(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
製品や素材等の性能や耐久性等を試験する装置として、環境試験装置がある。環境試験装置は、被試験物が載置される試験室を有し、この試験室内の温度や湿度を所望の試験環境に調整する機能を備えた装置である。試験室内は、被試験物の性能や耐久性等の評価を行うべく、低温環境に制御されたり、逆に高温環境に制御される場合がある。
【0003】
環境試験装置は、試験室内に外気と異なる環境を作り出す場合があるから、試験室は断熱壁で覆われている場合が多い。
また試験室は外部と遮断されていて空気の出入りが少ないことが好ましい。その一方で、試験室内に被試験物を出し入れする必要がある。そのため試験室には扉等が設けられている。
前記した様に、試験室は、外部と遮断されていて空気の出入りが少ないことが好ましいので、試験室の本体と扉の間には、シール部材が介在されている。シール部材は、高温や低温にさらされる場合があるので、劣化し易い場合がある。特許文献1には、シール部材の劣化を防止するため、試験室内の気体がシール部材側に流れ込むことを防止するための遮蔽部材が設けられた環境試験装置が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された環境試験装置は、試験室本体と扉部材を有している。試験室本体は、側壁と当該側壁に繋がる正面壁を有し、正面壁に開口が設けられている。
扉部材は外観が略板状であるが、試験室側の面に直方体形状の凸状部がある。具体的には、扉部材は、四角形の基部を備え、その基部の背面側(試験室側)に、凸状部が設けられた構成となっている。
特許文献1に開示された環境試験装置では、扉本体の凸状部が試験室本体の正面壁に設けられた開口に嵌まり込む。また扉本体の基部が、試験室本体の正面壁の外面にシール部材を介して接触する。即ち扉本体の試験室側の面であって、凸状部の周囲領域がシール部材を介して試験室本体の正面壁と接触する。
【0005】
特許文献1に開示された環境試験装置は、扉本体の凸状部の側面と、試験室本体の正面壁に設けられた開口の内壁との間に形成される隙間に、試験室内の気体が流れ込むことを防ぐことによって、試験室の本体と扉の隙間にあるシール部材側に高温の気体が流れ込むことを防止するものである。そのため特許文献1に開示された環境試験装置では、試験室本体の正面壁に設けられた開口の試験室内側の縁や、扉本体の凸状部の側面と正面壁に設けられた開口の内壁との間に形成される隙間内に遮蔽部材が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願人は、試験室本体の正面壁を無くし、側壁の端面が直接試験室本体の開口となる構造の環境試験装置を試作した。この構成によると、試験室の天面壁、左右側面壁及び底面壁の端面によって扉部材が当接する開口枠が構成される。
また試作した環境試験装置では、扉部材は、ヒンジによって試験室本体に取り付けられている。
試作した環境試験装置では、側壁の端面が扉部材との接触面となり、側壁の端面にシール部材がある。また扉部材側にもシール部材があり、扉部材側のシール部材は、側壁の端面と接する。
また試作した環境試験装置では、試験室内の環境が目標環境により早く到達する様に、従来よりも送風量が多い送風機を搭載した。
【0008】
この構造の環境試験装置を試運転したところ、ヒンジ取り付け側のシール性能は良好であり、当該辺からの空気漏れは殆ど確認することができなかった。
しかしながら、ヒンジ取り付け側に対して反対側の辺(以下、扉の自由端側辺)については、シール性が完璧とは言えなかった。
そのため試験室内を低温環境とすると、扉の自由端側辺から試験室内の冷気が漏れ、周囲に結露が生じる場合があるという問題があった。
この原因は、ヒンジ取り付け側は、ヒンジによって扉部材が試験室本体が引きつけられているのに対し、扉の自由端側辺は、扉のロック機構によって扉部材が試験室本体に引き寄せられているに過ぎないので、シール部材を押しつける力が弱いためであると予想される。
【0009】
