(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜11のいずれか一項記載の抗体を含む、サプレッサーT細胞活性を低下させるための薬学的組成物であって、該細胞と接触することによりサプレッサーT細胞活性を低下させる、薬学的組成物。
請求項1〜11のいずれか一項記載の抗体を含む、抗原に対する免疫応答を増進するための薬学的組成物であって、T細胞と接触することにより抗原に対する免疫応答を増進する、薬学的組成物。
請求項1〜11のいずれか一項記載の抗体を含む、T細胞増殖を増大させるための薬学的組成物であって、T細胞と接触することによりT細胞増殖を増大させる、薬学的組成物。
請求項1〜11のいずれか一項記載の抗体を含む、エフェクターT細胞増殖の制御性T細胞媒介抑制を克服するための薬学的組成物であって、T細胞と接触することによりエフェクターT細胞増殖の制御性T細胞媒介抑制を克服する、薬学的組成物。
請求項1〜11のいずれか一項記載の抗体を含む、サイトカイン産生または分泌を増大させるための薬学的組成物であって、T細胞と接触することによりサイトカイン産生または分泌を増大させる、薬学的組成物。
血液がんが、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、菌状息肉腫(MF)、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(皮膚ALCL)、セザリー症候群、または成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)である、請求項35記載の薬学的組成物。
固形がんが、腎細胞がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、結腸がん、子宮頸がん、脳悪性腫瘍、肝がん、膵がん、腎がん、または胃がんである、請求項35または37記載の薬学的組成物。
毒素に連結された請求項1〜9のいずれか一項記載の抗体を含む、制御性T細胞活性を減少させるための薬学的組成物であって、制御性T細胞と接触することにより制御性T細胞活性を減少させる、薬学的組成物。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
ケモカインは、主として白血球の活性化および化学走性におけるそれらの役割に関して公知となっている分泌タンパク質のファミリーである。それらと標的細胞上のケモカイン受容体との特異的相互作用は、炎症メディエーターの放出、細胞形状の変化および細胞の遊走を引き起こすシグナル伝達カスケードを誘起する。CCケモカイン受容体4(CCR4)は、CCケモカインCCL17およびCCL22の同種受容体であり、Tヘルパー2型細胞(Th2)および大部分の制御性T細胞(Treg)を含むT細胞の機能的に異なるサブセットにおいて発現される(Iellem et al., 2001;およびImai et al., 1999)。CCL17/22の分泌が、悪性種、例えば結腸直腸、卵巣、ホジキンリンパ腫および膠芽細胞腫による腫瘍浸潤性Tregの数の増加を促進することを示す証拠が増えている(Curiel et al., 2004; Wagsater et al., 2008; Niens et al., 2008; Jacobs et al., 2010; Hiraoka et al., 2006)。腫瘍におけるTregレベルの増加は、効果的な抗腫瘍免疫応答を妨害し(Wood et al., 2003;およびLevings et al., 2001)、しばしば乏しい臨床結果および腫瘍の進行と関連する(Hiraoka et al., 2006;およびWoo et al., 2001)。したがって、がん治療の成功の1つの大きな障害は、腫瘍へのTregの遊走およびそれらの腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫応答の抑制により発生し得る(Zou et al, 2006;およびYu et al, 2005)。Tregの抑制機能を打ち消し結果として抗腫瘍免疫を促進する取り組みの中で、最近、Tregに対する免疫療法剤としてのモノクローナル抗体(mAb)が前臨床および臨床研究において評価された(Mahnke et al., 2007; Roncarolo et al., 2007)。しかし、mAb免疫療法による全身的なTreg除去に対する警告は、大いに予想される自己免疫の併発である(Sakaguchi et al., 2008;およびKohm et al., 2006)。Tregにより誘導されるがんの免疫逃避を回避する別の戦略は、Tregの誘引および蓄積を腫瘍組織において直接妨げる腫瘍関連Treg標的療法を確立することである。
【0034】
がん免疫療法におけるmAbの1つの可能性は、腫瘍による免疫逃避を促進する免疫学的基軸(immunological axes)を遮断または調整するそれらの能力にある。ケモカイン受容体CCR4は、抗腫瘍免疫の最も強力な阻害因子であり、免疫療法の成功の最大の障壁であるとみなされる免疫細胞であるFOXP3
+ Tregの大部分において高度に発現される(Baatar et al., 2007)。さらに、腫瘍関連ケモカインであるCCR4は、異なるタイプのがんを有する患者において検出されている(Mizukami et al., 2008; Gobert et al., 2009; およびFaget et al., 2011)。したがって、本明細書に記載されるヒト抗CCR4 mAb免疫療法の標的化アプローチは、がん免疫療法の効果の改善に大きな利益を提供すると同時にその副作用を減少させる。
【0035】
本発明は、ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体4(CCR4)に対して特異的な親和性最適化ヒト化モノクローナル抗体を提供する。この抗CCR4抗体の最初のヒト化作業は、その内容の全体が参照により組み入れられるWO 2009/086514に記載されている。この抗体は、CCR4のN末端および細胞外ドメインを認識するマウス抗CCR4モノクローナル抗体mAb1567をヒト化することによって製造された。純粋なタンパク質を容易に入手可能な抗原に対する抗体の親和性成熟と異なり、抗CCR4抗体の親和性成熟は、そのタンパク質の7回膜貫通構造のために特に困難であった。CCR4のこの複雑な構造が、親和性成熟抗体のスクリーニングおよび選択をより非効率にし、より予測困難にしていた。
【0036】
ヒト化されたmAb1567は、本明細書で「h1567」と称される。h1567抗体の親和性最適化された変種は、本明細書で「huCCR4抗体」と称される。h1567抗体の好ましい変種は、Ab2-3抗体である。親和性最適化huCCR4抗体は、h1567よりも少なくとも1倍、1.5倍、2倍高い親和性を有する。
【0037】
より高い親和性に加えて、本発明のhuCCR4抗体は、CCR4
+腫瘍細胞に対してh1567よりも強いCDCおよびADCC活性を有する。加えて、親和性最適化抗CCR4抗体はまた、CD4
+CD25
high Tregの化学走性を効果的に阻害する。驚くべきことに、親和性最適化抗CCR4抗体はまた、CD4
+CD25
-細胞の増殖を刺激し、Tregの免疫抑制活性を阻害した。したがって、親和性最適化抗CCR4抗体は、CCR4発現腫瘍、例えば皮膚T細胞リンパ腫の処置に有用である。加えて、親和性最適化抗CCR4抗体はまた、Tregの輸送を抑制することによりその抗腫瘍免疫応答を増強することによって他の腫瘍の処置にも有用である。
【0038】
皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)は、単クローン由来の皮膚ホーミングT細胞により引き起こされる多種のリンパ球増殖障害からなるグループである。CTCL細胞は、一様にCCR4を発現する。具体的に、CCR4は、MF、皮膚ALCLおよび結節ALCLのおおよそ50%における悪性T細胞の顕著な特徴である。CLAと異なり、それはセザリー症候群においておよびMFの大細胞形質転換の際に確実に発現され、かつ皮膚に関係し得る他のTリンパ性悪性腫瘍、例えば成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)によっても発現される。CCR4の発現は、非悪性細胞の間では限定的であり、好中球、単球またはB細胞には存在しない。重要なことに、CCR4は、ナイーブT細胞には存在せず、すべてのメモリーT細胞の半分未満に存在する。CTCL細胞におけるCCR4の確実な発現および他の免疫細胞におけるその限定的な発現が、CCR4標的化療法を、これらの悪性腫瘍に関するより魅力的な目標にしている。
【0039】
CCR4に対して比較的選択的な低分子阻害剤の同定において一定の進展があったが、CCR4に対して特異的なモノクローナル抗体は、それらの優れた結合特異性ゆえにCTCLの免疫療法の魅力的な標的である。加えて、Fcγ受容体に対するFc結合を通じて媒介されるそのインビボエフェクター機能も、腫瘍細胞の殺傷に利用することができる。最適なインビボ免疫除去活性に必要とされるMabの正確な特性は知られていないが、抗体を、受容体アゴニストもしくはアンタゴニストのいずれかとして作用するようならびに/または受容体の2量体化および/もしくはインターナライゼーションを促進もしくは阻害するよう選択することができる。抗体媒介腫瘍排除の異なる免疫メカニズムもまた、同定されている。例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)として公知のプロセスである、腫瘍へのナチュラルキラー細胞のMab媒介動員は、これらの免疫エフェクター細胞上の受容体のFc-γ活性化を通じて起こり得る。他の免疫メカニズムは、補体依存性細胞傷害(CDC)および抗体依存性細胞貪食(ADCP)を含む。内在性のMabの活動に関連するさらなるメカニズムは:リガンドの結合またはヘテロ2量体化の妨害、Aktの下流シグナル伝達の阻害および受容体のインターナライゼーションの加速、を含む。後者のメカニズムは、活性受容体チロシンキナーゼ(RTK)のリガンド誘導エンドサイトーシスおよび分解が成長促進シグナルの弱体化の根底にある主要な生理学的プロセスであると考えられるため、特に効果的である。
【0040】
ケモカインおよびそれらの受容体によって大きく調節される白血球輸送は、腫瘍細胞の浸潤および転移の特徴の多くに関係している。腫瘍細胞によるケモカイン受容体CCR4の発現は皮膚への浸潤と関連しているが、CCR4はまた正常および腫瘍の両方の免疫において重要な役割を有している。HTLV-1関連成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)を有するCTCL患者のサブセットにおいては、腫瘍細胞自体が制御性T(Treg)細胞として機能し、宿主の抗腫瘍免疫応答に直面した腫瘍の生存に寄与する。他のタイプのがんにおいては、腫瘍細胞および腫瘍微小環境によって産生されるCCR4に対する特異的リガンドであるケモカインTARC/CCL17およびMDC/CCL22が、CCR4
+ Treg細胞を腫瘍の方に誘引し、そこでそれらは腫瘍の宿主免疫応答からの逃避に好ましい環境を構築する。したがって、抗CCR4 Mab治療剤は、CCR4
+腫瘍細胞を直接殺傷するだけでなく、腫瘍細胞への宿主免疫応答に対するCCR4 Treg細胞の抑制効果に打ち勝つ、多くの異なるがんにとって理想的な処置様式である。
【0041】
1つの局面において、本発明は、CCR4タンパク質に特異的に結合する高親和性ヒト化モノクローナル抗体を提供する。CCR4受容体に対するこの抗体の結合は、CCR4のリガンドまたはアゴニストへの結合を妨害する。CCR4に対する結合に関して競合し、本発明の抗体の存在下で阻止される例示的なリガンドまたはアゴニストは、CCL17、CCL22およびvMIP-IIIを含むがこれらに限定されない。様々なメカニズムによって、該抗体は、CCR4発現細胞、例えば皮膚T細胞リンパ腫細胞(CTCL細胞)または卵巣がん細胞のリガンド誘導化学走性を低下させ得る。huCCR4抗体は、1価または2価であり、単鎖または2本鎖を含む。huCCR4抗体はまた、重-軽鎖ヘテロ2量体の少なくとも1つがCCR4を認識する二重特異性抗体であり得る。機能的に、huCCR4抗体の結合親和性は、約1.5 nM
-1以下である。該抗体のFc領域のグリコシル化は、CCR4結合またはCCR4リガンド阻止特性を変更するよう修飾される。例えば、Fc領域のフコース含量が野生型と比較して削減される。さらに、該抗体は、毒素、放射性標識、siRNAまたはサイトカインを含むがこれらに限定されない治療剤を含む。
【0042】
huCCR4抗体は、T細胞活性を調整する。具体的に、huCCR4抗体は、T細胞のサプレッサー活性、例えばT細胞活性の制御性T細胞媒介抑制を阻止、阻害または低下させ得る。別の局面において、huCCR4抗体は、抗原に対する免疫応答を増進させ得る。例えば、huCCR4抗体は、抗原特異的なT細胞活性を増大させる。他の局面において、huCCR4抗体は、T細胞増殖、例えばエフェクターT細胞増殖を回復または増大させる。さらなる局面において、huCCR4抗体は、T細胞を活性化させサイトカイン、例えばIFN-γを分泌させる。
【0043】
huCCR4抗体は、細胞死を誘導することができる。細胞死は、直接的または間接的のいずれかのメカニズムによって誘導される。例えば、huCCR4抗体は、標的細胞の表面上に発現されているCCR4に結合し、細胞内シグナル伝達経路を通じてそのCCR4発現細胞の死を導く。例えば、huCCR4抗体によるCCR4結合は、補体依存性細胞傷害(CDC)を導き得る。あるいは、huCCR4抗体はCCR4に結合し、CCR4発現標的細胞を殺傷する第2の細胞型を動員させる。huCCR4抗体が第2の細胞型の動員によって細胞死をもたらす例示的なメカニズムは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)および抗体依存性細胞貪食(ADCP)を含むがこれらに限定されない。標的となるCCR4発現細胞型は、腫瘍および制御性または補助(supplementary)T細胞(Treg細胞とも称される)を含む。
【0044】
5つの特有の親和性成熟huCCR4抗体を同定した。これらはAb1-44、Ab1-49、Ab2-1、Ab2-2およびAb2-3を含む。
【0045】
親和性成熟huCCR4抗体の核酸およびアミノ酸配列が、以下に提供される。
【0046】
(表1A)抗体1-44の可変領域の核酸配列
【0047】
(表1B)抗体1-44の可変領域のアミノ酸配列
【0048】
(表2A)抗体1-49の可変領域の核酸配列
【0049】
(表2B)抗体1-49の可変領域のアミノ酸配列
【0050】
(表3A)抗体2-1の可変領域の核酸配列
【0051】
(表3B)抗体2-1の可変領域のアミノ酸配列
【0052】
(表4A)抗体2-2の可変領域の核酸配列
【0053】
(表4B)抗体2-2の可変領域のアミノ酸配列
【0054】
(表5A)抗体2-3の可変領域の核酸配列
【0055】
(表5B)抗体2-3の可変領域のアミノ酸配列
【0056】
中和インフルエンザ抗体の重および軽鎖の相補性決定領域のアミノ酸配列が、以下の表6に示されている。
【0057】
(表6)重鎖および軽鎖のアミノ酸配列
【0058】
上記のように、本発明のhuCCR4抗体は、T細胞活性を調整する。いくつかの局面において、Ab2-3の投与は、エフェクターT細胞増殖の制御性T細胞媒介抑制を克服する。具体的に、Ab2-3処置は、制御性T細胞(Treg)の増殖を刺激せずにエフェクターT細胞(Teff)の増殖を刺激または増大させる。エフェクターT細胞は、CD45RAおよびCCR7発現プロフィールによって分類される4つの異なる集団:T分化型(Tdiff)、ナイーブT細胞(Tnaive)、セントラルメモリーT細胞(Tcm)およびエフェクターメモリーT細胞(Tem)からなる。本発明のAb2-3は、任意のTeff集団の増殖を刺激または増大させ得る。いくつかの局面において、エフェクターT細胞増殖の増大は、抗原に対する免疫応答を増進する抗原特異的T細胞活性を増大させる。いくつかの局面において、エフェクターT細胞媒介免疫応答の増進は、腫瘍形成の阻害または腫瘍サイズの減少に寄与し得る。
【0059】
他の局面において、Ab2-3は、T細胞のサイトカイン産生および分泌を調整する。例えば、Ab2-3の投与は、T細胞からのIFN-γ(IFNγ)の産生および放出を特異的に増大させる。他の局面において、Ab2-3の投与は、IL-10またはIL-4放出に影響し得ない。別の局面において、Ab2-3の投与は、TGF-β放出に影響し得ないまたはわずかに減少させるのみであり得る。IFNγ分泌はTh1細胞(T-ヘルパー1型細胞)の特徴であり、TGF-βおよびIL-10分泌は制御性T細胞の特徴であり、そしてIL-4はTh2(Tヘルパー2型細胞)によって放出されるので、サイトカイン放出プロフィールはAb2-3処置により活性化される特定のT細胞集団を示し得る。いくつかの局面において、Ab2-3はT細胞活性を刺激し、T細胞はTh1細胞である。いくつかの態様において、Ab2-3は、IFNγの分泌を刺激しかつTGF-β、IL-10またはIL-4の分泌を減少させるまたは変化させない。
【0060】
抗体
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な一部分、すなわち、抗原に特異的に結合する(抗原と免疫反応する)抗原結合部位を含む分子を表す。「〜に特異的に結合する」または「〜と免疫反応する」は、その抗体が所望の抗原の1つまたは複数の抗原性決定基と反応し他のポリペプチドと反応しないことを意味する。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、dAb(ドメイン抗体)、単鎖、F
ab、F
ab'およびF
(ab')2フラグメント、scFvおよびF
ab発現ライブラリを含むがこれらに限定されない。
【0061】
単鎖Fv(「scFv」)ポリペプチド分子は、ペプチドをコードするリンカーによって連結されたV
HおよびV
Lをコードする遺伝子を含む遺伝子融合体から発現され得る、共有結合により連結されたV
H:V
Lヘテロ2量体である(Huston et al. (1988) Proc Nat Acad Sci USA 85(16):5879-5883を参照のこと)。自然界では一体となっているが化学的には別々の、抗体V領域由来の軽および重ポリペプチド鎖をscFv分子に変換し、これを抗原結合部位の構造に実質的に類似する3次元構造に折りたたむための化学構造を識別する多くの方法が記載されている。例えば、米国特許第5,091,513号;同第5,132,405号;および同第4,946,778号を参照のこと。
【0062】
多くの標的分子に対する再構成された抗体遺伝子の大きな供給源を提供するために、非常に大きなナイーブヒトscFvライブラリが作製されておりかつ作製され得る。よりも小さなライブラリは、疾患特異的な抗体を単離するために、感染疾患を有する個体から構築され得る(Barbas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:9339-43(1992); Zebedee et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:3175-79 (1992)を参照のこと)。
【0063】
一般に、ヒトから得られる抗体分子は、IgG、IgM、IgA、IgEおよびIgDのクラスのいずれかに関連し、これらは分子中に存在する重鎖の性質によって互いと異なっている。特定のクラスはサブクラス、例えばIgG
1、IgG
2等も有する。さらに、ヒトにおいて、軽鎖は、カッパ鎖またはラムダ鎖であり得る。「抗原結合部位」または「結合部分」という用語は、抗原結合に関与する免疫グロブリン分子の一部分を表す。抗原結合部位は、重(「H」)および軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。「超可変領域」と称される、重および軽鎖のV領域内の3つの高多様性ストレッチが、「フレームワーク領域」または「FR」として公知のより保存されている隣接ストレッチの間に介在している。したがって、「FR」という用語は、自然界において、免疫グロブリンの超可変領域の間にまたは超可変領域に隣接して見られるアミノ酸配列を表す。抗体分子においては、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域が抗原結合表面を形成するよう3次元空間で相互に配置される。この抗原結合表面は、結合する抗原の3次元表面と相補的であり、重および軽鎖の各々の3つの超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と称される。本発明の抗体のVHおよびVL領域のCDRは、表6に列挙されている。
【0064】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、免疫グロブリン、scFvまたはT細胞受容体に特異的に結合することができる任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、通常、化学的に活性な表面分子群、例えばアミノ酸または糖側鎖からなり、そして通常、特定の3次元構造的特徴および特定の電荷的特徴を有する。例えば、抗体は、ポリペプチドのN末端またはC末端ペプチドに対して惹起され得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、「免疫学的結合」および「免疫学的結合特性」という用語は、免疫グロブリン分子とその免疫グロブリンが特異的な抗原との間で起こるタイプの非共有結合的相互作用を表す。免疫学的結合相互作用の強度または親和性は、その相互作用の解離定数(K
d)の観点で表され得、より小さなK
dはより大きな親和性を表す。選択されたポリペプチドの免疫学的結合特性は、当技術分野で周知の方法を用いて定量され得る。1つのそのような方法は、抗原結合部位/抗原複合体の形成および解離の速度(rate)の測定を必要とするものであり、これらの速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性および両方向の速度に等しく影響する幾何学的パラメータに依存する。このようにして、「オンレート定数」(K
on)および「オフレート定数」(K
off)の両方が、濃度ならびに会合および解離の実際の速度の計算によって決定され得る(Nature 361:186-87 (1993)を参照のこと)。K
off/K
onの比は、親和性に関連しないすべてのパラメータの消去を可能にし、そしてそれは解離定数K
dに等しい(概要について、Davies et al. (1990) Annual Rev Biochem 59:439-473を参照のこと)。本発明の抗体は、アッセイ、例えば放射性リガンド結合アッセイまたは当業者に公知の同様のアッセイによって測定される平衡結合定数(K
d)が≦1μM、好ましくは≦100 nM、より好ましくは≦10 nM、最も好ましくは≦100 pM〜約1 pMの場合にCCR4エピトープに特異的に結合すると言われる。
【0066】
本発明のCCR4タンパク質またはその誘導体、フラグメント、アナログ、ホモログもしくはオルソログは、これらのタンパク質成分に免疫特異的に結合する抗体の作製において免疫原として使用され得る。
【0067】
