【実施例】
【0106】
実施例1
野生型マウスにおける抗CD47抗体の単回投与
MIAP410(IgG1アイソタイプ)またはMIAP470(IgG2aアイソタイプ)の単回250μgIP注入を野生型マウスに施した。この抗体用量は、およそ10mg/kg用量と等価である。血液を眼窩後叢から収集し、CBC分析をHemaTrue血液分析計で抗体注入の後1、3、6日目に実施した。ヘマトクリット(HCT)及び赤血球(RBC)値の百分率変化を
図1に示す。全ての抗CD47mAb処理マウスが貧血を発生し、その最低値が投与の約3日後に生じた。MIAP470はより顕著な貧血を誘発する。これはIgG1及びIgG2aアイソタイプによって誘発される特異的なFcR仲介作用に起因する可能性がある。
【0107】
CD47
−/−マウスにおける抗CD47抗体の単回投与
CD47
−/−マウスをJackson Laboratoryから入手し、250μgの対照マウスIgG、MIAP410またはMIAP470をIPに注入した。血液を収集し、mAb注入の72時間後に分析した。投与したCD47
−/−マウスのいずれにも貧血は観察されなかった。ヘモグロビンの百分率変化を
図2に示す。これは、野生型マウスで観察された貧血はCD47に結合した抗CD47抗体の直接的な結果であったことを示す。
【0108】
野生型マウスにおける抗CD47抗体の複数注入
WTマウスに、250μgの対照マウスIgG、MIAP410またはMIAP740を3日に1回与えた(
図3に破線縦線で表した)。赤血球の毒性を各々の注入前にCBC分析で監視した。HCTの急激な低下は最初の抗体注入と同時(0日目)に発生した。二回目の注入(3日目)はヘマトクリットの更なる低下をもたらさなかった。マウスは、その後の注入に対し耐性になったように思われ、最終的に対照IgG治療マウスと類似した範囲に戻った。抗CD47抗体の反復投与は初期貧血を悪化させないという発見は、非ヒト霊長類における以降の実験の基本である。
【0109】
実施例2
非ヒト霊長類(NHP)における投与戦略の検証
Hu5F9−G4抗CD47抗体(及び、その親5F9)はヒトCD47に結合するが、マウスCD47には結合しない。適切な毒性種を特定するために、マカク(カニクイザル)非ヒト霊長類(NHP)CD47の配列をヒトCD47用いて整列した。そして、2つの配列が細胞外ドメインで僅か3個のアミノ酸の相違を含むことが明らかになった(
図4)。3個の非保存アミノ酸は全てSIRP−alpha相互作用領域外に位置することが、刊行物のX線結晶構造によって明らかになった。
【0110】
カニクイザルNHP CD47−Fc融合タンパク質が生成した。これは、実際にはHu5F9−G4がカニクイザルNHPCD47に結合する(
図5)ことを明らかにした。表面プラズモン共鳴(SPR)親和性測定を更にBiacoreを用いて実行した。結果は、Hu5F9−G4はヒトCD47の親和性に匹敵する親和性でカニクイザルCD47に結合することを示す(
図6)。
【0111】
加えて、フローサイトメトリー及び免疫蛍光法を別々に使用して、Hu5F9−G4抗体は、ヒト白血球及び組織に類似する分布のカニクイザルNHP白血球と正常組織に結合することを示した。総合すれば、これらの研究は、カニクイザルは安全性及び毒性学研究に適切な種であるであることを実証した。
【0112】
抗CD47抗体はNHPs(単回投与)で用量依存的貧血を引き起こす。
多くのNHP研究を、専売グルタミンシンテターゼ(GS)発現系を使用してLonzaによって作製された精製Hu5F9−G4抗体を用いて行った。Hu5F9−G4を、0.1、0.3、1、3、10または30mg/kgで単回投与として投与し、臨床病理学パラメータを、全血球数及び代謝パネルを含めて監視した。網赤血球増加及び球状赤血球症を伴う用量依存的貧血が肝臓または腎臓機能障害を伴わずに観察された(
図7)。遊離血漿ヘモグロビンは検出がなく、血管内溶血の不在を示した。血清レベルの測定による薬物動態のモニタリングは、短半減期をもたらす大きな抗原シンクが存在することを示した(
図7)。単回投与によって、異種移植研究では僅か10及び30mg/kgで血清レベルが一過的に効力を伴う範囲に達することができた。したがって、適切な投与が貧血を最小化しながら治療的に有効な抗CD47剤レベルを達成し、維持することができる。
【0113】
抗CD47抗体の濃度漸増は貧血を悪化させない。
本発明者らは、エリスロポエチン(EPO)の前投与が若いRBC産生を刺激することで貧血を弱めると推測した。これらの考慮から、本発明者らは初期の低用量が老化RBCの損失を弱め、低感受性の若いRBCの産生を刺激し、それによって以降のより多くの用量の耐性を容易化する可能性があるとの仮説に基づいてNHPで別々の用量増加試験を行った(
図8)。2頭の動物を本研究に登録し、1週間の間隔で投薬した。1頭はEPO前処理(3、10、30、100及び300mg/kg)し、1頭は非前処理(1、3、10、30及び100mg/kg)とした。どちらの場合も、NHPは初期投薬で軽度な貧血を示し、反復投与によって悪化しなかった。実際、ヘモグロビンだけがEPO前処理なしでもヒトでの輸血の上限に達した。動物は100及び300mg/kgを含めて全ての用量に良好な耐容性を示し、更なる血液または代謝異常を伴わなかった。研究の終了時点で、両方の動物を安楽死させて、解剖及び組織病理学解析から異常がないことが分かった。
【0114】
この用量増加試験から、本発明者らはNHPでHu5F9−G4の薬物動態を明らかにした。
正常組織に発現したCD47の大きな抗原シンクの存在と一致して、初期の低用量Hu5F9−G4は24時間の半減期で血清から迅速に取り除かれた(
図9)。対照的に、高用量Hu5F9−G4は持続した血清レベルを生み出して抗原シンクの飽和を示した。300mg/kgで投薬した動物は、5mg/mlのピークレベルを有し、ほぼ2週間1mg/ml超のレベルを維持した。
【0115】
抗CD47抗体の単回負荷投与はより高い維持用量を可能にする。
これらの研究は、Hu5F9−G4が主要な毒作用を伴わずに長期にわたる治療的血清レベルを達成することが可能な用量でNHPに投与し得ることを示した。潜在的な臨床投与戦略をモデル化するために、本発明者らは負荷維持投薬手法を用いた別のNHP研究を行った。本研究では、Hu5F9−G4を、グレード3の毒性を伴わない軽い貧血及び網状赤血球増加症を刺激し得る負荷投与で投与する。本発明者らの単回投与データ(上記を参照のこと)から、負荷投与として1日に1または3mg/kgのいずれかを選択した。1週間後、10または30mg/kgのいずれかの維持用量を投与し、毎週3投与を継続した。両方の負荷投与は共に、30mg/kgの維持用量でも貧血の重症度を軽減し、グレード3の毒性の発生はなかった。第一維持用量の後のPKデータは動物が治療レベルを達成することを示す。本研究は、負荷−維持戦略が潜在的に治療的な薬物レベルを達成しながら貧血を軽減(グレード3の毒性を防止する)することを示唆する。
図10は、抗CD47剤(この場合はhu5F9−G4抗体)の種々の用量と関連する網状赤血球増加症レベルを実証する網状赤血球計数データを示す。
【0116】
実施例3
異物移植アッセイにおける抗CD47抗体の治療有効性
本発明者らは、ブロッキング抗CD47モノクローナル抗体(クローンB6H12、マウスIgG1)は、乳房、膀胱、結腸、卵巣、グリア芽細胞腫、平滑筋肉腫及び頭頸部扁平上皮癌を含む固形腫瘍増殖及び転移の阻害に有効であることを以前に報告した(PMID:22451913、22451919)。抗CD47モノクローナル抗体も、血液学的腫瘍増殖の類似した阻害を引き起こした(PMID:21177380、20813259、19632179、19632178)。本発明者らは、ヒト化抗体(例えば、上記の研究で用いたヒト化抗CD47抗体、hu5F9−G4)も固形腫瘍増殖の阻害及び転移排除に非常に有効であることを確認した(
図11)。
【0117】
固形腫瘍に対するhu5F9−G4の有効性を調査するために、ヒト膀胱腫瘍細胞株(639V)を免疫不全マウスに皮下移植した。腫瘍マウスをPBSまたはhu5F9−G4で治療した。腫瘍負荷のため全PBS治療マウスを治療4週間後に安楽死させた。対照的に、hu5F9−G4治療コホートでは腫瘍増殖は観察されなかった(
