(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
〈成形装置の構成〉
図1に示すように、フランジ付きの金属パイプを成形する成形装置10は、上型12及び下型11からなるブロー成形金型13と、ブロー成形金型13を局部的に加熱するヒータ(加熱部)20と、上型12及び下型11の少なくとも一方を移動させるスライド82と、スライド82を移動させるための駆動力を発生する駆動部81と、上型12と下型11との間に金属パイプ材料14を水平に保持するパイプ保持機構(保持部)30と、このパイプ保持機構30で保持されている金属パイプ材料14に通電して加熱する加熱機構50と、加熱された金属パイプ材料14に高圧ガスを吹込むブロー機構(気体供給部)60と、駆動部81、ヒータ20、パイプ保持機構30、加熱機構50及びブロー機構60を制御する制御部70と、ブロー成形金型13を強制的に水冷する水循環機構72とを備えて構成されている。制御部70は、金属パイプ材料14が焼入れ温度(AC3変態点温度以上)に加熱されたときにブロー成形金型13を閉じるとともに加熱された金属パイプ材料14に高圧ガスを吹込む等の一連の制御を行う。なお、以下の説明では、完成品に係るパイプを金属パイプ80(
図5(b)参照)と称し、完成に至る途中の段階のパイプを金属パイプ材料14と称するものとする。
【0014】
下型11は、大きな基台15に固定されている。また下型11は、大きな鋼鉄製ブロックで構成されて、その上面にキャビティ(凹部)16を備える。更に下型11の左右端(
図1において左右端)近傍には電極収納スペース11aが設けられ、当該スペース11a内にアクチュエータ(図示しない)で上下に進退動可能に構成された第1電極17と第2電極18を備えている。これら第1、第2電極17、18の上面には、金属パイプ材料14の下側外周面に対応した半円弧状の凹溝17a、18aが形成されていて(
図6(c)参照)、当該凹溝17a、18aの部分に丁度金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。また、第1、第2電極17、18の正面(金型の外側方向の面)は凹溝17a、18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17b、18bが形成されている。なお、下型11には冷却水通路19が形成され、略中央に下から差し込まれた熱電対21を備えている。この熱電対21はスプリング22で上下移動自在に支持されている。
【0015】
なお、下型11側に位置する一対の第1、第2電極17、18はパイプ保持機構30を兼ねており、金属パイプ材料14を、上型12と下型11との間に昇降可能に水平に支えることができる。また、熱電対21は測温手段の一例を示したに過ぎず、輻射温度計や光温度計のような非接触型温度センサであってもよい。なお、通電時間と温度との相関が得られれば、測温手段は省いて構成することも十分可能である。
【0016】
上型12は、下面にキャビティ(凹部)24を備え、冷却水通路25を内蔵した大きな鋼鉄製ブロックである。上型12は、上端部でスライド82に固定されている。そして、上型12が固定されたスライド82は、加圧シリンダ26で吊され、ガイドシリンダ27で横振れしないようにガイドされる。本実施形態に係る駆動部81は、スライド82を移動させるための駆動力を発生するサーボモータ83を備えている。駆動部81は、加圧シリンダ26を駆動させる流体(加圧シリンダ26として油圧シリンダを採用する場合は、動作油)を当該加圧シリンダ26へ供給する流体供給部によって構成されている。制御部70は、駆動部81のサーボモータ83を制御することによって、加圧シリンダ26へ供給する流体の量を制御することにより、スライド82の移動を制御することができる。なお、駆動部81は、上述のように加圧シリンダ26を介してスライド82に駆動力を付与するものに限られず、例えば、スライド82に駆動部を機械的に接続させてサーボモータ83が発生する駆動力を直接的に又は間接的にスライド82へ付与するものであってもよい。なお、本実施形態では、上型12のみが移動するものであるが、上型12に加えて、または上型12に代えて下型11が移動するものであってもよい。また、駆動部81がサーボモータ83を備えていなくともよい。
【0017】
また上型12の左右端(
