(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上面に少なくとも2つの領域に分割された導体パターンが配置された第1透光性絶縁体と、前記導体パターンの2つの前記領域とそれぞれ電気的接触をし、前記導体パターンに向かって突出する2つの電極を有する複数の発光素子と、前記第1透光性絶縁体から所定の距離離れて配置された第2透光性絶縁体と、前記第1透光性絶縁体と前記第2透光性絶縁体との間に充填され、熱硬化性を有し、前記発光素子の高さより厚さが小さい透光性絶縁樹脂シートを備え、前記第1透光性絶縁体は前記発光素子が配置されている部分が外側に突出し、前記発光素子間の部分が窪むように湾曲した形状を有している発光モジュールの製造方法であって、
前記第1透光性絶縁体の上面に前記透光性絶縁樹脂シートを配置する第1配置ステップと、
2つの前記電極が前記導体パターンの2つの前記領域にそれぞれ対向するように、前記発光素子を、動的粘度が500poise以上1,000,000poise以下の前記透光性絶縁樹脂シートの上面に仮止めする第2配置ステップと、
前記透光性絶縁樹脂シートと前記発光素子を含む積層体を、前記透光性絶縁樹脂シートの最軟化温度より低く、かつ、前記最軟化温度より50度以上低くない温度で加熱及び加圧し、前記透光性絶縁樹脂シートの動的粘度が50,000poise以下の状態において、2つの前記電極を2つの前記領域の所定箇所にそれぞれ到達させて、前記電極と前記導体パターンを導通させる第1加熱ステップと、
前記積層体を、前記最軟化温度より高く、かつ、前記最軟化温度より50度以上高くない温度まで加熱し、2つの前記電極が2つの前記領域の所定位置に接続した状態で、動的粘度が10,000poise以下となる状態を経て軟化した前記透光性絶縁樹脂シートを、前記発光素子の上面と前記導体パターンとの間の微小空間に充填して硬化させる第2加熱ステップと、
を備えることを特徴とする発光モジュールの製造方法。
前記透光性絶縁樹脂シートは、加熱されることにより最低溶融粘度に到達して硬化した後のビカット軟化温度が80℃以上160℃以下であり、温度が0℃以上100℃以下の範囲における引張貯蔵弾性率が0.01GPa以上1000GPa以下であり、ガラス転移温度が100℃以上160℃以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発光モジュールの製造方法。
前記透光性絶縁樹脂シートは、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂とジアリルフタレート樹脂からなる群から少なくとも一つを選択したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の発光モジュールの製造方法。
前記透光性絶縁樹脂シートは、温度が80℃以上160℃以下の範囲で、硬化前の最低溶融粘度が10Pa・s以上10000Pa・s以下であり、硬化前の最低溶融粘度における前記最軟化温度に到達するまでの溶融粘度変化率が1/1000以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発光モジュールの製造方法。
前記第2加熱ステップでは、前記透光性絶縁樹脂シートの動的粘度が10,000poise以下である状態を経て、前記発光素子の上面から前記導体パターンに向かって突出した前記電極と、前記発光素子の上面と、前記導体パターンとの間の微小空間に軟化した前記透光性絶縁樹脂シートが充填されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発光モジュールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の実施形態に係る発光モジュールについて、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る発光モジュール1の概略構成を示す模式断面図である。
【0012】
図1に示されるように、発光モジュール1は、1組の透明フィルム4,6、透明フィルム4,6の間に形成された樹脂層13、樹脂層13の内部に配置された複数の発光素子22を有している。
【0013】
透明フィルム4,6は、紙面横方向を長手方向とする長方形のフィルムである。透明フィルム4,6は、厚さが50〜300μm程度であり、可視光に対して透過性を有する。透明フィルム4,6の全光線透過率は、90%以上であることが好ましく、さらには95%以上であることがより好ましい。なお、全光線透過率とは、日本工業規格JISK7375:2008に準拠して測定された全光線透過率をいう。また、透明フィルム4,6は、可撓性を有し、その曲げ弾性率は、0〜320kgf/mm2程度(ゼロを含まず)である。なお、曲げ弾性率とは、例えばISO178(JIS K7171:2008)に準拠する方法で測定された値である。
【0014】
透明フィルム4,6の厚さが300μmを上回ると、透明フィルム4,6の可撓性が低下するとともに全光線透過率も低下する。また、透明フィルム4,6の厚さが5μmを下回ると、透明フィルム4,6及び発光素子22を一体化させたときに、透明フィルム4,6が著しく変形することが懸念される。そのため、透明フィルム4,6は、厚さが50〜300μm程度であることが好ましい。
【0015】
透明フィルム4,6の素材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンサクシネート(PES)、環状オレフィン樹脂(例えばJSR社製のアートン(商品名))、アクリル樹脂などを用いることが考えられる。
【0016】
上記1組の透明フィルム4,6のうち、透明フィルム4の下面には、厚さが0.05μm〜2μm程度の複数の導体パターン5が形成されている。
【0017】
導体パターン5には、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の透明導電材料が用いられる。導体パターン5は、例えば、スパッタ法や電子ビーム蒸着法等によって透明フィルム4に形成された薄膜を、レーザ加工やエッチング処理を用いてパターニングすることにより形成することができる。
【0018】
導体パターン5は、例えば平均粒子径が10〜300nmの透明導電材料の微粒子と透明樹脂バインダとの混合物を、透明フィルム4にスクリーン印刷することによっても形成することができる。また、透明フィルム4に、上記混合物からなる薄膜を形成し、この薄膜をレーザ加工やフォトリソグラフィにより、パターニングすることによっても形成することができる。
【0019】
