が生じたことがある。別の問題点は、DNAを投与して得ることができる、コードされているペプチド又はタンパク質の発現レベルが限定的である点である。これは、転写された後で、生じたmRNAが翻訳されるためには、当該DNAが核に入らなければならないからである。数ある理由の中でも、投与されるDNAの発現レベルは、DNA転写を制御する特定の転写因子の存在に依存する。かかる因子が存在しない場合、DNA転写によって満足のいく量のRNAが得られない。その結果、翻訳されるペプチド又はタンパク質のレベルが限定される。
【0009】
遺伝子治療又は遺伝子ワクチン接種のためにDNAの代わりにRNAを用いることによって、不所望のゲノムへの組み込み及び抗DNA抗体の産生のリスクが最小限に抑えられるか又はなくなる。しかし、RNAは、遍在するRNAseによって容易に分解され得る比較的不安定な分子種であると考えられている。
【0010】
インビボでは、RNAの分解は、RNAの半減期の制御に寄与している。この効果により真核生物の遺伝子発現の制御が微調整されていると考えられ、立証されている(非特許文献1)。したがって、各自然界に存在するmRNAは、前記mRNAが由来する遺伝子及び発現する細胞型に依存する個々の半減期を有している。このことは、前記遺伝子の発現レベルの制御に寄与している。不安定なRNAは、異なる時点で一過的に遺伝子を発現させるために重要である。しかし、寿命の長いRNAは、別個のタンパク質の蓄積又は遺伝子の連続的発現に関連している場合がある。インビボでは、mRNAの半減期は、例えば、インスリン様成長因子I、アクチン、及びアルブミンのmRNAについて示されている通り、ホルモン処理等の環境要因にも依存している場合がある(非特許文献2)。
【0011】
遺伝子治療及び遺伝子ワクチン接種の場合、通常、安定なRNAが望ましい。これは、通常、RNA配列によってコードされている産物がインビボで蓄積されることが望ましいという事実によるものである。他方、RNAは、好適な剤形に調製されたとき、保存の過程で、及び投与したときに、構造的且つ機能的に一体性を維持しなければならない。したがって、早期に分解又は崩壊するのを防ぐために、遺伝子治療又は遺伝子ワクチン接種用の安定なRNA分子を提供する努力が行われてきた。
【0012】
核酸分子のG/C含量がその安定性に影響を及ぼす場合があることが報告されている。したがって、多量のグアニン(G)及び/又はシトシン(C)残基を含む核酸は、多量のアデニン(A)及びチミン(T)又はウラシル(U)ヌクレオチドを含有する核酸よりも機能的に安定であり得る。これに関連して、特許文献1は、コード領域の配列を改変することによって安定化したmRNAを含有する医薬組成物を提供している。かかる配列改変は、遺伝子コードの縮重を利用する。したがって、あまり好ましくない(RNAの安定性の観点であまり好ましくない)組み合わせのヌクレオチドを含有するコドンを、コードされているアミノ酸配列を変化させることなしに別のコドンに置換してよい。このRNAの安定化方法は、所望のアミノ酸配列の余地を残してはならない各単一のRNA分子の特定のヌクレオチド配列の提供によって限定される。また、このアプローチは、RNAのコード領域に制限される。
【0013】
mRNAを安定化するための別の選択肢として、自然界に存在する真核生物のmRNA分子は、特徴的な安定化エレメントを含有することが見出されている。例えば、真核生物のmRNA分子は、5’末端(5’−UTR)及び/又は3’末端(3’−UTR)に所謂非翻訳領域(UTR)を含み、更に5’−キャップ構造又は3’−ポリ(A)テール等の他の構造的特徴を含む。5’−UTR及び3’−UTRは、典型的に、ゲノムDNAから転写されるので、未成熟mRNAのエレメントである。5’−キャップ及び3’−ポリ(A)テール(ポリ(A)テール又はポリ(A)配列とも呼ばれる)等の成熟mRNAの特徴的な構造的特徴は、通常、mRNAのプロセシング中に転写(未成熟)mRNAに付加される。
【0014】
3’−ポリ(A)テールは、典型的に、転写mRNAの3’末端に付加されるアデノシンヌクレオチドの単調な一続きの配列である。これは、最高約400個のアデノシンヌクレオチドを含み得る。かかる3’−ポリ(A)テールの長さは、個々のmRNAの安定性にとって重要な要素である可能性があることが見出されている。
【0015】
また、α−グロビンmRNAの3’−UTRは、α−グロビンmRNAの周知の安定性にとって重要な因子であり得ることが示されている(非特許文献3)。α−グロビンmRNAの3’−UTRは、その存在がインビトロにおけるmRNAの安定性と相関している特定のリボ核タンパク質複合体(α−複合体)の形成に関与していることが明らかである(非特許文献4)。
【0016】
更に、リボソームタンパク質のmRNAにおけるUTRについて興味深い調節機能が実証されている:リボソームタンパク質のmRNAの5’−UTRは、mRNAの成長関連翻訳を制御するが、その調節のストリンジェンシーは、リボソームタンパク質のmRNAにおけるそれぞれの3’−UTRによって付与される(非特許文献5)。この機序は、リボソームタンパク質の特異的発現パターンに寄与し、前記リボソームタンパク質は、典型的に、リボソームタンパク質S9又はリボソームタンパク質L32等の幾つかのリボソームタンパク質のmRNAがハウスキーピング遺伝子と称されるように、一定レベルで転写される(非特許文献6)。したがって、リボソームタンパク質の成長関連発現パターンは、主に、翻訳レベルの調節に起因するものである。
【0017】
mRNAの安定性に影響を及ぼす因子にかかわらず、投与された核酸分子が標的細胞又は組織によって有効に翻訳されることは、遺伝子治療又は遺伝子ワクチン接種用の核酸分子を用いる任意のアプローチにとって非常に重要である。上に引用した例から分かる通り、安定性の調節とともに、大部分のmRNAの翻訳も、UTR、5’−キャップ、及び3’−ポリ(A)テール等の構造的特徴によって調節されている。これに関連して、ポリ(A)テールの長さも同様に翻訳効率にとって重要な役割を果たしている可能性があることが報告されている。しかし、3’−エレメントの安定化は、翻訳を減少させる効果を有している可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第02/098443号パンフレット
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Friedel et al.,2009.Conserved principles of mammalian transcriptional regulation revealed by RNA half−life,Nucleic Acid Research,37(17):1−12
【非特許文献2】Johnson et al.,Newly synthesized RNA:Simultaneous measurement in intact cells of transcription rates and RNA stability of insulin様growth factor I,actin,and albumin in growth hormone−stimulated hepatocytes,Proc.Natl.Acad.Sci.,Vol.88,pp.5287−5291,1991
【非特許文献3】Rodgers et al.,Regulated α−globin mRNA decay is a cytoplasmic event proceeding through 3’−to−5’ exosome−dependent decapping,RNA,8,pp.1526−1537,2002
【非特許文献4】Wang et al.,An mRNA stability complex functions with poly(A)−binding protein to stabilize mRNA in vitro,Molecular and Cellular biology,Vol 19,No.7,July 1999,p.4552−4560
【非特許文献5】Ledda et al.,Effect of the 3’−UTR length on the translational regulation of 5’−terminal oligopyrimidine mRNAs,Gene,Vol.344,2005,p.213−220
【非特許文献6】Janovick−Guretzky et al.,Housekeeping Gene Expression in Bovine Liver is Affected by Physiological State,Feed Intake,and Dietary Treatment,J.Dairy Sci.,Vol.90,2007,p.2246−2252
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、遺伝子治療及び/又は遺伝子ワクチン接種に応用するのに好適であり得る核酸分子を提供することにある。具体的には、本発明の目的は、翻訳効率において著しい機能喪失を示すことなしに、早期の分解又は崩壊に対して安定化されているmRNA種を提供することにある。また、本発明の目的は、核酸分子によってコードされているそれぞれのタンパク質の発現が増強されることを特徴とする人工核酸分子、好ましくはmRNAを提供することにある。本発明の1つの具体的な目的は、それぞれのコードされているタンパク質の翻訳効率が増強されるmRNAを提供することにある。本発明の別の目的は、遺伝子治療及び/又は遺伝子ワクチン接種において使用することができる優れたmRNA種をコードする核酸分子を提供することにある。本発明の更なる目的は、遺伝子治療及び/又は遺伝子ワクチン接種において使用するための医薬組成物を提供することにある。要約すると、本発明の目的は、コスト効率が高く且つ簡単なアプローチによって関連技術の上記問題点を克服する改善された核酸種を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の根底にある目的は、請求する発明主題によって解決される。
【0022】
本発明は、DARPAにより与えられたAgreement No.HR0011−11−3−0001の下で、政府よる支援を受けてなされた。当該政府は、本発明における一定の権利を有している。
【0023】
以下の図、配列、及び実施例は、本発明を更に説明することを意図する。これらは、本発明の発明主題を限定することを意図するものではない。
図1〜3は、インビトロ転写によって得ることができるmRNAをコードしている配列を示す。以下の略記を用いる:
・rpl32:5’末端オリゴピリミジン領域を有しないヒトリボソームタンパク質ラージ32の5’−UTR
・PpLuc(GC):キタアメリカホタル(Photinus pyralis)ルシフェラーゼをコードしているGCリッチmRNA配列
・A64:64アデニレートを含むポリ(A)配列
・ag:ヒトα−グロビンの3’−UTRの中央のα複合体結合部分
・rps9:ヒトリボソームタンパク質スモール9の3’−UTRに由来する3’−UTRエレメント
・C30:30シチジレートを含むポリ(C)配列
・ヒストンSL:(Cakmakci,Lerner,Wagner,Zheng,& William F Marzluff,2008.Mol.Cell.Biol.28(3):1182−94)から得たヒストンステムループ配列
・アルブミン:ヒトアルブミンの3’−UTR
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】mRNA rpl32−PpLuc(GC)−A64−C30−ヒストンSL(配列番号8)をコードしている配列を示す。
図2】mRNA rpl32−PpLuc(GC)−ag−A64−C30−ヒストンSL(配列番号9)をコードしている配列を示す。ヒトα−グロビンの3’−UTRの中央のα複合体結合部分をORFとポリ(A)との間に挿入した。PpLuc(GC)のORFをイタリック体でハイライトする。α−グロビンに由来する3’−UTRエレメントに下線を引く。
図3】rpl32−PpLuc(GC)−rps9−A64−C30−hSL(配列番号7)のmRNA配列。ヒトリボソームタンパク質スモール9の3’−UTRをORFとポリ(A)との間に挿入した。PpLuc(GC)のORFをイタリック体でハイライトする。rps9に由来する3’−UTRエレメントに下線を引く。
図4】リボソームタンパク質スモール9の3’−UTRが、mRNAからのタンパク質発現を著しく増加させることを示す。3’−UTRを有しないか又はヒトα−グロビン3’−UTRを含有するmRNAからのルシフェラーゼ発現と比べて、mRNAからのルシフェラーゼ発現に対する本発明のヒトリボソームタンパク質スモール9の3’−UTRの効果を調べた。したがって、様々なmRNAをリポフェクションによってヒト皮膚線維芽細胞(HDF)にトランスフェクトした。トランスフェクションの6時間後、24時間後、48時間後、及び72時間後にルシフェラーゼレベルを測定した。ルシフェラーゼは、明らかに、3’−UTRを含有しないmRNAから発現した。しかし、ルシフェラーゼ発現は、周知のα−グロビン3’−UTRによっては増加しなかった。対照的に、リボソームタンパク質スモール9の3’−UTRは、ルシフェラーゼ発現を著しく増加させた。三連トランスフェクションについての平均RLU±SEM(相対光単位±標準誤差)としてデータをグラフ化する。RLUについては、実施例5.1に要約する。
図5】mRNA rpl32−PpLuc(GC)−アルブミン−A64−C30−ヒストンSL(配列番号206)をコードしている配列を示す。ヒトアルブミンの3’−UTRをORFとポリ(A)との間に挿入した。PpLuc(GC)のORFをイタリック体でハイライトする。アルブミンに由来する3’−UTRエレメントに下線を引く。
図6】マウスリボソームタンパク質遺伝子rps21、rps29、rps9、rps27、rps28、rps19、rpl35a、rpl13、rpl36、及びrpl23aに由来する3’−UTRは、HDF細胞(ヒト皮膚線維芽細胞)において、mRNAからのタンパク質発現を増加させることが既に示されている(国際公開第2013143698号)アルブミン遺伝子の3’−UTRを含むmRNAと少なくとも同程度まで、mRNAからのタンパク質発現を増加させることを示す。
図7】マウスリボソームタンパク質遺伝子rps21、rps29、rps9、rps27、rps28、rps19、rpl35a、rpl13、rpl36、及びrpl23aに由来する3’−UTRは、HeLa細胞において、mRNAからのタンパク質発現を増加させることが既に示されている(国際公開第2013143698号)アルブミン遺伝子の3’−UTRを含むmRNAと少なくとも同程度まで、mRNAからのタンパク質発現を増加させることを示す。
図8】マウスリボソームタンパク質遺伝子rpl23、uba52、rpl22l1、rpl36a、rps4x、rpl27、rpl3、rps23、rps13、rpl26、rps17、rps18、rps8、Fau、rps13、rpl11、及びrpl38に由来する3’−UTRは、HDF細胞(ヒト皮膚線維芽細胞)において、mRNAからのタンパク質発現を増加させることが既に示されている(国際公開第2013143698号)アルブミン遺伝子の3’−UTRを含むmRNAと少なくとも同程度まで、mRNAからのタンパク質発現を増加させることを示す。
図9】マウスリボソームタンパク質遺伝子rpl23、uba52、rpl22l1、rpl36a、rps4x、rpl27、rpl3、rps23、rps13、rpl26、rps17、rps18、rps8、Fau、rps13、rpl11、及びrpl38に由来する3’−UTRは、HeLa細胞において、mRNAからのタンパク質発現を増加させることが既に示されている(国際公開第2013143698号)アルブミン遺伝子の3’−UTRを含むmRNAと少なくとも同程度まで、mRNAからのタンパク質発現を増加させることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
明確に且つ読みやすくするために、以下の定義を提供する。これら定義について言及される任意の技術的特徴は、本発明の各実施形態及び全実施形態において読み取ることができる。これら実施形態に関連して更なる定義及び説明を具体的に提供する場合がある。
【0026】
適応免疫応答:適応免疫応答は、典型的に、免疫系の抗原特異的応答であると理解される。抗原特異性により、特定の病原体又は病原体に感染している細胞に合わせた応答を生じさせることができる。これら病原体又は細胞に合わせた応答を開始させる能力は、通常、「記憶細胞」によって体内に維持されている。身体がある病原体に1回超感染した場合、これら特異的記憶細胞を用いて、前記病原体を速やかに除去する。これに関連して、適応免疫応答の第1の工程は、抗原提示細胞による抗原特異的免疫応答を誘導することができる抗原特異的なナイーブT細胞又は様々な免疫細胞の活性化である。これは、ナイーブT細胞が常に通過しているリンパ組織及び器官で生じる。抗原提示細胞として機能し得る3種の細胞は、樹状細胞、マクロファージ、及びB細胞である。これら細胞は、それぞれ、免疫応答の誘発において異なる機能を有する。樹状細胞は、食作用及びマクロピノサイトーシスによって抗原を取り込むことができ、また、例えば外来抗原と接触することによって刺激されて、樹状細胞が成熟樹状細胞に分化する局所リンパ組織に遊走することができる。マクロファージは、細菌等の特定の抗原を摂取し、感染因子又は他の適切な刺激によって誘導されてMHC分子を発現させる。また、受容体を介して可溶性タンパク質抗原に結合し、内部に取り込むB細胞の独自の能力は、T細胞の誘導にとって重要であり得る。MHC分子は、典型的に、抗原のT細胞への提示を担当する。MHC分子における抗原の提示により、T細胞が活性化されて、前記T細胞の増殖及びアームドエフェクターT細胞への分化が誘導される。エフェクターT細胞の最も重要な機能は、CD8+細胞傷害性T細胞によって感染細胞を殺傷し、共に細胞媒介免疫を構成するTh1細胞によってマクロファージを活性化させ、Th2細胞及びTh1細胞の両方によってB細胞を活性化させて様々な分類の抗体を産生させ、それによって体液性免疫応答を駆動することである。T細胞は、抗原を直接認識したり結合したりはしないが、その代わり、例えば、他の細胞の表面上のMHC分子に結合している病原体由来のタンパク質抗原の短いペプチド断片(例えば、所謂エピトープ)を認識するT細胞受容体によって抗原を認識する。
【0027】
適応免疫系:適応免疫系は、本質的に、病原体の成長を停止させる又は妨げることに専念している。適応免疫系は、典型的に、特定の病原体を認識及び記憶し(免疫を生じさせ)、前記病原体に遭遇したときにより強い攻撃を開始する能力を脊椎動物の免疫系に付与することによって適応免疫応答を制御する。前記系は、体細胞超変異(体細胞の突然変異が加速されるプロセス)及びV(D)J組み換え(抗原受容体遺伝子セグメントの不可逆的な遺伝子組み替え)により、高度に適応可能である。この機序により、少数の遺伝子が膨大な数の様々な抗原受容体を産生することができ、前記抗原受容体は、後に、個々のリンパ球で一意的に発現する。遺伝子の再配置により各細胞のDNAが不可逆的に変化するので、かかる細胞の後代(子孫)は全て、長命特異的免疫にとって重要であるメモリーB細胞及びメモリーT細胞を含む、同じ受容体特異性をコードしている遺伝子を受け継ぐ。
【0028】
アジュバント/アジュバント成分:アジュバント又はアジュバント成分は、最も広い意味では、典型的に、薬物又はワクチン等の他の剤の効果を変化させ得る、例えば、増強し得る薬理学的及び/又は免疫学的剤である。アジュバント又はアジュバント成分は、広義で解釈すべきであり、広範囲に亘る物質を指す。典型的に、これら物質は、抗原の免疫原性を高めることができる。例えば、アジュバントは、自然免疫系によって認識され得、例えば、自然免疫応答を誘発することができる。「アジュバント」は、典型的に、適応免疫応答を誘発しない。したがって、「アジュバント」は、抗原として適切ではない。アジュバントの作用機序は、適応免疫応答を生じさせる抗原によって誘発される効果とは異なる。
【0029】
抗原:本発明において、「抗原」は、典型的に、免疫系によって、好ましくは適応免疫系によって認識され得る物質を指し、例えば、適応免疫応答の一部として抗体及び/又は抗原特異的T細胞を形成することによって抗原特異的免疫応答を誘発することができる。典型的に、抗原は、MHCによってT細胞に提示され得るペプチド又はタンパク質であってもよく、前記ペプチド又はタンパク質を含んでいてもよい。本発明の意味では、抗原は、提供される核酸分子、好ましくは本明細書に定義するmRNAの翻訳産物であってよい。この状況では、少なくとも1つのエピトープを含むペプチド及びタンパク質の断片、変異体、及び誘導体も抗原として理解される。本発明の状況では、本明細書に定義する腫瘍抗原及び病原性抗原が特に好ましい。
【0030】
人工核酸分子:人工核酸分子は、典型的に、自然界には存在しない核酸分子(例えば、DNA又はRNA)であると理解してよい。言い換えれば、人工核酸分子は、非天然核酸分子として理解してよい。かかる核酸分子は、その個々の配列(自然界には存在しない)及び/又は他の修飾(例えば、自然界には存在しないヌクレオチドの構造的修飾)から非天然であり得る。人工核酸分子は、DNA分子であってもよく、RNA分子であってもよく、DNA部分とRNA部分とを含むハイブリッド分子であってもよい。典型的に、人工核酸分子は、所望の人工ヌクレオチド配列(異種配列)に相当するように遺伝子改変方法によって設計及び/又は作製することができる。これに関連して、人工配列は、通常、自然界には存在し得ない配列である、即ち、少なくとも1つのヌクレオチドが野生型配列とは異なる。用語「野生型」とは、自然界に存在する配列であると理解してよい。更に、用語「人工核酸分子」の意味は、「1つの単一分子」には限定されず、典型的に、同一分子の集合体を含むと理解される。したがって、アリコートに含有される複数の同一分子を指す場合がある。
【0031】
2シストロン性RNA、多シストロン性RNA:2シストロン性又は多シストロン性のRNAは、典型的に2つ(2シストロン性)又はそれ以上(多シストロン性)のオープンリーディングフレーム(ORF)を有し得るRNA、好ましくはmRNAである。これに関連して、オープンリーディングフレームは、ペプチド又はタンパク質に翻訳可能なコドンの配列である。
【0032】
担体/高分子担体:本発明における担体は、典型的に、別の化合物(カーゴ)の輸送及び/又は複合体化を促進する化合物であってよい。高分子担体は、典型的に、高分子で形成される担体である。担体は、共有相互作用又は非共有相互作用によってカーゴに結合し得る。担体は、核酸(例えば、RNA又はDNA)を標的細胞に輸送することができる。担体は、幾つかの実施形態では、カチオン性成分であってよい。
【0033】
カチオン性成分:用語「カチオン性成分」は、典型的に、典型的に1〜9のpH値、好ましくは9以下(例えば、5〜9)、8以下(例えば、5〜8)、7以下(例えば、5〜7)のpH値、最も好ましくは生理学的pH(例えば、7.3〜7.4)を有する正に帯電している帯電分子(カチオン)を指す。したがって、カチオン性成分は、任意の正に帯電している化合物又はポリマーであってよく、好ましくは、生理学的条件下で、特にインビボにおける生理学的条件下で正に帯電しているカチオン性のペプチド又はタンパク質であってよい。「カチオン性のペプチド又はタンパク質」は、例えば、Arg、His、Lys、又はOrnから選択される、少なくとも1つの正に帯電しているアミノ酸、又は1超の正に帯電しているアミノ酸を含有していてよい。したがって、所与の条件下で1超の正電荷を呈する「ポリカチオン性」成分も、カチオン性成分の範囲内である。
【0034】
5’−キャップ:5’−キャップは、一般的に成熟mRNAの5’末端を「キャップ」する実体、典型的に修飾ヌクレオチド実体である。5’−キャップは、典型的に、修飾ヌクレオチド、特に、グアニンヌクレオチドの誘導体によって形成され得る。好ましくは、5’−キャップは、5’−5’−三リン酸結合を介して5’末端に結合する。5’−キャップは、メチル化されていてもよく、例えば、m7GpppN(式中、Nは、5’−キャップを有する核酸の5’末端のヌクレオチド、典型的に、RNAの5’末端である)である。5’−キャップ構造の更なる例としては、グリセリル、逆転デオキシ非塩基残基(部分)、4’,5’メチレンヌクレオチド、1−(ベータ−D−エリトロフラノシル)ヌクレオチド、4’−チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド、1,5−アンヒドロヘキシトールヌクレオチド、L−ヌクレオチド、アルファ−ヌクレオチド、修飾塩基ヌクレオチド、トレオ−ペントフラノシルヌクレオチド、非環式3’,4’−セコヌクレオチド、非環式3,4−ジヒドロキシブチルヌクレオチド、非環式3,5ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、3’−3’−逆転ヌクレオチド部分、3’−3’−逆転非塩基部分、3’−2’−逆転ヌクレオチド部分、3’−2’−逆転非塩基部分、1,4−ブタンジオールホスフェート、3’−ホスホロアミデート、ヘキシルホスフェート、アミノヘキシルホスフェート、3’−ホスフェート、3’ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、又は架橋若しくは非架橋メチルホスホネート部分が挙げられる。
【0035】
細胞免疫/細胞免疫応答:細胞免疫は、典型的に、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞(NK)、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球の活性化、及び抗原に応答する様々なサイトカインの放出を指す。より一般的な用語では、細胞免疫は、抗体に基づくのではなく、免疫系の細胞の活性化に基づく。典型的に、細胞免疫応答は、細胞(例えば、樹状細胞又は他の細胞等の特定の免疫細胞)においてアポトーシスを誘導することができる抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球を活性化し、その表面上に外来抗原のエピトープを提示することを特徴とし得る。かかる細胞は、ウイルスに感染していてもよく、細胞内細菌に感染していてもよく、腫瘍抗原を提示する癌細胞であってもよい。更なる特徴は、マクロファージ及びナチュラルキラー細胞を活性化して病原体を破壊させたり、細胞を刺激して適応免疫応答及び自然免疫応答に関与している他の細胞の機能に影響を及ぼす様々なサイトカインを分泌させたりすることであり得る。
【0036】
DNA:DNAは、デオキシリボ核酸の一般的な略称である。DNAは、核酸分子、即ち、ヌクレオチドからなるポリマーである。これらヌクレオチドは、通常、デオキシアデノシン一リン酸、デオキシチミジン一リン酸、デオキシグアノシン一リン酸、及びデオキシシチジン一リン酸のモノマーであり、これらは、単独で、糖部分(デオキシリボース)、塩基部分、及びリン酸部分で構成され、特徴的な骨格構造により重合する。前記骨格構造は、典型的に、第1のヌクレオチドの糖部分(即ち、デオキシリボース)と、隣接する第2のモノマーのリン酸部分との間のホスホジエステル結合によって形成される。モノマーの特定の順序、即ち、糖/リン酸骨格に結合している塩基の順序が、DNA配列と呼ばれる。DNAは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。二本鎖形態では、第1の鎖のヌクレオチドは、典型的に、例えばA/T塩基対合及びG/C塩基対合によって第2の鎖のヌクレオチドとハイブリダイズする。
【0037】
エピトープ:(「抗原決定基」とも呼ばれる)は、T細胞エピトープとB細胞エピトープとに分けることができる。本発明におけるT細胞エピトープ又はタンパク質の一部は、好ましくは約6アミノ酸長〜約20アミノ酸長又はそれ以上のアミノ酸長を有する断片、例えば、好ましくは約8アミノ酸長〜約10アミノ酸長、例えば、8アミノ酸長、9アミノ酸長、又は10アミノ酸長(又は更には11アミノ酸長又は12アミノ酸長)を有するMHCクラスI分子によって処理及び提示される断片、或いは、好ましくは約13アミノ酸長以上、例えば、13アミノ酸長、14アミノ酸長、15アミノ酸長、16アミノ酸長、17アミノ酸長、18アミノ酸長、19アミノ酸長、20アミノ酸長、又はそれ以上のアミノ酸長を有するMHCクラスII分子によって処理及び提示される断片を含んでよく、これら断片は、アミノ酸配列の任意の部分から選択してよい。これら断片は、典型的に、ペプチド断片及びMHC分子からなる複合体の形態でT細胞によって認識される。即ち、前記断片は、典型的に、そのネイティブな形態では認識されない。B細胞エピトープは、典型的に、好ましくは5アミノ酸〜15アミノ酸、より好ましくは5アミノ酸〜12アミノ酸、更により好ましくは6アミノ酸〜9アミノ酸を有する、本明細書に定義する(ネイティブな)タンパク質又はペプチド抗原の外表面上に位置する断片であり、これは、即ちそのネイティブな形態で抗体によって認識され得る。
【0038】
更に、タンパク質又はペプチドのかかるエピトープは、かかるタンパク質又はペプチドの本明細書に記載する変異体のいずれかから選択してよい。これに関連して、抗原決定基は、本明細書に定義するタンパク質又はペプチドのアミノ酸配列において不連続であるが、三次元構造では結合する本明細書に定義するタンパク質又はペプチドのセグメントで構成される高次構造エピトープ又は不連続エピトープであってもよく、単一ポリペプチド鎖で構成される連続エピトープ又は線状エピトープであってもよい。
【0039】
配列の断片:配列の断片は、典型的に、例えば、核酸分子又はアミノ酸の配列の完全長配列のより短い部分であってよい。したがって、断片は、典型的に、完全長配列内の相当する一続きと同一である配列からなる。本発明における好ましい配列の断片は、前記断片が由来する分子における連続する一続きの実体に相当するヌクレオチド又はアミノ酸等の連続する一続きの実体からなり、前記断片が由来する分子全体(即ち、完全長分子)の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、更により好ましくは少なくとも60%、更により好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%を表す。
【0040】
G/C改変:G/C改変核酸は、典型的に、好ましくは野生型配列よりも多数のグアノシン/シトシンヌクレオチドを含む改変野生型配列に基づく核酸、好ましくは本明細書に定義する人工核酸分子であってよい。グアノシン又はシトシンヌクレオチドを含有するコドンでアデノシン又はチミジンヌクレオチドを含有するコドンを置換することによって、このように数を増加させることができる。DNA又はRNAのコード領域におけるG/C含量を増加させる場合、遺伝コードの縮重を利用する。したがって、コドン置換は、コードされているアミノ酸残基は変化させず、核酸分子のG/C含量のみを増加させることが好ましい。
【0041】
遺伝子治療:遺伝子治療は、典型的に、ペプチド又はタンパク質をコードしている核酸による患者の身体又は患者の身体の単離要素(例えば、単離組織/細胞)の治療を意味すると理解してよい。遺伝子治療は、典型的に、a)核酸、好ましくは本明細書に定義する人工核酸分子を任意の投与経路によって患者に直接投与するか、又はインビトロで前記患者の単離細胞/組織に投与して、インビボ/エクスビボ又はインビトロで前記患者の細胞をトランスフェクトする工程;b)導入された前記核酸分子を転写及び/又は翻訳させる工程;及び任意でc)前記核酸を前記患者に直接投与しなかった場合、トランスフェクトされた単離細胞を前記患者に再投与する工程のうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0042】
遺伝子ワクチン接種:遺伝子ワクチン接種は、典型的に、抗原若しくは免疫原をコードしている核酸分子又はその断片を投与することによるワクチン接種であると理解してよい。前記核酸分子は、被験体の身体又は被験体の単離細胞に投与してよい。身体の特定の細胞をトランスフェクトした際又は単離細胞をトランスフェクトした際、これら細胞は、前記抗原又は免疫原を発現し、次いで、免疫系に提示して、適応免疫応答、即ち、抗原特異的免疫応答を誘発し得る。したがって、遺伝子ワクチン接種は、典型的に、a)核酸、好ましくは本明細書に定義する人工核酸分子を被験体、好ましくは患者、又は被験体、好ましくは患者の単離細胞に投与して、通常、インビボ又はインビトロで前記被験体の細胞をトランスフェクトする工程;b)導入された前記核酸分子を転写及び/又は翻訳させる工程;及び任意で、c)前記核酸を前記患者に直接投与しなかった場合、トランスフェクトされた単離細胞を被験体、好ましくは患者に再投与する工程のうちの少なくとも1つを含む。
【0043】
異種配列:2つの配列は、典型的に、同一の遺伝子に由来していない場合、「異種」であると理解される。即ち、異種配列は、同一の生物に由来し得たとしても、天然で(自然界で)同一の核酸分子(例えば、同一のmRNA等)中に存在することはない。
【0044】
体液性免疫/体液性免疫応答:体液性免疫は、典型的に、抗体産生と、任意で抗体産生に付随する付属プロセスとを指す。体液性免疫応答は、典型的に、例えば、Th2活性化及びサイトカイン産生、胚中心の形成及びアイソタイプの切り換え、親和性成熟及び記憶細胞の産生を特徴とし得る。また、体液性免疫は、典型的に、病原体及び毒素の中和、古典的補体活性化、並びに食作用及び病原体排除のオプソニンによる促進を含む抗体のエフェクター機能を指す場合もある。
【0045】
免疫原:本発明において、免疫原は、典型的に、免疫応答を刺激することができる化合物であると理解してよい。好ましくは、免疫原は、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質である。特に好ましい実施形態では、本発明の意味における免疫原は、提供される核酸分子、好ましくは本明細書に定義する人工核酸分子の翻訳産物である。典型的に、免疫原は、少なくとも適応免疫応答を誘発する。
【0046】
免疫賦活組成物:本発明において、免疫賦活組成物は、典型的に、免疫応答を誘導することができるか、又は免疫応答を誘導することができる成分が由来する少なくとも1つの成分を含有する組成物であると理解してよい。かかる免疫応答は、好ましくは、自然免疫応答又は適応免疫応答と自然免疫応答との組み合わせであってよい。本発明における免疫賦活組成物は、好ましくは、少なくとも1つの人工核酸分子、より好ましくはRNA(例えば、mRNA分子)を含有する。mRNA等の免疫賦活成分は、好適な担体と複合体化し得る。したがって、免疫賦活組成物は、mRNA/担体複合体を含んでいてよい。更に、免疫賦活組成物は、mRNA等の免疫賦活成分のアジュバント及び/又は好適なビヒクルを含んでいてよい。
【0047】
免疫応答:免疫応答は、典型的に、特定の抗原に対する適応免疫系の特異的反応(所謂、特異的又は適応免疫応答)、自然免疫系の非特異的反応(所謂、非特異的又は自然免疫応答)、又はこれらの組み合わせであってよい。
【0048】
免疫系:免疫系は、生物を感染から保護することができる。病原体が、生物の物理的障壁の通過に成功し、この生物に侵入した場合、自然免疫系が、即座にではあるが非特異的に応答する。病原体がこの自然応答から逃れた場合、脊椎動物は、第2の保護層である適応免疫系を有している。ここで、免疫系は、感染中の応答に適応してその病原体認識を向上させる。その後、この向上した応答は、病原体が排除された後も免疫記憶の形態で保持され、この病原体に遭遇したときにはいつも適応免疫系がより速やかに且つより強力な攻撃を行うことが可能になる。これによれば、免疫系は、自然免疫系及び適応免疫系を含む。これら2つの部分はそれぞれ、典型的に、所謂体液性成分及び細胞性成分を含有する。
【0049】
免疫賦活RNA:本発明における免疫賦活RNA(isRNA)は、典型的に、自然免疫応答を誘導することができるRNAであってよい。これは、通常、オープンリーディングフレームを有しないので、ペプチド抗原又は免疫原を提供しないが、例えば、特定の種類のToll様受容体(TLR)又は他の好適な受容体に結合することによって免疫応答を誘発する。しかし、無論、オープンリーディングフレームを有し且つペプチド/タンパク質をコードしているmRNAも自然免疫応答を誘導し得るので、免疫賦活RNAであり得る。
【0050】
