特許第6704943号(P6704943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨンの特許一覧

<>
  • 特許6704943-ナノファイバー含有複合材構造体 図000004
  • 特許6704943-ナノファイバー含有複合材構造体 図000005
  • 特許6704943-ナノファイバー含有複合材構造体 図000006
  • 特許6704943-ナノファイバー含有複合材構造体 図000007
  • 特許6704943-ナノファイバー含有複合材構造体 図000008
  • 特許6704943-ナノファイバー含有複合材構造体 図000009
  • 特許6704943-ナノファイバー含有複合材構造体 図000010
  • 特許6704943-ナノファイバー含有複合材構造体 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6704943
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ナノファイバー含有複合材構造体
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/02 20060101AFI20200525BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 71/16 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 71/24 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 71/28 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 71/30 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 71/34 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 71/38 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 71/42 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 71/46 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 71/48 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 71/52 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 71/54 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 71/60 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 71/62 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 71/64 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20200525BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20200525BHJP
   D01F 6/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   B01D69/02
   B01D61/14 500
   B01D69/10
   B01D69/12
   B01D71/16
   B01D71/24
   B01D71/26
   B01D71/28
   B01D71/30
   B01D71/34
   B01D71/38
   B01D71/42
   B01D71/46
   B01D71/48
   B01D71/52
   B01D71/54
   B01D71/56
   B01D71/60
   B01D71/62
   B01D71/64
   B01D71/68
   B32B5/26
   D01F6/00 Z
【請求項の数】16
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-17879(P2018-17879)
(22)【出願日】2018年2月5日
(62)【分割の表示】特願2015-252174(P2015-252174)の分割
【原出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-108582(P2018-108582A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2018年3月6日
(31)【優先権主張番号】61/470,705
(32)【優先日】2011年4月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オヌアー・ワイ・カス
(72)【発明者】
【氏名】ミハイル・コズロフ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・タシツク
(72)【発明者】
【氏名】デイビツド・ニエム
(72)【発明者】
【氏名】シエリー・アシユビー・レオン
(72)【発明者】
【氏名】フイリツプ・ゴダード
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−326579(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/107503(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/120668(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/119638(WO,A1)
【文献】 特表2012−520761(JP,A)
【文献】 特表2012−523320(JP,A)
【文献】 特開2007−332342(JP,A)
【文献】 特開平04−351645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D61/00−71/82
B01D53/22
C02F1/44
B01D39/00−39/20
C12M1/00−3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を多孔性複合材媒体に通すことを含む当該液体試料から微生物を分離する方法であって:前記多孔性複合材媒体は、
多孔性メンブレン、および
前記多孔性メンブレン上に位置する多孔性ポリマー系ナノファイバー層
を備え、
記ポリマー系ナノファイバーの平均直径は10nmから150nmの範囲であり、
記ナノファイバー層の孔径が、前記多孔性メンブレンの孔径よりも小さく、
記媒体が、前記メンブレン単独のバブルポイントより、少なくとも20%大きい、イソプロピルアルコールで測定されたバブルポイントを有する、方法。
【請求項2】
記ナノファイバー層が、対称性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
記ナノファイバー層が、静電紡糸マットである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
記ナノファイバー層が、ポリイミド、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、セルロースアセテート、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリ(尿素ウレタン)、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリアニリン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルブチレン)から成る群より選択されるポリマー、コポリマー、この誘導体化合物またはこれらのブレンドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
記ナノファイバー層が、脂肪族ポリアミドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
記ナノファイバー層が、ポリマー、コポリマーおよびこれらの混合物のブレンドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記多孔性複合材媒体が10μmから500μmの総厚を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記多孔性複合材媒体が50μmから200μmの総厚を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
記ナノファイバー層が、1μmから200μmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
記ナノファイバー層が、1μmから100μmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
記ナノファイバー層が、1μmから25μmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
記メンブレンが、10μmから500μmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
記メンブレンが、50μmから200μmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ASTM E 1294−89に従って計測して68.95kPa(10psi)から896.35kPa(130psi)のイソプロパノールの平均流バブルポイントを持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
液体試料を多孔性複合材媒体に通すことを含む当該液体試料から微生物を分離する方法であって:前記多孔性複合材媒体は、