導体パターン5は、透明導電材料からなるものに限らず、金や銀、銅等の不透明導電材料の微粒子を、透明フィルム4に、メッシュ状に付着させたものであってもよい。例えば、透明フィルム4に、ハロゲン化銀のような不透明導電材料の感光性化合物を塗布して薄膜を形成し、この薄膜に露光・現像処理を施してメッシュ状の導体パターン5を形成してもよい。また、不透明導電材料微粒子を含むスラリーをスクリーン印刷等でメッシュ状に塗布することによって導体パターン5を形成してもよい。
【0020】
導体パターン5は、発光モジュール1全体としての全光線透過率(例えばJISK7105)が1%以上となるような透光性を有していることが好ましい。発光モジュール1全体としての全光線透過率が1%未満であると、発光点が輝点として認識されなくなる。導体パターン5自体の透光性は、その構成によっても異なるが、全光線透過率が10〜85%の範囲であることが好ましい。
【0021】
樹脂層13は、透明フィルム4と透明フィルム6の間に形成された絶縁体である。樹脂層13は、熱硬化性樹脂からなり、可視光に対する透過性を有する。樹脂層13は、硬化前の最低溶融粘度、硬化前の最低溶融粘度における温度、硬化前の最低溶融粘度における温度に到達するまでの溶融粘度変化率、硬化後のビカット軟化温度、硬化後の引張貯蔵弾性率、硬化後のガラス転移温度などの特性が所定の条件を満足する樹脂から構成される。
【0022】
本実施形態に係る樹脂層13は、例えば、熱硬化性樹脂としてのエポキシ系樹脂からなる。樹脂層13を構成する熱硬化性樹脂は、例えば、硬化前の最低溶融粘度VC1が80〜160℃の範囲で10〜10000Pa・sの範囲であることが好ましい。また、硬化前の最低溶融粘度VC1における温度T1(最軟化温度)に到達するまでの溶融粘度変化率VRが1/1000以下(千分の一以下)であることが好ましい。さらに、樹脂層13は、加熱されることにより最低溶融粘度に到達した後、すなわち、硬化した後のビカット軟化温度T2が80〜160℃の範囲であり、0℃から100℃の範囲での引張貯蔵弾性率EMが0.01〜1000GPaの範囲であることが好ましい。また、付記すれば、樹脂層13は、100〜160℃のガラス転移温度T3を有することが好ましい。
【0023】
熱硬化性樹脂の好ましい物性値は、例えば、以下のとおりである。
最低溶融粘度VC1:10〜10000Pa・s
最低溶融粘度VC1における温度T1(最軟化温度):80〜160℃
温度T1に到達するまでの溶融粘度変化率VR:1/1000以下
ビカット軟化温度T2:80〜160℃
引張貯蔵弾性率EM:0〜100℃の間で0.01〜1000GPa
ガラス転移温度T3:100〜160℃
【0024】
なお、溶融粘度測定はJIS K7233に記載の方法に従って、測定対象物の温度を50℃〜180℃まで変化させて求めた値である。ビカット軟化温度は、JIS K7206(ISO 306:2004)に記載のA50に従って、試験荷重10N、昇温速度50℃/時間の条件で求めた値である。ガラス転移温度と融解温度は、JIS K7121(ISO 3146)に準拠した方法に従って、示差走査熱量測定により求めた値である。引張貯蔵弾性率は、JlS K7244−1(ISO 6721)に準拠した方法に従って求めた値である。具体的には、−100℃から200℃まで1分間に1℃ずつ等速昇温する測定対象物を、動的粘弾性自動測定器用いて周波数10Hzでサンプリングすることにより得られた値である。
【0025】
樹脂層13は、電極28、29の周囲に隙間なく充填されている。
図1に示されるように、発光素子22の上面に設けられた電極28、29それぞれの面積は、発光素子22の上面(例えば発光面)の面積より小さい。また、電極28、29は、発光素子22の上面から導体パターン5に向かって突出している。このような場合には、発光素子22の上面と導体パターン5との間に微小空間が生じる。樹脂層13は、この微小空間にも充填されることが好ましい。
【0026】
樹脂層13の厚さT2は、導体パターン5と電極28、29とが良好に接触するように、発光素子22の高さT1より小さくなっている。樹脂層13と密着している透明フィルム4は、発光素子22が配置されている部分が外側に突出し、発光素子22同士の間の部分が窪むように湾曲した形状を有している。このように透明フィルム4が湾曲することで、透明フィルム4によって、導体パターン5が電極28、29に押し付けられた状態になっている。したがって、導体パターン5と電極28、29との電気的な接続性やその信頼性を高めることが可能になる。
【0027】
なお、樹脂層13は、熱硬化性を有する樹脂を主成分とする材料からなることが好ましいが、必要に応じて他の樹脂成分等を含んでいてもよい。熱硬化性を有する樹脂としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が知られている。これらのうち、エポキシ系樹脂は、透光性、電気絶縁性、可撓性等に加えて、軟化時の流動性、硬化後の接着性、耐候性等に優れることから、樹脂層13の構成材料として好適である。もちろん、樹脂層13は、エポキシ系樹脂以外の他の樹脂から構成されていてもよい。
【0028】
図2は、発光素子22の斜視図である。発光素子22は、一辺が0.3mm乃至3mmの正方形のLEDチップである。
図2に示されるように、発光素子22は、ベース基板23、N型半導体層24、活性層25、P型半導体層26からなるLEDチップである。発光素子22の定格電圧は約2.5Vである。
【0029】
ベース基板23は、サファイア基板又は半導体基板である。ベース基板23として光学的に透過性を有するものを用いることにより、光は発光素子22の上下両面から放射される。ベース基板23の上面には、当該ベース基板23と同形状のN型半導体層24が形成されている。N型半導体層24は、例えばn−GaNからなる。
【0030】
N型半導体層24の上面には、順に、活性層25、P型半導体層26が積層されている。活性層25は、例えばInGaNからなる。また、P型半導体層は、例えばp−GaNからなる。なお、発光素子22は、ダブルヘテロ(DH)構造、あるいは多重量子井戸(MQW)構造を有するものであってもよい。
【0031】
N型半導体層24に積層される活性層25、及びP型半導体層26のコーナー部分には切欠きが形成され、この切欠きからN型半導体層24の表面が露出している。N型半導体層24の、活性層25とP型半導体層26から露出する部分には、N型半導体層24と電気的に接続される電極29(電極パッド)が形成されている。また、P型半導体層26のコーナー部分には、P型半導体層26と電気的に接続される電極28(電極パッド)が形成されている。
【0032】
電極28,29は、銅(Cu)、或いは金(Au)からなり、上面に導電性のバンプ30が形成されたパッド電極である。バンプ30は、金(Au)や金合金などの金属からなる金属バンプである。バンプ30として、金属バンプのかわりに、半田バンプを用いてもよい。
【0033】
バンプを含まない発光素子22の厚さは、約100μmであり、バンプ30の高さは、約60μmである。
【0034】
