特許第6704923号(P6704923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6704923鉱石ダスト抑制樹脂を得るための方法、鉱石類ダスト抑制樹脂、鉱石粒子排出の抑制のための方法および樹脂の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704923
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】鉱石ダスト抑制樹脂を得るための方法、鉱石類ダスト抑制樹脂、鉱石粒子排出の抑制のための方法および樹脂の使用
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/22 20060101AFI20200525BHJP
   C08J 11/16 20060101ALI20200525BHJP
   C08J 11/28 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   C09K3/22 E
   C08J11/16ZAB
   C08J11/28
【請求項の数】17
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-547030(P2017-547030)
(86)(22)【出願日】2015年10月29日
(65)【公表番号】特表2018-503734(P2018-503734A)
(43)【公表日】2018年2月8日
(86)【国際出願番号】BR2015000165
(87)【国際公開番号】WO2016082010
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2018年10月26日
(31)【優先権主張番号】1020140298703
(32)【優先日】2014年11月28日
(33)【優先権主張国】BR
(73)【特許権者】
【識別番号】510277338
【氏名又は名称】ヴァーレ、ソシエダージ、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】VALE S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】517186156
【氏名又は名称】ウニベルシダデ、フェデラル、ド、エスピリト、サント−ウーエフィエーエスィ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDADE FEDERAL DO ESPIRITO SANTO−UFES
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】レナタ、エリアネ、フランク、バスコンセロス
(72)【発明者】
【氏名】エロワ、アルベス、ダ、シルバ、フィリォ
(72)【発明者】
【氏名】カルロス、ビタル、パイサオ、デ、メロ
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−111720(JP,A)
【文献】 特開昭57−098579(JP,A)
【文献】 特開昭56−067385(JP,A)
【文献】 特表2007−519798(JP,A)
【文献】 特公昭49−046716(JP,B1)
【文献】 特開昭48−095987(JP,A)
【文献】 特開昭50−057982(JP,A)
【文献】 特開2003−313410(JP,A)
【文献】 特開平11−302208(JP,A)
【文献】 特開2002−317071(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/080960(WO,A2)
【文献】 ブラジル国特許出願公開公報第102013001662明細書,(21.10.2014)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C09K 3/22
B29B17/00−17/04
C08J11/00−11/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱石ダスト抑制樹脂を得るための方法であって、以下の工程:
i)陽イオン性界面活性剤およびアルカリ性媒体の存在下で清浄なPETpcの断片を解重合する工程;
ii)解重合反応の完了後に反応媒体を中和し、テレフタル酸モノマー(TPA)を沈殿させる工程;
iii)エチレングリコールを含有する残りの媒体を濾過し、過剰の相補的な塩をアルコール性溶媒で抽出する工程;
iv)工程iii)で得られた溶液を追加の蒸発プロセスに付して過剰の水を除去し、その結果、中間樹脂を得る工程;