当業者は、過度の実験を要することなく、ヒトモノクローナル抗体が本発明のヒトモノクローナル抗体と同じ特異性を有するかどうかを、前者が後者のCCR4結合を妨げるかどうかを評価することによって決定することができることを理解しているであろう。試験されるヒトモノクローナル抗体が、本発明のヒトモノクローナル抗体による結合の減少によって示されるように本発明のヒトモノクローナル抗体と競合する場合、その2つのモノクローナル抗体は同じまたは関係の近いエピトープに結合することが考えられる。
【0068】
ヒトモノクローナル抗体が本発明のヒトモノクローナル抗体の特異性を有するかどうかを決定する別の方法は、本発明のヒトモノクローナル抗体を通常それと反応するCCR4タンパク質と共にプレインキュベートし、次いで試験されるヒトモノクローナル抗体を添加して、試験されるヒトモノクローナル抗体がCCR4結合能力に関して阻害されるかどうかを決定することである。試験されるヒトモノクローナル抗体が阻害される場合、それはほぼ確実に本発明のモノクローナル抗体と同じまたは機能的に等価なエピトープ特異性を有する。本発明のヒトモノクローナル抗体のスクリーニングはまた、CCR4を使用し、試験モノクローナル抗体がCCR4を中和することができるかどうかを決定することによって実施され得る。
【0069】
当技術分野で公知の様々な手順が、本発明のタンパク質に対するまたはその誘導体、フラグメント、アナログホモログもしくはオルソログに対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体の製造に使用され得る(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow E, and Lane D, 1988, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYを参照のこと)。
【0070】
抗体は、周知技術、例えば、主として免疫血清のIgGフラクションを提供するプロテインAまたはプロテインGを用いる親和性クロマトグラフィーによって精製され得る。その後にまたはその代わりに、探索対象の免疫グロブリンの標的である特定の抗原またはそのエピトープが、免疫親和性クロマトグラフィーによって免疫特異的な抗体を精製するためにカラムに固定され得る。免疫グロブリンの精製は、例えば、D.Wilkinson(The Scientist, published by The Scientist, Inc., Philadelphia PA, Vol. 14, No.8 (April 17, 2000), pp.25-28)によって議論されている。
【0071】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」または「MAb」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、特有の軽鎖遺伝子産物および特有の重鎖遺伝子産物からなる単一分子種である抗体分子を含む抗体分子の集団を表す。特に、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は、その集団の分子のすべてで同一である。MAbは、それに対する特有の結合親和性によって特徴づけられる抗原の特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位を含む。
【0072】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、例えばKohler and Milstein, Nature, 256:495 (1975)に記載される方法を用いて調製され得る。ハイブリドーマ法においては、典型的に、マウス、ハムスターまたはその他の適切な宿主動物を免疫剤で免疫し、その免疫剤に特異的に結合するであろう抗体を産生するまたは産生することができるリンパ球が生成される。あるいは、リンパ球が、インビトロで免疫され得る。
【0073】
免疫剤は、典型的に、タンパク質抗原、そのフラグメントまたはその融合タンパク質を含むであろう。通常、ヒト起源の細胞が望まれる場合に末梢血リンパ球が使用されるか、または非ヒト哺乳動物供給源が望まれる場合に脾細胞もしくはリンパ節が使用されるかのいずれかである。リンパ球は、次いで、適当な融合剤、例えばポリエチレングリコールを用いて不死化細胞株と融合され、ハイブリドーマ細胞が形成される(Goding,
Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp.59-103)。不死化細胞株は、通常、形質転換された哺乳動物細胞、特にげっ歯類、ウシおよびヒト起源の骨髄腫細胞である。通常、ラットまたはマウス骨髄腫細胞株が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは未融合の不死化細胞の成長または生存を阻害する1つまたは複数の物質を含む適当な培養培地中で培養され得る。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠いている場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的に、HGPRT欠損細胞の成長を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む(「HAT培地」)であろう。
【0074】
好ましい不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベル発現を支援し、そして培地、例えばHAT培地に対する感受性を有するものである。より好ましい不死化細胞株は、例えばSalk Institute Cell Distribution Center, San Diego, CaliforniaおよびAmerican Type Culture Collection, Manassas, Virginiaから入手できるマウス骨髄腫株である。ヒトモノクローナル抗体の産生に関しては、ヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も記載されている(Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York (1987) pp.51-63を参照のこと)。
【0075】
ハイブリドーマ細胞を培養する培養培地は、その後、抗原に対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイされ得る。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性が、免疫沈降によってまたはインビトロ結合アッセイ、例えば放射免疫アッセイ(RIA)もしくは酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定される。そのような技術およびアッセイは、当技術分野で公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson and Pollard, Anal. Biochem., 107:220(1980)のScatchard分析によって決定され得る。さらに、モノクローナル抗体の治療適用においては、標的抗原に対する高い程度の特異性および高い結合親和性を有する抗体を同定することが重要である。
【0076】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、そのクローンが限外希釈手順によってサブクローニングされ、そして標準的な方法によって生育され得る(Goding,
Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp.59-103を参照のこと)。この目的に適した培養培地は、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地およびRPMI-1640培地を含む。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物の腹水としてインビボで生育され得る。
【0077】
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、従来的な免疫グロブリン精製手順、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析または親和性クロマトグラフィーによって培養培地または腹水液から単離または精製され得る。
【0078】
モノクローナル抗体はまた、組み換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載される方法によって作製され得る。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来的な手順を用いて(例えば、マウス抗体の重および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離および配列決定され得る。本発明のハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源となる。単離後、DNAは発現ベクターに入れられ、次いでこれがそうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞にトランスフェクトされ、その組み換え宿主細胞においてモノクローナル抗体が合成される。DNAはまた、例えば、ヒト重および軽鎖定常ドメインのコード配列をそれと相同なマウス配列と置換することによって(米国特許第4,816,567号;Morrison, Nature 368, 812-13 (1994)を参照のこと)または免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列のすべてまたは一部を共有結合により接続することによって、修飾され得る。そのような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインと置換され得、またはキメラ2価抗体を作製するために本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインと置換され得る。
【0079】
完全ヒト抗体は、CDRを含む軽鎖および重鎖の両方の全配列がヒト遺伝子から得られたものである抗体分子である。そのような抗体は、本明細書で、「ヒト化抗体」、「ヒト抗体」または「完全ヒト抗体」と称される。ヒトモノクローナル抗体は、トリオーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor, et al., 1983 Immunol Today 4: 72を参照のこと);およびヒトモノクローナル抗体を製造するEBVハイブリドーマ技術(Cole, et al., 1985 In: MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc., pp.77-96を参照のこと)を使用して調製され得る。ヒトモノクローナル抗体は、ヒトハイブリドーマを用いることによって(Cole, et al., 1983. Proc Natl Acad Sci USA 80: 2026-2030を参照のこと)またはインビトロでヒトB細胞をエプスタインバーウイルスで形質転換することによって(Cole, et al., 1985 In: MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc., pp.77-96を参照のこと)使用され得、製造され得る。
【0080】
加えて、ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリを含むさらなる技術を用いて製造され得る(Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991)を参照のこと)。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内因性の免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されたトランスジェニック動物、例えばマウスに導入することによって作製され得る。チャレンジの後、遺伝子の再構成、構築および抗体レパートリーを含むすべての点でヒトにおいて見られるものと非常に類似するヒト抗体産生が観察される。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号およびMarks et al., Bio/Technology, 10, 779-783 (1992);Lonberg et al., Nature 368 856-859 (1994); Morrison, Nature 368, 812-13 (1994); Fishwild et al, Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996);およびLonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995)に記載されている。
【0081】
ヒト抗体は、加えて、抗原によるチャレンジに応じてその動物の内因性抗体ではなく完全ヒト抗体を産生するよう修飾されたトランスジェニック非ヒト動物を用いて製造され得る(PCT公開WO94/02602を参照のこと)。非ヒト宿主の重および軽免疫グロブリン鎖をコードする内因性遺伝子は無力化され、ヒト重および軽鎖免疫グロブリンをコードする活性な遺伝子座が宿主のゲノムに挿入される。ヒト遺伝子は、例えば、必要なヒトDNAセグメントを含む酵母人工染色体を用いて組み込まれる。その後、望まれる修飾のすべてを提供する動物が、修飾の補完性が完全でない中間トランスジェニック動物を交雑することにより子孫として取得される。そのような非ヒト動物の好ましい態様はマウスであり、PCT公開WO 96/33735およびWO 96/34096に開示されるようにXenomouse(商標)と呼ばれる。この動物は、完全ヒト免疫グロブリンを分泌するB細胞を産生する。抗体は、関心対象の免疫原を用いた免疫後に動物から直接的に、例えばポリクローナル抗体調製物として、あるいはその動物由来の不死化B細胞、例えばモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマから、入手され得る。加えて、ヒト可変領域を有する免疫グロブリンをコードする遺伝子が、抗体を直接入手するために回収および発現され得、または抗体のアナログ、例えば単鎖Fv(scFv)分子を入手するためにさらに修飾され得る。
【0082】
内因性免疫グロブリン重鎖の発現を欠失している、マウスとして例示される、非ヒト宿主を作製する方法の例は、米国特許第5,939,598号に開示されている。それは、胚性幹細胞の少なくとも1つの内因性重鎖遺伝子座からJセグメント遺伝子を除去してその遺伝子座の再構成を防止するおよび再構成された免疫グロブリン重鎖遺伝子座の転写物の形成を防止する方法、選択マーカーをコードする遺伝子を含む標的化ベクターにより欠失を行う方法;ならびにその体細胞および生殖細胞が選択マーカーをコードする遺伝子を含むトランスジェニックマウスを胚性幹細胞から作製する方法、を含む方法によって入手され得る。
【0083】
関心対象の抗体、例えばヒト抗体を作製する1つの方法は、米国特許第5,916,771号に開示されている。この方法は、重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを培養下の1つの哺乳動物宿主細胞に導入し、軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを別の哺乳動物宿主細胞に導入し、そして2つの細胞を融合させてハイブリッド細胞を形成することを含む。このハイブリッド細胞は、重鎖および軽鎖を含む抗体を発現する。
【0084】
この手順のさらなる改善として、免疫原上の臨床的に関連するエピトープを同定する方法および該関連エピトープに高親和性で免疫特異的に結合する抗体を選択する関連法が、PCT公開WO 99/53049に開示されている。
【0085】
抗体は、上記の単鎖抗体をコードするDNAセグメントを含むベクターによって発現され得る。
【0086】
これらは、ベクター、リポソーム、ネイキッドDNA、アジュバントアシストDNA、遺伝子銃、カテーテル等を含み得る。ベクターは、化学コンジュゲート体、例えば標的化部分(例えば、細胞表面受容体に対するリガンド)および核酸結合部分(例えば、ポリリジン)を有するWO 93/64701に記載されるもの、ウイルスベクター(例えば、DNAまたはRNAウイルスベクター)、融合タンパク質、例えば標的化部分(例えば、標的細胞に特異的な抗体)および核酸結合部分(例えば、プロタミン)を含む融合タンパク質であるPCT/US 95/02140(WO 95/22618)に記載されるもの、プラスミド、ファージ等を含む。ベクターは、染色体、非染色体または合成であり得る。
【0087】
好ましいベクターは、ウイルスベクター、融合タンパク質および化学コンジュゲート体を含む。レトロウイルスベクターは、モロニーマウス白血病ウイルスを含む。DNAウイルスベクターが好ましい。これらのベクターは、ポックスベクター、例えばオルソポックスまたは鳥ポックスベクター、ヘルペスウイルスベクター、例えば単純ヘルペスIウイルス(HSV)ベクター(Geller, A.I. et al., J. Neurochem, 64:487 (1995); Lim, F., et al., in DNA Cloning: Mammalian Systems, D. Glover, Ed (Oxford Univ. Press, Oxford England)(1995); Geller, A. I. et al., Proc Natl. Acad. Sci.: U.S.A. 90:7603 (1993); Geller, A.I., et al., Proc Natl. Acad. Sci USA 87:1149 (1990)を参照のこと)、アデノウイルスベクター(LeGal LaSalle et al., Science, 259:988 (1993); Davidson, et al., Nat. Genet 3:219 (1993); Yang, et al., J. Virol. 69:2004 (1995)を参照のこと)およびアデノ随伴ウイルスベクター(Kaplitt, M.G.. et al., Nat. Genet. 8:148 (1994)を参照のこと)を含む。
【0088】
ポックスウイルスベクターは、遺伝子を細胞の細胞質に導入する。鳥ポックスウイルスベクターは、核酸の短期間の発現のみをもたらす。アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよび単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターは、神経細胞への核酸の導入に好ましい。アデノウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(約4ヶ月)よりも短期間の発現(約2ヶ月)をもたらし、これはHSVベクターよりも短い。選択される個々のベクターは、標的細胞および処置される状態に依存するであろう。導入は、標準的技術、例えば感染、トランスフェクション、形質導入または形質転換によるものであり得る。遺伝子移入の様式の例は、例えば、ネイキッドDNA、、CaPO
4沈降、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、細胞マイクロインジェクションおよびウイルスベクターを含む。
【0089】
ベクターは、本質的に任意の所望の標的細胞を標的化するために使用され得る。例えば、定位注射が、ベクター(例えば、アデノウイルス、HSV)を所望の場所に送るために使用され得る。加えて、粒子は、ミニポンプ注入システム、例えばSynchroMed Infusion Systemを用いる脳室内(icv)注入によって送達され得る。対流と呼ばれるバルクフローに基づく方法も、大型の分子を脳の広い領域に送達するのに効果的であることが証明されており、ベクターを標的細胞に送達するのに有用であり得る(Bobo et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 2076-2080 (1994); Morrison et al., Am. J. Physiol. 266:292-305 (1994)を参照のこと)。使用することができる他の方法は、カテーテル、静脈内、非経口、腹腔内および皮下注射、ならびに経口またはその他の公知の投与経路を含む。
【0090】
これらのベクターは、様々な目的で、例えばサンプルにおけるCCR4の存在を検出するために使用され得る抗体を多量に発現させるために使用され得る。抗体はまた、CCR4に結合しCCR4活性を妨害する試みを行うために使用され得る。
【0091】
技術は、本発明の抗原性タンパク質に特異的な単鎖抗体の製造のために適合させることができる(例えば、米国特許第4,946,778号を参照のこと)。加えて、方法は、タンパク質またはその誘導体、フラグメント、アナログもしくはホモログに対する所望の特異性を有するモノクローナルF
abフラグメントの高速かつ効率的な同定を可能にするF
ab発現ライブラリの構築のために適合させることができる(例えば、Huse, et al., 1989 Science 246: 1275-1281を参照のこと)。タンパク質抗原に対するイディオタイプを含む抗体フラグメントは、(i)抗体分子のペプシン消化によって作製されるF
(ab')2フラグメント;(ii)F
(ab')2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって生成されるF
abフラグメント;(iii)パパインおよび還元剤による抗体分子の処置によって生成されるF
abフラグメント;ならびに(iv)F
vフラグメントを含むがこれらに限定されない当技術分野で公知の技術によって作製され得る。
【0092】
ヘテロコンジュゲート抗体も、本発明の範囲に包含される。ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有結合により接続された抗体から構成される。そのような抗体は、例えば、免疫系細胞を望ましくない細胞に標的化するため(米国特許第4,676,980号を参照のこと)およびHIV感染の処置のため(WO 91/00360;WO 92/200373;EP 03089を参照のこと)に提案されている。抗体が、架橋剤を利用するものを含む合成タンパク質化学において公知の方法を用いてインビトロで調製され得ることも想定されている。例えば、免疫毒素が、ジスルフィド交換反応を用いてまたはチオエーテル結合を形成することによって構築され得る。この目的に適した試薬の例は、イミノチオレートおよびメチル-4-メルカプトブチルイミデートならびに例えば米国特許第4,676,980号に開示されるものを含む。ヘテロコンジュゲート抗体はまた、二重特異性抗体とも称され得、二重特異性抗体は、例えば、異なる抗原を認識する2つの抗体由来の2つの共有結合により接続された単鎖抗体またはscFvまたは2つの共有結合により接続された可変重鎖-可変軽鎖2量体から構成される。
【0093】
