(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704931
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】電子制御式車両用変速機
(51)【国際特許分類】
F16D 41/12 20060101AFI20200525BHJP
F16D 1/06 20060101ALI20200525BHJP
F16D 41/08 20060101ALI20200525BHJP
F16D 27/118 20060101ALI20200525BHJP
F16H 61/00 20060101ALI20200525BHJP
F16H 61/22 20060101ALI20200525BHJP
F16H 63/28 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
F16D41/12 A
F16D1/06 110
F16D41/12 C
F16D41/08 A
F16D27/118
F16H61/00
F16H61/22
F16H63/28
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-550839(P2017-550839)
(86)(22)【出願日】2016年1月21日
(65)【公表番号】特表2018-510306(P2018-510306A)
(43)【公表日】2018年4月12日
(86)【国際出願番号】US2016014243
(87)【国際公開番号】WO2016160101
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2017年11月15日
(31)【優先権主張番号】14/675,853
(32)【優先日】2015年4月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506416950
【氏名又は名称】ミーンズ インダストリーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】キムズ,ジョン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリック,テリー オー.
【審査官】
日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−155131(JP,A)
【文献】
特表2003−515709(JP,A)
【文献】
特開2010−60104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/12,27/118
F16H 61/26−61/36,63/00−63/38
H01F 7/06− 7/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子制御式車両用変速機において、
変速機ケースと、
回転軸線を中心に回転するように支持されたカップリング部材であって、前記カップリング部材が、1組の係止形成部を備えた第1のカップリング面を有し、前記係止形成部の各々が第1の耐荷重面を画定する、カップリング部材と、
前記変速機ケースに取り付けられた電気機械構成部品であって、
前記第1のカップリング面に近接離間して対向した状態にある第2のカップリング面を有する端壁であって、前記端壁の内面と連通した状態にある、耐荷重面を画定する単一のポケットを有する前記端壁を含む、閉鎖された軸方向端部を有するハウジング部と、
前記ハウジング部により少なくとも部分的に取り囲まれた少なくとも1つの励磁コイルを含む電磁波源と、
非カップリング位置において前記ポケット内に受け入れられると共に、前記カップリング部材を前記ケースに結合するために前記ポケットから外方にカップリング位置へ移動可能である要素であって、前記カップリング位置が、前記係止形成部のうちの1つの前記係止形成部のそれぞれの面および前記端壁との前記要素の当接係合により特徴付けられる、要素と、
前記少なくとも1つの励磁コイルに対して同心状に配設されると共に、前記少なくとも1つの励磁コイルに電流が供給されたときに軸方向に移動可能である往復運動するアーマチュアであって、前記要素を前記カップリング位置と前記非カップリング位置との間で移動させるために前記要素に接続されるアーマチュアと
を含む電気機械構成部品と
を備えることを特徴とする変速機。
【請求項2】
請求項1に記載の変速機において、前記要素が少なくとも1つの突出する脚部分を含み、各脚部分が開口を有し、かつ前記電気機械構成部品が、前記アーマチュアの往復運動に応答して前記要素の回転運動を可能にするために各開口内に受け入れられた枢支ピンを更に含むことを特徴とする変速機。
【請求項3】
請求項2に記載の変速機において、アーマチュアと共に移動するように前記アーマチュアに接続されたプランジャを更に備え、前記プランジャの先端部が前記枢支ピンを介して前記要素に接続されることを特徴とする変速機。
【請求項4】
請求項3に記載の変速機において、前記プランジャがばね負荷されることを特徴とする変速機。
【請求項5】
請求項1に記載の変速機において、前記ハウジング部が、前記電気機械構成部品を前記変速機ケースに取り付けるための少なくとも1つの取付フランジを有することを特徴とする変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年4月1日に出願された米国特許出願第14/675,853号明細書の継続出願であり、本出願はまた、2014年2月19日に出願された米国仮特許出願第61/941,741号明細書の利点を主張すると共に、2013年8月27日に出願された米国仮特許出願第61/870,434号明細書の利益を主張する、現在係属中の、2014年5月28日に出願された米国特許出願第14/288,819号明細書の一部継続出願であり、本出願はまた、2010年12月10日に出願された米国仮特許出願第61/421,856号明細書の利点を主張する、2011年5月16日に出願されたPCT/US2011/036634号明細書の米国特許法第371条に基づく出願である、2013年6月10日に出願された米国特許出願第13/992,785号明細書の一部継続出願である。本出願はまた、2014年6月10日に出願された米国特許出願第14/300,275号明細書の一部継続出願であり、2013年8月27日に出願された米国仮特許出願第61/870,434号明細書の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、概して、電子制御式車両用変速機、制御可能なカップリング組立体、およびかかる組立体に使用されるカップリング部材に関する。