v)工程iv)で得られた中間樹脂に増粘剤を添加して、鉱石ダスト抑制樹脂を得る工程;および所望により、
vi)工程v)で得られた鉱石ダスト抑制樹脂の疎水性を増加させる薬剤を添加する工程
を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項2】
消費後のPETプラスチック(PETpc)が、
a)選択収集物からの、PETpcからなるプラスチック廃棄物の選択;
b)前記プラスチック廃棄物のPETpcとは異なる材料の部分(例えば、ボトルの上部および下部)の排除;
c)洗浄;
d)乾燥;
e)粉砕および断片サイズの標準化
を含んでなる予備的清浄・リサイクルプロセスに付されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程i)で使用される陽イオン性界面活性剤が、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程i)に記載の解重合反応が1〜2時間行われ、温度が90〜110℃の範囲内に維持されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程iii)において、抽出アルコール性溶媒が、イソプロピルアルコール、エチルアルコールおよびメタノールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アルコール性溶媒がイソプロピルアルコールであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
使用後、前記アルコール性溶媒が蒸留によって回収され、別の工程で塩除去のために再使用され得ることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程v)で添加される増粘剤がピロリドン類からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記増粘剤がポリビニルピロリドンであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
所望により、工程vi)で添加される疎水性を増加させる薬剤が、植物から得られたリグニンおよびポリエチレンワックスからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記薬剤が、50%エタノール−水混合物での抽出によって葉および木々の枝から得られたリグニンであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法で得られたエチレンテレフタレートポリマー解重合生成物の樹脂であることを特徴とする、鉱石ダスト抑制樹脂。
【請求項13】
3373、1457、1296、1075および1037cm−1の赤外領域(IV)にある5つの吸収ピークのそれぞれに特徴的な官能基で構成されていることを特徴とする、請求項12に記載の樹脂。
【請求項14】
比色試験で観察される結晶化速度が遅いことを特徴とする、請求項12または13に記載の樹脂。
【請求項15】
低温の臨界条件において良好な安定性を示すことを特徴とする、請求項12〜14のいずれか一項に記載の樹脂。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか一項に記載の鉱石ダスト抑制樹脂を使用することを特徴とする、鉱石粒子排出の抑制のための方法。
【請求項17】
鉱石ダスト抑制における、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法で得られた樹脂の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野およびその簡単な説明
本発明は、ポリマー材料の技術的採掘およびリサイクルに関する。より具体的には、本発明は、鉱石ダスト抑制剤として使用される樹脂を得るための方法に関する。この方法は、ポリエチレンテレフタレート熱可塑性ポリマー(またはPET)のケミカルリサイクルに由来する。鉱石ダスト抑制樹脂を得るための方法は、陽イオン性界面活性剤である、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(hexadecyltrimethylammonium bromide)(CTAB)の存在下で、消費後のPETボトル(post-consumption PET bottles)(PETpc)から得られたポリエチレンテレフタレートポリマーの解重合反応方法論を使用することによって開示される。本発明において得られる鉱石ダスト抑制樹脂を使用することによる鉱石粒子の排出を抑制するための方法もまた、本発明の一部である。