図11)。次いで、これらのマウスを更に4週間(更なるhu5F9−G4処理なし)観察した。腫瘍成長はhu5F9−G4で治療したマウスで観察されなかった。これは腫瘍が完全に排除されたことを示した(
図11A)。
【0118】
腫瘍転移の形成に対するhu5F9−G4の効果を評価するために、本発明者らは免疫不全マウスにヒト転移性前立腺腫瘍試験片を皮下移植した。腫瘍移植と同時に、本発明者らはPBSまたはhu5F9−G4で治療を開始した。治療の6週間後、リンパ節転移の数及びサイズの顕著な減少が観察された(
図11B)。これらの結果は、hu5F9−G4は腫瘍転移を阻害または排除し得ることを示す。
【0119】
樹立転移を排除するhu5F9−G4の可能性を示すために、本発明者らはマウス乳房脂肪体にヒト乳癌初代培養細胞を移植した。肺における腫瘍転移の存在を確認した後に、本発明者らは原発腫瘍を切除して、PBSまたはhu5F9−G4で治療を開始した。4週間後に、hu5F9−G4治療マウスで肺転移増殖の有意な阻害が観察された(
図12A)。更に、脳における腫瘍転移の完全な排除が観察された(
図12B)。Hu5F9−G4は切除された原発腫瘍の再増殖も阻害したが、これはhu5F9−G4が微小残存病変の治療に有効であることを示す(
図12C)。
【0120】
hu5F9−G4の血清中濃度を実験全体で観察した。100−200μg/mlの間のHu5F9−G4濃度は治療有効性と関連した(
図12AD)。これらのデータは、ヒト化抗体(例えば、hu5F9−G4)は非ヒト化抗体と、病気(例えば、癌または慢性感染)の治療に関して同一の一般的性質を有しており、対象方法はヒト化抗体を用いて腫瘍を治療及び/または慢性感染を治療する際に効果的であることを示す。
【0121】
実施例4
カニクイザルの以前の毒性学的実験では、本発明者らのヒト化抗CD47モノクローナル抗体(Hu5F9−G4)の単回注入が、10mg/kg以上で投薬すると容認できないレベルの貧血(Hb>7g/dL)を引き起こした。本発明者らの前臨床医学モデル(100−200ug/ml)では、10mg/kg未満のHu5F9−G4用量は治療有効性を伴う血清レベルを生み出すには不十分である。本新研究は、5mg/kgの単一の初回(priming)用量は、それ以外の場合では毒性の可能性があるレベル(おそらく致死レベル)での以降の維持(maintenance)用量からカニクイザルを保護するのに十分であることを明らかにした。(研究デザインを参照:
図13)。
【0122】
貧血はHu5F9−G4の投与に関係するにもかかわらず、いずれの動物でも臨床徴候で毒性の証拠は観察されなかった。したがって、初回/維持用量戦略は300mg/kg程の高用量であってもHu5F9−G4が臨床的に良好な忍容性を示すことを可能にする(
図14)。本発明者らは、Hu5F9−G4の投与は、CD47の段階的な損失を老化RBC上のCD47の即時遮断で置き換えることによって老化RBCの排除過程を加速させると考えている。老化RBCの成熟前喪失は、続く網状赤血球増加症によって補償される(これは全研究で観察された)。そして、時間と共に初期貧血は老化RBCが若い細胞で置き換えられるにつれて治癒し、結果として、RBCプールの年齢構成がより若い細胞へシフトする。群2−4(
図13、
図14、
図15)における血清中濃度は治療有効性を伴う最小限100−200ug/mlレベルを十分上回った。
【0123】
図13。研究設計。動物(#遠い右カラム内のオス及びメス)を5群に分割し、その1つは抗CD47抗体を受けなかった。群2−5の全動物が初回刺激量(5mg/kg)を受け、その後で群2−5は表示した維持用量を受けた。
【0124】
図14。研究継続期間に対する全コホートのヘモグロビンレベル
本研究では水平破線は毒性限界用量を表す(Hb<7)。本グラフ上の各々の点は個別の動物を表す。異なる維持用量レベルでのHbレベルに統計的差異はない。初回刺激量(5mg/kg)は、後続用量の高低にかかわらず防止効果がある。
【0125】
図15。全コホートにおけるHu5F9−G4の薬物動態プロファイル。
群3−4は、有効性を伴う最小濃度(目標範囲)を十分に上回るHu5F9−G4の血清中濃度を達成する。
【0126】
実施例5
アカゲザル及び/またはカニクイザルで研究を行った。アカゲザルとカニクイザルは共に薬理学的に関連する動物種(アカゲザルのCD47はカニクイザルのCD47と100%の配列相同性を共有する)とみなされる。
【0127】
アメリカ食料医薬品局(FDA)医薬品最適研究基準(GLP)規定(21CFRパート58)にしたがって全研究を行った。Hu5F9−G4の開発は、利用可能なICH医薬品委員会、及びFDAガイダンス文書に従った。
【0128】
Hu5F9−G4(ヒト化抗CD47抗体)の生体外溶血アッセイ
CD47は赤血球上で発現し、老化赤血球上で作用するため、Hu5F9−G4がヒトまたはサル(アカゲザル及びカニクイザル)の赤血球の直接血管内溶血を誘発するかどうかを評価する試験を読取として遊離ヘモグロビンを使用して行った。Hu5F9−G4は、ヒトまたはサル(アカゲザルまたはカニクイザル)赤血球のいずれも溶血も誘発しなかった。
【0129】
生体外のHu5F9−G4で刺激したヒトPBMCにおけるサイトカイン産生
本研究の目的は、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)におけるHu5F9−G4による潜在的サイトカイン放出誘導を評価することであった。この生体外実験では、3個の別々のドナーから収集した培養PMBCを、Hu5F9−G4(20g/mlをプレートに結合した)、または非特異的ヒトIgG4抗体(陰性対照)、または抗CD3/抗CD28抗体(陽性対照)と共にインキュベートした。サイトカインストームに関連する多くの炎症促進性サイトカイン(例えば、 TNF-α、IL−1、IL−4、IL−6)を含む50の異なるサイトカインをルミネックス(Luminex)多重化分析で評価した。評価した異なるサイトカインのうちHu5F9−G4はヒトPBMCsでサイトカイン放出を誘導しなかった。加えて、サイトカイン放出症候群の臨床徴候はいずれのサルの研究でも観察されなかった。Hu5F9−G4によるヒトPBMCの治療は、非特異的IgG4抗体またはCD3/CD28抗体で治療したPBMCと比較してIL1−RA、MIP1b/CCL4、IL−8及びENA−78/CXCL5のレベルの減少をもたらした。CD47とこれらの4つのサイトカインとの関係は明白でないが、サイトカインレベルの減少と直接的に関連する可能性がある何らの治療関連効果の証拠もサル研究では観察されなかった。
【0130】
カニクイザルに1時間静脈内注入または皮下注入で投与したHu5F9−G4及びB6H12−G4の単回投与研究
本研究の目的は、オスのカニクイザルに1時間IV注入による単回投与として投与したHu5F9−G4の潜在的毒性及び毒物動態を評価することであった。本研究では、Hu5F9−G4を、1日目に単一のオスサルに10mg/kgの用量で投与した。サルを、臨床徴候、摂食量、体重及び臨床病理学パラメータ(血液学、凝固(coagulation)、血液学、臨床化学)の変化について評価した。試料を、研究の継続期間全体で毒物動態分析のために収集した。動物を14日目に試験施設動物コロニーに戻した。
【0131】
治療関連の変化が血液学的パラメータで観察され、軽度から中度の赤血球数(RBC)、ヘモグロビン、ヘマトクリットの減少、網状赤血球数及び赤血球分布幅の顕著な増加、並びに白血球、リンパ球及び単球数の一過性の増加が含まれた。変化は、Hu5F9−G4に関係するとみなされる臨床化学パラメータでも観察され、これらは乳酸デヒドロゲナーゼ、ビリルビン、AST及びALTの一過性増加を含んだ。血液学及び臨床化学パラメータの変化は、14日目までにベースラインレベルに部分的または完全に戻った。
【0132】
要約すると、10mg/kgでのHu5F9−G4の単回投与は忍容性に優れており、血液学及び臨床化学パラメータの過渡変化に限定される治療関連所見を伴った。
【0133】
アカゲザルへの静脈注入投与による研究