【背景技術】
【0003】
クラッチなどのカップリング組立体は、駆動ディスクまたはプレートなどの、第1の回転可能な駆動部材からの動力を、被駆動ディスクまたはプレートなどの、第2の独立に回転可能な被駆動部材に選択的に結合するために、多種多様な用途に使用される。「一方向」クラッチまたは「オーバーランニング」クラッチと一般的に称される、1つの既知の種類のクラッチでは、クラッチは、駆動部材が被駆動部材に対して第1の方向に回転するときにのみ、駆動部材を被駆動部材に機械的に結合するように係合する。更に、クラッチは、係合していなければ、駆動部材を被駆動部材に対して第2の方向に自由に回転させる。このような被駆動部材に対する駆動部材の第2の方向への「フリーホイーリング」はまた、「オーバーランニング」状態として知られている。
【0004】
1つのタイプの一方向クラッチは、同軸の駆動プレートおよび被駆動プレートを含み、これらプレートは、近接離間した並置関係をなすほぼ板状のクラッチ面を有する。複数の凹部またはポケットが、駆動プレートの面に、軸線を中心に角度をなして離間した位置に形成され、ポケットの各々には支柱または爪が配置される。複数の凹部またはノッチは、被駆動プレートの面に形成され、駆動プレートが第1の方向に回転しているときに支柱の1つまたは複数と係合可能である。駆動プレートが第1の方向と反対の第2の方向に回転するときに、支柱がノッチから外れ、それにより、被駆動プレートに対する駆動プレートのフリーホイーリング運動を可能にする。
【0005】
駆動プレートが第2の方向から第1の方向に方向を反転すると、駆動プレートは通例、クラッチが係合するまで被駆動プレートに対して回転する。相対回転量が増加するにつれて、係合騒音の可能性も増加する。
【0006】
制御可能または選択可能な一方向クラッチ(すなわち、OWC)は、従来型の一方向クラッチの設計から逸脱している。選択可能なOWCには、摺動プレートと併せて第2の組の係止部材が追加される。摺動プレートを加えた追加の組の係止部材はOWCに複数の機能を加える。設計上の要求に応じて、制御可能なOWCは、回転軸または固定軸間に機械的接続を一方向または両方向にもたらすことができる。また、設計に応じて、OWCは、一方向または両方向にオーバーランニングすることができる。制御可能なOWCは、外部制御される選択機構または制御機構を収容する。この選択機構は、異なる動作モードに対応する2つ以上の位置間で移動することができる。
【0007】
米国特許第5,927,455号明細書は、双方向オーバーランニング爪型クラッチを開示しており、米国特許第6,244,965号明細書は、板状のオーバーランニングカップリングを開示しており、かつ米国特許第6,290,044号明細書は、自動変速機に使用される選択可能な一方向クラッチ組立体を開示している。米国特許第7,258,214号明細書および米国特許第7,344,010号明細書は、オーバーランニングカップリング組立体を開示しており、かつ米国特許第7,484,605号明細書は、オーバーランニングラジアルカップリング組立体またはクラッチを開示している。
【0008】
適切に設計された制御可能なOWCは、「オフ」状態における寄生損失をほぼゼロとすることができる。OWCはまた電気機構により作動させることができ、かつOWCには、複雑さも油圧ポンプおよび弁の寄生損失もどちらもない。
【0009】
パワーシフト変速機において、チップイン衝撃音は、トルクコンバータが存在しないために最も困難な課題の1つである。運転者がチップインした(すなわち、惰性走行状態の後にアクセルペダルを押し下げた)ときに、エンジンとパワーシフト変速機入力との間の流体カップリングなしの機械的リンク機構により、ギヤシフトの荒さおよびノイズ(衝撃音と称される)が車室内で聞かれ感じられる。チップイン衝撃音は、低速で惰性走行する車両を駐車スペース内へと操縦するために加速させる、駐車場での操縦において特に深刻である。
【0010】
良好な変速品質を達成しかつチップイン衝撃音を排除するために、パワーシフト変速機は、従来の自動変速機の制御方式と異なる制御方式を採用するべきである。制御システムは、パワーシフト変速機の特有の動作特性に対処するべきであり、かつ好ましくない荒さを回避するが、運転者の期待およびパワーシフト変速機の性能要件を妨げない改善ステップを含むべきである。パワーシフト変速機におけるシフトの荒さとチップイン衝撃音に伴う騒音とを排除する必要がある。
【0011】
本開示の目的では、「カップリング」という用語は、プレートの一方が変速機のトルク伝達要素に駆動可能に接続され、かつ他方のプレートが、別のトルク伝達要素に駆動可能に接続されるか、または変速機ハウジングに対して固定され静止状態に保持されるクラッチまたはブレーキを含むものと解釈されるべきである。「カップリング」、「クラッチ」および「ブレーキ」という用語は交換可能に使用される場合がある。
【0012】
ポケットプレートには、一方向クラッチの軸線の周りに角度をなして配置される凹部またはポケットを設けてもよい。ポケットは、ポケットプレートの平面に形成される。各ポケットはトルク伝達支柱を受け入れ、このトルク伝達支柱の一方の端部が、ポケットプレートのポケット内の固定点に係合する。以下、能動縁部と称される場合もある、支柱の対向する縁部は、ポケット内の位置から、能動縁部がポケットプレートの平面から外方に延びる位置へ移動可能である。支柱を個々のばねによりポケットプレートから離れる方向に付勢してもよい。