本発明の抗体を、例えばがんの処置における該抗体の効果を増強するために、エフェクター機能に関して修飾することが望ましいことがある。例えば、システイン残基がFc領域に導入され、それによってこの領域に鎖間ジスルフィド結合が形成され得る。そのようにして作製されるホモ2量体抗体は、改善されたインターナライゼーション能力ならびに/または増大した補体媒介細胞殺傷性および抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を有し得る(Caron et al., J. Exp Med., 176:1191-1195 (1992)およびShopes, J. Immunol., 148: 2918-2922 (1992)を参照のこと)。あるいは、抗体は、2つのFc領域を有するよう、そしてそれによって増強された補体溶解およびADCC能力を有し得るよう改造され得る(Stevenson et al., Anti-Cancer Drug Design, 3:219-230 (1989)を参照のこと)。
【0094】
本発明はまた、細胞傷害剤、例えば毒素(例えば、細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素活性を有する毒素またはそのフラグメント)または放射性同位体(すなわち、放射性コンジュゲート体)にコンジュゲートされた抗体を含む免疫コンジュゲート体に関する。
【0095】
使用することができる酵素活性を有する毒素およびそのフラグメントは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性フラグメント、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP-S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害物質、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害物質、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテセンを含む。様々な放射性核種が、放射性コンジュゲート抗体の作製に利用可能である。例は、
212Bi、
131I、
131In、
90Yおよび
186Reを含む。
【0096】
抗体および細胞傷害剤のコンジュゲート体は、様々な2官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの2官能性誘導体(例えば、ジメチルアジプイミデートHCL)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン2,6-ジイソシアネート(tolyene 2,6-diisocyanate))、および2活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を用いて作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al., Science 238: 1098 (1987)に記載されるようにして調製され得る。炭素14標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、抗体への放射性ヌクレオチドのコンジュゲーションにおける例示的なキレート剤である(WO94/11026を参照のこと)。
【0097】
当業者は、本発明の得られる抗体または他の分子に非常に多様な候補部分をカップリングさせることができることを理解しているであろう(例えば、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる"Conjugate Vaccines", Contributions to Microbiology and Immunology, J. M. Cruse and R. E. Lewis, Jr (eds), Carger Press, New York, (1989)を参照のこと)。
【0098】
カップリングは、抗体および他の部分がそれら各々の活性を保持する限リ、2つの分子を結合させるであろう任意の化学反応によって達成され得る。この連結は、多くの化学メカニズム、例えば共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合および錯体化を含み得る。しかし、好ましい結合は共有結合である。共有結合は、既存の側鎖の直接的縮合によってまたは外部架橋分子の組み込みによってのいずれかによって達成され得る。多くの2価または多価連結剤が、タンパク質分子、例えば本発明の抗体、の他の分子へのカップリングに有用である。例えば、代表的なカップリング剤は、有機化合物、例えばチオエステル、カルボジイミド、スクシンイミドエステル、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼンおよびヘキサメチレンジアミンを含み得る。このリストは、当技術分野で公知の様々なクラスのカップリング剤を網羅することを意図したものではなく、より一般的なカップリング剤の例示にすぎない(Killen and Lindstrom, Jour. Immun. 133:1335-2549 (1984); Jansen et al., Immunological Reviews 62:185-216 (1982); およびVitetta et al., Science 238:1098 (1987)を参照のこと)。好ましいリンカーは、文献に記載されている(例えば、MBS(M-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)の使用について記載するRamakrishnan, S. et al., Cancer Res. 44:201-208 (1984)を参照のこと)。オリゴペプチドリンカーによって抗体にカップリングされたハロゲン化アセチルヒドラジド誘導体の使用について記載する米国特許第5,030,719号も参照のこと。特に好ましいリンカーは:(i)EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ-プロピル)カルボジイミドヒドロクロリド);(ii)SMPT(4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジル(pridyl)-ジチオ)-トルエン)(Pierce Chem. Co., Cat.(21558G));(iii)SPDP(スクシンイミジル-6[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート)(Pierce Chem. Co., Cat #21651G);(iv)スルホ-LC-SPDP(スルホスクシンイミジル 6 [3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ヘキサノエート)(Pierce Chem. Co., Cat. #2165-G);および(v)EDCにコンジュゲートされたスルホ-NHS(N-ヒドロキシスルホ-スクシンイミド:Pierce Chem. Co., Cat. #24510)を含む。
【0099】
上記のリンカーは、異なる特質を有する要素を含み、それによって生理化学的特性が異なるコンジュゲートが生成される。例えば、アルキルカルボン酸のスルホ-NHSエステルは、芳香族カルボン酸のスルホ-NHSエステルよりも安定である。NHS-エステル含有リンカーは、スルホ-NHSエステルよりも溶解性が低い。さらに、リンカーSMPTは、立体的に妨げられたジスルフィド結合を含み、高い安定性のコンジュゲートを形成することができる。ジスルフィド連結は、一般に、インビトロで切断されるため他の連結よりも安定性が低く、コンジュゲートの利用性を低下させるものである。スルホ-NHSは、特に、カルボジイミドカップリングの安定性を増強し得る。カルボジイミドカップリング(例えば、EDC)は、スルホ-NHSと組み合わせて使用される場合、カルボジイミドカップリング反応単独よりも加水分解に対する抵抗性が高いエステルを形成する。
【0100】
本明細書に開示される抗体はまた、免疫リポソームとして処方され得る。該抗体を含むリポソームは、当技術分野で公知の方法、例えばEsptein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688 (1985);Hwang et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA, 77: 4030 (1980);ならびに米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号に記載される方法、によって調製される。循環時間が増強されたリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0101】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いる逆相蒸発法によって生成され得る。リポソームは、所望の直径を有するリポソームを生成するよう定義された孔サイズのフィルターを通じて押出される。本発明の抗体のFab'フラグメントは、Martin et al., J. Biol. Chem., 257: 286-288 (1982)に記載されるようにジスルフィド交換反応を通じてリポソームにコンジュゲートされ得る。
【0102】
CCR4に対する抗体の使用
所望の特異性を有する抗体のスクリーニング方法は、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)および当技術分野で公知の他の免疫学的技術を含むがこれらに限定されない。
【0103】
CCR4タンパク質(またはそのフラグメント)に対する抗体は、CCR4タンパク質の局在化および/または定量に関して当技術分野で公知の方法において使用され得る(例えば、適当な生理学的サンプル中のCCR4タンパク質のレベルの測定において使用するために、診断法において使用するために、タンパク質の画像化において使用するめに等)。所定の態様において、抗体由来抗原結合ドメインを含む、CCR4タンパク質に特異的な抗体またはその誘導体、フラグメント、アナログもしくはホモログは、薬学的に活性な化合物(本明細書の以降で「治療剤」と称される)として使用される。
【0104】
本発明のCCR4タンパク質に特異的な抗体は、標準的技術、例えば免疫親和性、クロマトグラフィーまたは免疫沈降によりCCR4ポリペプチドを単離するために使用され得る。CCR4タンパク質(またはそのフラグメント)に対する抗体は、臨床試験手順の一部として、例えば所定の処置計画の効果を決定するため、組織内のタンパク質レベルをモニターするために診断的に使用され得る。検出は、該抗体を検出可能物質にカップリング(すなわち、物理的に連結)することによって行われ得る。検出可能物質の例は、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質および放射性物質を含む。適当な酵素の例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼを含み;適当な補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含み;適当な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンを含み;発光物質の例は、ルミノールを含み;生物発光物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンを含み、そして適当な放射性物質の例は、
125I、
131I、
35Sまたは
3Hを含む。
【0105】
ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化および完全ヒト抗体を含む、本発明の抗体は、治療剤として使用され得る。そのような剤は、一般に、対象においてがんを処置もしくは予防するため、ワクチンの効力を増大させるため、または自然免疫応答を増進するために使用されるであろう。抗体調製物、好ましくはその標的抗原に対して高い特異性および高い親和性を有するもの、が対象に投与され、そして一般に、その標的結合によって効果を示すであろう。抗体の投与は、CCR4タンパク質の活性を打ち消しまたは阻害もしくは妨害し得る。
【0106】
本発明の抗体の治療有効量は、通常、治療目的を達成するために必要とされる量に関連する。上記のように、これは、抗体とその標的抗原との間の、特定の例では標的の機能を妨害する結合相互作用であり得る。投与に必要とされる量はさらに、その特異的抗原に対する抗体の結合親和性に依存するであろうし、また投与された抗体がそれを投与された対象の自由空間(free volume)から消失する速度にも依存するであろう。本発明の抗体または抗体フラグメントの治療有効投与量の一般的範囲は、非限定的な例であるが、約0.1 mg/kg体重〜約50 mg/kg体重であり得る。一般的投与頻度は、例えば、1日に2回〜1週間に1回の範囲であり得る。
【0107】
本発明のCCR4タンパク質またはそのフラグメントに特異的に結合する抗体および本明細書に開示されるスクリーニングアッセイによって同定される他の分子は、薬学的組成物の形式でがんまたはその他の増殖障害の処置のために投与され得る。そのような組成物の調製に関連する原理および検討事項ならびに組成物の選択に関する手引きは、例えば、Remington: The Science And Practice Of Pharmacy 19th ed. (Alfonso R. Gennaro, et al., editors) Mack Pub. Co., Easton, Pa., 1995; Drug Absorption Enhancement: Concepts, Possibilities, Limitations, And Trends, Harwood Academic Publishers, Langhorne, Pa., 1994; およびPeptide And Protein Drug Delivery (Advances In Parenteral Sciences, Vol.4), 1991, M. Dekker, New Yorkに提供されている。
【0108】
抗体フラグメントが使用される場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小の阻害性フラグメントが好ましい。例えば、抗体の可変領域の配列に基づき、標的タンパク質配列に結合する能力を保持しているペプチド分子が設計され得る。そのようなペプチドは、化学的に合成および/または組み換えDNA技術により作製され得る(例えば、Marasco et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 7889-7893 (1993)を参照のこと)。処方物はまた、処置される特定の兆候に必要となる場合、1つより多い活性化合物、好ましくは互いに対して悪影響を及ぼさない補完的活性を有するもの、を含み得る。あるいはまたは加えて、組成物は、その機能を増強する剤、例えば、細胞傷害剤、サイトカイン、化学療法剤または成長阻害剤を含み得る。そのような分子は、意図されている目的に有効な量で適当に組み合わされる。
【0109】
活性成分はまた、例えば液滴技術によってまたは界面重合によって調製されるマイクロカプセル、例えば、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルジョンにおける、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル、の中に捕捉され得る。
【0110】
インビボ投与に使用される処方物は、無菌性でなければならない。これは、滅菌ろ過膜を通じたろ過によって容易に達成され得る。
【0111】
持続放出調製物が、調製され得る。持続放出調製物の適当な例は、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスを含み、このマトリクスは、成形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形式である。持続放出マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸およびγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、分解性乳酸-グルコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドから構成される注射可能なマイクロスフィア)ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。ポリマー、例えばエチレン-酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸は100日を超える分子の放出を実現するのに対して、特定のヒドロゲルは、それより短い期間でタンパク質を放出する。
【0112】
本発明にしたがう抗体は、サンプル中のCCR4(またはタンパク質もしくはそのタンパク質フラグメント)の存在を検出するための剤として使用され得る。好ましくは、抗体は、検出可能な標識を含む。抗体は、ポリクローナル、またはより好ましくはモノクローナルであり得る。インタクトな抗体またはそのフラグメント(例えば、F
ab、scFvまたはF
(ab)2)が使用され得る。プローブまたは抗体に関する「標識」という用語は、プローブまたは抗体への検出可能物質のカップリング(すなわち、物理的連結)によるプローブまたは抗体の直接的標識および直接的に標識された別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識を包含することが意図されている。間接的標識の例は、蛍光標識された2次抗体を用いる1次抗体の検出および蛍光標識されたストレプトアビジンを用いて検出され得るビオチンによるDNPプローブの末端標識を含む。「生物学的サンプル」という用語は、対象から単離された組織、細胞および生物学的流体ならびに対象内に存在する組織、細胞および流体を含むことが意図されている。したがって、血液ならびに血清、血漿またはリンパ液を含む血液のフラクションまたは成分が、「生物学的サンプル」という用語の用法に含まれる。すなわち、本発明の検出方法は、インビトロおよびインビボで生物学的サンプル中の分析物であるmRNA、タンパク質またはゲノムDNAを検出するために使用され得る。例えば、分析物mRNAの検出のためのインビトロ技術は、ノーザンハイブリダイゼーションおよびインサイチューハイブリダイゼーションを含む。分析物タンパク質の検出のためのインビトロ技術は、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降および免疫蛍光を含む。分析物ゲノムDNAの検出のためのインビトロ技術は、サザンハイブリダイゼーションを含む。免疫アッセイを実施する手順は、例えば、"ELISA: Theory and Practice: Methods in Molecular Biology", Vol. 42, J.R. Crowther (Ed.) Human Press, Totowa, NJ, 1995; "Immunoassay", E. Diamandis and T.Christopoulus, Academic Press, Inc., San Diego, CA, 1996; および"Practice and Theory of Enzyme Immunoassays", P. Tijssen, Elsevier Science Publishers, Amsterdam, 1985に記載されている。さらに、分析物タンパク質の検出のためのインビボ技術は、標識された抗分析物タンパク質抗体の対象への投入を含む。例えば、抗体は、標準的な画像化技術によって対象内でのその存在および場所が検出できる放射性マーカーで標識され得る。
【0113】
薬学的組成物
本発明の抗体または剤(本明細書で「活性化合物」とも称される)およびそれらの誘導体、フラグメント、アナログおよびホモログは、投与に適した薬学的組成物に組み込まれ得る。そのような組成物は、典型的に、該抗体または剤および薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的投与に適合する任意かつすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤等を含むことが意図されている。適当な担体は、参照により本明細書に組み入れられる、この分野の標準的参考文献であるRemington's Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されている。そのような担体または希釈剤の好ましい例は、水、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液および5%ヒト血清アルブミンを含むがこれらに限定されない。リポソームおよび非水性ビヒクル、例えば固定油も使用され得る。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および剤の使用は、当技術分野で周知である。任意の従来的な媒体または剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、該組成物におけるその使用が想定されている。補助的な活性化合物も組成物に組み込まれ得る。
【0114】
本発明の薬学的組成物は、意図されている投与経路に適合するよう処方される。投与経路の例は、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(すなわち、局所)、経粘膜および直腸投与を含む。非経口、皮内または皮下適用で使用される溶液または懸濁物は、以下の成分を含み得る:滅菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗細菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化物質、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝液、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、および浸透圧調節剤、塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムで調節され得る。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは多用量バイアルに収納され得る。
【0115】
注射用途に適した薬学的組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散物および滅菌注射溶液または分散物を即時準備するための滅菌粉末を含む。静脈内投与に適した担体は、生理学的食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。すべての場合において、組成物は無菌でなければならず、注射容易性(easy syringeability)が存在する程度に流体であるべきである。それは、製造および保管の条件下で安定でなければならず、微生物、例えば細菌および真菌の混入行動に対して保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール等)ならびにそれらの適当な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。適当な流動性は、例えば、コーティング、例えばレシチンの使用によって、分散物の場合は必要な粒子サイズの維持によっておよび表面活性剤の使用によって、維持され得る。微生物の行動の防止は、様々な抗細菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成され得る。多くの場合において、等張剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましいであろう。注射可能な組成物の長時間吸収は、吸収を遅延させる剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に含めることによってもたらされ得る。