本研究を実施して、カニクイザルの研究が行われた同じ試験施設(ネバダ州レノ、チャールスリバー研究所)でアカゲザルに投与した場合の血液学及び臨床化学パラメータに及ぼすHu5F9−G4の潜在的な効果を評価した。この研究では、Hu5F9−G4を、3mg/kgで1時間IV注入してメスアカゲザル(N=2)に単回投与した。動物を14日間評価した後に施設動物コロニーに戻した。
【0134】
HuF59−G4の投与は優れた耐性を示し、臨床徴候、体重または摂食量においてHu5F9−G4に直接的に関連するとみなされる変化は注目されなかった。水様糞便が7、8及び14日に両方の動物で観察されたが、これは多分、Hu5F9−G4の直接効果よりもむしろ研究関係手順と関係した。加えて、水様糞便は任意の他のサル研究では報告されなかった。治療関連の変化はRBC及びヘモグロビンレベルの減少を含む血液学的パラメータで両方の動物に観察された。しかし、これらの減少は14日目までに回復し、9.4及び9.1g/dL(表1)の最低値でも重症ではなかった。遊離血漿ヘモグロビンは任意の時点でどちらの動物にも検出されなかった。総ビリルビンの増加は各々の動物でも観察されたが、血液学的変化と一致し、研究の終了まで連続した可逆性傾向を示した。
【0135】
要約すると、Hu5F9−G4はアカゲザルで優れた耐性を示し、本研究で観察された治療関連の変化はチャールスリバー研究所(ネバダ州レノ)で実行されたカニクイザル研究で注目された所見と一致しした。
【0136】
【表1】
【0137】
アカゲザルに投与したHu5F9−G4の薬物動態及び忍容性に関する研究
本研究の初期目的は、髄腔内レザバー(intrathecal reservoir)で移植したアカゲザルにおける1時間IV注入として、または髄こう内投与によって投与したHu5F9-G4の薬物動態及び潜在的効果を評価することであった。しかし、1時間IV注入によってHu5F9−G4を投与された第一サルで観察された重症貧血のため髄こう内投与段階を含む残りの研究要素を断念した。本研究では、1頭のオスアカゲザルに、0日目に3mg/kg初回刺激量として、1時間IV注入によってHu5F9−G4を投与し、次いで15日目及び22日目に1mg/kg維持用量を投与した(初期研究設計での維持用量は8、15、22及び29日目に30mg/kgを投与した)。
【0138】
RBC数及びヘモグロビンの相当な減少が、3mg/kg初回刺激量の投与後24時間以内に観察された(表2)。この動物で観察された貧血により8日目の最初に計画した維持用量を投与しなかった。RBC数及びヘモグロビンレベルは回復傾向を示し、14日目までには、RBC数及びヘモグロビンレベルはそれぞれ4.31M/μL及び10.8g/dLに復帰した。したがって、薬注を14日目に再開した。しかし、維持用量を(30mg/kgよりはむしろ)1mg/kgに低減した。16日目に、RBC数及びヘモグロビンが再び減少し始めたが、17日目までにRBC数及びヘモグロビンは回復し始めた。次いで、動物に、21日目で第二の維持用量を投与した(しかし、21日目後に追加的な臨床病理学データは収集されなかった)。加えて、血小板の減少が最初の維持用量の投与後の2日目に注目されたが(14日目)、血小板は21日目までに予備研究レベルに戻った。この変化は、単回投与アカゲザル研究を含む任意の他のサル研究で観察されていなかったことから、本研究で注目された血小板の減少はHu5F9−G4と直接的に関係するかどうかは不明である。
【0139】
【表2】
【0140】
Hu5F9−G4の単回投与及び反復投与研究並びにカニクイザルに1時間静脈内注入で投与したFD6−IgG2の単回投与研究
以前の単回投与研究で観察された貧血は、RBCに発現したCD47結合の結果としてのHu5F9−G4の薬理作用と関係する可能性がある。RBCが老化するにつれて、RBCは徐々にCD47発現を失い、糖タンパク質及び糖脂質からシアル酸を失い、おそらくプロ食作用(pro−phagocytic)シグナルを蓄積し、結果的に食作用による排除に至る方法で膜リン脂質を再編成する(Danon、1988)。本発明者らは、Hu5F9−G4の投与は、CD47の段階的な損失を老化RBC上のCD47の即時遮断で置き換えることによって老化RBCの排除過程を加速させると仮定する。老化RBCの成熟前喪失(premature loss)は、続く網状赤血球増加症によって補償される。そして、初期貧血は老化RBCが若い細胞で置き換えられるにつれて治癒し、RBCプールの年齢構成がより若い細胞へシフトする。これらの考察に基づいて、本研究を、i)初期の低用量Hu5F9−G4は、網状赤血球増加症の十分な誘導にもかかわらず老化RBCの限定的損失を引き起こし、それによって、より低感受性の若いRBCの産生を刺激し、動物を重症貧血から保護する;及び、ii)エリスロポエチン(EPO;RBC産生を刺激する赤血球形成(erythropoiesis)刺激剤)による前処理が低感受性の若いRBCの産生を誘導し、それによってHu5F9−G4投与後に老化RBCの一掃を補償する可能性があるかどうかを評価するために実行した。別の抗体候補(FD6−IgG2)を本研究で評価したがこのINDの考察はしない。本研究では、オスカニクイザルに1mg/kgでの単回投与として、または4週間(1、8、15、22日目)、3mg/kgで週1回、1時間IV注入によってHu5F9−G4を投与した。Hu5F9−G4の用量を週1回投与した1頭のサルに、5日目にIV注入(17,000U/kg)によってエリスロポエチン(EPO)で前処理し、EPOでの前処理が以前に観察されたHu5F9−G4関連貧血を低減するかどうかを評価した。加えて、Hu5F9−G4の用量を週1回投与した1頭のサルに、1、2、5、8、9、12、15、16、19、22、23及び26日目にIV注入(0.5mg/kg)でデキサメタゾン、筋肉内(IM)注入(5mg/kg)でベネドリル(Benadryl)も投与(デキサメタゾンとベネドリルは同時に投与した)し、デキサメタゾン及びベネドリルがHu5F9−G4関連貧血を低減するかどうかを評価した。研究設計を表3に示す。
【0141】
【表3】
【0142】
標準安全性パラメータ(例えば、臨床観察、体重、臨床病理学など)を研究に組み込んだ。そして、CD47は脳で発現する(参照を追加)ため獣医学神経学的検査を行った。血液を毒物動態研究全体の時点で収集した。群2及び群3の動物は31日目に終端処理し、群4は29日目に終端処理した(群1のサルは試験施設動物コロニーに戻した)。
【0143】
予定外の死は起こらなかった。また、治療関連の変化は、臨床徴候、体重、摂食量、獣医学神経学的検査、凝固または尿分析パラメータ、臓器重量、あるいは肉眼または顕微鏡検査で注目されなかった。
【0144】
Hu5F9−G4に関する変化は血液学及び臨床化学パラメータの変化に限定された。単回投与動物(群1)の変化は、赤血球量(RBC数、ヘモグロビン、ヘマトクリットレベル)及び平均赤血球容積(MCV)の減少を誘導し、また平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)及び赤血球分布幅(RDW)を増加した。これらの変化は2日目までに観察された。この動物は豊富な網状赤血球反応を有し、血液塗抹標本(blood smear)評価で観察されたRBC形態変化が軽微から軽度の球状赤血球症、赤血球大小不同及び多染性を包含した。週1回Hu5F9−G4を投与したサルにおける治療関連の変化は、赤血球(RBC)量とMCVの減少及びMCHC増加を含んだ。これらの変化は3日目まで注目され、Hu5F9−G4単独またはデキサメタゾン/ベネドリルを一緒に投与した他のサルと比較してEPOで前処理した動物では顕著でなかった。赤血球量の変化は27日目(22日目での最終投与の5日後)までに部分的に回復し、対応する豊富な網状赤血球反応に関連した。単回投与サルと同様に、RBC形態変化は軽微から中度の球状赤血球症、赤血球大小不同及び多染性を包含した。遊離血漿ヘモグロビンの有意な上昇は、単回投与または反復投与Hu5F9−G4治療サルでは検出されなかった。
【0145】