試作した環境試験装置に、特許文献1の技術思想を応用すると仮定した場合、試験室本体の側壁と、扉部材の試験室側平面の間に形成される隙間の入り口部分に遮蔽部材を設けることとなる。しかしこの場合、遮蔽部材は、試験室の奥側から外部側に向かって突出することとなり、扉部材を閉じる際に扉部材が遮蔽部材に突き当たってしまう懸念がある。即ち扉部材の自由端側は、シール部材を介して試験室本体の側壁の端面と接しているので、扉部材の自由端側と、試験室本体との間の距離は一定とは言えない。そのため遮蔽部材の試験室本体の外側への突出長さが長いと、扉部材を閉じる際に、扉部材が遮蔽部材に突き当たってしまう場合がある。
逆に遮蔽部材の試験室本体の外側への突出長さが短いと、試験室本体の側壁と、扉部材の試験室側平面の間に形成される隙間を封鎖することができなくなってしまう場合がある。
【0010】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、試験室の密閉性能が優れた環境試験装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、試作した環境試験装置の試験室内の風の流れを調査した。その結果、送風機から吐出された送風の一部が、試験室本体の側壁の内壁に沿って流れ、試験室本体の開口部に到達して扉部材と衝突し、向きを変えて扉部材の表面に沿って流れ、側壁の端面と扉部材の間の隙間に流れることが判った。
【0012】
この知見に基づいて開発された態様は、被試験物を配置する試験室と、空調手段と、送風手段を有し、前記試験室は試験室本体と扉部材によって囲まれた空間の一部または全部の空間であり、試験室本体は、左右の側壁と天面壁と底面壁を有し、少なくとも一方の側壁の端面が開口枠の一部となって正面側が開口し、扉部材は、試験室本体の縦の一辺とヒンジで結合されていてヒンジ側を基端とし他端側を自由端として揺動し、少なくとも扉部材の自由端側が側壁の端面によって形成される開口枠と接して試験室本体の開口を閉鎖する環境試験装置において、扉部材が試験室本体の開口を閉塞した状態のとき、試験室内であって扉部材の自由端側が接する側の開口端の近傍に、側壁の内壁に対して交差する方向に立ち上がり、上下方向にのびる障害部材があることを特徴とする環境試験装置である。
同様の課題を解決するための態様は、被試験物を配置する試験室と、空調手段と、送風手段を有し、前記試験室は試験室本体と扉部材によって囲まれた空間の一部または全部の空間であり、前記試験室本体は、左右の側壁と天面壁と底面壁を有し、少なくとも一方の前記側壁の端面が開口枠の一部となって正面側が開口し、前記扉部材は、前記試験室本体の縦の一辺とヒンジで結合されていて当該ヒンジ側を基端とし他端側を自由端として揺動し、少なくとも前記自由端側が前記側壁の端面によって形成される開口枠と接して前記試験室本体の開口を閉鎖する環境試験装置において、前記扉部材が前記開口を閉塞した状態のとき、前記試験室内であって前記自由端側が接する側の開口端の近傍に、前記側壁の内壁に対して交差する方向に立ち上がり、上下方向にのびる障害部材があり、前記試験室本体の試験室構成部分内に、棚を設置するための棚受け部材があり、当該棚受け部材に前記障害部材が設けられていることを特徴とする環境試験装置である。
同様の課題を解決するためのさらにもう一つの態様は、被試験物を配置する試験室と、空調手段と、送風手段を有し、前記試験室は試験室本体と扉部材によって囲まれた空間の一部または全部の空間であり、前記試験室本体は、左右の側壁と天面壁と底面壁を有し、少なくとも一方の前記側壁の端面が開口枠の一部となって正面側が開口し、前記扉部材は、前記試験室本体の縦の一辺とヒンジで結合されていて当該ヒンジ側を基端とし他端側を自由端として揺動し、少なくとも前記自由端側が前記側壁の端面によって形成される開口枠と接して前記試験室本体の開口を閉鎖する環境試験装置において、
前記試験室は、前記送風手段の送風を吹き出す空気吹き出し部を有し、前記扉部材が前記開口を閉塞した状態のとき、前記試験室内であって前記自由端側が接する側の開口端の近傍に障害部材があり、前記障害部材が、前記側壁の内壁に取り付けられる取付部分と、前記取付部分から当該取付部分よりも前記試験室内に突出し且つ前記試験室の
縦辺に沿って上下方向にのびる突出部分を有
し、前記取付部分が接する前記内壁に直交する方向の前記突出部分の長さは、前記空気吹き出し部の送風面の前記内壁に直交する方向の長さよりも短く、且つ前記長さが30mm以下であることを特徴とする環境試験装置である。