図1において左右端)近傍に設けられた電極収納スペース12a内には、下型11と同じく、アクチュエータ(図示しない)で上下に進退動可能に構成された第1電極17と第2電極18を備えている。これら第1、第2電極17、18の下面には、金属パイプ材料14の上側外周面に対応した半円弧状の凹溝17a、18aが形成されていて(
図6(c)参照)、当該凹溝17a、18aに丁度金属パイプ材料14が嵌合可能とされている。また、第1、第2電極17、18の正面(金型の外側方向の面)は凹溝17a、18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17b、18bが形成されている。即ち、上下一対の第1、第2電極17、18で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の外周を全周に亘って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
【0018】
次に、ブロー成形金型13を側面方向から見た概略横断面を
図2に示している。これは
図1における矢視II−II線に沿うブロー成形金型13の横断面図であって、ブロー成形時の金型位置の状態を示している。側面視した場合、上型12と下型11はいずれもその表面に段差が形成されている。
【0019】
上型12の表面12bには、キャビティ24が形成されている。キャビティ24は、上型12の左右方向(
図2における左右方向)中央に凹設された矩形状のメインキャビティ24Aと、メインキャビティ24Aの左右両側それぞれに凹設された矩形状のサブキャビティ24Bと、を有しており、左右対称に形成されている。サブキャビティ24Bは、メインキャビティ24Aに連通しており、メインキャビティ24Aよりも深さが小さくなるように形成されている。一方、下型11の表面11bには、キャビティ24と上下方向において対称な形状を有するキャビティ16が設けられている。キャビティ16は、下型11の左右方向中央に凹設された矩形状のメインキャビティ16Aと、メインキャビティ16Aの左右両側それぞれに凹設された矩形状のサブキャビティ16Bと、を有しており、左右対称に形成されている。サブキャビティ16Bは、メインキャビティ16Aに連通しており、メインキャビティ16Aよりも深さが小さくなるように形成されている。メインキャビティ24Aとメインキャビティ16A、及びサブキャビティ24Bとサブキャビティ16Bは、それぞれの表面が互いに平行となるように形成されている。
【0020】
結果として、
図2に示す通り、ブロー成形時の金型位置においては、上型12のメインキャビティ24Aの表面と下型11のメインキャビティ16Aの表面との間には、矩形状のメインキャビティ部(第1のキャビティ部)MCが画成される。また、サブキャビティ24Bの表面とサブキャビティ16Bの表面との間には、メインキャビティ部MCよりも容積の小さな矩形状のサブキャビティ部(第2のキャビティ部)SCが画成される。これらメインキャビティ部MCとサブキャビティ部SCとは連通している。メインキャビティ部MCは金属パイプ80におけるパイプ部80aを成形する部分であり、サブキャビティ部SCは金属パイプ80におけるフランジ部80bを成形する部分である。
【0021】
上型12及び下型11には、サブキャビティ部SCに沿うように、ヒータ20が埋設されている。本実施形態では、ヒータ20は、上型12の2つの隅部12c及び下型11の2つの隅部11cそれぞれに埋設されている。隅部12cは、メインキャビティ24Aの左右側面を画成すると共にサブキャビティ24Bの下面を画成する部分であり、メインキャビティ24Aとサブキャビティ24Bの深さの差の分だけメインキャビティ24Aの下面から突出した部分である。隅部11cは、隅部12cに対応する部分であり、メインキャビティ16Aの左右側面を画成すると共にサブキャビティ16Bの下面を画成する部分である。上型12及び下型11それぞれにおいて、ヒータ20はメインキャビティ24A,16Aに対して左右対称な位置に配置されている。また、左右方向において同一側に配置されたヒータ20同士は、上型12と下型11の境界面に対して上下方向に対称な位置に配置されている。
【0022】