Hu5F9−G4投与に関係するとみなされた臨床化学パラメータ変化は、乳酸デヒドロゲナーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(単回投与動物のみ)、総ビリルビン(軽微)の増加、及びハプトグロビンの減少(反復投与治療Hu5F9−G4単独、及びデキサメタゾン/ベネドリルのサルのみ)を含んだ。臨床化学パラメータのこれらの変化は、研究終了までに完全もしくは部分的な回復の徴候を示した。
【0146】
要約すると、1mg/kgでの単回投与としてのHu5F9−G4投与、または3mg/kgの用量で4週間週1回の投与(単独またはEPOによる前処理と共に、あるいはデキサメタゾン/ベネドリル投与の組合せで)はオスカニクイザルで良好な忍容性を示した。また、治療関連の影響は血液学(RBC形態を含む)及び臨床化学パラメータの変化に限定された。部分的または完全な回復が研究の終了までに赤血球量及び臨床化学パラメータの変化で注目された。
【0147】
Hu5F9−G4またはFD6単量体の反復投与研究及び カニクイザルXxへの静脈内注入で投与したFD6−IgG4の単回投与研究
本研究の目的は、5週間にわたる用量漸増で1時間IV注入を介してメスカニクイザルに投与した時のHu5F9−G4の潜在的毒性及び毒物動態を評価することであった(FD6−IgG2は本研究で評価した別の抗体候補であった)。本研究では、1頭のサルに5日目にEPO(17,000U/kg)、次いで週1回の1、8、15、24及び31日目にHu5F9−G4の用量を最大300mg/kgまで漸増して投与した。他のサルに、週1回の1、8、15、24及び31日目にHu5F9−G4の用量を最大100mg/kgまで(EPOによる前処理なし)漸増させて投与した。標準安全性パラメータを本研究に組み込んだ。また、動物は両方とも43日目(最後のHu5F9−G4投与後の13日目)に終端処理した。研究設計を表4に示す。
【0148】
【表4】
【0149】
両方の動物は共に研究の予定終了まで生き残った。また、治療関連の変化は、臨床徴候、体重、摂食量、凝固及び尿分析パラメータ、腎臓、肝臓または心臓の影響を示す臨床化学パラメータ、臓器重量、あるいは肉眼または顕微鏡検査で注目されなかった。治療関連の所見は血液学及び臨床化学パラメータの変化に限定された。以前の研究と一致して、血液学的変化は赤血球量(RBC数、ヘモグロビン、ヘマトクリット)の減少及び網状赤血球数の増加を包含した。他の変化はMCHC及びRDWの増加を含み、またMCVの減少も観察された。RBC数及びヘモグロビンの減少は研究終了までに両方の動物で予備研究値近くに戻った(表5)。豊富な網状赤血球数が、3日目に開始した両方の動物で観察され、43日目までに両方の動物で予備研究値近くに戻った。
【0150】
【表5】
【0151】
RBC形態変化は以前の研究と一致し、軽微から顕著に至る小赤血球、赤血球大小不同、多染性及び球状赤血球症を含んだ。予想通りに(EPOの薬理作用に基づく)、これらの変化は動物No.1501と比較して動物No.2501(EPO前処理なし)で、より顕著であった。RBC形態変化 は、37日目までに部分的または完全な回復を示した(表6)。
【0152】
【表6】
【0153】
加えて、リンパ球数及び単球数の増加が両方の動物で観察され、およそ20日目に最も高く、リンパ球数については予備研究値の2.58−3.7倍及び単球数については予備研究値の4.4−6.13倍にわたった。臨床化学的変化は、両方の動物で観察されたハプトグロビンの減少が含まれたが、これは研究終了までに予備研究レベルに戻った。ビリルビンの増加も動物No.2501で13日目に観察された(EPO前処理なし)。
【0154】
両方の動物をHu5F9−G4に曝露して毒物動態を確認した。そして、Hu5F9−G4の循環濃度が用量の増加につれて一般に増加した。最大100mg/kgの用量でのHu5F9−G4の投与は14時間の半減期中央値をもたらした。
【0155】
要約すると、最大100mg/kg(EPO前処理なし)または300mg/kg(EPO前処理)の用量で週1回1時間IV注入によって投与したHu5F9−G4の用量の漸増投与はカニクイザルで一般に忍容性が良好であった。治療関連の変化は血液学(RBC形態を含む)及び臨床化学的パラメータに限定され、これは研究終了までに部分的または完全に可逆的であった。
【0156】
カニクイザルに1時間の静脈内注入で投与したHu5F9−G4の単回投与または漸増投与研究
以前の研究に基づいて、より低用量でのHu5F9−G4の初期投与は、カニクイザルで許容され、それ以降のより高用量の投与を可能にする。本研究の目的は、低用量レベルでの初回刺激量として、次いでより高用量レベルでの反復維持用量として投与した場合にHu5F9−G4の潜在的毒性及び毒物動態を評価することであった。加えて、本研究は初回刺激量/維持薬注療法を用いた有望な臨床薬注予定をモデル化するように設計した。本研究では、メスカニクイザルにリン酸緩衝食塩水(PBS)、または1日目に単一初回刺激量として1時間IV注入によるHu5F9−G4用量を漸増(0.1〜30mg/kgの範囲)して投与した(群A及びH)。群B−Fの動物に、1日目にPBSまたは初回刺激量としてHu5F9−G4、次いで、PBSの複数の維持用量または種々のHu5F9−G4の用量レベルを投与した。群D(10501)及び群F(12501)における1頭の動物に、68日目に第二初回/維持用量サイクル(3mg/kgの初回刺激量)の投与を開始し、次いで75、78、82及び85日目に2週間、週2回維持用量(30mg/kg)を投与した。動物No.10501について1日目の第一初回刺激量は1mg/kgであったが、68日目の第二初回刺激量は3mg/kgに増加し、初回刺激量レベルの増加が許容されるかどうかを評価した(動物No.12501については1日目と68日目の初回刺激量は3mg/kgであった)。初回/維持用量予定で投与するよりはむしろ、群Gの動物には1、8、15及び22日目に10mg/kgで週1回Hu5F9−G4を投与した(低赤血球量のため15日目の用量は投与しなかった)。研究設計を表7に示す。
【0157】
【表7-1】
【0158】
【表7-2】
【0159】
【表7-3】
【0160】
全動物を、臨床徴候、摂食量、体重、臨床病理学パラメータ(血液学、凝固、臨床化学、尿分析)の変化について評価した。血液試料を毒物動態の研究及びADA反応の評価の全体で収集した。赤血球(RBC)量減少レベルにより群G(13501;10mg/kgの初回/維持用量)の動物について15日目に投与を中止した。この動物に、22日目に最後の予定用量を投与した。120日目に安楽死させて、完全な解剖検査を受けた動物No.10501(群D)及び12501(群F)を除き、動物を120日目に試験施設コロニーに戻した;臓器の重さを計量し、組織の顕微鏡試験も行った。
【0161】
予定外の死は発生しなかった。また、Hu5F9−G4の全体的投与は臨床的に十分に許容された。Hu5F9−G4関連とされた所見は血液学及び臨床化学パラメータの変化に限られた。
【0162】
単回投与群(A及びH):血液学パラメータ
Hu5F9−G4(群A及びH)の単回投与を施した動物で血液学的変化が注目された。赤血球(RBC)量の可変的減少は、群Aの動物(0.1〜30mg/kgの範囲で初回刺激量を漸増して投与した)において、≧0.3mg/kgの投与群で3日目から14日目までの間で観察された(0.1mg/kgでは変化は観察されなかった)。赤血球(RBC)量の減少は、0.3mg/kgでは予備研究レベルの最大0.73倍、1及び10mg/kgでは予備研究の0.63倍、30mg/kgでは予備研究の0.53倍に及んだ(表8)。興味深いことに、群Hの動物についての赤血球(RBC)量は、動物に最高の初期用量(30mg/kg)を投与した場合であっても予備研究レベル以下に僅かしか減少しなかった。しかし、これらの減少は群A及びHでは最終評価時点まで回復傾向の継続を示した。全動物(対照を含めて)で、反応性赤血球形成を示す網状赤血球数が増加した。加えて、MCHC(≧0.3mg/kg)及びRDW(≧0.1mg/kg)の増加が注目され、MCHCは予備研究値の最大1.2倍、RDWは予備研究値の最大2倍増加した。MCVの減少も用量≧0.3mg/kgで注目され、予備研究値の最大0.91倍に及んだ。遊離血漿ヘモグロビンは任意の動物で検出されなかった。リンパ球数は用量0.3mg/kgで増加し、予備研究値の1.19〜1.86倍に及ぶ値であった;リンパ球の増加は白血球数に対応し、予備研究の最大2.5倍に及んだ。RBC形態変化 は、6日目及び10日目に評価して用量≧0.1mg/kgで注目された;これらの変化は高用量ほど(0.3〜30mg/kg)重度が増加し、軽微から顕著に至る大赤血球、小赤血球、赤血球大小不同、多染性及び球状赤血球症を包含した。