自然免疫系:非特異的免疫系としても知られている自然免疫系は、典型的に、非特異的に他の生物による感染からホストを守る細胞及び機構を含む。これは、自然免疫系の細胞は、包括的に病原体を認識し、応答することができるが、適応免疫系とは異なり、ホストに対して長期間免疫を付与することも、防御免疫を付与することもないことを意味する。自然免疫系は、例えば、Toll様受容体(TLR)のリガンド、リポ多糖類等の他の補助物質、TNF−アルファ、CD40リガンド、サイトカイン、モノカイン、リンホカイン、インターロイキン、ケモカイン、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、IL−26、IL−27、IL−28、IL−29、IL−30、IL−31、IL−32、IL−33、IFN−アルファ、IFN−ベータ、IFN−ガンマ、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、LT−ベータ、TNF−アルファ、成長因子及びhGH、ヒトToll様受容体TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10のリガンド、マウスToll様受容体TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12、又はTLR13のリガンド、NOD様受容体のリガンド、RIG−I様受容体のリガンド、免疫賦活核酸、免疫賦活RNA(isRNA)、CpG−DNA、抗菌剤、又は抗ウイルス剤によって活性化され得る。本発明に係る医薬組成物は、1以上のかかる物質を含んでいてよい。典型的に、自然免疫系の応答は、サイトカインと呼ばれる特殊な化学メディエーターを含む化学因子の産生を介して感染部位に免疫細胞を動員し、補体カスケードを活性化し、特殊な白血球によって器官、組織、血液、及びリンパ中に存在する外来物質を同定及び除去し、適応免疫系を活性化し、及び/又は感染因子に対する物理的及び化学的な障壁として作用することを含む。
【0051】
クローニングサイト:クローニングサイトは、典型的に、核酸配列、例えば、オープンリーディングフレームを含む核酸配列の挿入に好適である核酸分子のセグメントであると理解される。挿入は、例えば、制限酵素処理及びライゲーションによって当業者に公知の任意の分子生物学的方法によって実施してよい。クローニングサイトは、典型的に、1以上の制限酵素認識部位(制限酵素部位)を含む。これら1以上の制限酵素部位は、これら部位においてDNAを切断する制限酵素によって認識され得る。1超の制限酵素部位を含むクローニングサイトは、マルチクローニングサイト(MCS)又はポリリンカーと呼ばれる場合もある。
【0052】
核酸分子:核酸分子は、核酸成分を含む、好ましくは核酸成分からなる分子である。核酸分子という用語は、好ましくは、DNA又はRNAの分子を指す。好ましくは、用語「ポリヌクレオチド」と同義的に用いられる。好ましくは、核酸分子は、糖/リン酸骨格のホスホジエステル結合によって互いに共有結合しているヌクレオチドモノマーを含むか又はからなるポリマーである。また、用語「核酸分子」は、例えば、塩基が修飾されている、糖が修飾されている、又は骨格が修飾されているDNA又はRNAの分子等の修飾核酸分子も含む。
【0053】
オープンリーディングフレーム:本発明におけるオープンリーディングフレーム(ORF)は、典型的に、ペプチド又はタンパク質に翻訳され得る幾つかのヌクレオチドトリプレットの配列であってよい。オープンリーディングフレームは、好ましくは、開始コドン、即ち、その5’末端における通常アミノ酸メチオニンをコードしている3つの連続するヌクレオチドの組み合わせ(ATG)と、その後に、通常3の倍数である長さのヌクレオチドを有する領域とを含む。ORFは、好ましくは、終止コドン(例えば、TAA、TAG、TGA)によって終結する。典型的に、これは、オープンリーディングフレームの唯一の終止コドンである。したがって、本発明におけるオープンリーディングフレームは、好ましくは、開始コドン(例えば、ATG)で始まり、好ましくは、終止コドン(例えば、TAA、TGA、又はTAG)で終結する、3で割り切れる多数のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列である。オープンリーディングフレームは、単離することができたり、例えば、ベクター又はmRNAにおけるより長い核酸配列に組み込むことができたりする。また、オープンリーディングフレームは、「タンパク質コード領域」と呼ばれる場合もある。
【0054】
ペプチド:ペプチド又はポリペプチドは、典型的に、ペプチド結合によって連結されているアミノ酸モノマーのポリマーである。典型的に、50個未満のモノマーユニットを含む。しかし、ペプチドという用語は、50個超のモノマーユニットを有する分子を除外するものではない。また、典型的に50個〜600個のモノマーユニットを有する長いペプチドは、ポリペプチドとも呼ばれる。
【0055】
薬学的に有効な量:本発明において薬学的に有効な量は、典型的に、免疫応答等の薬学的効果を誘導して、ペプチド又はタンパク質の病的レベルの発現を変化させるか又は例えば、病理学的状況の場合、欠損している遺伝子産物を置換するのに十分な量であると理解される。
【0056】
タンパク質:タンパク質は、典型的に、1以上のペプチド又はタンパク質を含む。タンパク質は、典型的に、3次元形態に折り畳まれており、これは、タンパク質がその生物学的機能を発揮するのに必要である場合がある。
【0057】
ポリ(A)配列:ポリ(A)テール又は3’−ポリ(A)テールとも呼ばれるポリ(A)配列は、典型的に、アデノシンヌクレオチドの配列、例えば、約400個以下のアデノシンヌクレオチドの配列、約20個〜約400個のアデノシンヌクレオチドの配列、好ましくは約50個〜約400個のアデノシンヌクレオチドの配列、より好ましくは約50個〜約300個のアデノシンヌクレオチドの配列、更により好ましくは約50個〜約250個のアデノシンヌクレオチドの配列、最も好ましくは約60個〜約250個のアデノシンヌクレオチドの配列であると理解される。ポリ(A)配列は、典型的に、mRNAの3’末端に位置する。本発明において、ポリ(A)配列は、mRNA内に位置してもよく、又は例えば、ベクターの転写によってRNA(好ましくはmRNA)を作製するためのテンプレートとして機能するベクター等のベクターにおける任意の他の核酸分子内に位置してもよい。
【0058】
ポリアデニル化:ポリアデニル化は、典型的に、RNA分子等の核酸分子、例えば、未成熟mRNAにポリ(A)配列を付加することであると理解される。ポリアデニル化は、所謂ポリアデニル化シグナルによって誘導され得る。このシグナルは、好ましくは、ポリアデニル化される核酸分子(例えば、RNA分子)の3’末端における一続きのヌクレオチド内に位置している。ポリアデニル化シグナルは、典型的に、アデニン及びウラシル/チミンヌクレオチドからなるヘキサマー、好ましくは、ヘキサマー配列AAUAAAを含む。他の配列、好ましくはヘキサマー配列も考えられる。ポリアデニル化は、典型的に、プレmRNA(未成熟mRNAとも呼ばれる)のプロセシング中に生じる。典型的に、RNAの成熟(プレmRNAから成熟mRNAへ)は、ポリアデニル化工程を含む。
【0059】
制限酵素部位:「制限酵素認識部位」とも呼ばれる制限酵素部位は、制限酵素によって認識されるヌクレオチド配列である。制限酵素部位は、典型的に短く、好ましくは、回文構造のヌクレオチド配列、例えば、4個〜8個のヌクレオチドを含む配列である。制限酵素部位は、好ましくは、制限酵素によって特異的に認識される。制限酵素は、典型的に、この部位において制限酵素部位を含むヌクレオチド配列を切断する。二本鎖DNA配列等の二本鎖ヌクレオチド配列では、制限酵素は、典型的に、ヌクレオチド配列の両方の鎖を切断する。
【0060】
RNA、mRNA:RNAは、リボ核酸の一般的な略称である。RNAは、核酸分子、即ち、ヌクレオチドからなるポリマーである。これらヌクレオチドは、通常、所謂骨格に沿って互いに結合しているアデノシン一リン酸、ウリジン一リン酸、グアノシン一リン酸、及びシチジン一リン酸のモノマーである。骨格は、第1のモノマーの糖(即ち、リボース)と第2の隣接するモノマーのリン酸部分との間のホスホジエステル結合によって形成される。特定の連続するモノマーをRNA配列と呼ぶ。通常、RNAは、例えば、細胞内部のDNA配列の転写によって得ることができる。真核細胞では、転写は、通常、核又はミトコンドリア内部で実施される。インビボでは、DNAの転写により、通常、所謂未成熟RNAが得られ、これは、所謂メッセンジャーRNA(通常、mRNAと略される)にプロセシングされなければならない。例えば、真核生物における未成熟RNAのプロセシングは、スプライシング、5’−キャッピング、ポリアデニル化、核又はミトコンドリアからのエクスポート等の様々な異なる転写後修飾を含む。これらプロセス全体をRNAの成熟とも呼ぶ。成熟メッセンジャーRNAは、通常、特定のペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列に翻訳され得るヌクレオチド配列を提供する。典型的に、成熟mRNAは、5’−キャップ、5’−UTR、オープンリーディングフレーム、3’−UTR、及びポリ(A)配列を含む。メッセンジャーRNAは別として、転写及び/又は翻訳の制御に関与し得る幾つかの非コード型のRNAが存在する。
【0061】
核酸分子の配列:核酸分子の配列は、典型的に、そのヌクレオチドの特定の及び個々の順序、即ち、連続物であると理解される。タンパク質又はペプチドの配列は、典型的に、そのアミノ酸の順序、即ち、連続物であると理解される。
【0062】
配列同一性:同じ長さ及び順序のヌクレオチド又はアミノ酸を有する場合、2以上の配列は同一である。同一性の割合は、典型的に、2つの配列が同一である程度について説明する。即ち、典型的に、その配列位置においてレファレンス配列の同一ヌクレオチドと一致するヌクレオチドの割合について説明するものである。同一性の程度を決定する場合、比較する配列は、同じ長さ、即ち、比較する配列のうちの最長の配列の長さを有するとみなされる。これは、8ヌクレオチドからなる第1の配列が、前記第1の配列を含む10ヌクレオチドからなる第2の配列と80%同一であることを意味する。言い換えれば、本発明において、配列同一性は、好ましくは、同じ長さを有する2以上の配列において配列のうちの同一位置を有するヌクレオチドの割合に関する。ギャップは、アラインメントにおけるその実際の位置にかかわらず、通常、非同一位置であるとみなされる。
【0063】
安定化核酸分子:安定化核酸分子は、例えば、環境因子又はエキソヌクレアーゼ若しくはエンドヌクレアーゼによる分解等の酵素分解によって、修飾されていない核酸分子よりも崩壊又は分解に対して安定であるように修飾されている核酸分子、好ましくはDNA又はRNAの分子である。好ましくは、本発明における安定化核酸分子は、細胞(例えば、原核細胞又は真核細胞)、好ましくは哺乳類細胞(例えば、ヒト細胞)において安定化される。また、安定化効果は、例えば、安定化核酸分子を含む医薬組成物の製造過程において、細胞外、例えば、バッファ溶液中でも発揮され得る。
【0064】
トランスフェクション:用語「トランスフェクション」は、DNA又はRNA(例えば、mRNA)の分子等の核酸分子を細胞、好ましくは真核細胞に導入することを指す。本発明において、用語「トランスフェクション」は、核酸分子を細胞、好ましくは真核細胞、例えば哺乳類細胞に導入するための当業者に公知の任意の方法を含む。かかる方法は、例えば、エレクトロポレーション、(例えば、カチオン性脂質及び/又はリポソームに基づく)リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ナノ粒子に基づくトランスフェクション、ウイルスに基づくトランスフェクション、又はカチオン性ポリマー(例えば、DEAE−デキストラン又はポリエチレンイミン等)に基づくトランスフェクションを含む。好ましくは、導入は、非ウイルスである。
【0065】
ワクチン:ワクチンは、典型的に、少なくとも1つの抗原、好ましくは免疫原を提供する予防的又は治療的材料であると理解される。抗原又は免疫原は、ワクチン接種に好適な任意の材料に由来してよい。例えば、抗原又は免疫原は、病原体(例えば、細菌若しくはウイルス粒子等)又は腫瘍若しくは癌性組織に由来してよい。抗原又は免疫原は、身体の適応免疫系を刺激して、適応免疫応答を提供する。
【0066】
ベクター:用語「ベクター」は、核酸分子、好ましくは人工核酸分子を指す。本発明におけるベクターは、オープンリーディングフレームを含む核酸配列等の所望の核酸配列を組み込む又は有するのに好適である。かかるベクターは、ストレージベクター、発現ベクター、クローニングベクター、トランスファーベクター等であってよい。ストレージベクターは、核酸分子、例えば、mRNA分子を便利に保管することができるベクターである。したがって、このベクターは、例えば、所望のmRNA配列又はその一部に相当する配列(例えば、mRNAのオープンリーディングフレーム及び3’−UTRに相当する配列)を含んでいてよい。発現ベクターは、RNA(例えば、mRNA)、又はペプチド、ポリペプチド、若しくはタンパク質等の発現産物を産生するために用いることができる。例えば、発現ベクターは、プロモーター配列(例えば、RNAポリメラーゼプロモーター配列)等のベクターの一続きの配列の転写に必要な配列を含んでいてよい。クローニングベクターは、典型的に、核酸配列をベクターに組み込むために用いることができるクローニングサイトを含むベクターである。クローニングベクターは、例えば、プラスミドベクター又はバクテリオファージベクターであってよい。トランスファーベクターは、細胞又は生物に核酸分子を移入するのに好適なベクター、例えば、ウイルスベクターであってよい。本発明におけるベクターは、例えば、RNAベクターであってもDNAベクターであってもよい。好ましくは、ベクターは、DNA分子である。好ましくは、本発明におけるベクターは、クローニングサイト、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性因子)、及びベクターの増殖に好適な配列(例えば、複製起点)を含む。好ましくは、本願におけるベクターは、プラスミドベクターである。
【0067】
ビヒクル:ビヒクルは、典型的に、化合物(例えば、薬学的に活性のある化合物)を保管、輸送、及び/又は投与するのに好適な材料であると理解される。例えば、薬学的に活性のある化合物を保管、輸送、及び/又は投与するのに好適な生理学的に許容可能な液体であってよい。
【0068】
3’−非翻訳領域(3’−UTR):一般的に、用語「3’−UTR」は、オープンリーディングフレームの3’側(即ち、「下流」)に位置し、タンパク質には翻訳されない、人工核酸分子の部分を指す。典型的に、3’−UTRは、mRNAのタンパク質コード領域(オープンリーディングフレーム(ORF)又はコード配列(CDS))とポリ(A)配列との間に位置するmRNAの部分である。本発明の状況では、用語3’−UTRは、それからRNAが転写されるテンプレートにコードされているのではなく、転写後成熟中に付加されるエレメント、例えば、ポリ(A)配列を含んでいてもよい。mRNAの3’UTRは、アミノ酸配列には翻訳されない。3’UTR配列は、一般的に、遺伝子発現プロセス中にそれぞれのmRNAに転写される遺伝子によってコードされている。ゲノム配列は、先ず、任意のイントロンを含む未成熟mRNAに転写される。次いで、前記未成熟mRNAは、成熟プロセスにおいて成熟mRNAに更にプロセシングされる。この成熟プロセスは、5’キャッピング工程、未成熟mRNAをスプライシングして、任意のイントロンを除去する工程、及び3’末端を修飾する工程(例えば、未成熟mRNAの3’末端のポリアデニル化、及び任意のエンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼによる切断等)を含む。本発明において、3’UTRは、タンパク質コード領域の終止コドン、好ましくはタンパク質コード領域の終止コドンの直ぐ3’側とmRNAのポリ(A)配列との間に位置する成熟mRNAの配列に相当する。用語「相当する」とは、3’UTR配列が、3’UTR配列を定義するために用いられるmRNA配列等のRNA配列であってもよく、かかるRNA配列に対応するDNA配列であってもよいことを意味する。本発明の状況において、用語「遺伝子の3’UTR」、例えば、「リボソームタンパク質遺伝子の3’UTR」は、この遺伝子に由来する成熟mRNAの3’UTRに相当する配列、即ち、遺伝子の転写及び未成熟mRNAの成熟によって得られるmRNAである。用語「遺伝子の3’UTR」は、3’UTRのDNA配列及びRNA配列(センス鎖及びアンチセンス鎖の両方、並びに成熟及び未成熟の両方)を含む。
【0069】
5’−非翻訳領域(5’−UTR):5’−UTRは、典型的に、メッセンジャーRNA(mRNA)の特定のセクションであると理解される。これは、mRNAのオープンリーディングフレームの5’側に位置する。典型的に、5’−UTRは、転写開始点から始まり、オープンリーディングフレームの開始コドンの1つ前のヌクレオチドで終わる。5’−UTRは、制御エレメントとも呼ばれる、遺伝子発現を制御するためのエレメントを含んでいてよい。かかる制御エレメントは、例えば、リボソーム結合部位であってよい。5’−UTRは、例えば、5’−キャップの付加によって、転写後翻訳され得る。本発明の状況では、5’−UTRは、5’−キャップと開始コドンとの間に位置する成熟mRNAの配列に相当する。好ましくは、5’−UTRは、5’−キャップの3’側に位置するヌクレオチドから、好ましくは、5’−キャップの直ぐ3’側に位置するヌクレオチドから、タンパク質コード領域の開始コドンの5’側に位置するヌクレオチドまで、好ましくは、タンパク質コード領域の開始コドンの直ぐ5’側に位置するヌクレオチドまで延在する配列に相当する。成熟mRNAの5’−キャップの直ぐ3’側に位置するヌクレオチドは、典型的に、翻訳開始点に相当する。用語「相当する」とは、5’−UTR配列が、5’−UTR配列を定義するために用いられるmRNA配列等のRNA配列であってもよく、かかるRNA配列に相当するDNA配列であってもよいことを意味する。本発明の状況では、用語「遺伝子の5’−UTR」は、この遺伝子に由来する成熟mRNA、即ち、遺伝子の転写及び未成熟mRNAの成熟によって得られるmRNAの5’−UTRに相当する配列である。用語「遺伝子の5’−UTR」は、5’−UTRのDNA配列及びRNA配列を含む。本発明の実施形態では、かかる5’−UTRは、ORFの5’末端に提供され得る。その長さは、典型的に、500ヌクレオチド未満、400ヌクレオチド未満、300ヌクレオチド未満、250ヌクレオチド未満、又は200ヌクレオチド未満である。他の実施形態では、その長さは、少なくとも10ヌクレオチド、20ヌクレオチド、30ヌクレオチド、又は40ヌクレオチド、好ましくは100ヌクレオチド以下又は150ヌクレオチド以下の範囲であってよい。
【0070】
5’末端オリゴピリミジン領域(TOP):5’末端オリゴピリミジン領域(TOP)は、典型的に、特定の遺伝子の核酸分子の5’末端領域(例えば、特定のmRNA分子の5’末端領域又は機能的実体、例えば、転写領域の5’末端領域)に位置する一続きのピリミジンヌクレオチドである。この配列は、シチジン(通常、転写開始点に相当する)で始まり、その後に、通常約3個〜約30個の一続きのピリミジンヌクレオチドが続く。例えば、TOPは、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチド、25ヌクレオチド、26ヌクレオチド、27ヌクレオチド、28ヌクレオチド、29ヌクレオチド、30ヌクレオチド、又は更に多くのヌクレオチドを含み得る。一続きのピリミジン、延いては5’TOPは、TOPの下流に位置する最初のプリンヌクレオチドの1ヌクレオチド5’側で終わる。5’末端オリゴピリミジン領域を含有するメッセンジャーRNAは、多くの場合、TOP mRNAと呼ばれる。したがって、かかるメッセンジャーRNAを提供する遺伝子は、TOP遺伝子と呼ばれる。TOP配列は、例えば、ペプチド伸長因子及びリボソームタンパク質をコードしている遺伝子及びmRNAにおいて見出されている。
【0071】
TOPモチーフ:本発明の状況では、TOPモチーフは、上に定義した5’TOPに相当する核酸配列である。したがって、本発明の状況におけるTOPモチーフは、好ましくは、3ヌクレオチド長〜30ヌクレオチド長を有する一続きのピリミジンヌクレオチドである。好ましくは、TOPモチーフは、少なくとも3ピリミジンヌクレオチド、好ましくは、少なくとも4ピリミジンヌクレオチド、好ましくは、少なくとも5ピリミジンヌクレオチド、より好ましくは、少なくとも6ヌクレオチド、より好ましくは、少なくとも7ヌクレオチド、最も好ましくは、少なくとも8ピリミジンヌクレオチドからなり、この一続きのピリミジンヌクレオチドは、好ましくは、シトシンヌクレオチドを有するその5’末端で始まる。TOP遺伝子及びTOP mRNAでは、TOPモチーフは、好ましくは、その5’末端における転写開始点で始まり、前記遺伝子又はmRNAにおける最初のプリン残基の1ヌクレオチド5’側で終わる。本発明の意味におけるTOPモチーフは、好ましくは、5’UTRを表す配列の5’末端、又は5’UTRをコードしている配列の5’末端に位置する。したがって、好ましくは、3以上の一続きのピリミジンヌクレオチドは、この一続きが、人工核酸分子、人工核酸分子の5’UTRエレメント、又は本明細書に記載するTOP遺伝子の5’UTRに由来する核酸配列等、それぞれの配列の5’末端に位置している場合、本発明の意味において「TOPモチーフ」と呼ばれる。言い換えれば、5’UTR又は5’UTRエレメントの5’末端ではなく、5’UTR又は5’UTRエレメント内のどこかに位置する、3以上の一続きのピリミジンヌクレオチドは、好ましくは、「TOPモチーフ」とは呼ばれない。
【0072】
TOP遺伝子:TOP遺伝子は、典型的に、5’末端オリゴピリミジン領域の存在を特徴とする。更に、殆どのTOP遺伝子は、成長に関連する翻訳制御を特徴とする。しかし、組織特異的に翻訳制御するTOP遺伝子も知られている。上に定義した通り、TOP遺伝子の5’UTRは、TOP遺伝子に由来する成熟mRNAの5’UTRの配列に相当し、これは、好ましくは、5’−キャップの3’側に位置するヌクレオチドから開始コドンの5’側に位置するヌクレオチドまで延在する。TOP遺伝子の5’UTRは、典型的に、開始コドンを全く含まず、好ましくは、上流AUG(uAUG)も上流オープンリーディングフレーム(uORF)も含まない。本明細書では、上流AUG及び上流オープンリーディングフレームは、典型的に、翻訳されるべきオープンリーディングフレームの開始コドン(AUG)の5’側に存在するAUG及びオープンリーディングフレームであると理解される。TOP遺伝子の5’UTRは、一般的に、短めである。TOP遺伝子の5’UTRの長さは、20ヌクレオチド〜500ヌクレオチドで変動してよいが、典型的に、約200ヌクレオチド未満、好ましくは、約150ヌクレオチド未満、より好ましくは、約100ヌクレオチド未満である。本発明の意味における例示的なTOP遺伝子の5’UTRは、国際公開第2013/143700号(この開示は、参照により本明細書に援用される)の配列番号1〜1363に係る配列における5位のヌクレオチドから開始コドン(例えば、ATG)の直ぐ5’側に位置するヌクレオチドまで延在する核酸配列である。この状況では、TOP遺伝子の5’UTRの特に好ましい断片は、5’TOPモチーフの欠失したTOP遺伝子の5’UTRである。用語「TOP遺伝子の5’UTR」又は「5’−TOP UTR」は、好ましくは、天然のTOP遺伝子の5’UTRを指す。
【0073】
第1の態様では、本発明は、
a.少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)と、
b.リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRに由来する核酸配列を含むか又はからなる少なくとも1つの3’−非翻訳領域エレメント(3’−UTRエレメント)と
を含む人工核酸分子に関する。
【0074】
用語「3’−UTRエレメント」は、3’−UTR又は3’−UTRの変異体に由来する核酸配列を含むか又はからなる核酸配列を指す。「3’−UTRエレメント」は、好ましくは、人工核酸配列(例えば、人工mRNA)の3’−UTRを表すか、又は人工核酸分子の3’−UTRをコードしている核酸配列を指す。したがって、本発明の意味において、好ましくは、3’−UTRエレメントは、mRNA(好ましくは、人工mRNA)の3’−UTRであってもよく、mRNAの3’−UTRの転写テンプレートであってもよい。したがって、3’−UTRエレメントは、好ましくは、mRNAの3’−UTR、好ましくは人工mRNA(例えば、遺伝的に改変されているベクターコンストラクトの転写によって得られるmRNA)の3’−UTRに相当する核酸配列である。好ましくは、本発明の意味における3’−UTRエレメントは、3’−UTRとして機能するか、又は3’−UTRの機能を発揮するヌクレオチド配列をコードしている。
【0075】
用語「リボソームタンパク質遺伝子」は、典型的に、リボソームタンパク質をコードしている遺伝子を指す。本明細書で使用するとき、この用語は、それが由来する種にかかわらず、任意のリボソームタンパク質遺伝子を指す。具体的には、この用語は、真核生物のリボソームタンパク質遺伝子を指す。更に、本発明の状況では、用語「リボソームタンパク質遺伝子」は、構造的に又は機能的にリボソームタンパク質遺伝子に類似している遺伝子を指す場合もある。特に、この用語は、「リボソームタンパク質様」遺伝子、シュードジーン、及び特に3’−UTR領域においてリボソームタンパク質遺伝子と配列又は構造的特徴を共有している遺伝子も含む。好ましくは、この用語は、脊椎動物のリボソームタンパク質遺伝子、より好ましくは、哺乳類のリボソームタンパク質遺伝子、更により好ましくは、霊長類リボソームタンパク質遺伝子、特に、ヒトのリボソームタンパク質遺伝子を指す。更に、用語「リボソームタンパク質遺伝子」は、げっ歯類のリボソームタンパク質遺伝子、特に、マウスのリボソームタンパク質遺伝子も包含する。本発明の意味におけるリボソームタンパク質遺伝子の例としては、リボソームタンパク質L9(RPL9)、リボソームタンパク質L3(RPL3)、リボソームタンパク質L4(RPL4)、リボソームタンパク質L5(RPL5)、リボソームタンパク質L6(RPL6)、リボソームタンパク質L7(RPL7)、リボソームタンパク質L7a(RPL7A)、リボソームタンパク質L11(RPL11)、リボソームタンパク質L12(RPL12)、リボソームタンパク質L13(RPL13)、リボソームタンパク質L23(RPL23)、リボソームタンパク質L18(RPL18)、リボソームタンパク質L18a(RPL18A)、リボソームタンパク質L19(RPL19)、リボソームタンパク質L21(RPL21)、リボソームタンパク質L22(RPL22)、リボソームタンパク質L23a(RPL23A)、リボソームタンパク質L17(RPL17)、リボソームタンパク質L24(RPL24)、リボソームタンパク質L26(RPL26)、リボソームタンパク質L27(RPL27)、リボソームタンパク質L30(RPL30)、リボソームタンパク質L27a(RPL27A)、リボソームタンパク質L28(RPL28)、リボソームタンパク質L29(RPL29)、リボソームタンパク質L31(RPL31)、リボソームタンパク質L32(RPL32)、リボソームタンパク質L35a(RPL35A)、リボソームタンパク質L37(RPL37)、リボソームタンパク質L37a(RPL37A)、リボソームタンパク質L38(RPL38)、リボソームタンパク質L39(RPL39)、リボソームタンパク質、ラージ、P0(RPLP0)、リボソームタンパク質、ラージ、P1(RPLP1)、リボソームタンパク質、ラージ、P2(RPLP2)、リボソームタンパク質S3(RPS3)、リボソームタンパク質S3A(RPS3A)、リボソームタンパク質S4、X連鎖(RPS4X)、リボソームタンパク質S4、Y連鎖1(RPS4Y1)、リボソームタンパク質S5(RPS5)、リボソームタンパク質S6(RPS6)、リボソームタンパク質S7(RPS7)、リボソームタンパク質S8(RPS8)、リボソームタンパク質S9(RPS9)、リボソームタンパク質S10(RPS10)、リボソームタンパク質S11(RPS11)、リボソームタンパク質S12(RPS12)、リボソームタンパク質S13(RPS13)、リボソームタンパク質S15(RPS15)、リボソームタンパク質S15a(RPS15A)、リボソームタンパク質S16(RPS16)、リボソームタンパク質S19(RPS19)、リボソームタンパク質S20(RPS20)、リボソームタンパク質S21(RPS21)、リボソームタンパク質S23(RPS23)、リボソームタンパク質S25(RPS25)、リボソームタンパク質S26(RPS26)、リボソームタンパク質S27(RPS27)、リボソームタンパク質S27a(RPS27a)、リボソームタンパク質S28(RPS28)、リボソームタンパク質S29(RPS29)、リボソームタンパク質L15(RPL15)、リボソームタンパク質S2(RPS2)、リボソームタンパク質L14(RPL14)、リボソームタンパク質S14(RPS14)、リボソームタンパク質L10(RPL10)、リボソームタンパク質L10a(RPL10A)、リボソームタンパク質L35(RPL35)、リボソームタンパク質L13a(RPL13A)、リボソームタンパク質L36(RPL36)、リボソームタンパク質L36a(RPL36A)、リボソームタンパク質L41(RPL41)、リボソームタンパク質S18(RPS18)、リボソームタンパク質S24(RPS24)、リボソームタンパク質L8(RPL8)、リボソームタンパク質L34(RPL34)、リボソームタンパク質S17(RPS17)、リボソームタンパク質SA(RPSA)、ユビキチンA−52残基リボソームタンパク質融合生成物1(UBA52)、遍在的に発現するFinkel−Biskis−Reillyマウス肉腫ウイルス(FBR−MuSV)(FAU)、リボソームタンパク質L22様1(RPL22L1)、リボソームタンパク質S17(RPS17)、リボソームタンパク質L39様(RPL39L)、リボソームタンパク質L10様(RPL10L)、リボソームタンパク質L36a様(RPL36AL)、リボソームタンパク質L3様(RPL3L)、リボソームタンパク質S27様(RPS27L)、リボソームタンパク質L26様1(RPL26L1)、リボソームタンパク質L7様1(RPL7L1)、リボソームタンパク質L13aシュードジーン(RPL13AP)、リボソームタンパク質L37aシュードジーン8(RPL37AP8)、リボソームタンパク質S10シュードジーン5(RPS10P5)、リボソームタンパク質S26シュードジーン11(RPS26P11)、リボソームタンパク質L39シュードジーン5(RPL39P5)、リボソームタンパク質、ラージ、P0シュードジーン6(RPLP0P6)、及びリボソームタンパク質L36シュードジーン14(RPL36P14)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、用語「リボソームタンパク質遺伝子」とは、哺乳類、好ましくはヒト又はマウスに由来する前述の遺伝子のうちの1つを指す。
【0076】
好ましくは、少なくとも1つのオープンリーディングフレームと少なくとも1つの3’−UTRエレメントとは、異種である。これに関連して、用語「異種」は、自然界(天然)では、オープンリーディングフレームと3’−UTRエレメント等、人工核酸分子によって含まれる2つの配列エレメントがこの組み合わせでは存在しないことを意味する。好ましくは、3’−UTRエレメントは、オープンリーディングフレームとは異なる遺伝子に由来する。例えば、ORFは、例えば、異なるタンパク質をコードしているか又は同じタンパク質であるが異なる種のタンパク質をコードしている、3’−UTRエレメントとは異なる遺伝子に由来していてよい。好ましくは、オープンリーディングフレームは、リボソームタンパク質をコードしていない。好ましい実施形態では、ORFは、ヒトのリボソームタンパク質又は植物(特に、アラビドプシス)のリボソームタンパク質、特に、ヒトリボソームタンパク質S6(RPS6)、ヒトリボソームタンパク質L36a様(RPL36AL)、又はアラビドプシスリボソームタンパク質S16(RPS16)をコードしていない。更に好ましい実施形態では、オープンリーディングフレーム(ORF)は、リボソームタンパク質S6(RPS6)、リボソームタンパク質L36a様(RPL36AL)、又はリボソームタンパク質S16(RPS16)をコードしていない。
【0077】
具体的な実施形態では、オープンリーディングフレームは、例えば、グロビンタンパク質(特に、ベータ−グロビン)、ルシフェラーゼタンパク質、GFPタンパク質、又はこれらの変異体(例えば、グロビンタンパク質、ルシフェラーゼタンパク質、又はGFPタンパク質に対して少なくとも70%の配列同一性を示す変異体)からなる群から選択されるレポータータンパク質をコードしていないことが好ましい。特に好ましい実施形態では、オープンリーディングフレーム(ORF)は、レポーター遺伝子をコードしてもおらず、レポーター遺伝子に由来してもおらず、前記レポーター遺伝子は、好ましくは、グロビンタンパク質(特にベータ−グロビン)、ルシフェラーゼタンパク質、ベータ−グルクロニダーゼ(GUS)、及びGFPタンパク質若しくはその変異体(好ましくはEGFP)、又は典型的に、これらレポーター遺伝子のいずれか、好ましくはグロビンタンパク質、ルシフェラーゼタンパク質、若しくはGFPタンパク質に対して少なくとも70%の配列同一性を示す上記遺伝子のいずれかの変異体からなる群からは選択されない。
【0078】
更により好ましくは、3’−UTRエレメントは、本明細書に定義する人工核酸に含まれる任意の他のエレメントと異種である。例えば、本発明に係る人工核酸分子が所与の遺伝子由来の3’−UTRエレメントを含む場合、それは、その遺伝子のORFの5’末端及び3’末端における調節配列を含む、同じ遺伝子由来の任意の他の核酸配列、特に、機能的核酸配列(例えば、コード配列エレメント又は調節配列エレメント)を含まないことが好ましい。特に好ましい実施形態では、人工核酸分子は、ORFと、3’−UTRと、5’−UTRとを含み、これらは全て互いに異種である。例えば、これらは、それぞれが異なる遺伝子(並びにその5’UTR及び3’UTR)に由来する組み換え体である。別の好ましい実施形態では、3’−UTRは、ウイルス遺伝子の3’−UTRに由来しないか、又は非ウイルス起源である。
【0079】
好ましくは、少なくとも1つの3’−UTRエレメントは、ORFに機能的に連結している。これは、好ましくは、例えば、コードされているペプチド又はタンパク質の発現に対する増強若しくは安定化機能又は人工核酸分子に対する安定化機能等の機能を発揮することができるように、3’−UTRエレメントがORFに連結していることを意味する。好ましくは、ORFと3’−UTRエレメントとは、5’→3’方向に連結する。したがって、好ましくは、人工核酸分子は、以下の構造:5’−ORF−(任意の)リンカー−3’−UTRエレメント−3’(リンカーは、存在していても存在していなくてもよい)を含む。例えば、リンカーは、例えば、1以上の制限酵素認識部位(制限酵素部位)を含むか又はからなる一続きの1ヌクレオチド〜50ヌクレオチド又は1ヌクレオチド〜20ヌクレオチド等、1以上のヌクレオチドであってよい。
【0080】
好ましくは、少なくとも1つの3’−UTRエレメントは、真核生物のリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR、好ましくは脊椎動物のリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR、より好ましくは哺乳類のリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR、更により好ましくは霊長類のリボソームタンパク質遺伝子、特にヒトのリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR、又はげっ歯類のリボソームタンパク質遺伝子、特にマウスのリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRに由来する核酸配列を含む。
