特許第6704870号(P6704870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704870
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】バンパリインフォースメント
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/04 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
   B60R19/04 M
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-48762(P2017-48762)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2018-149975(P2018-149975A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小坂 洋康
(72)【発明者】
【氏名】永山 義之
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−047818(JP,A)
【文献】 特開2006−051272(JP,A)
【文献】 特開2015−150906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3枚以上のブランク材が接合されたテーラードブランク材がプレス成形されることで、複数の接合線を有する長尺形状に形成され、車幅方向に配設されるバンパリインフォースメントであって、
前記複数の接合線の間で前記長尺形状の中央部位置に配設される前記バンパリインフォースメントの中央部位は最も強度が高くされており、前記複数の接合線に対して車幅方向外側に位置する前記バンパリインフォースメントの両側部位に行くにしたがって順次強度が低くされており、
前記複数の接合線が前記長尺形状の長手方向の軸線に対して傾斜して形成されており、
前記複数の接合線は左右対称位置に配設されており、前記バンパリインフォースメントの上下方向で見てハの字形状に配設されているバンパリインフォースメント。
【請求項2】
3枚以上のブランク材が接合されたテーラードブランク材がプレス成形されることで、複数の接合線を有する長尺形状に形成され、車幅方向に配設されるバンパリインフォースメントであって、
前記複数の接合線の間で前記長尺形状の中央部位置に配設される前記バンパリインフォースメントの中央部位は最も強度が高くされており、前記複数の接合線に対して車幅方向外側に位置する前記バンパリインフォースメントの両側部位に行くにしたがって順次強度が低くされており、
前記複数の接合線が前記長尺形状の長手方向の軸線に対して傾斜して形成されており、
前記接合線の形状は、長尺形状の長手方向に向けたV字形とされているバンパリインフォースメント。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のバンパリインフォースメントであって、
当該バンパリインフォースメントの長尺形状の長手方向の両端部位置には、クラッシュボックスが配設されており、
前記接合線は前記両端部位置に配設されるクラッシュボックス間に形成されるバンパリインフォースメント。
【請求項4】
請求項1に従属する請求項3に記載のバンパリインフォースメントであって、
前記接合線は当該バンパリインフォースメントの中央位置から左右にそれぞれ1本配設されており、それぞれの接合線は中央位置から前記クラッシュボックスの位置まで配設されるバンパリインフォースメント。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかの請求項に記載のバンパリインフォースメントであって、
前記複数の接合線に隣接して配設される部位の板厚は同じであるバンパリインフォースメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパリインフォースメントに関する。特に、自動車の前部または後部に装備されるバンパ構造の芯材としてのバンパリインフォースメントに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体の前部または後部には、車両衝突時における衝突荷重を受けるバンパ構造が備えられる。バンパ構造には芯材としてのバンパリインフォースメントが備えられる。バンパリインフォースメントは自動車車体の幅方向に長尺形状として配設されており、自動車車体の幅方向の両端部位置で自動車車体のフレーム部材にバンパ支持構造で連結されて支持される。バンパ支持構造は、通常、車両衝突時のエネルギー吸収作用が行われるクラッシュボックス(C/B)が用いられる。