【0013】
ノッチプレートには、ポケットプレートのポケットのほぼ湾曲部に位置する複数の凹部またはノッチを形成してもよい。ノッチは、ノッチプレートの平面に形成される。
【0014】
オーバーランニング板状クラッチの別の例が米国特許第5,597,057号明細書に開示されている。
【0015】
本発明に関係するいくつかの米国特許としては、米国特許第4,056,747号明細書、米国特許第5,052,534号明細書、米国特許第5,070,978号明細書、米国特許第5,449,057号明細書、米国特許第5,486,758号明細書、米国特許第5,678,668号明細書、米国特許第5,806,643号明細書、米国特許第5,871,071号明細書、米国特許第5,918,715号明細書、米国特許第5,964,331号明細書、米国特許第5,979,627号明細書、米国特許第6,065,576号明細書、米国特許第6,116,394号明細書、米国特許第6,125,980号明細書、米国特許第6,129,190号明細書、米国特許第6,186,299号明細書、米国特許第6,193,038号明細書、米国特許第6,386,349号明細書、米国特許第6,481,551号明細書、米国特許第6,505,721号明細書、米国特許第6,571,926号明細書、米国特許第6,814,201号明細書、米国特許第7,153,228号明細書、米国特許第7,275,628号明細書、米国特許第8,051,959号明細書、米国特許第8,196,724号明細書、および米国特許第8,286,772号明細書が挙げられる。
【0016】
なお更に他の関連する米国特許としては、米国特許第4,200,002号明細書、米国特許第5,954,174号明細書、および米国特許第7,025,188号明細書が挙げられる。
【0017】
米国特許第6,854,577号明細書は、係合の衝撃音を減衰するためにプラスチック/鋼製の支柱の対を含む騒音減衰型の一方向クラッチを開示している。プラスチック製支柱は、鋼製支柱よりも僅かに長い。このパターンを2重にして2重係合にすることができる。この手法はある程度成功している。しかしながら、プラスチック部品が一定期間にわたって熱油にさらされたときに減衰機能が停止した。
【0018】
金属射出成形(MIM)は、射出成形として知られるプロセスを通して塑性加工設備で取り扱うことが可能な「原料」を構成するように、微粉状金属が測定された量のバインダ材料と混合される金属加工プロセスである。成形プロセスは、複雑な部品が単一の作業でかつ大量に形状決めされることを可能にする。最終製品は、一般的に、種々の産業および用途で使用される構成部品である。MIM原料の流れの性質は、レオロジーと称される物理学により定義される。現在の設備能力は、加工が「1ショット」毎に100グラム以下の典型的な容量を使用して金型内に成形できる製品に限定されることを必要とする。レオロジーは、この「ショット」が複数の空洞内に分配されることを可能にし、これにより、さもなければ代替方法または古典的方法による製造が非常に高価である小さく複雑な大量の製品に対するコスト効率が高くなる。MIM原料において具現化可能な各種金属は粉末冶金と称され、これら金属は、共通/特殊金属用途に関する工業規格に見られる同じ合金成分を含む。その後の調整作業が成形形状に対して実施され、この調整作業では、バインダ材料が除去されかつ金属粒子が金属合金の所望の状態に合一化される。
【0019】
本発明の少なくとも1つの態様に関係する他の米国特許文献としては、米国特許第8,813,929号明細書、米国特許第8,491,440号明細書、米国特許第8,491,439号明細書、米国特許第8,286,772号明細書、米国特許第8,272,488号明細書、米国特許第8,187,141号明細書、米国特許第8,079,453号明細書、米国特許第8,007,396号明細書、米国特許第7,942,781号明細書、米国特許第7,690,492号明細書、米国特許第7,661,518号明細書、米国特許第7,455,157号明細書、米国特許第7,455,156号明細書、米国特許第7,451,862号明細書、米国特許第7,448,481号明細書、米国特許第7,383,930号明細書、米国特許第7,223,198号明細書、米国特許第7,100,756号明細書、および米国特許第6,290,044号明細書、ならびに米国特許出願公開第2015/0000442号明細書、米国特許出願公開第2014/0305761号明細書、米国特許出願公開第2013/0277164号明細書、米国特許出願公開第2013/0062151号明細書、米国特許出願公開第2012/0152683号明細書、米国特許出願公開第2012/0149518号明細書、米国特許出願公開第2012/0152687号明細書、米国特許出願公開第2012/0145505号明細書、米国特許出願公開第2011/0233026号明細書、米国特許出願公開第2010/0105515号明細書、米国特許出願公開第2010/0230226号明細書、米国特許出願公開第2009/0233755号明細書、米国特許出願公開第2009/0062058号明細書、米国特許出願公開第2009/0211863号明細書、米国特許出願公開第2008/0110715号明細書、米国特許出願公開第2008/0188338号明細書、米国特許出願公開第2008/0185253号明細書、米国特許出願公開第2006/0124425号明細書、米国特許出願公開第2006/0249345号明細書、米国特許出願公開第2006/0185957号明細書、米国特許出願公開第2006/0021838号明細書、米国特許出願公開第2004/0216975号明細書、および米国特許出願公開第2005/0279602号明細書が挙げられる。
【0020】
