(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704875
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】プレカット加工方法及びそのシステム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20200525BHJP
B27M 3/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
B27M3/00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-97552(P2017-97552)
(22)【出願日】2017年5月16日
(65)【公開番号】特開2018-195019(P2018-195019A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2019年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154624
【氏名又は名称】株式会社平安コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100139789
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 光信
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】山内 芳幸
(72)【発明者】
【氏名】岡田 守右
【審査官】
藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−269575(JP,A)
【文献】
特開平04−002447(JP,A)
【文献】
特開2009−262333(JP,A)
【文献】
特開2016−069088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
B27M 1/00−3/38
B23Q 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造軸組工法や金物工法による住宅を構成する複数の構成部材をCADデータからプレカット加工機で加工するプレカット加工システムにおいて、
前記CADデータに前記構成部材毎に構成部材情報を付与し、
前記CADデータから前記プレカット加工機で加工する特定の前記構成部材を指定し、
前記プレカット加工機に材料である木材を搬入する搬入コンベアの近傍に、複数種類の前記木材を載置するための木材載置台を配置し、
前記木材載置台から前記搬入コンベアに搬送ハンドで前記木材を搬送し、
前記指定された前記構成部材を前記プレカット加工機で加工し、
前記加工された前記構成部材に前記構成部材情報を印字し、
前記構成部材情報毎に、同一の前記加工された前記構成部材を選択して梱包し、
前記構成部材は、前記住宅の開口部を構成する部材であり、前記構成部材情報は、開口部情報であり、
前記木材載置台は、種類の異なる前記木材をそれぞれ載置するために高さの異なる複数段からなる
ことを特徴とするプレカット加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプレカット加工方法において、
前記搬入コンベアが並列に2台配置されている
ことを特徴とするプレカット加工方法。
【請求項3】
木造軸組工法や金物工法による住宅を構成する複数の構成部材をCADデータからプレカット加工機で加工するプレカット加工システムにおいて、
前記構成部材の前記CADデータに前記構成部材毎に構成部材情報を付与する付与手段と、
前記CADデータから前記プレカット加工機で加工する前記構成部材を指定する指定手段と、
前記プレカット加工機に材料である木材を搬入する搬入コンベアの近傍に、複数種類の前記木材を載置するための木材載置台と、
前記木材載置台から前記搬入コンベアに搬送ハンドで前記木材を搬送する搬送手段と、
前記指定された構成部材をプレカット加工するためのプレカット加工機と、
前記加工された前記構成部材に構成部材情報を印字するための印字手段とからなり、
前記構成部材は、前記住宅の開口部を構成する部材であり、前記構成部材情報は、開口部情報であり、
前記木材載置台は、種類の異なる前記木材をそれぞれ載置するために高さの異なる複数段からなる
ことを特徴とするプレカット加工システム。
【請求項4】
請求項3に記載のプレカット加工システムにおいて、
前記搬入コンベアが並列に2台配置されている