細目側、粗目側および前記細目側と前記粗目側との間でサイズが増大する孔径を有する多孔性メンブレン、ならびに
前記細目側上に位置する多孔性ポリマー系ナノファイバー層
を備え、
記ポリマー系ナノファイバーの平均直径は10nmから150nmの範囲であり、
記メンブレンの前記細目側の孔径が、前記ポリマー系ナノファイバー層の孔径よりも大きく、
記媒体が、前記メンブレン単独のバブルポイントより、少なくとも20%大きい、イソプロピルアルコールで測定されたバブルポイントを有する、方法。
【請求項16】
液体試料を複合材液体濾過デバイスに通すことを含む当該液体試料から微生物を分離する方法であって:前記複合材液体濾過デバイスは、
細目側、粗目側および前記細目側と前記粗目側との間でサイズが増大する孔径を有する多孔性メンブレン、ならびに
記メンブレンの前記細目側上に位置する多孔性ポリマー系ナノファイバー
を備え、
記ポリマー系ナノファイバーの平均直径は10nmから150nmの範囲であり、
記メンブレンの前記細目側の孔径が、前記ポリマー系ナノファイバー層の孔径よりも大きく、
記デバイスが、前記メンブレン単独のバブルポイントより、少なくとも20%大きい、イソプロピルアルコールで測定されたバブルポイントを有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、液体濾過媒体に関するものである。ある実施形態において、本発明は、複合材液体濾過プラットフォームならびに濾過された液体からの微生物を保持するための複合材液体濾過プラットフォームの使用および作製方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
合成ポリマーは、メルトブロー、静電紡糸および静電ブローなどの多様な方法を使用して、直径が非常に小さいファイバー(約2、3ミクロン(μm)以下の直径)のウェブに形成されてきた。このようなウェブは、液体バリア材料およびフィルタとして有用であることが示されている。ウェブはより強力な基材と組合されて、複合材を形成することが多い。
【0003】
複合材多孔性構造体は、濾過および分離用途で幅広く使用されている。「複合材」という用語は、本明細書で使用する場合、孔径、孔形態および/または材料が異なる2つ以上のメンブレンの組合せが使用されて最終的な複合材多孔性構造体が生成されていることを意味する。
【0004】
例えばメンブレン濾過において、複合材は、明確に異なる孔構造を有する2つ以上の多孔性層を含有することができる。複合材濾過メンブレンにおいて明確に異なる孔構造を有する多孔性材料の2つ以上の層を組合せることによって、濾過効率、スループットおよび機械的堅牢性の著しい向上を達成することができる。一例として、複合材は、例えばEMD Millipore Corporationに譲渡された米国特許第7,229,665号明細書で教示されているように、別々に製造された多孔性材料を続けて層状化すること、事前に形成された第1の層上に第2もしくはこれ以上の層をキャストすること、2つ以上の事前に形成された層を共に積層すること、または2つ以上の層を同時に共形成することによって形成することができる。
【0005】
生物医薬品製造では、操作を効率化するための、ステップを組合せおよび除去するための、ならびに医薬品物質の各バッチを処理する時間を短縮するための方法を常に探し求めている。同時に市場や規制の圧力によって、生物医薬品メーカーはコスト削減を余儀なくされている。医薬品用物質の精製の全コストのうち、かなりのパーセンテージを細菌、マイコプラズマおよびウイルスの除去が占めているため、多孔性メンブレンの濾過スループットを向上させて、精製処理時間を短縮する手法は、非常に多くの需要がある。
【0006】
新たな前濾過媒体の導入ならびに対応する細菌、マイコプラズマおよびウイルス保持フィルタのスループットの向上により、供給流の濾過は流束に限定されるようになりつつある。このため、細菌、マイコプラズマおよびウイルス保持フィルタの透過度は、細菌、マイコプラズマおよびウイルス濾過のステップのコストに直接、有益な影響を有する。
【0007】
液体濾過で使用するフィルタは一般に、ファイバー不織媒体フィルタまたは多孔性フィルム・メンブレン・フィルタのどちらかとして分類できる。
【0008】
多孔性フィルムメンブレン液体フィルタまたは他の種類の濾過媒体は、支持体なしで、または多孔性基材もしくは支持体と併せてのどちらかで使用することができる。通例、多孔性ファイバー不織媒体よりも小さい孔径を有する多孔性フィルム液体濾過メンブレンは:
(a)液体から濾過される微粒子が通例、約0.1μmから約10μmの範囲である、精密濾過(MF);
(b)液体から濾過される微粒子が通例、約2ナノメートル(nm)から約0.1μmの範囲である、限外濾過(UF);および
(c)濾過される粒子状物質が通例、約1Åから約1nmの範囲である、逆浸透(RO)
において使用することができる。
【0009】
レトロウイルス保持性メンブレンは通常、限外濾過メンブレンの粗目端上にあると見なされる。
【0010】
高透過度および高信頼性の保持は、液体濾過メンブレンにおいて望まれる2つのパラメータである。しかし、これらの2つのパラメータの間には、トレードオフがあり、同じ種類の液体濾過メンブレンでは、透過度を犠牲にすることによって、より高度の保持を達成することができる。液体濾過メンブレンを作製する従来の方法の固有の限定によって、メンブレンは空隙率のある閾値を超過できなくなり、このためいずれの任意の孔径においても達成できる透過度の大きさが限定される。
【0011】
ファイバー不織液体濾過媒体としては、これに限定されるわけではないが、スパンボンド、メルトブローもしくは連続ファイバーから形成された不織媒体;カード処理ステープルファイバー等から形成され水流交絡不織媒体などおよび/またはこれの組合せが挙げられる。通例、液体濾過で使用するファイバー不織媒体フィルタは、一般に約1ミクロン(μm)を超える孔径を有する。
【0012】
不織材料は、濾過製品の製造で広く使用されている。プリーツ・メンブレン・カートリッジは通常、不織材料をドレーン層として含む(例えば、それぞれPall Corporationに譲渡された米国特許第6,074,869号明細書、同第5,846,438号明細書および同第5,652,050号明細書ならびにCuno Inc.、現在は3M Purification Inc.に譲渡された米国特許第6,598,749号明細書を参照のこと)。
【0013】
不織微孔性材料は、マサチューセッツ州ビレリカのEMD Millipore CorporationによるBiomax(登録商標)限外濾過メンブレンなどの、これの上に位置する隣接多孔性メンブレン層のための支持スクリーンとして使用することもできる。
【0014】
不織微孔性材料は、マサチューセッツ州ビレリカのEMD Millipore Corporationからまた入手可能なMilligard(商標)フィルタなどの、不織微孔性構造体上に位置する、多孔性メンブレンの強度を上昇させる支持骨格としても使用できる。
【0015】
不織微孔性材料は、「粗前濾過」にも使用され、一般に約1μmを超える直径を有する懸濁粒子を除去することによって、不織微孔性材料の下流に配置された多孔性メンブレンの能力を向上させることができる。多孔性メンブレンは通常、明確な孔径または分子量カットオフを有するクリティカルなバイオセーフティバリアまたは構造体を提供する。クリティカル濾過は、微生物およびウイルス粒子の高度の除去(規定された試験によって定義されるように、通例、99.99%より大)を期待されるように、また検証できるように確保することを特徴とする。クリティカル濾過は、複数の製造段階にて、ならびに使用時点にて液体薬品および液体生物医薬製剤の無菌性を確保するために、日常的に依存されている。
【0016】
メルトブローおよびスパンボンドファイバー媒体はしばしば「伝統的な」または「従来の」不織布と呼ばれる。これらの伝統的な不織布におけるファイバーは通常、少なくとも直径約1,000nmであり、従って伝統的な不織布の有効孔径は、約1ミクロン超である。伝統的な不織布の製造方法は通例、不均一性の高いファイバーマットをもたらす。
【0017】
歴史的に、例えばメルトブローまたはスパンボンドによる従来の不織マット形成がランダムな性質であるために、液体流のいずれのクリティカル濾過にも不適切であると一般的に考えられるようになり、このため、従来の不織マットを含む濾過デバイスは通例、従来の不織マットの下流に配置された多孔性クリティカル濾過メンブレンの能力を向上させるために、これらのマットを前濾過の目的のみに使用されている。
【0018】
別の種類の不織布は、「伝統的な」または「従来の」不織布と同様に、液体流のクリティカル濾過には一般に不適切であると考えられてきた、静電紡糸ナノファイバー不織マットを含む。(例えばBjorge et al.,Performance assessment of electrospun nanofibers for filter applications,Desalination,249,(2009),942−948を参照のこと。)。
【0019】
静電紡糸ポリマー系ナノファイバーマットは非常に多孔性であり、ここで「孔」径はファイバー直径にほぼ線形比例して、空隙率はファイバー直径から比較的独立している。静電紡糸ナノファイバーマットの空隙率は通常、約85%から90%の範囲に含まれ、同様の厚さおよび孔径等級を有する浸漬キャストメンブレンと比較した場合、劇的に改善された透過度を示すナノファイバーマットを生じる。多孔性メンブレンより優れた静電紡糸ポリマー系ナノファイバーマットの空隙率の利点が、ウイルス濾過に通例要求されるより小さい孔径範囲で大きくなるのは、上で論じたUFメンブレンの空隙率が低いためである。
【0020】
静電紡糸ナノファイバー不織マットは、従来のまたは伝統的な不織布を作製するのに使用されるメルトブロー、湿式または押出製造方法ではなく、電位を使用してポリマー溶液または溶融物を紡糸することによって生産される。静電紡糸によって得られるファイバー直径は通例、10nmから1,000nmの範囲にあり、従来のまたは伝統的な不織布よりも1から3桁小さい。
【0021】