【背景技術】
【0002】
技術水準
鉱業は多くの国の経済にとって非常に重要である。技術水準からの周知の事実によれば、鉱石類はその天然の形態で市販されている(特に、鉄鉱石)か、または例えば、ペレットの形態で圧縮されている。第2の場合では、輸送される前に、これらのペレットは、工場炉で熱処理に付され、その後、処理され、包装され、輸送される。この手順は定期的に使用されているが、ペレット間での連続的な摩擦による多量の微細な粒子または鉱石ダストまたは鉱石粒子の形成を含む、この生産プロセスから生じる多くの不利益があることは周知の事実である。
【0003】
この鉱石ダストは、環境に放出され、最後には、鉱石類の採鉱およびペレット化のプロセスが重要な経済的役割を有する都市の港および工場に近い港およびコミュニティの施設に到達する。これらの粒子の排出は、健康問題に加えて、周囲のコミュニティの住民の日常生活の障害および環境問題の原因となる。
【0004】
技術水準により、水、ポリマー、鉱油およびアルコール誘導体などの様々な粒子排出抑制剤が既に記載されているが、効率的で、環境に優しく、経済的に実行可能なダスト抑制剤の開発は依然として現在の課題である。
【0005】
ポリエチレンテレフタレートは、ポリエステルとして知られている、その主鎖にエステル官能基を含有するポリマークラスの熱可塑性ポリマー部材である。その透明性および耐性が高いことから、主に飲料用の、プラスチックパッケージの製造に広く使用されている。近年、これらのプラスチックの需要が大幅に増加し、これによりPET生産チェーンにおける2つの大きな潜在的な問題が生じる。これらの問題の第1はPETの生産用の原材料の起源に関連しており、これは、全てのポリマーと同様に、ポリエステルは精製・石油改質材料の誘導体(石油化学原材料)で作られており、原材料が、高コストおよびその供給源が再生可能ではないという事実による影響を受けるためである。第2の問題は、環境であり、莫大な量で生産され、廃棄されるために深刻な汚染物質になる、PETから作られた製品、特に、プラスチックボトルおよび他のプラスチック用具の処分を意味する。プラスチック廃棄物の処分は世界的に慢性の問題である。従って、経済的、環境的および持続可能性の動機づけが、PETリサイクルおよびその副生成物の利用に関連した改善および革新の探索を動員する。本発明は、驚くべきことに、プラスチック、特に、消費後のPET(PETpc)のリサイクル副生成物を使用することによって鉱石ダスト抑制樹脂を得ることができることを開示する。
【0006】
いくつかのプラスチックリサイクルプロセスまたはポリマー材料は技術水準から知られており、これらは、製造するポリマーの生産チェーンに戻り得るかまたは商業的利益を伴う他の目的のために使用され得るリサイクルされた原材料を得るために、これらの材料を再使用することおよびそれらの分解の両方を求める。
【0007】
ポリマー材料の各タイプに対して、特定のリサイクル方法がある。一般的には、プラスチックの分離は、リサイクルプロセスの開始であり、とりわけ、密度、熱伝導率、軟化温度などのポリマーの物理的特性を考慮して行わなければならない。
【0008】
プラスチックの分類は、リサイクルに必要な変更の種類に応じて行われ、4つのタイプで定義されている:産業ポリマー廃棄物の再使用および元の製品と類似の特性を有する製品の取得を目的とした、第一次または消費前リサイクル;都市固形廃棄物からのポリマー廃棄物の変換およびバージンポリマーよりも要求が少なく、他の材料の生産で使用される製品の取得を目的とした、第二次または消費後リサイクル;ポリマーからの燃料または化学製品の生産を含むケミカルリサイクルとしても知られており、使用済みの廃プラスチックがモノマーに加工され、元のポリマーと類似の品質を有する新しいプラスチックの生産で再使用される、第三次リサイクル;ならびに、最後に、制御焼却によりポリマー廃棄物のエネルギー回収が行われる、エネルギーリサイクルとも呼ばれている、第四次リサイクル。これらのタイプのリサイクルでは機械的リサイクルも存在し、これは、押出成形によるプラスチックの再加工によって行われ、ペレットに変換されたポリマー材料(プラスチック粒)を得る。
【0009】
消費後のPET型プラスチックの場合、分解のために現在使用されている主な変換のタイプは、化学的解重合または分解としても知られている三次またはケミカルリサイクルである。PET化学分解は、可逆的重合反応に基づいており、加水分解、解糖、メタノリシスおよびアミノリシス、アミノ分解の化学プロセスによって行うことができ、酸、塩基または中性触媒によって触媒することができる。
【0010】