本発明の少なくとも1つの態様に関係するいくつかの他の米国特許文献としては、米国特許第8,720,659号明細書、米国特許第8,418,825号明細書、米国特許第5,996,758号明細書、米国特許第4,050,560号明細書、米国特許第8,061,496号明細書、米国特許第8,196,724号明細書、および米国特許出願公開第2014/0190785号明細書、米国特許出願公開第2014/0102844号明細書、米国特許出願公開第2014/0284167号明細書、米国特許出願公開第2012/0021862号明細書、米国特許出願公開第2012/0228076号明細書、米国特許出願公開第2004/0159517号明細書、および米国特許出願公開第2010/0127693号明細書が挙げられる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「センサ」という用語は、検知要素もしくは他の構成部品を含む回路または組立体を説明するために使用される。特に、本明細書で使用される場合、「磁界センサ」という用語は、磁界検知要素と、磁界検知要素に結合された電子機器とを含む回路または組立体を説明するために使用される。
【0022】
本明細書で使用される場合、「磁界検知要素」という用語は、磁界を検知できる様々な電子要素を説明するために使用される。磁界検知要素は、限定されるものではないが、ホール効果要素、磁気抵抗要素、または磁気トランジスタとすることができる。既知のように、異なるタイプのホール効果要素、例えば、平面ホール要素、垂直ホール要素、および円形垂直ホール(CVH)要素が存在する。また既知のように、異なるタイプの磁気抵抗要素、例えば、巨大磁気抵抗(GMC)要素、異方性磁気抵抗要素(AMR)、トンネル磁気抵抗(TMR)要素、アンチモン化インジウム(InSb)センサ、および磁気トンネル接合(MTJ)が存在する。
【0023】
既知のように、上で説明した磁界検知要素のいくつかは、磁界検知要素を支持する基板に平行な最大感度軸線を有する傾向があり、上で説明した磁界検知要素の他のものは、磁界検知要素を支持する基板に直交する最大感度軸線を有する傾向がある。特に、平面ホール要素は、基板に直交する感度軸線を有する傾向があり、その一方で、磁気抵抗要素および垂直ホール要素(円形垂直ホール(CVH)検知要素を含む)は、基板に平行な感度軸線を有する傾向がある。
【0024】
磁界センサは、限定されるものではないが、磁界の方向の角度を検知する角度センサ、通電導体による通電により生成された磁界を検知する電流センサ、強磁性体の接近を検知する磁気スイッチ、強磁性物品、例えば、リング磁石の磁気領域の通過を検知する回転検出器、および磁界の磁界密度を検知する磁界センサを含む、様々な用途に使用される。
【発明の概要】
【0025】
本発明の少なくとも1つの実施形態の目的は、低コストの電子制御式車両用変速機、制御可能なカップリング組立体、および組立体に使用されるカップリング部材を提供することである。
【0026】
本発明の少なくとも1つの実施形態の上記の目的および他の目的を達成するために、制御可能なカップリング組立体に使用されるカップリング部材が提供される。部材は、回転軸線を中心に回転するように構成される。部材は、軸線に沿って軸方向に面する向きに配置された第1のカップリング面を有すると共に、軸線を中心に角度をなして離間した1組のポケットを有する。ポケットの各々は、第1の係止要素を受け入れると共に、それぞれの第1の係止要素の耐荷重面と当接係合するようになされた第1の耐荷重面を画定する。部材は、軸線に対して径方向に面する向きに配置された第2のカップリング面を更に含むと共に、1組の係止形成部を有する。1組の係止形成部の各々は、第2の係止要素の耐荷重面と当接係合するようになされた第2の耐荷重面を画定する。
【0027】
部材はプレートであってもよく、1組のポケットは順方向ポケットであり、かつ1組の係止形成部は離間した逆方向カムである。
【0028】
逆方向カムの数は、順方向ポケットの数よりも多くてもよい。
【0029】
離間した逆方向カムは、離間した係止歯であってもよい。
【0030】
プレートは、各逆方向カムがプレートの全幅にわたって延びる幅を有してもよい。
【0031】
部材は、1組の係止形成部が形成された外周面を有するスプラインリングであってもよい。
【0032】
1組のポケットは、順方向係止要素を受け入れるための順方向ポケットであってもよく、かつ1組の係止形成部は逆方向係止形成部であってもよい。
【0033】
更に、本発明の少なくとも1つの実施形態の上記の目的および他の目的を達成するために、複数の動作モードを有する制御可能なカップリング組立体が提供される。組立体は、共通回転軸線を中心に互いに対して回転するように支持された第1のカップリング部材および第2のカップリング部材を含む。第1のカップリング部材は、軸線に沿って軸方向に面する向きに配置された第1のカップリング面を有すると共に、軸線を中心に角度をなして離間した1組のポケットを有する。ポケットの各々は、第1の係止要素を受け入れると共に、それぞれの第1の係止要素の耐荷重面と当接係合するようになされた第1の耐荷重面を画定する。第1のカップリング部材は、軸線に対して径方向に面する向きに配置された第2のカップリング面を更に含むと共に、1組の係止形成部を有する。1組の係止形成部の各々は、第2の係止要素の耐荷重面と当接係合するようになされた第2の耐荷重面を画定する。
【0034】
第1のカップリング部材はプレートであってもよく、1組のポケットは順方向ポケットであり、かつ1組の係止形成部は離間した逆方向カムである。
【0035】
逆方向カムの数は、順方向ポケットの数よりも多くてもよい。
【0036】
離間した逆方向カムは、離間した係止歯であってもよい。
【0037】
プレートは、各逆方向カムがプレートの全幅にわたって延びる幅を有してもよい。
【0038】
第1のカップリング部材は、1組の係止形成部が形成された外周面を有するスプラインリングであってもよい。
【0039】
1組のポケットは、順方向係止要素を受け入れるための順方向ポケットであってもよく、かつ1組の係止形成部は逆方向係止形成部であってもよい。
【0040】