静電紡糸ナノファイバーは、溶解または溶融ポリマー材料を第1の電極に隣接して置き、溶解または溶融ポリマー材料が第1の電極から第2の電極に向かってファイバーとして延伸されるように電位を印加することによって形成される。静電紡糸ナノファイバーマットの製造方法において、ファイバーは、高温のブローエアや、非常に広い孔径分布をもたらす可能性がある他の機械的手段によって、強制的にマット内に配置されることはない。むしろ、静電紡糸ナノファイバーは、静電紡糸ナノファイバー間の相互の電気的反発のために、高度に均一なマットを形成する。
【0022】
E.I.Du Pont De Nemours and Companyに譲渡されたWO2008/109117は、ある粒径に対して3.7LRV(即ちLRVは、対数保持力値として定義され、ここで3LRVは0.999濾過効率に等しい。)を有する、隣接多孔性メンブレンのための深濾過層(即ちプレフィルタ)として、多孔性ナノファイバー層を使用することを教示している。WO2008/109117は、メンブレンが3.7以上のLRVを有すると評価されている粒径に対して、ナノファイバー層が少なくとも95%の濾過効率等級を有することを教示している。WO2008/109117は、濾過の役割がナノファイバー層ではなく、多孔性メンブレンに残されていることを教示するものである。
【0023】
EMD Millipore Corporationに譲渡されたWO2010/107503は、特定の厚さおよびファイバー直径を有するナノファイバーマットが改善された液体透過度および微生物保持力の組合せを提供することを教示している。一般に、ナノファイバーマットは、同等の保持力を持つ、これの多孔性メンブレン対応物よりも2から10倍優れた透過度を提供し、このことはナノファイバーマットがより高い空隙率(「代表的な湿式キャスティング多孔性メンブレンの70から80%に対して約90%)を有する結果であると考えられる。
【0024】
静電紡糸ナノファイバーマットは、ファイバーを従来のスパンボンド不織布上に付着させることによって製造できる(不織布とナノファイバー層との対面界面の例は、それぞれこれの全体が参照により本明細書に組み入れられている、Elmarco s.r.o.に譲渡されたWO2009/010020号およびClarcor Inc.に譲渡された米国特許出願公開第2009/0199717号明細書で教示されている。)。これらの各手法において、不織布を支持する表面の粗度がナノファイバー層中に伝わって、ナノファイバー構造体の潜在的な不均一性が引き起こされ、これにより潜在的に保持力特徴を損なうことがある。
【0025】
Jirsak et al.に付与された米国特許第7,585,437号明細書は、静電紡糸を使用するポリマー溶液からナノファイバーを生産するためのノズルフリー法および該方法を行うためのデバイスを教示している。
【0026】
参照によりこれの全体が本明細書に組み入れられている、Nano Technics Co.LTD.に譲渡されたWO2003/080905は、ポリマーおよび溶媒を含むポリマー溶液流が貯蔵タンクから紡糸口金内の一連の紡糸ノズルに供給され、紡糸口金に高圧が印加されて、これを通じてポリマー溶液が放出される、静電ブロー方法を教示している。圧縮エアは、場合により加熱されることもあり、紡糸ノズルの側面または周囲に配置されたエアノズルから放出される。圧縮エアは、一般に下方にブローガス流として向けられ、新たに吐出されたポリマー溶液を包囲して送り出し、これによりナノファイバーウェブの形成を補助し、ウェブは真空チャンバ上に位置する接地多孔性捕集ベルト上で捕集される。
【0027】
Schaefer et al.による米国特許出願公開第2004/0038014号明細書は、汚染物質を濾過するための静電紡糸によって形成された細いポリマー系マイクロファイバーおよびナノファイバーの太い集合体の1つ以上の層を含む、不織濾過マットを教示している。
【0028】
Greenによる米国特許出願公開第2009/0199717号明細書は、基材層上に静電紡糸ファイバー層を形成する方法であって、静電紡糸ファイバーが100ナノメートル(nm)未満の直径を有する、相当量のファイバーである、方法を開示している。
【0029】
Bjorge et al.はBjorge et al.,Desalination 249(2009)942−948において、約50nmから100nmのナノファイバー直径および約120μmの厚さを有する静電紡糸ナイロン・ナノファイバー・マットを教示している。未表面処理ファイバーの測定された細菌LRVは、1.6−2.2である。Bjorge et al.は、ナノファイバー静電紡糸マットの細菌除去効率が満足できないと結論付けていると言われる。
【0030】
Gopal et al.は、Gopal et al.,Journal of Membrane Science 289(2007)210−219において、ナノファイバーが約470nmの直径を有する、静電紡糸ポリエーテルスルホン・ナノファイバー・マットを教示している。液体濾過の間に、ナノファイバーマットは、1μmを超える粒子を濾過除去するためのふるいとして、および1ミクロン未満の粒子のためのデプスフィルタ(例えばプレフィルタ)として作用する。
【0031】
Aussawasathien et al.は、Aussawasathien et al.,Journal of Membrane Science,315(2008)11−19において、約0.5μmから10μmの直径を有するポリスチレン粒子の除去で使用される、約30nmから110nmの直径を有する静電紡糸ナノファイバーを開示している。
【0032】
Choi et al.によるWO2010/120668は、界面活性剤の存在下でポリスチレン粒子の保持力の改善をもたらすと言われている、はるかに目の細かい超高分子量(UPE)メンブレン(例えば約5nm等級を有する。)と組合された0.2μm等級を有するナノファイバー層を教示している。提供された各例において、ナノファイバー層単独と比較して、メンブレンはより高い保持力を有する。ナノファイバー層のメンブレンへの追加によって、組合されたバブルポイントは測定可能なほど上昇せず、メンブレン単独と比較して保持力が徐々に上昇するように思われる。上で論じたように、ナノファイバーマットの教示は、ナノファイバーマットをプレフィルタとして使用して、クリティカル濾過および保持力を確保する特性を提供するために多孔性メンブレンを使用することを教示すると言われている。
【0033】
しかし、上で論じたナノファイバーマットの教示のいずれも、多孔性メンブレン支持体上に形成されたナノファイバーマットの使用を教示せず、該ナノファイバーマットでは、保持力の確保およびクリティカル濾過特性が多孔性メンブレンではなくナノファイバーマットによって提供され;ならびにプレフィルタ特性がナノファイバーマットではなく多孔性メンブレン支持体によって供給される。
【0034】
必要なのは、ミリリットルから数千リットルに及ぶ多量の試料流体の処理に対してただちに拡張可能、適応可能であり、多様な濾過方法によって使用可能である、多孔性静電紡糸ナノファイバー複合材濾過媒体、ならびに静電紡糸ナノファイバー層が保持確保およびクリティカル濾過特性を提供して、ならびにナノファイバー層が上に形成された多孔性支持体が前濾過特性を提供するようなデバイスである。本発明は、これらならびに他の目的および実施形態に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】米国特許第7,229,665号明細書
【特許文献2】米国特許第6,074,869号明細書
【特許文献3】米国特許第5,846,438号明細書
【特許文献4】米国特許第5,652,050号明細書
【特許文献5】米国特許第6,598,749号明細書
【特許文献6】国際公開第2008/109117号
【特許文献7】国際公開第2010/107503号
【特許文献8】国際公開第2009/010020号
【特許文献9】米国特許出願公開第2009/0199717号明細書
【特許文献10】米国特許第7,585,437号明細書
【特許文献11】国際公開第2003/080905号
【特許文献12】米国特許出願公開第2004/0038014号明細書
【特許文献13】国際公開第2010/120668号
【非特許文献】
【0036】
【非特許文献1】Bjorge et al.,Performance assessment of electrospun nanofibers for filter applications,Desalination,249,(2009),942−948
【非特許文献2】Gopal et al.,Journal of Membrane Science 289(2007)210−219
【非特許文献3】Aussawasathien et al.,Journal of Membrane Science,315(2008)11−19
【発明の概要】
【0037】
本発明はとりわけ、複合材不織液体濾過構造体にしばしば関連する、不均一および能力不足に対処する。本明細書で教示する新たな複合材液体濾過プラットフォームは、多孔性メンブレン上に捕集されたポリマー系ナノファイバー層を有する多孔性複合材濾過構造体を含み、該複合材濾過構造体は液体または液体流を濾過するために使用され、該多孔性メンブレンはポリマー系ナノファイバー層の上流に位置する。多孔性メンブレンは、複合材濾過構造体の生産においてナノファイバーを捕捉するための基材として作用するが、多孔性メンブレンは、複合材濾過構造体を貫流する液体流から粒子を除去するために、ポリマー系ナノファイバー層から上流で使用されるプレフィルタでもある。即ち、ナノファイバー層は多孔性メンブレンから下流に位置決めされ、バイオセーフティを確保するクリティカル濾過のための保持層として使用され、細菌、マイコプラズマまたはウイルスなどの微生物を捕捉する役割を果たす。(先にプレフィルタとしてこれまで使用されたナノファイバー層ではなく)プレフィルタとしての複合材濾過構造体の多孔性メンブレン側および保持性バイオセーフティ確保層として使用される薄く、均一で小孔径ナノファイバー層を有するため、本明細書で教示する液体濾過プラットフォームは、粗不織布上に紡糸された従来の多孔性メンブレンまたはナノファイバーマットを超える透過度上の利点を示す。
【0038】
ある実施形態において、本発明は、多孔性メンブレンおよびメンブレン上に位置する多孔性ポリマー系ナノファイバー層を含む多孔性複合材媒体であって、ナノファイバー層の孔径がメンブレンの孔径よりも小さい、多孔性複合材媒体を提供する。
【0039】