【0163】
【表8】
【0164】
初回/維持用量群(B−F)及び週1回投与(群G):血液学パラメータ
1日目に初回刺激量、次いでHuF59−G4の反復維持投与(群B−F)及びHuF59−G4の週1回投与した動物で観察された血液学的変化は、単回投与動物(群A及びH)で観察されたものと一貫した。赤血球(RBC)量(赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット)の可変的減少が初回刺激量≧1mg/kg及び維持用量≧10mg/kgを投与した群で観察された(表9−10)。これらの赤血球(RBC)量の減少はより早い時点(5日、8日、12日)でより大きくなる傾向を示した。加えて、赤血球(RBC)量の減少は、初回/維持用量予定で投与した他の動物と比較して週1回10mg/kgを投与した動物でより大きかった(動物No.13501;群G)。興味深いことに、動物No.10501(群D)のヘモグロビンレベルは1日目の1mg/kgでの第一初回刺激量の後に減少したが、68日目の、より高い第二初回刺激量、または75、78、82及び85日目の第二周期の維持用量の後はヘモグロビンレベルの低下はなかった(表9−10)。更に、第二周期の初回/維持用量を投与した他の動物(No.12501;群F)のヘモグロビンレベルは第二周期の間に予備研究レベルを維持した。これらのデータは、10mg/kg以下の初回刺激量で生じた貧血が初回刺激量10mg/kgと比較して重症ではなく、また、初期用量が低いほどカニクイザルによって許容されるHu5F9−G4の維持用量の連続投与を可能にすることを示す。更に、これらのデータは、初回/維持用量予定は週1回の用量予定で観察された程の重症度を生じないことを示す(群G)。全ての初回刺激量/維持群で研究の終了までに赤血球(RBC)量は回復傾向を示した。動物13501(群G、1週間に1回10mg/kg)は、低赤血球(RBC)量(ヘモグロビンレベルが12日目に6.5g/dLであった)のため15日目に投与を中止した。しかし、ヘモグロビンレベルが19日に回復を開始したため、この動物に投与を再開し、22日目に最終投与を施した(表9−10)。動物No.13501のヘモグロビンレベルは着実に回復への傾向を維持し、最終時点(71日)までに予備研究レベルを僅かに超えるまで戻った。網状赤血球数は全ての群(B−F、対照を含む)で増加したが、これは反応性赤血球形成を示す。MCHC及びRDWは初回/維持用量≧1/10mg/kgで増加し、MCHCの値は予備研究の1.21倍、RDWの値は予備研究の2.41倍に至った。MCVの可変的な減少(予備研究の最大0.90倍)も観察された。赤血球(RBC)量の変化と同様に、MCHC、RDW及びMCVで観察された変化は、初回/維持用量予定を投与した他の動物と比較して、週1回10mg/kgを投与した動物No.13501(群G)でより顕著であった。MCHC、RDW及びMCVの変化が予備研究レベルまで、または近くまで連続した回復傾向を示し、これらの変化は可逆的であることを示した。重要なことに、遊離血漿ヘモグロビンは任意の動物で観察されなかった。RBC形態変化 (血液学的パラメータの変化と一致する)も観察され、赤血球大小不同、大赤血球、小赤血球(3/30mg/kgの初回/維持用量で観察されなかった)、多染性及び球状赤血球症が含まれた。全体として、これらの変化の発生率及び重症度は用量依存的には起こらなかった。また、評価時点に基づいて研究終了までに部分的または完全な回復傾向を示した。リンパ球数も初回/維持用量≧1/10mg/kgで増加し、予備研究値の1.25〜2.01倍に及び、他のパラメータと一貫して、全体的に回復傾向を示した。
【0165】
【表9-1】
【0166】
【表9-2】
【0167】
【表10】
【0168】
単回投与群(A及びH):臨床化学パラメータ
単回投与動物(群A及びH)では用量≧1mg/kgで総ビリルビンの増加が注目され、6日目に増加が起こり、予備研究値の1.56〜3.29倍に及んだ。総ビリルビンの増加は用量依存的に起こらず、また回復傾向を示した。ALT及びASTの増加は、6日目に30mg/kgを投与した単一動物(動物14501;群H)で注目されたが、これらの増加は最終時点までに回復傾向を示した。ハプトグロビンは用量≧0.1mg/kgで減少したが、ハプトグロビンは42日目に2頭のHu5F9−G4治療動物及び1頭のPBS対照動物の予備研究を含めて、全動物について3〜4時点で検出レベル未満であった。したがって、ハプトグロビンの減少はこの研究ではHu5F9−G4の単一用量投与と不確定な関係があるとみなされた。
【0169】
初回/維持群(B−F)及び週1回投与(群G):臨床化学パラメータ
単回投与群と同様に、総ビリルビンは初回/維持用量予定を投与した全群で増加した。しかし、総ビリルビンのレベルは研究全体で1mg/dL未満のままであった(表11)。総ビリルビンの増加は研究の最終で回復傾向を示した。ハプトグロビンレベルは全群で減少し、研究の最終で回復傾向を示した(表11)。ALT、AST及びLDHの散発的な変化は研究過程のいくつかの時点で2、3の動物に起こった。しかし、これらの変化は、研究期間の間で僅か1日または2日に起きた正常範囲内(試験施設の歴史的データベースに基づいて)であり、事実上一過性であった。
【0170】
【表11-1】
【0171】
【表11-2】
【0172】
動物のNo.10501(群D)及び12501(群F)は120日目に安楽死させて完全な解剖検査を受けた。臓器の重さを計り組織の顕微鏡試験も行った。食細胞及び単核細胞の浸潤による軸索変性が特徴である、単一で最小の白質部変性の病巣が動物No.10501の延髄内で注目されたが、この所見は、顕微鏡試験を受けた動物の数(2)が少ないこと及び所見の最小の性質のために、この病巣がHu5F9−G4に関連するかまたは付帯的であるかは不明である。重要なことに、この所見は中心的なGLP8週間毒性学的研究において注目されなかったが、これはこの所見は事実上付帯的な可能性があることを示す。
【0173】
毒物動態は、測定可能なHu5F9−G4濃度が、Hu5F9−G4を用量≦0.3mg/kgで単回投与した群で得られなかったことを示した。C
max及びAUC
0−tは一般に用量が増加するにつれて増加した。また、C
maxの増加は用量≧1mg/kgでは用量比例より大きいように見えた。AUC
0−tの増加も用量に比例しなかった。10及び30mg/kgの用量レベルについてのT
1/2はそれぞれ10.7対46.5時間であったが、これはT
1/2は用量増加に伴って増加し得ることを示唆する。
【0174】
反復投与を施した群については、1または3mg/kg(1日目または68日目)の初回刺激量及び10または30mg/kgの反復投与の後に、平均C
maxが1日目から8日目まで増加した。C
maxの増加は1日目から8日目まで用量比例的より大きかった。1(1日目)mg/kgまたは3(68日目)mg/kgの初回刺激量及び30mg/kgの維持用量の後に平均C
maxが1日目から8日目まで増加した。C
maxの増加は、1日目から8日目まで用量比例より大きかった。半減期は10.8から173時間の範囲にあった。いくつかの動物はHu5F9−G4の予想された血清中濃度より低かったが、これはADAの存在を示唆する。
【0175】