【0116】
注射可能な滅菌溶液は、上記の成分の1つまたは組み合わせを含む適当な溶媒に必要量の活性化合物を添加し、必要な場合、その後に濾過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散物は、基本分散媒および上記のうちの必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクルに活性化合物を添加することによって調製される。注射可能な滅菌溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法は、活性成分および任意の追加の所望の成分の粉末を事前に滅菌濾過されたその溶液から生成する真空乾燥および凍結乾燥である。
【0117】
経口組成物は、通常、不活性希釈剤または食用担体を含む。それらは、ゼラチンカプセルに収容されるかまたは錠剤に圧縮され得る。経口治療投与の目的で、活性化合物は賦形剤と共に添加され、そして錠剤、トローチまたはカプセルの形式で使用され得る。経口組成物はまた、口内洗浄液として使用するために流体担体を用いて調製され得、この場合、流体担体中の化合物が経口的に適用され、そしてうがいされ吐き出されるかまたは飲み込まれる。薬学的に適合する結合剤および/またはアジュバント物質が、組成物の一部分として含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル、トローチ等は、以下の成分のいずれかまたは類似の性質を有する化合物を含み得る:結合剤、例えば微結晶セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチン;賦形剤、例えばデンプンもしくはラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、Primogelもしくはトウモロコシデンプン;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸塩(Sterotes);流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えばスクロースもしくはサッカリン;またはフレーバー剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジフレーバー。
【0118】
吸入による投与の場合、化合物は、適当な推進剤、例えばガス、例えば二酸化炭素を含む加圧容器もしくはディスペンサーまたはネブライザーからのエアゾール噴霧の形式で送達される。
【0119】
全身投与はまた、経粘膜または経皮手段によるものであり得る。経粘膜または経皮投与の場合、透過したい障壁に適した浸透剤が処方物で使用される。そのような浸透剤は、一般に当技術分野で公知であり、例えば、経粘膜投与の場合、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻噴霧または坐薬の使用を通じて達成され得る。経皮投与の場合、活性化合物は、一般に当技術分野で公知のように軟膏、サルヴェ(salve)、ゲルまたはクリームにより処方され得る。
【0120】
化合物はまた、直腸送達のために(例えば、従来的な坐薬基剤、例えばココアバターおよびその他のグリセリドを含む)坐薬または停留浣腸剤の形式で調製され得る。
【0121】
1つの態様において、活性化合物は、体内からの迅速な排除から該化合物を保護する担体、例えば、インプラントおよびマイクロカプセル送達システムを含む制御放出処方物、を用いて調製される。生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸が使用され得る。そのような処方物を調製する方法は、当業者に明らかであろう。これらの物質は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁物(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体により感染細胞に対して標的化されたリポソームを含む)もまた、薬学的に活性な担体として使用され得る。これらは、当業者に公知の方法にしたがい、例えば米国特許第4,522,811号に記載されるようにして調製され得る。
【0122】
投与の容易さおよび用量の均一さのために経口または非経口組成物を単位剤形で処方することが特に有益である。本明細書で使用される単位剤形は、処置される対象に対する単回の投薬に適した物理的に隔離されている単位であって;各単位が、必要とされる薬学的担体と共に所望の治療効果を生ずるよう計算された既定量の活性化合物を含むものを表す。本発明の単位剤形の仕様は、活性化合物の固有の特徴および達成したい特定の治療効果ならびに個体の処置のためのそのような活性化合物の配合の分野に特有の制約により決定づけられ、かつそれらに直接的に依存する。
【0123】
薬学的組成物は、投与のための指示書と共に、容器、袋またはディスペンサーに含まれ得る。
【0124】
スクリーニング方法
本発明は、CCR4活性を調整するまたはそれ以外の方法でこれと干渉するモジュレーター、すなわち、候補または試験化合物または剤(例えば、ペプチド、ペプチド模倣体、低分子、または他の薬物)を同定する方法(本明細書で「スクリーニングアッセイ」と称される)を提供する。がんの処置に有用な化合物を同定する方法も提供される。本発明はまた、本明細書に記載されるスクリーニングアッセイを用いて同定される化合物を包含する。
【0125】
例えば、本発明は、CCR4の炭素脱水酵素活性を調整する候補または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。本発明の試験化合物は、生物学的ライブラリ;空間指定可能(spatially addressable)な並列固相または液相ライブラリ;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリ法;「1ビーズ1化合物」ライブラリ法;および親和性クロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリ法を含む、当技術分野で公知のコンビナトリアルライブラリ法における多くのアプローチのいずれかを用いて入手され得る。生物学的ライブラリアプローチはペプチドライブラリに限定され、他の4つのアプローチはペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは低分子化合物ライブラリに適用可能である(例えば、Lam, 1997. Anticancer Drug Design 12: 145を参照のこと)。
【0126】
本明細書で使用される「低分子」は、約5 kD未満、最も好ましくは約4 kD未満の分子量を有する組成物を表す意味を有する。低分子は、例えば、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体、炭水化物、脂質またはその他の有機もしくは無機分子であり得る。化学的および/または生物学的混合物、例えば真菌、細菌または藻類抽出物のライブラリが、当技術分野で公知であり、本発明のアッセイのいずれかを用いてスクリーニングされ得る。
【0127】
分子ライブラリの合成方法の例は、当技術分野において、例えばDeWitt, et al., 1993. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 6909; Erb, et al., 1994. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91: 11422; Zuckermann, et al., 1994. J. Med. Chem. 37: 2678; Cho, et al., 1993. Science 261: 1303; Carrell, et al., 1994. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2059; Carell, et al., 1994. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2061; およびGallop, et al., 1994. J. Med. Chem. 37: 1233において見出され得る。
【0128】
化合物のライブラリは、溶液中(例えば、Houghten, 1992. Biotechniques 13:412-421を参照のこと)、またはビーズ上(Lam, 1991. Nature 354: 82-84を参照のこと)、チップ上(Fodor, 1993. Nature 364: 555-556を参照のこと)、細菌(米国特許第5,223,409号を参照のこと)、胞子(米国特許第5,233,409号を参照のこと)、プラスミド(Cull, et al., 1992. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1865-1869を参照のこと)もしくはファージ上(Scott and Smith, 1990. Science 249: 386-390; Devlin, 1990. Science 249: 404-406; Cwirla, et al., 1990. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87: 6378-6382; Felici, 1991. J. Mol. Biol. 222: 301-310; および米国特許第5,233,409号を参照のこと)に提示され得る。
【0129】
1つの態様において、候補化合物は、抗体-抗原複合体に投入され、そして候補化合物が抗体-抗原複合体を分裂させるかどうかが決定され、この複合体の分裂は、候補化合物がCCR4活性を調整することを示す。
【0130】
別の態様において、少なくとも1つのCCR4タンパク質が提供され、これが少なくとも1つの中和モノクローナル抗体に曝露される。抗体-抗原複合体の形成が検出され、そして1つまたは複数の候補化合物が該複合体に投入される。1つまたは複数の候補化合物の投入後に抗体-抗原複合体が分裂する場合、その候補化合物は、がんまたは増殖疾患もしくは傷害、特に腎性増殖障害を処置するのに有用である。
【0131】
抗体-抗原複合体と干渉するまたはこれを分裂させる試験化合物の能力の決定は、例えば、試験化合物を放射性同位体または酵素標識とカップリングさせ、抗原またはその生物学的に活性な一部分への試験化合物の結合が複合体内の標識化合物の検出によって決定できるようにすることによって、達成され得る。例えば、試験化合物は、直接的または間接的のいずれかで
125I、
35S、
14Cまたは
3Hにより標識され得、この放射性同位体が、放射線の放射の直接計測またはシンチレーションカウンターによって検出され得る。あるいは、試験化合物は、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはルシフェラーゼで酵素標識され得、そしてこの酵素標識が、適当な基質から生産物への変換の決定によって検出され得る。
【0132】
1つの態様において、アッセイは、抗体-抗原複合体と試験化合物とを接触させること、および抗原と相互作用するまたはそれ以外の方法で既存の抗体-抗原複合体を分裂させる試験化合物の能力を決定することを含む。この態様において、抗原と相互作用するおよび/または抗体-抗原複合体を分裂させる試験化合物の能力の決定は、該抗体と比較して該抗原またはその生物学的に活性な一部分に優先的に結合する試験化合物の能力の決定を含む。
【0133】
別の態様において、アッセイは、抗体-抗原複合体と試験化合物とを接触させることおよび抗体-抗原複合体を調整する試験化合物の能力を決定することを含む。抗体-抗原複合体を調整する試験化合物の能力の決定は、例えば、試験化合物の存在下で、抗体と結合または相互作用する抗原の能力を決定することによって、達成され得る。
【0134】
当業者は、本明細書に開示される任意のスクリーニング方法において、抗体がCCR4中和抗体であり得ることを理解するであろう。加えて、抗原は、CCR4タンパク質またはその一部分(例えば、そのCAドメイン)であり得る。
【0135】
本明細書に開示されるスクリーニング方法は、細胞ベースのアッセイとしてまたは無細胞アッセイとして実施され得る。膜結合型のCCR4タンパク質を含む無細胞アッセイの場合、この膜結合型のタンパク質を溶液中で維持するよう可溶化剤を利用することが望ましい場合がある。そのような可溶化剤の例は、非イオン性界面活性剤、例えばn-オクチルグルコシド、n-ドデシルグルコシド、n-ドデシルマルトシド、オクタノイル-N-メチルグルカミド、デカノイル-N-メチルグルカミド、Triton(登録商標)X-100、Triton(登録商標)X-114、Thesit(登録商標)、イソトリデシルポリ(エチレングリコールエーテル)
n(Isotridecypoly(ethylene glycol ether)
n)、N-ドデシル--N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート、3-(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホネート(3-(3-cholamidopropyl)dimethylamminiol-1-propane sulfonate)(CHAPS)または3-(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート(CHAPSO)(3-(3-cholamidopropyl)dimethylamminiol-2-hydroxy-1-propane sulfonate)を含む。
【0136】
複数の態様において、候補化合物の投入後に複合体化形態を一方または両方の非複合体化形態から分離するのを容易にするため、およびアッセイの自動化に適応させるために抗体または抗原のいずれかを固定化することが望ましい場合がある。候補化合物の存在下または非存在下での抗体-抗原複合体の観察は、反応物質を収容するのに適した任意の器において達成され得る。そのような器の例は、マイクロタイタープレート、試験管および微小遠心管を含む。1つの態様において、タンパク質の一方または両方がマトリクスに結合できるようにするドメインを付加した融合タンパク質が提供され得る。例えば、GST-抗体融合タンパク質またはGST-抗原融合タンパク質を、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical, St. Louis, MO)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレートに吸着させることができ、次いでこれが試験化合物と組み合わされ、そしてこの混合物が複合体形成を実現する条件(例えば、生理学的な塩およびpHの条件)下でインキュベートされる。インキュベートの後、ビーズまたはマイクロタイタープレートのウェルは、任意の未結合成分を除去するために洗浄され、ビーズの場合はマトリクスに固定化された、複合体が、直接的または間接的のいずれかで決定される。あるいは、複合体がマトリクスから分離され得、そして抗体-抗原複合体形成のレベルが標準的技術を用いて決定され得る。
【0137】
タンパク質をマトリクス上に固定化する他の技術もまた、本発明のスクリーニングアッセイにおいて使用され得る。例えば、抗体または抗原(例えば、CCR4タンパク質もしくはそのCAドメイン)のいずれかが、ビオチンおよびストレプトアビジンのコンジュゲーションを用いて固定化され得る。ビオチニル化抗体または抗原分子は、当技術分野で周知の技術(例えば、ビオチニル化キット、Pierce Chemicals, Rockford, Ill)を用いてビオチン-NHS(N-ヒドロキシ-スクシンイミド)から調製され、そしてストレプトアビジンコートされた96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルに固定化され得る。あるいは、関心対象の抗体または抗原と反応性であるが関心対象の抗体-抗原複合体の形成と干渉しない他の抗体が、プレートのウェル上に誘導体化され、そして未結合の抗体または抗原が、抗体とのコンジュゲーションによってウェルに捕捉され得る。そのような複合体を検出する方法は、GST固定化複合体に関して上記したものに加えて、抗体または抗原と反応性のそのような他の抗体を用いる複合体の免疫検出を含む。
【0138】
本発明はさらに、上記のスクリーニングアッセイのいずれかによって同定される新規の剤および本明細書に記載される処置におけるその使用に関する。
【0139】
診断アッセイ
本発明の抗体は、適当なアッセイ、例えば、従来型の免疫アッセイによって検出され得る。例えば、CCR4タンパク質またはそのフラグメント(例えばCAドメイン)を固相に固定するサンドイッチアッセイが行われ得る。インキュベートは、サンプル中の抗体が固相上に固定化されたポリペプチドに結合できる十分な期間続けられる。この第1のインキュベートの後、固相はサンプルから分離される。固相は、未結合物質および干渉物質、例えば同時にサンプル中に存在する非特異的タンパク質、を除去するために洗浄される。固定化されたポリペプチドに結合した関心対象の抗体を含む固相は、その後、第2の、標識された抗体またはカップリング剤、例えばビオチンまたはアビジンに結合された抗体と共にインキュベートされる。この第2の抗体は、別の抗CCR4抗体または別の抗体であり得る。抗体の標識は当技術分野で周知であり、放射性核種、酵素(マレイン酸デヒドロゲナーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ)、蛍光(フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコシアニン、フルオレスカミン(fluorescarmine))、ビオチン等を含む。標識抗体は固相と共にインキュベートされ、そして固相に結合した標識が測定される。当業者はこれらおよび他の免疫アッセイを容易に実施することができる。
【0140】
本発明の抗CCR4抗体およびscFv抗体は、検出可能部分に接続された場合、「がん性組織」または異常な細胞増殖にさらされている組織、したがってがんの危険を検出する手段を提供する。インサイチュー新生物によりがん化する組織に加えて、例えば、抗体-検出可能部分コンジュゲートはまた、末端器官および/または組織に存在するがん性転移性組織を検出する方法を提供する。したがってそのような組織は、がん性であることが疑われる組織と抗体-検出可能部分を、検出可能部分をがん性組織において検出しそれによってがん性組織の存在を検出するのに適した条件下で接触させることによって検出され得る。
【0141】
検出可能部分は、抗体もしくはフラグメントに直接的にまたは例えば蛍光性の2次抗体を用いて間接的にコンジュゲートされ得る。直接的なコンジュゲーションは、例えば抗体もしくは抗体フラグメントに対するフルオロフォアの標準的化学カップリングによってまたは遺伝子操作を通じて達成され得る。蛍光または生物発光タンパク質にカップリングされた抗体または抗体フラグメントを含むキメラまたは融合タンパク質が構築され得る。例えば、Casadeiらは、エクオリンおよび抗体遺伝子の融合タンパク質を哺乳動物細胞内で発現させることができるベクターコンストラクトを作製する方法を記載している。
【0142】
本明細書で使用される場合、プローブまたは抗体に関する「標識」という用語は、プローブまたは抗体への検出可能物質のカップリング(すなわち、物理的連結)によるプローブまたは抗体の直接的標識および直接的に標識された別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識を包含することが意図されている。間接的標識の例は、蛍光標識された2次抗体を用いる1次抗体の検出および蛍光標識されたストレプトアビジンを用いて検出され得るビオチンによるDNPプローブの末端標識を含む。「生物学的サンプル」という用語は、対象(例えば、生検)から単離された組織、細胞および生物学的流体ならびに対象内に存在する組織、細胞および流体を含むことが意図されている。すなわち、本発明の検出方法は、インビトロおよびインビボで生物学的サンプル中のがん、がん細胞またはがん関連細胞(例えば、腫瘍もしくはがん細胞に関連する間質細胞)を検出するために使用され得る。例えば、CCR4の検出のためのインビトロ技術は、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降および免疫蛍光を含む。さらに、CCR4の検出のためのインビボ技術は、対象への標識抗CCR4抗体の投入を含む。例えば、抗体は、標準的な画像化技術によって対象内でのその存在および場所が検出できる放射性マーカーで標識され得る。複数の態様において、本発明は、対象において腫瘍またはがん細胞を検出する非浸潤方法を提供する。対象に、本発明の抗体またはscFv抗体が投与され、抗体は検出可能部分(すなわち、例えば蛍光、化学、化学発光、放射活性または当技術分野で公知のその他の手段によって検出できる任意の部分)に連結され、抗体は腫瘍に局在化され、そして検出可能部分の観察により検出される。
【0143】
「標的化」されたコンジュゲート、すなわち、そのコンジュゲートを対象または動物内の特定部位または部位群に局在化させるよう設計された分子または特徴である標的化部分を含むコンジュゲートの場合、局在化は、対象内で、固定されている「局在化」した物体と固定されていない「遊離」の状態の物体との間の平衡が本質的に達成されている状態を表す。そのような平衡が達成される速度は、投与経路に依存する。例えば、血栓に局在化するよう静脈内注射により投与されたコンジュゲートは、注射から数分以内に、血栓への局在化または蓄積を達成し得る。他方、腸内の感染部位に局在化するよう経口投与されたコンジュゲートは、局在化を達成するのに数時間を要し得る。あるいは、局在化は、単に、その物体が投与された後の選択された期間における対象または動物内でのその物体の場所を表し得る。別の例として、局在化は、その部分が投与後に分散されたときに達成される。
【0144】
上記のすべての場合において、局在化を達成する時間の合理的な見積もりが当業者により行われ得る。さらに、時間の関数としての局在化の状態は、本発明の方法にしたがう、例えば光検出デバイスを用いる検出可能部分(例えば、発光性コンジュゲート)の画像化によって追跡され得る。使用される「光検出デバイス」は、哺乳動物内からのかすかな光の画像化を合理的な時間内に実現するのにおよびそのようなデバイスからのシグナルを画像の構築に使用するのに十分高い感度を有する必要がある。
【0145】
極めて明るい光発生部分を使用することおよび/または画像化される対象もしくは動物の表面付近に局在化された光発生融合タンパク質を検出することが可能な場合、「暗視」ゴーグルまたは標準的な高感度ビデオカメラ、例えばSilicon Intensified Tube (SIT)カメラ(例えば、Hammamatsu Photonic Systems, Bridgewater, N.J.製)が使用され得る。しかし、より典型的には、より好感度の光検出法が必要とされる。
【0146】