他の実施形態において、本発明は、多孔性メンブレンおよびメンブレン単独のバブルポイントよりも少なくとも20%大きい、好適な流体を用いて測定されたバブルポイントを有する、メンブレン上に位置する多孔性ポリマー系ナノファイバー層を含む、多孔性複合材媒体を提供する。
【0040】
ある実施形態において、本発明は、多孔性メンブレンおよびメンブレン上に位置する多孔性ポリマー系ナノファイバー層を含む多孔性複合材媒体であって、メンブレンが非対称性であり、細目側を含む、多孔性複合材媒体を提供する。
【0041】
他の実施形態において、本発明は、多孔性メンブレンおよびメンブレン上に位置する多孔性ポリマー系ナノファイバー層を含む多孔性複合材媒体であって、ナノファイバー層が対称性である、多孔性複合材媒体を提供する。
【0042】
なお他の実施形態において、本発明は、多孔性メンブレンおよびメンブレン上に位置する多孔性ポリマー系ナノファイバー層を含む多孔性複合材媒体であって、ナノファイバー層が静電紡糸マットである、多孔性複合材媒体を提供する。
【0043】
他の実施形態において、本発明は、多孔性メンブレンおよびメンブレン上に位置する多孔性ポリマー系ナノファイバー層を含む多孔性複合材媒体であって、ナノファイバー層がポリマー、コポリマーおよびこれの混合物のブレンドを含む、多孔性複合材媒体を提供する。
【0044】
別の実施形態において、本発明は、多孔性メンブレンおよびメンブレン上に位置する多孔性ポリマー系ナノファイバー層を含む多孔性複合材媒体であって、ナノファイバー層が脂肪族ポリアミドを含む、多孔性複合材媒体を提供する。
【0045】
別の実施形態において、本発明は、多孔性メンブレンプレフィルタおよびメンブレン上に捕集されたクリティカル濾過用多孔性ナノファイバー保持層を有する複合材液体濾過媒体構造体を提供する。多孔性ナノファイバー層の厚さは、約1μmから約500μmの範囲に及ぶ。多孔性ナノファイバー層の有効孔径は一般に、ファイバー直径によって定義され、ファイバー直径は保持される所望の微生物または粒子に基づいて選ばれる。多孔性ナノファイバー層の有効孔径は、以下で提供するバブルポイント試験によって測定されるように、レトロウイルス除去のための約0.05μmから細菌除去のための約0.5μmの範囲に及ぶ。
【0046】
別の実施形態において、本発明は、約10μmから約500μmの範囲に及ぶ厚さを有する静電紡糸多孔性ナノファイバー層を含む、複合材液体濾過プラットフォームを提供する。
【0047】
さらなる実施形態において、本発明は、約20μmから約300μmの範囲に及ぶ厚さを有する多孔性静電紡糸ナノファイバー層を含む、複合材液体濾過プラットフォームを提供する。
【0048】
なお他の実施形態において、本発明は、約50μmから200μmの範囲に及ぶ厚さを有する多孔性静電紡糸ナノファイバー層を含む、複合材液体濾過プラットフォームを提供する。
【0049】
別の実施形態において、本発明は、細目側、粗目側および細目側と粗目側との間でサイズが増大する孔径を有する多孔性非対称性メンブレン、ならびに細目側上に位置する多孔性ポリマー系ナノファイバー層を含む液体濾過のための多孔性複合材媒体であって、メンブレンの細目側上の孔径がポリマー系ナノファイバー層の孔径よりも大きい、多孔性複合材媒体を提供する。
【0050】
ある実施形態において、本発明は、細目側、粗目側および細目側と粗目側との間でサイズが増大する孔径を有する多孔性非対称性メンブレンを有するプレフィルタ、ならびに非対称性メンブレンの細目側上に位置する多孔性ポリマー系ナノファイバー層を有する保持フィルタを含む、クリティカル液体濾過で使用するための複合材濾過デバイスであって、非対称性メンブレンの細目側上の孔径がポリマー系ナノファイバー層の孔径よりも大きい、複合材濾過デバイスを提供する。
【0051】
別の実施形態において、本発明は、静電紡糸装置を使用して、約10kVを超える電位を溶液に印加し、平滑表面を有する多孔性支持メンブレン上に静電紡糸ポリマー系ファイバーを捕集する、1つ以上の多孔性静電紡糸ポリマー系ナノファイバーから多孔性複合材液体濾過プラットフォームを形成する方法に関する。支持メンブレンの平滑表面構造体によって、(不織捕集支持体上に形成されたナノファイバーマットが粗支持表面を有するのとは異なり)平滑で均一な多孔性ナノファイバーマットが得られる。平滑で均一な多孔性ナノファイバーマットは通例、より大きい保持力を有し、即ち同じ厚さおよび透過度を有する多孔性ナノファイバーマットは、粗不織布よりも平滑なメンブレン表面上に生産されると、より大きい粒子除去特性を有する。または、同様の保持力の多孔性ナノファイバーマットは、平滑なメンブレン上に生産された場合、より薄く、より透過性である。
【0052】
ある実施形態において、本発明は、多孔性メンブレン基材プレフィルタ上に配置された静電紡糸ポリマー系多孔性ナノファイバー保持バイオセーフティ確保層を特色とする液体濾過複合材媒体を有する多孔性複合材液体濾過プラットフォームを含む、多孔性複合材液体濾過デバイスを提供する。
【0053】
なお別の実施形態において、本発明は、多孔性プレフィルタメンブレン上に捕集されたクリティカルバイオセーフティ多孔性ナノファイバー層を含む多孔性複合材媒体を有する、液体濾過プラットフォームを提供する。複合材液体濾過プラットフォームを使用し、液体流を濾過して、他の物質の中でも、液体中に存在することがある細菌、マイコプラズマまたはウイルスなどの微生物を捕捉する。液体濾過プラットフォームは、液体流を最初に多孔性複合材媒体上の多孔性プレフィルタメンブレン構成要素に接触させて、続いてプレフィルタ層から下流にて微生物、マイコプラズマまたはウイルスを捕捉することによるクリティカル濾過のために保持性ナノファイバー層に接触させることによって、捕捉を行う。
【0054】
本発明のさらなる特色および利点は、続く詳細な説明および請求項で述べられる。本発明の多くの修正および変形は、当業者に明らかとなるように、本発明の精神および範囲を逸脱することなく行うことができる。上述の一般的説明および以下の詳細な説明、請求項、ならびに添付図面は例示および解説のためだけであり、本教示の多様な実施形態の解説を与えるものであることが理解されるべきである。本明細書に記載する具体的な実施形態は、ほんの一例として提供され、決して限定するものではない。
【0055】
本明細書の一部に組み入れられ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の現在想定される実施形態を例証して、説明と共に本発明の原理を解説する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1図1は、本発明の一実施形態による移動ウェブ上にナノファイバーを静電紡糸する方法の概略図である。
図2図2は、多孔性メンブレン上に捕集されたポリマー系ナノファイバー層を有する多孔性複合材濾過構造体を特色とする、本発明の実施形態による複合材液体濾過プラットフォームの電子顕微鏡写真を示す。
図3図3は、同じ紡糸時間にわたって、多孔性メンブレン上に捕集されたポリマー系ナノファイバー層(従って同じ厚さのナノファイバーマット)を有する多孔性複合材濾過構造体を特色とする、本発明の実施形態による複合材液体濾過プラットフォームのIPAバブルポイントと、粗不織布上に付着されたナノファイバーマットの比較例のIPAバブルポイントの比較を表す。
図4図4は、同様のマイコプラズマ保持力(>9LRV)を有するナノファイバー:粗不織布上に紡糸されたナノファイバーマットの比較例および多孔性メンブレン上に捕集されたポリマー系ナノファイバー層を有する多孔性複合材濾過構造体を特色とする、本発明の実施形態による複合材液体濾過プラットフォームの水透過度の比較を表す。
図5図5は、微孔性非対称性0.45μm等級メンブレン上に紡糸されたポリマー系ナノファイバーマットを有する多孔性複合材濾過構造体を特色とする本発明の実施形態による複合材液体濾過プラットフォームの、紡糸時間、バブルポイントおよびマイコプラズマ保持力の間の相関関係を示す。
図6図6は、同様のB.ディミヌタ(B.diminuta)保持力(>9LRV)を有するナノファイバー:粗不織布上に紡糸されたナノファイバーマットの比較例および多孔性メンブレンに捕集されたポリマー系ナノファイバー層を有する多孔性複合材濾過構造体を特色とする本発明の実施形態による複合材液体濾過プラットフォームの、水流束の比較を表す。
図7図7は、同様のレトロウイルス保持力(>6LRV)を有するナノファイバー:粗不織布上に紡糸されたナノファイバーマットの比較例および多孔性メンブレンに捕集されたポリマー系ナノファイバー層を有する多孔性複合材濾過構造体を特色とする本発明の実施形態による複合材液体濾過プラットフォームの、水流束の比較を表す。
図8図8は、多孔性メンブレン上に捕集されたポリマー系ナノファイバー層を有する多孔性複合材濾過構造体を特色とする本発明の実施形態による複合材液体濾過プラットフォームと、同じナノファイバー直径および同様のマイコプラズマに対する保持力(>9LRV)の粗不織布上に紡糸されたナノファイバーマットの比較例との濾過能力の比較を表す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本明細書で引用するすべての公報、特許および特許出願は、上述または後述にかかわらず、個々の公報、特許または特許出願がそれぞれ、具体的および個別に参照により組み込まれることを指示されているのと同じ程度まで、参照によりこれの全体が本明細書に組み入れられている。
【0058】
本発明をさらに詳細に説明する前に、幾つかの用語を定義する。これらの用語の使用は、本発明の範囲を限定するのではなく、本発明の説明を容易にする役割を果たすのみである。
【0059】
本発明で使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈により別途明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0060】
本明細書および添付請求項の目的のために、本明細書および請求項で使用する成分の量、材料のパーセンテージまたは割合、反応条件を表すすべての数値および他の数値は、「約」という用語によって、「約」という用語が明示的に指示されているかどうかにかかわらず、すべての例において変更されることが理解されるべきである。
【0061】