【0081】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの3’−UTRエレメントは、NM_000661.4、NM_001024921.2、NM_000967.3、NM_001033853.1、NM_000968.3、NM_000969.3、NM_001024662.1、NM_000970.3、NM_000971.3、NM_000972.2、NM_000975.3、NM_001199802.1、NM_000976.3、NM_000977.3、NM_033251.2、NM_001243130.1、NM_001243131、NM_000978.3、NM_000979.3、NM_001270490.1、NM_000980.3、NM_000981.3、NM_000982.3、NM_000983.3、NM_000984.5、NM_000985.4、NM_001035006.2、NM_001199340.1、NM_001199341.1、NM_001199342.1、NM_001199343.1、NM_001199344.1、NM_001199345.1、NM_000986.3、NM_000987.3、NM_000988.3、NM_000989.3、NM_000990.4、NM_001136134.1、NM_000991.4、NM_001136135.1、NM_001136136.1、NM_001136137.1、NM_000992.2、NM_000993.4、NM_001098577.2、NM_001099693.1、NM_000994.3、NM_001007073.1、NM_001007074.1、NM_000996.2、NM_000997.4、NM_000998.4、NM_000999.3、NM_001035258.1、NM_001000.3、NM_001002.3、NM_053275.3、NM_001003.2、NM_213725.1、NM_001004.3、NM_001005.4、NM_001256802.1、NM_001260506.1、NM_001260507.1、NM_001006.4、NM_001267699.1、NM_001007.4、NM_001008.3、NM_001009.3、NM_001010.2、NM_001011.3、NM_001012.1、NM_001013.3、NM_001203245.2、NM_001014.4、NM_001204091.1、NM_001015.4、NM_001016.3、NM_001017.2、NM_001018.3、NM_001030009.1、NM_001019.4、NM_001020.4、NM_001022.3、NM_001146227.1、NM_001023.3、NM_001024.3、NM_001025.4、NM_001028.2、NM_001029.3、NM_001030.4、NM_002954、NM_001135592.2、NM_001177413.1、NM_001031.4、NM_001032.4、NM_001030001.2、NM_002948.3、NM_001253379.1、NM_001253380.1、NM_001253382.1、NM_001253383.1、NM_001253384.1、NM_002952.3、NM_001034996.2、NM_001025071.1、NM_001025070.1、NM_005617.3、NM_006013.3、NM_001256577.1、NM_001256580.1、NM_007104.4、NM_007209.3、NM_012423.3、NM_001270491.1、NM_033643.2、NM_015414.3、NM_021029.5、NM_001199972.1、NM_021104.1、NM_022551.2、NM_033022.3、NM_001142284.1、NM_001026.4、NM_001142285.1、NM_001142283.1、NM_001142282.1、NM_000973.3、NM_033301.1、NM_000995.3、NM_033625.2、NM_001021.3、NM_002295.4、NM_001012321.1、NM_001033930.1、NM_003333.3、NM_001997.4、NM_001099645.1、NM_001021.3、NM_052969.1、NM_080746.2、NM_001001.4、NM_005061.2、NM_015920.3、NM_016093.2、NM_198486.2、NG_011172.1、NG_011253.1、NG_000952.4、NR_002309.1、NG_010827.2、NG_009952.2、NG_009517.1、NM_052835.3NM_011287.2、NM_001162933.1、NM_009076.3、NM_009438.5、NM_025974.2、NM_025586.3、NM_001002239.3、NM_009077.2、NM_029751.4、NM_009078.2、NM_019647.6、NM_009079.3、NM_022891.3、NM_024218.4、NM_011975.3、NM_009081.2、NM_009082.2、NM_009083.4、NM_053257.3、ENSMUST00000081840(NM_172086.2)、NM_026724.2、NM_025592.3、NM_025589.4、NM_026069.3、NM_009084、NM_026055.1、NM_026594.2、NM_001163945.1、NM_024212.4、NM_016980.2、NM_011290.5、NM_011291.5、ENSMUST00000102898(NM_013721.3)、NM_025433.3、NM_012053.2、NM_011292.2、NM_007475.5、NM_018853.3、NM_026020.6、NM_025963.3、NM_013725.4、NM_011295.6、NM_020600.4、NM_009091.2、NM_170669.2、NM_013647.2、NM_009092.3、NM_008503.5、NM_026147.5/ENSMUST00000138502、NM_207635.1、NM_024266.3、NM_013765.2、NM_024277.2、NM_026467.3、NM_012052.2、NM_016959.4、ENSMUST00000071745、NM_009095.2、NM_009096.3、NM_011300.3、NM_011029.4、NM_018860.4、NM_001277113.1、NM_001277114.1、NM_001271590.1、NM_007990、NM_025919、NM_016738、NM_026517、NM_207523、NM_009080、NM_011289、NM_013762、NM_021338、NM_018730、NM_019865、NM_023372.2、NM_026533.3、NM_009092、NM_011296、NM_023133、ENSMUST00000059080(NM_025587.2)、NM_024175、NM_027015、NM_016844、NM_009093.2、NM_009094、NM_009098、NM_029767、及びNM_019883からなる群から選択される転写産物の3’−UTR配列に由来する核酸配列を含むか又は対応する。
【0082】
語句「リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRに由来する核酸配列」とは、好ましくは、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR配列、又はその断片若しくは一部に基づく核酸配列を指す。この語句は、リボソームタンパク質遺伝子の全3’−UTR配列に対応する配列(即ち、完全長3’−UTR配列)、及びリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR配列の断片に対応する配列を含む。好ましくは、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの断片は、リボソームタンパク質遺伝子の完全長3’−UTRの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、更により好ましくは少なくとも60%、更により好ましくは少なくとも70%、更により好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%を表す、リボソームタンパク質遺伝子の完全長3’−UTRにおける連続する一続きのヌクレオチドに対応する連続する一続きのヌクレオチドからなる。かかる断片は、本発明の意味において、好ましくは本明細書に記載する機能的断片である。好ましくは、前記断片は、3’−UTR又はその断片に連結されているORFを翻訳するための調節機能を保持している。用語「リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR」は、好ましくは、自然界に存在するリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRを指す。
【0083】
用語「リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの変異体」及び「その変異体」は、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRに関連して、自然界に存在するリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの変異体、好ましくは、脊椎動物のリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの変異体、より好ましくは、哺乳類のリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの変異体、更により好ましくは、霊長類のリボソームタンパク質遺伝子(具体的には、上記ヒトリボソームタンパク質遺伝子)の3’−UTRの変異体を指す。かかる変異体は、リボソームタンパク質遺伝子の改変3’−UTRであってよい。例えば、変異体3’−UTRは、その変異体が由来する自然界に存在する3’−UTRに比べて、1以上のヌクレオチドの欠失、挿入、付加、及び/又は置換を示してよい。好ましくは、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの変異体は、その変異体が由来する自然界に存在する3’−UTRと少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、更により好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%同一である。好ましくは、変異体は、本明細書に記載する機能的変異体である。
【0084】
語句「リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの変異体に由来する核酸配列」は、好ましくは、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR配列の変異体、又は上記その断片若しくは一部に基づく核酸配列を指す。この用語は、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの変異体の全配列(即ち、リボソームタンパク質遺伝子の完全長変異体3’−UTR配列)に対応する配列、及びリボソームタンパク質遺伝子の変異体3’−UTR配列の断片に対応する配列を含む。好ましくは、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの変異体の断片は、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの完全長変異体の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、更により好ましくは少なくとも60%、更により好ましくは少なくとも70%、更により好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%を表す、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの完全長変異体における連続する一続きのヌクレオチドに対応する連続する一続きのヌクレオチドからなる。かかる変異体の断片は、本発明の意味において、好ましくは、本明細書に記載する変異体の機能的断片である。
【0085】
本発明において、用語「機能的変異体」、「機能的断片」、及び「変異体の機能的断片」(「機能的変異体断片」とも呼ばれる)は、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの断片、3’−UTRの変異体、又は3’−UTRの変異体の断片が、前記変異体、前記断片、又は前記変異体の断片が由来するリボソームタンパク質遺伝子の自然界に存在する3’−UTRの少なくとも1つの機能、好ましくは1超の機能を発揮することを意味する。かかる機能は、例えば、好ましくは哺乳類細胞(例えば、ヒト細胞)における、mRNAの安定化、及び/又はmRNAからのタンパク質産生の増強、安定化、及び/又はmRNAからのタンパク質産生の延長、及び/又はmRNAからのタンパク質発現若しくは全タンパク質産生の増加であってよい。好ましくは、3’−UTRの機能は、ORFによってコードされているタンパク質の翻訳に関する。より好ましくは、前記機能は、3’−UTR又はその断片若しくは変異体に連結されているORFの翻訳効率を増強することを含む。本発明における変異体、断片、及び変異体の断片は、以下のうちの少なくともいずれかの機能を発揮することが特に好ましい:好ましくは哺乳類細胞(例えば、ヒト細胞)において、レファレンス3’−UTRを含むか又は3’−UTRを有しないmRNAに比べてmRNAを安定化させる機能;好ましくは哺乳類細胞(例えば、ヒト細胞)において、レファレンス3’−UTRを含むか又は3’−UTRを有しないmRNAに比べてmRNAからのタンパク質産生を増強、安定化及び/又は延長する機能;並びに好ましくは哺乳類細胞(例えば、ヒト細胞)において、レファレンス3’−UTRを含むか又は3’−UTRを有しないmRNAに比べてmRNAからのタンパク質産生を増加させる機能。レファレンス3’−UTRは、例えば、自然界においてORFと併存する3’−UTRであってよい。更に、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの機能的変異体、機能的断片、又は機能的変異体断片は、その変異体、断片、又は変異体断片が由来する野生型の3’−UTRに比べて、かかる3’−UTRの変異体、断片、又は変異体断片を含むmRNAの翻訳効率を実質的に減じる効果を有しないことが好ましい。本発明において、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの「機能的断片」、「機能的変異体」又は「変異体の機能的断片」の特に好ましい機能は、上記機能的断片、機能的変異体、又は変異体の機能的断片を有するmRNAの発現によるタンパク質産生の増強、安定化及び/又は延長である。
【0086】
好ましくは、機能的変異体、機能的断片、又は機能的変異体断片によって発揮される1以上の機能の効率、例えば、mRNA及び/又はタンパク質の産生安定化効率及び/又はタンパク質の産生増加効率は、前記変異体、前記断片、又は前記変異体断片が由来するリボソームタンパク質遺伝子の自然界に存在する3’−UTRによって発揮されるmRNA及び/又はタンパク質の産生安定化効率及び/又はタンパク質の産生増加効率に関して少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、更により好ましくは少なくとも70%、更により好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%増加する。
【0087】
本発明に関連して、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの断片又はリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの変異体は、好ましくは、少なくとも約3ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約5ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約10ヌクレオチド、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、又は少なくとも約30ヌクレオチド、更により好ましくは少なくとも約50ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも約70ヌクレオチドの長さを有する。好ましくは、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの断片又はリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの変異体の断片は、上記機能的断片である。好ましい実施形態では、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR又はその断片若しくは変異体は、3ヌクレオチド〜約500ヌクレオチド、好ましくは5ヌクレオチド〜約150ヌクレオチド、より好ましくは10ヌクレオチド〜100ヌクレオチド、更により好ましくは15ヌクレオチド〜90ヌクレオチド、最も好ましくは20ヌクレオチド〜70ヌクレオチドの長さを有する。
【0088】
好ましくは、本発明に係る人工核酸分子の少なくとも1つの3’−UTRエレメントは、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの「機能的断片」、「機能的変異体」、又は「変異体の機能的断片」を含むか又はからなる。
【0089】
好ましい実施形態では、本発明に係る人工核酸分子の少なくとも1つの3’−UTRエレメントは、3’−UTRを有しないか又はレファレンス3’−UTR(例えば、自然界においてORFと併存する3’−UTR)を含むそれぞれの核酸(レファレンス核酸)と比べて人工核酸分子の安定性を上昇させる、例えば、本発明に係るmRNAの安定性を上昇させる。好ましくは、本発明に係る人工核酸分子の少なくとも1つの3’−UTRエレメントは、3’−UTRを有しないか又はレファレンス3’−UTR(例えば、自然界においてORFと併存する3’−UTR)を含むそれぞれの核酸と比べて、本発明に係る人工核酸分子、例えば、本発明に係るmRNAからのタンパク質産生の安定性を上昇させる。好ましくは、本発明に係る人工核酸分子の少なくとも1つの3’−UTRエレメントは、3’−UTRを有しないか又はレファレンス3’−UTR(例えば、自然界においてORFと併存する3’−UTR)を含むそれぞれの核酸と比べて、本発明に係る人工核酸分子、例えば、本発明に係るmRNAからのタンパク質産生を延長する。好ましくは、本発明に係る人工核酸分子の少なくとも1つの3’−UTRエレメントは、3’−UTRを有しないか又はレファレンス3’−UTR(例えば、自然界においてORFと併存する3’−UTR)を含むそれぞれの核酸と比べて、本発明に係る人工核酸分子、例えば、本発明に係るmRNAからのタンパク質発現及び/又は全タンパク質産生を増加させる。好ましくは、本発明に係る人工核酸分子の少なくとも1つの3’−UTRエレメントは、3’−UTRを有しないか又はレファレンス3’−UTR(例えば、自然界においてORFと併存する3’−UTR)を含むそれぞれの核酸の翻訳効率と比べて、核酸の翻訳効率に悪影響を与えない。更により好ましくは、その自然界の状況におけるそれぞれのORFによってコードされているタンパク質の翻訳効率に比べて、3’−UTRによって翻訳効率が増強される。
【0090】
この状況では、用語「それぞれの核酸分子」又は「レファレンス核酸分子」は、異なる3’−UTRは別にして、レファレンス核酸分子が、3’−UTRエレメントを含む本発明の人工核酸分子と類似している、好ましくは同一であることを意味する。
【0091】
人工核酸分子(例えば、人工mRNA)からの「タンパク質産生を安定化及び/又は延長する」という用語は、好ましくは、哺乳類発現系(例えば、HeLa又はHDF細胞)において(例えば、レファレンス3’−UTRを含むか又は3’−UTRを有しない)レファレンス人工核酸分子(例えば、レファレンスmRNA)からのタンパク質産生と比べて、人工核酸分子(例えば、人工mRNA)からのタンパク質産生が安定化及び/又は延長されることを意味する。したがって、人工核酸分子(例えば、人工mRNA)から産生されるタンパク質は、レファレンス核酸分子から産生されるタンパク質についてみられ得る期間よりも長い期間観察可能である。言い換えれば、経時的に測定される人工核酸分子(例えば、人工mRNA)から産生されるタンパク質の量は、経時的に測定されるレファレンス核酸分子(例えば、レファレンスmRNA)から産生されるタンパク質の量よりも遅い時点で閾値を下回る。かかる閾値は、例えば、核酸分子の発現開始(例えば、トランスフェクション)の1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、又は6時間後等、発現の初期相において測定されるタンパク質の量であってよい。
【0092】
例えば、人工核酸分子(例えば、人工mRNA)からのタンパク質産生は、哺乳類の発現系(例えば、HeLa細胞又はHDF細胞等の哺乳類細胞)において、レファレンス核酸分子(例えば、レファレンスmRNA)からのタンパク質産生と比べて、少なくとも核酸分子の発現開始(例えば、トランスフェクション)の1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、又は6時間後、発現の初期相において観察される量である量において、少なくとも約5時間、好ましくは少なくとも約10時間、より好ましくは少なくとも約24時間延長される。したがって、本発明に係る人工核酸分子は、好ましくは、3’−UTRを有しないか又はレファレンス3’−UTRを含むレファレンス核酸分子と比べて、少なくとも発現開始(例えば、トランスフェクション)の1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、又は6時間後等、発現の初期相において観察される量である量において、タンパク質産生を少なくとも約5時間、好ましくは少なくとも約10時間、より好ましくは少なくとも約24時間延長することができる。
【0093】
好ましい実施形態では、本発明に係る人工核酸分子からのタンパク質産生期間は、3’−UTRを有しないか又はレファレンス3’−UTRを含むレファレンス核酸分子からのタンパク質産生と比べて、少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも2.5倍延長される。
【0094】
このタンパク質産生を延長する効果は、(i)好ましくは哺乳類発現系(例えば、HeLa細胞又はHDF細胞)において、例えば、ルシフェラーゼ等のコードされているレポータータンパク質の発現によって得られるタンパク質量を経時的に測定し、(ii)タンパク質量が、人工核酸分子の発現開始の1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、又は6時間後(例えば、トランスフェクションの1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、又は6時間後)等に観察されるタンパク質量を下回る時点を求め、(iii)前記タンパク質量が発現開始の1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、又は6時間後に観察されたタンパク質量を下回る時点を、3’−UTRを有しないか又はレファレンス3’−UTRを含む核酸分子について求めた前記時点と比較することによって求めることができる。
【0095】
好ましくは、タンパク質産生に対するこの安定化及び/又は延長効果が得られると同時に、例えば、48時間又は72時間の期間内に本発明に係る人工核酸分子から産生されるタンパク質の合計量は、少なくとも、3’−UTRを有しないか又はレファレンス3’−UTR(例えば、自然界において人工核酸分子のORFと併存している3’−UTR)を含むレファレンス核酸分子から産生されるタンパク質の量である。したがって、本発明は、上記の通り、哺乳類の発現系(例えば、HeLa細胞又はHDF細胞等の哺乳類細胞)においてタンパク質産生を延長及び/又は安定化させる人工核酸分子であって、例えば、48時間又は72時間の期間内に前記人工核酸分子から産生されるタンパク質の合計量が、少なくとも、3’−UTRを有しないか又はレファレンス3’−UTR(例えば、自然界において人工核酸分子のORFと併存している3’−UTR)を含むレファレンス核酸分子から前記期間内に産生されるタンパク質の合計量である人工核酸分子を提供する。
【0096】
したがって、「安定したタンパク質発現」とは、好ましくは、レファレンス核酸分子(例えば、レファレンス3’−UTRを含むか又は3’−UTRを有しないmRNA)と比べたとき、所定の期間、例えば、24時間、より好ましくは48時間、更により好ましくは72時間に亘って本発明に係る人工核酸分子からより均一にタンパク質が産生されることを意味する。したがって、本発明に係る3’−UTRエレメントを含む人工核酸分子、例えば、本発明に係るmRNAからの(例えば、哺乳類系における)タンパク質産生のレベルは、好ましくは、レファレンス核酸分子(例えば、上記レファレンスmRNA)について観察される程度まで低下することはない。例えば、発現開始の6時間後、例えば、本発明に係る人工核酸分子を細胞(例えば、哺乳類細胞)にトランスフェクトした6時間後に観察される(ORFによってコードされている)タンパク質の量は、発現開始の48時間後、例えば、トランスフェクションの48時間後に観察されるタンパク質の量と同等であってよい。したがって、発現開始の48時間後、例えば、トランスフェクションの48時間後に観察される、例えば、レポータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)等のORFによってコードされているタンパク質の量の、発現開始の6時間後、例えば、トランスフェクションの6時間後に観察されるタンパク質の量に対する比は、本発明に係る核酸分子の場合、好ましくは少なくとも約0.4、より好ましくは少なくとも約0.5、より好ましくは少なくとも約0.6、更により好ましくは少なくとも約0.7である。好ましくは、前記比は、約0.4〜約4、好ましくは約0.65〜約3、より好ましくは約0.7〜約2である。それぞれのレファレンス核酸分子(例えば、レファレンス3’−UTRを含むか又は3’−UTRを有しないmRNA)の場合、前記比は、例えば、約0.05〜約0.3であってよい。
【0097】
したがって、本発明は、ORFと上記3’−UTRエレメントとを含む人工核酸分子であって、発現開始の48時間後に観察される(レポーター)タンパク質の量(例えば、ルシフェラーゼの量)の、発現開始の6時間後に観察される(レポーター)タンパク質の量に対する比が、好ましくは哺乳類の発現系(例えば、HeLa細胞等の哺乳類細胞)において、好ましくは約0.4超、より好ましくは約0.5超、より好ましくは約0.6超、更により好ましくは約0.7超(例えば、約0.4〜約4、好ましくは約0.65〜約3、より好ましくは約0.7〜約2)であり、好ましくは、例えば48時間の期間内に前記人工核酸分子から産生されるタンパク質の合計量が、少なくとも、3’−UTRを有しないか又はレファレンス3’−UTR(例えば、自然界において前記人工核酸分子のORFと併存している3’−UTR)を含むレファレンス核酸分子から前記期間内に産生されるタンパク質の合計量である人工核酸分子を提供する。好ましい実施形態では、本発明は、ORFと上記3’−UTRエレメントとを含む人工核酸分子であって、例えば、好ましくは哺乳類の発現系(例えば、HeLa細胞等の哺乳類細胞)において、発現開始の72時間後に観察される(レポーター)タンパク質の量(例えば、ルシフェラーゼの量)の、発現開始の6時間後に観察される(レポーター)タンパク質の量に対する比が、好ましくは、約0.4超、より好ましくは約0.5超、より好ましくは約0.6超、更により好ましくは約0.7超、例えば、約0.4〜約1.5、好ましくは約0.65〜約1.15、より好ましくは約0.7〜約1.0であり、好ましくは、例えば72時間の期間内に前記人工核酸分子から産生されるタンパク質の合計量が、少なくとも、3’−UTRを有しないか又はレファレンス3’−UTR(例えば、自然界において前記人工核酸分子のORFと併存している3’−UTR)を含むレファレンス核酸分子から前記期間内に産生されるタンパク質の合計量である人工核酸分子を提供する。
【0098】
本発明において、「タンパク質発現の増加」又は「タンパク質発現の増強」とは、好ましくは、レファレンス核酸分子によって誘導される発現と比べて発現開始後のある時点におけるタンパク質発現が増加/増強すること又は発現するタンパク質の合計量が増加/増強することを意味する。したがって、本発明に係る人工核酸分子の発現開始後(例えば、トランスフェクション後)、例えば、本発明に係るmRNAのトランスフェクション後の特定の時点、例えば、トランスフェクションの6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、又は72時間後において観察されるタンパク質レベルは、好ましくは、レファレンス核酸分子(例えば、レファレンス3’−UTRを含むか又は3’−UTRを有しないレファレンスmRNA)の発現開始後(例えば、トランスフェクション後)の同時点で観察されるタンパク質レベルよりも高い。好ましい実施形態では、人工核酸分子から発現するタンパク質の最大量(例えば、タンパク質の活性又は質量によって決定)は、レファレンス3’−UTRを含むか又は3’−UTRを有しないレファレンス核酸から発現するタンパク質量に比べて増加する。例えば、トランスフェクション後好ましくは48時間以内、より好ましくは24時間以内、更により好ましくは12時間以内にピーク発現レベルに達する。
【0099】
1つの実施形態では、本発明に係る人工核酸分子からの「合計タンパク質産生量の増加」又は「合計タンパク質産生量の増強」とは、3’−UTRを有しないか又はレファレンス3’−UTRを含むレファレンス核酸分子と比べて、好ましくは哺乳類の発現系(例えば、HeLa細胞又はHDF細胞等の哺乳類細胞)において、人工核酸分子からタンパク質が産生される期間に亘って、タンパク質産生量が増加/増強することを指す。好ましい実施形態によれば、経時的に発現するタンパク質の累積量は、本発明に係る人工核酸分子を用いたときに増加する。
【0100】
本発明によれば、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR若しくはリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの変異体に由来する核酸配列を含む、少なくとも1つの3’−UTRエレメントを含まないか又はレファレンス3’−UTRを含むそれぞれの核酸分子(「レファレンス核酸」)と比べて、コードされているタンパク質の発現が増加することを特徴とする人工核酸分子が提供される。本発明の人工核酸分子によるインビボにおけるタンパク質産生を評価するために、標的細胞/組織に人工核酸分子を注入/トランスフェクトした後、コードされているタンパク質の発現を測定し、レファレンス核酸によって誘導されるタンパク質発現と比較した。タンパク質発現を測定する定量的な方法は、当該技術分野において公知である(例えば、ウエスタンブロット、FACS、ELISA、質量分析)。この状況において特に有用なのは、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、又は分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)等のレポータータンパク質の発現の測定である。したがって例えば、トランスフェクション又は注入を介して、本発明に係る人工核酸分子又はレファレンス核酸を標的組織又は細胞に導入する。核酸分子の発現開始又は導入の数時間又は数日間(例えば、6時間、12時間、24時間、48時間、又は72時間)後に、標的細胞サンプルを回収し、FACSを介して測定する及び/又は溶解させる。その後、溶解物を用いて、例えば、ウエスタンブロット、FACS、ELISA、質量分析等の幾つかの方法を用いて、又は蛍光若しくは発光測定によって、発現したタンパク質を検出することができる(延いては、タンパク質発現の効率を求めることができる)。
【0101】
したがって、特定の時点(例えば、核酸分子の発現開始又は導入の6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、又は72時間後)において、本発明に係る人工核酸分子からのタンパク質発現をレファレンス核酸分子からのタンパク質発現と比較する場合、両核酸分子を別々に標的組織/細胞に導入し、特定の時点後に前記組織/細胞からサンプルを回収し、特定の検出方法(例えば、当該技術分野において公知であるウエスタンブロット、ELISA等)に合わせた特定のプロトコールに従ってタンパク質溶解物を調製し、選択した検出方法によってタンパク質を検出する。細胞溶解物中の発現タンパク質量を測定する代わりに、又は回収した細胞を溶解させる前に若しくは並行してアリコートを用いて細胞溶解物中のタンパク質量を測定することに加えて、FACS分析を用いることによってタンパク質量を求めてもよい。
【0102】
特定の期間における合計タンパク質量を測定する場合、人工核酸分子の導入後の幾つかの時点で(例えば、人工核酸分子の発現開始又は導入の6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、及び72時間後;通常、異なる試験動物から)組織又は細胞を回収し、上に説明した通り、時点当たりのタンパク質量を求めることができる。累積タンパク質量を計算するために、合計タンパク質量を求める数学的方法を用いてよく、例えば、以下の式に従って曲線下面積(AUC)を求めてよい:
【数1】
【0103】
合計タンパク質量についての曲線下面積を計算するために、各エンドポイント(a及びb)からの発現曲線の積分式を計算する。
【0104】
したがって、「合計タンパク質産生量」は、好ましくは、経時的なタンパク質産生量を表す曲線下面積(AUC)を指す。
【0105】
人工核酸分子の安定性上昇、タンパク質産生の安定性上昇、タンパク質産生の延長、並びに/又はタンパク質発現及び/若しくは全タンパク質産生の増加/増強は、好ましくは、3’−UTRを有しないそれぞれのレファレンス核酸分子(例えば、3’−UTRを有しないmRNA)、又はレファレンス3’−UTRを含むレファレンス核酸分子(例えば、上記の通り自然界においてORFと併存する3’−UTR)と比較することによって求められる。
【0106】
リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの変異体、断片、及び/又は変異体断片のmRNA及びタンパク質の少なくともいずれかの産生安定化効果及び効率、並びに/又はタンパク質産生増加効果及び効率に加えて、本発明に係る人工核酸分子の少なくとも1つの3’−UTRエレメントの産生安定化効果及び効率、並びに/又はタンパク質産生増加効果及び効率は、当業者に公知であるこの目的に適した任意の方法によって求めることができる。例えば、レポータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)のコード配列/オープンリーディングフレーム(ORF)を含み、3’−UTRを含まない人工mRNA分子;自然界に存在するリボソームタンパク質遺伝子由来の3’−UTRを含む人工mRNA分子;レファレンス遺伝子由来の3’−UTR(即ち、レファレンス3’−UTR、例えば、自然界においてORFと併存する3’−UTR)を含む人工mRNA分子;3’−UTRとして、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの変異体を含む人工mRNA分子:3’−UTRとして、自然界に存在するリボソームタンパク質遺伝子の断片を含む人工mRNA分子;又は3’−UTRとして、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの変異体の断片を含む人工mRNA分子を作製してよい。かかるmRNAは、例えば、T7プロモーターとそれぞれのmRNA配列をコードしている配列とを含むプラスミドベクター等、それぞれのベクターのインビトロ転写によって作製することができる。作製されるmRNA分子は、mRNAをトランスフェクトするのに適した任意のトランスフェクション法によって細胞にトランスフェクトしてよい。例えば、HELA細胞等の哺乳類細胞にエレクトロポレーションし、トランスフェクション後の特定の時点、例えば、トランスフェクションの6時間後、24時間後、48時間後、及び72時間後にサンプルを分析してよい。前記サンプルは、当業者に周知の方法によってmRNA量及び/又はタンパク質量について分析してよい。例えば、サンプリング時点で細胞中に存在するレポーターmRNAの量は、定量PCR法によって求めることができる。それぞれのmRNAによってコードされているレポータータンパク質の量は、例えば、用いられるレポータータンパク質に依存して、ウエスタンブロット、ELISAアッセイ、FACS分析、又はレポーターアッセイ(例えば、ルシフェラーゼアッセイ)によって求めることができる。タンパク質発現の安定化及び/又はタンパク質発現の延長の効果は、例えば、トランスフェクションの48時間後に観察されるタンパク質レベルのトランスフェクションの6時間後に観察されるタンパク質レベルに対する比を求めることによって分析することができる。好ましくは、前記比の値は1を超える、即ち、より遅い時点におけるタンパク質発現がより早い時点におけるタンパク質発現よりも大きい。その比の値が1よりも小さい場合、前記値が1に近いほど、タンパク質がより安定になる。かかる測定は、無論、72時間以上の時点で実施してもよく、タンパク質発現の安定性を求めるために、トランスフェクションの72時間後に観察されるタンパク質レベルとトランスフェクションの6時間後に観察されるタンパク質レベルとの比を求めてもよい。