上型12側のヒータ20を挙げてヒータ20の配置位置について更に説明する。左右方向において、ヒータ20は、メインキャビティ24Aの左右側面と重なる位置、または当該左右側面よりも外側(サブキャビティ24B側)に配置されてよい。或いは、左右方向において、ヒータ20は、サブキャビティ24Bの左右側面と重なる位置、または当該左右側面よりも外側に配置されてもよい。なお、熱をサブキャビティ部SCに供給することができる限り、左右方向において、ヒータ20は、メインキャビティ24Aの左右側面よりも内側に配置されてよい。また、上下方向において、ヒータ20は、少なくともメインキャビティ24Aの下面と重なる位置、または当該下面よりも下側(上型12の表面12b側、すなわち下型11との境界面側)に配置されてよい。あるいは、上下方向において、ヒータ20は、熱をサブキャビティ部SCに供給することができる限り、メインキャビティ24Aの下面よりも上側に配置されてよい。また、ヒータ20の大きさや金型の形状や大きさによっては、上下方向において、ヒータ20は、サブキャビティ24Bの下面と重なる位置、または当該下面よりも下側に配置されてよい。さらに、ヒータ20は、メインキャビティ24Aまでの最短距離よりも、サブキャビティ24Bまでの最短距離が小さくなるように配置されてよい。なお、下型11側のヒータ20についてもこれと同様である。
【0023】
ヒータ20としては、カートリッジ式ヒータなどを採用してよい。ヒータ20は、制御部70によって制御されてサブキャビティ部SCを加熱するために用いられる。ヒータ20は、上型12及び下型11の長手方向においては、
図3に示すように、上型12及び下型11における、成形時に金属パイプ材料14が配置される範囲の全体に亘って延在するように設けられている。ただし、長手方向において、サブキャビティ部SCが設けられない領域にはヒータ20が延びていなくともよい。これによって、サブキャビティ部SCの全体を加熱することが可能とされている。なお、サブキャビティ部SC全域に対応する位置にヒータ20が配置されている必要はなく、一部に対応する位置に設けてもよい。また、長手方向において複数本に分割されたヒータ20を用いてもよい。
【0024】
なお、本実施形態では、ヒータ20が一対の金型のうち、上型12及び下型11の双方に埋設されている例を挙げて説明したが、ヒータ20は上型12及び下型11の少なくとも一方に埋設されていればよく、上型12及び下型11のいずれか一方のみに埋設されていてもよい。ただし、両方に埋設することで、温度分布の均一性を向上できる。また、ヒータ20はサブキャビティ部SCを加熱可能であればよく、数、配置等も本実施形態の例に限られない。例えば、本実施形態では、パイプ部80aの両側にフランジ部80bが形成された金属パイプ80を成形対象とした例を挙げて説明したが、パイプ部80aの片側のみにフランジ部80bが形成された金属パイプ80を成形対象としてもよい。この場合、キャビティ24は左右対称な形状とならず、メインキャビティ24A,16Aの左右片側のみにサブキャビティ24B,16Bが設けられる。このため、この左右片側のみに設けられたサブキャビティ24B,16Bに沿うように、左右片側のみにヒータ20が埋設されてよい。また、サブキャビティ部SCの形状は、本実施形態の例に限られず、フランジ部80bを成形可能でありさえすればよく、任意の形状としてよい。
【0025】
加熱機構50は、電源51と、この電源51から延びて第1電極17と第2電極18に接続している導線52と、この導線52に介設したスイッチ53とを有してなる。
【0026】
ブロー機構60は、高圧ガス源61と、この高圧ガス源61で供給された高圧ガスを溜めるアキュムレータ62と、このアキュムレータ62からシリンダユニット42まで延びている第1チューブ63と、この第1チューブ63に介設されている圧力制御弁64及び切替弁65と、アキュムレータ62からシール部材44内に形成されたガス通路46まで延びている第2チューブ67と、この第2チューブ67に介設されているオンオフ弁68及び逆止弁69とからなる。なお、シール部材44の先端は先細となるようにテーパー面45が形成されており、第1、第2電極のテーパー凹面17b、18bに丁度嵌合当接することができる形状に構成されている(
図6参照)。なお、シール部材44は、シリンダロッド43を介してシリンダユニット42に連結されていて、シリンダユニット42の作動に合わせて進退動することが可能となっている。また、シリンダユニット42はブロック41を介して基台15上に載置固定されている。
【0027】
圧力制御弁64は、シール部材44側から要求される押力に適応した作動圧力の高圧ガスをシリンダユニット42に供給する役割を果たす。逆止弁69は、第2チューブ67内で高圧ガスが逆流することを防止する役割を果たす。制御部70は、(A)から(A)へ情報が伝達されることで、熱電対21から温度情報を取得し、加圧シリンダ26、スイッチ53、切替弁65及びオンオフ弁68等を制御する。