極めて低い光レベルでは、単位面積あたりのフォトンフラックスが非常に低くなり、画像化される光景はもはや連続的なものではなくなる。代わりに、それは、時間的および空間的の両面で相互に異なる個々のフォトンによって表される。モニター上で見ると、そのような画像は、各々が単一の検出されたフォトンを表す光のシンチレーション点のように見える。これらの検出されたフォトンを経時的にデジタル画像プロセッサに蓄積することによって、画像が取得および構築され得る。各像点のシグナルが強度値を割り当てられる従来のカメラと異なり、フォトン計数式の画像化においては、シグナルの大きさは重要ではない。目的は単に、シグナル(フォトン)の存在を検出することおよびその位置に関するシグナルの発生を経時的に計数することである。
【0147】
以下に記載される少なくとも2つのタイプの光検出デバイスが、個々のフォトンを検出し、画像プロセッサによって分析できるシグナルを生成することができる。ノイズ軽減型光検出デバイスは、フォトンシグナルを増幅するのとは反対に、フォトン検出器におけるバックグラウンドノイズを軽減することによって高感度を達成するものである。ノイズは、主として検出器アレイを冷却することによって軽減される。このデバイスは、「裏面薄膜化(backthinned)」冷却CCDカメラと称される電荷結合素子(CCD)カメラを含む。より高感度の機器において、冷却は、例えば、CCDアレイの温度をおよそ-120℃まで下げる液体窒素を用いて達成される。「裏面薄膜化」は、検出されるフォトンが通る光路長を短縮し、それによって量子効率を増大させる極薄バックプレートを表す。特に高感度の裏面薄膜化低温CCDカメラは、Photometrics, Ltd.(Tucson, Ariz.)から入手可能な「TECH 512」、シリーズ200カメラである。
【0148】
「フォトン増幅デバイス」は、検出スクリーンに衝突する前にフォトンを増幅する。このクラスは、増倍器、例えばマイクロチャネル増倍器を有するCCDカメラを含む。マイクロチャネル増倍器は、典型的に、カメラの検出スクリーンに対して垂直でありかつカメラの検出スクリーンと同一の広がりをもつチャネルの金属アレイを含む。マイクロチャネルアレイは、画像化されるサンプル、対象または動物とカメラの間に設置される。このアレイのチャネルに進入したフォトンの大部分は、励起前にチャネルの側面と接触する。このアレイ全体に適用される電圧が、各フォトン衝突から多くの電子を放出させる。そのような衝突から得られた電子は、「ショットガン」パターンでそれらの元のチャネルから出て、そしてカメラによって検出される。
【0149】
さらに高い感度は、第1段階で電子が生成され第2段階で電子のシグナルが増幅されるように増倍マイクロチャネルアレイを連続して設置することによって達成され得る。しかし、感度の向上は、空間分解能を犠牲にして達成され、空間分解能は各々の追加の増幅段階ごとに減少していく。例示的なマイクロチャネル増倍器ベースの単一フォトン検出デバイスは、Hamamatsuから入手可能なC2400シリーズである。
【0150】
画像プロセッサは、フォトンを計数する光検出デバイスによって生成されたシグナルを処理し、例えばモニターに表示することができるまたはビデオプリンターでプリントすることができる画像を構築する。そのような画像プロセッサは、典型的に、上記の高感度フォトン計測カメラを含むシステムの一部として売られており、したがって同じ供給源から入手可能である。画像プロセッサは、通常、購入した画像化システムの一部として含まれる場合または含まれない場合があるパーソナルコンピュータ、例えばIBM互換PCまたはApple Macintosh(Apple Computer, Cupertino, Calif.)に接続される。画像が電子ファイル形式の場合、それらは様々な画像処理プログラム(例えば、「ADOBE PHOTOSHOP」, Adobe Systems, Adobe Systems, Mt. View, Calif.)によって操作され印刷され得る。
【0151】
1つの態様において、生物学的サンプルは、試験対象由来のタンパク質分子を含む。1つの好ましい生物学的サンプルは、従来手段によって対象から単離された末梢血白血球サンプルである。
【0152】
本発明はまた、生物学的サンプルにおいてCCR4またはCCR4発現細胞の存在を検出するためのキットを包含する。例えば、キットは:生物学的サンプル中のがんまたは腫瘍細胞を検出することができる標識された化合物または剤(例えば、抗CCR4 scFvまたはモノクローナル抗体);サンプル中のCCR4の量を決定するための手段;およびサンプル中のCCR4の量を標準と比較するための手段、を含み得る。標準は、いくつかの態様において、非がん細胞またはその細胞抽出物である。化合物または剤は、適当な容器に収納され得る。キットはさらに、該キットを用いてサンプル中のがんを検出するための指示書を含み得る。
【0153】
二重特異性抗体
二重特異性抗体(bsAb)は、得られる抗体が2つの異なる抗原を認識するよう2つの可変ドメインまたはscFv単位を含む抗体である。本発明は、CCR4および第2の抗原を認識する二重特異性抗体を提供する。例示的な第2の抗原は、腫瘍関連抗原、サイトカインおよび細胞表面受容体を含む。いくつかの態様において、第2の抗原は、CAIX(炭酸脱水酵素IX)またはG250またはPD-L1であり得る。
【0154】
本発明の二重特異性抗体は、本明細書に開示されるhuCCR4抗体の重鎖および軽鎖の組み合わせまたはscFvを含む。
【0155】
本発明の二重特異性抗体は、当技術分野で公知の方法を用いて構築され得る。いくつかの態様において、二重特異性抗体は、各々異なる抗原を認識する2つの異なる重-軽鎖ヘテロ2量体もしくは2つの異なるscFv抗体またはそのフラグメントが、2つの重鎖および2つの軽鎖を有する二重特異性抗体を形成するよう2つのscFv分子間の分子内会合を実現するのに十分な長さの長いリンカーポリペプチドにより接続されている単一ポリペプチドである。1つの態様において、scFv分子の一方はCCR4を認識する、例えば本明細書に記載されるscFv抗体のいずれかである。他の態様において、二重特異性抗体は、共有または非共有結合により連結された1つより多いポリペプチド、例えば、2つの別個のscFv抗体またはそのフラグメントからなり、scFv抗体の1つがCCR4を認識する。
【0156】
1つの態様において、二重特異性抗体は、「ノブ・イントゥー・ホール(knob into hole)」法を用いて構築される(Ridgway et al., Protein Eng 7:617-621 (1996))。この方法では、2つの異なる可変ドメインのIg重鎖が、重-軽鎖対を維持しつつ重鎖対を選択的に開裂するよう還元される。2つの異なる抗原を認識する2つの重-軽鎖ヘテロ2量体は、CH3ドメインの人工「ノブ・イントゥー・ホール」を介したヘテロライゲーション対形成が行われるよう混合される。
【0157】
別の態様において、二重特異性抗体は、2つまたはそれ以上の異なる抗体由来の重-軽鎖ヘテロ2量体の交換により、第1の重-軽鎖ヘテロ2量体がCCR4を認識し第2の重-軽鎖ヘテロ2量体が第2の抗原を認識するハイブリッド抗体を生成することによって構築され得る。2つの重-軽鎖ヘテロ2量体からなる二重特異性抗体を2つの異なる抗体から生成するメカニズムは、これも二重特異性抗体として機能するヒトIgG4の形に類似するものである。IgG重鎖の2量体化は、分子内力、例えば各重鎖のCH3ドメインの対形成およびジスルフィド架橋によってもたらされる。CH3ドメインにおける特定アミノ酸(R409)の存在は、2量体交換およびIgG4分子の構築を促進することが示されている。重鎖対はまた、抗体のヒンジ領域における重鎖間ジスルフィド架橋によってさらに安定化される。特に、IgG4では、ヒンジ領域が、アミノ酸226〜230に(配列Cys-Pro-Pro-Cysを含む安定なIgG1のヒンジ領域に対して)アミノ酸配列Cys-Pro-Ser-Cysを含んでいる。この229位のセリンの配列の違いは、IgG4がそのヒンジ領域において新たな鎖内ジスルフィドを形成する傾向と関連付けられている(Van der Neut Kolfschoten, M. et al., 2007, Science 317:1554-1557およびLabrijn, A.F. et al, 2011, Journal of immunol 187:3238-3246)。
【0158】
別の態様において、グルタチオンおよびグルタチオンジスルフィドの使用が、2つの別個の完全抗体からの二重特異性抗体の作製において使用され得る。例えば、各々が異なる抗原を認識する完全抗体が、その抗体を重-軽鎖ヘテロ2量体または分子に分離させる還元型グルタチオンと共にインキュベートされる。この重-軽鎖ヘテロ2量体は、酸化型グルタチオン(GSSG)と混合され得、それによって再構築および再酸化され、極めて純粋な二重特異性抗体が形成される。
【0159】
したがって、本発明の二重特異性抗体は、CCR4を認識する1つの重-軽鎖2量体および本明細書に開示される任意の抗原である第2の抗原を認識する第2の重-軽鎖2量体を有する抗体分子を生じるよう重-軽鎖2量体が交換されるよう、CH3ドメインにおけるR409残基の導入およびCCR4または第2の抗原を認識する抗体のヒンジ領域におけるCys-Pro-Ser-Cys配列の導入を通じて作製され得る。重-軽鎖ヘテロ2量体の交換はまた、還元剤、例えば還元型グルタチオンの添加によって交換を促進することによって強化され得る。既知のIgG4分子もまた、本明細書に開示されるように重および軽鎖がCCR4または第2の抗原を認識するよう変更され得る。本発明の二重特異性抗体の構築におけるこの方法の使用は、そのFc領域が、免疫応答のエフェクター系、例えば補体および特定の白血球細胞によって発現されるFc受容体とほとんど相互作用しない点で他のIgGサブタイプと相違するというIgG4分子の固有の特徴のために有益であり得る。この特定の性質ゆえに、これらのIgG4ベースの二重特異性抗体は、抗体が標的に結合しその標的に関連するシグナル伝達経路を機能的に変更させることを要求されるがエフェクター活性を誘発することは要求されない治療適用において魅力的なのである。
【0160】
いくつかの態様において、bsAbの抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性が変化するよう、bsAbの定常領域に変異が導入される。例えば、変異は、Fc領域の234および235位のロイシンがアラニンに変異し特定のFc受容体による結合性を打ち消すCH2ドメインにおけるLALA変異である。1つの局面において、bsAbは、ヘテロ2量体bsAbの一方のscFv分子上に、ADCC活性を減少させる変異を含む。別の局面において、bsAbは、ヘテロ2量体bsAbの両方の鎖上に、ADCC活性を完全に取り除く変異を含む。例えば、bsAbの一方または両方のscFv分子に導入される変異は、CH2ドメインにおけるLALA変異である。これらの様々なADCC活性を有するbsAbは、bsAbがそのbsAbにより認識される1つの抗原を発現する細胞に対して最大限の選択的殺傷性を示すが、そのbsAbにより認識される第2の抗原に対しては最小限の殺傷性を示すよう、最適化され得る。
【0161】
本発明は、CCRおよび第2の抗原を認識する二重特異性抗体を提供する。1つの態様において、第2の抗原はPD-L1である。別の態様において、第2の抗原はCAIXである。
【0162】
本明細書に開示される二重特異性抗体は、疾患または医学的状態、例えばがんの処置に有用であり得る。がんは、例えば、固形がん、例えば腎細胞がん、乳がんまたは前立腺がんである。他の態様において、がんは、がんを有さない組織または対象と比較してCAIXまたはPD-L1が過剰発現されるがんである。本発明の二重特異性抗体は、がんの症状を処置、予防または緩和するために使用され得る。
【0163】
本発明の二重特異性抗体は、T細胞増殖を増大させるために使用され得、T細胞は制御性T細胞である。本発明の二重特異性抗体は、T細胞応答、例えば抗原特異的T細胞応答を促進または増進するために特に有用であり得る。本発明の二重特異性抗体はまた、エフェクターT細胞増殖の制御性T細胞媒介抑制を克服するために有用であり得る。
【0164】
融合タンパク質
本発明は、第2のタンパク質に機能的に連結された本明細書に開示されるhuCCR4抗体またはその機能的フラグメントを含む融合タンパク質を提供する。第2のタンパク質は、例えば、サイトカインまたは成長因子であり得る。特に好ましい態様において、サイトカインはIL-2またはTGF-βである。いくつかの他の態様において、第2のタンパク質は、治療剤、例えば毒素、または検出可能部分、例えば検出用蛍光タンパク質、であり得る。いくつかの態様において、本発明のhuCCR4抗体は、1つより多い追加のタンパク質またはペプチド、例えば2、3、4、5、6、7、8、9または10個の追加のタンパク質またはペプチド配列に機能的に連結され得る。
【0165】
いくつかの態様において、本明細書に開示されるhuCCR4抗体またはその機能的フラグメントは、第2のタンパク質に直接的に接続される。他の態様において、huCCR4抗体またはその機能的フラグメントは、リンカー、例えばフレキシブルなポリペプチド鎖を介して第2のタンパク質に接続される。リンカーは、任意の長さの任意の適当なリンカーであり得るが、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25または30アミノ酸長であり得る。1つの態様において、リンカーは、そのリンカーの存在が哺乳動物によるリンカー配列に対する免疫応答を生じないよう宿主の免疫グロブリン中に天然に存在するアミノ酸配列である。huCCR4抗体に対して1つより多い追加のタンパク質を含む本発明の融合タンパク質は、各々の追加のタンパク質またはペプチド配列を接続する複数のリンカー配列を有し得る。
【0166】
本発明の融合タンパク質は、当業者に公知の組み換え法によって構築され得る。例えば、本発明のhuCCR4抗体をコードする核酸配列を含む発現ベクターは、第2のタンパク質をコードする核酸配列に機能的に連結され得、そしてその融合タンパク質を翻訳および産生する発現システムに導入され得る。あるいは、当業者は、本明細書に記載される融合タンパク質を製造するためにデノボタンパク質合成技術を容易に利用することができるであろう。
【0167】
処置方法
本発明は、がんまたはその他の細胞増殖関連疾患もしくは障害の危険がある(それらにかかりやすい)対象の予防的および治療的の両方の処置方法を提供する。そのような疾患または障害は、例えば、異常なCCR4発現に関連する疾患または障害を含むがこれらに限定されない。例えば、該方法は、血液がん、例えば皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、菌状息肉腫(MF)、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(皮膚ALCL)、セザリー症候群、または成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)の症状を処置、予防または軽減するために使用される。あるいは、該方法は、固形腫瘍、例えば腎細胞がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、結腸がん、子宮頸がん、脳悪性腫瘍、肝がん、膵がんまたは胃がんの症状を処置、予防または軽減するために使用される。他の態様において、本発明の抗体、例えば本発明の二重特異性抗体は、CAIXまたはPD-L1を過剰発現する腫瘍により特徴づけられるがんの処置のために使用され得る。例えば、CAIXおよびCCR4を認識する二重特異性抗体は、CAIXを過剰発現する腫瘍を有するがんの処置のために使用され得る。例えば、PD-L1およびCCR4を認識する二重特異性抗体は、PD-L1を過剰発現する腫瘍を有するがんの処置のために使用され得る。
【0168】
したがって、1つの局面において、本発明は、本発明のモノクローナル抗体またはscFv抗体を対象に投与することによって、対象におけるがんまたは細胞増殖疾患もしくは障害の症状を予防、処置または軽減する方法を提供する。例えば、huCCR4抗体は、治療有効量で投与され得る。
【0169】
がんまたは細胞増殖関連疾患もしくは障害の危険がある対象は、がんの家族歴を有する患者またはがん誘発性が既知であるまたは疑がわれる作用物質に曝露された対象を含む。予防剤の投与は、その疾患が予防されるあるいはその進行の面で遅延するようがんの発症の前に行われ得る。
【0170】
別の局面において、細胞を本発明のCCR4抗体と接触させることによって、腫瘍細胞成長が阻害されるかまたはサプレッサーT細胞活性が減少する。細胞は、CCR4を発現する任意の細胞である。例えば、細胞はT細胞である。
【0171】
抗原に対する免疫応答を増大または増強する方法も、本発明に含まれる。免疫応答は、本発明のモノクローナル抗体またはscFv抗体を対象に投与することによって増大または増強される。抗原は、ウイルス(例えば、HIV)、細菌、真菌または腫瘍抗原である。免疫応答は、自然免疫応答である。自然免疫応答は、感染の結果である免疫応答を意味する。感染は、慢性感染である。
【0172】
あるいは、免疫応答は、ワクチン接種により誘導される応答である。したがって、別の局面において、本発明は、本発明のモノクローナル抗体またはscFv抗体およびワクチンを対象に投与することによってワクチン効力を増大させる方法を提供する。抗体およびワクチンは、順次または同時に投与される。ワクチンは、腫瘍ワクチン、細菌ワクチン、またはウイルスワクチンである。
【0173】
免疫応答は、例えば抗原特異的Tエフェクター機能を増進することによって増進される。
【0174】
併用方法
本発明は、CCR4タンパク質の同一のエピトープあるいはCCR4タンパク質の2つの異なるエピトープに結合する2つの抗体を投与することによる患者におけるがんの処置を提供する。また、がんは、CCR4に結合する第1の抗体およびCCR4以外のタンパク質に結合する第2の抗体を投与することによって処置される。
【0175】
加えて、本発明は、CCR4タンパク質に結合する抗体および抗新生物剤、例えば低分子、成長因子、サイトカインまたは生体分子、例えばペプチド、ペプチド模倣体、ペプトイド、ポリヌクレオチド、脂質由来メディエーター、低分子生体アミン、ホルモン、神経ペプチドおよびプロテアーゼを含むその他の治療剤の投与を提供する。低分子は、無機分子および有機低分子を含むがこれらに限定されない。適当な成長因子またはサイトカインは、IL-2、GM-CSF、IL-12およびTNF-αを含む。低分子ライブラリは、当技術分野で公知である(Lam, Anticancer Drug Des., 12:145, 1997を参照のこと)。
【0176】
本発明は以下の実施例でさらに説明されるが、これらは特許請求の範囲に記載される発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0177】
実施例1:一般的方法
細胞
原発性皮膚CD30+リンパ球増殖障害(LPD)は、CTCLの2番目に大きな一般グループであり、CTCLのおよそ30%を占めている。このグループは、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(C-ALCL)を含む(1)。Mac-1細胞株は、C-ALCL患者から単離された(22)。ルシフェラーゼ発現Mac-1細胞は、ルシフェラーゼレポーターレトロウイルスによって安定的にトランスフェクトされたものであり、両方の細胞株を、10%(v/v)熱不活性化FBS、100 IU/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを補充したRPMI-1640(Invitrogen Life Technologies, MD)中、37℃、5% CO2下で培養した。293F細胞株(Invitrogen)は、FreeStyle培地(Invitrogen)中、37℃、5% CO2下で培養した。293T(ATCC:CRL-11268)およびCf2Th(ATCC:CRL-1430)細胞株は、10%(v/v)熱不活性化FBS、100 IU/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを補充したDMEM(Invitrogen)中、37℃、5% CO2下で培養した。293TおよびCf2Thは両方とも、全長CCR4発現プラスミド(pcDNA3.1-CCR4)をトランスフェクトすることによって構築し、その後に、それぞれ、800μg/mlおよび500μg/mlのG418で選択を行い、そしてCCR4+細胞集団についてFACS選別した。
【0178】
Harvard Medical SchoolのMarshall E. Kadin研究所において最初に単離された(Wasik, MA et al. Am J Pathol 2011, 144:1089-1097)ヒト皮膚向性(skin-tropic)未分化大細胞リンパ腫(ALCL)細胞株Mac-1は、10%ウシ胎仔血清(FBS)、0.06 mM 2-メルカプトエタノールおよび500μg/ml G418を補充したRPMI培地中で培養した。Mac-1細胞株の免疫表現型検査は、高レベルのCCR4、CCR7およびCXCR4を含むすべての既知の腫瘍特異的ケモカイン受容体の発現を示した。このMAC-1細胞株に、ルシフェラーゼをコードするレトロウイルスを用いて安定的に形質導入した。HEK293細胞は、10% FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を補充したダルベッコ改変イーグル培地中で培養した。すべての細胞および培養物を、5% CO
2加湿インキュベーター中、37℃で維持した。Dana-Farber Blood Centerから入手したヒトPBMCを、Miltenyi Biotec Inc.(Auburn, CA)の一般的プロトコルに記載されるようにしてFicoll-Hypaque密度勾配遠心分離により精製した。マウス好中球は、記載されるようにして(Luo, Y et al. Curr Protoc Immunol. 2001, Chapter 3: Unit 3 20)、Percoll密度勾配遠心分離によってSCID-BEIGEマウスの血液から単離した。ヒトNK細胞は、NK細胞単離キットを製造元のプロトコル(Miltenyi Biotec, CA)にしたがい用いてヒトPBMCから単離した。
【0179】
抗体およびフローサイトメトリー分析
mAb 1567をR&D systemsから購入し、scFv-Fcおよび全ヒトIgG1を含む他の1567変種を以前に記載されたようにして作製した(Sui, J et al. Proc Natl Acad Sci 2004, 101:2536-41)。簡潔に説明すると、キメラ(c1567)-scFv-Fc、ヒト化(h1567)-scFv-Fcおよびh1567変種を、対応する単鎖可変領域(scFv)フラグメントをC末端ヒトIgG1 Fc領域とインフレームになるようpcDNA3.1-Hinge発現ベクターにクローニングすることによって構築した。このscFv-Fcタンパク質を、一過的なトランスフェクトにより293T細胞または293F細胞中で産生させ、そしてプロテインA-セファロース(Amersham, NJ)親和性クロマトグラフィーにより精製した。全長c1567 IgG1は、そのVHおよびVLをヒトIgG1発現ベクターTCAE5.3(Reff, ME et al. Blood 1994, 83:435-45)に別々にクローニングすることによって作製した。細胞染色のために、Mac-1を4℃で1時間、抗体で染色し、次いで冷やしておいたPBSで3回洗浄した。次に、FITCコンジュゲートヤギ抗ヒトIgGまたは抗マウスIgG抗体を1:200希釈で添加した。データを、FACSCalibur(BD Biosciences, CA)を用いて収集し、CellQuestサイトメトリーソフトウェアを用いて分析した。