ことを特徴とするプレカット加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅用の部材をプレカットするプレカット加工方法及びそのシステムに関する。更に詳しくは、プレカット加工した部材から、住宅を構成する部材を開口部等の構成部材別に梱包する作業を容易にしたプレカット加工方法及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的な木造住宅に使用される木造軸組工法や金物工法は、大きく分けて構造材、羽柄材、造作材等に分類される。この羽柄材である窓等の開口部は、複数の部材で構成され、木材の断面形状が異なる部材で構成されている。建築現場で住宅の開口部の組み付け作業を効率的に行うためには、開口部を構成する部材をプレカット加工工場で加工した後、開口部別に梱包して建築現場に輸送することが必要となる。しかし、従来のプレカット加工工場は、プレカット加工した部材の中から各開口部に必要な部材を選別するのに、時間が掛かり、仕分けに必要な作業場所として広い面積が必要になる。特許文献1には、組み立てに必要な情報をプレカット加工した部材に印字する加工システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5362443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような背景で発明されたものであり、以下の目的を達成するものである。本発明の目的は、木造軸組工法や金物工法の住宅を構成する構成部材を、プレカット後に選別して梱包する作業を容易にした、プレカット加工方法及びそのシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために、次の手段を採る。
本発明1のプレカット加工方法は、
木造軸組工法や金物工法による住宅を構成する複数の構成部材をCADデータからプレカット加工機で加工するプレカット加工システムにおいて、
前記CADデータに前記構成部材毎に構成部材情報を付与し、
前記CADデータから前記プレカット加工機で加工する特定の前記構成部材を指定し、
前記プレカット加工機に材料である木材を搬入する搬入コンベアの近傍に、複数種類の前記木材を載置するための木材載置台を配置し、
前記木材載置台から前記搬入コンベアに搬送ハンドで前記木材を搬送し、
前記指定された前記構成部材を前記プレカット加工機で加工し、
前記加工された前記構成部材に前記構成部材情報を印字し、
前記構成部材情報毎に、同一の前記加工された前記構成部材を選択して梱包
し、
前記構成部材は、前記住宅の開口部を構成する部材であり、前記構成部材情報は、開口部情報であ
り、
前記木材載置台は、種類の異なる前記木材をそれぞれ載置するために高さの異なる複数段からなる
ことを特徴とする。
本発明2のプレカット加工方法は、本発明1のプレカット加工方法において、前記搬入コンベアが並列に2台配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明1のプレカット加工システムは、
木造軸組工法や金物工法による住宅を構成する複数の構成部材をCADデータからプレカット加工機で加工するプレカット加工システムにおいて、
前記構成部材の前記CADデータに前記構成部材毎に構成部材情報を付与する付与手段と、
前記CADデータから前記プレカット加工機で加工する前記構成部材を指定する指定手段と、
前記プレカット加工機に材料である木材を搬入する搬入コンベアの近傍に、複数種類の前記木材を載置するための木材載置台と、
前記木材載置台から前記搬入コンベアに搬送ハンドで前記木材を搬送する搬送手段と、
前記指定された構成部材をプレカット加工するためのプレカット加工機と、
前記加工された前記構成部材に構成部材情報を印字するための印字手段と
からなり、
前記構成部材は、前記住宅の開口部を構成する部材であり、前記構成部材情報は、開口部情報であ
り、
前記木材載置台は、種類の異なる前記木材をそれぞれ載置するために高さの異なる複数段からなることを特徴とする。
本発明2のプレカット加工システムは、本発明1のプレカット加工システムにおいて、前記搬入コンベアが並列に2台配置されている ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプレカット加工方法及びそのシステムは、木造軸組工法や金物工法を構成する同一箇所の構成部材が、プレカット加工機で連続して加工されて搬出コンベアから搬出されるので、加工が完了した構成部材の選別に必要な作業時間が短縮され、かつ仕分けに必要な作業場所が少なくて済む効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明のプレカット加工システムを示す全体平面図である。
【
図2】
図2は、
図1の搬入コンベア近傍を示す拡大平面図である。
【
図4】
図4は、本発明のプレカット加工システムを示す制御ブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明のプレカット加工システムの動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明のプレカット加工機で加工された部材に印字される部材情報を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のプレカット加工システム1を示す全体平面図である。本実施の形態のプレカット加工システム1は、窓等の開口部の加工システムであり、この開口部の加工システムで説明する。