従って、反対に指示されていない限り、以下の明細書および添付請求項で示す数値パラメータは近似値である。本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例で示されている数値は可能な限り正確に報告される。さらに、本明細書で開示するすべての範囲は、ここで組み入れられたすべての下位範囲を含むと理解されるべきである。例えば、「1から10」の範囲は、最小値の1と最大値の10との間の(および最小値1および最大値10を含む))あらゆる下位範囲、即ち1以上の最小値および10以下の最大値を有するあらゆる下位範囲、例えば5.5から10を含む。
【0062】
本発明で使用する場合、「メンブレン」は、最も普通にはポリマー分散体または溶液を所望の形状にキャストすることによって調製される多孔性両連続構造体であって、いわゆる「相反転」法によって形成される多孔性構造体として定義されている。当業者は、相反転が例えば気相、液相と接触したポリマー沈殿を誘起することによって、または温度によって達成できることをただちに認識する。所望の形状のメンブレンの非限定的な例としては、中空ファイバー、フラットシートまたは他の物品が挙げられる。ファイバー状材料、例えば製織布および不織布またはマットは通常、共に絡み合った個々のファイバーによって形成された不連続固相を有する。ファイバー材料は一般に、メンブレンとして分類されない。
【0063】
本発明で使用する場合、「非対称性メンブレン」は、メンブレンの孔径を位置の関数としてメンブレンの厚さ以内で変化させることを特徴とする。最も普通の非対称性メンブレンは、孔径が1つの表面(「細目」側と呼ばれることが多い。)からもう一方の面(「粗目」側と呼ばれることが多い。)まで徐々におよび連続的に増大する勾配構造体を有する。非対称性メンブレンは一般に、同程度の厚さおよび保持力の対称性メンブレンよりも高い流束を有する。上流により大きい孔の側面を備えた構成で使用する場合、非対称性メンブレンは、同程度の対称性メンブレンと比較して多くの場合でより大きいスループットを有する。例えば1981年4月14日にD.M.de Winterに付与された米国特許第4,261,834号を参照のこと。非対称性メンブレンは、厚く高密度の表面領域を、即ち多くの場合において、1つの表面上に形成されて、メンブレンのいくらか深くまで、即ち細目表面まで延在する膜を有する。例えば1986年12月16日にW.Wrasidloに付与された、米国特許第4,629,563号を参照のこと。
【0064】
「カレンダー加工」という用語は、2個のロールの間のニップにウェブを通過させる工程を指す。ロールは相互に接触していてもよく、またはロール表面の間に固定または可変間隙があってもよい。
【0065】
「フィルタ媒体(単数)」、「フィルタ媒体(複数)」、「濾過媒体(複数)」または「濾過媒体(単数)」という用語は、微生物汚染物質を運搬する流体が通過する材料または材料の集合であって、微生物が内部または表面に付着している材料または材料の集合を指す。
【0066】
「流束」および「流速」という用語は、互換的に使用されて、ある体積の流体が所与の面積の濾過媒体を通過する速度を指す。
【0067】
「ナノファイバー」という用語は、一般に約1μm、通例は約20nmから約800nmまで変化する直径または断面を有するファイバーを指す。
【0068】
「必須ではない(optional)」または「場合により(optionally)」という用語は、次に説明された事象または状況が起こってもまたは起こらなくてもよいこと、ならびに説明が事象の起こる例および事象の起こらない例を含むことを意味する。
【0069】
本発明の複合材液体濾過プラットフォームは例えば、多孔性メンブレン基材上に付着した多孔性静電紡糸ナノファイバー液体濾過層を特色とする複合材液体濾過媒体を含む。静電紡糸ナノファイバーは好ましくは、約10nmから約150nmの平均ファイバー直径、約0.05μmから約1μmの範囲に及ぶ平均孔径、約80%から約95%の範囲に及ぶ空隙率、約1μmから約100μmの、好ましくは約1μmから約50μm、さらに好ましくは1μmから20μmの範囲に及ぶ厚さを有する。本明細書で教示される複合材液体濾過プラットフォームは、約100L/m・時間・6.895kPa(約100LMH/psi)を超える水透過度を有する。
【0070】
加えて、本明細書で教示される複合材液体濾過プラットフォームは、微生物の高い保持力を有し、少なくとも3LRVのレトロウイルス除去ならびに少なくとも6LRVの細菌およびマイコプラズマ、ならびに好ましくは少なくとも6LRVのレトロウイルス除去ならびに少なくとも9LRVの細菌およびマイコプラズマを提供する。
【0071】
静電紡糸ナノファイバーは、熱可塑性および熱硬化性ポリマーを含む、広範囲のポリマーおよびポリマー化合物から調製される。好適なポリマーとしては、これに限定されるわけではないが、ナイロン、ポリイミド、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、セルロース、セルロースアセテート、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリ(尿素ウレタン)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリアニリン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルブチレン)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、コポリマー、これの誘導体化合物およびブレンドならびに/または組合せが挙げられる。
【0072】
「孔径」または「有効孔径」という用語は、本明細書で互換的に使用する場合、多孔性構造体の尺度であって、あるサイズの粒子を保持する多孔性構造体の能力を予測する尺度である。メンブレンまたは静電紡糸マットの有効孔径は、従来の技法、例えばバブルポイント、液体−液体ポロメトリーおよびあるサイズの粒子を用いたチャレンジ試験を使用して測定することができる。孔径を決定するために複数の方法が使用可能であり、各方法はわずかに異なる測定値を生じることがあるが、異なる構造体の孔径の間で、例えばメンブレンと静電紡糸マットの間で比較を行う場合、本明細書では同じ測定方法を使用する。
【0073】
実施形態の説明
図1は、複合材液体濾過プラットフォームが単一の静電紡糸ポリマー系ナノファイバーから作製した静電紡糸多孔性ナノファイバーマット60を有する複合材液体濾過媒体を含む、本発明の一実施形態を概略的に表す。単一ナノファイバーは、静電紡糸工程により、帯電回転ドラム20と捕集電極35との間に位置決めされた移動捕集装置30の1回の通過によって作製される。ナノファイバーウェブまたはマットは、同じ移動捕集装置30の上で同時に動作している1個以上の紡糸ドラム20によって形成できることが認識される。
【0074】
図1において、移動捕集装置30は、好ましくは、紡糸帯電回転ドラム20と電極35との間の静電場50内に位置する移動捕集ベルトである。静電紡糸ポリマーファイバーが電場50で生産されるように、ポリマー溶液10に高電圧源40からの電位を印加することができる。
【0075】
本明細書で教示する他の実施形態において、静電紡糸ナノファイバーをナイロン溶液から付着させることによって、静電紡糸ファイバーマット60が形成される。生じたナノファイバーマットは好ましくは、乾燥量基準で(即ち残留溶媒を蒸発または除去した後に)測定したように、約1g/mから約20g/mの間の目付量を有する。
【0076】
本明細書で教示する他の実施形態において、複合材液体濾過プラットフォームは、多種多様の多孔性単層もしくは多層メンブレン基材または支持体を含み、これらは移動捕集ベルト上に配置され、静電紡糸ナノファイバーを捕集してこれらと組合せて上に静電紡糸ナノファイバーマットを形成することができる。
【0077】
単層または多層多孔性基材または支持体の非限定的な例としては、多孔性フィルムメンブレンが挙げられる。多孔性フィルムメンブレンは、ポリアミド、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース、セルロースエステル、ポリアクリロニトリルなどを含む、多種多様の熱可塑性ポリマーから生産される。多孔性フィルムメンブレンを生産する方法としては、溶液相反転、温度誘起型相分離(TIPS)、蒸気誘起型相分離(VIPS)、溶媒および化学エッチング、室温および熱補助型二軸延伸ならびにこれの組合せが挙げられる。
【0078】
静電紡糸ナノファイバーを捕捉または捕集する複合材濾過媒体の多孔性メンブレン基材の表面粗度は、最終的な複合材濾過構造体の生成ナノファイバー層における特性を少なくとも一部決定することが観察された。例えば我々は、静電紡糸ナノファイバーを捕集するために使用した基材の表面が平滑であるほど、生成ナノファイバー層構造体がより均一であることを観察している。静電紡糸ナノファイバー層を捕集するために使用した粗スパンボデッド不織基材の表面上のパターンのインプリントは、これの上に捕集された生成静電紡糸ナノレイヤー層に直接転写されることが観察された。しかしこのようなパターンインプリントは、静電紡糸ナノファイバー層が平滑表面を有する多孔性メンブレン基材上に捕集されたときには見られなかった。多孔性メンブレンの平滑表面上に捕集された静電紡糸ナノファイバー層は、これの上に形成された「特色のない」ナノファイバー層を生成した。
【0079】
本明細書で教示する複合材液体濾過プラットフォームのある実施形態において、静電紡糸ナノファイバー層は、多孔性メンブレン基材または支持体に接合されている。接合は、これに限定されるわけではないが、加熱したニップロール間での熱カレンダー加工、超音波接合および通気(through gas)接合を含む、当分野で周知の方法によって達成することができる。生じた複合材濾過媒体が、複合材濾過プラットフォーム有用なフィルタの形状およびサイズに形成することに関係する、または複合材濾過プラットフォームを濾過デバイス内に設置する場合の力に耐えられるように、静電紡糸ナノファイバー層のメンブレン支持体への接合によって、複合材の強度および複合材の圧縮抵抗が上昇する。
【0080】