同様の課題を解決するための態様は、被試験物を配置する試験室と、空調手段と、送風手段を有し、前記試験室は試験室本体と扉部材によって囲まれた空間の一部または全部の空間であり、前記試験室本体は、左右の側壁と天面壁と底面壁を有し、少なくとも一方の前記側壁の端面が開口枠の一部となって正面側が開口し、前記扉部材は、前記試験室本体の縦の一辺とヒンジで結合されていて当該ヒンジ側を基端とし他端側を自由端として揺動し、少なくとも前記自由端側が前記側壁の端面によって形成される開口枠と接して前記試験室本体の開口を閉鎖する環境試験装置において、前記扉部材が前記開口を閉塞した状態のとき、前記試験室内であって前記自由端側が接する側の開口端の近傍に障害部材があり、前記障害部材が、前記扉部材に取り付けられる取付部分と、前記取付部分から当該取付部分よりも前記試験室側に向かって突出し前記側壁の内壁の前記開口側の端部よりも前記試験室内側に至り且つ前記試験室の上下方向にのびる突出部分を有することを特徴とする環境試験装置である。
前記試験室は、
前記扉部材に対向する面に空気吹き出し部を有し
、前記障害部材
は、突出部分を有し、当該突出部分が、前記空気吹き出し部からの送風と交差する方向且つ前記取付部分の取付面と交差する方向に突
出すること
が望ましい。
同様の課題を解決するための態様は、被試験物を配置する試験室と、空調手段と、送風手段を有し、前記試験室は試験室本体と扉部材によって囲まれた空間の一部または全部の空間であり、前記試験室本体は、左右の側壁と天面壁と底面壁を有し、少なくとも一方の前記側壁の端面が開口枠の一部となって正面側が開口し、前記扉部材は、前記試験室本体の縦の一辺とヒンジで結合されていて当該ヒンジ側を基端とし他端側を自由端として揺動し、少なくとも前記自由端側が前記側壁の端面によって形成される開口枠と接して前記試験室本体の開口を閉鎖する環境試験装置において、前記試験室本体の試験室構成部分内に、棚を設置するための棚受け部があり、前記扉部材が前記開口を閉塞した状態のとき、前記試験室内であって前記自由端側が接する側の開口端の近傍に障害部材があり、前記障害部材が、前記扉部材に取り付けられる取付部分と、前記扉と前記棚受け部の間の空間に突出し且つ前記試験室の上下方向にのびる突出部分を有することを特徴とする環境試験装置である。
【0013】
障害部材は、前記試験室本体の開口に沿って上下方向にのびるものであることが望ましいが、多少の傾斜があってもよい。
【0014】
本態様の環境試験装置では、試験室本体の開口枠の近傍においては、障害部材に送風が衝突することによって、送風が扉本体に直接的に衝突することが防止される。また送風は、障害部材によって側壁から離れる方向に誘導される。そのため側壁の端面と扉部材の間の隙間に向かう風量が制限され、試験室から空気が漏れることが抑制される。
また側壁の端面と扉部材の間の隙間にシール部材が存在する場合においては、障害部材の作用によって前記隙間内のシール部材に風が直接当たることが抑制される。そのため熱伝導によってシール部材の外側表面が低温化し、結露等が生じることを防ぐことができる。
扉部材の自由端側が接する側の開口端に加えて、ヒンジ側の辺や上下の辺に障害部材が設けられていてもよい。
【0015】
障害部材は、試験室本体の内壁に固定されていることが望ましい。
【0016】
試験室本体の試験室構成部分内に、棚を設置する棚受け部材があり、棚受け部材に障害部材が設けられていることが望ましい。
【0017】
障害部材は、扉部材に設けられていてもよい。またさらに試験室本体の側壁の端面と扉部材の間の隙間の開口部分を塞ぐ遮蔽部が扉部材に設けられていてもよい。
【0018】
送風手段の送風を側壁側に方向付けする風向部材を有することが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の環境試験装置は、試験室の気密性能が優れ、試験室の空気を外部に漏らし難く、熱伝導を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
最初に本実施形態の環境試験装置1の基本構造について説明する。本実施形態の環境試験装置1は、
図1に示すように上部側の試験室領域100と、下部側の機械領域101に分かれている。
試験室領域100には、
図3に示すように断熱壁2によって覆われた断熱槽3が設置されている。断熱槽3は試験室本体21と扉部材20によって構成されている。そして当該断熱槽3の一部に試験室5が形成されている。試験室5は、被試験物を設置する空間である。試験室5は試験室本体21の内壁(正確には内部の仕切りが試験室5の奥壁30となっている)と扉部材20によって6面が囲まれた空間である。