【0028】
水循環機構72は、水を溜める水槽73と、この水槽73に溜まっている水を汲み上げ、加圧して下型11の冷却水通路19や上型12の冷却水通路25へ送る水ポンプ74と、配管75とからなる。省略したが、水温を下げるクーリングタワーや水を浄化する濾過器を配管75に介在させることは差し支えない。
【0029】
〈成形装置の作用〉
次に、成形装置10の作用について説明する。
図4は材料としての金属パイプ材料14を投入するパイプ投入工程から、金属パイプ材料14に通電して加熱する通電加熱工程までを示している。
図4(a)に示すように、焼入れ可能な鋼種の金属パイプ材料14を準備し、この金属パイプ材料14を、ロボットアーム等(図示しない)により、下型11側に備わる第1、第2電極17、18上に載置する。第1、第2電極17、18には凹溝17a、18aが形成されているので、当該凹溝17a、18aによって金属パイプ材料14が位置決めされる。次に、制御部70(
図1参照)は、パイプ保持機構30を制御することによって、当該パイプ保持機構30に金属パイプ材料14を保持させる。具体的には、
図4(b)のように、各電極17、18を進退動可能としているアクチュエータ(図示しない)を作動させ、各上下に位置する第1、第2電極17、18を接近・当接させる。この当接によって、金属パイプ材料14の両端部は、上下から第1、第2電極17、18によって挟持される。またこの挟持は第1、第2電極17、18に形成される凹溝17a、18aの存在によって、金属パイプ材料14の全周に亘って密着するような態様で挾持されることとなる。ただし、金属パイプ材料14の全周に渡って密着する構成に限られず、金属パイプ材料14の周方向における一部に第1、第2電極17,18が当接するような構成であってもよい。
【0030】
続いて、制御部70は、加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を加熱する。具体的には、制御部70は、加熱機構50のスイッチ53をONにする。そうすると、電源51から電力が金属パイプ材料14に供給され、金属パイプ材料14に存在する抵抗により、金属パイプ材料14自体が発熱する(ジュール熱)。この時、熱電対21の測定値が常に監視され、この結果に基づいて通電が制御される。
【0031】
図5は、ブロー成形後に金属パイプ材料14に対してプレスによりフランジを成形して完成品として、パイプ部80aにフランジ部80bが形成されたフランジ付きの金属パイプ80を得る流れを示している。まず、制御部70は、ヒータ20をオンとしてサブキャビティ部SCを加熱させる(この点の詳細は別途後述する)。そして、制御部70は、パイプ保持機構30によって上型12と下型11との間で保持された金属パイプ材料14内に気体を供給するようにブロー機構60を制御し、金属パイプ材料14を膨張成形する。続いて、制御部70は、ヒータ20をオフとしてサブキャビティ部SCの加熱を停止した後、膨張成形された金属パイプ材料14の一部を上型12及び下型11のサブキャビティ部SCで押し潰すように駆動部81を制御し、フランジ部80bを成形する。具体的には、ヒータ20によってサブキャビティ部SCを加熱させつつ、ブロー成形金型13を閉じ、金属パイプ材料14を当該ブロー成形金型13のキャビティ内に配置密閉する。その後、シリンダユニット42を作動させてブロー機構60の一部であるシール部材44で金属パイプ材料14の両端をシールする(
図6も併せて参照)。なおこのシールは、シール部材44が直接金属パイプ材料14の両端面に当接してシールするのではなく、第1、第2電極17、18に形成されたテーパー凹面17b、18bを介して間接的に行われる。こうすることによって広い面積でシールできることからシール性能を向上させることができる上、繰り返しのシール動作によるシール部材の摩耗を防止し、更に、金属パイプ材料14両端面の潰れ等を効果的に防止している。シール完了後、高圧ガスを金属パイプ材料14内へ吹き込んで、加熱により軟化した金属パイプ材料14をキャビティの形状に沿うように変形させる。そして、ヒータ20をオフとしてサブキャビティ部SCの加熱を停止した後、ブロー成形後の金属パイプ材料14に対してフランジ部80bを形成するためのプレス動作を行い(この点の詳細は別途後述する。)、型開きを行うと、完成品としてのパイプ部80a及びフランジ部80bを有する金属パイプ80ができ上がる。