本明細書で教示する複合材液体濾過プラットフォームの他の実施形態において、厚さ、密度ならびに孔のサイズおよび形状などの多孔性静電紡糸ナノファイバー層の物性は、ナノファイバー層とメンブレン支持体との間に使用した接合方法に応じて影響を受けることがある。例えば、熱カレンダー加工を使用すると、静電紡糸ナノファイバー層の厚さを減少させて、密度を上昇させ、空隙率を低下させて、孔のサイズを縮小させることができる。このことは次に、所与の印加された差圧にて複合材濾過媒体を通過する流速を低下させる。
【0081】
一般に、超音波接合は、熱カレンダー加工よりも静電紡糸ナノファイバー層の狭い面積に接合し、従って静電紡糸ナノファイバー層の厚さ、密度および孔径に対する影響が小さい。
【0082】
高温ガスまたは高温空気接合は一般に、静電紡糸ナノファイバー層の厚さ、密度および孔径に対して最小の効果を有し、従ってこの接合方法は、より高い流体流速を維持することが所望である用途において好ましいことがある。
【0083】
熱カレンダー加工を使用する場合、ナノファイバーが溶融して、これの構造体がこれのファイバーとしてもはや保持されないので、静電紡糸ナノファイバー層を過接合しないよう注意を講じる必要がある。極端な場合には、過接合によって、フィルムが形成されるように、ナノファイバーが完全に溶融する。使用するニップロールの一方または両方をほぼ周囲温度、例えば約25℃と約300℃との間の温度まで加熱する。多孔性ナノファイバー媒体および/または多孔性支持体もしくは基材は、ニップロールの間で約0ポンド/インチから約1000ポンド/インチ(178kg/cm)の範囲に及ぶ圧力にて圧縮することができる。
【0084】
カレンダー加工条件、例えばロール温度、ニップ圧およびライン速度を調整して、所望の中実性を達成することができる。一般に、より高い温度、圧力ならびに/または高い温度および/もしくは圧力下での滞留時間を用いることによって、中実性の上昇が生じる。
【0085】
他の機械的ステップ、例えば伸張、冷却、加熱、焼結、アニーリング、巻取り、巻戻しなどを要望に応じて、複合材濾過媒体を形成、成形および作製する全体の工程に場合により含めてもよい。
【0086】
本明細書で教示する複合材濾過媒体の空隙率は、カレンダー加工の結果として変更することができ、空隙率は約5%から約90%の範囲に及ぶ。
【0087】
本明細書で教示する複合材液体濾過プラットフォームのある実施形態において、多孔性メンブレン支持体基材(即ち静電紡糸ナノファイバー層を捕集するために使用される。)は、多孔性メンブレンの別の層に隣接して、少なくとも1つの多孔性メンブレンの層を含む。例えば、多孔性メンブレン基材の層は、粒子保持力を改善する。複合材濾過媒体のスループットを改善するために、同じまたは異なる組成の多孔性メンブレン基材の層状化も使用される。
【0088】
複合材液体濾過プラットフォームにおける多層多孔性メンブレン基材を選ぶための他の考慮事項としては、複合材液体濾過媒体の経済面および利便性、複合材液体濾過媒体を設置できる液体濾過デバイスを製造するために使用する方法、滅菌および妥当性確認の容易さが挙げられる。静電紡糸ナノファイバー層を捕集するために使用する多孔性メンブレン基材は単層でも多層構造でもよく、多孔性メンブレン基材を構成する層の好ましい数は、実際の考慮事項にも基づいて選択されることが多い。
【0089】
加えて、本明細書で教示する複合材液体濾過プラットフォームの利点は、ナノファイバーマットの厚さがより薄いと、従って紡糸時間がより短いと、より顕著であることが観察された。これらの恩恵は、より高い生産ライン速度を直接生じさせる移動ウェブ上でも利用可能である。ナノファイバー層をより平滑な支持体表面上に紡糸することによって、同じバブルポイントが、より薄いナノファイバー層厚にて達成されることが観察された。これらの利点によって、より高い生産速度による経済的恩恵およびより薄いナノファイバー層のより高い透過度の両方が生じる。
【0090】
本明細書で教示する他の実施形態において、複合材液体濾過プラットフォームは:
1)単層においてレトロウイルスの完全な保持力を示さない多孔性メンブレン支持体、例えば:
i)マサチューセッツ州ビレリカのEMD Millipore Corporationから入手可能な、0.1μm等級のMillipore Express(登録商標)メンブレン
ii)マサチューセッツ州ビレリカのEMD Millipore Corporationから入手可能な、Retropore(商標)メンブレン、または
iii)ドイツ、ヴッパータールのMembrana GmbHによる、0.45μm等級ナイロンメンブレンもしくは0.60μm等級ナイロンメンブレン、および
2)多孔性メンブレン支持体上に配置され、より高い透過度、濾過能力(多孔性メンブレン前濾過による。)およびより低いナノファイバー生産コスト(より低いナノファイバー層厚さによる。)にて、完全なレトロウイルス保持力を達成するために使用されているよりも薄い厚さを有する、ポリマー系静電紡糸ナノファイバー層
を含む。
【0091】
静電紡糸ナノファイバー不織マットのスループットを改善するために、静電紡糸ナノファイバーは、非対称性多孔性支持メンブレンの細目側上にナノファイバーを捕集することによって生産される。複合材液体濾過プラットフォームの最終構造体は、多孔性支持メンブレンが静電紡糸ナノファイバー層の孔径と比較して、これの最も目の細かい部位により大きい孔を有するように構築された複合材濾過媒体を含むので、多孔性支持メンブレンはプレフィルタとして作用して、静電紡糸ナノファイバー層の上流に位置する。複合材濾過プラットフォームのこのような機構において、複合材濾過媒体の非対称性多孔性支持メンブレンは前濾過機能を提供して、静電紡糸ナノファイバー層は微生物保持力の大部分を提供する。
【0092】
本明細書で教示する複合材液体濾過プラットフォームの2つの非限定的な例としては、1)マサチューセッツ州ビレリカのEMD Millipore CorporationによるMillipore Express(登録商標)プレフィルタメンブレンなどの0.5μm等級プレフィルタ多孔性メンブレン支持体上に配置されたマイコプラズマ保持性ナノファイバーマット(0.1μm等級)を特色とする複合材濾過構造体または媒体、および2)マサチューセッツ州ビレリカのEMD Millipore CorporationによるMillipore Express(登録商標)SHRメンブレンなどの0.1μm等級多孔性メンブレン支持体上に配置されたレトロウイルス除去ナノファイバーマット(孔径<0.1μm)が挙げられる。
【0093】
前濾過多孔性支持メンブレンおよび微生物保持性ナノファイバー層を特色とする複合材液体濾過プラットフォームは、これの上に提供された微生物の完全保持力を呈するが、この複合材の多孔性支持メンブレンとナノファイバー構成要素のどちらも、単独で試験を行う場合に完全な微生物保持力を示す必要はない。非限定的な例として、部分細菌保持性ナノファイバー層は、マサチューセッツ州ビレリカのEMD Millipore CorporationによるMillipore Express(登録商標)SHCフィルタなどの、0.5μm等級を有する部分細菌保持性プレフィルタ多孔性メンブレン支持体の上に紡糸される。
【0094】
静電紡糸ナノファイバーの生産方法
静電紡糸ナノファイバー層の作製方法は例えば、それぞれ参照によりこの全体が本明細書に組み入れられ、それぞれチェコ共和国、リベレツのElmarco s.r.o.に譲渡された、WO2005/024101、WO2006/131081およびWO2008/106903に教示されている。
【0095】
「A Method Of Nanofibres Production From Polymer Solution Using a Electrostatic Spinning And A Device For Carrying Out The Method」という表題のWO2005/024101は、例えば回転帯電電極と異なる電位を有する対電極との間に作られた電場における静電紡糸を使用して、真空チャンバ内でポリマー溶液からナノファイバーを生産することを教示している。
【0096】
ポリマー溶液は、少なくとも1つのポリマー溶液出入口を有する容器内に保持されている。出入口は、ポリマー溶液を循環させて、ポリマー溶液を容器内で一定の高さ水準に維持するように作用する。
【0097】
必要な場合には加熱することができる、補助乾燥空気供給は、帯電電極と対電極との間に位置している。溶液の一部が回転帯電電極の外面に吸収され、電場が形成されている、回転帯電電極(rotating the charged electrode)と対電極との間の真空チャンバの領域内へ紡糸されるように、回転帯電電極の片側がポリマー溶液に浸漬される。ポリマー溶液が、回転帯電電極の表面上に高い安定性を有するテーラーコーンを形成し、このテーラーコーンがナノファイバーの主な形成位置を示している。
【0098】
対電極は、真空源に接続された真空チャンバの一端を形成する有孔導電材料で作られた円筒状表面を有する。回転帯電電極の近くに位置する対電極の表面の一部は、静電紡糸ナノファイバーが裏打ち布材料の上に配置されたときに、静電紡糸ナノファイバーを支持する裏打ち布材料の搬送面として作用する。裏打ち布支持体材料は、真空チャンバの片側に配置された巻戻しデバイス上に、および真空チャンバの反対側に配置された巻取りデバイス上に位置決めされている。
【0099】
電場の効果によって、形成されたナノファイバーは対電極へと浮動して、結果として、裏打ち布支持材料の表面上に付着してナノファイバー層となる。ナノファイバーの厚さは、巻戻しデバイスおよび巻取りデバイスの速度を使用して制御される。
【0100】
帯電電極から対電極へのナノファイバーの浮動は、真空チャンバ中に吸引され、ポリマー溶液容器および帯電電極に沿って通過し、ナノファイバーの裏打ち布提示面(presenting plane)支持材料および対電極を通り抜ける、空気の流れによって促進される。
【0101】
試験方法
目付量は、ASTM procedure D−3776,「Standard Test Methods for Mass Per Unit Area(Weight)of Fabric」に従って決定し、g/mで報告し、参照によりこれの全体が本明細書に組み入れられている。
【0102】
空隙率は、試料の目付量(g/m)をポリマー密度(g/cm)、試料厚さ(マイクロメートル)で割り、100を掛けて、生じた数を100から引くことによって計算し、即ち空隙率=100−[目付量/(密度×厚さ)×100]である。
【0103】