なお更に、本発明の上記の目的および他の目的を達成するために、電子制御式車両用変速機が提供される。変速機は、変速機ケースと、回転軸線を中心に回転するように支持されたカップリング部材とを含む。部材は、1組の係止形成部を備えた第1のカップリング面を有する。係止形成部の各々は、第1の耐荷重面を画定する。変速機はまた、変速機ケースに取り付けられた電気機械構成部品であって、第1のカップリング面に近接離間して対向した状態にある第2のカップリング面を有する端壁であって、端壁の内面と連通した状態にある、第2の耐荷重面を画定する単一のポケットを有する端壁を含む、閉鎖された軸方向端部を有するハウジング部を含む電気機械構成部品を含む。構成部品はまた、ハウジング部により少なくとも部分的に取り囲まれた少なくとも1つの励磁コイルを含む電磁波源と、非カップリング位置においてポケット内に受け入れられると共に、カップリング部材をケースに結合するためにポケットから外方にカップリング位置へ移動可能である要素とを含む。カップリング位置は、係止形成部のうちの1つの係止形成部のそれぞれの面および端壁との要素の当接係合により特徴付けられる。構成部品は、少なくとも1つの励磁コイルに対して同心状に配設されると共に、少なくとも1つの励磁コイルに電流が供給されるときに軸方向に移動可能である往復運動するアーマチュアを更に含む。アーマチュアは、要素をカップリング位置と非カップリング位置との間で移動させるために要素に接続される。
【0041】
要素は、少なくとも1つの突出する脚部分を含んでもよい。各脚部分は、開口を有してもよい。構成部品は、アーマチュアの往復運動に応答して要素の回転運動を可能にするために各開口内に受け入れられた枢支ピンを更に含んでもよい。
【0042】
変速機は、アーマチュアと共に移動するようにアーマチュアに接続されたプランジャを更に含んでもよい。プランジャの先端部は枢支ピンを介して要素に接続されてもよい。
【0044】
ハウジング部は、構成部品を変速機ケースに取り付けるための少なくとも1つの取付フランジを有してもよい。
【0045】
例示的な実施形態について上で説明してきたが、これらの実施形態で本発明の全ての可能な形態を説明することは意図していない。むしろ、本明細書で使用する語句は限定的なものではなく説明的な語句であり、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく種々の変更を加えることができることを理解されたい。加えて、種々の実行する実施形態の特徴を組み合せて本発明の更なる実施形態を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は、本発明の少なくとも1つの実施形態に従って構築された制御可能なカップリング組立体および電気機械構成部品の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の組立体および構成部品の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2の図と同様の、但し異なる角度から見た、組立体および構成部品の図である。
【
図4】
図4は、構成部品の係止要素が組立体のカップリング部材の係止形成部に向けて部分的に延出された仮想線で示す第2の電気機械構成部品を伴う
図1の組立体および構成部品の、一部を切り欠いた拡大側面図である。
【
図5】
図5は、
図4の側面図の反対側であるが、構成部品の1つ(断面図で示す)が、本発明の少なくとも1つの実施形態に従って構築された電子制御式車両用変速機のケース(同じく断面図で示す)内に挿入された、部分ブロック図および側面図である。
【
図6】
図6は、前図の電気機械構成部品の概略斜視底面図である。
【
図7】
図7は、電気機械構成部品の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
必要に応じて、本発明の詳細な実施形態が本明細書に開示される。しかしながら、開示される実施形態は、種々の代替形態で具体化され得る本発明の単なる代表例であることが理解されるべきである。図面は必ずしも原寸に比例したものではなく、いくつかの特徴は、特定の構成部品の詳細を示すために誇張または最小化されている場合がある。それゆえ、本明細書に開示される特定の構造的および機能的な詳細は、限定するものとして解釈されるべきではなく、単に本発明を様々に用いるために当業者に教示するための代表的な根拠として解釈されるべきである。
【0048】
ここで図面を参照すると、
図5に全体として10で表される、電子制御式車両用変速機の一実施形態が図示されている。変速機10は、ケース40を完全に貫通して延びるボア41を有する変速機ケース40を含む。当技術分野で周知のように、変速機ケース40は、主に、(1)変速機ケース40内に収容された熱油、(2)変速機ケース40内におけるいずれかの電気回路の短絡を引き起こす油の汚染、および(3)振動のために、変速機10の使用時に電気的構成部品にとって過酷である、変速機ケース40に関連する環境を有する。
【0049】
変速機10はまた、ケース40の過酷な環境において動作することが可能である、全体として14で表される、電気機械構成部品を含む。構成部品14は、以下、本明細書ではSSI(すなわち、選択可能なソレノイドインサート)と称される場合もある。構成部品14は、ボア41に挿通されると共に、構成部品14の、全体として48で表される、ハウジングの環状フランジ44を貫通して形成された孔46を貫通して延びるねじ締結具(図示せず)によりボア41内に保持される。締結具は、構成部品14をケース40に固定するためにボア41の周りにケース40に形成された閾値孔42内に延びる。
【0050】
ここで
図1〜
図3を参照すると、変速機10はまた、全体として12で表される、制御可能なカップリング組立体を含み、そして、このカップリング組立体は、回転軸線16を中心とした互いに対する回転のために装着される、第1のカップリング部材18および第2のカップリング部材22をそれぞれ含む。第1のカップリング部材18は、軸線16に対して第1の方向に軸方向に面する向きに配置された第1のカップリング面19を有し、かつ第2のカップリング部材22は、軸線16に対して第1の方向とは反対の第2の方向に軸方向に面する向きに配置された第2のカップリング面23を有する。第2のカップリング部材22はまた、軸線16に対して径方向に面する向きに配置されると共に、第3のカップリング面25に形成された1組の係止形成部または歯30を有する、第3のカップリング面25を有する。歯30は、好ましくは強磁性または磁性歯30である。