正確には、試験室5は試験室本体21と扉部材20によって6面が囲まれた断熱空間の一部である。
環境試験装置1は、さらに空調機器10と送風機11を備えている。空調機器10は、加湿装置6、冷却装置7及び加熱ヒータ8によって構成されている。
環境試験装置1には、試験室5と環状に連通する空調通風路15があり、当該空調通風路15に前記した空調機器10と送風機11が内蔵されている。
【0022】
空調通風路15は、断熱槽3の一部に形成され、空気吹き出し部16と空気導入部18の2箇所で試験室5と連通している。
そのため送風機11を起動すると、試験室5内の空気が空気導入部18から空調通風路15内に導入される。そして空調通風路15が通風状態となり、空調機器10に空気が接触して熱交換や湿度調整がなされ、空気吹き出し部16から試験室5内に調整後の空気が吹き出される。
また空調通風路15の空気吹き出し部16の近傍に、温度センサー12と湿度センサー13が設けられている。
環境試験装置1を使用する際には、送風機11を運転して空調通風路15内を通風状態とし、温度センサー12及び湿度センサー13の検出値が、設定環境の温度及び湿度に近づく様に空調機器10を制御する。
【0023】
次に、本実施形態の環境試験装置1の細部の構成について説明する。
本実施形態の環境試験装置1では、試験室5は、前記した様に試験室本体21と、扉部材20によって構成された空間の一部である。
即ち試験室5は、
図2、
図3に示すように、試験室本体21の奥側に設けられた奥壁30、試験室本体21の内面たる左右の側壁31,32、天面壁33、底面壁35と、試験室本体21の正面の開口を塞ぐ扉部材20で囲まれた空間である。
【0024】
本実施形態の環境試験装置1では、側壁31,32を含む各壁の端面が、直接的に試験室5の開口45となっている。
そのため本実施形態の環境試験装置1は、試験室本体21の開口45が大きく、被試験物の出し入れが容易である。
本実施形態では、
図2の様に天面壁33の正面側端面40と、左側壁31の正面側端面41と、底面壁35の正面側端面42と、右側壁32の正面側端面43が試験室本体21の開口枠50として機能する。開口枠50は、扉部材20が当接する対扉当接枠である。
【0025】
本実施形態の環境試験装置1は、扉部に二重のシール機構が設けられており、
図2、
図4、
図5の様に、開口枠(対扉当接枠)50に内側シール部材51が設けられている。内側シール部材51は、開口枠50の部分にあって、試験室本体21の開口45を環状に取り巻いている。
【0026】
扉部材20は、公知のウイング式の扉である。本実施形態では、開口45に向かって左側の辺にヒンジ46が設けられており、左辺にヒンジ46を介して扉部材20が試験室本体21側に揺動可能に取り付けられている。扉部材20は、試験室本体21の左側の縦の一辺とヒンジ46で結合されていてヒンジ46側を基端とし他端側を自由端として揺動する。
扉部材20の自由端側には、公知のロック機構47が設けられている。また扉部材20には、窓部48と把手56が設けられている。
【0027】
扉部材20の試験室本体21側の面の辺部は、対本体当接枠52として機能する。
前記した様に、本実施形態の環境試験装置1は、扉部に二重のシール機構が設けられており、
図2、
図4、
図5の様に、対本体当接枠52に外側シール部材53が設けられている。外側シール部材53は、対本体当接枠52の部分にあって、扉部材20の試験室本体21側を環状に取り巻いている。
【0028】
扉部材20が閉じられると、扉部材20の対本体当接枠52に設けられた外側シール部材53の先端が、試験室本体21の開口枠(対扉当接枠)50と接する。
また扉部材20が閉じられると、試験室本体21の開口枠50に設けられた内側シール部材51の先端が、扉部材20の対本体当接枠52と接する。
【0029】
試験室5の内部に目を移すと、
図4に示すように試験室本体21の開口45近傍の位置であって、開口45の一方の縦辺に沿った位置に、障害部材60が設けられている。
ヒンジ46との関係で説明すると、扉部材20の自由端側が接する側の開口端の近傍に、障害部材60が設けられている。
図面に則して説明すると、障害部材60は、試験室5の右側壁32であって、開口45の真近の位置にあり、開口45の縦辺に沿って上下方向にのびている。