【0003】
バンパリインフォースメントは長尺形状であることから、従来から複数のブランク材を溶接にて接合して形成する、いわゆるテーラードブランク材をプレス成形により形成する方法をとることがある(下記特許文献1参照)。これにより、材料の歩留まりの向上を図るようにされる。また、異なる引張り強度や板厚の高張力鋼板のブランク材を複数用いることにより、バンパリインフォースメントの長手方向における所望の強度特性を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−180398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数のブランク材を接合したテーラードブランク材でバンパリインフォースメントを形成する場合には、隣接するブランク材同士を接合する接合線は、長尺部材の長手方向の軸線に対して、直角に直交する方向の接合線とされている。
【0006】
上述した形態のテーラードブランク材をプレス成形したバンパリインフォースメントにおいて、衝突荷重が中央部位置に作用すると、その荷重は両端部方向に順次伝達して受けられる。その伝達の際に、ブランク材の接合線が長手方向の軸線に対して直交する接合線とされていると、隣接するブランク材の強度の相違により、その接合線位置で断面耐力が急変し、応力集中を生じる。このため、当該位置でバンパリインフォースメントに折れ曲がりが生じる問題がある。
【0007】
本発明は上述した問題に鑑みて創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、テーラードブランク材をプレス成形によりバンパリインフォースメントを形成した場合に、その接合線位置に応力集中が生じるのを防止ないし抑制して、折れ曲がりが生じるのを防止ないし抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は次の手段をとる。なお、本発明の説明(後述の実施形態の説明、及び前述の背景技術の説明を含む)においては、「ブランク材」とは接合前の状態の所定形状に形成された平板状の部材を指し、「テーラードブランク材」とは複数のブランク材をテーラードブランクで接合した状態の部材で、プレス成形前の状態を指す。
【0009】
本発明の第1の発明に係るバンパリインフォースメントは、3枚以上のブランク材が接合されたテーラードブランク材がプレス成形されることで、複数の接合線を有する長尺形状に形成され、車幅方向に配設されるバンパリインフォースメントであって、前記複数の接合線の間で前記長尺形状の中央部位置に配設される前記バンパリインフォースメントの中央部位は最も強度が高くされており、前記複数の接合線に対して車幅方向外側に位置する前記バンパリインフォースメントの両側部位に行くにしたがって順次強度が低くされており、前記複数の接合線が前記長尺形状の長手方向の軸線に対して傾斜して形成される、バンパリインフォースメントである。
【0010】
上記第1の発明によれば、いわゆるテーラードブランク材により形成するバンパリインフォースメントにおいて、接合線は、長尺形状の長手方向の軸線に対して傾斜して形成される。これにより、バンパリインフォースメントに衝突荷重が加わり、荷重が長手方向に伝達される際、傾斜した接合線に作用する応力は分散する。すなわち、従来のように接合線位置で断面耐力の急変が生じることがなく、応力集中が生じない。このため、接合線位置におけるバンパリインフォースメントの折れ曲がりを防止ないし抑制することができる。
【0011】
次に、本発明の第2の発明は、前述の第1の発明のバンパリインフォースメントにおいて、前記複数の接合線に隣接して配設される部位の板厚が同じであるバンパリインフォースメントである。
【0012】
上記第2の発明によれば、複数の接合線に隣接して配設される部位の板厚が同じであることにより、板厚が異なる場合に比較して、接合線位置に生じる応力集中をより一層効果的に防止することができる。
【0013】