発光素子22は、隣接する発光素子22相互間の距離がdとなるように等間隔に配置されている。距離dは、1500μm以下である。発光モジュール1が備える発光素子22の数は、発光モジュール1の仕様、例えば、外形寸法、発光面積などに応じて、適宜、決定することができる。
【0035】
図3は、発光モジュール1の一部を拡大して示す断面図である。
図3に示されるように、発光素子22の電極28,29は、バンプ30を介して、導体パターン5と電気的に接続されている。
【0036】
バンプ30は、金、AuSn合金、銀、銅、ニッケル、またそれ以外の金属との合金、混合物、共晶、アモルファス材料などからなる。バンプ30は、ハンダや共晶ハンダ、金属微粒子と樹脂の混合物、異方性導電膜などから構成されていてもよい。バンプ30は、例えばワイヤボンダを用いてワイヤバンプとして形成することができる。また、バンプ30は、例えば、電極28,29に電解メッキ、無電解メッキを施すことにより形成することもできる。また、金属微粒子を含むインクを、電極28,29へインクジェット印刷して焼成することによってもバンプ30を形成することができる。更には、金属微粒子を含むペーストを、電極28,29に印刷や塗布することによりバンプ30を形成してもよく、ボールマウント、ペレットマウント、蒸着スパッタなどの技術を用いて、電極28,29にバンプ30を形成してもよい。
【0037】
バンプ30の融点は、180℃以上であることが好ましい。また、バンプ30の融点は、200℃以上であることがより好ましい。上限は、実用的な範囲として1100℃以下である。バンプ30の融点が180℃未満であると、発光モジュール1の製造工程における真空熱プレス工程で、バンプ30が大きく変形して充分な厚さを維持出来なくなる。また、バンプ30が、電極28,29からはみ出してしまうことも考えられる。この場合には、電極28,29からはみ出したバンプ30によって、発光素子22からの光が妨げられてしまう。
【0038】
バンプ30の融点は、例えば、島津製作所製DSC−60示差走査熱量計を用いて計測することができる。融点の計測は、例えば約10mgの試料を毎分5℃ずつ昇温させながら行う。固相線温度と液相線温度が異なる場合は固相線温度の値をバンプ30の融点とすることが考えられる。
【0039】
バンプ30のダイナミック硬さDHVは3以上150以下であり、好ましくは5以上100以下である。また、より好ましくは5以上50以下である。バンプ30のダイナミック硬さDHVが3未満であると、発光モジュールの製造工程における真空熱プレス工程で、バンプ30が大きく変形して充分な厚さを維持できなくなる。また、バンプ30が、電極28,29からはみ出してしまうことも考えられる。この場合には、電極28,29からはみ出したバンプ30によって、発光素子22からの光が妨げられてしまう。一方、バンプ30のダイナミック硬さDHVが150を超えると、発光モジュールの製造工程における真空熱プレス工程で、バンプ30が透明フィルム4を変形させてしまうことが考えられる。この場合には、発光モジュール1の外観不良や、発光素子22と導体パターン5との間で接続不良が生じる。
【0040】
バンプ30のダイナミック硬さDHVは、例えば、島津製作所製の島津ダイナミック超微硬度計DUH−W201Sを用いた試験により求めることができる。この試験では、気温20℃の環境下で、対面角136°のダイヤモンド正四角錐圧子(ビッカース圧子)を負荷速度0.0948mN/秒でバンプ30へ押し込む。そして、ビッカース圧子の押し込み深さ(D/μm)が0.5μmに達した時の試験力(P/mN)を次式へ代入する。
DHV=3.8584P/D2=15.4336P
【0041】
バンプ30の高さは、5μm以上80μm以下であることが好ましい。また、バンプ30の高さは、10μm以上60μm以下であることがより好ましい。バンプ30の高さが5μm未満だと、導体パターン5と発光素子22のP型半導体層26もしくは導体パターン5とN型半導体層24との短絡を防ぐ効果が弱くなる。一方、80μmを超えてしまうと、発光モジュールの製造工程における真空熱プレス工程で、バンプ30が透明フィルム4を変形させてしまうことが考えられる。この場合には、発光モジュール1の外観不良や、発光素子22と導体パターン5との間で接続不良が生じる。
【0042】
発光素子22の電極28,29とバンプ30の接触面積は、100μm
2以上15,000μm
2以下であることが好ましい。また、発光素子22の電極28,29とバンプ30の接触面積は、400μm
2以上8,000μm
2以下であることがより好ましい。これらの各寸法は、室温と被測定物の温度が20℃±2℃となる安定した環境下で計測した値である。
【0043】
図4は、導体パターン5と発光素子22との接続例を示している。発光素子22の電極28,29が、相互に隣接する導体パターン5にそれぞれ接続される。
【0044】
1組の透明フィルム4,6、樹脂層13、複数の発光素子22は、真空熱プレスにより一体化される。このため、バンプ30の少なくとも一部は融解していない状態で発光素子22の電極28,29に電気的に接続される。したがって、電極28,29の上面とバンプ30の接触角は、例えば、135度以下となる。
【0045】
発光素子22は、電極28、29を介して印加される直流電圧により点灯する。例えば、発光モジュール1が7個の発光素子22を2列に並べて構成される場合、発光モジュール1の導体パターン5は、7直列2並列回路を構成する。直列接続された発光素子22では、流れる電流は全ての発光素子22で同じ大きさになる。
【0046】
上述のように構成される発光モジュール1の発光素子22は、バンプ30を有している。このため、発光素子22を埋設したフレキシブルな発光モジュール1が、電極28、29側が凸になるように屈曲されても、バンプ30によって十分な高さが確保できるので、導体パターン5と発光素子22との間の短絡を防止することができる。
【0047】
<製造方法>
次に、実施形態に係る発光モジュール1の製造方法について説明する。
【0048】
まず、電極28と電極29(アノード電極とカソード電極もしくはカソード電極とアノード電極)を形成した発光素子22を用意する。
【0049】
次に、発光素子22の電極28,29の双方にバンプ30を形成する。これにより、
図2に示される電極28,29にバンプ30が形成された発光素子22が完成する。バンプ30の形成方法は、ワイヤバンプ加工機を使ってAuワイヤもしくはAu合金ワイヤから金もしくは金合金バンプを作る方法を採用することができる。用いるワイヤ径は、15μm以上で75μm以下であることが好ましい。
【0050】
本実施形態では、ワイヤボンディング装置を用いる。ワイヤ先端の放電によって、ワイヤを溶融させてボールを形成した後、超音波によりボールと電極28,29とを接続する。そして、電極28,29にボールが接続された状態で、ボールからワイヤを切り離す。これにより、