図1に示すように、本発明のプレカット加工システム1は、プレカット加工機2、搬入コンベア3、木材載置台4、搬送ハンド5、搬出コンベア6、部材載置台7で構成されている。搬入コンベア3は、並列に2台配置された搬入コンベア31、32で構成され、材料となる木材をプレカット加工機2に搬入して加工する。搬入コンベア31、32を並列に2台配置することで、プレカット加工機2に搬入する木材を常に切らさないようにして、プレカット加工機2を効率よく稼働するようにしている。搬入コンベア3の近傍に配置された木材載置台4には、材料となる長い木材が載置され、搬送ハンド5で搬入コンベア3に搬送される。搬入コンベア3によってプレカット加工機2に搬入された木材は、プレカット加工機2で加工され、所定の長さに切断されるとともに、端面等に所定の加工が施される。プレカット加工機2で加工が完了した部材は、並列に2台配置された搬出コンベア61、62によってプレカット加工機2の機外に搬出され、部材載置台7に載置されて、住宅の使用箇所ごとに梱包される。
【0012】
図2は
図1の搬入コンベア3近傍を示す拡大平面図、
図3は
図2のP矢視図である。
図2、
図3に示すように、木材載置台4は、4本の上載置台41と4本の下載置台42で構成され、上載置台41の下に下載置台42が配置されている。上載置台41と下載置台42は、搬入コンベア3に対して、その長手方向が直交する方向に配置されている。下載置台42は上載置台41よりも長く形成され、下載置台42の右端(
図3で見て)は上載置台41の右端よりも搬入コンベア32に接近して配置されている。上載置台41と下載置台42には、搬入コンベア3に平行に長い木材W1、W2が載置される。上載置台41と下載置台42には、木材の断面形状(木材の幅(材幅)と高さ(材成))ごとに区分して木材W1、W2を載置する。木材W1、W2は各々複数枚積み重ね、上載置台41と下載置台42に例えば3箇所づつ載置される。このように、木材W1、W2の断面形状ごとに区分して、木材W1、W2を載置する場所を決めるので、木材W1、W2のセッティングの間違いを防止することができる。
【0013】
搬入コンベア3と木材載置台4の上方には、搬送ハンド5が配置されている。搬送ハンド5は、床に立設された4本の支柱51〜54と、支柱上に固定された2本のガイドレール55、55と、ガイドレール55、55に沿って走行する走行台56と、走行台に垂直方向に移動可能に取り付けられたハンド装置57で構成されている。ガイドレール55、55は、搬入コンベア3に対して直交する方向に配置されている。走行台56は、木材載置台4と搬入コンベア3との間で、ガイドレール55、55に沿って走行する。ハンド装置57は一対の把持爪571、571と木材検出板572を有し、空圧シリンダ573で垂直方向に移動する。ハンド装置57が空圧シリンダ573で垂直方向下側に移動し、木材検出板572が木材載置台4に載置された木材に当接すると、ハンド装置57の垂直方向下側への移動が停止し、把持爪571が閉じて木材W1またはW2を把持する。
【0014】
図4は本発明のプレカット加工システム1を示す制御ブロック図である。
図4に示すように、キーボード等の入力装置81からCRT82の画面を見ながらCAD/CAM装置83に住宅のデータを入力して、CAD/CAM装置83で住宅を構成する部材のCADデータを作成する。CAD/CAM装置83は、このCADデータを投入指令装置88に送る。投入指令装置88はこのCADデータをNC加工プログラムに変換し、加工制御装置84に送る。加工制御装置84は、このNC加工プログラムに基づいて、搬入コンベア3、木材載置台4、搬送ハンド5を制御し、材料となる木材をプレカット加工機2に搬入して加工する。加工が完了した部材には、プレカット加工機2に内蔵された印字装置85で部材情報が印字された後、搬出コンベア6によってプレカット加工機2から搬出され、部材載置台7に送られる。
【0015】
図5は本発明のプレカット加工システム1の動作を示すフローチャートである。本発明の実施の形態では、住宅を構成する構成部材として開口部を加工する例について説明する。
図5に示すように、CAD/CAM装置83に住宅のデータを入力して、CAD/CAM装置83で住宅のCAD図面を作成する(S10)。CAD図面が作成された部材のうち、開口部に使用される部材に対して、開口部ごとに開口部情報を付与する(S20)。開口部情報の付与は、CAD/CAM装置83で自動的に行ってもよいし、CRT82を見ながら入力装置81でCADオペレータが手動で行っても良い。
図6は、本発明のプレカット加工機2で加工された部材に印字される部材情報を示す説明図である。
図6にはCAD図面で作成された8個の部材(1)〜(8)の部材情報を示す。各部材には10種類の部材情報が付与される。部材情報は、