【0107】
好ましい実施形態では、本発明に係る人工核酸分子の3’−UTRエレメントは、リボソームタンパク質をコードしている遺伝子の3’−UTR領域、好ましくは、リボソームタンパク質L9(RPL9)、リボソームタンパク質L3(RPL3)、リボソームタンパク質L4(RPL4)、リボソームタンパク質L5(RPL5)、リボソームタンパク質L6(RPL6)、リボソームタンパク質L7(RPL7)、リボソームタンパク質L7a(RPL7A)、リボソームタンパク質L11(RPL11)、リボソームタンパク質L12(RPL12)、リボソームタンパク質L13(RPL13)、リボソームタンパク質L23(RPL23)、リボソームタンパク質L18(RPL18)、リボソームタンパク質L18a(RPL18A)、リボソームタンパク質L19(RPL19)、リボソームタンパク質L21(RPL21)、リボソームタンパク質L22(RPL22)、リボソームタンパク質L23a(RPL23A)、リボソームタンパク質L17(RPL17)、リボソームタンパク質L24(RPL24)、リボソームタンパク質L26(RPL26)、リボソームタンパク質L27(RPL27)、リボソームタンパク質L30(RPL30)、リボソームタンパク質L27a(RPL27A)、リボソームタンパク質L28(RPL28)、リボソームタンパク質L29(RPL29)、リボソームタンパク質L31(RPL31)、リボソームタンパク質L32(RPL32)、リボソームタンパク質L35a(RPL35A)、リボソームタンパク質L37(RPL37)、リボソームタンパク質L37a(RPL37A)、リボソームタンパク質L38(RPL38)、リボソームタンパク質L39(RPL39)、リボソームタンパク質、ラージ、P0(RPLP0)、リボソームタンパク質、ラージ、P1(RPLP1)、リボソームタンパク質、ラージ、P2(RPLP2)、リボソームタンパク質S3(RPS3)、リボソームタンパク質S3A(RPS3A)、リボソームタンパク質S4、X連鎖(RPS4X)、リボソームタンパク質S4、Y連鎖1(RPS4Y1)、リボソームタンパク質S5(RPS5)、リボソームタンパク質S6(RPS6)、リボソームタンパク質S7(RPS7)、リボソームタンパク質S8(RPS8)、リボソームタンパク質S9(RPS9)、リボソームタンパク質S10(RPS10)、リボソームタンパク質S11(RPS11)、リボソームタンパク質S12(RPS12)、リボソームタンパク質S13(RPS13)、リボソームタンパク質S15(RPS15)、リボソームタンパク質S15a(RPS15A)、リボソームタンパク質S16(RPS16)、リボソームタンパク質S19(RPS19)、リボソームタンパク質S20(RPS20)、リボソームタンパク質S21(RPS21)、リボソームタンパク質S23(RPS23)、リボソームタンパク質S25(RPS25)、リボソームタンパク質S26(RPS26)、リボソームタンパク質S27(RPS27)、リボソームタンパク質S27a(RPS27a)、リボソームタンパク質S28(RPS28)、リボソームタンパク質S29(RPS29)、リボソームタンパク質L15(RPL15)、リボソームタンパク質S2(RPS2)、リボソームタンパク質L14(RPL14)、リボソームタンパク質S14(RPS14)、リボソームタンパク質L10(RPL10)、リボソームタンパク質L10a(RPL10A)、リボソームタンパク質L35(RPL35)、リボソームタンパク質L13a(RPL13A)、リボソームタンパク質L36(RPL36)、リボソームタンパク質L36a(RPL36A)、リボソームタンパク質L41(RPL41)、リボソームタンパク質S18(RPS18)、リボソームタンパク質S24(RPS24)、リボソームタンパク質L8(RPL8)、リボソームタンパク質L34(RPL34)、リボソームタンパク質S17(RPS17)、リボソームタンパク質SA(RPSA)、又はリボソームタンパク質S17(RPS17)の3’−UTR領域に由来する。別の実施形態では、3’−UTRエレメントは、リボソームタンパク質をコードしている遺伝子又はユビキチンA−52残基リボソームタンパク質融合生成物1(UBA52)、遍在的に発現するFinkel−Biskis−Reillyマウス肉腫ウイルス(FBR−MuSV)(FAU)、リボソームタンパク質L22様1(RPL22L1)、リボソームタンパク質L39様(RPL39L)、リボソームタンパク質L10様(RPL10L)、リボソームタンパク質L36a様(RPL36AL)、リボソームタンパク質L3様(RPL3L)、リボソームタンパク質S27様(RPS27L)、リボソームタンパク質L26様1(RPL26L1)、リボソームタンパク質L7様1(RPL7L1)、リボソームタンパク質L13aシュードジーン(RPL13AP)、リボソームタンパク質L37aシュードジーン8(RPL37AP8)、リボソームタンパク質S10シュードジーン5(RPS10P5)、リボソームタンパク質S26シュードジーン11(RPS26P11)、リボソームタンパク質L39シュードジーン5(RPL39P5)、リボソームタンパク質、ラージ、P0シュードジーン6(RPLP0P6)、及びリボソームタンパク質L36シュードジーン14(RPL36P14)から選択される遺伝子に由来していてもよい。更に、本発明に係る人工核酸分子の3’−UTRエレメントは、好ましくは、リボソームタンパク質S4様(RPS4l)、推定60Sリボソームタンパク質L13a、推定60Sリボソームタンパク質L37a様タンパク質、推定40Sリボソームタンパク質S10様、推定40Sリボソームタンパク質S26様1、推定60Sリボソームタンパク質L39様5、又は60S酸性リボソームタンパク質P0−様からなる群から選択される遺伝子の3’−UTR領域に由来する。
【0108】
特に好ましい実施形態では、本発明に係る人工核酸分子の3’−UTRエレメントは、リボソームタンパク質をコードしている遺伝子の3’−UTR領域、好ましくは、リボソームタンパク質L3(RPL3)、リボソームタンパク質L11(RPL11)、リボソームタンパク質L13(RPL13)、リボソームタンパク質L23(RPL23)、リボソームタンパク質L23a(RPL23A)、リボソームタンパク質L26(RPL26)、リボソームタンパク質L27(RPL27)、リボソームタンパク質L35a(RPL35A)、リボソームタンパク質L38(RPL38)、リボソームタンパク質S4、X連鎖(RPS4X)、リボソームタンパク質S8(RPS8)、リボソームタンパク質S9(RPS9)、リボソームタンパク質S13(RPS13)、リボソームタンパク質S19(RPS19)、リボソームタンパク質S21(RPS21)、リボソームタンパク質S23(RPS23)、リボソームタンパク質S27(RPS27)、リボソームタンパク質S28(RPS28)、リボソームタンパク質S29(RPS29)、リボソームタンパク質L36(RPL36)、リボソームタンパク質L36a(RPL36A)、リボソームタンパク質S18(RPS18)、又はリボソームタンパク質S17(RPS17)の3’−UTR領域に由来する。別の好ましい実施形態では、3’−UTRエレメントは、リボソームタンパク質をコードしている遺伝子、又はユビキチンA−52残基リボソームタンパク質融合生成物1(UBA52)、遍在的に発現するFinkel−Biskis−Reillyマウス肉腫ウイルス(FBR−MuSV)(FAU)、及びリボソームタンパク質L22様1(RPL22L1)から選択される遺伝子に由来していてよい。
【0109】
好ましくは、本発明に係る人工核酸分子の少なくとも1つの3’−UTRエレメントは、配列番号10〜配列番号115に係る核酸配列又は対応するRNA配列等のリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの核酸配列に対して少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、又は少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、更により好ましくは少なくとも約99%、最も好ましくは100%の同一性を有する核酸配列を含むか又はからなる。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】

【表15】

【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【0110】
更に好ましくは、本発明に係る人工核酸分子の少なくとも1つの3’−UTRエレメントは、配列番号116〜配列番号205に係る核酸配列又は対応するRNA配列等、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの核酸配列に対して少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、又は少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、更により好ましくは少なくとも約99%、最も好ましくは100%の同一性を有する核酸配列を含むか又はからなる。
【表22】
【表23】
【表24】

【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【表32】
【表33】
【表34】
【0111】
好ましい実施形態では、本発明に係る人工核酸分子の少なくとも1つの3’−UTRエレメントは、リボソームタンパク質スモール9(RPS9)の3’−UTR配列に対して少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、更により好ましくは少なくとも約99%、最も好ましくは100%の同一性を有する核酸配列を含むか又はからなる。最も好ましくは、本発明に係る人工核酸分子の少なくとも1つの3’−UTRエレメントは、配列番号1又は配列番号2に対して少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、更により好ましくは少なくとも約99%、最も好ましくは100%の同一性を有する核酸配列を含むか又はからなる。
【表35】
【0112】
また、本発明に係る人工核酸分子の少なくとも1つの3’−UTRエレメントは、配列番号10〜配列番号205に係る配列の3’−UTR等のリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの核酸配列に対して少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、更により好ましくは少なくとも約99%、最も好ましくは100%の同一性を有する核酸配列の断片を含んでいてもよく又はからなっていてもよく、前記断片は、好ましくは、上記の機能的断片又は機能的変異体断片である。かかる断片は、好ましくは、少なくとも約3ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約5ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約10ヌクレオチド、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、又は少なくとも約30ヌクレオチド、更により好ましくは少なくとも約50ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも約70ヌクレオチドの長さを有する。好ましい実施形態では、その断片又は変異体は、3ヌクレオチド〜約500ヌクレオチド、好ましくは5ヌクレオチド〜約150ヌクレオチド、より好ましくは10ヌクレオチド〜100ヌクレオチド、更により好ましくは15ヌクレオチド〜90ヌクレオチド、最も好ましくは20ヌクレオチド〜70ヌクレオチドの長さを有する。
【0113】
好ましくは、前記変異体、断片、又は変異体断片は、配列番号10〜配列番号205に係る核酸配列の少なくとも1つの機能(例えば、本発明に係る人工核酸分子の安定化、本発明に係る人工核酸分子からのタンパク質発現の安定化及び/又は延長、タンパク質産生の増加の少なくともいずれか)を、配列番号1又は配列番号2に係る核酸配列を含む人工核酸分子によって示される安定化効率及び/又はタンパク質産生増加効率の少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、更により好ましくは少なくとも70%、更により好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の効率で示す上記機能的変異体、機能的断片、又は機能的変異体断片である。
【0114】
好ましくは、本発明に係る人工核酸分子の少なくとも1つの3’−UTRエレメントは、少なくとも約3ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約5ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約10ヌクレオチド、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、又は少なくとも約30ヌクレオチド、更により好ましくは少なくとも約50ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも約70ヌクレオチドの長さを有する。3’−UTRエレメントの長さの上限は、500ヌクレオチド以下、例えば、400ヌクレオチド、300ヌクレオチド、200ヌクレオチド、150ヌクレオチド、又は100ヌクレオチドであってよい。他の実施形態については、上限は、50ヌクレオチド〜100ヌクレオチドの範囲内で選択してよい。例えば、その断片又は変異体は、3ヌクレオチド〜約500ヌクレオチド、好ましくは5ヌクレオチド〜約150ヌクレオチド、より好ましくは10ヌクレオチド〜100ヌクレオチド、更により好ましくは15ヌクレオチド〜90ヌクレオチド、最も好ましくは20ヌクレオチド〜70ヌクレオチドの長さを有する。
【0115】
更に、本発明に係る人工核酸分子は、1超の上記3’−UTRエレメントを含んでいてよい。例えば、本発明に係る人工核酸分子は、1、2、3、4、又はそれ以上の3’−UTRエレメントを含んでいてよく、個々の3’−UTRエレメントは、同一であっても異なっていてもよい。例えば、本発明に係る人工核酸分子は、2つの本質的に同一の上記3’−UTRエレメント(例えば、配列番号10〜205に係る配列等、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRに由来するか、又は配列番号1若しくは2に係る核酸配列等、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの断片若しくは変異体に由来する核酸配列を含むか又はからなる2つの3’−UTRエレメント)、その機能的変異体、その機能的断片、又はその機能的変異体断片を含んでいてよい。
【0116】
驚くべきことに、本発明者らは、上記3’−UTRエレメントを含む人工核酸分子が、タンパク質産生を増強、延長及び/又は安定化できるmRNA分子を表し得るか又は提供し得ることを見出した。したがって、本明細書に記載する3’−UTRエレメントは、mRNA分子からのタンパク質発現の安定性を改善する及び/又は翻訳効率を改善することができる。
【0117】
本発明に係る人工核酸分子は、RNA(例えば、mRNA)、DNA(例えば、DNAベクター)であってよく、改変RNA分子又は改変DNA分子であってもよい。それは、例えば、センス鎖及びアンチセンス鎖を有する二本鎖分子として、例えば、センス鎖及びアンチセンス鎖を有するDNA分子として提供され得る。
【0118】
本発明に係る人工核酸分子は、更に、任意で5’−UTR及び/又は5’−キャップを含んでいてよい。任意の5’−キャップ及び/又は5’−UTRは、好ましくは、本発明に係る人工核酸分子内のORFの5’側に位置する。
好ましくは、本発明に係る人工核酸分子は、ポリ(A)配列及び/又はポリアデニル化シグナルを更に含む。好ましくは、任意のポリ(A)配列は、少なくとも1つの3’−UTRエレメントの3’側に位置し、好ましくは、任意のポリ(A)配列が、3’−UTRエレメントの3’末端に連結されている。直接連結されていてもよく、又は(例えば、1以上の制限酵素部位を含むか又はからなる1ヌクレオチド〜50ヌクレオチド、好ましくは1ヌクレオチド〜20ヌクレオチドのリンカーを介する等、一続きの2ヌクレオチド、4ヌクレオチド、6ヌクレオチド、8ヌクレオチド、10ヌクレオチド、20ヌクレオチド等のヌクレオチドを介して)間接的に連結されていてもよい。
【0119】
1つの実施形態では、任意のポリアデニル化シグナルは、3’−UTRエレメントの3’の下流に位置する。好ましくは、ポリアデニル化シグナルは、コンセンサス配列NN(U/T)ANA(Nは、A又はUである)、好ましくはAA(U/T)AAA又はA(U/T)(U/T)AAAを含む。かかるコンセンサス配列は、大部分の動物及び細菌の細胞系によって、例えば、CstF、PAP、PAB2、CFI及び/又はCFIIと協働する切断/ポリアデニル化特異性因子(CPSF)等のポリアデニル化因子によって認識され得る。ポリアデニル化シグナルは、好ましくは、3’−UTRエレメントの3’末端の約50ヌクレオチド未満下流、より好ましくは約30塩基未満下流、最も好ましくは約25塩基未満下流、例えば、21塩基下流に位置することが好ましい。
【0120】
例えば、3’−UTRエレメントの下流にポリアデニル化シグナルを含む本発明に係る人工核酸分子(例えば、人工DNA分子)の転写により、その3’−UTRエレメントの下流にポリアデニル化シグナルを含有する未成熟RNAが得られる。例えば、配列番号1に係る3’−UTRエレメントを含むDNA分子の転写により、配列番号2に係る3’−UTRエレメントを有するRNAが得られる。
【0121】
次いで、適切な転写系を用いることにより、ポリ(A)配列を未成熟RNAに結合させる。例えば、本発明の人工核酸分子は、上記3’−UTRエレメントとポリアデニル化シグナルとを含むDNA分子であってよく、このことにより、前記DNA分子の転写時にRNAがポリアデニル化され得る。したがって、得られるRNAは、本発明の3’−UTRエレメントとそれに続くポリ(A)配列との組み合わせを含んでいてよい。
【0122】
潜在的な転写系は、インビトロ転写系又は細胞転写系等である。したがって、本発明に係る人工核酸分子の転写、例えば、オープンリーディングフレームと、3’−UTRエレメントと、ポリアデニル化シグナルとを含む人工核酸分子の転写により、オープンリーディングフレームと、3’−UTRエレメントと、ポリ(A)配列とを含むmRNA分子を得ることができる。
【0123】
したがって、本発明は、また、オープンリーディングフレームと、上記3’−UTRエレメントと、ポリ(A)配列とを含むmRNA分子である人工核酸分子を提供する。
【0124】
1つの実施形態では、本発明は、オープンリーディングフレームと、配列番号1に係る配列、又は配列番号1に対して少なくとも約40%以上の同一性を有する配列、又は上記これらの断片とを含む人工DNA分子である人工核酸分子を提供する。更に、本発明は、オープンリーディングフレームと、配列番号2に係る配列、又は配列番号2に対して少なくとも約40%以上の同一性を有する配列、又は上記これらの断片とを含む人工RNA分子である人工核酸分子を提供する。
【0125】
したがって、本発明は、翻訳効率に関して安定化及び最適化されているRNA分子、好ましくはmRNA分子のテンプレートとして機能し得る人工核酸分子を提供する。言い換えれば、人工核酸分子は、mRNAを産生するためのテンプレートとして用いることができるDNAであってよい。得ることができるmRNAは、次いで、オープンリーディングフレームによってコードされている所望のペプチド又はタンパク質を産生するために翻訳され得る。人工核酸分子がDNAである場合、例えば、インビトロ又はインビボでmRNAを継続して繰り返し産生するための二本鎖保管形態として用いてよい。
【0126】
別の実施形態では、本発明に係る人工核酸分子の3’−UTRは、ポリアデニル化シグナルもポリ(A)配列も含まない。更に好ましくは、本発明に係る人工核酸分子は、ポリアデニル化シグナルもポリ(A)配列も含まない。より好ましくは、人工核酸分子又は本発明の人工核酸分子の3’−UTRは、ポリアデニル化シグナルを含まず、特に、ポリアデニル化シグナルAAU/TAAAを含まない。
【0127】
1つの実施形態では、本発明に係る人工核酸分子は、ポリ(A)配列を更に含む。例えば、ORFに続いてリボソーム3’UTRを含むDNA分子は、得られるmRNAにおいてポリ(A)配列に転写され得る一続きのチミジンヌクレオチドを含有し得る。ポリ(A)配列の長さは、変動してよい。例えば、ポリ(A)配列は、約20アデニンヌクレオチド〜約300アデニンヌクレオチド、好ましくは約40アデニンヌクレオチド〜約200アデニンヌクレオチド、より好ましくは約50アデニンヌクレオチド〜約100アデニンヌクレオチド、例えば、約60アデニンヌクレオチド、約70アデニンヌクレオチド、約80アデニンヌクレオチド、約90アデニンヌクレオチド、又は約100アデニンヌクレオチドの長さを有していてよい。より好ましくは、本発明の核酸分子は、約60ヌクレオチド〜約70ヌクレオチド、最も好ましくは64アデニンヌクレオチドのポリ(A)配列を含む。
【0128】
例えば、本発明に係る人工核酸分子は、以下のDNA配列に対応する核酸配列を含んでいてよい。
【表36】
【0129】
かかる配列の転写により、以下の配列を含む人工核酸分子を得ることができる。
【表37】
【0130】
また、かかる人工RNA分子、即ち、配列番号4に係る配列を含む人工核酸分子は、必ずしもDNA親から転写されることなしに一般的な化学合成法によってインビトロで得ることもできる。
【0131】
特に好ましい実施形態では、本発明に係る人工核酸分子は、5’から3’方向に、オープンリーディングフレームと、上記3’−UTRエレメントと、ポリ(A)配列とを含むRNA分子、好ましくはmRNA分子である。
【0132】
好ましくは、オープンリーディングフレームは、リボソームタンパク質をコードしていない。好ましい実施形態では、オープンリーディングフレームは、本発明の人工核酸の3’−UTRエレメントが由来するリボソームタンパク質、特に哺乳類のリボソームタンパク質をコードしていないが、但し、3’−UTRエレメントは、哺乳類のリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRと同一である。幾つかの更なる好ましい実施形態では、オープンリーディングフレームは、RPS9又はその変異体をコードしていないが、但し、3’−UTRエレメントは、配列番号1又は配列番号2と同一の配列である。
【0133】
好ましい実施形態では、ORFは、ヒト又は植物、特にアラビドプシスのリボソームタンパク質をコードしておらず、特に、ヒトリボソームタンパク質S6(RPS6)、ヒトリボソームタンパク質L36a様(RPL36AL)、又はアラビドプシスリボソームタンパク質S16(RPS16)をコードしていない。更に好ましい実施形態では、オープンリーディングフレーム(ORF)は、どんな起源であろうと、リボソームタンパク質S6(RPS6)、リボソームタンパク質L36a様(RPL36AL)、又はリボソームタンパク質S16(RPS16)をコードしていない。
【0134】
1つの実施形態では、本発明は、オープンリーディングフレーム、好ましくは、3’−UTRが由来するリボソームタンパク質以外のペプチド又はタンパク質をコードしているオープンリーディングフレームと;配列番号1に対して少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、更により好ましくは少なくとも99%、更により好ましくは100%の配列同一性を有する配列を含むか又はからなる3’−UTRエレメントと;ポリアデニル化シグナル及び/又はポリ(A)配列とを含む人工DNA分子を提供する。更に、本発明は、オープンリーディングフレーム、好ましくは、3’−UTRが由来するリボソームタンパク質以外の任意のペプチド又はタンパク質をコードしているオープンリーディングフレームと;配列番号3に対して少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、更により好ましくは少なくとも99%、更により好ましくは100%の配列同一性を有する配列を含むか又はからなる3’−UTRエレメントとを含む人工DNA分子を提供する。
【0135】
更に、本発明は、オープンリーディングフレーム、好ましくは、3’−UTRが由来するリボソームタンパク質以外のペプチド又はタンパク質をコードしているオープンリーディングフレームと;配列番号2に対して少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、更により好ましくは少なくとも99%、更により好ましくは100%の配列同一性を有する配列を含むか又はからなる3’−UTRエレメントと;ポリアデニル化シグナル及び/又はポリ(A)配列とを含む人工RNA分子、好ましくは、人工mRNA分子、又は人工ウイルスRNA分子を提供する。更に、本発明は、オープンリーディングフレーム、好ましくは、3’−UTRが由来するリボソームタンパク質以外のペプチド又はタンパク質をコードしているオープンリーディングフレームと;配列番号4に対して少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、更により好ましくは少なくとも99%、更により好ましくは100%の配列同一性を有する配列を含むか又はからなる3’−UTRエレメントとを含む人工RNA分子(好ましくは、人工mRNA分子又は人工ウイルスRNA分子)を提供する。
【0136】
本発明は、コードされているペプチド又はタンパク質発現の安定性を増強し、延長することを特徴とし得る人工核酸分子(好ましくは、人工mRNA)を提供する。いかなる理論にも束縛されるものではないが、タンパク質発現の安定性の増強、延いてはタンパク質発現の延長は、人工核酸分子(例えば、本発明に係る人工mRNA分子)の分解減少に起因している可能性がある。したがって、本発明の3’−UTRエレメントは、人工核酸が分解及び崩壊するのを防ぐことができる。
【0137】
幾つかの実施形態では、人工核酸分子は、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRに由来する核酸配列に加えて、ヒストンステムループを含んでいてよい。本発明に係る人工核酸分子は、例えば、5’から3’方向に、ORFと、3’−UTRエレメントと、任意のヒストンステムループ配列と、任意のポリ(A)配列/又はポリアデニル化シグナルと、任意のポリ(C)配列とを含んでいてよい。また、前記人工核酸分子は、5’から3’方向に、ORFと、3’−UTRエレメントと、任意のポリ(A)配列と、任意のポリ(C)配列と、任意のヒストンステムループ配列とを含んでいてもよい。
【0138】
好ましい実施形態では、本発明に係る人工核酸分子は、少なくとも1つのヒストンステムループを含む。
【0139】
かかるヒストンステムループ配列は、参照により本明細書に援用される国際公開第2012/019780号に開示されているヒストンステムループ配列から選択することが好ましい。
【0140】
本発明において用いるのに好適なヒストンステムループ配列は、以下の式(I)又は(II)のうちの少なくとも1つから選択することが好ましい:
式(I)(ステム境界エレメントを含まないステムループ配列):
【化1】
式(II)(ステム境界エレメントを含むステムループ配列):
【化2】
(式中、
ステム1又はステム2の境界エレメントN1−6は、1個〜6個、好ましくは2個〜6個、より好ましくは2個〜5個、更により好ましくは3個〜5個、最も好ましくは4個〜5個、又は5個のNの連続配列であり、各Nは、互いに独立して、A、U、T、G、及びCから選択されるヌクレオチド、又はこれらのヌクレオチドアナログから選択され、
ステム1[N0−2GN3−5]は、エレメントステム2に対して逆相補的であるか又は部分的に逆相補的であり、且つ5個〜7個のヌクレオチドの連続配列であり、
0−2は、0個〜2個、好ましくは0個〜1個、より好ましくは1個のNの連続配列であり、各Nは、互いに独立して、A、U、T、G、及びCから選択されるヌクレオチド、又はこれらのヌクレオチドアナログから選択され、
3−5は、3個〜5個、好ましくは4個〜5個、より好ましくは4個のNの連続配列であり、各Nは、互いに独立して、A、U、T、G、及びCから選択されるヌクレオチド、又はこれらのヌクレオチドアナログから選択され、
Gは、グアノシン又はそのアナログであり、任意でシチジン又はそのアナログによって置換されてもよいが、但し、その場合、ステム2におけるその相補的ヌクレオチドであるシチジンも、グアノシンによって置換され、
ループ配列[N0−4(U/T)N0−4]は、エレメントステム1とステム2との間に位置し、且つ3個〜5個のヌクレオチド、より好ましくは4個のヌクレオチドの連続配列であり、
各N0−4は、互いに独立して、0個〜4個、好ましくは1個〜3個、より好ましくは1個〜2個のNの連続配列であり、各Nは、互いに独立して、A、U、T、G、及びCから選択されるヌクレオチド、又はこれらのヌクレオチドアナログから選択され、U/Tは、ウリジン又は任意でチミジンを表し、
ステム2[N3−5CN0−2]は、エレメントステム1に対して逆相補的であるか又は部分的に逆相補的であり、且つ5個〜7個のヌクレオチドの連続配列であり、
3−5は、3個〜5個、好ましくは4個〜5個、より好ましくは4個のNの連続配列であり、各Nは、互いに独立して、A、U、T、G、及びCから選択されるヌクレオチド、又はこれらのヌクレオチドアナログから選択され、
0−2は、0個〜2個、好ましくは0個〜1個、より好ましくは1個のNの連続配列であり、各Nは、互いに独立して、A、U、T、G、若しくはCから選択されるヌクレオチド、又はこれらのヌクレオチドアナログから選択され、
Cは、シチジン又はそのアナログであり、任意でグアノシン又はそのアナログによって置換されてもよいが、但し、その場合、ステム1におけるその相補的ヌクレオチドであるグアノシンも、シチジンによって置換され、
ステム1及びステム2は、互いに塩基対合して逆相補的配列を形成することができる(前記塩基対合は、例えば、ヌクレオチドAとU/T若しくはGとCとのワトソン−クリック塩基対合、又は非ワトソン−クリック塩基対合(例えば、ゆらぎ塩基対合、逆ワトソン−クリック塩基対合、フーグスティーン塩基対合、逆フーグスティーン塩基対合)によってステム1とステム2との間で生じ得る)か、或いは、互いに塩基対合して部分的に逆相補的な配列を形成することができる(一方のステムにおける1以上の塩基が、他方のステムの逆相補的な配列において相補的塩基を有しないことに基づいて、ステム1とステム2との間で不完全な塩基対合が生じ得る)。
【0141】
更に好ましい実施形態によれば、ヒストンステムループ配列は、以下の特定の式(Ia)又は(IIa)のうちの少なくとも1つに従って選択してよい:
式(Ia)(ステム境界エレメントを含まないステムループ配列):
【化3】
式(IIa)(ステム境界エレメントを含むステムループ配列):
【化4】
(式中、N、C、G、T、及びUは、上に定義した通りである)。
【0142】
第1の態様の更により特に好ましい実施形態によれば、人工核酸分子配列は、以下の特定の式(Ib)又は(IIb)のうちの少なくともに係る少なくとも1つのヒストンステムループ配列を含んでよい:
式(Ib)(ステム境界エレメントを含まないステムループ配列):
【化5】
式(IIb)(ステム境界エレメントを含むステムループ配列):
【化6】
(式中、N、C、G、T、及びUは、上に定義した通りである)。
【0143】
特に好ましいヒストンステムループ配列は、配列番号5:CAAAGGCTCTTTTCAGAGCCACCAに係る配列、又はより好ましくは、配列番号5に係る核酸配列に対応するRNA配列である。
【0144】
一例として、単一エレメントは、以下の順に人工核酸分子中に存在してよい:
5’−cap−5’−UTR−ORF−3’−UTRエレメント−ヒストンステムループ−ポリ(A)/(C)配列;
5’−cap−5’−UTR−ORF−3’−UTRエレメント−ポリ(A)/(C)配列−ヒストンステムループ;
5’−cap−5’−UTR−ORF−IRES−ORF−3’−UTRエレメント−ヒストンステムループ−ポリ(A)/(C)配列;
5’−cap−5’−UTR−ORF−IRES−ORF−3’−UTRエレメント−ヒストンステムループ−ポリ(A)/(C)配列−ポリ(A)/(C)配列;
5’−cap−5’−UTR−ORF−IRES−ORF−3’−UTRエレメント−ポリ(A)/(C)配列−ヒストンステムループ;
5’−cap−5’−UTR−ORF−IRES−ORF−3’−UTRエレメント−ポリ(A)/(C)配列−ポリ(A)/(C)配列−ヒストンステムループ;
5’−cap−5’−UTR−ORF−3’−UTRエレメント−ポリ(A)/(C)配列−ポリ(A)/(C)配列;
5’−cap−5’−UTR−ORF−3’−UTRエレメント−ポリ(A)/(C)配列−ポリ(A)/(C)配列−ヒストンステムループ;等。
【0145】
幾つかの実施形態では、人工核酸分子は、更なるエレメント(例えば、5’−キャップ、ポリ(C)配列、及び/又はIRESモチーフ)を含む。5’−キャップは、転写中又は転写後にRNAの5’末端に付加してよい。更に、本発明の人工核酸分子は、特に核酸がmRNAの形態であるか又はmRNAをコードしている場合、少なくとも10個のシチジン、好ましくは少なくとも20個のシチジン、より好ましくは少なくとも30個のシチジンの配列(所謂「ポリ(C)配列」)によって修飾されてよい。具体的には、本発明の人工核酸分子は、特に核酸が(m)RNAの形態であるか又はmRNAをコードしている場合、典型的に約10シチジンヌクレオチド〜約200シチジンヌクレオチド、好ましくは約10シチジンヌクレオチド〜約100シチジンヌクレオチド、より好ましくは約10シチジンヌクレオチド〜約70シチジンヌクレオチド、又は更により好ましくは約20シチジンヌクレオチド〜約50シチジンヌクレオチド、又は更には20シチジンヌクレオチド〜30シチジンヌクレオチドのポリ(C)配列を含有していてよい。最も好ましくは、本発明の核酸は、30シチジン残基のポリ(C)配列を含む。したがって、好ましくは、本発明に係る人工核酸分子は、好ましくは5’から3’方向に、ORFと、上記少なくとも1つの3’−UTRエレメントと、ポリ(A)配列又はポリアデニル化シグナルと、ポリ(C)配列とを含む。
【0146】
配列内リボソーム進入部位(IRES)配列又はIRESモチーフは、例えば、人工核酸分子が2以上のペプチド又はタンパク質をコードしている場合、幾つかのオープンリーディングフレームを分離することができる。IRES配列は、人工核酸分子が2シストロン性又は多シストロン性の核酸分子である場合、特に有用であり得る。
【0147】