図5に示されるように、電極28,29の上面に、上端部に突起が残るバンプ30が形成される。
【0051】
<丸め処理>
バンプ30の上端部に残った微小な突起はそのまま残してもよいが、所望によりバンプ30の上面を押圧してバンプ30の丸め処理を行ってもよい。
【0052】
一例として
図5に示されるように、バンプ30の上部には、ワイヤを切り取るときに生じた突起部が残っている。この突起部は、テールと称される。バンプ30の形状は、電極28,29に接している面の直径をA、バンプ30の高さをBとした場合、B/A=0.2〜0.7を満たしていることが望ましい。そこで、バンプ30の形状が、係る数値範囲からはずれるような場合には、丸め処理を施す。
【0053】
図6A乃至
図6Cは、プレス板500を使用した丸め処理を説明するための図である。バンプ30を形成した後、バンプボンディング装置(不図示)に発光素子22を配置する。そして、
図6Aに示されるように、バンプボンディング装置に設けられたプレス板500を、その下面が電極28,29と平行になった状態で、バンプ30の上方に位置決めする。
【0054】
次に、プレス板500を下降させて、
図6Bに示されるように、バンプ30の上部へ押し付ける。このとき、プレス板500は、バンプの高さが所望の高さBになるまで下降させる。バンプ30のテールは、プレス板500によって押しつぶされる。これにより、
図6Cに示されるように、バンプ30の上部に突起のない連続面が形成される。この連続面は、バンプ30の上端部で平坦になる。
【0055】
上記丸め処理は、樹脂シートを介してバンプ30をプレスしてもよい。その場合には、プレス板500の下面に、例えば、PET、フッ素樹脂、TPX、オレフィン等を素材とする樹脂シート501を装着する。そして、
図7Aに示されるように、樹脂シート501が配置されたプレス板500を、その下面が電極28,29と平行になった状態で、バンプ30の上方に位置決めする。
【0056】
次に、プレス板500を下降させて、
図7Bに示されるように、樹脂シート501をバンプ30の上部へ押し付ける。このとき、プレス板500は、バンプの高さが所望の高さBになるまで下降させる。バンプ30のテールは、樹脂シート501によって押しつぶされる。これにより、
図7Cに示されるように、バンプ30の上部に突起のない連続面が形成される。樹脂シート501を用いた丸め処理によってバンプ30に形成された連続面は、バンプ30の上端部でも上に凸の曲面となる。
【0057】
樹脂シート501を用いた丸め処理では、例えば、
図8Aに示されるように、発光素子22の上方に、樹脂シート501が装着されたプレス板500を配置するとともに、発光素子22の下方に、樹脂シート503が装着されたプレス板502を配置する。これらの樹脂シート501,503としては、その厚さが、発光素子22の厚さと、バンプ30の高さBを加えた値より大きいものを用いる。
【0058】
そして、プレス板500を下降させるとともに、プレス板502を上昇させて、発光素子22を挟み込んでプレスする。これにより、
図8Bに示されるように、発光素子22は、樹脂シート501,503の内部に埋め込まれた状態になる。このとき、発光素子22のバンプ30は、丸め処理が施され、テールが押しつぶされた状態になっている。プレス時のプレス板500,502の移動量は、目標とするバンプ30の高さに応じて決定する。
【0059】
次に、発光素子22のプレスを終了し、樹脂シート501,503を発光素子22から除去する。これにより、連続した曲面からなる連続面が形成されたバンプ30をもつ発光素子22が得られる。なお、樹脂シート503を使用することなく、発光素子22を直接プレス板502に載置して、プレスを行ってもよい。
【0060】
上述のように発光素子22の上面にバンプ30が形成される。これに限らず、バンプ30は、ワイヤボンダを用いてワイヤバンプとして形成する他に、例えば、電極28,29に電解メッキ、無電解メッキを施すことにより形成することもできる。また、金属微粒子を含むインクを、電極28,29へインクジェット印刷して焼成することによってもバンプ30を形成することができる。更には、金属微粒子を含むペーストを、電極28,29に印刷や塗布することによりバンプ30を形成してもよく、ボールマウント、ペレットマウント、蒸着スパッタなどの技術を用いて、電極28,29にバンプ30を形成してもよい。また、バンプ30には、金や銀や銅やニッケルなどの金属、金スズ合金などの合金や共晶やアモルファス、ハンダなどを用いることができる。
【0061】
発光素子22にバンプ30を形成したら、上面に導体パターン5が形成された透明フィルム4を用意する。そして、
図9Aに示されるように、透明フィルム4の上面に、透光性を有する樹脂シート130を配置する。樹脂シート130は、透明フィルム4に、接着剤によって仮付されてもよい。
【0062】
樹脂シート130は、熱硬化性及び可視光に対する透過性を有する樹脂を主成分とする。樹脂シート130としては、例えばエポキシ系樹脂からなるシートが用いられる。この樹脂シート130は、透明フィルム4の形状とほぼ同じ形状に整形されている。
【0063】
樹脂シート130は、硬化する前の最低溶融粘度が10〜10000Pa・sの範囲にあり、樹脂シート130の粘度が最低溶融粘度になるときの温度Mpが、80〜160℃の範囲にあることが好ましい。樹脂シート130が室温から温度Mpに至るまで昇温されたときに、樹脂シート130の溶融粘度変化率が1/1000以下であることが好ましい。樹脂シート130は、加熱されることにより最低溶融粘度に到達して硬化した後のビカット軟化温度が80〜160℃の範囲であることが好ましい。樹脂シート130は、温度が0℃〜100℃の範囲での引張貯蔵弾性率が0.01〜1000GPaの範囲であることが好ましい。樹脂シート130は、ガラス転移温度が100〜160℃であることが好ましい。
【0064】
樹脂シート130は、発光素子22を配置することにより生じる透明フィルム4,6の間の空間を十分に埋めることが可能な厚さを有していればよい。樹脂シート130の厚さ(T)を発光素子22の高さ(H)より薄くする場合には、これらの差(H−T)に基づいて樹脂シート130の厚さを決めればよい。
【0065】
次に、
図9Bに示されるように、樹脂シート130の上面に発光素子22を配置する。発光素子22は、電極28,29が形成された面が、透明フィルム4に対向するように配置される。また、発光素子22は、電極28,29が、対応する導体パターン5の上方に位置するように位置決めされる。
【0066】
次に、
図9Cに示されるように、発光素子22の上方に透明フィルム6を配置する。
【0067】
次に、透明フィルム4,6、樹脂シート130、発光素子22からなる積層体を、真空雰囲気中で加熱しながら加圧する。
【0068】