ファイバー直径は、以下のように決定した。ナノファイバーマット試料の両側で走査型電子顕微鏡(SEM)画像を40,000または60,000倍の倍率で撮影した。明確に識別可能な10本のナノファイバーの直径を各SEM画像から測定し、記録した。異常値は含めなかった(即ちナノファイバーの塊、ポリマー滴下、ナノファイバーの交差など。)。各試料の両側の平均ファイバー直径を計算し、平均して、各試料について1つの平均ファイバー直径値を得た。
【0104】
厚さは、ASTM procedure D1777−64,「Standard Test Method for Thickness of Textile Materials」に従って決定し、マイクロメートル(μm)で報告し、参照によりこれの全体が本明細書に組み入れられている。
【0105】
平均流バブルポイントは、ASTM procedure Designation E 1294−89,「Standard Test Method for Pore Size Characteristics of Membrane Filters Using Automated Liquid Porosimeter」に従って、原則としてニューヨーク州イサカのPorous Materials,Inc.(PMI)による市販装置と同様の、特注のキャピラリー・フロー・ポロシメータを用いてASTM Designation F 316による自動バブルポイント法を使用することによって測定した。直径25mmの個々の試料をイソプロピルアルコールで濡らした。各試料をホルダーに置き、空気の差圧を印加して、試料から流体を除去する。湿潤流が乾燥流(湿潤溶媒なしの流れ)の半分に等しい差圧を使用して、PMIから共有されたソフトウェアを用いて平均流孔径を計算した。
【0106】
流束は、流体が所与の面積の試料を通過する速度であり、脱イオン水を47mmの直径(9.6cm濾過面積)を有するフィルタ媒体試料を通過させることによって測定した。枝付フラスコを介して濾液端(filtrate end)に対する約25インチHg真空を使用して、水を試料に押し通した。
【0107】
静電紡糸マットの有効孔径は、従来のメンブレン技法、例えばバブルポイント、液体−液体ポロメトリーおよびあるサイズの粒子を用いたチャレンジ試験を使用して測定した。ファイバーマットの有効孔径は一般にファイバー直径と共に増大して、空隙率と共に縮小することが一般に公知である。
【0108】
バブルポイント試験は、有効孔径を測定する便利な方法を提供する。バブルポイントは、以下の式から計算される:
【0109】
【数1】
式中、Pはバブルポイント圧であり、γはプローブ流体の表面張力であり、rは孔半径であり、θは液体−固体接触角である。
【0110】
メンブレンメーカーは、市販のメンブレンフィルタに、これの保持力特徴に基づいて、公称孔径等級を割り当てている。
【0111】
レトロウイルス保持力
レトロウイルス保持力は以下の試験方法を使用して試験した。バクテリオファージPR772チャレンジ流(challenge stream)は、リン酸緩衝食塩(PBS)溶液中で、1.0×10pfu/mLの最小力価で調製した。試験が行われる多孔性媒体を25mm円板に切断して、EMD Millipore Corporationから市販されているオプティスケール25ディスポーザブル・カプセル・フィルタ・デバイスと同じタイプのオーバーモールド・プロピレン・デバイス内に密閉した。デバイスは、エアロッキングを防止するための空気口を含み、3.5cmの有効濾過面積を有する。これらのデバイスは次に、172.375kPa(25psi)の圧力にて水で濡らした後に、34.475kPa(5psi)の圧力にて上述のチャレンジ流によってチャレンジを行った。濾液100mlの回収後、または濾過の4時間後のどちらか早いほうにて、試験を終了した。最初および最後の供給量中のバクテリオファージの定量は、一晩インキュベートしたプレート上で、ライトボックスおよびコロニーカウンタを使用して行った。対応する対数保持力値(log retention values、LRV)を計算した。
【0112】
マイコプラズマ保持力
マイコプラズマ保持力は、メンブレン1平方cm当たり8.77×10コロニー形成単位(CFU/cm)を用いて、メンブレンにチャレンジを行うことによって測定した。デバイスは、アコレプラズマ・ライドラウィー(Acholeplasma laidlawii(A.ライドラウィー(A.laidlawii)))50mlによってチャレンジを行い、次にマイコプラズマ緩衝液50mlを、合計で100mlを流した。次に100ml全部を0.22μm滅菌メンブレンで濾過した。次に、マサチューセッツ州ビレリカのEMD Millipore Corporationに譲渡されたWO 2009/032040で教示されている手順に従い、ここで滅菌グレードフィルタの保持力試験方法は:a)A.ライドラウィー(A.laidlawii)のストックを提供すること;b)高い力価まで細胞培養を維持して、細胞が小型で劣化して球状である細胞形態を生じる単一無血清増殖培地中において、A.ライドラウィー(A.laidlawii)のストックを約24時間以内で増殖させて、これにより細菌培養物を生産すること;c)細菌培養物を公知のチャレンジレベルにて試験フィルタで濾過することによって試験フィルタのチャレンジを行い、これにより試験フィルタの下流で濾液を生産すること;およびd)濾液中のA.ライドラウィー(A.laidlawii)の濃度を検出することを含む。A.ライドラウィー(A.laidlawii)を培養または貯蔵するための無血清増殖培地についても説明されている。
【0113】
ブレブンディモナス・ディミヌタ(Brevundimonas diminuta、(B.ディミヌタ(B.diminuta)))保持力は、ASTM procedure F838−83,「Standard Test Method for Determining Bacterial Retention of Membrane Filters Utilized for Liquid Filtration」に従って測定した。
【0114】
紡糸電極の上に固定されている多孔性支持体上に、ナノファイバーが捕集される実験室スケールのツールである、NS Lab 200,(チェコ共和国、リベレツのElmarco s.r.o.)で、ナノファイバー試料を生産した。この装置で調製した試料は、「スタティックモード」と呼ぶ。
【0115】
50cm長電極を追加したNS 3W1000U(チェコ共和国、リベレツのElmarco s.r.o.)でも、試料を生産した。この装置では、試料は、基材が3個の紡糸電極の上で一定速度にて移動するロール・ツー・ロール方式で連続して生産した。この試料調製方法は、実施例で「ダイナミックモード」と呼ぶ。
【0116】
以下では複合材液体濾過プラットフォームを下記の実施例でより詳細に説明する。本発明の実施例は、複合材静電紡糸ナノファイバーマットが高い透過度および細菌、マイコプラズマまたはレトロウイルスの高い保持力のどちらも同時に所有できることを示す。
【実施例】
【0117】
[実施例1]
不織布上に生産した静電紡糸ナノファイバーマットとメンブレン上に生産したナノファイバーマットとの比較。
【0118】
本明細書で提供する複合材液体濾過プラットフォームは、ナイロン6ポリマーの溶液を静電紡糸することによって作られたナノファイバー層を含む。ナイロン6は、米国ニュージャージー州フローラムパークのBASF Corp.によって、Ultramid(登録商標)B24という商品名で供給される。紡糸溶液は、13%ナイロン6(Ultramid(登録商標)グレードB24 N 02)を酢酸、ギ酸および水のブレンド(2:2:1重量比)と、80℃にて約5時間混合することによって調製した。生じた溶液の粘度は約100cPであった。溶液はただちに、82kVの電場の下で6ワイヤ紡糸電極を使用して異なる捕集時間(紡糸時間)で紡糸した。
【0119】
従来の不織支持体上に紡糸されたナノファイバーには、米国ジョージア州ゲインズビルのATEX Inc.から、Axar A SBPP 30gsmという商品名で入手可能な帯電防止コーティングされた不織スパンボンドポリプロピレン材料を使用した。
【0120】
多孔性メンブレン上に紡糸されたナノファイバーには、EMD Millipore CorporationからExpress(登録商標)SHFとして入手可能な、0.22μm等級非対称性滅菌グレードPESメンブレンを使用した。
【0121】
生産された静電紡糸マットの平均ファイバー直径は約25から30nmであった。ナノファイバーマット捕集に使用した異なる材料に関連する特性の変化を定量する作業において、上で定義した、紡糸時間の関数としての複合材構造体のIPAバブルポイント(通常は、ナノファイバーマットの厚さに正比例する。)を測定した。
【0122】
図3は、非対称性0.22μm等級メンブレン上に紡糸された同等のポリアミドナノファイバーに対する、不織布上に紡糸された25nmポリアミドファイバーのBPの増加を表す。
【0123】
[実施例2]
ナノファイバー層および支持メンブレンを特色とする複合材濾過媒体を含むマイコプラズマ保持性複合材液体濾過プラットフォームの製造。
【0124】
紡糸溶液は、14%ナイロン6(Ultramid(登録商標)B27 E 01)溶液を酢酸、ギ酸および水のブレンド(2:2:1重量比)と、80℃にて5時間混合することによって調製した。溶液はただちに、82kVの電場の下で6ワイヤ紡糸電極を使用して紡糸した。不織支持マットはスタティックモードにて、紡糸時間45分で紡糸した。多孔性メンブレン/ナノファイバー複合材試料はダイナミックモードで紡糸し、ダイナミックモードでは基材である0.5μm等級のメンブレン(Millipore Express(登録商標)SHCフィルタのプレフィルタ層、EMD Millipore Corporation、ビレリカ、マサチューセッツ州)を紡糸電極の上で一定速度にて移動させた。ナノファイバー層を試験のために不織基材から剥離した。ナノファイバーをメンブレン上に静電紡糸したときに、次の試験のためにメンブレンをナノファイバーと共にまとめておいた。次に保持力試験のために、ディスク試料を切断して、上述したオーバーモールドデバイスに入れた。図4は、マイコプラズマ保持力(>9LRV)が同様の2つの試料:粗不織布上およびメンブレン上に紡糸したナノファイバーマットの透過度を示す。
【0125】