更に、人工核酸分子は、更なる5’エレメント、好ましくは5’−UTR、プロモーター、又は5’−UTR及びプロモーター含有配列を含んでいてよい。プロモーターは、本発明に係る人工核酸分子、例えば、本発明に係る人工DNA分子の転写を駆動及び/又は制御することができる。更に、5’−UTRは、本明細書に定義する遺伝子の5’−UTRを含んでよい。更に、5’−UTRは、本発明の3’−UTRエレメントと相互作用し得、それによって、本発明の3’−UTRエレメントの安定化効果を支持し得る。かかるエレメントは、更に、安定性及び翻訳効率を支持し得る。したがって、幾つかの実施形態では、本発明は、5’から3’方向に、以下の構造のうちの少なくとも1つを含む人工核酸分子、好ましくはmRNA分子を提供する:
5’−キャップ−5’−UTR−ORF−3’−UTRエレメント−ヒストンステムループ−ポリ(A)/(C)配列
5’−キャップ−5’−UTR−ORF−3’−UTRエレメント−ポリ(A)/(C)配列−ヒストンステムループ
5’−キャップ−5’−UTR−ORF−IRES−ORF−3’−UTRエレメント−ヒストンステムループ−ポリ(A)/(C)配列
5’−キャップ−5’−UTR−ORF−IRES−ORF−3’−UTRエレメント−−ヒストンステムループ−ポリ(A)/(C)配列−ポリ(A)/(C)配列
5’−キャップ−5’−UTR−ORF−IRES−ORF−3’−UTRエレメント−ポリ(A)/(C)配列−ヒストンステムループ
5’−キャップ−5’−UTR−ORF−IRES−ORF−3’−UTRエレメント−ポリ(A)/(C)配列−ポリ(A)/(C)配列−ヒストンステムループ
5’−キャップ−5’−UTR−ORF−3’−UTRエレメント−ポリ(A)/(C)配列−ポリ(A)/(C)配列
5’−キャップ−5’−UTR−ORF−3’−UTRエレメント−ポリ(A)/(C)配列−ポリ(A)/(C)配列−ヒストンステムループ。
【0148】
本発明の特に好ましい実施形態では、人工核酸分子は、好ましくは、TOP遺伝子の5’UTRに由来するか又はTOP遺伝子の5’UTRの断片、ホモログ、若しくは変異体に由来する核酸配列を含むか又はからなる、500ヌクレオチド未満、400ヌクレオチド未満、300ヌクレオチド未満、250ヌクレオチド未満、200ヌクレオチド未満、150ヌクレオチド未満、若しくは100ヌクレオチド未満及び/又は20ヌクレオチド超、30ヌクレオチド超、40ヌクレオチド超、50ヌクレオチド超、若しくは60ヌクレオチド超の長さの少なくとも1つの5’−非翻訳領域エレメント(5’UTRエレメント)を含む。
【0149】
5’UTRエレメントは、上に定義した通り、TOPモチーフも5’TOPも含まないことが特に好ましい。
【0150】
TOP遺伝子の5’UTRに由来する核酸配列は、真核生物TOP遺伝子、好ましくは、植物又は動物のTOP遺伝子、より好ましくは、脊索動物TOP遺伝子、更により好ましくは、脊椎動物TOP遺伝子、最も好ましくは、哺乳類TOP遺伝子(例えば、ヒトTOP遺伝子)に由来する。
【0151】
例えば、5’UTRエレメントは、好ましくは、参照により本明細書に援用される国際公開第2013/143700号の配列番号1〜1363、配列番号1395、配列番号1421、及び配列番号1422からなる群から選択される核酸配列;国際公開第2013/143700号の配列番号1〜1363、配列番号1395、配列番号1421、及び配列番号1422のホモログ;これらの変異体;又は好ましくは、対応するRNA配列に由来する核酸配列を含むか又はからなる5’UTRエレメントから選択される。「国際公開第2013/143700号の配列番号1〜1363、配列番号1395、配列番号1421、及び配列番号1422のホモログ」という用語は、国際公開第2013/143700号の配列番号1〜1363、配列番号1395、配列番号1421、及び配列番号1422に係る配列に対して相同である、ヒト以外の種の配列を指す。
【0152】
好ましい実施形態では、5’UTRエレメントは、5位ヌクレオチド(即ち、配列において5位に位置するヌクレオチド)から(配列の3’末端に位置する)開始コドンの直ぐ5’側のヌクレオチド位置(例えば、国際公開第2013/143700号の配列番号1〜1363、配列番号1395、配列番号1421、及び配列番号1422から選択される核酸配列;国際公開第2013/143700号の配列番号1〜1363、配列番号1395、配列番号1421、及び配列番号1422のホモログ;これらの変異体;又は対応するRNA配列のATG配列の直ぐ5’側のヌクレオチド位置)まで延在する核酸配列に由来する核酸配列を含むか又はからなる。5’UTRエレメントは、5’TOPの直ぐ3’側のヌクレオチド位置から(配列の3’末端に位置する)開始コドンの直ぐ5’側のヌクレオチド位置(例えば、(例えば、国際公開第2013/143700号の配列番号1〜1363、配列番号1395、配列番号1421、及び配列番号1422から選択される核酸配列;国際公開第2013/143700号の配列番号1〜1363、配列番号1395、配列番号1421、及び配列番号1422のホモログ;これらの変異体;又は対応するRNA配列のATG配列の直ぐ5’側のヌクレオチド位置)まで延在する核酸配列に由来することが特に好ましい。
【0153】
特に好ましい実施形態では、5’UTRエレメントは、リボソームタンパク質をコードしているTOP遺伝子の5’UTR又はリボソームタンパク質をコードしているTOP遺伝子の5’UTRの変異体に由来する核酸配列を含むか又はからなる。例えば、5’UTRエレメントは、好ましくは5’TOPモチーフを有しない、国際公開第2013/143700号の配列番号170、232、244、259、1284、1285、1286、1287、1288、1289、1290、1291、1292、1293、1294、1295、1296、1297、1298、1299、1300、1301、1302、1303、1304、1305、1306、1307、1308、1309、1310、1311、1312、1313、1314、1315、1316、1317、1318、1319、1320、1321、1322、1323、1324、1325、1326、1327、1328、1329、1330、1331、1332、1333、1334、1335、1336、1337、1338、1339、1340、1341、1342、1343、1344、1346、1347、1348、1349、1350、1351、1352、1353、1354、1355、1356、1357、1358、1359、又は1360のいずれかに係る核酸配列、対応するRNA配列、これらのホモログ、又はこれらの変異体の5’UTRに由来する核酸配列を含むか又はからなる。上記の通り、5位から(配列の3’末端に位置する)ATGの直ぐ5’側のヌクレオチドまで延在する配列は、前記配列の5’UTRに相当する。
【0154】
好ましくは、5’UTRエレメントは、リボソームラージタンパク質(RPL)をコードしているTOP遺伝子の5’UTR又はリボソームラージタンパク質(RPL)をコードしているTOP遺伝子の5’UTRのホモログ若しくは変異体に由来する核酸配列を含むか又はからなる。例えば、5’UTRエレメントは、好ましくは5’TOPモチーフを有しない、国際公開第2013/143700号の配列番号67、259、1284〜1318、1344、1346、1348〜1354、1357、1358、1421、及び1422のいずれかに係る核酸配列、対応するRNA配列、これらのホモログ、又は本明細書に記載するこれらの変異体の5’UTRに由来する核酸配列を含むか又はからなる。
【0155】
特に好ましい実施形態では、5’UTRエレメントは、リボソームタンパク質ラージ32遺伝子、好ましくは、脊椎動物リボソームタンパク質ラージ32(L32)遺伝子、より好ましくは、哺乳類リボソームタンパク質ラージ32(L32)遺伝子、最も好ましくは、ヒトリボソームタンパク質ラージ32(L32)遺伝子の5’UTR、又はリボソームタンパク質ラージ32遺伝子、好ましくは、脊椎動物リボソームタンパク質ラージ32(L32)遺伝子、より好ましくは、哺乳類リボソームタンパク質ラージ32(L32)遺伝子、最も好ましくは、ヒトリボソームタンパク質ラージ32(L32)遺伝子の5’UTRの変異体に由来する核酸配列を含むか又はからなり、好ましくは、前記5’UTRエレメントは、前記遺伝子の5’TOPを含まない。
【0156】
したがって、特に好ましい実施形態では、5’UTRエレメントは、配列番号6に係る核酸配列(5’末端オリゴピリミジン領域を有しないヒトリボソームタンパク質ラージ32の5’UTR:GGCGCTGCCTACGGAGGTGGCAGCCATCTCCTTCTCGGCATC;国際公開第2013/143700号の配列番号1368に対応)、又は好ましくは、対応するRNA配列に対して少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、更により好ましくは少なくとも約99%の同一性を有する核酸配列を含むか又はからなる、或いは、少なくとも1つの5’UTRエレメントは、配列番号6に係る核酸配列、又はより好ましくは対応するRNA配列に対して少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、更により好ましくは少なくとも約99%の同一性を有する核酸配列の断片を含むか又はからなり、好ましくは、前記断片は、上記の通りである、即ち、完全長5’UTRの少なくとも20%等を表す連続する一続きのヌクレオチドである。好ましくは、前記断片は、少なくとも約20ヌクレオチド以上、好ましくは少なくとも約30ヌクレオチド以上、より好ましくは少なくとも約40ヌクレオチド以上の長さを有する。好ましくは、前記断片は、本明細書に記載する機能的断片である。
【0157】
幾つかの実施形態では、人工核酸分子は、RPSA、RPS2、RPS3、RPS3A、RPS4、RPS5、RPS6、RPS7、RPS8、RPS9、RPS10、RPS11、RPS12、RPS13、RPS14、RPS15、RPS15A、RPS16、RPS17、RPS18、RPS19、RPS20、RPS21、RPS23、RPS24、RPS25、RPS26、RPS27、RPS27A、RPS28、RPS29、RPS30、RPL3、RPL4、RPL5、RPL6、RPL7、RPL7A、RPL8、RPL9、RPL10、RPL10A、RPL11、RPL12、RPL13、RPL13A、RPL14、RPL15、RPL17、RPL18、RPL18A、RPL19、RPL21、RPL22、RPL23、RPL23A、RPL24、RPL26、RPL27、RPL27A、RPL28、RPL29、RPL30、RPL31、RPL32、RPL34、RPL35、RPL35A、RPL36、RPL36A、RPL37、RPL37A、RPL38、RPL39、RPL40、RPL41、RPLP0、RPLP1、RPLP2、RPLP3、RPLP0、RPLP1、RPLP2、EEF1A1、EEF1B2、EEF1D、EEF1G、EEF2、EIF3E、EIF3F、EIF3H、EIF2S3、EIF3C、EIF3K、EIF3EIP、EIF4A2、PABPC1、HNRNPA1、TPT1、TUBB1、UBA52、NPM1、ATP5G2、GNB2L1、NME2、UQCRB又はこれらのホモログ若しくは変異体から選択される脊椎動物のTOP遺伝子(例えば、ヒト等の哺乳類のTOP遺伝子)の5’UTRに由来する核酸配列を含むか又はからなる5’UTRエレメントを含み、好ましくは、前記5’UTRエレメントは、前記遺伝子のTOPモチーフも5’TOPも含まず、任意で、前記5’UTRエレメントは、その5’末端において、5’末端オリゴピリミジン領域(TOP)の下流の位置1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10に位置するヌクレオチドで始まり、更に、任意で、TOP遺伝子の5’UTRに由来する前記5’UTRエレメントは、その3’末端において、それが由来する遺伝子の開始コドン(A(U/T)G)の上流の位置1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10に位置するヌクレオチドで終結する。
【0158】
好ましくは、本発明に係る人工核酸分子、好ましくはオープンリーディングフレームは、少なくとも部分的にG/C改変されている。したがって、本発明の人工核酸分子は、前記分子のG(グアノシン)/C(シトシン)含量を改変することによって熱力学的に安定化させることができる。好ましくは遺伝コードの縮重を用いることによって、相当する野生型配列のオープンリーディングフレームのG/C含量と比べて本発明に係る人工核酸分子のオープンリーディングフレームのG/C含量を増加させてよい。したがって、人工核酸分子のコードされているアミノ酸配列は、好ましくは、特定の野生型配列のコードされているアミノ酸配列と比べて、G/C改変によって改変されないことが好ましい。したがって、翻訳されるアミノ酸配列を維持しながら含まれるG/Cヌクレオチドの量が増えるように、野生型コード配列と比べてコード配列又は人工核酸分子全体(例えば、mRNA)のコドンを変化させてよい。幾つかのコドンが1つの同じアミノ酸をコードしている(所謂、遺伝コードの縮重)という事実に起因して、コードされているペプチド/タンパク質配列を変化させることなくコドンを変化させることが実行可能である(所謂、代替コドンの利用)。したがって、(同じアミノ酸をコードしているそれぞれの野生型コドンへの交換において)特異的に特定のコドンを導入することが可能であり、これは、被験体におけるRNAの安定性及び/又はコドン利用に関してより好ましい(所謂、コドンの最適化)。
【0159】
本明細書に定義する本発明の人工核酸分子のコード領域によってコードされているアミノ酸によっては、その野生型コード領域に対して、核酸配列、例えばコード領域を様々に改変できる可能性がある。G又はCヌクレオチドのみを含有するコドンによってコードされているアミノ酸の場合、コドンを改変する必要はない。したがって、Pro(CCC又はCCG)、Arg(CGC又はCGG)、Ala(GCC又はGCG)、及びGly(GGC又はGGG)のコドンは、AもU/Tも存在しないので、改変する必要がない。
【0160】
対照的に、A及び/又はU/Tヌクレオチドを含有するコドンは、同じアミノ酸をコードしているがA及び/又はU/Tを含有していない他のコドンで置換することによって改変してよい。例えば、
Proのコドンは、CC(U/T)又はCCAからCCC又はCCGに改変してよい;
Argのコドンは、CG(U/T)又はCGA又はAGA又はAGGからCGC又はCGGに改変してよい;
Alaのコドンは、GC(U/T)又はGCAからGCC又はGCGに改変してよい;
Glyのコドンは、GG(U/T)又はGGAからGGC又はGGGに改変してよい。
【0161】
他の場合、A又は(U/T)ヌクレオチドをコドンからなくすことはできないが、A及び/又は(U/T)ヌクレオチドの含量が低いコドンを使用することによってA及び(U/T)含量を減少させることができる。その例は、以下の通りである:
Pheのコドンは、(U/T)(U/T)(U/T)から(U/T)(U/T)Cに改変してよい;
Leuのコドンは、(U/T)(U/T)A、(U/T)(U/T)G、C(U/T)(U/T)又はC(U/T)AからC(U/T)C又はC(U/T)Gに改変してよい;
Serのコドンは、(U/T)C(U/T)又は(U/T)CA又はAG(U/T)から(U/T)CC、(U/T)CG又はAGCに改変してよい;
Tyrのコドンは、(U/T)A(U/T)から(U/T)ACに改変してよい;
Cysのコドンは、(U/T)G(U/T)から(U/T)GCに改変してよい;
Hisのコドンは、CA(U/T)からCACに改変してよい;
Glnのコドンは、CAAからCAGに改変してよい;Ileのコドンは、A(U/T)(U/T)又はA(U/T)AからA(U/T)Cに改変してよい;
Thrのコドンは、AC(U/T)又はACAからACC又はACGに改変してよい;
Asnのコドンは、AA(U/T)からAACに改変してよい;
Lysのコドンは、AAAからAAGに改変してよい;
Valのコドンは、G(U/T)(U/T)又はG(U/T)AからG(U/T)C又はG(U/T)Gに改変してよい;
Aspのコドンは、GA(U/T)からGACに改変してよい;
Gluのコドンは、GAAからGAGに改変してよい;
終止コドン(U/T)AAは、(U/T)AG又は(U/T)GAに改変してよい。
【0162】
他方、Met(A(U/T)G)及びTrp((U/T)GG)のコドンの場合、コードされているアミノ酸配列を変化させることなしに配列を改変することはできない。
【0163】
上記置換は、その特定の野生型オープンリーディングフレーム(即ち、オリジナル配列)と比べて、本明細書に定義する本発明の人工核酸分子のオープンリーディングフレームのG/C含量を増加させるために個々に又は全ての可能な組み合わせで用いることができる。したがって、例えば、野生型配列に存在するThrの全てのコドンをACC(又はACG)に改変してもよい。
【0164】
好ましくは、本明細書に定義する本発明の人工核酸分子のオープンリーディングフレームのG/C含量は、コードされているアミノ酸配列を変化させることなしに、即ち、遺伝子コードの縮重を用いて、野生型コード領域のG/C含量と比べて、少なくとも7%、好ましくは少なくとも15%、特に好ましくは少なくとも20%増加させる。特定の実施形態によれば、本発明の人工核酸分子、又はその断片、変異体、若しくは誘導体のオープンリーディングフレームにおける置換可能なコドンのうちの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、更により好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、少なくとも95%、又は更には100%を置換して、前記オープンリーディングフレームのG/C含量を増加させる。
【0165】
これに関連して、本明細書に定義する本発明の人工核酸分子のオープンリーディングフレームのG/C含量を、コードされているアミノ酸配列を変化させることなしに、野生型オープンリーディングフレームと比べて最大限(即ち、置換可能なコドンの100%)増加させることが特に好ましい。
【0166】
更に、オープンリーディングフレームは、好ましくは、少なくとも部分的にコドンが最適化されている。コドンの最適化は、細胞内のトランスファーRNA(tRNA)の発生頻度が異なることによって翻訳効率が決定され得るという知見に基づいている。したがって、本明細書に定義する本発明の人工核酸分子のコード領域に所謂「レアコドン」が存在している場合、前記レアコドンに相当する改変核酸配列は、比較的「高頻度の」tRNAをコードしているコドンが存在する場合よりも翻訳効率が低くなる確率が高い。
【0167】
したがって、本発明の人工核酸分子のオープンリーディングフレームは、好ましくは、細胞内で比較的レアなtRNAをコードしている野生型配列のうちの少なくとも1つのコドンが、細胞内で比較的高頻度で存在するtRNAをコードしており且つ前記比較的レアなtRNAと同じアミノ酸を運搬するコドンと交換されるように、相当する野生型コード領域に対して改変される。この改変により、本明細書に定義する本発明の人工核酸分子のオープンリーディングフレームは、高頻度で存在するtRNAを利用可能なコドンが、レアなtRNAに対応するコドンに置き換わることができるように改変される。言い換えれば、本発明によれば、この改変により、レアなtRNAをコードしている野生型オープンリーディングフレームの全てのコドンを、細胞内においてより高頻度で存在し且つ前記レアなtRNAと同じアミノ酸を運搬するコドンと交換してよい。どのtRNAが細胞内で比較的高頻度で存在するか、及び対照的にどのtRNAが比較的低頻度で存在するかは、当業者に公知である。例えば、Akashi,Curr.Opin.Genet.Dev.2001,11(6):660−666を参照されたい。したがって、好ましくは、オープンリーディングフレームは、好ましくは本発明に係る人工核酸分子が発現する系に関して、好ましくは本発明に係る人工核酸分子が翻訳される系に関して、コドンが最適化されている。好ましくは、オープンリーディングフレームのコドン使用頻度は、哺乳類のコドン使用頻度、より好ましくはヒトのコドン使用頻度に従ってコドンが最適化されている。好ましくは、オープンリーディングフレームは、コドンが最適化されており且つG/C含量が改変されている。
【0168】
分解耐性、例えば、エキソヌクレアーゼ又はエンドヌクレアーゼによるインビボ分解に対する耐性を更に改善するために、及び/又は本発明に係る人工核酸分子からのタンパク質発現の安定性を更に改善するために、人工核酸分子は、骨格修飾、糖修飾、及び/又は塩基修飾、例えば、脂質修飾等の修飾を更に含んでいてよい。好ましくは、本発明に係る人工核酸分子の転写及び/又は翻訳は、前記修飾によって殆ど損なわれない。
【0169】
一般的に、本発明の人工核酸分子は、任意のネイティブ(=天然)ヌクレオチド、例えば、グアノシン、ウラシル、アデノシン、及び/若しくはシトシン、又はこれらのアナログを含んでいてよい。これに関して、ヌクレオチドアナログは、天然ヌクレオチドであるアデノシン、シトシン、チミジン、グアノシン、及びウリジンのネイティブ又は非ネイティブの変異体として定義される。したがって、アナログは、例えば、非ネイティブの官能基で化学的に誘導体化されたヌクレオチドであり、好ましくは、前記非ネイティブの官能基を天然ヌクレオチドに付加するか又は天然ヌクレオチドから欠失させ、或いは、前記非ネイティブの官能基でヌクレオチドの天然官能基を置換する。したがって、天然ヌクレオチドの各構成成分、即ち、RNA配列の骨格(上記を参照)を形成する塩基成分、糖(リボース)成分、及び/又はリン酸成分を修飾することができる。グアノシン、ウリジン、アデノシン、チミジン、及びシトシンのアナログとしては、限定するものではないが、(例えば、アセチル化、メチル化、ヒドロキシ化等によって、化学的に)改変されている、任意のネイティブ又は非ネイティブのグアノシン、ウリジン、アデノシン、チミジン、又はシトシンが挙げられ、例えば、1−メチル−アデノシン、1−メチル−グアノシン、1−メチル−イノシン、2,2−ジメチル−グアノシン、2,6−ジアミノプリン、2’−アミノ−2’−デオキシアデノシン、2’−アミノ−2’−デオキシシチジン、2’−アミノ−2’−デオキシグアノシン、2’−アミノ−2’−デオキシウリジン、2−アミノ−6−クロロプリンリボシド、2−アミノプリン−リボシド、2’−アラアデノシン、2’−アラシチジン、2’−アラウリジン、2’−アジド−2’−デオキシアデノシン、2’−アジド−2’−デオキシシチジン、2’−アジド−2’−デオキシグアノシン、2’−アジド−2’−デオキシウリジン、2−クロロアデノシン、2’−フルオロ−2’−デオキシアデノシン、2’−フルオロ−2’−デオキシシチジン、2’−フルオロ−2’−デオキシグアノシン、2’−フルオロ−2’−デオキシウリジン、2’−フルオロチミジン、2−メチル−アデノシン、2−メチル−グアノシン、2−メチル−チオ−N6−イソペネニル−アデノシン、2’−O−メチル−2−アミノアデノシン、2’−O−メチル−2’−デオキシアデノシン、2’−O−メチル−2’−デオキシシチジン、2’−O−メチル−2’−デオキシグアノシン、2’−O−メチル−2’−デオキシウリジン、2’−O−メチル−5−メチルウリジン、2’−O−メチルイノシン、2’−O−メチルシュードウリジン、2−チオシチジン、2−チオ−シトシン、3−メチル−シトシン、4−アセチル−シトシン、4−チオウリジン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)−ウラシル、5,6−ジヒドロウリジン、5−アミノアリルシチジン、5−アミノアリル−デオキシ−ウリジン、5−ブロモウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオ−ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−ウラシル、5−クロロ−アラ−シトシン、5−フルオロ−ウリジン、5−ヨードウリジン、5−メトキシカルボニルメチル−ウリジン、5−メトキシ−ウリジン、5−メチル−2−チオ−ウリジン、6−アザシチジン、6−アザウリジン、6−クロロ−7−デアザ−グアノシン、6−クロロプリンリボシド、6−メルカプト−グアノシン、6−メチル−メルカプトプリン−リボシド、7−デアザ−2’−デオキシ−グアノシン、7−デアザアデノシン、7−メチル−グアノシン、8−アザアデノシン、8−ブロモ−アデノシン、8−ブロモ−グアノシン、8−メルカプト−グアノシン、8−オキソグアノシン、ベンズイミダゾール−リボシド、ベータ−D−マンノシル−クエオシン、ジヒドロ−ウラシル、イノシン、N1−メチルアデノシン、N6−([6−アミノヘキシル]カルバモイルメチル)−アデノシン、N6−イソペンテニル−アデノシン、N6−メチル−アデノシン、N7−メチル−キサントシン、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ピューロマイシン、クエオシン、ウラシル−5−オキシ酢酸、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ワイブトシン(Wybutoxosine)、キサントシン、及びキシロアデノシンを含む。このようなアナログの調製は、例えば、米国特許第4,373,071号、米国特許第4,401,796号、米国特許第4,415,732号、米国特許第4,458,066号、米国特許第4,500,707号、米国特許第4,668,777号、米国特許第4,973,679号、米国特許第5,047,524号、米国特許第5,132,418号、米国特許第5,153,319号、米国特許第5,262,530号、及び米国特許第5,700,642号から当業者に公知である。上記アナログの場合、本発明の特定の実施形態に従って、コードされているペプチド若しくはタンパク質のタンパク質発現を増加させる、又は本発明の人工核酸分子の免疫原性を増大させる及び/若しくは導入されている人工核酸分子の更なる修飾に干渉しないアナログが特に好ましい場合がある。
【0170】
特定の実施形態によれば、本発明の人工核酸分子は、脂質修飾を含有してよい。
【0171】
好ましい実施形態では、人工核酸分子は、好ましくは、5’から3’方向に、以下のエレメントを含む:
5’−UTR;
少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)であって、好ましくは、野生型配列に対して少なくとも1つの修飾を含むORF;
リボソームタンパク質の3’−UTR、好ましくは、配列番号10〜配列番号115のいずれかに係る核酸配列、より好ましくは、RPS9の3’−UTR、より好ましくは、ヒトRPS9の3’−UTRに由来する3’−UTR;
好ましくは64アデニレートを含むポリ(A)配列;
好ましくは30シチジレートを含むポリ(C)配列;
ヒストンステムループ配列。
【0172】
別の好ましい実施形態では、人工核酸分子は、配列番号7に示すヌクレオチド配列(図3を参照)又は相補的なDNA配列を含むか又はからなる。
【0173】
特に好ましい実施形態では、本発明に係る人工核酸分子は、以下に記載する修飾のうちの1以上を更に含んでよい。
【0174】
化学修飾:
人工核酸分子に関して本明細書で使用するとき、用語「修飾」とは、骨格修飾に加えて、糖修飾又は塩基修飾を含む化学修飾を指し得る。
【0175】
この状況では、本明細書に定義する人工核酸分子、好ましくは、RNA分子は、ヌクレオチドアナログ/修飾、例えば、骨格修飾、糖修飾、又は塩基修飾を含有し得る。本発明に関連する骨格修飾は、本明細書に定義する核酸分子に含有されているヌクレオチドの骨格のリン酸が化学的に修飾されている修飾である。本発明に関連する糖修飾は、本明細書に定義する核酸分子のヌクレオチドの糖の化学修飾である。更に、本発明に関連する塩基修飾は、核酸分子の核酸分子のヌクレオチドの塩基部分の化学修飾である。この状況では、ヌクレオチドアナログ又は修飾は、好ましくは、転写及び/又は翻訳に適用可能なヌクレオチドアナログから選択される。
【0176】
糖修飾:
修飾されたヌクレオシド及びヌクレオチド(本明細書に記載する通り、人工核酸分子、好ましくはRNAに組み込まれ得る)は、糖部分が修飾されていてよい。例えば、RNA分子の2’ヒドロキシル基(OH)は、多数の異なる「オキシ」又は「デオキシ」置換基で修飾又は置換され得る。「オキシ」−2’ヒドロキシル基修飾の例としては、アルコキシ又はアリールオキシ(−OR、例えば、R=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、又は糖);ポリエチレングリコール(PEG)、−0(CH2CH2o)nCH2CH2OR;2’ヒドロキシルが、例えば、メチレン架橋によって、同じリボース糖の4’炭素に結合している「ロック」核酸(LNA);及びアミノ基(−O−アミノ、式中、アミノ基、例えば、NRRは、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、又はジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)又はアミノアルコキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0177】
「デオキシ」修飾としては、水素、アミノ(例えば、NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、又はアミノ酸)が挙げられ;又はアミノ基は、リンカーを介して糖に結合してもよく、前記リンカーは、原子C、N、及びOのうちの1以上を含む。
【0178】
また、糖基は、リボースにおける対応する炭素とは逆の立体化学的配置を有する1以上の炭素を含有し得る。したがって、修飾された核酸分子は、例えば、糖としてアラビノースを含有するヌクレオチドを含み得る。
【0179】
骨格修飾:
修飾されたヌクレオシド及びヌクレオチド(本明細書に記載する通り、人工核酸分子、好ましくはRNAに組み込まれ得る)は、リン酸骨格が更に修飾されていてもよい。骨格のリン酸基は、酸素原子のうちの1以上を異なる置換基で置換することによって修飾することができる。更に、修飾されたヌクレオシド及びヌクレオチドは、本明細書に記載する通り、非修飾リン酸部分を修飾リン酸で完全に置換することを含み得る。修飾リン酸基の例としては、ホスホロチオエート、ホスホロセレネート、ボラノホスフェート、ボラノホスフェートエステル、ホスホン酸水素、ホスホロアミデート、アルキル又はアリールホスホネート、及びホスホトリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。ホスホロジチオエートは、非結合酸素が両方とも硫黄によって置換されている。また、リン酸リンカーは、窒素(架橋ホスホロアミデート)、硫黄(架橋ホスホロチオエート)、及び炭素(架橋メチレン−ホスホネート)で結合酸素を置換することによって修飾してもよい。
【0180】
塩基修飾:
修飾されたヌクレオシド及びヌクレオチド(本明細書に記載する通り、人工核酸分子、好ましくはRNA分子に組み込まれ得る)は、ヌクレオ塩基部分が更に修飾されていてもよい。RNAにみられるヌクレオ塩基の例としては、アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、本明細書に記載するヌクレオシド及びヌクレオチドは、主溝面において化学修飾され得る。幾つかの実施形態では、主溝化学修飾は、アミノ基、チオール基、アルキル基、又はハロ基を含み得る。
【0181】
本発明の特に好ましい実施形態では、ヌクレオチドアナログ/修飾は、塩基修飾から選択され、これは、好ましくは、2−アミノ−6−クロロプリンリボシド−5’−トリホスフェート、2−アミノプリン−リボシド−5’−トリホスフェート;2−アミノアデノシン−5’−トリホスフェート、2’−アミノ−2’−デオキシシチジン−トリホスフェート、2−チオシチジン−5’−トリホスフェート、2−チオウリジン−5’−トリホスフェート、2’−フルオロチミジン−5’−トリホスフェート、2’−O−メチルイノシン−5’−トリホスフェート4−チオウリジン−5’−トリホスフェート、5−アミノアリルシチジン−5’−トリホスフェート、5−アミノアリルウリジン−5’−トリホスフェート、5−ブロモシチジン−5’−トリホスフェート、5−ブロモウリジン−5’−トリホスフェート、5−ブロモ−2’−デオキシシチジン−5’−トリホスフェート、5−ブロモ−2’−デオキシウリジン−5’−トリホスフェート、5−ヨードシチジン−5’−トリホスフェート、5−ヨード−2’−デオキシシチジン−5’−トリホスフェート、5−ヨードウリジン−5’−トリホスフェート、5−ヨード−2’−デオキシウリジン−5’−トリホスフェート、5−メチルシチジン−5’−トリホスフェート、5−メチルウリジン−5’−トリホスフェート、5−プロピニル−2’−デオキシシチジン−5’−トリホスフェート、5−プロピニル−2’−デオキシウリジン−5’−トリホスフェート、6−アザシチジン−5’−トリホスフェート、6−アザウリジン−5’−トリホスフェート、6−クロロプリンリボシド−5’−トリホスフェート、7−デアザアデノシン−5’−トリホスフェート、7−デアザグアノシン−5’−トリホスフェート、8−アザアデノシン−5’−トリホスフェート、8−アジドアデノシン−5’−トリホスフェート、ベンズイミダゾール−リボシド−5’−トリホスフェート、N1−メチルアデノシン−5’−トリホスフェート、N1−メチルグアノシン−5’−トリホスフェート、N6−メチルアデノシン−5’−トリホスフェート、O6−メチルグアノシン−5’−トリホスフェート、シュードウリジン−5’−トリホスフェート、又はピューロマイシン−5’−トリホスフェート、キサントシン−5’−トリホスフェートから選択される。5−メチルシチジン−5’−トリホスフェート、7−デアザグアノシン−5’−トリホスフェート、5−ブロモシチジン−5’−トリホスフェート、及びシュードウリジン−5’−トリホスフェートからなる塩基修飾されたヌクレオチドの群から選択される塩基修飾のためのヌクレオチドが特に好ましい。
【0182】
幾つかの実施形態では、修飾されたヌクレオシドとしては、ピリジン−4−オンリボヌクレオシド、5−アザ−ウリジン、2−チオ−5−アザ−ウリジン、2−チオウリジン、4−チオ−シュードウリジン、2−チオ−シュードウリジン、5−ヒドロキシウリジン、3−メチルウリジン、5−カルボキシメチル−ウリジン、1−カルボキシメチル−シュードウリジン、5−プロピニル−ウリジン、1−プロピニル−シュードウリジン、5−タウリノメチルウリジン、1−タウリノメチル−シュードウリジン、5−タウリノメチル−2−チオ−ウリジン、1−タウリノメチル−4−チオ−ウリジン、5−メチル−ウリジン、1−メチル−シュードウリジン、4−チオ−1−メチル−シュードウリジン、2−チオ−1−メチル−シュードウリジン、1−メチル−1−デアザ−シュードウリジン、2−チオ−1−メチル−1−デアザ−シュードウリジン、ジヒドロウリジン、ジヒドロシュードウリジン、2−チオ−ジヒドロウリジン、2−チオ−ジヒドロシュードウリジン、2−メトキシウリジン、2−メトキシ−4−チオ−ウリジン、4−メトキシ−シュードウリジン、及び4−メトキシ−2−チオ−シュードウリジンが挙げられる。
【0183】
幾つかの実施形態では、修飾されたヌクレオシドとしては、5−アザ−シチジン、シュードイソシチジン、3−メチル−シチジン、N4−アセチルシチジン、5−ホルミルシチジン、N4−メチルシチジン、5−ヒドロキシメチルシチジン、1−メチル−シュードイソシチジン、ピロロ−シチジン、ピロロ−シュードイソシチジン、2−チオ−シチジン、2−チオ−5−メチル−シチジン、4−チオ−シュードイソシチジン、4−チオ−1−メチル−シュードイソシチジン、4−チオ−1−メチル−1−デアザ−シュードイソシチジン、1−メチル−1−デアザ−シュードイソシチジン、ゼブラリン、5−アザ−ゼブラリン、5−メチル−ゼブラリン、5−アザ−2−チオ−ゼブラリン、2−チオ−ゼブラリン、2−メトキシ−シチジン、2−メトキシ−5−メチル−シチジン、4−メトキシ−シュードイソシチジン、及び4−メトキシ−l−メチル−シュードイソシチジンが挙げられる。
【0184】
他の実施形態では、修飾されたヌクレオシドとしては、2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、7−デアザ−アデニン、7−デアザ−8−アザ−アデニン、7−デアザ−2−アミノプリン、7−デアザ−8−アザ−2−アミノプリン、7−デアザ−2,6−ジアミノプリン、7−デアザ−8−アザ−2,6−ジアミノプリン、1−メチルアデノシン、N6−メチルアデノシン、N6−イソペンテニルアデノシン、N6−(cis−ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2−メチルチオ−N6−(cis−ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6−グリシニルカルバモイルアデノシン、N6−トレオニルカルバモイルアデノシン、2−メチルチオ−N6−トレオニルカルバモイルアデノシン、N6,N6−ジメチルアデノシン、7−メチルアデニン、2−メチルチオ−アデニン、及び2−メトキシ−アデニンが挙げられる。