真空雰囲気中における積層体の加熱・加圧工程(真空熱圧着工程)は、2段階の工程で行うのがよい。
【0069】
第1の工程では、樹脂シート130を温度T1(℃)になるまで加熱しながら加圧する。温度T1は、樹脂シート130の粘度が最低溶融粘度になるときの温度(最軟化温度)をMp(℃)とすると、以下の、条件式(1)を満たす温度である。なお、温度T1は、条件式(2)を満たすことが好ましい。
【0070】
Mp−50℃≦T1<Mp…(1)
Mp−30℃≦T1<Mp…(2)
また、Mp−10℃≦T1<Mpとしてもよい。
【0071】
第2の工程では、樹脂シート130を温度T2(℃)になるまで加熱しながら加圧する。温度T2は、以下の、条件式(3)を満たす温度である。なお、温度T2は、条件式(4)を満たすことが好ましい。
【0072】
Mp≦T2<Mp+50℃…(3)
Mp+10℃≦T2<Mp+30℃…(4)
【0073】
このような加熱条件を適用することによって、樹脂シート130を適度に軟化させた状態で積層体を加圧することができる。また、樹脂シート130を介して、導体パターン5上に配置された発光素子22の電極28、29を、導体パターン5の所定の位置に接続しつつ、透明フィルム4と透明フィルム6の間に、軟化した樹脂シート130を充填して樹脂層13を形成することができる。
【0074】
第1の工程での温度T1が、条件式(1)に示される下限値Mp−50℃未満であると、樹脂シート130の軟化が不十分となる。その結果、発光素子22に対する樹脂シート130の密着性が低下し、導体パターン5と、発光素子22の電極28、29との接続が不十分となるおそれがある。
【0075】
一方、第1の工程での温度T1が、条件式(1)の上限値Mp以上であると、樹脂シート130が硬化してしまう。その結果、発光素子22に対する樹脂シート130の密着性が低下し、導体パターン5と、発光素子22の電極28、29との接続が不十分となるおそれがある。
【0076】
第2の工程での温度T2が、条件式(3)に示される下限値Mp未満であると、樹脂シート130の硬化が不十分となる。その結果、発光素子22に対する樹脂シート130の密着性が低下するおそれがある。
【0077】
一方、第2の工程での温度T2が、条件式(3)に示される上限値Mp+50以上であると、透明フィルム4,6が軟化し、積層体全体が変形するおそれがある。
【0078】
<熱圧着工程>
積層体の真空雰囲気中での熱圧着工程は、以下のようにして実施することが好ましい。上述した積層体を予備加圧して各構成部材間を密着させる。次いで、予備加圧された積層体が配置された作業空間を、真空度が5kPaになるまで真空引きした後、積層体を上述したような温度に加熱しながら加圧する。このように、予備加圧された積層体を真空雰囲気中で熱圧着することによって、
図9Dに示されるように、透明フィルム4と透明フィルム6との間の空間に軟化した樹脂シート130を隙間なく充填することができる。
【0079】
熱圧着時の真空雰囲気は5kPa以下とすることが好ましい。積層体を予備加圧するための予備加圧工程を省くことも可能であるが、この場合には積層体に位置ずれ等が生じやすくなる。このため、予備加圧工程を実施することが好ましい。
【0080】
積層体の熱圧着工程を大気雰囲気下や低真空下で実施すると、熱圧着後の発光モジュール1内、とりわけ発光素子22の周囲に気泡が残存しやすい。発光モジュール1内に残留する気泡内部の空気は加圧されている。このため、熱圧着後の発光モジュール1の膨れや、発光素子22と透明フィルム4,6との剥離の発生原因となる。さらに、発光モジュール1の内部、とりわけ発光素子22の近傍に気泡や膨れが存在していると、光が不均一に散乱し、発光モジュール1の外観上の問題となる。
【0081】
以上のようにして、導体パターン5と発光素子22の電極28,29との間に樹脂シート130を介在させた状態で、真空熱圧着工程を実施することによって、電極28,29と導体パターン5とを電気的に接続しつつ、発光素子22の周囲に樹脂層13を形成することができる。さらに、発光素子22の上面と導体パターン5との間の空間に、樹脂層13の一部を良好に充填することができる。
【0082】
積層体に上記熱圧着工程を施すことにより、
図1に示される発光モジュール1が完成する。本実施形態に係る製造方法によれば、導体パターン5と発光素子22の電極28,29との電気的な接続性やその信頼性を高めた発光モジュール1を再現性よく製造することができる。なお、
図9A〜
図9Dでは発光素子22を下向きにして組み立てているが、上向きにして製造工程を進めても良い。
【0083】
本実施形態では、1枚の樹脂シート130を用いて樹脂層13を形成する場合について説明したが、樹脂層13を複数(例えば2つ)の樹脂層から構成してもよい。
【0084】
具体的には、
図10Aに示されるように、透明フィルム4の上面に、導体パターン5を覆うように、熱硬化性を有する樹脂シート131を配置する。この樹脂シート131は、樹脂シート130と同等の素材からなる。また、樹脂シート131の厚さは、発光素子22のバンプ30の高さと、電極28,29の高さを加えた程度の大きさである。
【0085】
次に、
図10Bに示されるように、樹脂シート131の上面に複数の発光素子22を配置する。発光素子22は、電極28,29が樹脂シート131に対向するように配置される。
【0086】
次に、
図10Cに示されるように、発光素子22上に、熱硬化性を有する樹脂シート132と、透明フィルム6を配置する。この樹脂シート132も、樹脂シート130と同等の素材からなる。
【0087】
次に、
図10Dに示されるように、透明フィルム4,6と、樹脂シート131,132と、発光素子22とからなる積層体を、真空雰囲気中で加熱しながら加圧する。以上の工程により発光モジュール1を製造することができる。この発光モジュール1では、樹脂シート131からなる第1の樹脂層と、樹脂シート132からなる第2の樹脂層によって、樹脂層13が形成される。
【0088】
また、その際、透明フィルム6を仮の基体とし、全体を加圧して発光素子22の電極28,29と導体パターン5とを電気的に接続した後、透明フィルム6及び樹脂シート132を剥し、あらためて剥したのと同じ厚みを持つ樹脂シートと最終的な透明フィルムを張り付けて発光モジュール1を製造してもよい。
【0089】
具体的には、
図10Dに示されるように一体化された透明フィルム4,6と、樹脂シート131,132と、発光素子22と、からなる積層体から、透明フィルム6と樹脂シート132を除去する。そして、あらためて、除去した透明フィルム6と樹脂シート132を、樹脂シート131の表面に貼り付けることとしてもよい。
【0090】
樹脂層13を構成する前記樹脂シートとしては、熱可塑性樹脂を用いることもできる。熱可塑性樹脂としては、例えば熱可塑性エラストマーを用いることができる。エラストマーは、高分子材料の弾性体である。エラストマーとしては、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー等が知られている。