次に、本発明の第3の発明は、前述の第1の発明又は第2の発明のバンパリインフォースメントにおいて。前記複数の接合線は左右対称位置に配設されており、ハの字形状とされているバンパリインフォースメントである。
【0014】
上記第3の発明によれば、接合線位置を左右対称位置とすることにより、中央部位置に入力される衝突荷重をバランス良く受けることができる。
【0015】
また、上記第3の発明によれば、中央部位から車幅方向外側の両側に配設される両側部位を形成するブランク材は、一方のブランク材を裏返して使用すれば、ブランク材を共用することができる。その結果、平板状の板材を所定形状のブランク材に切断する際のプレス型も共用化することができる。
【0016】
次に、本発明の第4の発明は、前述の第1の発明から第3の発明のいずれかの発明のバンパリインフォースメントにおいて、当該バンパリインフォースメントの長尺形状の長手方向の両端部位置には、クラッシュボックスが配設されており、前記接合線は前記両端部位置に配設されるクラッシュボックス間に形成されるバンパリインフォースメントである。
【0017】
上記第4の発明によれば、バンパリインフォースメントの両端部に配置されるクラッシュボックス間に接合線が配設されることにより、効果的に衝突荷重を受けることができる。すなわち、バンパリインフォースメントの中央部位置に作用する衝突荷重はクラッシュボックスの位置に伝達されて受けられるが、その荷重モーメントはクラッシュボックスの位置に近づくにしたがって小さくなる特性となっている(図9参照)。かかる特性のように、傾斜した接合線の配設により、荷重モーメントを徐々に減少させることができる。
【0018】
次に、本発明の第5の発明は、前述の第4の発明において、前記接合線はバンパリインフォースメントの中央位置から左右にそれぞれ1本配設されており、それぞれの接合線は中央位置から前記クラッシュボックスの位置まで配設されるバンパリインフォースメントである。
【0019】
上記第5の発明によれば、傾斜した接合線の配設をバンパリインフォースメントの中央位置からクラッシュボックスの位置とする。これにより、上述の第4の発明で説明したクラッシュボックスに伝達される衝突荷重を受ける特性を、中央位置からクラッシュボックスの位置までより一層緩やかに減少させることができる。すなわち、最も好ましい特性とすることできる。
【0020】
次に、本発明の第6の発明は、前述の第1の発明から第5の発明のいずれかの発明のバンパリインフォースメントにおいて、前記接合線の形状は、長尺形状の長手方向に向けたV字形とされているバンパリインフォースメントである。
【0021】
上記第6の発明によれば、接合線の形状は長尺形状の長手方向に向けたV字形とされる。V字形であることにより、テーラードブランク材とするブランク材同士の位置決めが確実に行われる。すなわち、接合線が傾斜する一直線状の場合には、長手方向の軸線方向にズレ易いが、V字形の場合にはV字形の嵌め合せにより、位置決めすることができる。これにより、隣接するブランク材同士を一直線状に容易に配設することができる。
【発明の効果】
【0022】
上述した手段の本発明によれば、テーラードブランク材をプレス成形によりバンパリインフォースメントを形成した場合に、その接合線位置に応力集中が生じるのを防止ないし抑制して、折れ曲がりが生じるのを防止ないし抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】自動車車体に対するバンパ構造の配置位置を示す概略図である。
図2】バンパリインフォースメントの第1実施形態を前方の斜め上方から見た斜視図である。
図3】バンパリインフォースメントの第1実施形態の上面図(図2のIII矢視図)である。
図4】バンパリインフォースメントの第1実施形態の前面図(図2のIV矢視図)である。
図5】バンパリインフォースメントの第1実施形態の側面図(図2及び図4のV矢視図)である。
図6図4のVI―VI線断面図である。
図7図4に対応させて示すバンパリインフォースメントの第2実施形態の前面図である。
図8図4に対応させて示すバンパリインフォースメントの第3実施形態の前面図である。
図9】衝突荷重に対するモーメント線図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、実施形態において示す方向表示は、自動車の車室から見た方向である。
【0025】