加水分解では、PETは、そのモノマーであるテレフタル酸およびエチレングリコールに解重合される。精製後、これらの材料は、重合にまたは商業的に重要な他の目的に使用することができ、経済性を提供しかつ再生不可能な原材料である石油製品の需要を減らす。
【0011】
参考文献一覧中のいくつかの研究では、解重合反応において水酸化ナトリウム溶液およびメタノールのみを使用し、他の研究では、触媒として酢酸亜鉛を使用しているが、一般的には、これらの方法は、3〜6時間の間の平均時間の反応を特徴とし、これは高エネルギーコストである。
【0012】
本発明は、プロセスおよび最終製品の特性に関連して驚くべき結果を示した、PETの化学分解からダスト抑制樹脂を得るプロセスにおける陽イオン性界面活性剤、好ましくは、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)の使用を開示する。
【0013】
Daniel Passion and Tadeusz Spychajによる総説[Ind. Eng. Chem. Res. 1997, vol.36, p.1373-1383, 1997]は、80年代に開始されたPETのリサイクルの進歩を示している。これらの開発はプロセスコストの削減にとって重要であったが、他の触媒も言及されているが、触媒として界面活性剤を使用した方法はなかった。
【0014】
PET解重合プロセスを最適化しようとしたSOUZA et.al.は、陰イオン性界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate)(DDS)および非イオン性界面活性剤であるTween(商標)タイプ(脂肪酸由来のポリエトキシル化ソルビタンエステル)を利用し、再重合を目的としたテレフタル酸を得るために塩基性媒体中での加水分解により、PETケミカルリサイクルの効率を高めようとした[SOUZA, L.; TORRES, M.C.M.; RUVOLO SON, A.C. Depolymerization of Poly (Ethylene Terephthalate) - PET: Efeitos de Tensoativos e Excesso de Solucao Alcalina. Polymers: Ciencia e Tecnologia, vol.18, No. 4, p.334-341, 2008]。観察された結果は、界面活性剤の使用は、プロセス効率だけでなく、回収されたテレフタル酸に加わる不純物もまた増加させたということあった。
【0015】
これまでにPETの解重合に示された方法は、最終生成物としてテレフタル酸およびエチレングリコールを得るために、長時間の反応および高エネルギー消費を必要とするという欠点を与え、これはリサイクルチェーンにおいて大きなコストを要求することになった。
【0016】
ブラジル特許第PI0200325号には、例えば、最大圧力15気圧および15〜25℃/分の間の加熱速度で得られる198℃までの温度の下での水酸化ナトリウムとのポリマー反応から作製されたPETのケミカルリサイクルによってテレフタル酸を得ることが記載されている。反応終了時に、反応器を冷却し、固体反応生成物であるテレフタル酸二ナトリウムを濾過により分離する。テレフタル酸二ナトリウム溶液は、全てのテレフタル酸が沈殿する溶液pHが値3に達するまで硫酸と反応させ、その濾過、乾燥、粉砕およびスクリーニングを必要とする。
【0017】
SOUZA et.al.によって開始された研究の知識に基づいて、特許願書第BR102013001662−4号に記載されている発明には、テレフタル酸モノマーを得るために、アルカリ加水分解において陽イオン性界面活性剤であるヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)を用いた消費後のPETボトルの解重合反応が記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、触媒および特定の反応条件を使用することにより、PETの化学分解を迅速で効率的な方法で行うことができ、エチレングリコールを含有する中間樹脂を得るための低コストで、この中間樹脂からその後目的の粉末抑制樹脂を得ることが可能である方法を開示する。
【0019】
驚くべきことに、本発明では、PETの化学分解は技術水準で記載した温度よりも低い温度で行われ、圧力および加熱速度の制御が必要である。さらに、本発明の方法は、反応中にプロセスを冷却し、反応物の揮発による損失を防ぐために逆流防止コネクターのみを必要とする単純な反応系を使用する。本発明における別の興味深い要素は、触媒としてCTAB界面活性剤を使用し、解重合反応時間を短縮することである。
【0020】