【0091】
上記熱可塑性樹脂は、例えば、ビカット軟化温度が80〜160℃の範囲で、且つ0℃から100℃の間の引張貯蔵弾性率が0.01〜10GPaの範囲であることが好ましい。熱可塑性樹脂は、ビカット軟化温度で溶融しておらず、ビカット軟化温度における引張貯蔵弾性率が0.1MPa以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂は、180℃以上の融解温度、もしくはビカット軟化温度より40℃以上高い融解温度を有することが好ましい。熱可塑性樹脂は、樹脂層13は−20℃以下のガラス転移温度を有することが好ましい。
【0092】
熱硬化性樹脂シートと熱可塑性樹脂シートで樹脂層13を構成する場合には、まず、熱硬化性樹脂シートと熱可塑性樹脂シートで発光素子22を挟む。そして、透明フィルム4,6で、熱硬化性樹脂シート,熱可塑性樹脂シート及び発光素子22を挟んで、
図10Dに示されるような積層体を形成する。そして、この積層体を、加圧及び加熱する。これにより、導体パターン5と発光素子22との電気的接続、熱硬化性樹脂シートの熱硬化、発光素子22の上面と透明フィルム4との間の空間への熱可塑性樹脂シートの充填を行うことが出来る。
【0093】
導体パターン5と発光素子22との電気的接続、熱硬化性樹脂シートの熱硬化、熱可塑性樹脂シートの充填は、それぞれに固有の加圧・加熱工程により行ってもよい。その際、導体パターン5と発光素子22との電気的接続、熱硬化性樹脂シートの熱硬化の一方と、熱可塑性樹脂の凹凸への充填の熱工程とを兼ねることもできる。
【0094】
あるいは、加圧・加熱工程によって、熱硬化性樹脂による導体パターン5と発光素子22との電気的接続と、熱硬化性樹脂の熱硬化とをそれぞれの最適な温度で行った後、熱可塑性樹脂を重ねる。そして、その熱可塑性樹脂を加圧・加熱して、熱硬化性樹脂と発光素子22からなる凹凸に、熱可塑性樹脂を充填することもできる。
【0095】
真空雰囲気中における加熱・加圧工程(真空熱圧着工程)を熱可塑性樹脂に対して行う場合、例えば、熱可塑性樹脂のビカット軟化温度Mp(℃)に対し、Mp−10(℃)≦T≦Mp+30(℃)の範囲の温度Tになるように熱可塑性樹脂を加熱した状態で、積層体を加圧するようにしてもよい。また、温度Tは、Mp−10(℃)≦T≦Mp+10(℃)の範囲であっても構わない。熱硬化性樹脂による導体パターン5と発光素子22との電気的接続、熱硬化性樹脂の熱硬化の一方と、熱硬化性樹脂の加熱と同時行っても、個別に行ってもよいことは上述の通りである。
【0096】
本実施形態は、次の形態も含んでいる。
1)[熱硬化性を有する樹脂シートが単層である場合]
出発材料が、透明フィルム4/導体パターン5/熱硬化性樹脂からなる樹脂シート130/発光素子22/透明フィルム6であり、以下の工程により形成される発光モジュール。透明フィルム4,導体パターン5,樹脂シート130,発光素子22からなる積層体に、第1の加圧・加熱工程を行って、発光素子22を樹脂シート130への埋め込むとともに、発光素子22と導体パターン5との接続を行う。次に、積層体に第2の加圧・加熱工程を行って、樹脂シート130の熱硬化を行う。
【0097】
2)[熱硬化性を有する樹脂シートが2層の場合]
出発材料が、透明フィルム4/導体パターン5/熱硬化性樹脂からなる樹脂シート131/発光素子22であり、以下の工程により形成される発光モジュール。透明フィルム4,導体パターン5,樹脂シート131,発光素子22からなる積層体に、第1の加圧・加熱工程を行って、樹脂シート131を貫通させたバンプ30により、発光素子22と導体パターン5とを電気的に接続する。次に、積層体に、第2の加圧・加熱工程を行って、樹脂シート131の熱硬化を行う。次に、積層体に、熱硬化性樹脂からなる樹脂シート132、透明フィルム6を順次積層する。次に、積層体に、第3の加圧・加熱工程を行って、熱硬化性樹脂からなる樹脂シート132を下地凹凸へ充填する。次に、積層体に、第4の加圧・加熱工程を行って樹脂シート132を硬化させる。
【0098】
3)[熱硬化性樹脂シートと熱可塑性樹脂シートとを用いる場合(積層膜)]
出発材料が、透明フィルム4/導体パターン5/熱硬化性樹脂からなる樹脂シート131/発光素子22であり、以下の工程により形成される発光モジュール。透明フィルム4,導体パターン5,樹脂シート131,発光素子22からなる積層体に、第1の加圧・加熱工程を行って、樹脂シート131を貫通させたバンプ30により、発光素子22と導体パターン5とを電気的に接続する。次に、積層体に、第2の加圧・加熱工程を行って、樹脂シート131の熱硬化を行う。次に、積層体に、熱可塑性樹脂からなる樹脂シート132、透明フィルム6を順次積層する。次に、積層体に、第3の加圧・加熱工程を行って、熱可塑性樹脂からなる樹脂シート132を下地凹凸へ充填する。
【0099】
また所望により、次の構成を取ることもできる。
例えば、出発材料が、透明フィルム4/導体パターン5/熱可塑性樹脂からなる樹脂シート131/発光素子22であり、以下の工程により形成される発光モジュール。透明フィルム4,導体パターン5,熱可塑性を有する樹脂シート131,発光素子22からなる積層体に、第1の加圧・加熱工程を行って、熱可塑性を有する樹脂シート131を貫通させたバンプ30により、発光素子22と導体パターン5とを電気的に接続する。次に、積層体に、熱硬化性樹脂からなる樹脂シート132、透明フィルム6を順次積層する。次に、積層体に、第2の加圧・加熱工程を行って、熱硬化性樹脂からなる樹脂シート132を下地凹凸へ充填する。所望により、積層体に、第3の加圧・加熱工程を行って、熱硬化性樹脂からなる樹脂シート132の熱硬化を行う。
【0100】
なお、上述した実施形態では、発光素子22として、
図2に示されるように片面に2つの電極を有するものを用いた。しかしながら、所望により、発光素子の上面と下面に1つずつ電極を有する発光素子(両面電極発光素子)を用いることができる。また、発光モジュール1は、片面に2つの電極を有する発光素子22と両面電極発光素子の双方を含んでいてもよい。両面電極発光素子を用いる場合には、透明フィルム4,6の双方に導電パターンが設けられる。両面電極発光素子では、バンプは発光素子の発光面側の電極に設けられる。
【0101】
上述した実施形態では、
図2に示されるように、片面に2つの電極を有する発光素子22の電極28,29(パッド電極)の厚みが異なる場合について説明した。これに限らず、例えば、電極28,29の厚みを同じにして、両者間でバンプ30の径を変えることによりバンプ30の表面高さを揃えることもできる。
【0102】