要約すると、2種類までの初回/維持用量予定では、最大30mg/kgの単一初回刺激量、または最大3/30mg/kgの初回/維持用量としてのHu5F9−G4の投与はカニクイザルで臨床的に十分耐えられた。10mg/kgでのHu5F9−G4の週1回の投与は臨床的に忍容性が高かったが、低赤血球(RBC)量のために15日目に投与を中止する必要があった。しかし、ヘモグロビンレベルは19日目に回復傾向を示し、したがってこの動物で投与を再開した。治療関連の変化は血液学の変化(RBC形態を含む)及び臨床化学パラメータに限定された。赤血球(RBC)量の減少は以前の研究と一貫し、RBC数及びヘモグロビンの減少は、老化RBC上のCD47への結合及びクリアランスの加速で想定されるHu5F9−G4の薬理学的作用と関連する可能性がある。老化RBCのクリアランスは、初期貧血と早期の時点で観察される補償網赤血球増加をもたらし、老化RBCを若いRBCに置き換える。血液学及び臨床化学パラメータにおける治療関連の変化は全て研究終了までに部分的または完全な回復傾向を示したが、これは、Hu5F9−G4のこれらの影響が可逆的であることを示す。重要なことに、データは、初回/維持用量予定で誘導された貧血は、週1回の投与による程の重症ではなく、初回刺激量≦10mg/kgは忍容性があることを示す。そのように、初回刺激量≦10mg/kgによる初回刺激量予定は以降の研究で用いた。
【0176】
カニクイザルへの静脈内注入投与後のHu5F9−G4の薬物動態
本研究の目的は、以前の研究で評価されなかった用量レベルで、初回/維持用量予定として1時間IV注入で投与する際にHu5F9−G4の潜在的毒性及び毒物動態を評価することであった。本研究では、1日目に5mg/kgで初回刺激量としてHu5F9−G4をオスカニクイザルに投与し、次いで、8、11、15、18、22及び25日目に週2回、150mg/kgで維持用量を投与した。研究設計を表12に示す。
【0177】
【表12】
【0178】
臨床徴候、体重、血液学、凝固及び臨床化学パラメータ(77日目までに収集した)の変化について動物を評価した。血液試料も収集し、フローサイトメトリーを用いて受容体占有を評価したが、このINDのデータは考察しない。毒物動態及びADA反応の評価のために149日目まで研究全体で試料を収集した。両方の動物を研究の終了で試験施設動物コロニーに戻した。
【0179】
動物は両方とも研究の予定した終了まで生き残り、治療関連の影響の証拠は臨床徴候、摂食量または体重で注目されなかった。治療関連の所見は両方の動物で観察され、血液学及び臨床化学パラメータの変化を含んだ。予備研究と一致し、軽度の貧血が5日目(5mg/kg初回投与後の4日目)に注目された。RBC数の有意な減少が、8日目(動物1036)及び11日目(動物1037)から開始した両方の動物で観察された。18日目に、標準レベルに戻るRBCの傾向が動物1036で観察された。しかし、動物1037はRBC数で有意な減少を示し続けた(表13)。両方の動物についてRBC数の減少は網状赤血球の有意な増加と一致した。RBC数と同様に、標準レベルに戻る網状赤血球の傾向が動物1036で観察された。しかし、動物1037では網状赤血球が増加し続けた。加えて、動物1037(15日目に開始した)でヘモグロビンレベルが有意に減少した。動物1036のヘモグロビンレベルも減少したが、この動物で観察された減少は動物1037ほど顕著ではなく、ヘモグロビンが10.0g/dLを僅かに下回って低下した11日目以外は研究過程で10.0g/dL以上を維持した(表13)。遊離血漿ヘモグロビンはどちらの動物でも観察されなかった。動物1037について重症貧血のため15日目に投与を止めた。この動物は投与を再開せずに貧血が回復するかどうかを評価した。したがって、動物No.1037には18、22及び25日に投与をしなかった。動物1036のヘモグロビンレベルは研究の大半で10.0g/dL超残っているため、投与を計画通り継続した。貧血にもかかわらず、毒性を示す臨床徴候はどちらの動物でも観察されなかった。加えて、他の臨床病理パラメータの主要な変化は、白血球数、血小板またはクレアチニンレベルを含めて観察されなかった。22日目に両方の動物を獣医師スタッフによって、特に脾臓の触感に注意して検査した。脾臓の触感からいずれの動物も異常がないことが分かった。
【0180】
【表13】
【0181】
動物1037のRBC及びヘモグロビンレベルは有意に減少し、網状赤血球は29日目まで有意に高い(予備研究と比較して)ままであった。しかし、48日目までにRBC、ヘモグロビン及び網状赤血球は回復し始め、77日目までにこれらのパラメータは予備研究レベルに戻った。更に、動物1036で観察されたこれらの血液学的パラメータの変化は、22日目に戻り始め、77日までに予備研究レベルに戻った。したがって、動物1037はHu5F9−G4の投与に関連した貧血により感受性であるように見えるが、投与終了(15日目)は、経時的に貧血が可逆的であることを示す。RBC形態変化も両方の動物で観察され、軽微から顕著に至る赤血球大小不同、小赤血球、多染性及び球状赤血球症を含めて以前の研究と一貫した。
【0182】
毒物動態は、血清Hu5F9−G4濃度が1日目から15日目の投与後4時間まで2頭間で類似することを示した(動物1037は投与中止を15日目に開始した)。両方のサルのT
1/2は173から212時間の範囲にあった。
【0183】
要約すると、本研究における治療関連の影響は以前の研究と一貫し、血液学的及び臨床化学パラメータの変化を含んだ。動物1037で観察された重度の貧血を含む治療関連の全ての変化は可逆的であり、研究の終了までに正常範囲に戻った。加えて、観察された貧血にもかかわらず、毒性の臨床徴候はどちらの動物でも観察されなかった。
【0184】
8週間回復期を伴うカニクイザルの静脈内注入によるHu5F9−G4の8週間毒性試験
GLP試験の目的は、カニクイザルに初回刺激量、次いで反復維持用量を投与した場合にHu5F9−G4の潜在的毒性及び毒物動態を評価することであった。以前の研究で観察された動物No.1037での5/150mg/kg初回/維持用量による重症貧血により、本研究では使用する初回刺激量及び最大維持用量を5/100mg/kgとし、臨床研究で提案した用量の合理的安全域を提供した。賦形剤(vehicle)またはHu5F9−G4(5mg/kg)を1時間IV注入によって投与した。1日目に5mg/kgで初回刺激量を投与し、次いで5、10、50または100mg/kgの用量で賦形剤またはHu5F9−G4を維持用量として連続7週間、週2回投与した(8、11、15、18、22、25、29、32、36、39、43、46、50及び53日目)。群5では初回刺激量及び維持用量は同じ投与レベル(5mg/kg)を用いた。回収した動物を賦形剤及び高投与群に含めて任意の治療関連効果の可逆性を評価した。研究設計を表14に示す。
【0185】
【表14】
【0186】
安全性薬理学パラメータを本研究に取り込み、呼吸機能(視覚的呼吸速度)、心臓血管機能(ECG)及び中枢神経系機能に及ぼす影響を示す臨床徴候(例えば、活性、挙動)の変化を含めた。血液試料を毒物動態の研究全体で収集し、ADA反応の評価、並びにCD47の受容体占有を評価した。研究の継続期間全体で臨床病理学試料を評価し、以前の研究データに基づいて特異的パラメータ(例えば、ヘモグロビン、RBC、網状赤血球)を評価した。重症貧血を2頭の動物(動物No.3002;群3、初回/維持用量5/50mg/kg;動物No.4504;群4、初回/維持用量5/100mg/kg)で観察した。また、これらの動物は投与を中止し、貧血の回復及び一旦薬注を再開するとどのように反応するかを評価した。動物No.3002は維持用量6−9について投与を中止し(25、29、32及び36日)、39日目に投与を再開した(維持用量10)。動物No.4504は25日目(用量6)に投与を中止し、投与期間の終了まで投与の中止を継続した。主な研究動物を57日目に終端処理し、また回収動物を109日目に終端処理した。生存中の部分の研究を完了し、主な研究動物の全データは組織病理学を含めて利用可能である。回収動物のデータは利用が可能な場合は提出される。
【0187】
本研究おいて予定外の死は起きなかった。また、Hu5F9−G4の投与は臨床的に良好な忍容性を示した。治療関連の影響は臨床徴候、体重、身体及び眼科検査、体温、ECG、呼吸または心拍数、凝固または尿分析パラメータ、臓器計量、あるいは肉眼及び顕微鏡検査で観察されなかった。
【0188】