本発明の妥当性はまた、分解された1トンのPETによって平均300リットルのエチレングリコールが生成されるという事実によっても強調され得る。
【0021】
本発明の目的および利点、既存の問題のための提案された解決法、技術水準と比較した利点。
本発明は、PET熱可塑性ポリマーのケミカルリサイクルによって鉱物粉末抑制樹脂を得るための方法に関する。本発明の方法は、陽イオン性界面活性剤、好ましくは、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)の存在下で、主として消費後のPETボトル廃棄物から得られたPETポリマーの解重合反応方法論を使用する。
【0022】
本発明の目的の1つは、鉱物粉末抑制樹脂を得るためのポリマー材料の持続可能な回収およびリサイクルである。
【0023】
本発明の方法は、消費後のPETのケミカルリサイクルプロセスの副生成物として得られるエチレングリコールを含有する中間樹脂を生産することにあり、このような樹脂は、その後、鉱物粉末抑制剤を得るために使用され、これは、ワゴンおよび鉱石スタックでの粉末の発生によって引き起される欠点を解決することを目的としている。
【0024】
しかしながら、触媒としての陽イオン性界面活性剤の存在下で行われる本発明の解重合プロセスは、示された技術的利点に加えて、PETの分解副生成物としてテレフタル酸の生成も提供し、テレフタル酸が抽出後に重要な商業的価値の集約を有することは注目すべきことである。
【0025】
本発明の別の利点は、企業およびコミュニティの廃棄物のための費用対効果の高い代替処分の典型となるリサイクルプロセスの結果として、商業的に実行可能な製品を得ることである。提案された発明の方法において、PETは、バージン材料の顆粒、産業廃棄物フレークまたは消費後の形態であり得るだけでなく、様々な粒子サイズおよび色でもあり得ることことに言及する価値がある。PETの元の色もまた無関係であり、反応時間および最終製品の品質または純度を損なうことなくそれを使用することができる、例えば、緑色または透明色いずれかのPETボトル。これはまた、それらの起源の色に応じて、PET分離のための追加の工程が必要でないため、迅速な処理にも寄与する。
【0026】
加えて、本方法によりもたらされる鉱石粉末抑制剤、あるいは中間体であるテレフタル酸およびエチレングリコールでさえもその市場価値は、元の原材料の市場価値よりもはるかに高いため、本発明は、リサイクル製品の商業的価値の集約を可能にする(追加の加工を行わずに選択およびリサイクルのプロセスから生じる、ポリマー、特に、PET、の総質量)。
【0027】
本発明の別の利点は、その方法は原材料としてプラスチック廃棄物を使用することから、環境開発および持続可能性に貢献することであり、さらに、この方法の使用によって、廃棄物ピッカーおよびその家族への資格付与(通常は無資格の作業)が可能になり、基本的な労働条件および収入発生を彼らに提供することによって原材料が得られることである。
【0028】
また、本発明の別の利点は、本発明の方法の目的を使用することにより、リサイクルおよびダスト抑制剤由来の製品の販売を通じて、選択収集・リサイクルチェーンに関わる利益コミュニティおよびコレクター協同組合に加えて、大企業の周囲のコミュニティおよび多量のポリマー廃棄物を処分するコミュニティの発展を促進することができることである。
【0029】
本発明の方法のもう1つの利点は、それが、鉱石スタックヤードを使用しかつ/またはその鉱石を鉄道で輸送するいずれの企業によっても使用することが可能な、単純な実行プロセスであるということである。特に、ロジスティカルコスト(logistical costs)がポリマー残留物を除去するための障害となる、産業の中心地から離れた遠隔地に設置されたプロジェクトは、本発明から利益を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、CTABを添加しない場合(反応I)およびCTABを添加する場合(反応II)に示される、本発明の方法の目的において起こるPETpc解重合の化学反応を表す図である。
図2図2は、透過モードの赤外分光法によるPET樹脂の特性評価を示す図である。
図3図3は、製品の熱重量分析(the thermogravimetric analysis)(TGA)、並びに、Nおよび酸化剤(合成空気)の不活性雰囲気中、10℃・分−1の加熱速度、30〜450℃の温度範囲で行った実験を示す図であり、図3(a)は、TPAに関し、図3(b)はPETpcに関する。
図4図4は、(a)PETpcおよび(b)TPAのサンプルについてのDSC曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