電極28,29それぞれの厚み、及びバンプ30の径が等しい場合には、電極29のバンプ30の頂上の方が、電極28のバンプ30の頂上よりも低くなる。この場合には、加圧・加熱時の圧縮によって、低い側のバンプ30が導体パターン5に到達するまで発光素子22を押し込むようにすれば、バンプ30と導体パターン5との接続を図ることができる。当該処理は、熱硬化性樹脂シートによりバンプ30と導体パターン5との接続を図る場合、熱可塑性樹脂シートを用いてバンプ30と導体パターン5との接続を行う場合の双方で行うことが可能である。
【0103】
上記実施形態では、例えば
図9C又は
図10Cに示されるように、透明フィルム4,6、樹脂シート130,131,132、発光素子22からなる積層体を一体的に加圧することにより、発光素子22のバンプ30と透明フィルム4の導体パターン5とが電気的に接続される場合について説明した。発光モジュール1の製造工程は、種々の変更が可能である。
【0104】
図11は熱硬化前の樹脂シートの動的粘度(η*)を示している。熱硬化前の熱硬化性樹脂シートの粘弾性曲線をL、熱硬化性樹脂シートの最低溶融粘度における温度、即ち最軟化温度(硬化温度)をMpで示す。
【0105】
最軟化温度Mpの取り得る値は、80〜160℃或いは80〜150℃である。上限は、例えばPETフィルムの軟化温度が最大180℃であることによる。最軟化温度Mpのより好ましい範囲は100〜130℃であり、樹脂特性(最低溶融粘度、密着性等)を調整しやすいことによる。
図11において、T1は、導体パターンが形成された透明フィルム上に、熱硬化性樹脂シートを介して片面2電極のLEDチップを搭載して熱プレスする際の加熱・加圧温度である。T2は、発光素子22と導体パターンの導通後、昇温して熱硬化性樹脂を熱硬化させる際の熱硬化処理温度である。
【0106】
図11において、A〜Eの各点は以下を示している。
【0107】
[A点]:LEDの配置ができる上限点(仮止め粘度、又は仮止め(tack)上限粘度)・・LEDを規定の位置(導体パターンの接続パッドの位置)へ配置(マウント)したのち、その後の工程に移る際、樹脂の粘性が高すぎ(即ち、樹脂が固すぎて)タック性が低いため、配置した発光素子(LED)が、外れる、又は、ずれてしまわない上限点。即ち、チップマウント上限粘度である。
[C点]:LEDを埋め込むことができる上限点(封止粘度、又は封止上限粘度)・・LEDを埋め込む真空熱圧着プロセスにおいて、十分にLED周辺に樹脂が充填される上限点。即ち、充填制御上限粘度である。
[D点]:フローコントロールのできる下限点(流動化阻止粘度、又は流動化阻止下限粘度)・・LEDを埋め込む真空熱圧着プロセスにおいて、樹脂の粘度が低いと、硬化温度まで上昇させる際、圧力によりフローが発生し、樹脂が流動化して発光素子(LED)の位置がずれてしまったり、極端な場合は、液状化してフィルム外形端より必要な樹脂が流れ出してしまう(デバイス構造で必要な樹脂厚さを確保できない)。即ち、フロー制御の下限粘度である。
[E点]:LEDの導通ができる上限点(加圧接続上限粘度)・・熱プレス時に、LEDのバンプが導体パターンに到達し、LEDと導体パターンとの導通の取れる上限粘度。一般には、熱プレス接続上限粘度である。
[B点]:上記A、C、D、Eの限定をカバーする下限粘度。・・即ち、D点と同じ粘度。
【0108】
図11において、A、Bは室温Tr、即ち常温(25℃)上に位置し、C、Dは最軟化温度Mp上に位置する。また、E点は、樹脂を貫通してLEDのバンプと導体パターンの導通を図る熱プレス温度T1上に位置する。
【0109】
図11において、本発明者の知見によりCとDはプロセス上のゲートを構成している。即ち、温度T1で熱プレスした後、温度T2で熱硬化する際、最軟化温度Mpでは加圧をしない場合、加圧を続ける場合、加圧レベルを下げて加圧を続ける場合、など種々の方法がある。従って、プロセス設計としては、加圧下でもD点で樹脂が流動化しないことが必要である。
【0110】
また、温度T1からT2に移行する際、最軟化温度Mpでも樹脂がある程度柔らかいことが要求される。従って、樹脂の粘弾性特性としては、最軟化温度において、C〜Dの範囲に収まっている必要がある。
【0111】
また、樹脂の粘弾性特性としては、室温Trにおいて、A〜Bの範囲に収まっていることが要求され、熱プレス温度T1においては、E以下であることが要求される。即ち、樹脂の粘弾性特性曲線は、プロセス設計上、ABCD又は、ABCDEを直線で結んだ領域(即ち、A−B−D−C−A又は、A−B−D−C−E−A)に収まることが好ましい。なお、LEDの導通のための熱プレスは、原理的に、温度T1において、E以下、B、D以上の粘度で行えばよい。
【0112】
実際の値としては、各点の動的粘度は、
A:1,000,000poise・・(V1)
C:10,000poise・・(V2)
D:500poise・・(V3)
E:50,000poise・・(V4)
B:500poise
である。
【0113】
また、上記により、C〜Dの範囲は、500〜10,000poiseとなるが、C〜Dの範囲は、より好ましくは、よりフローコントロールがしやすく、低圧力により埋め込みができる、2,000〜5,000poiseが良い。
【0114】
なお、封止粘度が要求されない場合は、熱硬化性樹脂の最軟化温度におけるゲートは、E点と同じ粘度を持つ、最軟化温度Mp上のF点によってA〜Fとなり、ABFD又は、ABEFDによって領域が規定される。
【0115】
図12A乃至
図12Dに、測定に用いた発光モジュール1の製造工程の一例を示す。しかしながら、以下の測定は、LEDを2枚の熱硬化樹脂シートに挟んで熱プレスするものや、厚い熱硬化樹脂シートにLEDを埋め込むもの、また、LEDの厚さ以下の熱硬化樹脂シートでLEDを導通させ、残りは熱可塑性樹脂シートで埋め込むもの等、ここまで述べてきた種々の実施形態に共通するものである。以下、
図12A乃至
図12Dの製造工程を例に説明する。
【0116】
まず、
図12Aに示されるように、透明フィルム4に重ねられた、厚さ約60μmの樹脂シート131(熱硬化性樹脂シート)の上面に、発光素子22を配置する。次に、発光素子22の上に透明フィルムを配置する前に、まず、発光素子22を、導体パターン5に対して、例えば真空度5kPaで、真空熱圧着(熱プレス)する。これにより、
図12Bに示されるように、発光素子22のバンプ30が樹脂シート131を貫通して導体パターン5に到達し、バンプ30が導体パターン5に電気的に接続される。
【0117】
例えば樹脂シートの最低溶融粘度が3000poiseであり、樹脂シートが硬化する温度Mpが130℃である場合には、上記熱圧着では、樹脂シートを約100℃に加熱するとともに、0.2Mpaの圧力を発光素子22(LED)に作用させる。
【0118】
次に、
図12Cに示されるように、発光素子22の上に、熱硬化性を有し、厚さ約60μmの樹脂シート132と、透明フィルム6を配置する。そして、