以前のパイロット研究と一貫して、血液学的パラメータにおける治療関連の変化は全てのHu5F9−G4治療群で観察され、軽度から中度の赤血球量(RBC数、ヘモグロビン及びヘマトクリットを含む)の減少を含むが、これは1日目の初回刺激量の後に最も顕著であった。これらの血液学的パラメータ変化は、投与相の終了までに回復傾向を示した(ヘモグロビンの変化は表15を参照のこと)。RBC数、ヘモグロビン及びヘマトクリットの減少は全てのHu5F9−G4治療群で観察されたが、これらの変化は明確な用量依存的方法で生じなかった。網状赤血球の増加が全Hu5F9−G4治療群で観察され、赤血球量の減少と関連する豊富な赤血球形成反応を示した。以前の研究と一貫して、赤血球量の減少は、MCV及びハプトグロビンの減少、また、MCHC、網状赤血球及びRDWの増加と関連した。遊離血漿ヘモグロビンは任意の投与群で観察されなかった。リンパ球の最小から軽度な増加も観察されたが、これらの増加は事実上一時的かつ散発的であり、また用量依存的に生じなかった。血小板の最小から軽度な増加が8日目に観察(大部分の群で対照と比較して統計的に有意であった)されたが、11日目までに大部分の群で対照値に戻り始めた。血小板の増加は加速赤血球産生に対する反応性血小板新生及び生理反応であると考えられており、これは網状赤血球の随伴性増加によって明白であった。血液学的パラメータの全ての治療関連変化は投与相の終了まで部分的または完全に可逆的であった。
【0189】
【表15-1】
【0190】
【表15-2】
【0191】
【表15-3】
【0192】
【表15-4】
【0193】
【表15-5】
【0194】
【表15-6】
【0195】
【表15-7】
【0196】
【表15-8】
【0197】
【表15-9】
【0198】
【表15-10】
【0199】
ヘモグロビンは1日目に初回刺激量を投与した後に全てのHu5F9−G4治療動物で減少したが、ヘモグロビンの減少は一般に8日目で第一維持用量を投与した後に最も顕著であった(表16の11日目のヘモグロビンレベルを参照せよ)。ヘモグロビン減少の大きさは動物全体で異なり、11日目にヘモグロビンレベル≦10.0g/dLを持つ動物の発生率は、群2(2/10mg/kg)、群3(5/50mg/kg)、群4(5/100mg/kg)及び群5(5/5mg/kg)で、それぞれ67%、30%、90%及び50%であった。貧血(11日目で)は群2、群3または群5の間で明確な用量依存的方法で発生しなかったが、群4はヘモグロビンレベル≦10.0g/dLを持つ最多の動物を有した。全体として、ヘモグロビン回復の継続傾向が動物全体で観察され、およそ15日目〜32日から始まって研究終了まで継続した。しかし、動物No.3602が46日目に第11回目の維持用量を投与した後にヘモグロビンの別の大幅な減少を有したことは、研究の終了近くで注目された1つの例外であった(ヘモグロビンが55日目及び57日目に7.0g/dLも減少した;表16)。しかし、動物No.3602のヘモグロビンレベルは60日目に回復し始め(最後の維持用量の7日後)、109日目の研究終了までに予備研究レベル(13.4g/dL)に戻った。観察された重症貧血により、2頭の動物(動物No.3002;群3、初回/維持用量5/50mg/kg;動物No.4504;群4、初回/維持用量5/100mg/kg)の投与を中止し、貧血の回復及び一旦薬注を再開するとどのように反応するかを評価した。動物No.3002は、より重度な貧血(15日目及び18日目に5.7g/dL程の低さ)を示し、維持用量6−9の投与を中止した(25、29、32及び36日目)。投与を39日目に再開した(維持用量10)。動物No.4504は25日目(用量6)に投与を中止し、投与期間の終了まで投与の中止を継続した(ヘモグロビンレベルの変化は表16を参照せよ)。動物No.3002で注目された赤血球数、ヘモグロビン及び網状赤血球の変化は36日目に回復し始めて、57日目の研究終了まで回復し続けた。同様に、動物No.4504の血液学的変化は回復し始めて、研究終了まで回復傾向が継続した(109日目;この動物は回復群にいた)。したがって、少数の動物が特にHu5F9−G4に起因する貧血に感受性の可能性があるように見えるが、貧血は一過性であり、ヘモグロビンレベルは経時的に回復する。
【0200】
【表16】
【0201】
血液細胞形態変化は、以前の研究と一致し、加速赤血球破壊/クリアランス及び赤血球形成の亢進と関連があると考えられた。これらの変化は、事実上軽微から顕著まで様々であり、赤血球大小不同、球状赤血球症(小赤血球)、多染性、並びに赤血球損傷/クリアランスと一致したエクセントロサイト及び非定型赤血球断片を含んだ。赤血球サイズの範囲の可変性は、より小さな球状赤血球症とより大きな多染性細胞(網状赤血球)の混合によるものであった。いくつかのHu5F9−G4治療動物の循環で有核の赤血球数の一時的な増加も観察された。赤血球形態変化は研究の終了まで回復傾向の継続を示した。骨髄塗抹標本評価の変化は軽微から中程度であったが、異常な核形状を持つ副次的な細胞、複合核、細胞核ブレビング及び/または核対細胞質成熟不同時性(異常核対細胞質成熟)からなる赤血球系統の変化(異形成)に限られていた。付加的な変化はHu5F9−G4と関連する加速赤血球形成反応に関係すると考えられ、付加的な変化として、加速赤血球形成を伴うより未熟な赤血球前駆体への最小〜軽度の適度なシフトと共に、群3及び群4(メスだけ)の平均M:E比率の穏和な低下を含んだ。
【0202】
以前の研究と一致して、血液学的パラメータの治療関係の変化(すなわち、RBC及びヘモグロビンの減少、網状赤血球の増加)は総ビリルビンの増加及びハプトグロビンの減少と関連した。臨床化学パラメータの他の変化は高用量群(5/100mg/kg)にだけ観察され、アルブミンの僅かな減少(2頭のメスの動物)、グロブリンの僅かな増加、及びアルブミン対グロブリン比率の対応する減少を含んだ。臨床化学パラメータの全治療関係の変化は、投与相の終了時点で部分的または完全に可逆的であった。
【0203】
8日目の毒物動態は、1日目の5mg/kgでの初回刺激量、及び8日目の5、10、50または100mg/kgでの初期維持用量の後のC
maxの増加は10〜100mg/kgが用量比例、5〜100mg/kgが用量比例より大きいことを示した。AUC
0−72の増加は50〜100mg/kgが用量比例に向かう傾向を示したが、AUC
0−72の変化は5〜100または10〜100mg/kgが用量比例より大きかった。平均T
1/2は用量の増加に伴って増加傾向を示し、5mg/kgで6時間、100mg/kgで52時間にわたった。曝露では明らかな性差はなかった。25日目の毒物動態は、3週間5、10、50または100mg/kgで週2回投与した後、曝露での増加(C
max、AUC
0−72)は5〜100mg/kgが用量比例より大きかったが、10〜100mg/kgが用量比例であることを示した。加えて、曝露はオスザルと比較してメスで低い傾向を示した。見掛けT
1/2は、高用量と比較して5mg/kgでより短かった。いくつかの動物ではT
1/2は25日目と8日目の間で類似し、他の動物ではT
1/2は25日目でより長くなるように見えた。平均T
1/2は6.3時間(5mg/kg)〜66時間(50mg/kg)の範囲にあった。7週間、5、10、50または100mg/kgで週2回投与した後の53日目の毒物動態は、曝露(C
max、AUC
0−72)の増加が5〜100mg/kgで用量比例より大きかったが、10〜100mg/kgで用量比例であることを示した。
【0204】
25日目または8日目と比較して53日目の濃度対時間分布は、Hu5F9−G4の血中濃度が反復投与と伴に増加し続けることを示唆した。5mg/kgの用量(ADAによる影響を受けると思われる)を除いて、53日目の曝露(C
max、AUC
0−72)の平均値及び中央値は各々の用量群の中で25日目または8日目より一般に高かったが、これは週2回投与の継続によるHu5F9−G4の更なる蓄積を示唆した。ADAの発生は曝露量に影響を及ぼすと思われるが、この影響力は主に5mg/kgの維持用量で注目された。そして、用量≧10mg/kgの維持用量では全体的に曝露量が研究を通して維持された。
【0205】