先ず、図1は自動車におけるバンパ構造10の配置位置を示す。バンパ構造10は、通常、自動車車体12の前部と後部に自動車車体12に対して車幅方向に配置される。図1において、自動車車体12の前方を矢印Frで示し、後方を矢印Rrで示した。自動車の車室は自動車車体12の位置に形成される。バンパ構造10は、バンパリインフォースメント14、バンパ被覆部材16、バンパ支持構造18とから成る。バンパリインフォースメント14はバンパ構造10の強度上の芯材として配設される。バンパ被覆部材16はバンパリインフォースメント14の前面を被覆するように配設される。バンパ被覆部材16はバンパ構造10の最外面に配設され、見栄えを考慮した構成とされている。通常、意匠の成形に適する樹脂製で形成される。
【0026】
バンパ支持構造18は、バンパリインフォースメント14の長手方向(自動車車体12で見て幅方向)の両端部の位置で自動車車体12のフレーム部材(不図示)とバンパリインフォースメント14との間に配設されている。そして、このバンパ支持構造18によりバンパリインフォースメント14で受ける衝突荷重を自動車車体12に伝えて受ける。バンパ支持構造18は本実施形態ではクラッシュボックス(C/B)と称される衝突エネルギーを吸収することができる構成部材で形成されている。
【0027】
なお、以後に説明する実施形態は、自動車車体12の前部に配設されるバンパリインフォースメント14の場合を例にして説明する。
【0028】
本実施形態のバンパ構造10は、上述した配置構成であることにより、自動車の正面衝突によりバンパ構造10の中央位置に作用する衝突荷重Fは、次のように受けられる。先ず、バンパ被覆部材16で受けて、これをバンパリインフォースメント14で支える。そして、バンパリインフォースメント14に作用した荷重は、バンパリインフォースメント14の両端部に配設されたバンパ支持構造18としてのクラッシュボックス(C/B)を介して自動車車体12により受けられる。この際、クラッシュボックス(C/B)が衝突エネルギーを吸収する。
【0029】
次に、本実施形態のバンパリインフォースメント14の構成を説明する。本実施形態のバンパリインフォースメント14には、3枚以上の所定形状のブランク材が用いられる。そして、このブランク材が溶接で接合されたテーラードブランク材がプレス成形されて、バンパリインフォースメント14が形成される。本実施形態の場合は、3枚のブランク材が接合されて形成される構成である。本実施形態の特徴は、その接合する接合線の配設にある。その配設の仕方を、以下に各実施形態として説明する。
【0030】
〔第1実施形態〕
第1実施形態は、図2から図6に示される。図2はバンパリインフォースメント14を前方の斜め上方から見た図を示しており、図3はその上面図、図4はその前面図、図5は側面図を示し、図6図4のVI―VI線断面図を示している。本実施形態のバンパリインフォースメント14の断面形状は、図6に示すように断面はハット型形状となっており、後方が開口22となる形態となっている。このため前面板部位24が衝突時の当たり面となるように配設される。
【0031】
バンパリインフォースメント14は、図6の断面形状で見て、衝突時に当たり面となる前面板部位24と、上側面板部位28と、下側面板部位32とから構成される。前面板部位24の図6で見て上下方向の中央部位置には凹み部26が形成されており、前面板部位24の強度向上が図られている。また、上側面板部位28の開口22側の端部にはフランジ部位30が図6で見て上方に延設して配設されている。同様に、下側面板部位32の開口22側の端部にはフランジ部位34が図6で見て下方に延設して配設されている。
【0032】
断面ハット型形状のバンパリインフォースメント14は、図2乃至図4に示すように長尺形状に形成されており、図1に示すように、自動車車体の車幅方向に配設される。長尺形状のバンパリインフォースメント14は、両端に向けて後方に緩やかに湾曲した形状とされている。そして、両端部位置にバンパ支持構造としてのクラッシュボックス(C/B)18が配設される。図2乃至図4にはクラッシュボックス(C/B)18が配設される位置を簡便に三角印で示した。以後に説明する実施形態の図7図8も同様である。
【0033】