【0185】
他の実施形態では、修飾されたヌクレオシドとしては、イノシン、1−メチル−イノシン、ワイオシン、ワイブトシン、7−デアザ−グアノシン、7−デアザ−8−アザ−グアノシン、6−チオ−グアノシン、6−チオ−7−デアザ−グアノシン、6−チオ−7−デアザ−8−アザ−グアノシン、7−メチル−グアノシン、6−チオ−7−メチル−グアノシン、7−メチルイノシン、6−メトキシ−グアノシン、1−メチルグアノシン、N2−メチルグアノシン、N2,N2−ジメチルグアノシン、8−オキソ−グアノシン、7−メチル−8−オキソ−グアノシン、l−メチル−6−チオ−グアノシン、N2−メチル−6−チオ−グアノシン、及びN2,N2−ジメチル−6−チオ−グアノシンが挙げられる。
【0186】
幾つかの実施形態では、ヌクレオチドは、主溝面で修飾されてよく、ウラシルのC−5における水素をメチル基又はハロ基で置換することを含んでよい。
【0187】
特定の実施形態では、修飾されたヌクレオシドは、5’−O−(1−チオホスフェート)−アデノシン、5’−O−(1−チオホスフェート)−シチジン、5’−O−(1−チオホスフェート)−グアノシン、5’−O−(1−チオホスフェート)−ウリジン、又は5’−O−(1−チオホスフェート)−シュードウリジンである。
【0188】
更に特定の実施形態では、人工核酸分子、好ましくは、RNA分子は、6−アザ−シチジン、2−チオ−シチジン、アルファ−チオ−シチジン、シュード−イソ−シチジン、5−アミノアリル−ウリジン、5−ヨード−ウリジン、N1−メチル−シュードウリジン、5,6−ジヒドロウリジン、アルファ−チオ−ウリジン、4−チオ−ウリジン、6−アザ−ウリジン、5−ヒドロキシ−ウリジン、デオキシ−チミジン、5−メチル−ウリジン、ピロロ−シチジン、イノシン、アルファ−チオ−グアノシン、6−メチル−グアノシン、5−メチル−シチジン、8−オキソ−グアノシン、7−デアザ−グアノシン、N1−メチル−アデノシン、2−アミノ−6−クロロ−プリン、N6−メチル−2−アミノ−プリン、シュード−イソ−シチジン、6−クロロ−プリン,N6−メチル−アデノシン、アルファ−チオ−アデノシン、8−アジド−アデノシン、7−デアザ−アデノシンから選択されるヌクレオシド修飾を含んでいてよい。
【0189】
脂質修飾:
更なる実施形態によれば、本明細書に定義する人工核酸分子、好ましくはRNAは、脂質修飾を含有してよい。かかる脂質修飾されたRNAは、典型的に、本明細書に定義するRNAを含む。かかる脂質修飾された本明細書に定義するRNA分子は、典型的に、そのRNA分子と共有結合する少なくとも1つのリンカーと、それぞれのリンカーと共有結合する少なくとも1つの脂質とを更に含む。或いは、脂質修飾されたRNA分子は、本明細書に定義する少なくとも1つのRNA分子と、そのRNA分子と(リンカー無しで)共有結合する少なくとも1つの(二官能性)脂質とを含む。第3の代替例によれば、脂質修飾されたRNA分子は、本明細書に定義する人工核酸分子、好ましくはRNA分子と、そのRNA分子と共有結合する少なくとも1つのリンカーと、それぞれのリンカーと共有結合する少なくとも1つの脂質とを含み、また、そのRNA分子と(リンカー無しで)共有結合する少なくとも1つの(二官能性)脂質も含む。この状況では、脂質修飾は、直鎖状RNA配列の末端に存在することが特に好ましい。
【0190】
修飾されたRNAの5’末端の修飾:
本発明の別の好ましい実施形態によれば、本明細書に定義する人工核酸分子、好ましくはRNA分子は、所謂「5’キャップ」構造の付加によって修飾してよい。
5’−キャップは、一般的に、成熟mRNAの5’−末端に「蓋をする」実体、典型的には、修飾されたヌクレオチド実体である。5’−キャップは、典型的に、修飾されたヌクレオチド、特に、グアニンヌクレオチドの誘導体によって形成され得る。好ましくは、5’−キャップは、5’−5’−三リン酸結合を介して5’−末端に結合する。5’−キャップは、メチル化されていてもよく、例えば、m7GpppN(式中、Nは、5’−キャップを有する核酸の5’末端のヌクレオチド、典型的に、RNAの5’末端である)である。m7GpppNは、ポリメラーゼIIによって転写されたmRNA中に天然に存在する5’−キャップ構造であり、したがって、本発明に係る修飾RNAに含まれる修飾とはみなされない。これは、本発明に係る人工核酸分子、好ましくはRNA分子は、5’−キャップとしてm7GpppNを含んでよいが、更に、人工核酸分子、好ましくはRNA分子は、本明細書に定義する少なくとも1つの更なる修飾を含む。
【0191】
5’−キャップ構造の更なる例としては、グリセリル、逆転デオキシ非塩基残基(部分)、4’,5’メチレンヌクレオチド、1−(ベータ−D−エリトロフラノシル)ヌクレオチド、4’−チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド、1,5−アンヒドロヘキシトールヌクレオチド、L−ヌクレオチド、アルファ−ヌクレオチド、修飾塩基ヌクレオチド、トレオ−ペントフラノシルヌクレオチド、非環式3’,4’−セコヌクレオチド、非環式3,4−ジヒドロキシブチルヌクレオチド、非環式3,5ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、3’−3’−逆転ヌクレオチド部分、3’−3’−逆転非塩基部分、3’−2’−逆転ヌクレオチド部分、3’−2’−逆転非塩基部分、1,4−ブタンジオールホスフェート、3’−ホスホロアミデート、ヘキシルホスフェート、アミノヘキシルホスフェート、3’−ホスフェート、3’ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、又は架橋若しくは非架橋メチルホスホネート部分が挙げられる。これら修飾5’−キャップ構造は、本発明に係る人工核酸分子、好ましくはRNA分子に含まれる少なくとも1つの修飾としてみなされる。
【0192】
特に好ましい修飾5’−キャップ構造は、CAP1(m7Gに隣接するヌクレオチドのリボースのメチル化)、CAP2(m7Gの下流の2番目のヌクレオチドのリボースのメチル化)、CAP3(m7Gの下流の3番目のヌクレオチドのリボースのメチル化)、CAP4(m7Gの下流の4番目のヌクレオチドのリボースのメチル化)、ARCA(抗リバースCAPアナログ、修飾ARCA(例えば、ホスホチオエート修飾ARCA)、イノシン、N1−メチル−グアノシン、2’−フルオロ−グアノシン、7−デアザ−グアノシン、8−オキソ−グアノシン、2−アミノ−グアノシン、LNA−グアノシン、及び2−アジド−グアノシンである。
【0193】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのオープンリーディングフレームは、治療用タンパク質又はペプチドをコードしている。別の実施形態では、抗原は、病原性抗原、腫瘍抗原、アレルギー抗原、又は自己免疫抗原等、少なくとも1つのオープンリーディングフレームによってコードされている。ここでは、抗原が関与する疾患に対する遺伝子ワクチン接種アプローチにおいて、前記抗原をコードする人工核酸分子の投与を用いる。
【0194】
別の実施形態では、抗体は、本発明に係る人工核酸分子の少なくとも1つのオープンリーディングフレームによってコードされている。
【0195】
抗原:
病原性抗原:
本発明に係る人工核酸分子は、病原性抗原又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含むタンパク質又はペプチドをコードしていてよい。かかる病原性抗原は、病原性生物、特に、細菌、ウイルス、又は原生動物(多細胞)の病原性生物に由来し、これらは、被験体、具体的には、哺乳類被験体、より具体的には、ヒトにおいて免疫反応を誘発する。より具体的には、病原性抗原は、好ましくは、ウイルス又は細菌又は原生動物の表面に位置する表面抗原、例えば、タンパク質(又はタンパク質の断片、例えば、表面抗原の外側部分)である。
【0196】
病原性抗原は、好ましくは感染性疾患に関連する病原体に由来するペプチド又はタンパク質抗原であり、好ましくは、以下の病原体に由来する抗原から選択される:アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、アナプラズマ(Anaplasma)属、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム(Anaplasma phagocytophilum)、ブラジル鉤虫(Ancylostoma braziliense)、ズビニ鉤虫(Ancylostoma duodenale)、溶血性アルカノバクテリア(Arcanobacterium haemolyticum)、回虫(Ascaris lumbricoides)、アスペルギルス(Aspergillus)属、アストロウイルス(Astroviridae)科、バベシア(Babesia)属、炭疽菌(Bacillus anthracis)、セレウス菌(Bacillus cereus)、ヘンセラ菌(Bartonella henselae)、BKウイルス、ブラストシスチス・ホミニス(Blastocystis hominis)、ブラストマイセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、ボレリア(Borrelia)属、ボレリア(Borrelia)属の種、ブルセラ(Brucella)属、マレー糸状虫(Brugia malayi)、ブニヤウイルス(Bunyaviridae)科、セパシア菌(Burkholderia cepacia)及び他のバークホルデリア(Burkholderia)属の種、鼻疽菌(Burkholderia mallei)、類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)、カリシウイルス(Caliciviridae)科、カンピロバクター(Campylobacter)属、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ(Candida)属の種、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、肺炎クラミジア(Chlamydophila pneumoniae)、オウム病クラミジア(Chlamydophila psittaci)、CJDプリオン、肝臓ジストマ(Clonorchis sinensis)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、クロストリジウム(Clostridium)属の種、破傷風菌(Clostridium tetani)、コクシジオイデス(Coccidioides)属の種、コロナウイルス、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、Q熱コクシエラ(Coxiella burnetii)、クリミア−コンゴ出血熱ウイルス、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)属、サイトメガロウイルス(CMV)、デングウイルス(DEN−1、DEN−2、DEN−3、及びDEN−4)、二核アメーバ(Dientamoeba fragilis)、エボラウイルス(EBOV)、エキノコックス(Echinococcus)属、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)、エーリキア・エウィンギイ(Ehrlichia ewingii)、エーリキア(Ehrlichia)属、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、エンテロコッカス(Enterococcus)属、エンテロウイルス(Enterovirus)属、エンテロウイルス、主にコクサッキーAウイルス及びエンテロウイルス71(EV71)、エピデルモフィトン(Epidermophyton)属の種、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、大腸菌(Escherichia coli)O157:H7、O111、及びO104:H4、肝蛭(Fasciola hepatica)及び巨大肝蛭(Fasciola gigantica)、FFIプリオン、フィラリア(Filarioidea)上科、フラビウイルス、野兎病菌(Francisella tularensis)、フゾバクテリウム(Fusobacterium)属、ゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum)、ランブル鞭毛虫(Giardia intestinalis)、顎口虫(Gnathostoma)属の種、GSSプリオン、グアナリトウイルス、デュクレー菌(Haemophilus ducreyi)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、ヘニパウイルス(ヘンドラウイルス、ニパーウイルス)、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス1及び2(HSV−1及びHSV−2))、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、ホルタエ・ウェルネッキー(Hortaea werneckii)、ヒトボカウイルス(HBoV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)及びヒトヘルペスウイルス7(HHV−7)、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPIV)、日本脳炎ウイルス、JCウイルス、フニンウイルス、キンゲラ・キンゲ(Kingella kingae)、クレブシエラ・グラヌロマチス(Klebsiella granulomatis)、クーループリオン、ラッサウイルス、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、リーシュマニア(Leishmania)属、レプトスピラ(Leptospira)属、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、マチュポウイルス、マラセジア(Malassezia)属の種、マールブルグウイルス、麻疹ウイルス、横川吸虫(Metagonimus yokagawai)、微胞子虫(Microsporidia)門、伝染性軟属腫ウイルス(MCV)、流行性耳下腺炎ウイルス、らい菌(Mycobacterium leprae)及びマイコバクテリウム・レプロマトシス(Mycobacterium lepromatosis)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)、肺炎マイコプラスマ(Mycoplasma pneumoniae)、ネグレリア・フォーレリ(Naegleria fowleri)、アメリカ鉤虫(Necator americanus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、ノカルジア・アステロイデス(Nocardia asteroides)、ノカルジア(Nocardia)属の種、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)、オリエンティア・ツツガムシ(Orientia tsutsugamushi)、オルソミクソウイルス(Orthomyxoviridae)科(インフルエンザ)、ブラジルパラコクシジオイデス(Paracoccidioides brasiliensis)、肺吸虫(Paragonimus)属の種、ヴェステルマン肺吸虫(Paragonimus westermani)、パルボウイルスB19、パスツレラ(Pasteurella)属、プラスモディウム(Plasmodium)属、ニューモシスチス肺炎菌(Pneumocystis jirovecii)、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、RSウイルス(RSV)、鼻炎ウイルス、ライノウイルス、痘瘡リケッチア(Rickettsia akari)、リケッチア(Rickettsia)属、発疹チフスリケッチア(Rickettsia prowazekii)、斑点熱リケッチア(Rickettsia rickettsii)、発疹熱リケッチア(Rickettsia typhi)、リフトバレー熱ウイルス、ロタウイルス、風疹ウイルス、サビアウイルス(Sabia virus)、サルモネラ(Salmonella)属、ヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)、SARSコロナウイルス、住血吸虫(Schistosoma)属、赤痢菌(Shigella)属、シンノンブルウイルス、ハンタウイルス、スポロトリックス・シェンキィ(Sporothrix schenckii)、ブドウ球菌(Staphylococcus)属、ブドウ球菌(Staphylococcus)属、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、糞線虫(Strongyloides stercoralis)、テニア(Taenia)属、有鉤条虫(Taenia solium)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)、イヌ回虫(Toxocara canis)又はネコ回虫(Toxocara cati)、トキソプラズマ・ゴンヂ(Toxoplasma gondii)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、旋毛虫(Trichinella spiralis)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、白癬菌(Trichophyton)属の種、ヒト鞭虫(Trichuris trichiura)、トリパノソーマ・ブルーセイ(Trypanosoma brucei)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、大痘瘡又は小痘瘡、vCJDプリオン、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、コレラ菌(Vibrio cholerae)、西ナイルウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、バンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)、黄熱病ウイルス、腸炎エルシニア(Yersinia enterocolitica)、ペスト菌(Yersinia pestis)、及び偽結核エルジニア菌(Yersinia pseudotuberculosis)。
【0197】
この状況では、インフルエンザウイルス、RSウイルス(RSV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、プラスモディウム、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、デングウイルス、トラコーマクラミジア、サイトメガロウイルス(CMV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、結核菌、狂犬病ウイルス、及び黄熱病ウイルスから選択される病原体由来の抗原が特に好ましい。
【0198】
腫瘍抗原:
更なる実施形態では、本発明に係る人工核酸分子は、タンパク質又はペプチドをコードしてよく、前記タンパク質又はペプチドは、腫瘍抗原、前記腫瘍抗原の断片、変異体、又は誘導体を含むペプチド又はタンパク質を含み、好ましくは、前記腫瘍抗原は、メラニン形成細胞特異的抗原、癌−精巣抗原、及び腫瘍特異的抗原、好ましくは、CT−X抗原、非X CT抗原、CT−X抗原の結合パートナー、非X CT抗原の結合パートナー、又は腫瘍特異的抗原、より好ましくは、CT−X抗原、非X CT抗原の結合パートナー、又は腫瘍特異的抗原、或いは前記腫瘍抗原の断片、変異体、又は誘導体であり;前記核酸配列は、それぞれ、異なるペプチド又はタンパク質をコードし;前記核酸配列の少なくとも1つは、以下をコードしている:5T4、707−AP、9D7、AFP、AlbZIP HPG1、アルファ−5−ベータ−1−インテグリン、アルファ−5−ベータ−6−インテグリン、アルファ−アクチニン−4/m、アルファ−メチルアシル補酵素Aラセマーゼ、ART−4、ARTC1/m、B7H4、BAGE−1、BCL−2、bcr/abl、ベータ−カテニン/m、BING−4、BRCA1/m、BRCA2/m、CA15−3/CA27−29、CA19−9、CA72−4、CA125、カルレチクリン、CAMEL、CASP−8/m、カテプシンB、カテプシンL、CD19、CD20、CD22、CD25、CDE30、CD33、CD4、CD52、CD55、CD56、CD80、CDC27/m、CDK4/m、CDKN2A/m、CEA、CLCA2、CML28、CML66、COA−1/m、コアクトシン様タンパク質、collage XXIII、COX−2、CT−9/BRD6、Cten、サイクリンB1、サイクリンD1、cyp−B、CYPB1、DAM−10、DAM−6、DEK−CAN、EFTUD2/m、EGFR、ELF2/m、EMMPRIN、EpCam、EphA2、EphA3、ErbB3、ETV6−AML1、EZH2、FGF−5、FN、Frau−1、G250、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE7b、GAGE−8、GDEP、GnT−V、gp100、GPC3、GPNMB/m、HAGE、HAST−2、ヘプシン、Her2/neu、HERV−K−MEL、HLA−A*0201−R17I、HLA−A11/m、HLA−A2/m、HNE、ホメオボックスNKX3.1、HOM−TES−14/SCP−1、HOM−TES−85、HPV−E6、HPV−E7、HSP70−2M、HST−2、hTERT、iCE、IGF−1R、IL−13Ra2、IL−2R、IL−5、未成熟ラミニン受容体、カリクレイン−2、カリクレイン−4、Ki67、KIAA0205、KIAA0205/m、KK−LC−1、K−Ras/m、LAGE−A1、LDLR−FUT、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A6、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A12、MAGE−B1、MAGE−B2、MAGE−B3、MAGE−B4、MAGE−B5、MAGE−B6、MAGE−B10、MAGE−B16、MAGE−B17、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−D1、MAGE−D2、MAGE−D4、MAGE−E1、MAGE−E2、MAGE−F1、MAGE−H1、MAGEL2、マンマグロビンA、MART−1/melan−A、MART−2、MART−2/m、基質タンパク質22、MC1R、M−CSF、ME1/m、メソテリン、MG50/PXDN、MMP11、MN/CA IX−抗原、MRP−3、MUC−1、MUC−2、MUM−1/m、MUM−2/m、MUM−3/m、ミオシンクラスI/m、NA88−A、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ−V、Neo−PAP、Neo−PAP/m、NFYC/m、NGEP、NMP22、NPM/ALK、N−Ras/m、NSE、NY−ESO−1、NY−ESO−B、OA1、OFA−iLRP、OGT、OGT/m、OS−9、OS−9/m、オステオカルシン、オステオポンチン、p15、p190マイナー bcr−abl、p53、p53/m、PAGE−4、PAI−1、PAI−2、PAP、PART−1、PATE、PDEF、Pim−1−キナーゼ、Pin−1、Pml/Parアルファ、POTE、PRAME、PRDX5/m、プロステイン、プロテイナーゼ−3、PSA、PSCA、PSGR、PSM、PSMA、PTPRK/m、RAGE−1、RBAF600/m、RHAMM/CD168、RU1、RU2、S−100、SAGE、SART−1、SART−2、SART−3、SCC、SIRT2/m、Sp17、SSX−1、SSX−2/HOM−MEL−40、SSX−4、STAMP−1、STEAP−1、サバイビン、サバイビン−2B、SYT−SSX−1、SYT−SSX−2、TA−90、TAG−72、TARP、TEL−AML1、TGFベータ、TGFベータRII、TGM−4、TPI/m、TRAG−3、TRG、TRP−1、TRP−2/6b、TRP/INT2、TRP−p8、チロシナーゼ、UPA、VEGFR1、VEGFR−2/FLK−1、WT1、及びリンパ血球の免疫グロブリンイディオタイプ又はリンパ血球のT細胞受容体イディオタイプ、或いは前記腫瘍抗原の断片、変異体、又は誘導体;好ましくは、サバイビン又はそのホモログ、MAGEファミリー又はその結合パートナー由来の抗原、或いは前記腫瘍抗原の断片、変異体、又は誘導体。この状況では、腫瘍抗原NY−ESO−1、5T4、MAGE−C1、MAGE−C2、サバイビン、Muc−1、PSA、PSMA、PSCA、STEAP 及びPAPが特に好ましい。
【0199】
好ましい実施形態では、人工核酸分子は、タンパク質又はペプチドをコードし、前記タンパク質又はペプチドは、治療用タンパク質、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む。
【0200】
本明細書に定義する治療用タンパク質は、任意の遺伝性疾患若しくは後天性疾患の治療に有益であるか、又は個体の症状を改善するペプチド又はタンパク質である。特に、治療用タンパク質は、数ある機能の中でも、遺伝子エラーを修正及び修復し、癌細胞又は病原体感染細胞を破壊し、免疫系疾患を治療し、代謝性疾患又は内分泌疾患を治療することができる治療剤の作製において重要な役割を果たす。例えば、タンパク質ホルモンであるエリスロポイエチン(EPO)は、腎臓合併症の一般的な原因である赤血球欠乏の患者の治療において利用することができる。更に、アジュバントタンパク質、治療用抗体も治療用タンパク質に含まれ、また、例えば閉経期の女性の治療において用いられるホルモン補充療法も含まれる。より最近のアプローチでは、患者の体細胞を用いて、前記体細胞の多能性幹細胞へのリプログラムが行われている。これは、論争になっている幹細胞療法に取って代わるものである。また、体細胞のリプログラム又は幹細胞の分化に用いられるこれらタンパク質も、本明細書では治療用タンパク質として定義される。更に、治療用タンパク質は、例えば、創傷治癒、組織再生、血管形成等の他の目的のために用いることもできる。更に、抗原特異的B細胞受容体、並びにこれらの断片及び変異体が、本明細書において治療用タンパク質として定義される。
【0201】
したがって、治療用タンパク質は、遺伝性疾患であるか後天性疾患であるかにかかわらず、例えば、感染性疾患、新生物(例えば、癌又は腫瘍疾患)、血液及び造血器官の疾患、内分泌疾患、栄養疾患、代謝性疾患、神経系の疾患、循環系の疾患、呼吸器系の疾患、消化器系の疾患、皮膚及び皮下組織の疾患、筋骨格系及び結合組織の疾患、並びに尿生殖器系の疾患等の様々な疾患の治療を含む様々な目的のために使用することができる。
【0202】
この状況では、特に代謝性疾患又は内分泌疾患の治療において用いることができる特に好ましい治療用タンパク質は、以下から選択される(括弧内は、治療用タンパク質が治療で用いられる具体的な疾患である):酸性スフィンゴミエリナーゼ(ニーマン−ピック病)、アジポタイド(肥満)、アガルシダーゼ−ベータ(ヒトガラクトシダーゼA)(ファブリー病;腎臓及び心血管系合併症を引き起こす可能性のある脂質の蓄積を防ぐ)、アルグルコシダーゼ(ポンペ病(II型糖原病))、アルファ−ガラクトシダーゼA(アルファ−GAL A、アガルシダーゼアルファ)(ファブリー病)、アルファ−グルコシダーゼ(糖原病(GSD)、ポンぺ病)、アルファ−L−イズロニダーゼ(ムコ多糖症(MPS)、ハーラー症候群、シャイエ症候群)、アルファ−N−アセチルグルコサミニダーゼ(サンフィリポ症候群)、アンフィレグリン(癌、代謝性疾患)、アンジオポエチン((Ang1、Ang2、Ang3、Ang4、ANGPTL2、ANGPTL3、ANGPTL4、ANGPTL5、ANGPTL6、ANGPTL7)(血管新生、脈管を安定化させる)、ベータセルリン(代謝性疾患)、ベータ−グルクロニダーゼ(スライ症候群)、骨形成タンパク質BMP(BMP1、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP10、BMP15)(再生効果、骨関連症状、慢性腎疾患(CKD))、CLN6タンパク質(CLN6疾患−不定型遅発性小児型、遅発性異型、早発性若年型、神経セロイドリポフスチン症(NCL))、上皮成長因子(EGF)(創傷治癒、細胞の成長、増殖、及び分化の制御)、エピゲン(代謝性疾患)、エピレギュリン(代謝性疾患)、線維芽細胞成長因子(FGF、FGF−1、FGF−2、FGF−3、FGF−4、FGF−5、FGF−6、FGF−7、FGF−8、FGF−9、FGF−10、FGF−11、FGF−12、FGF−13、FGF−14、FGF−16、FGF−17、FGF−17、FGF−18、FGF−19、FGF−20、FGF−21、FGF−22、FGF−23)(創傷治癒、血管新生、内分泌疾患、組織再生)、ガルスルファーゼ(ムコ多糖症VI)、グレリン(過敏性腸症候群(IBS)、肥満、プラダー−ウィリー症候群、II型糖尿病)、グルコセレブロシダーゼ(ゴーシェ病)、GM−CSF(再生効果、白血球の産生、癌)、ヘパリン結合EGF様成長因子(HB−EGF)(創傷治癒、心臓肥大、並びに心臓の発生及び機能)、肝細胞成長因子HGF(再生効果、創傷治癒)、ヘプシジン(鉄代謝障害、ベータ−サラセミア)、ヒトアルブミン(アルブミン産生の減少(低タンパク血症)、アルブミン喪失の増加(ネフローゼ症候群)、血液量減少、高ビリルビン血症)、イズルスルファーゼ(イズロン酸−2−スルファターゼ)(ムコ多糖症II(ハンター症候群))、インテグリンαVβ3、αVβ5、及びα5β1(マトリクス高分子及びプロテイナーゼに結合、血管新生)、イズロン酸スルファターゼ(ハンター症候群)、ラロニダーゼ(ハーラー型及びハーラー−シャイエ型のムコ多糖症I)、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ(rhASB;ガルスルファーゼ、アリールスルファターゼA(ARSA)、アリールスルファターゼB(ARSB))(アリールスルファターゼB欠乏症、マロトー−ラミー症候群、ムコ多糖症VI)、N−アセチルグルコサミン−6−スルファターゼ(サンフィリポ症候群)、神経成長因子(NGF、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、及びニューロトロフィン4/5(NT−4/5)(再生効果、心血管疾患、冠状動脈アテローム性硬化症、肥満、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、急性冠状動脈症候群、痴呆、鬱病、統合失調症、自閉症、レット症候群、神経性食欲不振症、神経性過食症、創傷治癒、皮膚潰瘍、角膜潰瘍、アルツハイマー病)、ニューレグリン(NRG1、NRG2、NRG3、NRG4)(代謝性疾患、統合失調症)、ニューロピリン(NRP−1、NRP−2)(血管新生、軸索ガイダンス、細胞生存、遊走)、オベスタチン(過敏性腸症候群(IBS)、肥満、プラダー−ウィリー症候群、II型糖尿病)、血小板由来成長因子(PDGF(PDFF−A、PDGF−B、PDGF−C、PDGF−D)(再生効果、創傷治癒、血管新生の障害、動脈硬化症、線維症、癌)、TGFベータ受容体(エンドグリン、TGF−ベータ1受容体、TGF−ベータ2受容体、TGF−ベータ3受容体)(腎線維症、腎疾患、糖尿病、最後には末期腎疾患(ESRD)、血管新生)、トロンボポイエチン(THPO)(巨核球増殖発達因子(MGDF))(血小板疾患、輸血用血小板、骨髄抑制療法後の血小板数の回復)、トランスフォーミング成長因子(TGF(TGF−アルファ、TGF−ベータ(TGFベータ1、TGFベータ2、及びTGFベータ3)))(再生効果、創傷治癒、免疫、癌、心疾患、糖尿病、マルファン症候群、ロイス−ディーズ症候群)、VEGF(VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−E、VEGF−F、及びPIGF)(再生効果、血管新生、創傷治癒、癌、透過性)、ネシリチド(急性非代償性鬱血性心不全)、トリプシン(褥創、静脈瘤性潰瘍、焼痂デブリードマン、裂創、日焼け、胎便性イレウス)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)(「アディソン病、小細胞癌、副腎白質ジストロフィー、先天性副腎過形成、クッシング症候群、ネルソン症候群、点頭てんかん)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)(内分泌疾患)、コレシストキニン(多様)、ガストリン(高ガストリン血症)、レプチン(糖尿病、高トリグリセリド血症、肥満)、オキシトシン(母乳栄養を刺激、分娩の非進行)、ソマトスタチン(カルチノイド症候群の対症療法、急性静脈瘤出血、及び先端巨大症、肝臓及び腎臓の多嚢胞性疾患、先端巨大症、及び神経内分泌腫瘍によって引き起こされる症状)、バソプレシン(抗利尿ホルモン)(尿崩症)、カルシトニン(閉経後骨粗鬆症、高カルシウム血症、パジェット病、骨転移、幻肢痛、脊椎管狭窄症)、エクセナチド(メトホルミン及びスルホニルウレアによる治療に対して抵抗性である2型糖尿病)、成長ホルモン(GH)、ソマトトロピン(GH欠乏又は慢性腎不全による成長不全、プラダー−ウィリー症候群、ターナー症候群、抗ウイルス療法によるAIDS消耗又は悪液質)、インスリン(糖尿病、糖尿病性ケトアシドーシス、高カリウム血症)、インスリン様成長因子1 IGF−1(GH遺伝子欠損又は重症原発性IGF1欠乏の小児における成長不全、神経変性疾患、心血管疾患、心不全)、メカセルミンリンファベート、IGF−1アナログ(GH遺伝子欠損又は重症原発性IGF1欠乏の小児における成長不全、神経変性疾患、心血管疾患、心不全)、メカセルミン、IGF−1アナログ(GH遺伝子欠損又は重症原発性IGF1欠乏の小児における成長不全、神経変性疾患、心血管疾患、心不全)、ペグビソマント(先端巨大症)、プラムリンタイド(糖尿病、インスリンと組み合わせる)、テリパラチド(ヒト副甲状腺ホルモン残基1−34)(重症骨粗鬆症)、ベカプレルミン(糖尿病性潰瘍のデブリードマン補助)、ジボテルミン−アルファ(骨形成タンパク質2)(脊椎固定術、骨損傷修復)、酢酸ヒストレリン(性腺刺激ホルモン放出ホルモン;GnRH)(早発思春期)、オクトレオチド(先端巨大症、VIP分泌線腫及び転移カルチノイド腫瘍の症状緩和)、及びパリフェルミン(ケラチノサイト成長因子;KGF)(化学療法を受けている患者における重症口腔粘膜炎、創傷治癒)。
【0203】
これら及び他のタンパク質は、内因的に産生される欠陥のある機能的タンパク質を十分な量置き換えることによって被験体を治療することを意味するので、治療用であると理解される。したがって、かかる治療用タンパク質は、典型的に、哺乳類、特にヒトのタンパク質である。
【0204】