[実施例3]
マイコプラズマ保持性ナノファイバー/メンブレン複合材の製造における紡糸時間の調査。
【0126】
図5は、ナノファイバー層の厚さの増加に伴うマイコプラズマ保持力の上昇を表す。0.5μm等級のメンブレン(Millipore Express(登録商標)SHCフィルタのプレフィルタ層、EMD Millipore Corporation、ビレリカ、マサチューセッツ州)およびナノファイバー層を備えるマイコプラズマ保持用の複合材試料は、2分以上の紡糸時間で完全に保持性であることが判明した。
【0127】
[実施例4]
ナノファイバー層および支持メンブレン複合材濾過媒体を特色とする複合材濾過媒体を含む、B.ディミヌタ(B.diminuta)保持性複合材液体濾過プラットフォームの製造。
【0128】
紡糸溶液は、粗不織布支持の場合、13%ナイロン6(Ultramid(登録商標)グレードB 24 N 02)を酢酸およびギ酸のブレンド(2:1重量比)と80℃にて5時間混合することによって、多孔性支持メンブレンおよびナノファイバー層を特色とする複合材濾過プラットフォームでは、12%ナイロン6(Ultramid(登録商標)グレードB27 E 01)を酢酸およびギ酸のブレンド(2:1重量比)中に80℃にて5時間混合することによって調製した。溶液はただちに、82kVの電場の下で6ワイヤ紡糸電極を使用して紡糸した。粗不織支持マットはスタティックモードで30分紡糸して、メンブレン/ナノファイバー複合材はダイナミックモードで紡糸し、ダイナミックモードでは、基材である0.5μm等級のメンブレン(Millipore Express(登録商標)SHCフィルタのプレフィルタ層、EMD Millipore Corporation、ビレリカ、マサチューセッツ州)が紡糸電極の上で一定速度にて移動する。ナノファイバー層を試験のために粗不織基材から剥離した。ナノファイバーをメンブレン上に紡糸したときに、次の試験のためにメンブレンをナノファイバーと共にまとめておいた。次に保持力試験のために、ディスク試料を切断して、47mmステンレス鋼ホルダーに入れた。図6は、B.ディミヌタ(B.diminuta)保持力(>9LRV)が同様の2つの試料:粗不織布上およびメンブレン上に紡糸されたナノファイバーマットの透過度を示す。
【0129】
[実施例5]
レトロウイルス保持性ナノファイバー層および多孔性支持メンブレンを特色とする複合材液体濾過媒体を含む複合材液体濾過プラットフォームの製造。
【0130】
紡糸溶液は、酢酸、ギ酸および水の混合物(2:2:1重量比)中の12%ナイロン6(Ultramid(登録商標)グレードB27 E 01)溶液に80℃にて5時間にわたって調製した。溶液はただちに、82kVの電場の下で6ワイヤ紡糸電極を使用して紡糸した。対称性マットはスタティックモードにて、紡糸時間30分で紡糸した。メンブレン/ナノファイバー複合材試料をダイナミックモードで紡糸し、ダイナミックモードでは、基材が紡糸電極の上で一定速度にて移動する。次に保持力試験のために、ディスク試料を切断して、オーバーモールドデバイスに入れた。ナノファイバー層を試験のために不織基材から剥離した。ナノファイバーをメンブレン上に紡糸したときに、次の試験のためにメンブレンをナノファイバーと共にまとめておいた。次に保持力試験のために、ディスク試料を切断して、上述したオーバーモールドデバイスに入れた。
【0131】
どちらの試料(不織支持マットおよびメンブレン/ナノファイバー複合材)も、2層形式での保持力について試験を行った。メンブレン/ナノファイバー複合材のプロットした値には、プレフィルタメンブレンの2層の追加の抵抗力を含む。図7は、レトロウイルス保持力(>6LRV)が同様の2つの試料:粗不織布上に紡糸されたナノファイバーマットおよびメンブレン上に紡糸されたナノファイバーマットの透過度を示す。表1は、メンブレンおよび実施例によって製造した複合材のIPAバブルポイントを示す。
【0132】
表1 支持0.5μmメンブレンおよびメンブレン/ナノファイバー複合材について測定したバブルポイント。
【0133】
【表1】
【0134】
[実施例6]
レトロウイルス保持性ナノファイバー層および多孔性支持メンブレンを特色とする複合材液体濾過媒体を含む複合材液体濾過プラットフォームの濾過スループット。
【0135】
図8は、メンブレン/ナノファイバー複合材と同じナノファイバーおよび同様のマイコプラズマ保持力の粗不織布上に紡糸されたメンブレンとの能力の比較を表す。スループット試験は、プレフィルタを備えたマイコプラズマ−保持メンブレンに試験を行うために慣習的に使用される2g/L細胞培地流を使用して行った。この媒体流は、ドイツ、ダルムシュタットのMerck KGgAの系列会社であるEMDケミカルズから入手可能な2g/Lダイズ粕からのペプトン(パパイン);1g/LプルロニックF−68;3.7g/L炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム);およびマサチューセッツ州ウォルサムのサーモサイエンティフィックから入手可能な10g/Lハイクローン粉末組織培地媒体DMEM/Highを含有する。多孔性メンブレン/ナノファイバー複合材構造体は、ビルトインプレフィルタ層である、0.5μm等級の多孔性メンブレン(Millipore Express(登録商標)SHCフィルタのプレフィルタ層、EMD Millipore Corporation、ビレリカ、マサチューセッツ州)を有し、この層がナノファイバー層を早期の目詰まりから保護して、このため複合材構造体がより高い濾過スループットを発揮できるようになる。
【0136】
使用方法
本発明による複合材液体濾過プラットフォームは、食品、飲料、医薬品、バイオテクノロジー、マイクロエレクトロニクス、化学的加工、水処理および他の液体処理産業において有用である。
【0137】
本明細書で教示する複合材液体濾過プラットフォームは、液体試料または液体流からの微生物の濾過、分離、同定および/または検出ならびにウイルスまたは微粒子の除去のために非常に有効な複合材である。
【0138】
本明細書で教示する複合材液体濾過プラットフォームは、ヒトまたは動物に投与することを目的とする医薬および生物医薬化合物と接触することがある、またはこれらを含有することがある溶液およびガスのクリティカル濾過において、特に有用である。
【0139】
本明細書で教示する複合材液体濾過プラットフォームは、これに限定されるわけではないが、クロマトグラフィー;高圧液体クロマトグラフィー(HPLC);電気泳動;ゲル濾過;試料遠心分離;オンライン試料調製;診断キット試験;診断試験;高スループットスクリーニング;親和性接合アッセイ;液体試料の精製;流体試料の構成成分のサイズに基づく分離;流体試料の構成成分の物理的特性に基づく分離;流体試料の構成成分の化学的特性に基づく分離;流体試料の構成成分の生物学的特性に基づく分離;流体試料の構成成分の静電特性に基づく分離;およびこれの組合せを含む、いずれの液体試料調製方法とも組合せることができる。
【0140】
本明細書で教示する複合材液体濾過プラットフォームは、より大型の濾過デバイスまたはシステムのコンポーネントまたは一部とすることもできる。
【0141】
キット
本明細書で教示する複合材濾過媒体は、液体試料または液体流から微生物および微粒子を除去するために使用できるキットとして提供することも可能である。キットは例えば、本明細書で教示する多孔性メンブレン基材上の静電紡糸ナノファイバー液体濾過層を含む1つ以上の複合材濾過媒体を、複合材濾過媒体を包含または使用するための1つ以上の液体濾過デバイスまたは支持体と共に備えていてもよい。
【0142】
キットは、1つ以上の対照溶液を含有してもよく、本発明を実施する方法において有用な各種の緩衝剤を場合により含んでいてもよく、例えば試薬を除去するための、または非特異的に保持もしくは接合された材料を除去するための洗浄緩衝液がキットに場合により含まれていてもよい。
【0143】
他の必須ではないキット試薬としては、溶離緩衝剤が挙げられる。緩衝剤はそれぞれ、溶液として別個の容器で提供されてもよい。または、緩衝剤は、乾燥形または粉末として提供されてもよく、使用者の所望の用途に従って溶液として構成されてもよい。この場合、緩衝液は小型包装物として提供されてもよい。
【0144】
キットは、デバイスが自動化されている場合には電源ならびに外力を提供する手段、例えば真空ポンプを提供してもよい。キットは、静電紡糸ナノファイバー含有液体濾過媒体、デバイス、支持体もしくは基材を使用するための、および/または本発明とともに使用するために好適な試薬を構成するための説明書、ならびに発明を実施する方法を含んでいてもよい。本発明の方法を実施する間に、または本発明のデバイスを使用する間に得たデータを記録および分析するための、必須ではないソフトウェアも含まれていてもよい。
【0145】
「キット」という用語は、例えば単一のパッケージ内に組合された構成成分、個別に包装されて共に販売される構成成分、またはカタログで共に(例えばカタログの同じページまたは見開きで)紹介されている構成成分を含む。
【0146】
上述した開示は、独立した有用性を備えた複数の別個の発明を含んでいることがある。これらの発明はそれぞれ好ましい形式で開示されているが、本明細書で開示および例証したようなこれの具体的な実施形態は、多くの変形が可能であるために、限定的な意味で検討されるべきではない。本発明の対象は、明細書に開示された多様な要素、特色、機能および/または特性のすべての新規および非自明性の組合せおよび下位の組合せを含む。以下の特許請求の範囲は特に、新規および非自明性であると見なされるある組合せおよび下位の組合せを指摘している。特色、機能、要素および/または特性の他の組合せおよび下位の組合せにおいて実現された発明は、本願または関連出願から優先権を主張する出願において主張されてもよい。このような特許請求の範囲は、異なる発明に関していようと、同じ発明に関していようと、および元の特許請求の範囲に対して範囲がより広かろうと、より狭かろうと、等しかろうと、または異なろうと、本開示の発明の主題に含まれていると見なされる。
【0147】
関連出願の相互参照
本願は、2011年4月1日に提出された米国仮特許出願第61/470705号の利益を請求し、この内容全体が参照により本明細書に盛り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8