要約すると、治療関連の所見は以前の研究と一致し、血液学的及び臨床化学パラメータ並びに骨髄細胞の変化を含んだ。血液学的パラメータ変化は網赤血球増加を組み合わせた赤血球数及びヘモグロビンの減少を含んだ。重要なことに、遊離血漿ヘモグロビンは研究全体でいずれの動物でも検出されなかった。Hu5F9−G4関連貧血は、群2、3または5の間で明確な用量依存的方法で生じなかったが、ヘモグロビンレベル≦10.0g/dLを持つ動物の数は最も高い維持用量(100mg/kg)を投与した群5で最も多かった。ヘモグロビンレベルは、およそ15−32日目に開始した全動物で回復傾向を示し、研究終了まで継続したが、46日目に第11回の維持用量投与後、研究終了近くで1頭の動物(群3)に再びヘモグロビンの大幅な低下が観察された。しかし、この動物のヘモグロビンは研究終了(109日目)までに予備研究レベルに戻った。2頭の動物(群3及び4群の各1頭)で、それぞれ観察された重症貧血により投与を中止した。重要なことに、これらの動物で観察された重症貧血にもかかわらず、毒性の臨床徴候は注目されなかった。また、各々の動物のヘモグロビンレベルは研究終了まで継続した回復傾向を示した。赤血球形態変化 は、加速赤血球破壊/クリアランス及び赤血球形成の亢進と一致し、非定型赤血球断片、赤血球大小不同、球状赤血球症(小赤血球)及び多染性からなった。血液学的パラメータ変化は総ビリルビンの増加及びハプトグロビンの減少と関連した。臨床化学パラメータの他の治療関連変化は、高用量群だけに観察され、アルブミンの僅かな減少、グロブリンの僅かな増加、及び対応するアルブミン対グロブリン比率(A:G)を含んだ。これらの全ての治療関連の変化は、研究終了まで、全てのHu5F9−G4投与群において部分的または完全に可逆的であった。骨髄細胞の変化は、異常な核形状を持つ副次的な細胞、複合核、細胞核ブレビング及び/または核対細胞質成熟不同時性からなる赤血球系統の形態変化に限られていた。
【0206】
全体として、週1回(1日)、5mg/kgで初回刺激量、次いで最大100mg/kgで7週連続、週2回の維持用量として、1時間IV注入によるHu5F9−G4投与は臨床的に十分許容された。治療関連貧血にもかかわらず、投与を中止した動物を含めて臨床毒性の徴候は観察されなかった。本研究で観察された変化は以前の研究と一致し、RBC上に発現したCD47への結合による老化RBC除去の工程を加速させるHu5F9−G4の薬理作用と関係すると考えられた。したがって、データの全体に基づいて、本研究に関して重篤な毒性が発現しない最大用量(HTNSTD)は、5/100mg/kgの初回量/維持用量であると考えられた。
【0207】
遺伝毒性
小分子製剤で通常実施される遺伝毒性学研究の規模とタイプはバイオテクノロジー製品に適用できない[ICH S6(R1)]。Hu5F9−G4のようなモノクローナル抗体はDNAまたは他の染色体材料と直接的に相互作用することはないと考えられている。したがって、変異原性試験は不適当とみなし計画しない。
【0208】
発癌性
Hu5F9−G4による発癌性研究を実施していない。Hu5F9−G4の作用機構に基づいて、Hu5F9−G4は発癌性ではないと考えられる。更に、Hu5F9−G4は増殖因子でも免疫抑制剤でもない。したがって、予想される患者の規模及び機構的懸念がないことを想定すれば、発癌性研究は予定(有効な毒物動態評価を含めて)されない。
【0209】
生殖毒性と発生毒性(範囲検出研究及び有効な毒物動態評価を含む)
Hu5F9−G4による生殖・発生毒性試験を実行していない。形式的であるが、自立型繁殖試験を実行しない。治療関連の影響は、8週間の毒性学研究において雌雄生殖臓器の顕微鏡試験で注目されなかった。Hu5F9−G4の潜在的な奇形発生効果はたとえあったとしても実験動物で知られていないため、Hu5F9−G4を妊婦に投与するべきではない。妊娠を避けるために、提案された第一期臨床試驗に登録された男性及び出産の可能性のある女性に適切な予防措置が(例えば、女性は陰性妊娠反応を示さなければならないし、患者は十分な避妊予防措置などに同意しなければならない)。
【0210】
局所忍容性
自立型局所忍容性試験を実行しなかった。しかし、ICH S6(R1)と一貫して、Hu5F9−G4の局所忍容性の評価(注入部位由来組織試料の臨床観察、肉眼検査及び顕微鏡検査)を反復用量毒性試験の一部として実行した。
【0211】
考察及び結論
提案した臨床試験ではHu5F9−G4の投与を支持して包括的な一連の毒性学研究を行った。これらの研究として、試験管内溶血研究、アカゲザル及びカニクイザルにおける単回及び反復投与研究、並びにヒト組織集団における組織交叉反応性研究が挙げられる。
【0212】
全サル研究にわたる主要で一貫した治療関連所見は貧血(赤血球数及びヘモグロビンの減少に反映される)であった。貧血は一般に第一用量(または初回/維持用量予定研究における初回刺激量)の投与後に発生し、赤血球のクリアランス加速、及び赤血球形態変化(例えば、赤血球大小不同、多染性及び球状赤血球症)を含む網赤血球増加を示す変化を伴った。重要なことに、遊離血漿ヘモグロビンは全研究にわたって観察されなかった。Hu5F9−G4に関連した血液学的パラメータ変化は、一般にハプトグロビン及び総ビリルビンの変化を伴った。常時を除きハプトグロビンはしばしば減少し、総ビリルビンの増加が一般に観察された。しかし、ハプトグロビン及び総ビリルビンの変化は用量依存的に発生しなかった。全ての研究にわたって、Hu5F9−G4に関連した血液学的及び臨床化学パラメータ変化は研究の間に回復傾向を示し、研究終了まで部分的または完全に可逆的であった。骨髄細胞学の変化(GLP8週研究で実行;PR013)は、加速赤血球形成に関連すると考えられ、赤血球系統の形態変化、平均M:E比の減少、加速赤血球形成を伴うより未熟な赤血球前駆体への適度なシフトを含んだ。
【0213】
老化赤血球の正常なクリアランスにおけるCD47の既知の役割及びサル研究全体で得られた結合データに基づいて、一次治療関連変化(すなわち、貧血)はRBCで発現したCD47に結合したHu5F9−G4の薬理作用に関係があると考えられる。本発明者らは、Hu5F9−G4の投与は、老化RBC上のCD47の即時遮断によってCD47の段階的損失を置換することによって老化赤血球の排除の過程を加速すると考えている。老化RBCの成熟前喪失は、続く網状赤血球増加症(全研究にわたって観察された)によって補償され、老化RBCが若い細胞によって置き換えられるにつれて経時的に初期貧血が治癒し、結果として、RBCプールの年齢分布が若い細胞にシフトする。
【0214】
Hu5F9−G4の投与に関連した貧血にもかかわらず、毒性の証拠は任意の動物での臨床徴候で観察されなかった。したがって、Hu5F9−G4は300mg/kg程の高用量でも臨床的に忍容性が良好であった。Hu5F9−G4の投与は一過性の貧血をもたらしたが毒性の臨床徴候は注目されなかった。また、Hu5F9−G4はサルによって、300mg/kg程の高用量でも臨床的に良好な忍容性を示した。しかし、毒性学研究から、少数の動物が特にHu5F9−G4関連貧血に感受性であることが分かった。これらのサルがHu5F9−G4に起因する貧血に、より感受性である原因は現時点で不明であるが、貧血は一過性であり、一貫して投与終了と同時に回復傾向を示した。ある患者が他の患者より高感受性であり得るため、血液学変化を提案の臨床研究において厳格に監視し、予め特定したレベル以下の貧血が発生した患者に適切な措置が採られる。
【0215】
Hu5F9−G4に関連した貧血は、全サル研究の全体で部分的または完全に可逆的であり、投与を再開した動物を含め投与を中止した動物では治癒した。8週間の毒性学的研究のHNSTDは、初回/維持用量が5/100mg/kg(試験の最大用量)であった。毒物動態データに基づいて、8週間の毒性学研究で使用した5mg/kgの初回刺激量は、計画した臨床試験において提案の開始初回刺激量0.1mg/kgより28倍〜194倍に及ぶ安全域(AUCに基づく)を提供することが予測される。週2回の100mg/kgの維持用量は、提案した臨床試験で予定した0.1mg/kgの開始維持用量の766−803倍に及ぶ安全域(AUCに基づく)を提供することが予測される。
【0216】
要約すると、毒物学研究の結果に基づいて、非臨床的安全性評価プログラムは提案した臨床試験に関してHu5F9−G4の投与(例えば、IV注入として)を支持する。