図12Dに示されるように、透明フィルム4,6と、樹脂シート131,132と、発光素子22とからなる積層体を、真空雰囲気中で加熱しながら加圧する。
【0119】
例えば樹脂シートの最低溶融粘度が3000poiseであり、樹脂シートが硬化する温度Mpが130℃である場合には、上記熱圧着では、積層体を約140℃に加熱するとともに、積層体に0.2Mpaの圧力を作用させる。
【0120】
以上の工程により、発光モジュール1を製造することができる。
【0121】
図13は、熱硬化性を有する樹脂シート130〜132の初期状態、即ち熱硬化前の動的粘度を示す図である。
図13のグラフの横軸は温度(℃)を示し、縦軸は動的粘度(poise)を示す。
図13の各曲線L1〜L5は、樹脂シートの熱硬化前の粘弾性特性を示す。動的粘度は、動的粘弾性測定により得られるものである。動的粘弾性測定とは、樹脂シートに対して一定の周期的な正弦波歪を与えたときの、当該樹脂シートの応力を示すものである。一般に、動的粘度が大きくなるほど固く、動的粘度が小さくなるほど柔軟になる。
【0122】
樹脂シートは、例えば
図12Aに示されるように、発光素子22が載置されるときにもある程度柔らかいものが好ましい。具体的には、例えばマウンタなどの装置を用いて、発光素子22を樹脂シートに載置した際に、発光素子22のバンプ30が樹脂シートに若干めり込む程度に、当該樹脂シートが柔らかいことが好ましい。樹脂シートがある程度柔軟であると、マウンタによって搭載された発光素子22が、樹脂シートに仮止めされた状態になる。これにより、発光素子22が搭載された透明フィルム4を移動させたり、透明フィルム4に透明フィルム6を重ねる際にも、発光素子22が樹脂シートに対してずれることがなく、発光素子22が精度よく位置決めされた状態になる。
【0123】
一般に、マウンタなどによる発光素子22の実装は室内温度の下に行われるので、例えば樹脂シートが25℃のときには、樹脂シートの動的粘度が、点Aを通る破線より下の1.0E×06poise以下であることが好ましい。
【0124】
透明フィルム、樹脂シート、発光素子などからなる積層体の熱圧着は、樹脂シートが最低溶融粘度になる温度より低い温度、すなわち、樹脂シートが硬化を始めるときの温度Mpよりも低い温度で行われる。そして、熱圧着がなされた積層体は、所望により、樹脂シートが硬化するときの温度Mpになるまで加圧された状態が維持される。このため、動的粘度が小さくなりすぎると、樹脂シートが透明フィルムの間からフローしたり、透明フィルムのフローとともに発光素子22の位置がずれてしまうことが考えられる。したがって、樹脂シートの動的粘度は、温度Mpのときには、点Dを通る破線よりも上の500poise以上であることが好ましい。すなわち、樹脂シートの最小動的粘度は、500poise以上であるとよい。
【0125】
透明フィルム4,6が、例えば、厚さ100μmのPETからなる場合には、温度Mpは、PETの軟化温度よりも低いことが好ましい。PETの軟化温度は約180℃であるため、温度Mpは、例えば80〜160℃である。温度Mpはより好ましくは80〜150℃、おおよそ100℃〜130℃である。このため、130℃のときに、動的粘度が500poise以上であるとよい。
【0126】
透明フィルム、樹脂シート、発光素子などからなる積層体が熱圧着されている間に、例えば
図9D,
図10D,
図12Dに示されるように、発光素子22の周囲に隙間なく樹脂シートを回り込ませる必要がある。このため、樹脂シートは、温度Mpの時にある程度軟化していなければならない。したがって、樹脂シートの動的粘度は、温度Mpのときに、点Cを通る破線より下の1.0E×04poise以下であることが好ましい。このため、130℃のときに、動的粘度が1.0E×04poise以下であるとよい。
【0127】
本実施形態では、積層体を熱圧着することにより、発光素子22のバンプ30が樹脂シートを貫通し、透明フィルムの導体パターンに到達する。このため、積層体を熱圧着する際には、樹脂シートがある程度軟化していることが必要になる。熱圧着が開始された後、積層体に所望の圧力が加わるまでに、当該積層体はおおよそ100〜110℃にまで加熱される。そのため、樹脂シートの動的粘度は、温度約110℃のときに、点Eを通る破線より下の50000poise以下であることが好ましい。
【0128】
上記条件を考慮すると、約25℃から約130℃までの動的粘度の推移が、
図13において点A,B,C,D,Eを結ぶ直線で規定された領域に含まれる曲線によって示される動的粘弾性特性を有する樹脂シートを用いて、発光モジュール1の樹脂層13を構成するのが好ましい。
【0129】
例えば、
図13に示される例では、曲線L3,L4で示される動的粘弾性特性を有する樹脂シートを用いて、発光モジュール1の樹脂層13を構成するのがよい。また、曲線L2で示される動的粘弾性特性を有する樹脂シートを用いることとしてもよい。動的粘弾性特性が曲線L2で示される樹脂シートは、点A〜点Eのところで、樹脂層の形成にあたって必要な動的粘度の条件を満たすからである。
【0130】
図14は、上述した樹脂シート130,131等が硬化した後の引張貯蔵弾性率を示す図である。
図14に示されるように、例えば
図13のL2〜L3に示される動的粘弾性を有する樹脂シートは、硬化した後、常温以下の温度から100℃になるまでは、引張貯蔵弾性率が一定になり安定した特性を示す。また、軟化温度を超えて加熱された場合にも、一旦は急峻に粘度が低下するが、その後は引張貯蔵弾性率が一定になり安定な特性となる。このため、上述の樹脂シート130,131等を用いることで、信頼性の高い発光モジュール1を提供することができる。
【0131】
熱硬化後の樹脂シートの引張貯蔵弾性率は、−50〜100℃において、1〜10GPaの範囲にあり、引張貯蔵弾性率の変化は1桁(10倍)以内である。
【0132】
なお、熱硬化性樹脂シートとしては、エポキシ系樹脂のほか、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂等も同様に用いることが出来、相互に置換可能である。
【0133】
なお、
図13の動的粘弾性の測定は、測定試料として長さ20mm、幅7mm、厚さ0.06mmの試料を用い、引張モード、昇温速度2.5℃/min、測定間隔2.5s、周波数1Hz、温度範囲60〜180℃の条件で行った。
図14の引張貯蔵弾性率の測定は、測定試料として長さ20mm、幅7mm、厚さ0.06mmの試料を用い、引張モード、昇温速度2℃/min、測定間隔3s、周波数2Hz、温度範囲−60〜280℃の条件で行った。また、
図14の引張貯蔵弾性率は、先述したJIS K7244−1(ISO6721)に準拠した方法に従って求めた値である。
【0134】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。