【0051】
カップリング組立体12はまた、カップリング部材22の面23に形成された角度をなして離間したポケット26内に受け入れられる1組の順方向係止要素または支柱20を含む。カップリング部材22は、軸線16を中心とした回転のために駆動部材または被駆動部材(図示せず)に駆動係合するようにカップリング部材22の内径に形成された1組のスプライン28を有する。
【0052】
組立体12はまた、カップリング部材18および22を互いに保持するためにカップリング部材18の軸方向に延びる壁37の環状溝36内に挿入するための、全体として24で表される、係止リングまたはプレートを含む。係止プレート24は、プレート24が溝36内に挿入されたときに部材18の壁37に設けられた周方向切欠き32と一致するかまたは位置合わせされる周方向切欠き34を有する。この特徴は、
図4および
図5に示すように構成部品14の係止要素または支柱52が部材22の歯30に係合することを可能にする。
【0053】
ハウジング部またはハウジング48は、部材18および22が係止リング24により互いに接合され組み付けられたときであってケース40のボア41内への構成部品14の挿入後に部材22のカップリング面25に近接離間して対向した状態にある外側カップリング面49(
図5)を有する。
【0054】
ハウジング部48の外側カップリング面49は、単一の、T字状の凹部またはポケット51を有する。凹部51は、第1の耐荷重面肩部53を画定する。部材22のカップリング面25は、複数の逆方向ノッチまたは歯30を有する。歯30の各歯は、第2の耐荷重面または肩部31を画定する。
【0055】
係止支柱または要素52は、
図4および
図5に示すように組立体12およびケース40が互いに組み付けられたときに、それぞれカップリング位置および非カップリング位置において、部材22のカップリング面25と部品48のカップリング面49との間に延びることが可能である。
【0056】
要素52は、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な強磁性の係止要素または支柱を備えてもよい。第1の位置(すなわち、カップリング位置)は、歯30のうちの1つの歯30の耐荷重面または肩部31およびハウジング部48の端壁に形成されたポケット51の肩部53との係止要素52の当接係合により特徴付けられる。第2の位置(すなわち、非カップリング位置)は、歯30のうちの少なくとも1つの歯30の耐荷重肩部31およびハウジング部48の端壁と係止要素52が当接係合しないことにより特徴付けられる。
【0057】
電気機械構成部品または装置(すなわち、SSI)14は、端壁を含む閉鎖された軸方向端部を有するハウジング部48を含む。端壁は、端壁の内面と連通した状態にある、耐荷重肩部53を画定する単一のポケット51を備えた外側カップリング面49を有する。ハウジング部48は、金属(例えば、アルミニウム)射出成形された(MIM)部品であってもよい。
【0058】
装置14はまた、ハウジング部48のスカートにより少なくとも部分的に取り囲まれる少なくとも1つの励磁コイル62を含む、電磁波源を含む。
【0059】
絶縁電気配線64は、熱油環境の外側に位置する電源からコイル62に電力を供給する。配線64は、コイル62から、端部シール82を貫通して形成された孔65(
図5)を通り、外側被覆84を貫通して形成された空洞86を通って、ソレノイド制御装置へと延びる。
【0060】
支柱52は、U字状保持具50によりポケット51内に保持される。支柱52は、ポケット51から外方に、歯30のうちの1つの歯30の耐荷重面または肩部31と支柱52との当接係合により特徴付けられる展開されたカップリング位置へ移動可能である。
【0061】
装置14はまた、少なくとも1つの励磁コイル62に対して同心状に配設されると共に、少なくとも1つの励磁コイル62にワイヤ64を介して電流が供給されるときに軸方向に移動可能である、全体として70で表される、往復運動するプランジャを含む。コイル62は、アクチュエータコアもしくはアーマチュア76に巻回されるかまたはアクチュエータコアもしくはアーマチュア76の周りに位置すると共に、プレート60とプレート78との間にポッティングされる。アーマチュア76はまた、コイル励磁の際に軸方向に移動可能である。プレート60は、ハウジング端壁の内面に当接する。プランジャ70は、プレート60を貫通して形成された孔61(
図7)を貫通して延びると共に、要素52を要素52のカップリング位置と非カップリング位置との間で移動させるためにプランジャ70の先端部72が要素52に接続される。プランジャ70はまた、アーマチュア76を貫通して形成された開口75を貫通して延びる。プランジャ70の対向する端部は、アーマチュア76の下面に当接する環状スペーサ68の下面に当接することにより歯30に向かう開口75内でのプランジャ70の移動を制限する、対向する端部に位置決めされた係止ナットまたはキャップ80を有する。
【0062】
要素52は、プランジャ70の開口付き先端部72に枢動可能に接続され、プランジャ70は、アーマチュア76の往復運動に応答して軸方向に移動するプランジャ70の往復運動に応答してポケット51内の要素52を枢動させる。
【0063】
装置14はまた、好ましくは復帰ばね66を含み、この復帰ばね66は、コイル62への通電が停止されたときにプランジャ70およびアーマチュア76を定位置に戻し、それにより、要素52を非カップリング位置に戻すために、プレート60とアクチュエータコアまたはアーマチュア76の外面における肩部との間に延びる。装置14はまた、要素52をカップリング位置に向けて移動させるようにプランジャ70を付勢するばね74を含む。換言すれば、付勢部材またはばね66は、要素52の非カップリング位置に対応する復帰位置にアーマチュア76を介してプランジャ70を付勢し、その一方で、付勢部材またはばね