【0030】
本実施形態では、障害部材60は、後記する様に棚受け部材の一部であるが、理解を容易にするため、
図4、
図5、
図6では、棚受け部材として機能する部分を省略している。 障害部材60は、断面形状が略「L」字状の部分を有する金具の一部である。
図5(a)の様に設置片68から立ち上がった部分である。
【0031】
障害部材60は、右側壁32に対して交差する方向に立設し、背が低く、上下に長く連続する壁である。障害部材60の右側壁32からの立ち上がり高さH(突出長さ)は低い。
障害部材60の高さHは、5mmから30mm程度であり、好ましくは、5mmから10mm程度であり、最も好ましくは、6乃至8mmである。
障害部材60は、
図5の各図の様に右側壁32に対して垂直姿勢に立ち上がっていることが望ましいが、
図6(a)、(b)の様に多少傾斜姿勢であってもよい。障害部材60の姿勢は、右側壁32に対して45度から135度程度の傾斜があってもよい。
図6(a)は、障害部材60を扉部材20側に傾斜させた例を示し、
図6(b)は、障害部材60を奥側に傾斜させた例を示す。
図6(c)は、障害部材60の断面形状が異なる例を示し、奥側の面が曲面である。
【0032】
障害部材60の上下方向の長さは、開口45の高さの全域に及ぶものであることが望ましく、天面壁33から底面壁35まで至っていることが望ましいが、それよりも短くてもよい。
障害部材60の上下方向の長さは、開口45の高さの50パーセント以上に及ぶことが望ましく、80パーセント以上であることがさらに望ましい。
障害部材60は上下方向に連続していることが望ましいが、いく片かに分断されていてもよい。
【0033】
障害部材60の試験室5の奥行き方向の位置は、前記した様に開口45の真近の位置であり、
図5(a)の様に、右側壁32の正面側端面43の角57の位置と、障害部材60の基部の位置が一致する。
障害部材60の試験室5の奥行き方向の位置は、開口45により近い位置であるほど望ましいが、
図5(b)の様に多少、開口45から後退していてもよい。また
図5(c)の様に多少、開口45から突出していてもよい。
【0034】
障害部材60は、送風が当たる面の中心部分が、開口45の端部(角57)から奥側に5cm以内の位置であることが望ましく、より好ましくは、開口45の端部(角57)から奥側に3cm以内の位置であり、さらに好ましくは、開口45の端部(角57)から奥側に1cm以内の位置であることが望ましい。
障害部材60が開口45から突出する構造の場合には、扉部材20を閉じた際に、扉部材20が当たらなければよい。
【0035】
本実施形態では、試験室5内に棚55を設けられる様になっており、障害部材60は、棚55を支持する棚受け部材61の一つに設けられている。
本実施形態では、
図4、
図7の様に、試験室本体21の左右の側壁31,32に、それぞれ2個ずつ棚受け部材61が設けられている。
棚受け部材61は、断面形状が凹型であって柱状の部材である。棚受け部材61には、棚55の端部を係合させる係合孔62が縦方向に複数並べて設けられている。
棚受け部材61は、左側壁31に2本、右側壁32に2本設けられている。
即ち棚受け部材61は、開口45側と奥側に設けられ、平面視して長方形の各角に相当する様に配置されている。
そして本実施形態では、右側壁32の開口45側に設置された棚受け部材61aに、障害部材60が一体的に設けられている。
【0036】
棚受け部材61aは、一枚の板を曲げ加工して成形されたものであり、受け孔形成部67とこれに続く設置片68及び障害部材60が連続するものである。
棚受け部材61aの具体的な形状は、
図7の通りであり、内側脚部63と突出面部65と外側脚部66によって構成された受け孔形成部67があり、外側脚部66の端部に平面状の設置片68が繋がり、設置片68の端部が略垂直に折り曲げられて障害部材60が形成されている。
そして障害部材60は、棚受け部材61aが所定の位置に固定されると、試験室本体21の開口45近傍の位置にあって、右側壁32から立ち上がった姿勢となる。
【0037】
次に試験室5の奥側に目を移すと、
図3に示すように試験室5の奥壁30の一部が開口していて、前記した空調通風路15の空気吹き出し部16があり、その中に送風機11が設置されている。
本実施形態では、送風機11は軸流送風機であり、プロペラファンである。