血液疾患、循環系の疾患、呼吸器系の疾患、癌若しくは腫瘍疾患、感染性疾患、又は免疫不全の治療のために、以下の治療用タンパク質を用いてよい:アルテプラーゼ(組織プラスミノーゲン活性化因子;tPA)(肺塞栓症、心筋梗塞、急性虚血発作、中心静脈アクセス装置の閉塞)、アニストレプラーゼ(血栓溶解)、抗トロンビンIII(AT−III)(遺伝性AT−III欠乏、血栓塞栓症)、ビバリルジン(冠状動脈形成術における血液凝固リスクの低減及びヘパリン誘発性血小板減少症)、ダルベポエチン−アルファ(慢性腎機能不全及び慢性腎不全の患者における貧血の治療(+/−透析))、ドロトレコギン−アルファ(活性化プロテインC)(死亡のリスクが高い重症敗血症)、エリスロポイエチン、エポエチン−アルファ、エリスロポエチン、エリスロポイエチン(慢性疾患の貧血、脊髄形成異常症、腎不全又は化学療法による貧血、術前調製)、第IX因子(血友病B)、第VIIa因子(血友病A又はBの患者における出血、及び第VIII因子又は第IX因子の阻害剤)、第VIII因子(血友病A)、レピルジン(ヘパリン誘発性血小板減少症)、プロテインC濃縮物(静脈血栓、電撃性紫斑病)、レテプラーゼ(tPAの欠損変異体)(急性心筋梗塞の管理、心室機能の改善)、ストレプトキナーゼ(急性貫壁性心筋梗塞、肺塞栓症、深部静脈血栓、動脈血栓又は塞栓症、動静脈カニューレの閉塞)、テネクテプラーゼ(急性心筋梗塞)、ウロキナーゼ(肺塞栓症)、アンギオスタチン(癌)、抗CD22免疫毒素(再発性CD33+急性骨髄性白血病)、デニロイキンジフチトクス(皮膚T細胞リンパ腫(CTCL))、イムノシアニン(膀胱及び前立腺癌)、MPS(メタロパンスチムリン)(癌)、アフリバーセプト(非小細胞肺癌(NSCLC)、転移性結直腸癌(mCRC)、ホルモン抵抗性転移性前立腺癌、滲出型黄斑変性症)、エンドスタチン(癌、関節リウマチ等の炎症性疾患に加えてクローン病、糖尿病性網膜症、乾癬、及び子宮内膜症)、コラゲナーゼ(慢性皮膚潰瘍及び重篤な焼損領域のデブリードマン、デュピュイトラン拘縮、ペイロニー病)、ヒトデオキシリボヌクレアーゼI、ドルナーゼ(嚢胞性線維症;FVCが40%超と予測される選択された患者における気道感染症の減少)、ヒアルロニダーゼ(注入された薬物、特に眼科手術における麻酔薬及び特定のイメージング剤の吸収及び分散を増加させる補助剤として使用される)、パパイン(壊死組織のデブリードマン、又は褥瘡、静脈瘤性潰瘍及び糖尿病性潰瘍、火傷、術後創、毛巣嚢胞創傷、癰、及び他の創傷等の急性及び慢性病変における瘡蓋の液化)、L−アスパラギナーゼ(急性リンパ性白血病、増殖に内因性アスパラギンを必要とする)、Peg−アスパラギナーゼ(急性リンパ性白血病、増殖に内因性アスパラギンを必要とする)、ラスブリカーゼ(腫瘍崩壊症候群を引き起こす可能性のある抗癌療法を受けている白血病、リンパ腫、及び固形腫瘍の小児患者)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)(生殖補助)、ヒト卵胞刺激ホルモン(FSH)(生殖補助)、ルトロピン−アルファ(黄体形成ホルモン欠乏による不妊)、プロラクチン(低プロラクチン血症、血清プロラクチン欠乏、女性の卵巣機能不全、不安症、動脈性勃起不全、精液早漏、乏精子症、精子無力症、精嚢の機能低下、男性の低アンドロゲン症)、アルファ−1−プロテイナーゼ阻害剤(先天性抗トリプシン欠乏症)、ラクターゼ(ラクトースを消化できないことによるガス、膨満感、痙攣、及び下痢)、膵臓酵素(リパーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ)(嚢胞性線維症、慢性膵炎、膵不全、ビルロートII法胃バイパス手術後、膵管閉塞、脂肪便、消化不良、ガス、膨満感)、アデノシンデアミナーゼ(ウシペガデマーゼ、PEG−ADA)(アデノシンデアミナーゼ欠乏による重症複合免疫不全症)、アバタセプト(関節リウマチ(特に、TNFアルファ阻害に対して不応である場合))、アレファセプト(尋常性乾癬)、アナキンラ(関節リウマチ)、エタネルセプト(関節リウマチ、多関節型若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、尋常性乾癬、強直性脊椎炎)、インターロイキン−1(IL−1)受容体アンタゴニスト、アナキンラ(関節リウマチに関連する炎症及び軟骨分解)、チムリン(神経変性疾患、リウマチ、神経性食欲不振症)、TNF−アルファアンタゴニスト(関節リウマチ、強直性脊椎炎、クローン病、乾癬、化膿性汗腺炎、難治性喘息等の自己免疫疾患)、エンフビルチド(HIV−1感染症)、及びチモシンα1(B型肝炎及びC型肝炎)。(括弧内は、治療用タンパク質が治療で用いられる具体的な疾患である)。
【0205】
更なる態様では、本発明は、
a.オープンリーディングフレーム(ORF)及び/又は例えば、オープンリーディングフレーム若しくはオープンリーディングフレームを含む配列を挿入するためのクローニングサイトと、
b.リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRに由来する核酸配列を含む少なくとも1つの3’−非翻訳領域エレメント(3’−UTRエレメント)と
を含むベクターを提供する。
【0206】
少なくとも1つの3’−UTRエレメント及びORFは、本発明に係る人工核酸分子について上記する通りである。クローニングサイトは、オープンリーディングフレームを導入するのに好適な任意の配列又はオープンリーディングフレームを含む配列、例えば、1以上の制限酵素部位等であってよい。したがって、クローニングサイトを含むベクターは、好ましくは、オープンリーディングフレームをベクターに挿入するのに好適である。好ましくは、オープンリーディングフレームを3’−UTRエレメントの5’側に挿入するのに好適である。好ましくは、クローニングサイト又はORFは、好ましくは3’−UTRエレメントの5’末端に近接して、3’−UTRエレメントの5’側に位置する。例えば、クローニングサイト又はORFは、3’−UTRエレメントの5’末端に直接連結していてもよく、本発明に係る人工核酸分子について上記した通り一続きのヌクレオチド(例えば、一続きの2ヌクレオチド、4ヌクレオチド、6ヌクレオチド、8ヌクレオチド、10ヌクレオチド、20ヌクレオチド等)を介して連結していてもよい。
【0207】
好ましくは、本発明に係るベクターは、例えば、任意でオープンリーディングフレーム又はオープンリーディングフレームを含む配列をベクターに挿入し、前記ベクターを転写することによって、本発明に係る人工核酸分子を作製するのに、好ましくは、本発明に係る人工mRNAを作製するのに好適である。したがって、好ましくは、ベクターは、プロモーター(例えば、RNAポリメラーゼプロモーター)等の転写に必要なエレメントを含む。好ましくは、ベクターは、真核生物、原核生物、ウイルス若しくはファージの転写系(例えば、真核細胞、原核細胞等)、又は真核生物、原核生物、ウイルス、若しくはファージのインビトロ転写系を用いる転写に好適である。したがって、例えば、ベクターは、RNAポリメラーゼ等のポリメラーゼ(例えば、真核生物、原核生物、ウイルス、又はファージのRNAポリメラーゼ)によって認識されるプロモーター配列を含んでいてよい。好ましい実施形態では、ベクターは、SP6、T3、又はT7等のファージRNAポリメラーゼプロモーター、好ましくはT7プロモーターを含む。好ましくは、ベクターは、ファージに基づくインビトロ転写系(例えば、T7RNAポリメラーゼに基づくインビトロ転写系等)を用いるインビトロ転写に好適である。
【0208】
別の好ましい実施形態では、ベクターは、コードされているペプチド又はタンパク質を細胞又は組織で発現させるために直接用いてよい。この目的のために、ベクターは、例えば、CMVプロモーター等の特定のプロモーター配列等、その細胞/組織における発現に必須の特定のエレメントを含む。
【0209】
ベクターは、本発明に係る人工核酸分子について上記した通りポリ(A)配列及び/又はポリアデニル化シグナルを更に含んでいてよい。
【0210】
ベクターは、RNAベクターであってもよく、DNAベクターであってもよい。好ましくは、ベクターは、DNAベクターである。ベクターは、ウイルスベクター又はプラスミドベクター等の当業者に公知の任意のベクターであってよい。好ましくは、ベクターは、プラスミドベクター、好ましくはDNAプラスミドベクターである。
【0211】
好ましい実施形態では、本発明に係るベクターは、本発明に係る人工核酸分子を含む。
【0212】
1つの実施形態では、本発明に係るDNAベクターは、配列番号10〜配列番号115に係る核酸配列等、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの核酸配列に対して少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、又は少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、更により好ましくは少なくとも約99%、最も好ましくは100%の同一性を有する核酸配列を含む。
【0213】
好ましくは、本発明に係るDNAベクターは、配列番号1、配列番号3に係る配列、若しくは配列番号7と相補的な配列、又は配列番号1、配列番号3、配列番号7に係る核酸配列に対して少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、更により好ましくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列、又は上記これらの断片、好ましくはこれらの機能的断片を含む。
【0214】
好ましくは、本発明に係るRNAベクターは、配列番号2、配列番号4、配列番号7に係る配列、又は配列番号2、配列番号4、配列番号7に係る核酸配列に対して少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、更により好ましくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列、又はこれらの断片、好ましくはこれらの機能的断片を含む。
【0215】
好ましくは、ベクターは、環状分子である。好ましくは、ベクターは、二本鎖DNA分子等の二本鎖分子である。かかる環状の、好ましくは二本鎖のDNA分子は、本発明の人工核酸分子の保管形態として便利に用いることができる。更に、細胞、例えば培養細胞のトランスフェクションに用いることができる。また、本発明に係る人工RNA分子を得るためのインビトロ転写に用いることができる。
【0216】
好ましくは、ベクター、好ましくは環状ベクターは、例えば、制限酵素で切断することによって線形にすることができる。好ましい実施形態では、ベクターは、3’−UTRエレメントの直ぐ3’側、又は(存在する場合)ポリ(A)配列若しくはポリアデニル化シグナルの3’側、又は(存在する場合)ポリ(C)配列の3’側、又は(存在する場合)ヒストンステムループの3’側に位置する制限酵素部位等の切断部位、好ましくは唯一の切断部位を含む。したがって、好ましくは、ベクターの線形化によって得られる生成物は、3’末端において、3’−UTRエレメントの3’末端、又は(存在する場合)ポリ(A)配列若しくはポリアデニル化シグナルの3’末端、又は(存在する場合)ポリ(C)配列の3’末端で終結する。本発明に係るベクターが、本発明に係る人工核酸分子を含む実施形態では、制限酵素部位、好ましくは唯一の制限酵素部位が、人工核酸分子の3’末端の直ぐ3’側に位置することが好ましい。
【0217】
更なる態様では、本発明は、本発明に係る人工核酸分子又は本発明に係るベクターを含む細胞に関する。前記細胞は、細菌細胞、昆虫細胞、植物細胞、脊椎動物細胞、例えば哺乳類細胞等の任意の細胞であってよい。前記細胞は、例えば、細菌細胞において本発明のベクターを複製するために用いることができる。更に、前記細胞は、本発明に係る人工核酸分子若しくはベクターを転写するため、及び/又は本発明に係る人工核酸分子若しくはベクターのオープンリーディングフレームを翻訳するために用いることができる。例えば、前記細胞は、組み換えタンパク質を産生するために用いることができる。
【0218】
本発明に係る細胞は、例えば、標準的なトランスフェクション、形質移入、又は形質転換の方法等の標準的な核酸移入法によって得ることができる。例えば、本発明に係る人工核酸分子又はベクターは、エレクトロポレーション、(例えば、カチオン性脂質及び/又はリポソームに基づく)リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ナノ粒子に基づくトランスフェクション、ウイルスに基づくトランスフェクション、又はカチオン性ポリマー(例えば、DEAE−デキストラン又はポリエチレンイミン等)に基づくトランスフェクション等によって細胞に移入してよい。
【0219】
好ましくは、前記細胞は、哺乳類細胞、例えば、ヒト被験体、家畜、実験動物(例えば、マウス又はラット)の細胞等である。好ましくは、前記細胞は、ヒトの細胞である。前記細胞は、確立されている細胞株の細胞、例えば、CHO、BHK、293T、COS−7、HELA、HEK等であってもよく、一次細胞、例えば、ヒト皮膚線維芽(HDF)細胞等であってもよい。好ましくは、生物から単離された細胞である。好ましい実施形態では、前記細胞は、哺乳類の被験体、好ましくはヒトの被験体の単離細胞である。例えば、前記細胞は、好ましくは哺乳類の被験体、好ましくはヒトの被験体の免疫細胞(例えば、樹状細胞)、癌細胞若しくは腫瘍細胞、又は任意の体細胞等であってよい。
【0220】
更なる態様では、本発明は、本発明に係る人工核酸分子、本発明に係るベクター、又は本発明に係る細胞を含む医薬組成物を提供する。本発明に係る医薬組成物は、例えば、遺伝子ワクチン接種用のワクチンとして用いてよい。したがって、ORFは、ワクチン接種のために患者に投与される抗原をコードしていてよい。したがって、好ましい実施形態では、本発明に係る医薬組成物は、ワクチンである。更に、本発明に係る医薬組成物は、例えば、遺伝子治療に用いることができる。
【0221】
好ましくは、医薬組成物は、更に、1以上の薬学的に許容できるビヒクル、希釈剤、及び/又は賦形剤、及び/又は1以上の補助剤を含んでいてよい。本発明では、薬学的に許容できるビヒクルは、典型的に、本発明の医薬組成物用の液体又は非液体の基剤を含む。1つの実施形態では、医薬組成物は、液体形態で提供される。これに関連して、前記ビヒクルは、好ましくは、パイロジェンフリー水、等張生理食塩水又は緩衝(水)溶液、例えば、リン酸、クエン酸等のバッファ溶液等の水に基づく。バッファは、特定のレファレンス媒体に対して高張、等張、又は低張であってよい。即ち、前記バッファは、特定のレファレンス媒体に対してより高い、同一の、又はより低い塩含量を有してよく、好ましくは、浸透圧又は他の濃度効果により哺乳類細胞を損傷させない濃度の前述の塩を用いてよい。レファレンス媒体は、例えば、血液、リンパ液、サイトゾル液、又は他の体液等の「インビボ」法で用いられる液体であるか、或いは一般的なバッファ若しくは液体等の「インビトロ」法でレファレンス媒体として用いることができる液体である。かかる一般的なバッファ又は液体は、当業者に公知である。乳酸リンゲル液が、液体基剤として特に好ましい。
【0222】
本発明の医薬組成物のために、患者に投与するのに適している1以上の相溶性の固体又は液体の充填剤又は希釈剤、或いは封入化合物を同様に用いてもよい。用語「相溶性」とは、本明細書で使用するとき、好ましくは、典型的な使用条件下で本発明の医薬組成物の薬学的有効性を実質的に低減させる相互作用が生じないように、本発明の医薬組成物のこれら成分と本明細書に定義する本発明の人工核酸、ベクター、又は細胞とを混合できることを意味する。
【0223】
本発明に係る医薬組成物は、任意で、1以上の更なる医薬活性成分を更に含んでいてよい。これに関連して医薬活性成分とは、特定の適応症又は疾患を治癒させる、寛解させる、又は予防する治療効果を示す化合物である。前記化合物としては、限定するものではないが、ペプチド又はタンパク質、核酸、(治療的に活性のある)低分子量の有機化合物又は無機化合物(分子量:5,000未満、好ましくは1,000未満)、糖類、抗原又は抗体、関連技術において既に知られている治療剤、抗原細胞、抗原細胞断片、細胞画分、細胞壁成分(例えば、多糖類)、(例えば、化学的に又は放射線照射により)改変、弱毒化、又は不活化された病原体(ウイルス、細菌等)等が挙げられる。
【0224】
更に、本発明の医薬組成物は、人工核酸分子又はベクター用の担体を含んでいてよい。かかる担体は、医薬的に活性のある人工核酸分子又はベクターの生理学的に許容できる液体への溶解、輸送及び細胞内取り込みを媒介するのに好適であり得る。したがって、かかる担体は、本発明に係る人工核酸分子又はベクターのデポー製剤及び送達に好適であり得る成分であってよい。かかる成分は、例えば、トランスフェクション剤又は複合体化剤として機能し得るカチオン性又はポリカチオン性の担体又は化合物であってよい。
【0225】
これに関連して、特に好ましいトランスフェクション剤又は複合体化剤は、カチオン性又はポリカチオン性の化合物であり、例えば、プロタミン、ヌクレオリン、スペルミン若しくはスペルミジン、又は他のカチオン性のペプチド又はタンパク質(例えば、ポリ−L−リシン(PLL)、ポリアルギニン、塩基性ポリペプチド、細胞透過性ペプチド(CPP)(HIV結合ペプチド、HIV−1 Tat(HIV)、Tat由来ペプチド、ペネトラチン、VP22由来ペプチド又はアナログペプチドを含む)、HSV VP22(単純ヘルペス)、MAP、KALA、又はタンパク質形質導入ドメイン(PTD)、PpT620、プロリンリッチペプチド、アルギニンリッチペプチド、リシンリッチペプチド、MPG−ペプチド、Pep−1、L−オリゴマー、カルシトニンペプチド、アンテナペディア由来ペプチド(特にショウジョウバエのアンテナペディア由来)、pAntp、pIsl、FGF、ラクトフェリン、トランスポータン、ブフォリン−2、Bac715−24、SynB、SynB(1)、pVEC、hCT由来ペプチド、SAP、又はヒストン)が挙げられる。
【0226】
更に、かかるカチオン性又はポリカチオン性の化合物又は担体は、好ましくは少なくとも1つの−SH部分を含むか又は含むように更に改変されているカチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質であってよい。好ましくは、カチオン性又はポリカチオン性の担体は、以下の合計式(I)を有するカチオン性ペプチドから選択される:
{(Arg);(Lys);(His);(Orn);(Xaa)};式(I)
(式中、l+m+n+o+xは、3〜100であり、l、m、n、又はoは、互いに独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21〜30、31〜40、41〜50、51〜60、61〜70、71〜80、81〜90、及び91〜100から選択される任意の数であるが、但し、Arg(アルギニン)、Lys(リジン)、His(ヒスチジン)及びOrn(オルニチン)の総含量は、オリゴペプチドの全アミノ酸の少なくとも10%であり;Xaaは、Arg、Lys、His又はOrnを除くネイティブ(即ち、自然界に存在する)又は非ネイティブなアミノ酸から選択される任意のアミノ酸であり;xは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21〜30、31〜40、41〜50、51〜60、61〜70、71〜80、81〜90から選択される任意の数であるが、但し、Xaaの総含量は、オリゴペプチドの全アミノ酸の90%を超えない)。アミノ酸Arg、Lys、His、Orn、及びXaaはいずれも、ペプチドの任意の位置に位置してよい。これに関連して、7アミノ酸〜30アミノ酸のカチオン性ペプチド又はタンパク質が特に好ましい。
【0227】
更に、カチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質は、上に示す通り、式{(Arg);(Lys);(His);(Orn);(Xaa)}(式(I))に従って定義され、少なくとも1つの−SH部分を含むか又は含むように更に改変されているとき、限定されるものではないが、部分式(Ia)から選択してよい:
{(Arg);(Lys);(His);(Orn);(Xaa’)(Cys)} 部分式(Ia)
(式中、(Arg);(Lys);(His);(Orn);及びxは、本明細書に定義する通りであり、Xaa’は、Arg、Lys、His、Orn、又はCysを除くネイティブ(即ち、自然界に存在する)又は非ネイティブなアミノ酸から選択される任意のアミノ酸であり、yは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21〜30、31〜40、41〜50、51〜60、61〜70、71〜80、81〜90から選択される任意の数であるが、但し、Arg(アルギニン)、Lys(リジン)、His(ヒスチジン)及びOrn(オルニチン)の総含量は、オリゴペプチドの全アミノ酸の少なくとも10%である)。更に、カチオン性又はポリカチオン性のペプチドは、部分式(Ib)から選択してよい:
Cys{(Arg);(Lys);(His);(Orn);(Xaa)}Cys 部分式(Ib)
(式中、経験式{(Arg);(Lys);(His);(Orn);(Xaa)}(式(III))は、本明細書に定義する通りであり、(半経験)式(III)に係るアミノ酸配列のコアを形成し、Cys及びCysは、(Arg);(Lys);(His);(Orn);(Xaa)に近接するか又は末端に存在するシステインである)。
【0228】
トランスフェクション剤又は複合体化剤として用いることができる更に好ましいカチオン性又はポリカチオン性の化合物は、カチオン性多糖類(例えば、キトサン)、ポリブレン、カチオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン(PEI))、カチオン性脂質(例えば、DOTMA:[1−(2,3−シオレイルオキシ)プロピル)]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド、DMRIE、ジ−C14−アミジン、DOTIM、SAINT、DC−Chol、BGTC、CTAP、DOPC、DODAP、DOPE:ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、DOSPA、DODAB、DOIC、DMEPC、DOGS:ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン、DIMRI:ジミリスト−オキシプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、DOTAP:ジオレオイルオキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン、DC−6−14:O,O−ジテトラデカノイル−N−( −トリメチルアンモニオアセチル)ジエタノールアミンクロリド、CLIP1:rac−[(2,3−ジオクタデシルオキシプロピル)(2−ヒドロキシエチル)]−ジメチルアンモニウムクロリド、CLIP6:rac−[2(2,3−ジヘキサデシルオキシプロピル−オキシメチルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム、CLIP9:rac−[2(2,3−ジヘキサデシルオキシプロピル−オキシスクシニルオキシ)エチル]−トリメチルアンモニウム、オリゴフェクタミン、又はカチオン性若しくはポリカチオン性のポリマー(例えば、−アミノ酸ポリマー又は逆ポリアミド等の修飾ポリアミノ酸;PVP(ポリ(N−エチル−4−ビニルピリジニウムブロミド))等の修飾ポリエチレン;pDMAEMA(ポリ(ジメチルアミノエチルメチルメタクリレート))等の修飾アクリレート;pAMAM(ポリ(アミドアミン))等の修飾アミドアミン;ジアミン末端修飾1,4ブタンジオールジアクリレート−co−5−アミノ−1−ペンタノールポリマー等の修飾ポリベータアミノエステル(PBAE);ポリプロピルアミンデンドリマー又はpAMAM系デンドリマー等のデンドリマー;PEI:ポリ(エチレンイミン)、ポリ(プロピレンイミン)等のポリイミン;ポリアリルアミン;シクロデキストリン系ポリマー、デキストラン系ポリマー、キトサン等の糖骨格系ポリマー;PMOXA−PDMSコポリマー等のシラン骨格系ポリマー)、1以上のカチオン性ブロック(例えば、上述のカチオン性ポリマーから選択される)と1以上の親水性又は疎水性のブロックとの組み合わせからなるブロックポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)等を含んでいてよい。
【0229】
別の実施形態によれば、本発明に係る医薬組成物は、医薬組成物の免疫賦活性を増強するために、アジュバントを含んでよい。この状況では、アジュバントは、本発明に係る医薬組成物に含まれる人工核酸分子又はベクター等の成分の投与及び送達を支援するのに好適な任意の化合物として理解してよい。更に、かかるアジュバントは、理論に束縛されるものではないが、自然免疫系の免疫応答、即ち、非特異的免疫応答を開始又は増大させることができる。言い換えれば、投与したとき、本発明に係る医薬組成物は、典型的に、人工核酸分子によってコードされている抗原に対する適応免疫応答を開始させる。更に、本発明に係る医薬組成物は、本発明に定義するアジュバントを本発明に係る医薬組成物に添加することにより、(支持的)自然免疫応答を発生させることができる。
【0230】
かかるアジュバントは、当業者に公知であり且つ本発明の場合に好適な、即ち、哺乳類における免疫応答の誘導を支援する任意のアジュバントから選択してよい。好ましくは、アジュバントは、TDM、MDP、ムラミルジペプチド、プルロニック、アルム溶液、水酸化アルミニウム、ADJUMER(登録商標)(ポリホスファゼン)、リン酸アルミニウムゲル、藻類由来のグルカン、アルガミュリン(algammulin)、水酸化アルミニウムゲル(アルム)、高タンパク質吸着性水酸化アルミニウムゲル、低粘度水酸化アルミニウムゲル、AF又はSPT(スクアレン(5%)、Tween80(0.2%)、Pluronic L121(1.25%)、リン酸緩衝生理食塩水のエマルジョン、pH7.4)、AVRIDINE(商標)(プロパンジアミン)、BAY R1005(登録商標)((N−(2−デオキシ−2−L−ロイシルアミノ−b−D−グルコピラノシル)−N−オクタデシル−ドデカノイル−アミドヒドロアセテート)、CALCITRIOL(商標)(1−アルファ,25−ジヒドロキシ−ビタミンD3)、リン酸カルシウムゲル、CAP(商標)(リン酸カルシウムナノ粒子)、コレラホロトキシン、コレラ毒素A1−プロテインA−D断片融合タンパク質、コレラ毒素のBサブユニット、CRL1005(ブロックコポリマーP1205)、サイトカイン含有リポソーム、DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド)、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)、DMPC(ジミリストイルホスファチジルコリン)、DMPG(ジミリストイルホスファチジルグリセロール)、DOC/アルム複合体(デオキシコール酸ナトリウム塩)、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、ガンマイヌリン、Gerbuアジュバント(以下の混合物:i)N−アセチルグルコサミニル−(P1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−Dグルタミン(GMDP)、ii)ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド(DDA)、iii)亜鉛L−プロリン塩複合体(ZnPro−8))、GM−CSF)、GMDP(N−アセチルグルコサミニル−(β1−4)−N−アセチルムラミル−Lアラニル−D−イソグルタミン)、イミキモド(imiquimod)(1−(2−メチプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン)、ImmTher(商標)(N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−イソGlu−L−Ala−グリセロールジパルミテート)、DRV類(脱水−再水和小胞から調製した免疫リポソーム)、インターフェロン−ガンマ、インターロイキン−1ベータ、インターロイキン−2、インターロイキン−7、インターロイキン−12、ISCOMS(商標)、ISCOPREP7.0.3.(商標)、リポソーム、LOXORIBINE(商標)(7−アリル−8−オキソグアノシン)、LT経口アジュバント(大腸菌(E.coli)不安定内毒素プロトキシン)、任意の組成物のミクロスフェア及びミクロ粒子、MF59(商標)、(スクアレン水エマルジョン)、MONTANIDE ISA51(商標)(精製不完全フロイントアジュバント)、MONTANIDE ISA720(商標)(代謝可能油アジュバント)、MPL(商標)(3−Q−デスアシル−4’−モノホスホリル脂質A)、MTP−PE及びMTP−PEリポソーム((N−アセチル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−(ヒドロキシホスホリルオキシ))−エチルアミド、一ナトリウム塩)、MURAMETIDE(商標)(Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3)、MURAPALMITINE(商標)及びDMURAPALMITINE(商標)(Nac−Mur−L−Thr−D−イソGln−sn−グリセロールジパルミトイル)、NAGO(ノイラミニダーゼ−ガラクトースオキシダーゼ)、任意の組成物のナノスフェア又はナノ粒子、NISV類(非イオン性界面活性剤小胞)、PLEURAN(商標)(ベータ−グルカン)、PLGA、PGA及びPLA(乳酸及びグリコール酸のホモポリマー及びコポリマー、ミクロスフェア/ナノスフェア)、PLURONIC L121(商標)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PODDS(商標)(プロテイノイドミクロスフェア)、ポリエチレンカルバメート誘導体、ポリ−rA:ポリ−rU(ポリアデニル酸−ポリウリジル酸複合体)、ポリソルベート80(Tween80)、渦巻き型タンパク質(Protein Cochleates)(Avanti Polar Lipids,Inc.(Alabaster、AL))、STIMULON(商標)(QS−21)、Quil−A(Quil−Aサポニン)、S−28463(4−アミノ−オテック−ジメチル−2−エトキシメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノール)、SAF−1(商標)(「Syntexアジュバント配合物」)、センダイプロテオリポソーム及びセンダイ含有脂質マトリックス、Span−85(トリオレイン酸ソルビタン)、Specol(Marcol52、Span85、及びTween85のエマルジョン)、スクアレン又はRobane(登録商標)(2,6,10,15,19,23−ヘキサメチルテトラコサン及び2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサン)、ステアリルチロシン(オクタデシルチロシンヒドロクロリド)、Theramid(登録商標)(N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−イソGlu−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド)、スレオニル−MDP(Termurtide(商標)又は[thr1]−MDP、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン)、Ty粒子(Ty−VLP又はウイルス様粒子);Walter−Reedリポソーム(水酸化アルミニウムに吸着させた脂質Aを含有するリポソーム)及びリポペプチド(Pam3Cysを含む)、特に、Adju−phos、Alhydrogel及びRehydragel等のアルミニウム塩;CFA、SAF、IFA、MF59、Provax、TiterMax、Montanide、Vaxfectinを含むエマルジョン;Optivax(CRL1005)、L121、及びPoloaxmer4010を含むコポリマー;Stealthを含むリポソーム、BIORALを含む渦巻き型のもの;QS21、Quil A、Iscomatrix、ISCOMを含む植物由来のアジュバント;トマチンを含む同時刺激に好適なアジュバント、PLG、PMM、及びイヌリンを含むバイオポリマー;Romurtideを含む微生物由来のペプチド、DETOX、MPL、CWS、マンノース、CpG核酸配列、CpG7909、ヒトTLR1−10のリガンド、マウスTLR1−13のリガンド、ISS−1018、IC31、イミダゾキノリン類、Ampligen、Ribi529、IMOxine、IRIV類、VLP類、コレラ毒素、易熱性毒素、Pam3Cys、フラジェリン、GPIアンカー、LNFPIII/Lewis X、抗菌ペプチド、UC−1V150、RSV融合タンパク質、cdiGMP、並びにCGRP神経ペプチドを含むアンタゴニストとして好適なアジュバントからなる群から選択してよいが、これらに限定されない。
【0231】
また、好適なアジュバントは、カチオン性又はポリカチオン性の化合物から選択してもよく、前記アジュバントは、好ましくは、医薬組成物の人工核酸分子又はベクターとカチオン性又はポリカチオン性の化合物とを複合体化させる際に調製される。医薬組成物の人工核酸分子又はベクターと本明細書に定義するカチオン性又はポリカチオン性の化合物とを会合又は複合体化させることにより、好ましくは、医薬組成物の人工核酸分子又はベクターにアジュバント特性が提供され、また、安定化効果が付与される。このように特に好ましいカチオン性又はポリカチオン性の化合物は、カチオン性又はポリカチオン性のペプチド又はタンパク質から選択され、例えば、以下が挙げられる:プロタミン、ヌクレオリン(nucleoline)、スペルミン又はスペルミジン、或いは他のカチオン性のペプチド又はタンパク質、例えば、ポリ−L−リジン(PLL)、ポリアルギニン、塩基性ポリペプチド、HIV結合ペプチドを含む細胞透過性ペプチド(CPP)、Tat、HIV−1 Tat(HIV)、Tat由来ペプチド、ペネトラチン、VP22由来又は類似のペプチド、HSV、VP22(単純ヘルペス)、MAP、KALA、又はタンパク質形質導入ドメイン(PTD、PpT620、プロリンリッチペプチド、アルギニンリッチペプチド、リジンリッチペプチド、MPGペプチド、Pep−1、L−オリゴマー、カルシトニンペプチド、アンテナペディア由来ペプチド(特に、ショウジョウバエアンテナペディア由来)、pAntp、pIsl、FGF、ラクトフェリン、トランスポータン、ブフォリン−2、Bac715−24、SynB、SynB(1)、pVEC、hCT由来ペプチド、SAP、プロタミン、スペルミン、スペルミジン、又はヒストン。更に好ましいカチオン性又はポリカチオン性の化合物は、例えばキトサン等のカチオン性多糖類、ポリブレン、例えばポリエチレンイミン(PEI)等のカチオン性ポリマー、例えばDOTMA:1−(2,3−シオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド等のカチオン性脂質、DMRIE、ジ−C14−アミジン、DOTIM、SAINT、DC−Chol、BGTC、CTAP、DOPC、DODAP、DOPE:ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、DOSPA、DODAB、DOIC、DMEPC、DOGS:ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン、DIMRI:ジミリスト−オキシプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、DOTAP:ジオレオイルオキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン、DC−6−14:O,O−ジテトラデカノイル−N−( −トリメチルアンモニオアセチル)ジエタノールアミンクロリド、CLIP1:rac−[(2,3−ジオクタデシルオキシプロピル)(2−ヒドロキシエチル)]−ジメチルアンモニウムクロリド、CLIP6:rac−[2(2,3−ジヘキサデシルオキシプロピル−オキシメチルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム、CLIP9:rac−[2(2,3−ジヘキサデシルオキシプロピル−オキシスクシニルオキシ)エチル]−トリメチルアンモニウム、オリゴフェクタミン、或いは、カチオン性又はポリカチオン性のポリマー、例えば、−アミノ酸ポリマー又は逆向きポリアミド等の修飾ポリアミノ酸、PVP(ポリ(N−エチル−4−ビニルピリジニウムブロミド))等の修飾ポリエチレン、pDMAEMA(ポリ(ジメチルアミノエチルメチルアクリレート))等の修飾アクリレート、pAMAM(ポリ(アミドアミン))等の修飾アミドアミン、ジアミン末端修飾1,4−ブタンジオールジアクリレート−コ−5−アミノ−1−ペンタノールポリマー等の修飾ポリベータ−アミノエステル(PBAE)、ポリプロピルアミンデンドリマー又はpAMAM系デンドリマー等のデンドリマー、PEI:ポリ(エチレンイミン)、ポリ(プロピレンイミン)等のポリイミン、ポリアリルアミン、シクロデキストリン系ポリマー、デキストラン系ポリマー及びキトサン等の糖骨格系ポリマー、PMOXA−PDMSコポリマー等のシラン骨格系ポリマー、1以上のカチオン性ブロック(例えば、上述のカチオン性ポリマーから選択される)及び1以上の親水性ブロック又は疎水性ブロック(例えば、ポリエチレングリコール)の組合せからなるブロックポリマー。