74は、プランジャ70とプランジャ70に接続された要素52とを要素52のカップリングされた位置に付勢する。
【0064】
ハウジング部48および/またはプレート78は、油がハウジング部48内を循環することを可能にするための孔(図示せず)を有してもよい。好ましくは、少なくとも1つのコイル62、ハウジング部48、アーマチュア76およびプランジャ70は、薄型のソレノイドを備える。係止要素52は、金属(例えば、アルミニウム)射出成形された(すなわち、MIM)支柱であってもよい。
【0065】
要素52は、プランジャ70の先端部72の取付位置を提供する少なくとも1つの、好ましくは、2つの突出する脚部分55を含む。各脚部分55は開口57を有する。装置14は、プランジャ70の往復運動に応じて要素52の回転運動を可能にするために各開口57および開口先端部72内に受け入れられた枢支ピン54を更に備え、プランジャ70の先端部72は枢支ピン54を介して要素52に接続される。
【0066】
好ましくは、各開口55は、プランジャ70の往復運動に応答して要素52の回転運動と並進運動との両方を可能にするために枢支ピン54を受け入れる長円形開口である。各係止支柱52は、鉄系金属(すなわち、鋼)などの任意の適切な剛性材料を含んでもよい。
【0067】
構成部品14はまた、歯30が回転してセンサ56を通り過ぎるときに歯30の速度を検知する差動ホール効果装置を備え得る磁界速度センサまたは装置56を含む。歯30は、歯の外面に形成された孔に埋め込まれ得る希土類の自動車グレードの磁石またはペレット(図示せず)を支えるかまたは支持してもよい。その場合に、歯30は、アルミニウム製の歯などの鉄を含まない歯であってもよい。代替的に、および好ましくは、歯30は強磁性歯である。
【0068】
装置56は、通例、逆バイアスされ、2本のワイヤ58(
図7)を有し、かつセンサ56を通り過ぎる歯30の回転速度に基づいて電流出力を提供する。装置56は、単一の出力(すなわち、電流出力)により速度を正確に検出する。装置56は、好ましくはポケット51に隣接して装着され、かつワイヤ58は、プレート60に形成された開口61を貫通して延びる。コイル62のワイヤ58および64は、ソレノイド制御装置に結合され、そして、このソレノイド制御装置は、主制御装置からの制御信号に応答してコイル62に駆動信号を供給するために主制御装置に結合される。装置56の側面が支柱52の非カップリング位置において支柱52の側面に近接するように、装置56を締結具によりまたは接着剤により適所に保持してもよい。
【0069】
センサ56は、通例、歯30が強磁性である場合に逆バイアスされ、かつ当技術分野で周知のように、通例、他の電子機器または構成部品が装着される回路基板に装着されたホールセンサまたは検知要素を含む。センサ56は、好ましくは、歯30がセンサ56を通り過ぎるときに変化する磁束または磁界を生成する希土類磁石を含む点において、逆バイアスされる。センサ56は、逆バイアスされた差動ホール効果装置を備えてもよい。
【0070】
換言すれば、装置56は、好ましくは、歯30が希土類ペレットまたは磁石を通り過ぎるときに磁界が変化する希土類ペレットまたは磁石を含む逆バイアスされた装置である。可変磁界は、装置56の磁気検知要素により検知される。
【0071】
装置56からの出力信号は、ソレノイド制御装置により受け取られるフィードバック信号である。フィードバックを提供することにより、結果的に得られる閉ループ制御システムは、真の速度動作を提供する。
【0072】
上で説明したように、順方向支柱の数(すなわち、14本)は、逆方向支柱の数(すなわち、1本または2本)よりも多い。また、逆方向ノッチの数は、順方向ノッチの数よりも多い。この状況では、カップリング組立体12などのカップリング組立体が「ロックロック(lock−lock)」状態となる可能性があり、この状態では、移行バックラッシュ(すなわち、クラッチが順方向と逆方向との間で移動できる距離)が極めて小さい。これにより、係止要素は命令時に係止要素のカップリング位置から離脱することができない。
【0073】
本出願と同日に出願されかつ同一の譲渡人を有する米国特許出願第14/675,850号明細書で説明され特許請求されているように、上で説明した問題を回避するために、逆方向支柱およびノッチの数ならびに順方向支柱およびノッチの数は、順方向バックラッシュが逆方向バックラッシュのゼロでない整数倍(すなわち「N」)となりかつ順方向ポケットが軸線16を中心に角度をなして均等に離間するように選択される。以下は、登録値11、14および15のみが上記の基準を満たさない36個の登録値を有する表である。
【0074】
一般的な利点
配線は変速機の外側にある。
【0075】
回転部品の周りのクラッチからボックス内のバルクヘッドにリードワイヤを配索する困難さを解消する。
【0076】
バルクヘッドコネクタを通過するワイヤの数に影響を及ぼさない。
【0077】
コイルはポッティングされ、リード線はオーバーモールドされ、コネクタは外部に位置して熱油環境から完全に隔離され、以下を防止する。
【0078】
熱油暴露によるコネクタおよびワイヤ絶縁材の長期間にわたる脆化。
【0079】
回路を電源に短絡させる油の汚染の可能性を排除する。
【0080】
振動による故障が大幅に低減される(ポッティングおよびオーバーモールドがなされる)。
【0081】
高出力密度−内輪および外輪の全ての面が使用される。径方向面は後進用であり、かつ平面はローギヤ用である。これらは独立しており、それら輪における同じ場所で競合することはない。同軸設計は径方向断面で競合し、かつ共平面設計はPM輪を追加する。可能な最大の支柱/カム形状をより小さなパッケージにおいて使用することができる。これは、クラッチの出力密度を増加させる。
【0082】
共通の電気機械構成部品としてSSI 14を使用する。
【0083】
大量生産品にしてコストを低減する傾向がある。
【0084】
設計、検証、製造を効率化する−1度で完了する手法。
【0085】
より良い資源配分。工学は、特殊な用途毎に新たな電気機械解決策を設計する負担を負うことのないクラッチ設計に重点を置くことができる。
【0086】