図6の左端から見て、材要素、樹種、等級、材番号、材幅、材成、材長、使用階、使用位置、開口部情報である。(1)、(3)及び(4)の部材が同一開口部Aで使用する部材である。(5)、(6)及び(8)の部材が同一開口部Bで使用する部材である。(2)の部材が開口部以外の場所で使用する部材である。
【0016】
次に、機械オペレータが入力装置86からプレカット加工機2で加工する開口部を指定する(S30)。例えば、
図6の開口部Aをプレカット加工機2で最初に加工する開口部に指定すると、CRT87の画面に、(1)、(3)及び(4)の3種類の部材の部材情報が表示される。開口部Aに使用される部材の断面形状は、材幅が105で材成が30と、材幅が125で材成が80の2種類であることがわかる。機械オペレータは、この2種類の木材を上載置台41と下載置台42に載置する(S40)。例えば、上載置台41には、材幅が105で材成が30の木材W1を複数枚積み重ねて載置し、下載置台42には、材幅が125で材成が80の木材W2を複数枚積み重ねて載置する。
【0017】
次に、加工が指定された開口部Aの3種類の部材(1)、(3)及び(4)のNC加工プログラムを投入指令装置88で作成する(S50)。機械オペレータは入力装置86から、部材(1)及び(3)のNC加工プログラムで使用する木材が載置された木材載置台4として、上載置台41を指定する。また、部材(4)のNC加工プログラムで使用する木材が載置された木材載置台4として、下載置台42を指定する。図示しない加工開始ボタンを押すと、部材(1)、(3)及び(4)のNC加工プログラムが順次実行される。最初に部材(1)用の木材W1が上載置台41から一方の搬入コンベア31に搬送ハンド5によって搬入される(S60)。次に搬入コンベア31が作動して部材(1)用の木材W1がプレカット加工機2に搬入される(S70)。
【0018】
部材(1)がプレカット加工機2で加工され(S80)、加工が完了した部材(1)に印字装置85で部材情報が印字される(S90)。印字される部材情報は、
図6の部材(1)に示すように開口部情報Aを含む10種類の情報である。次に搬出コンベア61が作動して加工が完了した部材(1)をプレカット加工機2から搬出する(S100)。次に、部材(3)がプレカット加工機2で加工され(S80)、加工が完了した部材(3)に印字装置85で部材情報が印字される(S90)。印字される部材情報は、
図6の部材(3)に示すように開口部情報Aを含む10種類の情報である。次に搬出コンベア61が作動して加工が完了した部材(3)をプレカット加工機2から搬出する(S100)。
【0019】
次に、部材(4)用の木材W2が下載置台42から他方の搬入コンベア32に搬送ハンド5によって搬入される(S60)。次に搬入コンベア32が作動して部材(4)用の木材W2がプレカット加工機2に搬入される(S70)。部材(4)がプレカット加工機2で加工され(S80)、加工が完了した部材(4)に印字装置85で部材情報が印字される(S90)。印字される部材情報は、
図6の部材(4)に示すように開口部情報Aを含む10種類の情報である。次に搬出コンベア62が作動して加工が完了した部材(4)をプレカット加工機2から搬出する(S100)。このようにして、開口部Aで使用する3種類の部材(1)、(3)及び(4)が連続して加工され、搬出コンベア6から部材載置台7に移される。機械オペレータは、3種類の部材(1)、(3)及び(4)に印字された開口部情報を見て、開口部Aに必要な3種類の部材(1)、(3)及び(4)を集めて梱包する(S110)。このように、同一開口部で使用する部材が連続して加工され、搬出コンベア6から部材載置台7に移されるので、部材の選別に必要な作業時間が短縮され、仕分けに必要な作業場所が少なくて済む。
【0020】
上記実施の形態では、プレカット加工機2で加工する開口部として一箇所の開口部を指定しているが、複数の開口部を同時に指定してもよい。その場合、各開口部に必要な部材が開口部ごとに順次連続して加工される。
【0021】
[他の実施の形態]
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されることはない。上記実施の形態では、窓等の開口部を構成する羽柄材で説明したが、加工されるものは、他の羽柄材である筋違、根太、野地の垂木、貫等であっても良い。また、例えば、前述した実施例では、木材載置台は上載置台と下載置台の二段で構成されているが、二段以上の複数段で構成してもよい。
【符号の説明】
【0022】
1…プレカット加工システム
2…プレカット加工機
3、31、32…搬入コンベア
4…木材載置台
41…上載置台
42…下載置台
5…搬送ハンド
51、52、53、54…支柱
55…ガイドレール
56…走行台
57…ハンド装置
571…把持爪
572…木材検出板
573…空圧シリンダ
6、61、62…搬出コンベア
7…部材載置台
81…入力装置
82…CRT
83…CAD/CAM装置
84…加工制御装置
85…印字装置
86…入力装置
87…CRT
88…投入指令装置