【0180】
IgGおよびscFv-Fc形式のmAb2-3およびKM2760は、その単鎖可変領域(scFv)をヒトIgG1 Fc領域とインフレームになるようpcDNA3.1-Hingeベクターにクローニングすることによって、ならびに重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)をTCAE5.3ベクターにクローニングすることによって構築した。抗体を、293Tまたは293F細胞中で産生させ、プロテインA-セファロース(Amersham)親和性クロマトグラフィーにより精製した。
【0181】
化学走性
Mac-1細胞(ウェルあたり1x106個)を、37℃で3時間、mAb1567を含むまたは含まないトランスウェル遊走プレート(5μM孔;Corning)にプレーティングし、50 ng/mlヒトCCL17またはCCL22(R&D Systems, MN)を含む下部チャンバーから収集された遊走細胞を、FACSにより計数した。遊走細胞の比率は、トランスウェルを遊走したMac-1の数を投入細胞の数で割り算することによって計算した。ヒトCD4+ T細胞を、CD4+ T細胞単離キット(Miltenyi Biotech)によって単離し、これを、トランスウェル遊走アッセイにおいて、c1567IgGと共に37℃で3時間プレーティングし、そして100 ng/mlヒトCCL2に応答した遊走細胞(CD4+CD25high)を上記のようにして計数した。遊走細胞の比率は、トランスウェルを遊走したCD4+CD25high細胞の数を、匹敵するCD4+およびCD25+レベルを有する投入細胞の数で割り算することによって計算した。
【0182】
抗体依存性細胞傷害性アッセイ
ADCCアッセイは、LDH放出アッセイ法を用いて行った。簡潔に説明すると、SCID/Beigeマウス好中球、ヒトPBMCまたは精製されたヒトNK細胞および好中球をエフェクター細胞として使用し、Mac-1、Cf2Th-CCR4またはCf2Th細胞を標的細胞として使用した。標的細胞は、1x104細胞/ウェルの密度で、96ウェルプレートにプレーティングし、その後に抗体を適当な濃度で添加した。1時間のインキュベートの後、適当なE/T比を達成するよう新たにエフェクター細胞を添加した。37℃でのインキュベート(PBMCについては4時間、NK細胞については16時間および好中球については6時間)の後、各ウェルの上清を、300xgで5分間の遠心分離によって回収した。その上清を、非放射性細胞傷害アッセイキット(Promega, WI)を用いて測定した。プレートの490nmの吸光度を、ELISAリーダーを用いて決定した。51Cr放出アッセイにおいては、1x106個のMac-1細胞を、100μCi(3.7MBq)のNa51Cr(Amersham International)を用いて、37℃で1時間標識し、十分に洗浄し、そしてこれを標的として使用した。51Cr標識標的細胞(ウェルあたり5000個)を96ウェルプレートに播種した。実験は、12.5:1、25:1および50:1の様々なPBMC(エフェクター)対Mac-1(標的)比で、3連で行い、37℃で4時間インキュベートし、次いで上清への51Crの放出を決定した。細胞傷害性は、次の式によって計算した。
%細胞傷害性=100×(E-SE-ST)/(M-ST)
式中、Eはエフェクター細胞および抗体と共にインキュベートされた標的細胞からのLDHの放出の実験値であり、SEは、エフェクター細胞からのLDHの自然放出であり、STは標的細胞からのLDHの自然放出であり、Mは10% triton-Xと共にインキュベートされた標的細胞からのLDHの最大放出である。
【0183】
補体依存性細胞傷害性アッセイ
Mac-1細胞を標的細胞として使用した。簡潔に説明すると、仔ウサギ血清(1:16、Cedarlane Laboratories)またはマウス補体血清(1:10、Innovative Research、SCID/Beigeマウスのバックグラウンドマウス系統であるBALB/cおよびC57BL/6マウスから集めたもの)を含む無血清培養培地に再懸濁させた5x104個の細胞を、用量依存的な抗CCR4抗体を含む96ウェルプレートの各ウェルにプレーティングした。37℃で2時間のインキュベートの後、上清を300xgで5分間の遠心分離によって回収した。細胞傷害性の検出は、非放射性細胞傷害性アッセイキット(Promega)を用いて測定した。細胞傷害性の式は、%細胞傷害性=100×(E-ST)/(M-ST)である。
【0184】
制御性T細胞抑制アッセイ
CD4+CD25highおよびCD4+CD25- T細胞を、抗CD4および抗CD25抗体(Biolegend)を用いてFACSCanto IIフローサイトメーターにより選別した。CD4+CD25- Teff(2500細胞)を、CD4+CD25high Treg(2500または1250細胞)と共にまたはそれを加えずに、結合させた抗CD3(0.05μg/ml)または可溶性の抗CD28(1μg/ml)抗体(Biolegend, CA)でコーティングされた丸底96ウェルプレート上で培養した。この共培養されたウェルに、25,000個の照射された(300rad)CD3枯渇PBMCをc1567IgGと共にまたはそれなしで添加した。T細胞の増殖は、シンチレーションカウンターを用いて、第5日の3H-チミジンの取り込みによって測定した。すべての分析物におけるTreg共培養下でのTeffの増殖率を、Teff単独培養下でのTeffの増殖に対して正規化し;Teff単独培養下の増殖を、この正規化において100%とみなした。活性化のために、プレートを、37℃で2時間、抗CD3でコーティングし、そしてPBSで2回洗浄した。
【0185】
CCR4 + CTCL腫瘍保有マウスモデル
ヒトがん異種移植片を、SCID/Beigeマウス(Charles River)において樹立した。2 x 106個のMac-1-ルシフェラーゼ細胞または1 x 107個のMac-1細胞を6週齢マウスの背外側側面に皮下注射した。注射24時間後、マウスを無作為に異なる処置グループに割り振り、そしてi.p.注射により3 mg/kgのmAb1567およびマウスIgG2b(週に2回を3週間)または5 mg/kgの対照-scFv-Fc、c1567-scFv-Fc、h1567-scFv-Fcおよび等量の生理食塩水(週に2回を4週間)で処置した。マウスの体重および腫瘍のサイズを、週に2回、電子カリパスまたはXenogen画像を用いて測定およびモニターした。腫瘍容積を、長さ x(幅)2 x 0.52の式を用いて計算した。動物の管理は、Animal Care and Use Committee of Dana-Farbar Cancer Instituteのガイドラインにしたがい行った。
【0186】
統計分析
データを、両側・対応のないスチューデントt検定を用いて分析した。発明者らは、すべての分析において、0.05を下回るP値を有意とみなした。すべての値は、平均±標準偏差(S.D)として表されている。
【0187】
統計分析は、GraphPad Prism 5(GraphPad Software, Inc., La Jolla, CA)を用いるボンフェローニ事後比較(Bonferroni post hoc)試験および対応のない両側t検定による2要因ANOVAを用いて行った。0.05未満のP値を統計的に有意とみなした。
【0188】
ヒトCCR-Fc融合タンパク質のトランスフェクトおよび生合成分析
トランスフェクトは、上記と同じ方法を用いて、293細胞およびF105-L3-Nt-hCCR-Fc融合タンパク質ベクターにより行った。トランスフェクトの2日後、細胞を洗浄し、次いで250μCi/ml[35S]Met/Cysまたは400μCi/ml Na2 35SO4(PerkinElmer Life Sciences, MA)のいずれかを用いて様々な時間インキュベートした。2日後、プロテインAセファロースビーズを用いて培養上清を回収し、免疫沈降のために調製した。精製されたhCCR-Fc融合タンパク質、すなわちhCCR4Nt-Fc、hCCR5Nt-Fcおよび変異hCCR5Nt-Fc(4つのN末端チロシン残基がアスパラギン酸に変異されている、DDDD変異版)を、SDS-PAGEおよび銀染色によってさらに分析した。
【0189】
サンドイッチ酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)
96ウェルプレートを、50 mM炭酸緩衝液(pH 9.6)中のmAb1567抗体を用いて、4℃で一晩コーティングし、そのウェルをPBST(0.2% Tween-20を含むPBS)で5回洗浄し、その後に200μlのブロッキング緩衝液(5%スクロースおよび1% BSAを含むPBS、pH7.4)と共に37℃で2時間インキュベートした。ヒトCCRNt-Fc融合タンパク質を、ウェルあたり0.25、0.5または1μgの濃度で添加し、次いで4℃で1時間インキュベートした。PBSTで洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗ヒトIgG(Thermo scientific, IL)をウェルに添加し、次いで4℃で1時間インキュベートした。次いでプレートを洗浄し、そして室温、暗所の下でTMB基質溶液(KPL、MD)と共にインキュベートした。反応を、0.6N硫酸の添加によって停止させ、そしてマイクロプレートリーダーを用いて450nmで吸光度を決定した。
【0190】
ヒト化1567軽鎖シャッフルファージディスプレイライブラリの構築
ヒト化1567のVH(重鎖の可変領域)遺伝子、特にHCDR3を、NcoI/BspEIフラグメントとして、57の健常ドナー由来の1.2 x 108個の非免疫Vκ遺伝子のレパートリーを含むベクターpFarber-Vκ-repにクローニングした。ライゲートしたDNAを、エレクトロポレーションコンピテント大腸菌(E.Coli)TG1細胞に製造元の指示(Stratagene, CA)にしたがい形質転換した。Vκレパートリーのそれに近い所望のサイズのh1567-Vk鎖シャッフルライブラリを生成するため、複数回の形質転換を行った。
【0191】
ハイブリドーマ細胞株からのMAB1567遺伝子のクローニングおよび構築
簡潔に説明すると、総RNAを、Total RNA Purification Kit(Ambio Inc., TX)を用いてハイブリドーマ細胞MAB1567(R&D systems)から抽出し、次いで製造元のプロトコル(Promega)およびAMVリバーストランスクリプターゼ(Promega)を用いてcDNAに逆転写した。その後、VHおよびVL抗体フラグメントのcDNAを、マウス抗体V領域に特異的な縮重プライマーを用いるPCRによって増幅し、全長scFv(VH-(G4S)3リンカー-VL)を製造元のプロトコル(GE-Pharmacia Biotech)に従うPCRによって構築した。抗体の産生のために、pcDNA3.1-Hingeベクター中の構築されたscFv-Fc(C末端ヒトIgG1 Fcに対してインフレームのマウスscFv)およびTCAE5.3ベクター中のIgG1を、293Tまたは293F細胞に一過的にトランスフェクトし、細胞培養上清中に分泌された抗体をプロテインA親和性クロマトグラフィーによって精製した。
【0192】
h1567ファージディスプレイランダム変異ライブラリの構築
選択された6つのCDR位置において、プロリン、システインまたはメチオニンを除く全20アミノ酸を各位置において等しい頻度で完全に無作為化させた。Sloning Biotechが、指定位置にこれらの変異を有する全scFvフラグメントをデノボ合成した。合成されたscFvフラグメントライブラリをサンプリングして配列決定し、変異の頻度および正確度を確認した。ライブラリを、合成されたscFvライブラリを製造者の指示(Stratagene, CA)にしたがい大腸菌TG1のエレクトロポレーションによりファージディスプレイベクターpFarberにサブクローニングすることによって構築した。
【0193】
ライブラリの選択およびスクリーニング
ファージ抗体ライブラリ選択のためのCCR4-PMPLの調製、CCR4-PMPLまたはCCR4+ Mac-1細胞を用いたライブラリ選択、陽性を示す結合物質のFACSスクリーニング、DNA配列決定および配列分析は、以前に記載された手順にしたがい行った(Willemze, R et al. Blood 2005, 105:3768-85; Clark, RA et al. Sci Transl Med 2012, 4:117ra7; Bekkenk, MW et al. Blood 2009, 95:3653-61)。
【0194】
抗CCR4ヒト化scFvFc h1567 mAbをコードするAAV8ベクターの構築
scFvFc h1567ミニボディ発現カセットを構築するため、発明者らの研究所で以前にクローニング(DK. Chang et al., 原稿提出済)しAAVクローニングベクターpTRUF(University of Iowa Viral Vector Coreから入手)のSfi1およびNot1の制限部位に挿入したmAb 1567(R&D Systems, Inc)の重および軽抗体鎖から得たヒト化抗ヒトCCR4抗体をコードするプラスミドからscFvFc h1567遺伝子をPCR増幅した。それによって単鎖mAbの発現および分泌を効果的に行うため、ヒトIgG VH4リーダー配列およびヒトIgG1のFc配列(ヒンジ、CH2およびCH3ドメイン)を145-bpおよびAAV2逆位末端反復(ITR)の隣に挿入することによって、pTRUFベクターを改変した(
図1a)。
【0195】
ウイルスベクターの作製
組み換えAAV8ウイルスベクターは、いくつかの改変が加えられたヘルパーウイルスフリーシステム(Collaco, RF et al. Gene 1999, 238:397-405)を用いて作製した。低継代ヒトHEK293細胞を、線状ポリエチレンイミン(Polysciences)により、3つのプラスミド:ITRに隣接するヒトmAb遺伝子発現カセットをコードするAAV cis-プラスミドpTRUF;AAV2 repおよびAV8 cap遺伝子を含むAAV-パッケージングプラスミドp5e18(2/8);ならびにAAVの繁殖に必要とされるVA RNA、E2およびE4遺伝子を含むAdヘルパープラスミドpXX6-80(Dr. Jim Wilson, University of Pennsylvaniaから入手)で共トランスフェクトした(Michelfelder S. et al. Exp Hematol 2007, 35:1766-1776)。トランスフェクトの48時間後に、細胞を収集し、そして細胞を凍結および解凍することによってAAVウイルスを抽出した。その後、AAVを、2連続イオジキサノール密度勾配によって精製し、濃縮し、次いで製造元の指示にしたがうBiomax 100-Kフィルター(Millipore)を通じた遠心分離によって脱塩した。ウイルス価は、AAVベクターpTRUFに特異的なプライマーおよびプローブを用いる定量リアルタイムPCRによって、ゲノムコピー価(vg)として決定した(Veldwijk MR, et al. Mol Ther 2002, 6:272-278)。フォワードプライマー
は、3'-ポリ(A)の末端に配置され、リバースプライマー
は、3'逆位末端反復(ITR)の開始部に配置される。プローブ
はその間に配置される。
【0196】
scFvFc 11A、SARSに特異的な対照ミニボディ(Sui J, et al. PLoS Pathog, 4:e1000197)およびscFvFc h1567をコードするAAV血清型8ベクターを、Harvard Gene Therapy Initiative(Harvard Institute of Medicine, Boston, MA)で大量に作製し、これを動物研究で使用した。
【0197】
治療用動物モデル
6〜8週齢のSCID-BEIGEメスマウスを、Charles River Laboratoriesから購入し、Harvard Medical Schoolの動物施設で管理した。治療用ミニボディ遺伝子導入研究(マウスモデル1)のために、マウスの左側側面に、13ゲージトロカールを用いて、200μL PBS中2.5 x 10
6細胞のCCR4
+ Mac-1細胞を皮下接種した。腫瘍接種の1週間後、マウスに、抗CCR4 h1567ミニボディまたは無関係の対照11AミニボディをコードするAAV8ベクターの1回の処置で、150μLのPBS中2 x 10
11 v.g.(ウイルスゲノム)の用量を、尾静脈を通じて静脈内注射した。ヒトPBMC移植マウスモデル(マウスモデル2)においては、マウスに1 x 10
6個のルシフェラーゼ発現CCR4
+ Mac-1細胞を接種した。腫瘍細胞の接種から11日後、腫瘍保有マウスにAAV8ベクターを、静脈を通じて静脈内注射した。ヒトPBMCは、AAV8注射の7日後に、尾静脈を通じて、マウスあたりの最終濃度が1 x 10
6細胞となるよう静脈内注射した。皮下腫瘍を、カリパスを用いて測定し、腫瘍容積を、式V=d×D×π/2(式中、dは小さい方の直径でありDは大きい方の直径である)にしたがい記録した。腫瘍の直径が1.5cmに達したときまたはマウスが瀕死の状態となったときに、処置および対照マウスを安楽死させた。マウスを解剖し、腫瘍を組織学および免疫組織化学(IHC)によって評価した。
【0198】
光学画像化
マウスを、腫瘍の発生および進行に関して、カリパス測定およびXenogen BLIの両方によってモニターした。後者は、腫瘍移植の7日後に、腫瘍成長のモニタリングのために開始し、これを週に一度ずつ繰り返した。マウスを、誘導チャンバー内で、3.5%イソフルランを用いて麻酔し、その後に50 mg/ml D-ルシフェリンを腹腔内投与した。画像化のために、マウスを、ノーズコーンを通じて送達した1.5%イソフルラン麻酔下で維持した。様々な露光時間(10秒〜1分)の間にフォトン数の最大ピークが確認されるまで、全身画像を繰り返し撮影した。データは、スキャン時間内で最大フォトン数を示した時点を用いて定量し、Living Imagingソフトウェア(Caliper Life Sciences, Hopkinton, MA)を用いて分析した。
【0199】
CT/PET画像化
PET/CTスキャンは、Harvard Medical School Imaging Core Facilityにおいて行った。マウスを、
18F-FDG注射前の12時間、自由に水を与えたのを除いて絶食させた。
18F-FDG注射および画像化のために、マウスを、2%イソフルランを用いて麻酔した。次いでこの動物に7.4MBq(200μCi)の
18F-FDGを腹腔内注射し、意識を回復させ、そして画像化まで37℃で維持した。画像化は、腹腔内注射の30分後に開始した。PETとCTの間の位置誤差を1mm未満に最小化するためマウスをチャンバー内で画像化した。画像取得時間は、10分間であった。画像を、AMIDEソフトウェア(Loening AM, et al. Mol Imaging 2003, 2:131-137)を用いて分析した。再現性のある位置決めを確実に行うため、すべての関心対象領域を、PET/CT合成画像上で定義した。
【0200】
タンパク質の発現および精製
HEK 293T細胞(ATCC, Manassas, VA)を、Lipofectamine 2000(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、ミニボディ発現コンストラクトを含むAAVコードプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクトの3日後、プロテインAセファロース親和性クロマトグラフィーを用いて上清からミニボディを精製した。AAV8-ミニボディのインビボ生成は、上記のようにSCID-BEIGEマウスにi.v.注射することによって行った。血清中のミニボディのレベルは、ヒトIgG ELISA定量キットを製造元のプロトコル(Bethyl Laboratories, Inc., Montgomery, TX)を用いて2連で測定した。
【0201】
ウェスタンブロット分析
ウェスタン免疫ブロットを、インビトロ合成ミニボディおよびインビボAAV8由来ミニボディを含むプロテインAカラム精製サンプルにおいて行った。これらのタンパク質を、還元または非還元条件下でSDS-PAGEによって分離し、そしてiBLotドライブロッティングシステム(Invitrogen)を用いて電気泳動によりニトロセルロース膜に移した。5%スキムミルクで一晩ブロックした後、このブロットを、ブロッキング緩衝液で1:30,000希釈したAPコンジュゲートヒトIgG-Fc抗体を用いて、室温で1時間プローブした。過剰なコンジュゲートを、0.1% Tween 20を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS-T)で5回洗浄することによって除去した。タンパク質の検出は、膜をBCIP/NBTアルカリホスファターゼ基質(KPL)と共にインキュベートすることによって行った。
【0202】
フローサイトメトリー分析
インビボAAV8由来h1567ミニボディの生物学的活性を、結合活性について、蛍光活性化細胞選別(FACS)により分析した。Mac-1細胞または293T-CCR4細胞を、0.5%ウシ血清アルブミンを補充したPBS(PBS-B)で洗浄し、次いでインビボ生成h1567と共に室温で1時間インキュベートし、その後にフルオレセインイソチオシアネート(FITC)にコンジュゲートされた抗ヒトIgG-Fcと共にインキュベートした。フローサイトメトリー分析は、BD FacsCalibur(BD Biosciences, San Jose, CA)およびFlowJoデータ分析ソフトウェア(Tree Star, Inc., Ashland, OR)を用いて行った。
【0203】
免疫組織化学および細胞染色の定量
免疫組織化学染色は、DFCI/Harvard Cancer Center Research Phathology Coreにおいて行った。定性的および定量的免疫組織化学分析のために、ホルマリン固定およびパラリン包埋した組織切片を、マウス好中球の表面上のLy-6GおよびヒトNK細胞上のヒトCD56抗原に対する抗体によって染色した。次いで、染色したスライドを、Aperio ImageScope(Aperio Technologies, Inc., Vista, CA)を用いてスキャンし、全腫瘍切片を定量的分析のために選択した。腫瘍切片全体における正染色細胞の比率は、色相デコンボリューションアルゴリズム(Ruifrok and Johnston, 2001)を用いて計算した。
【0204】
インビトロ抗体依存性細胞傷害性アッセイ
ADCCは、製造元(Promega, Madison, WI)により指定されたCytoTox96非放射性細胞傷害性アッセイ手順にしたがい、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイを用いて行った。SCID-BEIGEマウスから精製されたマウス好中球またはPBMC由来の精製ヒトNK細胞をエフェクター細胞として使用し、CCR4+ Mac 1腫瘍細胞を標的細胞として使用した。簡潔に説明すると、精製されたSCID-BEIGEマウス好中球またはNK細胞を、h1567または11Aミニボディの存在下、ウェルあたり1 x 10