本発明を実施するためには、消費後のPETプラスチック(PETpc)が、解重合反応の前に、i)選択収集からの、PETpcからなる廃プラスチックの選択;ii)廃プラスチックからのPETpcとは異なる材料の部分(例えば、ボトルの上部および下部)の除去;iii)洗浄;iv)乾燥;v)粉砕および断片サイズの標準化を含んでなる予備的リサイクル・清浄プロセスに付されることが一般的である。
【0032】
清浄プロセス後、PETpcケミカルリサイクルプロセス自体が開始され、以下の工程を含んでなる:i)陽イオン性界面活性剤およびアルカリ性媒体の存在下で清浄なPETpcの断片を解重合する工程;ii)解重合反応の完了後に反応媒体を中和し、テレフタル酸モノマー(the terephthalic acid monomer)(TPA)を沈殿させる工程;iii)エチレングリコールを含有する残りの媒体を濾過し、過剰の相補的な塩をアルコール性溶媒で抽出する工程;iv)工程iii)で得られた溶液を追加の蒸発プロセスに付して過剰の水を除去し、その結果、中間樹脂を得る工程;v)工程iv)で得られた中間樹脂に増粘剤を添加して、鉱石ダスト抑制樹脂を得る工程;および所望により、vi)工程v)で得られた鉱石ダスト抑制樹脂の疎水性を増加させる薬剤を添加する工程。
【0033】
工程i)で使用される陽イオン性界面活性剤は、好ましくは、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)である。
【0034】
工程i)に記載の解重合反応は、温度を90〜110℃の範囲内に維持しながら1〜2時間行われる。
【0035】
工程iii)のアルコール性溶媒での過剰の相補的塩の抽出において、使用される抽出アルコール性溶媒は任意のアルコール性溶媒であり得、好ましくは、イソプロピルアルコール、エタノール、およびメタノールからなる群から選択され、好ましくは、イソプロピルアルコールである。その使用後、アルコール溶媒は、蒸留によって回収することができ、別の段階である塩除去で再使用することができる。アルコール溶媒は廃棄されることはなく、完全に消費されるまで何度も再使用することができる。
【0036】
工程v)で添加される増粘剤は、ピロリドン類からなる群から選択され、好ましくは、ポリビニルピロリドンである。
【0037】
所望により、工程vi)で添加される疎水性を増加させる薬剤は、植物から得られたリグニンおよびポリエチレンワックスからなる群から選択され、好ましくは、リグニンは50%エタノール−水混合物での抽出によって葉および木々の枝から得られるものである。この樹脂は疎水性が高いほど、鉱石類での使用はより効率的である。
【0038】
樹脂生成物は、下記のように、構造的に特徴付けられた。
【0039】
赤外分光法によるPET樹脂の特性評価は、FTIR、FTLA 2000−102(ABBBOMEM)分光計において、透過モードで実施した。分析は、波長範囲4000〜500cm−1で分解能4cm−1および平均32スキャンで記録した。得られたスペクトルを図2に示す。ここでは、樹脂は、5つの吸収ピーク3373、1457、1296、1075および1037cm−1それぞれに特徴的な官能基を含んでなることが観察された。
【0040】
ピークの帰属は、軸方向変形のため、O−H基については3373cm−1;C=O基については1639cm−1;1457cm−1および1296cm−1およびエチレングリコール(EG)および(C=O)−O基については1075cm−1の領域にあり、ここでは、3373cm−1の領域における強く幅広い吸収の出現に差異が認められる。このスペクトルはPET樹脂の特異性を示し、ここでは、PET解重合生成物を観察することができた。
【0041】
熱重量分析(TGA)は、Shimadzu TG−50装置で実施し、ここでは、サンプル10mgを分析に使用し、実験は、10℃・分−1の加熱速度で、Nおよび酸化性(合成空気)の不活性雰囲気中、30〜450℃の温度範囲で行い、図3に示している。
【0042】
示差走査熱量測定分析(The Differential Scanning Calorimetry Analysis)(DSC)は、Universal V4.7ソフトウェア(TA Instruments)によって制御されるQ100装置(TA Instruments)で実施した。データは、10℃/分の加熱・冷却速度で、50mL・分−1のN流を用いて、25℃〜260℃の温度範囲で得、図4に示している。
【0043】
これらの結果は、図3(a,b)が250〜350℃の範囲の熱分解範囲を有することを示している。しかしながら、PETpcは、酸化性雰囲気中では310〜600℃、不活性雰囲気中では370〜500℃の範囲でより大きな熱安定性を有していた。第1の質量損失は、ジエチレングリコール(diethylene glycol)(DEG)などのコモノマーの存在に起因する。第2の質量損失は、PETpcの炭素鎖中のEGの存在である。