【0232】
更に、組成物の人工核酸分子又はベクター、好ましくはRNAを複合体化することによってアジュバントとして用いることができる好ましいカチオン性又はポリカチオン性のタンパク質又はペプチドは、以下の合計式(I):(Arg)l;(Lys)m;(His)n;(Orn)o;(Xaa)x(式中、l+m+n+o+x=8〜15であり、l、m、n又はoは、互いに独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15から選択される任意の数であるが、但し、Arg、Lys、His及びOrnの全体含量がオリゴペプチドの全アミノ酸の少なくとも50%を表し;Xaaは、Arg、Lys、His又はOrnを除くネイティブの(=天然)又は非ネイティブのアミノ酸から選択される任意のアミノ酸であってよく;xは、0、1、2、3又は4から選択される任意の数であってよいが、但し、Xaaの全体含量がオリゴペプチドの全アミノ酸の50%を超えない)を有する以下のタンパク質又はペプチドから選択してよい。この状況において特に好ましいオリゴアルギニンは、例えば、Arg7、Arg8、Arg9、Arg7、H3R9、R9H3、H3R9H3、YSSR9SSY、(RKH)4、及びY(RKH)2R等である。
【0233】
人工核酸分子又はベクターのカチオン性又はポリカチオン性の化合物に対する比は、核酸複合体全体の窒素/リン酸比(N/P比)に基づいて計算することができる。例えば、1μgのRNAは、RNAが塩基の統計的分布を示す場合、典型的に、約3nmolのリン酸残基を含有する。更に、1μgのペプチドは、塩基性アミノ酸の分子量及び数に依存して、典型的に、約xnmolの窒素残基を含有する。例示として(Arg)9(分子量:1,424g/mol、9窒素原子)について計算する場合、1μgの(Arg)9は、約700pmolの(Arg)9を含有するので、700×9=6,300pmol塩基性アミノ酸=6.3nmol窒素原子である。質量比約1:1のRNA/(Arg)9については、N/P比約2と計算することができる。例示として、2μgのRNAとの質量比が約2:1であるプロタミン(分子量:約4,250g/mol、21窒素原子、サケ由来のプロタミンを用いる場合)について計算する場合、RNAについて6nmolのリン酸を計算すべきであり、1μgのプロタミンは、約235pmolのプロタミン分子を含有するので、235×21=4,935pmol塩基性アミノ酸=4.9nmol窒素原子である。RNA/プロタミンの質量比が約2:1の場合、N/P比は約0.81と計算することができる。RNA/プロタミンの質量比が約8:1の場合、N/P比は約0.2と計算することができる。本発明の状況では、N/P比は、好ましくは、約0.1〜約10の範囲、好ましくは、約0.3〜約4の範囲、最も好ましくは約0.5〜約2の範囲であるか、又は複合体中の核酸:ペプチドの比に関しては0.7〜2の範囲、最も好ましくは、約0.7〜約1.5の範囲である。
【0234】
参照により本明細書に援用される国際公開第2010/037539号には、免疫賦活組成物及び免疫賦活組成物を調製する方法が記載されている。したがって、本発明の好ましい実施形態では、本発明に係る人工核酸分子の効率的な免疫賦活効果及び効率的な翻訳の両方を得るために、組成物は、2つの別々の工程で得られる。ここでは、所謂「アジュバント成分」は、第1の工程で、アジュバント成分の人工核酸分子又はベクター、好ましくはRNAとカチオン性又はポリカチオン性の化合物とを特定の比で複合体化させて、安定な複合体を形成することによって調製される。この状況では、核酸の複合体化後に、アジュバント成分中に遊離カチオン性又はポリカチオン性の化合物が存在しないか、又は無視できる程度に少ない量しか残っていないことが重要である。したがって、アジュバント成分中の核酸及びカチオン性又はポリカチオン性の化合物の比は、典型的に、核酸全部が複合体化され、且つ組成物中に遊離カチオン性又はポリカチオン性の化合物が存在しないか、又は無視できる程度に少ない量しか残らない範囲で選択される。好ましくは、アジュバント成分の比、即ち、核酸のカチオン性又はポリカチオン性の化合物に対する比は、約6:1(w/w)〜約0,25:1(w/w)、より好ましくは、約5:1(w/w)〜約0,5:1(w/w)、更により好ましくは、約4:1(w/w)〜約1:1(w/w)、又は約3:1(w/w)〜約1:1(w/w)、最も好ましくは約3:1(w/w)〜約2:1(w/w)の範囲から選択される。
【0235】
好ましい実施形態によれば、本発明の(免疫賦活)組成物を形成するために、本発明に係る人工核酸分子又はベクター、好ましくはRNAを、第2の工程で、アジュバント成分の複合体化核酸分子、好ましくはRNAに添加する。ここでは、本発明の人工酸分子又はベクター、好ましくはRNA分子は、遊離核酸、即ち、他の化合物によって複合体化されない核酸として添加される。添加前、遊離核酸分子又はベクターは複合体化されておらず、アジュバント成分を添加した際、任意の検出可能な又は著しい複合体化反応を受けないことが好ましい。
【0236】
好適なアジュバントは、更に、式(II):GlXmGn(式中、Gは、グアノシン、ウラシル、又はグアノシン若しくはウラシルのアナログであり;Xは、グアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジン、シトシン、又は上記ヌクレオチドのアナログであり;lは、1〜40の整数であり、l=1であるとき、Gは、グアノシン又はそのアナログであり、l>1であるとき、ヌクレオチドの少なくとも50%が、グアノシン又はそのアナログであり;mは、整数であり且つ少なくとも3であり、m=3であるとき、Xは、ウラシル又はそのアナログであり、m>3であるとき、少なくとも3つの連続するウラシル又はウラシルのアナログが存在し;nは、1〜40の整数であり、n=1であるとき、Gは、グアノシン又はそのアナログであり、n>1であるとき、ヌクレオチドの少なくとも50%が、グアノシン又はそのアナログである)を有する核酸から選択してよい。
【0237】
他の好適なアジュバントは、更に、式(III):ClXmCn(式中、Cは、シトシン、ウラシル、又はシトシン若しくはウラシルのアナログであり;Xは、グアノシン、ウラシル、アデノシン、チミジン、シトシン、又は上記ヌクレオチドのアナログであり;lは、1〜40の整数であり、l=1であるとき、Cは、シトシン又はそのアナログであり、l>1であるとき、ヌクレオチドの少なくとも50%が、シトシン又はそのアナログであり;mは、整数であり且つ少なくとも3であり、m=3であるとき、Xは、ウラシル又はそのアナログであり、m>3であるとき、少なくとも3つの連続するウラシル又はウラシルのアナログが存在し;nは、1〜40の整数であり、n=1であるとき、Cは、シトシン又はそのアナログであり、n>1であるとき、ヌクレオチドの少なくとも50%が、シトシン又はそのアナログである)を有する核酸から選択してよい。
【0238】
本発明に係る医薬組成物は、好ましくは、「安全且つ有効な量」の医薬組成物の成分、特に、本明細書に定義する本発明の人工核酸分子、ベクター、及び/又は細胞を含む。本明細書で使用するとき、「安全且つ有効な量」とは、本明細書に定義する疾患又は疾病の好ましい変化を著しく誘導するのに十分である量を意味する。しかし、同時に、「安全且つ有効な量」は、好ましくは、重篤な副作用を避け、且つ利益とリスクとの間の道理に適った関係を可能にする。これらの限度は、典型的に、道理に適った医学的判断の範囲内で決定される。
【0239】
更なる態様では、本発明は、医薬として、例えば(遺伝子ワクチン接種における)ワクチンとして、又は遺伝子治療において用いるための本発明に係る人工核酸分子、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物を提供する。
【0240】
本発明に係る人工核酸分子、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の治療作用又は効果を利用するか或いは特定のペプチド又はタンパク質の追加が必要である任意の医学的用途に特に好適である。したがって、本発明は、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の治療作用又は効果によって治療することができるか、或いは特定のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の追加によって治療することができる疾患又は疾病の治療又は予防において用いるための本発明に係る人工核酸分子、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物を提供する。例えば、本発明に係る人工核酸分子、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、例えば遺伝子ワクチン接種又は遺伝子治療によって、遺伝性疾患、自己免疫疾患、癌性又は腫瘍関連疾患、感染性疾患、慢性疾患等を治療又は予防するために用いることができる。
【0241】
特に、本発明の3’−UTRエレメントは、本発明の人工核酸分子又はベクターにコードされているペプチド又はタンパク質を安定的に長期に亘って発現させるので、治療を受ける被験体において治療用のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質が安定的に且つ長期に亘って存在することから利益を得るかかる治療的処置は、本発明に関連する医学的用途に特に好適である。したがって、本発明に係る人工核酸分子、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物に特に好適な医学的用途は、ワクチン接種である。したがって、本発明は、被験体、好ましくは哺乳類の被験体、より好ましくはヒトの被験体のワクチン接種のための本発明に係る人工核酸分子、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物を提供する。好ましいワクチン接種処理は、細菌、原生動物、又はウイルスによる感染症等の感染性疾患に対するワクチン接種、及び抗腫瘍ワクチン接種である。かかるワクチン接種処理は、予防的であってもよく、治療的であってもよい。
【0242】
治療又は予防される疾患に応じてORFを選択してよい。例えば、オープンリーディングフレームは、遺伝性疾患に罹患している患者等、タンパク質が完全に欠失しているか又は機能が少なくとも部分的に喪失している患者に供給すべきタンパク質をコードしていてよい。更に、オープンリーディングフレームは、被験体の疾患又は症状に有益な影響を与えるペプチド又はタンパク質をコードしているORFから選択してよい。更に、オープンリーディングフレームは、天然のペプチド若しくはタンパク質の病的過剰産生をダウンレギュレートするか又は病的にタンパク質若しくはペプチドを発現する細胞を除去するペプチド又はタンパク質をコードしていてもよい。かかる欠失、機能喪失、又は過剰産生は、例えば、腫瘍及び新生物、自己免疫疾患、アレルギー、感染症、慢性疾患等に関連して生じる場合がある。更に、オープンリーディングフレームは、抗原又は免疫原(例えば、病原体又は腫瘍抗原のエピトープ)をコードしていてよい。したがって、好ましい実施形態では、本発明に係る人工核酸分子又はベクターは、抗原又は免疫原(例えば、病原体又は腫瘍関連抗原のエピトープ)と、上記3’−UTRエレメント、及びポリ(A)配列等の任意の更なる成分とを含むか又はからなるアミノ酸配列をコードしているORFを含む。
【0243】
医学的用途に関連して、特に、ワクチン接種に関連して、DNAは、抗DNA免疫応答を誘発するリスクを有し且つゲノムDNAに挿入される傾向を有するので、本発明に係る人工核酸分子は、RNA、好ましくはmRNAであることが好ましい。しかし、幾つかの実施形態では、例えば、アデノウイルス送達ビヒクル等のウイルス送達ビヒクルを、例えば、遺伝子治療的処置において本発明に係る人工核酸分子又はベクターを送達するために用いる場合、人工核酸分子又はベクターがDNA分子であることが望ましい場合もある。
【0244】
本発明に係る人工核酸分子、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、直腸内に、経鼻的に、口腔内に、膣内に、埋め込まれたレザーバを介して、又はジェット注射を介して投与してよい。本明細書で使用するとき、非経口という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、基質内、鞘内、肝臓内、病変内、頭蓋内、経皮、皮内、肺内、腹腔内、手根内、動脈内、及び舌下への注射又は注入技術を含む。好ましい実施形態では、本発明に係る人工核酸分子、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、無針注射(例えば、ジェット注射)を介して投与される。
【0245】
好ましくは、本発明に係る人工核酸分子、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、非経口的に、例えば非経口注射によって投与され、より好ましくは、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、基質内、鞘内、肝臓内、病変内、頭蓋内、経皮、皮内、肺内、腹腔内、手根内、動脈内、及び舌下への注射又は注入技術を介して投与される。皮内及び筋肉内への注射が特に好ましい。本発明の医薬組成物の滅菌注射用形態は、水性又は油性の懸濁液であってよい。これら懸濁液は、好適な分散剤又は湿潤剤と懸濁化剤とを用いて当技術分野において公知の技術に従って製剤され得る。好ましくは、溶液又は懸濁液は、無針注射(例えば、ジェット注射)を介して投与される。
【0246】
また、本発明に係る人工核酸分子、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁剤、又は液剤が挙げられるがこれらに限定されない任意の経口的に許容できる剤形で経口投与してよい。
【0247】
また、本発明に係る人工核酸分子、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物は、例えば、皮膚又は任意の他のアクセス可能な上皮組織の疾患を含む、局所塗布によって容易にアクセス可能な領域又は器官が治療標的に含まれる場合は特に、局所投与してもよい。これら領域又は器官のそれぞれについて、好適な局所製剤は容易に調製される。局所塗布については、本発明に係る人工核酸分子、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物を、1以上の担体に懸濁又は溶解している好適な軟膏に製剤してよい。
【0248】
1つの実施形態では、医薬としての使用は、哺乳類細胞のトランスフェクション、好ましくは哺乳類細胞のインビトロ又はエクスビボトランスフェクション、より好ましくは前記医薬により治療される被験体の単離細胞のインビトロトランスフェクションの工程を含む。前記使用が単離細胞のインビトロトランスフェクションを含む場合、医薬としての使用は、トランスフェクトされた細胞を患者に再投与することを更に含んでいてよい。医薬としての本発明の人工核酸分子又はベクターの使用は、トランスフェクションに成功した単離細胞を選択する工程を更に含んでいてよい。したがって、ベクターが選択マーカーを更に含むことが有益である場合がある。また、前記医薬としての使用は、単離細胞のインビトロトランスフェクションと、前記細胞からの発現産物(即ち、コードされているペプチド又はタンパク質)の精製とを含んでいてよい。この精製ペプチド又はタンパク質は、後に、それを必要としている被験体に投与してよい。
【0249】
また、本発明は、上記疾患又は疾病を治療又は予防する方法であって、本発明に係る人工核酸分子、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、又は本発明に係る医薬組成物をそれを必要としている被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0250】
更に、本発明は、疾患又は疾病を治療又は予防する方法であって、本発明に係る人工核酸分子又は本発明に係るベクターで細胞をトランスフェクトすることを含む方法を提供する。トランスフェクションは、インビトロで実施してもよく、エクスビボで実施してもよく、インビボで実施してもよい。好ましい実施形態では、細胞のトランスフェクションは、インビボで実施され、トランスフェクトされた細胞は、それを必要としている被験体、好ましくはヒト被験体に投与される。好ましくは、インビトロでトランスフェクトされる細胞は、被験体、好ましくはヒト患者の単離細胞である。したがって、本発明は、被験体、好ましくはヒト患者から細胞を単離する工程と、本発明に係る人工核酸又は本発明に係るベクターで前記単離細胞をトランスフェクトする工程と、前記トランスフェクトされた細胞を前記被験体、好ましくは前記ヒト患者に投与する工程とを含む治療方法を提供する。
【0251】
本発明に係る疾患を治療又は予防する方法は、好ましくは、上記ワクチン接種方法又は遺伝子治療方法である。
【0252】
上記の通り、本発明の3’−UTRエレメントは、mRNA分子を安定化することができる並びに/又はmRNA分子からのタンパク質産生を増強、安定化及び/若しくは延長することができる。したがって、更なる態様では、本発明は、RNA分子(好ましくは、mRNA分子)を安定化させる方法であって、RNA分子(好ましくは、mRNA分子)又は前記RNA分子をコードしているベクターと、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR又はリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの変異体に由来する核酸配列を含むか又はからなる3’−UTRエレメント(好ましくは、上記3’−UTRエレメント)とを結合させる工程を含む方法に関する。
【0253】
更に、本発明は、人工核酸分子若しくはベクター(好ましくは、mRNA分子)からのタンパク質産生を増強、安定化及び/若しくは延長させる、並びに/又は人工核酸分子若しくはベクター(好ましくは、mRNA分子)からのタンパク質産生を安定化及び/若しくは延長する方法であって、前記人工核酸分子又はベクター(好ましくは、mRNA分子)と、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR又はリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの変異体に由来する核酸配列を含むか又はからなる3’−UTRエレメント(好ましくは、上記3’−UTRエレメント)とを結合させる工程を含む方法に関する。
【0254】
用語「人工核酸分子又はベクターと3’−UTRエレメントとを結合させる」とは、本発明において、好ましくは、人工核酸分子又はベクターと3’−UTRエレメントとを機能的に結合させるか又は機能的に組み合わせることを意味する。これは、人工核酸分子又はベクターと、3’−UTRエレメント(好ましくは、上記3’−UTRエレメント)とが、3’−UTRエレメントの機能(例えば、RNA及び/又はタンパク質の産生を安定化させる機能)が発揮されるように結合又はカップリングされることを意味する。典型的に、これは、3’−UTRエレメントが、人工核酸分子又はベクター(好ましくは、mRNA分子)の、オープンリーディングフレームの3’側、好ましくはオープンリーディングフレームの直ぐ3’側、好ましくはオープンリーディングフレームとポリ(A)配列又はポリアデニル化シグナルとの間に組み込まれることを意味する。好ましくは、3’−UTRエレメントは、人工核酸分子又はベクター(好ましくは、mRNA)に3’−UTRとして、即ち、前記3’−UTRエレメントが、前記人工核酸分子又はベクター(好ましくは、mRNA)の3’−UTRになるように、即ち、任意で短いリンカー(例えば、1以上の制限酵素部位を含むか又はからなる配列)を介して連結されている、オープンリーディングフレームの3’側からポリ(A)配列又はポリアデニル化シグナルの5’側まで延在するように組み込まれる。したがって、好ましくは、用語「人工核酸分子又はベクターと3’−UTRエレメントとを結合させる」とは、人工核酸分子又はベクター(好ましくは、mRNA分子)内に位置するオープンリーディングフレームと3’−UTRエレメントとを機能的に結合させることを意味する。3’−UTR及びORFは、本発明に係る人工核酸分子について上記した通りであり、例えば、好ましくは、ORFと3’−UTRとは、異種であり、例えば、上記の通り異なる遺伝子に由来する。
【0255】
更なる態様では、本発明は、RNA分子(好ましくは、mRNA分子)の安定性を上昇させるための3’−UTRエレメント(好ましくは、上記3’−UTRエレメント)の使用であって、前記3’−UTRエレメントが、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR又はリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの変異体に由来する核酸配列を含むか又はからなる使用を提供する。
【0256】
更に、本発明は、人工核酸分子又はベクター(好ましくは、mRNA分子)からのタンパク質産生を増加させるため、並びに/又は人工核酸分子又はベクター分子(好ましくは、mRNA分子)からのタンパク質産生を安定化及び/若しくは延長するための3’−UTRエレメント(好ましくは、上記3’−UTRエレメント)の使用であって、前記3’−UTRエレメントが、リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTR又はリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの変異体に由来する核酸配列を含むか又はからなる使用を提供する。
【0257】
本発明に係る使用は、好ましくは、人工核酸分子、ベクター、又はRNAと上記3’−UTRエレメントとを結合させることを含む。
【0258】
本発明の医薬組成物の化合物及び成分は、互いに独立して製造及び取引されてもよい。したがって、本発明は、更に、本発明に係る人工核酸分子、本発明に係るベクター、本発明に係る細胞、及び/又は本発明に係る医薬組成物を含むキット又はキットオブパーツに関する。好ましくは、かかるキット又はキットオブパーツは、更に、使用説明書と、トランスフェクション用の細胞と、アジュバントと、医薬組成物の投与手段と、人工核酸分子、ベクター、細胞、又は医薬組成物を溶解又は希釈するための薬学的に許容できる担体及び/又は薬学的に許容できる溶液とを含んでいてよい。
【実施例】
【0259】
1.DNAテンプレートの調製
T7プロモーター及びキタアメリカホタル(Photinus pyralis)ルシフェラーゼをコードしているGCリッチ配列(ppLuc(GC))を含有するインビトロ転写用ベクターを構築した。リボソームタンパク質ラージ32の5’非翻訳領域(5’−UTR)をPpLuc(GC)の5’側に挿入した。A64ポリ(A)配列と、それに続くC30及びヒストンステムループ配列をPpLuc(GC)の3’側に挿入した。ヒストンステムループの後には、インビトロ転写前にベクターを線形化するために用いられる制限酵素部位が続く。インビトロ転写によってこのベクターから得られたmRNAを、「rpl32−PpLuc(GC)−A64−C30−ヒストンSL」と命名する。
このベクターを、オープンリーディングフレームの3’側に非翻訳配列(3’−UTR)を含むように改変した。要約すると、以下のmRNAコード配列を含むベクターを作製した(mRNAコード配列の一部を図1〜3に例として示す)。
rpl32−PpLuc(GC)−A64−C30−ヒストンSL(配列番号8、図1
rpl32−PpLuc(GC)−ag−A64−C30−ヒストンSL(配列番号9、図2
rpl32−PpLuc(GC)−rps9−A64−C30−ヒストンSL(配列番号7、図3
rpl32−PpLuc(GC)−rps21−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rps29−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rps9−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rps27−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rps28−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rps19−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rpl35a−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rpl13−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rpl36−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rpl23a−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rpl23−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−uba52−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rpl22l1−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rpl36a−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rps4x−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rpl27−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rpl3−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rps23−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rps13−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rpl26−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rps17−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rps18−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−Fau−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rps13−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rpl11−A64−C30−ヒストンSL
rpl32−PpLuc(GC)−rpl38−A64−C30−ヒストンSL
【0260】
2.インビトロ転写
実施例1に係るDNAテンプレートを線形化し、T7−RNAポリメラーゼを用いてインビトロで転写した。次いで、DNAテンプレートをDNase処理によって分解した。mRNA転写産物は、過剰のN7−メチル−グアノシン−5’−トリホスフェート−5’−グアノシンを転写反応に添加することによって得られた5’−キャップ構造を含有していた。このようにして得られたmRNAを精製し、水に再懸濁させた。
【0261】
3.mRNAリポフェクションによるルシフェラーゼ発現
ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)細胞又はHeLa細胞を、培地(10%FCS、1%Pen/Strep、1%グルタミンを添加した、L−グルタミン及び25mM Hepes(Lonza,Basel,Switzerland)を含むRPMI1640培地)中1ウェル当たり3×10細胞の密度でトランスフェクションの3日間前に24ウェルプレートに播種した。リポフェクションの直前、細胞をOpti−MEMで洗浄した。Lipofectamine2000と複合体化した1ウェル当たり25ngのPpLucコードmRNAで、細胞をリポフェクトした。トランスフェクション効率を制御するために、ウミシイタケ(Renilla reniformis)ルシフェラーゼ(RrLuc)をコードしているmRNAをPpLuc mRNAと共にトランスフェクトした(1ウェル当たりRrLuc mRNA2.5ng)。トランスフェクション開始の90分間後、Opti−MEMを培地に交換した。トランスフェクションの6時間後、24時間後、48時間後、及び72時間後、培地を吸引し、細胞をリシスバッファ100μL(Passive Lysisバッファ、Promega)に溶解させた。ルシフェラーゼ活性を測定するまで溶解物を−80℃で保管した。
【0262】
4.ルシフェラーゼ測定
Hidex Chameleonプレートリーダーにおいて、ルシフェラーゼ活性を相対光単位(RLU)として測定した。溶解物20μL及びルシフェリンバッファ(Beetleジュース、PJK GmbH)50μLを用いて、2秒間の測定時間でPpLuc活性を測定した。溶解物20μL及びセレンテラジンバッファ(Renillaジュース、PJK GmbH)50μLを用いて、2秒間の測定時間でRrLuc活性を測定する。
【0263】
5.結果
5.1リボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRは、タンパク質発現を増加させる。
mRNAからのタンパク質発現に対するリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの影響を調べるために、様々なUTRを有するmRNAを合成した:3’−UTRを有しないmRNA、ヒトα−グロビン(ag)の3’−UTRの中央のα−複合体結合部分を含むmRNA、又はヒトリボソームタンパク質スモール9(rps9)の3’−UTRを含むmRNA。ルシフェラーゼをコードしているmRNAをヒト皮膚線維芽細胞(HDF)にトランスフェクトした。トランスフェクションの6時間後、24時間後、48時間後、及び72時間後にルシフェラーゼレベルを測定した。これらデータから、0時間〜72時間に発現した合計タンパク質を曲線下面積(AUC)として計算した(以下の表1及び図4を参照)。
【表38】
【0264】
ルシフェラーゼは、明らかに、3’−UTRを有しないmRNAから発現した。しかし、ルシフェラーゼ発現は、周知のα−グロビン3’−UTRによって増加しなかった。対照的に、リボソームタンパク質スモール9の3’−UTRは、ルシフェラーゼ発現を著しく増加させた。
【0265】
5.2 マウスリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRは、タンパク質発現を増加させる。
mRNAからのタンパク質発現に対するマウスリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの影響を調べるために、様々なUTRを有するmRNAを合成した:様々なマウスリボソームタンパク質(rps21、rps29、rps9、rps27、rps28、rps19、rpl35a、rpl13、rpl36、及びrpl23a)の3’−UTRを含むmRNA、及び比較のための、mRNAからのタンパク質発現を増加させることが知られている(国際公開第2013143698号)アルブミンの3’−UTRを含むmRNA。ルシフェラーゼをコードしているmRNAをヒト皮膚線維芽細胞(HDF)にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、48時間後、及び72時間後にルシフェラーゼレベルを測定した(以下の表2及び図6を参照)。
【表39】
【0266】
結果は、タンパク質産生を増加させることが既に報告されているアルブミンの3’−UTRを含むmRNAに比べて、マウスリボソームタンパク質の3’−UTRを含むmRNAからより多くのルシフェラーゼが発現したことを示す。
【0267】
5.3 マウスリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRは、タンパク質発現を増加させる。
mRNAからのタンパク質発現に対するマウスリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの影響を調べるために、様々なUTRを有するmRNAを合成した:様々なマウスリボソームタンパク質(rps21、rps29、rps9、rps27、rps28、rps19、rpl35a、rpl13、rpl36、及びrpl23a)の3’−UTRを含むmRNA、及び比較のためのアルブミンの3’−UTRを含むmRNA。ルシフェラーゼをコードしているmRNAをHeLa細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、48時間後、及び72時間後にルシフェラーゼレベルを測定した(以下の表3及び図7を参照)。
【表40】
【0268】
結果は、タンパク質産生を増加させることが既に報告されているアルブミンの3’−UTRを含むmRNAに比べて、マウスリボソームタンパク質の3’−UTRを含むmRNAからより多くのルシフェラーゼが発現したことを示す。
【0269】
5.4 マウスリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRは、タンパク質発現を増加させる。
mRNAからのタンパク質発現に対するマウスリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの影響を調べるために、様々なUTRを有するmRNAを合成した:様々なマウスリボソームタンパク質(rpl23、uba52、rpl22l1、rpl36a、rps4x、rpl27、rpl3、rps23、rps13、rpl26、rps17、rps18、rps8、Fau、rps13、rpl11及びrpl38)の3’−UTRを含むmRNA、及び比較のためのアルブミンの3’−UTRを含むmRNA。ルシフェラーゼをコードしているmRNAをヒト皮膚線維芽細胞(HDF)にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、48時間後、及び72時間後にルシフェラーゼレベルを測定した(以下の表4及び図8を参照)。
【表41】
【0270】
結果は、タンパク質産生を増加させることが既に報告されているアルブミンの3’−UTRを含むmRNAに比べて、マウスリボソームタンパク質の3’−UTRを含むmRNAからより多くのルシフェラーゼが発現したことを示す。
【0271】
5.5 マウスリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRは、タンパク質発現を増加させる。
mRNAからのタンパク質発現に対するマウスリボソームタンパク質遺伝子の3’−UTRの影響を調べるために、様々なUTRを有するmRNAを合成した:様々なマウスリボソームタンパク質(rpl23、uba52、rpl22l1、rpl36a、rps4x、rpl27、rpl3、rps23、rps13、rpl26、rps17、rps18、rps8、Fau、rps13、rpl11及びrpl38)の3’−UTRを含むmRNA、及び比較のためのアルブミンの3’−UTRを含むmRNA。ルシフェラーゼをコードしているmRNAをHeLa細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、48時間後、及び72時間後にルシフェラーゼレベルを測定した(以下の表5及び図9を参照)。
【表42】
【0272】
結果は、タンパク質産生を増加させることが既に報告されているアルブミンの3’−UTRを含むmRNAに比べて、マウスリボソームタンパク質の3’−UTRを含むmRNAからより多くのルシフェラーゼが発現したことを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]