4細胞の密度で、丸底96ウェルプレートにプレーティングした。1時間のインキュベート後、新しく調製されたエフェクター細胞を、80:1(マウス好中球)または2:1(ヒトNK細胞)のエフェクター-標的細胞比(E:T)で添加した。37℃で2時間のインキュベート後、各ウェルの上清を、300xgで5分間の遠心分離によって回収した。上清中のLDH活性を、490nmの波長の吸光度を測定することによって決定した。細胞傷害性(%)は、次の式にしたがい計算した。
%細胞傷害性=100×(E-SE-ST)/(M-ST)
式中、Eはエフェクター-標的共培養によるLDH放出であり、SEはエフェクター細胞からのLDHの自然放出であり、STは標的細胞からのLDHの自然放出であり、そしてMは溶解溶液(10% Triton-X)と共にインキュベートされた標的細胞からのLDHの最大放出である。すべての測定を、3連で行った。
【0205】
実施例2:マウス抗CCR4 mAbであるmAb 1567のインビトロおよびインビボでの特徴づけ
CCR4は、細胞表面に露出する4つの領域:NT(およそ30〜50aa)および3つの細胞外ドメインループ(ECL、各々およそ10〜30aa)を有し、これらはリガンド結合、細胞内シグナル伝達およびその他の生物学的機能に重要となる。この研究では、最初に、いずれもマウスを全長ヒトCCR4(hCCR4)発現細胞で免疫することによって作製された、2つの市販のマウス抗CCR4 mAbであるmAb1567(R&D systems)および1G1(BD Pharmingen)(Campbell JJ et al. Nature 1999, 400:776-800;www.rndsystems.com/pdf/fab1567a.pdf)を評価対象として選択した。mAb1567および1G1はどちらも、FACS分析において、hCCR4発現Cf2Th-CCR4細胞に対して特異的結合活性を示したが、その親のCf2Th細胞に対しては示さなかった。比較すると、mAb1567は、試験した同じ抗体濃度下で、1G1よりも比較的高い親和性を有していた(データ示さず)。したがって、発明者らは、さらなる特徴づけのためにmAb1567のみを選択した。
【0206】
mAb1567の結合を、CCR4
+ Mac-1細胞株を用いてFACS分析によりさらに試験したところ、最大半量有効結合濃度(EC
50)は約0.45 nMである(
図1A)。化学走性阻害アッセイは、mAb1567が、CCR4リガンドであるCCL17およびCCL22のいずれに対するMac-1細胞の化学走性も用量依存的な様式で効果的に阻害することを示した(
図1B)。発明者らは次に、mAb1567によって認識されるエピトープを、特にそれがNTのみを認識するのかまたはNTおよびECLの両方を含む非線状立体構造依存的エピトープを認識するのかを、CCR8-NT/CCR4-ECL(Chi#1)またはCCR4-NT/CCR8-ECL(Chi#2)のいずれかを含むhCCR4およびhCCR8 NT交換キメラを用いることによって試験した(Jopling LA et al. Journal of Biological Chemistry 2002, 277:6864-73)。
図S1Aに示されるように、野生型またはキメラCCR4およびCCR8をコードするすべてのコンストラクトが、これらのコンストラクトのNT上のHAタグに対する抗体染色によって確認されたように、細胞表面上に同程度のレベルで発現された。mAb1567は、細胞表面の全長hCCR4を特異的に認識したが、hCCR8についてはそうではなかった。それは、Chi#1およびChi#2に対して、野生型CCR4と同程度のレベルで結合し、これによりmAb1567のエピトープが、CCR4のNT上の線状エピトープ単独なのではなく、ECLおよびNTの両方がmAb1567とCCR4の結合に寄与することが示された。しかし、プレートに結合させたmAb1567に対するElisa研究において決定される場合、CCR4-Nt単独でも、CCR4-Nt-Fcに対するmAb1567の一定程度の結合に十分である。
【0207】
発明者らは次に、TおよびB細胞を欠失しておりNK機能欠陥を有する免疫欠損SCID/Beigeマウスを用いたCTCLモデルにおいてインビボでのmAb1567の抗腫瘍効果を試験した。Mac-1細胞を移植したSCID/Beigeマウスは、効果的に皮下腫瘍を形成することができる(Pfeifer W et al. Am J Pathol 1999, 155:1353-9)。
図1Cに示されるように、mAb1567処置グループにおける腫瘍サイズは、対照グループにおけるそれよりも約3〜4倍小さかった。mAb1567処置に関連する毒性を示したマウスはいなかった。
【0208】
実施例3:mAb1567はMac-1細胞に対するマウスおよびウサギ補体の存在下でのCDCならびに好中球ADCCの両方を媒介する
SCID/Beigeマウスにおいて見られたmAb1567の抗腫瘍効果の根底にあるメカニズムをさらに理解するため、発明者らは、mAb1567がインビトロでCCR4
+腫瘍細胞に対するCDCおよび/または好中球媒介ADCC効果を媒介することができるかどうかを試験した。mAb1567は、マウスIgG2bアイソタイプ対照抗体と比較して、マウス補体の存在下で用量依存的な様式でMac-1細胞の有意な溶解を誘導した(
図1D)。ウサギ補体も試験したところ、mAb1567はずっと強力なCDC活性を媒介し、標的細胞溶解が80%に達した(
図1E)。次に、SCID/Beigeマウスから単離された好中球を、インビトロADCCアッセイにおいて試験した。
図1Fに示されるように、mAb1567は、対照と比較して、80:1のエフェクター/標的細胞(E/T、好中球/Mac-1)比で、マウス好中球を介しておよそ20%の溶解を特異的に媒介した。これらの結果は、mAb1567がCDCだけでなくマウス好中球誘導ADCC活性も直接的に媒介できることを示している。
【0209】
実施例4:キメラmAb1567のクローニング、発現および活性
さらなる前臨床研究のためにmAb1567をヒト化するため、ハイブリドーマ細胞株由来の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)遺伝子をコードするcDNAを、マウス抗体可変遺伝子に特異的なプライマーを用いるRT-PCRによって個別に回収した。mAb1567のVHおよびVLは、マウスV
H1(IGHV1S56
*01)およびV
K8(IGKV8-27
*01)ファミリーに属し、そしてそれぞれ、J
H1(IGHJ1
*01)およびJ
K2(IGKJ2
*01)セグメントによって再構成されたものであった。次に、クローニングされた再構成VHおよびVL遺伝子を、(G4S)
3リンカーを用いて、単鎖抗体可変領域フラグメント(scFv)として構築した。CCR4に対する組み換えmAb1567の結合を、scFv-Fc IgG1ミニボディ(c1567-scFv-Fc)(
図2A)および全長キメラIgG1形式(c1567-IgG)(データ示さず)の両方において検証した。
【0210】
NK細胞媒介ADCCはヒトIgG1 Abを用いる免疫療法にとって最も重要な作用メカニズムの1つなので、発明者らは、組み換えmAb1567がNK細胞を介してADCCを媒介することができるかどうかをさらに試験した。scFv-FcまたはIgG1の両形式のキメラ1567は、エフェクター細胞としての健常ドナー由来のヒト末梢血単核細胞(PBMC、
図2B)または精製されたNK(CD56
+CD16
+)細胞(
図2C)を異なるE/T比で用いるインビトロADCCアッセイにおけるMac-1の殺傷に関して非常に効果的であった。
【0211】
実施例5:mAb1567のヒト化および関連する生物学的研究
次に、mAb1567をヒト化するために、構造に基づき相補性決定領域(CDR)を移植するアプローチを用いた。Web Antibody Modelingプログラム(WAM)(Whitelegg NR et al. Protein Eng. 2000, 13:819-24)を用いたmAb1567のVHおよびVL鎖のホモロジー3次元モデリングを、PDBデータベースの既知の抗体構造に対して行った。CDRの移植のためのヒトアクセプターフレームワークテンプレートを選択するため、mAb1567のVHおよびVLアミノ酸配列を、個別に、IGBLASTデータベース(
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)のヒトAb配列と比較し、最も類似するヒトAbおよびIg生殖系列のVHおよびVL配列を同定した(
図2D)。ヒトVH(McAb Ctm01、PDB:1ae6H)およびVL(Genebank #ABG38372)は、mAb1567のVHおよびVLに対して、それぞれ、82%および84%のアミノ酸配列相同性を有しており;最も一致するヒトIg生殖系列V配列は、IGHV1-3
*01(mAb1567-VHに対して67%の相同性)およびIGKV4-1
*01(mAb1567-VLに対して83%の相同性)である。mAb1567のフレームワーク残基を、選択されたヒトフレームワーク残基に手作業で変更し、ヒト化mAb1567(h1567)を作製した。次に、DeepViewプログラム(Daura X et al, Proteins 1996, 25:89-103)を用いて、GROMOS力場エネルギー最小化パラメータをホモロジーモデルh1567に適用した。このh1567のエネルギー最小化ホモロジーモデルに対して、幾何学形状を歪めるまたは他の残基と立体的に衝突する残基がないことを確認する試験を行った。
【0212】
図2Dに示されるh1567の配列は、マウスVHおよびVLと比較して、それぞれ、フレームワーク領域において21および11個のアミノ酸の違いを有する。ヒト化VHおよびVL遺伝子をデノボ合成し、哺乳動物細胞発現のためにコドン最適化させた。次いで、CCR4に対するh1567およびc1567 scFv-Fcの結合親和性を、Mac-1細胞を用いてFACSにより比較した。h1567は、c1567と比較して、結合性がおよそ2倍低下していたが、両方ともナノモル範囲の、それぞれ2.2 nMおよび1 nMのEC
50であった(
図2A)。ヒト化h1567 scFv-Fcは、c1567と比較して、Mac-1細胞に対する強力なNK媒介ADCC殺傷性を維持していた(
図2C)。
【0213】
h1567のインビボ抗腫瘍効果を試験するため、ルシフェラーゼ発現Mac-1細胞を、SCID/Beigeマウスの背側面に皮下移植し、そしてマウスを腹腔内(i.p.)注射により5 mg/kgの対照-scFv-Fc、c1567-scFv-Fc、h1567-scFv-Fcまたは等量の生理食塩水で処置した。マウスにおける腫瘍成長を、IVIS画像によるルシフェラーゼ強度でモニターした。すべてのマウスを、第28日に屠殺し、写真撮影および腫瘍重量測定のために腫瘍を切り出した。
図3に示されるように、腫瘍は、IVIS画像(
図3A上およびC)、切り出した腫瘍のサイズ(
図3A下)、腫瘍容積(
図3B)および腫瘍重量(
図3D)による測定で、c1567およびh1567処置グループにおいては第21日に大きくサイズ減少していたが、対照-scFv-FcまたはPBS処置グループではそうならなかった。
【0214】
実施例6:高親和性h1567変種のADCCおよびCDC活性
h1567はインビトロおよびインビボの両方でそのマウス対応物と類似の生物学的活性を示したが、h1567の相対的な見かけの結合親和性はc1567よりも2倍低い(
図2A)。h1567 mAbをさらに親和性成熟させるために、発明者らは、VL鎖シャフルおよびアラニンスキャンを行ってCDRにおいて鍵となる残基を同定し、そしてその後にこのCDRにおける鍵となる残基の無作為変異誘発によって構築したファージディスプレイライブラリの選択およびスクリーニングを行った(詳細については
図7)。
【0215】
Mac-1細胞に対して親のh1567よりも高い、1.47および1.39 nMのEC
50の結合親和性を示した(
図7F)、2つの親和性が改善されたh1567変種である、それぞれ、mAb1-4および2-3を、それらのADCC活性媒介能力について、エフェクター細胞としてヒトNK細胞を用いてさらに評価した。結果は、これらのh1567変種のADCC活性の改善がそれらの結合親和性と相関しており、2-3-scFv-FcはMac-1細胞(
図4A)およびCf2Th-CCR4細胞の両方に対して最も良いヒトNK媒介ADCC活性を発揮したが陰性対照であるCf2Th(
図8)に対してはそうでなかったことを示した。さらに、親のmAb1567はマウス好中球媒介ADCCを誘導することができたので、h1567および2-3をヒト好中球媒介ADCCアッセイで試験したところ、mAb2-3はh1567と比較して高い細胞傷害活性を示した(
図4B)。さらに、1-44および2-3変種の両方において、若干改善された対Mac-1細胞CDC活性も観察されたが、2-3-scFv-Fcではこれがより大きかった(
図4C)。
【0216】
ヒトIgG1抗体のADCC効果を増大させることが示されているCH2ドメイン内の3つの残基(S239D、A330LおよびI332E)(Carter PJ. Nat Rev Immunol 2006, 6:343-57)を変異させることによりADCC活性をさらに増強するため、変異Ab 1-44および2-3においてFc改変を行った。
図4Dに示されるように、1-44-および2-3-scFv-mFcによって媒介されるADCCは、それらの野生型Fc対応物または野生型h1567と比較して有意に増強された。しかし、FcドメインにおけるA330Lの変異はCDC機能を消去し得るものなので(Lazar GA et al. Proc Natl Acad Sci USA 2006, 103:4005-10)、発明者らはまた、1-44および2-3 scFv-mFcのscFv-Fc形式のCDC活性が完全に消失することを試験および確認した(
図4E)。まとめると、ヒト化1567の親和性最適化変種、特に2-3変種は改善されたADCCおよびCDCエフェクター機能を示し、NK細胞媒介ADCC活性はFc改変を通じてさらに増強され得る。
【0217】
実施例7:1567はインビトロでTregの化学走性を阻害しそしてTregの抑制活性を部分的に打ち消す
最後に、末梢血から新たに単離されるCD4
+CD25
high Tregの大部分(94%)は高レベルの表面CCR4を発現し(Hirahara K et al. J Immunol 2006, 177:4488-94; Baatar D et al. J Immunol 2007, 178:4891-900)そしてそれらはCCL22を分泌する腫瘍に向かって遊走することが報告されている(34)ので、発明者らは、Ab1567がヒトCD4+ Tregの化学走性の動員および抑制性の活性を調整することによって抗腫瘍的役割を果たすことができるかどうかを調査した。最初に、発明者らは、CD4
+CD25
high TregがCD4
+CD25
- T細胞よりもずっと効果的にCCL22に向かって遊走することを確認した(
図5A)。次に、末梢血CD4
+ T細胞を用い、合わせて遊走細胞のTreg表現型の試験を行うことで、発明者らは、c1567が2μg/mLを超える濃度でトランスウェル化学走性アッセイにおけるCD4
+CD25
high Tregの遊走を完全に阻害することを確認した(
図5B)。
【0218】
本発明のmAb2-3または他の抗CCR4抗体による処置後の化学走性の分析は、上記のようにして行うことができる。
【0219】
加えて、発明者らはT
reg機能におけるCCR4の役割に関する公開データを見ていないので、発明者らはまた、CCR4の1567との連携がインビトロT
reg抑制アッセイにおいてTregの抑制活性を調整することができるかどうかも試験した。
図5Cに示されるように、CD4
+ Tエフェクター細胞(T
eff単独、レーン1)の増殖は、高度に精製されたCD4
+CD25
high Treg(1:1比)によって81%阻害され(レーン3)、これはT
eff細胞に対する典型的なT
reg抑制効果である。驚くべきことに、c1567IgGの存在下で、T
effの増殖は142%まで刺激された(レーン4)が、T
regに対しては刺激効果がなかった(レーン5)。T
reg/T
eff共培養(1:1比)下で、T
effの増殖は、c1567の存在下で72%まで部分回復した(レーン7)が、対照mAbによってはそうならなかった(レーン6)。さらに、T
reg/T
eff共培養(0.5:1比)(レーン8)下で、T細胞増殖は、正味の肯定的応答を示し187%まで回復した(レーン9)。これらの結果は、c1567によるT
eff増殖の回復が、部分的にT
eff増殖に対する直接的効果に起因するものであり得るが、c1567はまた現時点では未知のメカニズムによってT
regの抑制活性を打ち消すこともできることを示唆している。
【0220】
実施例8:AAV8コード抗CCR4 h1567のインビトロおよびインビボ発現
ヒト化scFv h1567の重鎖のVドメイン(VH)および軽鎖のVドメイン(VL)がヒトIgG1重鎖のヒンジならびに定常ドメイン2および3(CH2およびCH3)のコード領域に融合されている改変されたscFvFcミニボディ形式をAAV8ベクターにおける抗体部分として使用し、標的分子hCCR4に対する2価結合体を生成した(
図9a)。得られた組み換えAAV8ベクターを、インビトロでのタンパク質の合成およびインビボでの抗体遺伝子の送達のためのウイルスの作製の両方に使用した。パイロット投薬研究において、ヌードマウスに、静脈内尾静脈注射を通じて、2つの異なる濃度のAAV8-h1567の単回注射を行った。血清h1567ミニボディのレベルを、15週間追跡した。h1567ミニボディレベルは、最初の2〜3週間の間上昇し、低(0.8 x 10
11 vg/マウス)および高(2.0 x 10
11 vg/マウス)ベクター用量でそれぞれ約65および96 ug/mlのレベルに達し、その後、本研究の残りの週を通じて、高用量ベクターではほぼピークレベルで、低用量ベクターではその約1/3のレベル(およそ35 ug/ml)で横ばいとなった(
図13)。マウスあたり2 x 10
11 vgがh1567の血清レベルをより高くしたので、このベクター濃度をその後のインビボ研究で使用した。
【0221】
CCR4+ Mac-1腫瘍細胞はSCID-BEIGEマウスにおいてよく成長するので、発明者らは、AAV8-h1567治療用ミニボディ遺伝子移入の効果を評価するため、SCID-BEIGE/Mac-1異種移植腫瘍モデルを構築した。AAV8ベクターの単回静脈内尾静脈注射により処置したSCID-BEIGEマウスにおいて、対照11Aおよびh1567ミニボディの血清濃度が時間依存的に増加し、7〜14日後に約50 ug/mlの定常状態レベルに達し、そして本研究の最終日である第28日までそのピークレベルを維持した(
図9b)。AAV8-ミニボディのインビボ形質導入が適切に折りたたまれたscFvFcを生成することができるかどうかを決定するため、AAV8ベクターの静脈内送達の3週間後にSCID-BEIGEマウスの血清から回収されたプロテインA精製ミニボディを、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)およびウェスタンブロットによって分析した。
図9cに示されるように、還元条件下で試験された場合、インビトロおよびインビボの供給源の両方から回収された11Aおよびh1567ミニボディが、scFvFcの予想されるサイズである約60kDのバンドを示した。非還元条件下での分析は、2量体の形成(分子量約120kD)を示し、これによって、このミニボディがインビトロおよびインビボで2価であることが確認された(
図9c)。加えて、プロテインAによる親和性精製を用いた血清からのAAV8由来ミニボディの回収の容易さ、抗ヒトFc抗体を用いたウェスタンブロットにおけるそれらの反応性、およびそれらの安定な2量体形成性から、それらのCH2-CH3ドメインの適切な折りたたみおよび構造完全性が確認される(
図9cおよび9d)。
【0222】
実施例9:AAV8媒介遺伝子移入後の血清におけるh1567ミニボディの結合活性
AAV8由来scFvFcミニボディの機能的完全性を決定するため、インビボAAV8形質導入の14日後のマウスから得られた血清を、フローサイトメトリーにより、CCR4に対する結合のレベルについて試験した。
図9eに示されるように、マウス血清中の分泌されたh1567ミニボディは、CCR4
+ Mac-1細胞およびCCR4
+ 293T細胞に特異的に結合することができたが、親の293T細胞には結合せず、これにより、scFvドメインが正確に折りたたまれていることおよびそれが完全な抗原結合活性を保持していることが示された。陰性対照として使用した、(SARS Spikeタンパク質に対する)無関係の11Aミニボディは、CCR4発現細胞に結合しなかった(Sui J et al. PLoS pathog 2008, 4:e1000197)。
【0223】
実施例10:事前に形成された腫瘍を有するマウスのAAV8-h1567処置
次に、AAV8-h1567遺伝子移入の治療効果を、皮下移植したMac-1腫瘍異種移植片を保有するSCID-BEIGEマウスにおいてインビボで評価した。腫瘍接種後第7日に、マウス4匹のグループに対して、AAV8-h1567または対照AAV8-11Aベクターの単回静脈内注射を行い、そして腫瘍容積を週に2回評価した。
図10aに示されるように、AAV8-h1567の単回注射によって、腫瘍成長が、AAV8-11A処置マウスまたはPBS対照処置マウスと比較して有意に減少した(第18日でP<0.01、第21日でP<0.0005)。マウスの生存を、2ヶ月間までモニターした。AAV8-h1567処置した腫瘍保有マウスは、AAV8-11A処置マウスまたは未処置マウスよりも有意に長生き(P<0.005)した(
図10b)。
【0224】
実施例11:SCID-BEIGEマウスにおけるh1567による腫瘍細胞殺傷のメカニズム
SCID-BEIGEマウスはTおよびBリンパ球ならびに機能的なナチュラルキラー(NK)細胞を欠失しているが、SCID-BEIGEマウスでは好中球はインタクトなままでありそれらはADCCを媒介することが示されているFcγRIIIA受容体を発現するので(Selvaraj P et al. Immunol Res 2004, 29:219-230; Siders WM et al. Leuk Lymphoma 2010, 51:1293-1304)、CCR4
+ Mac-1腫瘍細胞は好中球依存ADCCを通じてh1567によって除去されたことが考えられる。腫瘍切片をAAV8遺伝子移入の21日後に切り出し、そしてこれを、マウス好中球で発現されるグリコシル-ホスファチジルイノシトール(GPI)アンカータンパク質のLy-6ファミリーのメンバーであるLy6G(Fleming TJ et al. J Immunol 1993, 150:5379-5390)の発現について組織学的に分析した。好中球特異的Ly-6G mAbによる腫瘍切片の免疫染色により、AAV8-h1567処置された腫瘍への好中球の浸潤が確認された(
図10c、左上および中央パネル)が、AAV8-11Aではそれは確認されなかった(
図10c、左下および右パネル)。好中球浸潤の定量により、1567処置マウスのみで、Ly-6G+染色細胞の顕著な蓄積が実証された(
図10d)。
【0225】
h1567媒介マウス好中球依存腫瘍細胞殺傷をさらに評価するため、精製されたSCID-BEIGEマウス好中球およびh1567ミニボディを用いてインビトロADCCアッセイを行った。h1567の存在下、80:1のエフェクター対標的比でのMac-1細胞とマウス好中球の共培養により、Mac-1細胞からの乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出によって測定される有意な好中球媒介ADCCが見られた(