バンパリインフォースメント14は、本実施形態では、3枚のブランク材が接合されたテーラードブランク材がプレス成形されて、長尺形状に連接された形態の3部位20A,20B,20Cから構成される。この3部位は、中央部位置に配設される中央部位20Aと、中央部位20Aの右側位置に配設される右側部位20Bと、中央部位20Aの左側位置に配設される左側部位20Cとからなっている。これら3部位20A,20B,20Cが、ブランク材において溶接により接合される位置を、破線の接合線22A,22Bで示した。接合線22Aは、中央部位20Aのブランク材と、右側部位20Bのブランク材との接合部を示し、接合線22Bは、中央部位20Aのブランク材と左側部位20Cのブランク材との接合部を示している。
【0034】
3部位20A,20B,20Cのブランク材を接合する2本の接合線22A,22Bは、バンパリインフォースメント14の長手方向の軸線Xに対して傾斜して配設されている。具体的には、図2及び図4の上下方向で見て、ハの字形に配設されている。なお、この2本の接合線22A,22Bのハの字形の形成位置は、バンパリインフォースメント14の両端部に配設されるクラッシュボックス(C/B)18間とされている。
【0035】
なお、2本の接合線22A,22Bは、バンパリインフォースメント14の長手方向の中心位置Cに対して対称位置に配設されている。そのため、右側部位20Bと左側部位20Cは中心位置Cに対して対称形状となっている。
【0036】
第1実施形態として図示された接合線22A,22Bは、軸線Xに対して傾斜して直線状に形成されている。しかし、軸線Xに対して傾斜しておれば、直線状でなく湾曲形状に形成してもよい。また、接合線22A,22Bの全長が傾斜して形成されている必要はなく、部分的に軸線Xと同方向又は軸線Xに直角に直交する方向に形成されている箇所があってもよい。好ましくは、図4に示す前面板部位24と凹み部26の底面部位における接合部位が傾斜して形成されているのが良い。かかる部位は衝突荷重Fが加わった際に、折れ曲がりが生じやすい部位であることによる。
【0037】
本実施形態では、3部位20A,20B,20Cの材質は同じ鋼板製とされており、その板厚も同じ板厚とされている。しかし、強度は、中央部位置の中央部位20Aは最も強く設定されており、両側の右側部位20B、及び左側部位20Cは中央部位20Aより弱く設定されている。本実施形態では、中央部位20Aの強度が1180MPaとされており、両側の右側部位20B、及び左側部位の強度が980MPaとされている。
【0038】
図9はバンパリインフォースメント14の中央部位置に衝突荷重Fが加わった際に、両端のクラッシュボックス18で支持する場合に生じるモーメント荷重特性線図を示す。この特性線図から分かるように、中央部位置のモーメント荷重が最も大きく、両側に行くにしたがって徐々に小さくなる。本実施形態では、この特性線図に合わせて、上述した3部位20A,20B,20Cの強度を設定したものである。そのため、中央部位20Aの強度を最も強くし、両側の右側部位20B、及び左側部位20Cをそれより弱い強度とした。
【0039】
なお、本実施形態における接合線22A,22Bを形成するブランク材同士の接合は、鋼板を溶接することにより行われる。その溶接としては、レーザー溶接、プラズマ溶接、(マッシュ)シーム溶接、摩擦攪拌接合等、任意の適切な溶接を用いることができる。
【0040】
なお、本実施形態におけるバンパリインフォースメント14の3部位20A,20B,20Cの成形は、平板状の板材を所定形状のブランク材に切断する工程と、ブランク材同士をテーラードブランクする工程と、テーラードブランク材を所定のバンパリインフォースメント14の形状にプレス成形する工程とにより行われる。この成形法によるときには、本実施形態のように接合線22A,22Bがハの字で左右対称位置とされている場合には、右側部位20B,左側部位20Cを形成するブランク材の一方を裏返して使用することにより、平板状のブランク材を共用化することができる。その結果、平板状の板材を所定形状のブランク材に切断する際のプレス型も共用化することができる。
【0041】
次に、上述した第1実施形態の作用効果について説明する。本実施形態では、3部位20A,20B,20Cの接合線22A,22Bは、バンパリインフォースメント14の長手方向の軸線Xに対して傾斜して配設されている。これにより、バンパリインフォースメント14の中央部位置に加わった衝突荷重が、クラッシュボックス18の位置に伝達される際、傾斜した接合線に作用する荷重応力は分散する。このため接合線22A,22Bにおけるバンパリインフォースメント14の折れ曲がりを防止ないし抑制することができる。
【0042】