公知の様に、軸流送風機は、シロッコファン等の遠心送風機に比べて送風量が多い。
また本実施形態では、
図4に示すように送風機11の前面側に風向部材71が設けられている。風向部材71の断面形状は台形であり、正面側送風面72と側面側送風面73a,73bを有している。本実施形態では、風向部材71が実質的に空調通風路15の空気吹き出し部16となっている。
【0038】
風向部材71の正面側送風面72は、扉部材20と略平行に対峙する面であり、当該面に複数の開口が設けられたものである。正面側送風面72からは扉部材20に向かって送風される。
これに対して側面側送風面73a,73bは、送風機11と扉部材20を結ぶ仮想直線に対して傾斜姿勢となっている。側面側送風面73a,73bについても複数の開口が設けられている。側面側送風面73a,73bから噴射される送風は、斜め方向から側壁31,32に当たる。
【0039】
軸流送風機は、プロペラファンの外周近傍によって起こされる風が強く、回転中心の近傍は風速が弱い。
しかしながら本実施形態の環境試験装置1では、送風機11の前面側に風向部材71が設けられており、風向部材71の側面側送風面73a,73bから噴射される空気は、側壁31,32側に向かう方向のベクトル成分をもっている。そのため側面側送風面73a,73bから噴射される空気は、側壁31,32側と衝突して反射し、中央側に戻る。そのため送風機11の回転中心の前方側にも送風が行き渡る。
【0040】
しかしその一方で、側壁31,32に衝突した風の一部は、
図5、
図8の様に側壁32に沿って流れ、試験室本体21の正面の開口45に至る。即ち、扉部材20の自由端側となる右側壁32に沿って流れ、正面の開口45に至る。
ここで本実施形態の環境試験装置1では、右側壁32であって開口45の近傍に障害部材60が設けられている。障害部材60は、右側壁32からわずかに立ち上がったものであるが、送風は右側壁32に沿って流れてくるので、障害部材60と衝突し、大きく向きを変える。即ち右側壁32に沿って流れて来た送風は、
図5、
図8の様に障害部材60と衝突し、開口45の右側の縦辺から遠ざかる方向に流れてゆく。即ち障害部材60は、風向部材として機能し、右側壁32に沿って流れてきた送風を扉部材20の中央向きに誘導する。
そのため扉部材20の自由端側の開口枠50及び対本体当接枠52の接合面であって、扉部材20の自由端側の縦辺には、送風は流れにくい。
そのため、当該部位に送風の動圧が掛かりにくく、内部の空気が漏れにくい。
【0041】
またシール部材51,53に直接的に風が当たることを防ぐことができる。そのためシール部材51,53の外側表面が過度に低温となることが防止され、シール部材51,53が結露することを防止することができる。
【0042】
以上説明した実施形態では、試験室本体21側に障害部材60を設けたが、
図9の様に、扉部材20側に障害部材80を設けてもよい。
図9に示す環境試験装置75の障害部材80は、断面形状が略「L」形の金具82の一部である。金具82は、試験室本体21の側壁32と略平行な側壁側部(遮蔽部)83と、側壁32に対して交差する方向にのびる障害部材80を有している。
扉部材20を閉じると、
図9(a)の様に、障害部材80が開口45から試験室5内に入り込み、障害部材80が側壁32の内側に対して交差する方向となる。
側壁側部83は、扉部材20の対本体当接枠52と試験室本体21の開口枠50との間の隙間の開口部分を封鎖する位置となり、シール部材51,53に直接的に風が当たることを防ぐ遮蔽部として機能する。
【0043】
以上説明した実施形態では、開口45の縦辺の一つに沿って障害部材60を設けたが、これに加えて、他の辺に沿う位置に障害部材60を設けてもよい。
また以上説明した実施形態では、障害部材60は上下に真っ直ぐ延びていて開口45の縦辺と平行であるが、障害部材60は少しの傾斜角度を持って上下にのびていてもよい。即ち障害部材60の上端の真下の位置に障害部材60の下端がなくてもよい。
また上記した実施形態では、棚受け部材61aに障害部材60を設け、棚受け部材61aを設置することによって、障害部材60が設けられる構成を例示したが、棚受け部材61aと障害部材60は別々のものであってもよい。さらに棚受け部材61は必須ではない。
本実施形態では、送風機11として軸流送風機を採用したが、遠心送風機であってもよい。また風向部材71は必須ではない。