図10e)。対照11Aミニボディは、好中球媒介細胞傷害を誘導することができなかった。これらのインビトロ結果は、インビボで観察された抗腫瘍活性と相関しており、このCTCLマウスモデルにおけるh1567ミニボディの抗腫瘍活性が、少なくとも部分的に、ADCCエフェクター機能を誘導するマウス好中球上のFcγ受容体IIIA(CD16A)との連携を通じて媒介されることが示唆される。
【0226】
実施例12:事前に形成されたCCR4陽性腫瘍を有するヒト末梢血単核細胞(PBMC)移植マウスにおけるh1567のインビボ腫瘍殺傷のメカニズム
治療用CTCLモデルを、レトロウイルス形質導入によって形成されたルシフェラーゼ発現CCR4
+ Mac-1細胞の生物発光画像化(BLI)を用いて腫瘍細胞殺傷におけるヒトエフェクター細胞の役割を評価するためにさらに拡張した。1 x 10
6個のCCR4
+ Mac-1細胞を移植し、第7日にBLIによって検出したときに等サイズの腫瘍を形成していたSCID-BEIGEマウスを、2つのグループに分けた。最初の腫瘍細胞接種の11日後に、AAV8-ミニボディベクターを静脈内投与した。次に、ヒトPMBC(hPBMC)を、AAVベクター投与の7日後に腹腔内注射により与えた。
図11aに示されるように、AAV8-h1567およびhPBMCによる処置は、AAV8-11AおよびhPBMCで処置したマウスと比較して、腫瘍成長を実質的に阻害した。インビボBLIによる腫瘍成長の定量的モニタリングは、目視による腫瘍成長と相関しており、これによって対照グループに対するAAV8-h1567の腫瘍成長阻害効果がさらに確認された(
図11b)。カリパス測定では腫瘍接種後第40、42および45日におよびBLIでは第25および38日までに、対照AAV8-11Aと治療用AAV8-h1567グループの間で有意差が観察された(
図11aおよび11b)。代表的なマウスのリアルタイム全身BLIは、対照マウスと比較してAAV8-h1567処置マウスにおいて腫瘍成長が処置期間を通じて大きく阻害されたことを示した(
図11c)。マイクロコンピュータ断層撮影/ポジトロン放出断層撮影(mCT/PET)画像の分析もまた、対照グループに対するAAV8-h1567処置による腫瘍成長阻害を明らかにした。AAV8-h1567およびAAV8-11Aは両方とも、腫瘍接種の28日後に原発性腫瘍の成長を示したが、この腫瘍細胞はAAV8-11A処置グループに限定的に侵襲性を示し、マウスの全身画像におけるPETトレーサー
18F-フルオロデオキシグルコース(FDG)の蓄積により示される増大した代謝活性を示した(
図11d)。
【0227】
AAV8-h1567およびヒトPBMC処置グループにおける腫瘍細胞殺傷のインビボメカニズムをさらに評価するため、同じくFcγRIIIA受容体を発現するヒトNK細胞の役割を評価した。対照11A処置マウスと比較して強いCD56免疫染色によって示されるように、AAV8-h1567処置グループにおいて、腫瘍浸潤性ヒトNK細胞の実質的増加が観察された(
図12a)。定量的色相デコンボリューション分析は、AAV8-h1567処置マウスグループにおいてAAV8-11A処置対照グループと比較して有意に増大した染色を示した(P<0.01;
図12b)。ヒトNK細胞媒介ADCC活性もまた、エフェクター細胞として精製されたヒトNK細胞を用いてインビトロで評価した。
図4cに示されるように、ヒトNK細胞は、h1567の存在下で、用量依存的な様式でMac-1標的細胞を殺傷することができた。対照11Aミニボディは、ごく低レベルの殺傷性しか示さなかった。マウス好中球およびヒトNK細胞は両方ともそれらの表面上にh1567に結合することができるFcγRIIIA受容体(CD16A)を発現するので、これらのインビトロおよびインビボデータは、h1567媒介殺傷が、少なくとも部分的に、FcγRIIIAとの連携および免疫細胞のエフェクター機能の活性化を通じて起こることを強く支持している。
【0228】
実施例13:CCR4抗体の結合親和性
CCR4抗体の結合親和性を、フローサイトメトリーによって決定した。その親和性は、以下の通りであった。
h1567:2.54 nM
-1
Mab 1-44:1.47 nM
-1
Mab 1-49:77.98 nM
-1
Mab 2-1:2.90 nM
-1
Mab 2-2:1.73 nM
-1
Mab 2-3:1.39 nM
-1
【0229】
実施例14:mAb2-3の特徴づけに使用した一般的方法
mAb2-3は、マウス抗CCR4モノクローナル抗体1567(mAb1567)のヒト化され、親和性成熟された誘導体である。このmAbは、CCR4
+皮膚ホーミングT細胞のT細胞悪性腫瘍であるCCR4
+皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の処置のための細胞傷害剤として開発され、インビボで補体依存性細胞傷害(CDC)および抗体依存性細胞傷害(ADCC)のプロセスを通じたCCR4
+ CTCL細胞に対する強力な抗腫瘍活性を有することが示された。以下の実施例には、mAb2-3の特有の特徴および特性が記載されている。mAb2-3は、CCR4リガンドCCL17/CCL22に対するCCR4
+ CTCLおよびTregの化学走性を阻止する。加えて、mAb2-3がCD4
+CD25
- Teff増殖のTreg媒介抑制を克服することができ同時に強力なサイトカインIFN-γを分泌するようTeffを刺激することができるという予期せぬ観察もなされた。これらのアンタゴニストおよびアゴニスト活性は、mAb2-3の特有の役割の輪郭を示すものである。したがって、mAb2-3は高い親和性でCCR4に結合するだけでなく、特定のシグナル伝達を誘起することもできる。
【0230】
細胞
Mac-1細胞株は、PC-ALCL患者から単離し、10% FBS RPMI-1640中で培養した。Cf2Th(CRL-1430)細胞株は、American Type Culture Collectionから購入し、10%FBSダルベッコ改変イーグル培地中でインキュベートした。ヒト末梢血単核細胞は、健常なドナーから入手し、10% FBS RPMI-1640中で培養した。
【0231】
抗体およびフローサイトメトリー分析
IgGおよびscFv-Fc形式のmAb2-3およびKM2760は、単鎖可変領域(scFv)をヒトIgG1 Fc領域とインフレームになるようpcDNA3.1-Hingeベクターにクローニングすることによってならびに重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)をTCAE5.3ベクターにクローニングすることによって構築した。抗体は、293Tまたは293F細胞で産生させ、そしてプロテインA-セファロース(Amersham)親和性クロマトグラフィーによって精製した。
【0232】
フローサイトメトリー分析
4色蛍光染色を、抗CD3(PerCP、APC)、抗CD4(FITC、PE)、抗CD25(APC)、抗FOXP3(FITC)、抗CD45RA(PE-Cy5.5)および抗CCR7(APC)(すべてeBioscienceおよびBioLegend製)を用いて実施し、FITCまたはPE-Cy5抗ヒトFcドメイン抗体(BD)を製造元の指示にしたがい使用した。分裂細胞を定義するため、精製された細胞フラクションを、カルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(CFSE、Sigma-Aldrich)を用いて染色した。ヒト末梢血単核細胞を単離しCD4
+CD25
+およびCD4
+CD25
-細胞を、Treg単離キット(Miltenyi Biotec)を用いて単離し製造元のプロトコルにしたがいCFSEで染色した。CD4
+CD25
+細胞単独およびCD4
+CD25
-細胞単独ならびにCD4
+CD25
+およびCD4
+CD25
-の組み合わせを、37℃のCO
2インキュベーター内でインキュベートし、常に1つのみの集団をCFSE染色した。すべてのサイトメトリー測定を、FACSCaliburを用いて行い、CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて評価した。
【0233】
化学走性
ヒトCD4
+CD25
-およびCD4
+CD25
+ T細胞を、CD4
+CD25
+ T細胞単離キット(Miltenyi Biotech)によって単離し、c1567IgGを用いたトランスウェル遊走アッセイに供した。遊走細胞(CD4
+CD25
high)は、100 ng/mL CCL22に応答した。遊走細胞の比率は、トランスウェルを遊走したCD4
+CD25
high細胞の数を、投入細胞の数で割り算することによって計算した。
【0234】
制御性T細胞抑制アッセイ
CD4
+CD25
highおよびCD4
+CD25
- T細胞を、マウス抗ヒトCD4-PE-Cy5(RPA-T4)および抗ヒトCD25-PE(M-A251)抗体(BD Pharmingen)を用いてBeckman CoulterMoFloソーターにより選別した。CD4
+CD25
- Teff(2,500)を、25,000個の照射した(3,000rad)CD3枯渇PBMCを含む96ウェルプレートにおいて、CD4
+CD25
high Treg(1,250)と共にまたはそれなしで培養した。細胞を0.05μg/mLのプレート結合抗CD3(UCHT1)および1μg/mLの可溶性抗CD28(CD28.2)抗体(BD Pharmingen)によって刺激した。抗CCR4抗体を適当な培養物に加えた。この培養物を、培養開始後第5日に、1μCiの3H標識チミジン/ウェル(Perkin Elmer)によって標識した。培養物の増殖を、シンチレーションカウンター(Perkin Elmer)におけるカウントの読み取りにより3Hチミジン取り込みとして測定した。CFSE実験においては、CD4
+CD25
- Teff(1 x 10
4細胞)をCFSE(Invitrogen)によって染色し、次いで0.05μg/mlのプレート結合抗CD3および1μg/mlの可溶性抗CD28抗体(BD Pharmingen)でコーティングした丸底96ウェルCostarプレートにおいてCD4
+CD25
high Treg(1 x 10
3細胞)と共に培養した。抗CCR4抗体、c1567IgGおよびAb2-3IgGならびに対照IgGを添加し、3および7日間インキュベートし、その後にカウントビーズおよびフローサイトメトリーによって分析した。
【0235】
ELISpotアッセイ
抗CCR4抗体による刺激後のインターフェロン-γ(IFN-γ)の分泌を、製造元の推奨(Mabtech)にしたがうIFN-γ ELISpotアッセイにおいて分析した。陰性対照は、10単位/mlのIL-2を含む培地と共にインキュベートし、陽性対照は、抗CD3抗体と共にインキュベートした。スポットは、コンピュータ支援画像分析(Immunospot 5.0;Cellular Technology Limited)によって計数した。各アッセイを、3連で実施した。
【0236】
サイトカインELISA
CD4
+ T細胞を、96ウェルプレート上の、10単位/ml IL-2を含む10% FBS RPMI培地に播種した。細胞を抗体(20μg/mL)で48時間処置した。インキュベート期間の後、上清を回収し、これをさらなる調査に使用した。そして、選択されたサイトカインの測定結果を、1ミリリットル・10
5細胞あたりのピコグラム数で表した。ヒトサイトカインELISA(eBioscience)アッセイを、製造元の指示にしたがい行った。
【0237】
統計分析
データを、両側・対応のないスチューデントt検定を用いて分析した。
*、
**および
***は、それぞれ、P<0.05、0.01および0.001を示す。すべての値およびバーは、平均±SDで表されている。
【0238】
実施例15:mAb2-3はTeff増殖のTreg抑制を打ち消す
CCR4のmAb1567および/またはmAb2-3との連携がインビトロTreg抑制アッセイにおいてTreg抑制活性を調整することができるかどうかも試験した。CD4
+CD25
- Teffの増殖を、Treg/Teff(1:10)共培養下での5,6-カルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(CFSE)標識Teffの蛍光強度を分析することによってモニターした。この分析により、対照IgG処置またはIgG処置なし培養物におけるそれらと比較して、CD4
+CD25
- T細胞が、抗CCR4抗体(c1567IgGおよびそのヒト化親和性成熟誘導体mAb2-3)の存在下でのみ時間依存的な様式で増殖することが明らかになった(
図5D)。抗CCR4抗体によるTeff増殖のTreg媒介抑制の克服は、抗CD3/CD28またはIL-2による共刺激に非依存的である(
図5D - 抗CD3/CD28なしであるがIL-2あり;
図5C 抗CD3/CD28あり)。Tregの免疫抑制機能に対するmAb2-3の効果をさらに試験するため、Treg抑制アッセイをより高いTreg/Teff比(1:2)の共培養下で行った。
図5Cに示されるように、CD4
+ Teffの増殖(レーン1)は、高度に精製されたTregによって阻害され(78%、レーン7)、これはTeffに対する典型的なTreg抑制効果である。Teff増殖は、c1567IgGまたはヒト化mAb1567(h1567-scFv-Fc)の存在下で正味の肯定的応答を示し、それぞれ、258%および221%まで回復した(レーン9および10)。Treg/Teff共培養研究からの結果をさらに理解するため、抗CCR4抗体(c1567IgGまたはh1567scFv-Fc)の効果を、個別に培養されたときのTeffまたはTregの増殖に関して試験した。驚くべきことに、Teffの増殖は、それぞれ、183%および207%に刺激された(
図5C、レーン3および5)が、Treg増殖に対してはほとんど効果がなかった(レーン4および6)。同じ現象が、TeffおよびTregを各々CFSEで標識し、そして抗CCR4 mAbの非存在下または存在下で2日間単独培養したフローサイトメトリーアッセイにおいて観察された(データ示さず)。これらの結果は、mAb1567およびmAb2-3がTregの免疫抑制機能を打ち消しかつTeffの増殖に対する直接的効果を有しているようであることを示している。
【0239】
実施例16:mAb2-3はIFN-γ分泌を促進する
Teffは、それらのCD45RAおよびCCR7発現プロフィールに基づき、T分化型(T-diff)、T-naive、セントラルメモリーT(Tcm)およびエフェクターメモリーT(Tem)細胞の4つの亜集団として定義することができる。個々のTeff亜集団の各々におけるCCR4発現プロフィールをさらに試験した。興味深いことに、CCR4
+細胞は、T-naive(62.2%)、Tcm(16.9%)およびTem(12.1%)の亜集団において見出すことができた(
図19A)。mAb2-3がこれらの細胞上のCCR4を通じて増殖効果を発揮するよう作用するメカニズムを解明するためには、さらなる研究を行うことが重要であろう。mAb2-3がCD4
+CD25
- Teffによるサイトカイン産生を誘導することができるかどうかをさらに決定した。ELISPOTアッセイを使用して、mAb2-3の存在下または非存在下でのCD4
+CD25
- T細胞応答によるIFN-γの産生および分泌を検出および分析した。ELISPOTにより、IFN-γは、CD4
+CD25
- T細胞のmAb2-3刺激後に、用量依存的な様式で有意に産生および分泌された。
【0240】
実施例16:他の抗CCR4抗体に対するmAb2-3結合特性の比較
mAb2-3の結合特性を、2つの異なる抗CCR4抗体:KM2760(マウス抗CCR4抗体)およびKW0761(ヒト化KM2760)の特性および効果と比較した。
【0241】
CCR4-Cf2細胞(外因性CCR4を一過的に発現するCf2細胞)を、異なる濃度の抗CCR4抗体KM2760と共にインキュベートした。次いで細胞をAPC標識mAb2-3で染色した(
図20A)。この競合アッセイの結果は、mAb2-3がKM2760と異なる結合モチーフを有することを示した。mAb2-3の結合モチーフをh1567と比較するさらなる実験も行った(
図14)。結果は、h1567、mAb1567およびmAb2-3がCCR4と同じモチーフに結合することを示している。
【0242】
mAb2-3、KM2760およびKW0761(ヒト化KM2760)の結合親和性を決定した。
図20Bは、mAb2-3(EC50 = 0.35 nM)がKW0761(EC50 = 2.19 nM)およびKM2760(EC50 = 5.07 nM)よりも高い結合親和性を有することを示している。
【0243】
実施例17:mAb2-3はT細胞増殖を刺激する
Teff増殖を刺激するmAb2-3およびKM2760の能力も評価した。CD4
+CD25
- Tエフェクター細胞をCFSE標識し、抗CCR抗体mAb2-3もしくはKM2760または対照抗体と共にインキュベートし、そして第3、5および7日に収集した。増殖は、フローサイトメトリーによって評価した。細胞の比率は、CD4
+CD25
- T細胞の蛍光から計算した。増加率を、第3日のCD4
+CD25
- Tエフェクター細胞に対して正規化した。mAb2-3処置は、Teff増殖を早期(KM2760の第7日に対して第5日)に刺激し、KM2760よりも強く増殖を刺激した(
図20C)。
【0244】
実施例18:mAb2-3はサイトカイン放出を刺激する
異なるT細胞集団の刺激機能を試験するため、ELISpotアッセイを使用してmAb2-3およびKM2760に応じたCD4
+CD25
- T細胞からのIFNγ放出を決定した。CD4+CD25- T細胞を、製造元の推奨(Mabtech)にしがたうIFN-γ ELISpotアッセイにおいて分析した。陽性対照は抗CD3抗体と共にインキュベートした。陰性対照は10単位/mlのIL-2を含む培地または対照抗体と共にインキュベートした。スポットはコンピュータ支援画像分析によって計数した。mAb2-3およびKM2760の両方の抗CCR4抗体ともに、対照抗体と比較して、低(2μg/ml)および高(20μg/ml)濃度でIFN-γ放出を刺激した。複数の実験において、mAb2-3は、KM2760処置したT細胞よりも多くのIFN-γスポットを刺激した(
図21Aおよび21B)。
【0245】
CCR4抗体に応じたサイトカイン放出プロフィールをさらに試験するため、4つのサイトカイン、IFN-γ、IL-4、TGFβおよびIL-10の放出を試験した(
図22)。IFN-g産生はTh1細胞と関連し、IL-4産生はTh2と関連し、そしてTGF-βおよびIL-10のサイトカイン放出はTreg細胞と関連する。抗CCR4抗体(mAb2-3およびKM2760)または対照抗体への48時間刺激曝露後の細胞由来の上清混合物を用いたサンドイッチELISAアッセイによって、サイトカインの同時測定を行った。IL-4およびIL-10放出のレベルは、抗CCR4抗体による刺激後も比較的不変であった。TGF-β放出は、抗CCR4抗体と共にインキュベートされた細胞において、陰性または抗体対照と比較してわずかに減少した(
図22B)。IFN-γ放出は、mAb2-3またはKM2760のいずれの処置後にも増加した(
図22AおよびB)。
【0246】
CD4
+CD25
+制御性T細胞の非存在下でのCD4
+CD25
- T細胞におけるIL-2サイトカイン放出のさらなる分析を行った。Tregを、CD4+CD127dimCD49d- EasySepキットの陰性選択を用いて単離した。Treg(3000/反応)培養物を、外因性の6 ng/ml(10IU)のIL-2の非存在下でインキュベートし、そして培養上清中の産生されたIL-2の濃度をELISAによって測定した(
図23A、23Bおよび23C)。いくつかの実験においては、Tregを、Teffと共に、例えば1:1比で共インキュベートし、そして培養上清中の産生されたIL-2の濃度を測定した(
図23CおよびD)。
図23Dにおいて、外因性IL-2を細胞培養物(TeffのみおよびTeff + Treg)に添加し、そしてmAb2-3抗体で処置した。
【0247】
実施例19:mAb2-3処置およびT細胞の増殖
CD4+ T細胞の増殖に対するmAb2-3処置の効果を、CFSE染色およびFACS分析によって評価した。5日間にわたるmAb2-3および対照抗体ならびにCD3/28ビーズによる刺激のFACsプロフィールが
図24に示されている。
図25において、CD4+CD25- Teff細胞の4つの亜集団(CD45およびCCR7のステータスによって選別されたT-diff、T naive、TemおよびTcm細胞)を、様々な濃度のmAb2-3、陰性対照抗体およびKM2760(抗CCR4モノクローナル抗体)との3日間のインキュベートの後に別々に測定した。増殖を測定し、統計学的有意性をp値<0.05で決定した。
【0248】
実施例20:mAb2-3はヒトリンパ球の化学誘引を阻害する
mAb2-3処置後のCCL22発現卵巣がん細胞の上清により誘導されるCD4
+CD25
+ T細胞のインビトロ化学走性の効果を試験した。インビトロ化学走性は、mAb2-3によって阻害されたが、対照抗体(Ab20)によっては阻害されなかった。結果を、平均±SDおよびスチューデントt検定で表した(
図26A)。
【0249】
インビボ化学走性の効果を、ルシフェリン化CD4+ T細胞を注射した卵巣がん異種移植マウスモデルを用いて観察した。ルシフェリン化CD4
+ T細胞の注射の48時間後に、インビボ生物発光を測定した(
図26B)。腫瘍組織は、
図26Bのパネルにおいて円で示されているように、対照抗体の存在下で、CD4
+ T細胞の注射後に強い生物発光の蓄積を示した。しかし、発光シグナルの強度は、mAb2-3との共注射により劇的に低下した。関心対象の領域(
図26Bにおいて円で指定されているROI)の分析による腫瘍浸潤CD4
+ T細胞およびTregの生物発光強度の定量を、IVIS画像化システムを用いて行った(
図26C)。
【0250】
実施例21:二重特異性抗体の作製
CCR4およびCAIXを認識する二重特異性抗体を、2つの独立したベクターを用いて作製した。mAb-23ベクターを使用して、完全抗CCR4抗体を生成した。完全抗CAIX抗体(G119)を生成するベクターを使用した。抗CCR4および抗CAIX抗体の重-軽鎖単フラグメント(モノマー)の集団を生成するため、グルタチオン(GSH)を各抗体に添加し、完全抗体のジスルフィド架橋を妨害した。漸増濃度のGSHと共にインキュベートされたサンプルのSDS-PAGEタンパク質電気泳動は、モノマーの量の増加および完全抗体の量の減少を示している(
図27A)。次いで、グルタチオンジスルフィド(GSSG)を含む溶液中で、抗CCR4モノマーを抗CAIXモノマーとコンジュゲートさせた。
図27Bのタンパク質ゲルにより示されるように、GSSGの添加により、抗CCR4および抗CAIXモノマーを含むコンジュゲートが生成された。
【0251】
抗CCR4および抗CAIXの二重特異性抗体の機能を、フローサイトメトリー分析を用いて評価した。SKCRC-52細胞およびMac-1細胞を、完全抗CAIXまたは抗CCR4抗体、対照抗体および二重特異性抗体で染色した(
図27B)。
【0252】
他の態様
本発明はその詳細な説明に関連して説明されているが、上記の説明は例示を意図したものであり、本発明の範囲を限定することは意図されておらず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義されるものである。他の局面、利点および改変も、添付の特許請求の範囲に包含される。
【0253】
参考文献