また、接合線22A,22Bが傾斜して配設されていることにより、この傾斜して配設されている間の強度は、中央部のブランク材対応部位20Aと両側のブランク材対応部位20B,20Cの面積比率により徐々に低くなる。すなわち、中央部に近い位置では中央部のブランク材対応部位20Aの面積比率が両側のブランク材対応部位20B,20Cの面積比率より多く、中央部のブランク材対応部位20Aの強度の影響が大きい。徐々に両端部方向に行くにしたがって、中央部のブランク材対応部位20Aの面積比率が少なくなり、両側のブランク材対応部位20B,20Cの面積比率が多くなり、両側のブランク材対応部位20B,20Cの強度の影響が大きくなり、強度は徐々に弱くなる。これは、図10に示すモーメント荷重特性線図に沿うものであり、好ましい。
【0043】
〔第2実施形態〕
第2実施形態は図7に示される。図7は前述した第1実施形態における図4に対応して示した図である。なお、第2実施形態において、前述した第1実施形態と実質的に同じ構成箇所には同じ符号を付すことにより説明を省略することがある。
【0044】
図7に示されるように、第2実施形態の右側の接合線22Aと左側の接合線22Bは、バンパリインフォースメント14の中心位置C点の図7で見て上方位置から、クラッシュボックス(C/B)18の図7で見て下方位置に向けて傾斜して形成されている。なお、この第2実施形態においても、2本の接合線22A,22Bは。中心位置Cから左右対称位置に配設されており、バランスよく衝突荷重を受けるようになっている。
【0045】
上述した第2実施形態によれば、第2実施形態の接合線22A,22Bの傾斜形成範囲を、中心位置Cからクラッシュボックス(C/B)18位置までの最大の範囲としている。これにより、前述した第1実施形態で説明した図9に示す特性線図に最も近似した荷重特性とすることができる。
【0046】
〔第3実施形態〕
第3実施形態は図8に示される。図8は前述した第1実施形態における図4、及び第2実施形態における図7に対応して示した図である。なお、第3実施形態において、前述した第1実施形態及び第2実施形態と実質的に同じ構成箇所には同じ符号を付すことにより説明を省略することがある。
【0047】
図8に示すように、第3実施形態の右側の接合線22Aと左側の接合線22Bは、長手方向の軸線Xに向けたV字形として形成されており、軸線Xに対して傾斜して形成される。それぞれのV字形は、V字の下方端Yがバンパリインフォースメント14の両端方向に向けた配置として形成されている。なお、V字形の接合線22A,22Bの配置は、中心位置Cから左右対称位置に配設されており、バランスよく衝突荷重を受けることができる。
【0048】
上述した第3実施形態によれば、接合線22A、22BがV字形であることにより、テーラードブランク材とするブランク材の位置決めが確実に行われる。すなわち、接合線が傾斜する一直線状の場合には、長手方向の軸線方向にズレ易いが、V字形の場合にはV字形の嵌め合せにより、位置決めすることができる。これにより、隣接するブランク材同士を一直線状に容易に配設することができる。
【0049】
以上、本発明の特定の実施形態について説明したが、本発明はその他各種の形態でも実施できる。
【0050】
例えば、上述の実施形態のバンパリインフォースメントの断面形状は、ハット型形状であった。しかし、断面形状は特に特定されるものではない。また、補強部材が適宜配設される形態のバンパリインフォースメントにも適用可能である。
【0051】
また、上述した実施形態では、バンパリインフォースメントは、中央部位20A、右側部位20B、左側部位20Cの3部位で構成したが、3部位に限定されるものではなく、3部位以上の複数部位を形成する複数のブランク材を連接して構成するものであってもよい。
【0052】
また、上述した実施形態では、傾斜する接合線を左右対称に配設したが、必ずしも左右対称である必要はない。但し、バランスよく衝突荷重を受ける観点からは、左右対称配置とするのが好ましい。
【符号の説明】
【0053】
10 バンパ構造
12 自動車車体
14 バンパリインフォースメント
16 バンパ被覆部材
18 バンパ支持構造(クラッシュボックス)
20A 中央部位
20B 右側部位
20C 左側部位
22A 右側の接合線
22B 左側の接合線
24 前面板部位
26 凹み部
28 上側面板部位
30 フランジ部位
32 下側面板部位
34 フランジ部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9