摺動プレートと、摺動プレートに関連する故障モードとを排除する。
【0087】
従来のMD手法−非同軸の、共平面設計。実証済みの手法。
【0088】
コスト競争力がある−最高出力密度、2つの輪、およびSSI 14を使用した全体的な制御手法。
【0090】
SSI 14支柱52は、摺動プレートを使用した油圧設計よりも速くオンする。
【0091】
SSI 14は、始動するのに20ms以下しかかからないので、転動する順方向および逆方向シフトを行うときに同期点の近くでオンすることができる。油圧遅延または温度の影響がない。
【0092】
ソフトターンオフ機能は、ターンオフ時の衝撃負荷を低減する。
【0093】
特別なドライバを必要としない。SSI 14は、最初に始動することができ、保持するためにSSI 14をPWMすることができる。より高いパルスは、20gの衝撃に対して設計された復帰ばねに打ち勝つ。
【0094】
NVHの利点−カムの最大化は、バックラッシュを低減する重要な手法である。平面方向とは対照的に、径方向においてより多くのカムを輪に形成することができる。SSI 14を径方向に使用することにより、この特徴が利用される。
【0095】
通常は、スプラインの順方向および逆方向フランクが接地に対する経路である1つの外輪が存在する。この設計は経路を分割する。経路が圧入されたSSI 14を通過してケース40内に入るので逆方向にバックラッシュが生じない。SSI 14は、逆方向トルクにのみ反作用する。逆に、受動クラッチの外輪には、順方向に作用するトルクのみが見られる。結果として、外部ラッシュによりクラッチが移動しないシステムが得られる。ドライブ側スプラインはドライブ側に留まり、かつ逆方向ドライブ経路は圧入されたSSI 14内にある。これは、スプラインにおけるカチカチいう音/ゴツンという音を低減する。スプラインがケースと係合した状態を常に維持するために、スプラインのコースト側にゴム製ワッシャ/ばねクリップを追加することができる。それは逆方向トルクを決して受けない。
【0096】
油圧に勝る利点
温度の影響を受けない。
【0097】
小さな公差のより短い反応時間(20ms以下)。
【0098】
用途の寿命にわたって動作するのにはるかに少ないエネルギー。
【0099】
ウォームトレイル(worm trail)のパッケージングと比較してボックス外でのワイヤの配索がより容易である。
【0100】
診断が容易−トリクル電圧でのソフトウェア保守ループは、耐温度性、連続性、または短時間設定コードを測定することができる。
【0102】
2つのばねの利点
アーマチュア76が単一の復帰ばねにより支柱52に直接接続される場合には、装置がONになることを確実にするために一定の高電流が印加されなければならない。アーマチュア76がOFF位置にあるときの最大の隙間において最初に最小のストローク力が生じる。アーマチュア76が支柱52に直接取り付けられかつ支柱52がノッチまたは歯30の間にある場合には、装置が常にストロークして最終的にONになることを確実にするために高電流を維持しなければならない。カムプレート22は、支柱52が落ち込むことができるように回転しなければならない。そのため、ソレノイド14がONである限り、一貫して高い電流を維持しなければならない。これは問題である。ソレノイド14は、この手法を用いることで過熱する可能性がある。解決策は、U字形接続部を介して支柱52に取り付くプランジャ70と称される2つのばね66、76(アクチュエータコアまたはアーマチュア76および第2の内部ピストン)を使用することである。この構成において、アーマチュア76は、常にONにストロークし、カムまたは歯30に対する支柱52の位置とは無関係に全3mm進んで隙間を閉じる。アーマチュア76をON位置に保持する力は、隙間が閉じられたときの大きさだけ増加する。アーマチュア76は、支柱52に取り付けられたプランジャ70を押圧する第2のばね74を押圧する。
【0103】
アーマチュア76が3mmストロークした時点で、初期パルス電流のほんの一部である保持電流まで電流を低下させることができる。支柱52は、第2のばね74により加力方向に負荷される。支柱52がカムまたは歯30の間にある場合に、カムプレート22が回転するとすぐに支柱52をON位置に押し込む第2のばね力が生じる。ここでアーマチュア70は支柱位置から独立しており、アーマチュア70をPWMすることができる。
【0104】
歯が当たった状態で単一のばねを使用した場合には、アーマチュア76が1.3mmだけストロークして約2lbsの力で停止する。2つのばねシステムにおいて、アーマチュア76は、常に20msで全3mmストロークして、保持電流に電流を低下させることを可能にする。第2のばね74は、力を加えて歯の当たった状態を終了させる。
【0105】
構成部品(すなわち、SSI)を備えた速度センサの利点
従来技術は、内輪の速度を検知するためにクラッチの外輪の外側を通過する速度センサを有する。それは順方向に転動するときの非同期の逆方向シフトのためであると考えられていた。
【0106】
本発明の少なくとも1つの実施形態は、速度センサチップセットのための構造を提供する。速度センサチップセットをSSI 14内に直接ポッティングすることが可能である。このことは、内輪を接地に逆方向に係止するだけでなく、全て同じ部品において内輪速度を検知するために、SSI 14の構造を屈曲させる利点を有する。これにより、独立型速度センサ、独立型速度センサを収容するための、ケース加工、およびクラッチ加工が不要になる。これは大幅なコスト削減である。
【0107】
必要に応じて、本発明の詳細な実施形態が本明細書に開示される。しかしながら、開示される実施形態は、種々の代替形態で具体化され得る本発明の単なる代表例であることが理解されるべきである。図面は必ずしも原寸に比例したものではなく、いくつかの特徴は、特定の構成部品の詳細を示すために誇張または最小化されている場合がある。それゆえ、本明細書に開示される特定の構造的および機能的な詳細は、限定するものとして解釈されるべきではなく、単に本発明を様々に用いるために当業者に教示するための代表的な根拠として解釈されるべきである。