【0044】
DSC熱量測定の結果である図4は、PETpcおよびTPAそれぞれの冷却・加熱曲線を表している。
【0045】
得られた樹脂は、PETpcに由来し、従って、その組成に基づいて解重合反応後にTPAを生成した。ここでは、冷却曲線は明らかな結晶化ピーク(Tc)を示さないため、この材料は結晶化速度が遅く、分子量が高いことおよび結晶化プロセスを遅らせるコポリマーが存在すること(射出吹込成形による加工中にPETに所望の透明性を付与する性質)を正当化している(図4(a))。PETpcの結晶化は、第2の加熱曲線を実行したときに完了しただけであり、Tc=158℃が観察される(図4(a))。第2の加熱曲線は、教授グループDe Paoliによって発表された研究(Spinace, M.A.; De Paoli, M-A., J. Appl. Polym. Sci, 78, p.20 (2001))に従って、PETpcについてガラス転移温度、Tc=81℃および融解温度、Tm=247℃を示した。一方、図4(b)では、PETpcの解重合から回収されたTPAのサンプルに典型的であり、樹脂調製の生成物を示すTc=190℃およびTm=225℃のピークがあった。
【0046】
また、樹脂の流動点も手動法により決定し、ここでは、PET−UFES樹脂の流動点決定値は−22℃であり、これは、PET樹脂は低温の臨界条件において良好な安定性を示すことを示している。
【0047】
好ましい実施形態では、本発明の方法の工程i)に記載の解重合反応は、温度、圧力、時間およびpHの制御下でステンレス鋼反応器中100℃の温度のアルカリ性媒体(NaOH 7.5mol/L)中で行われる。
【実施例】
【0048】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をより良く理解するために示すが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0049】
実施例1:CTAB界面活性剤の存在下でのPETpc解重合反応。解重合反応は、水および洗剤で予め清浄化し、乾燥させ、その後、1cm×1cmのサイズに粉砕したPETpcを用いて行う。PETpc断片は、陽イオン性界面活性剤CTAB 160mLの存在下で7.5mol/Lの濃度の水酸化ナトリウム溶液(NaOH)650mLの存在下で容量1000mLの3つのジョイント付き平底フラスコに加え、100℃で60分間絶えず撹拌し続ける。
【0050】
60分の解重合反応後、濃塩酸を加えてNaOHを中和し、モノマーテレフタル酸(TPA)を塩化ナトリウム塩(NaCl)で沈殿させ、これを濾過により除去する。エチレングリコールを含有する残りの媒体を真空下で濾過し、イソプロピルアルコールを加えて過剰の塩化ナトリウム塩(NaCl)を除去する。過剰の水を除去するために、得られた溶液を再び100℃で蒸発プロセスに付し、中間樹脂200mLを得る。
【0051】
実施例2:ダスト抑制樹脂の調製
実施例2に記載のとおりに得られた中間樹脂200mLに、最終粘度を高めるために生成物PVP K−90(ポリビニルピロリドン)10gを添加し、密度d=1.17g/mLおよび粘度η=55.6mm/sまたは55.6cStの粘度を有する鉱石ダスト抑制樹脂を得る。
【0052】
実施例1および2に示す結果は、反応媒体中の陽イオン性界面活性剤の存在が、中間樹脂を得る反応を、陽イオン性界面活性剤が存在しない反応の反応時間(技術水準によれば、平均時間6時間)と比べてずっと短い時間(実施例1によれば2時間)で行うことを可能にすることを実証した場合、本発明の妥当性および発明性を実証する。反応時間の大幅な短縮に加えて、高純度の生成物が本発明の方法により得られることを強調する。図1は、触媒としてCTAB界面活性剤を使用するまたは使用しない場合の、PETpc解重合の化学反応のスキームを示す。
【0053】
あるいはまた、本発明の一部として、鉱石ダスト抑制樹脂に、樹脂をより疎水性の高いものにするために他の成分を添加し得る。添加剤の例として、本発明の範囲の理解を限定するものではないが、50%エチルアルコールおよび50%蒸留水の混合物で抽出することにより得られる植物リグニン(葉および木の枝など)を添加することができる。
【0054】
本発明をその好ましい実施形態および実施例として記載したが、可能な同等の変更を包含する、それらの請求項の内容によってのみ限定される、本発明の範囲によって他の可能な変形が包含されるものと理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4