【0032】
金属パイプ材料14は高温(950℃前後)に加熱されて軟化しており、比較的低圧でブロー成形することができる。具体的には、高圧ガスとして、4MPaで常温(25℃)の圧縮空気を採用した場合、この圧縮空気は、密閉した金属パイプ材料14内で結果的に950℃付近まで加熱される。圧縮空気は熱膨張し、ボイル・シャルルの法則に基づき、約16〜17MPaにまで達する。即ち、950℃の金属パイプ材料14を容易にブロー成形することができる。
【0033】
そして、ブロー成形されて膨らんだ金属パイプ材料14の外周面が下型11のキャビティ16(主には、メインキャビティ16A)に接触して急冷されると同時に、上型12のキャビティ24(主には、メインキャビティ24A)に接触して急冷(上型12と下型11は熱容量が大きく且つ低温に管理されているため金属パイプ材料14が接触すればパイプ表面の熱が一気に金型側へと奪われる。)されて焼き入れが行われる。このような冷却法は、金型接触冷却又は金型冷却と呼ばれる。急冷された直後はオーステナイトがマルテンサイトに変態する。冷却の後半は冷却速度が小さくなったので、復熱によりマルテンサイトが別の組織(トルースタイト、ソルバイトなど)に変態する。従って、別途焼戻し処理を行う必要がない。
【0034】
ここで、ブロー成形時にヒータ20によりサブキャビティ部SCを加熱する理由を説明する。上述したように、ブロー成形されて膨らんだ金属パイプ材料14は、上型12及び下型11に接触することで冷却される。このため、金属パイプ材料14の一部をプレスして押し潰す前に、金属パイプ材料14のうちのフランジ部80bとなるフランジ成形部分の温度が下がってしまい、フランジ部80bを目標の形状通りに成形できない可能性があった。そこで、本実施形態の成形装置10では、ブロー成形時にヒータ20によってサブキャビティ部SCを加熱させる。これにより、ブロー成形時にフランジ成形部分がサブキャビティ部SCに接触して当該フランジ成形部分の温度が下がってしまうことを抑制でき、適切な温度でフランジ部80bを成形することが可能となる。本実施形態では、制御部70は、ブロー成形の開始前からヒータ20をオンとし、ブロー成形完了後の型閉時にヒータ20をオフとすることで、ブロー成形時にはサブキャビティ部SCを加熱された状態としつつ、フランジ部80bの成形時にはサブキャビティ部SCが加熱されない状態となるように、ヒータ20を制御する。
【0035】
なお、本実施形態では、ブロー成形の開始前からブロー成形完了までの間、ヒータ20にサブキャビティ部SCを加熱させる制御としたが、加熱のタイミングはこれに限られない。つまり、少なくともブロー成形が開始されてフランジ成形部分がサブキャビティ部SCに接触する時点よりも前に加熱を行ってよく、例えばブロー成形の開始と同時に加熱を開始する制御としてもよいし、或いはブロー成形の開始前にヒータ20をオンとして加熱しておき、ブロー成形の開始後にはヒータ20をオフとする制御してもよい。また、ブロー成形後にヒータ20をオンとしてもよい。例えば、サブキャビティ部SCでフランジ部80bを成形するときにヒータ20をオンとしてもよい。
【0036】
次に、
図7を参照して、上型12及び下型11による成形の様子について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、成形途中の金属パイプ材料14のうち、完成品に係る金属パイプ80のパイプ部80aに対応する部分を「パイプ成形部分14a」と称し、フランジ部80bに対応する部分を「フランジ成形部分14b」と称する。
図7(a),(b)に示しているように、本発明に係る成形装置10において、ブロー成形は上型12と下型11とが完全に閉じた(クランプした)状態で行われているのではない。即ち一定の離間状態が保たれていることによって、メインキャビティ部MCの横にサブキャビティ部SCが形成されている状態でブロー成形が行われる。当該状態では、メインキャビティ24Aの表面とメインキャビティ16Aの表面との間にメインキャビティ部MCが形成される。また、メインキャビティ部MCの左右両側において、サブキャビティ24Bの表面とサブキャビティ16Bの表面との間にサブキャビティ部SCが形成される。これらメインキャビティ部MCとサブキャビティ部SCは連通されている。このため、
図7(b)に示すように、加熱により軟化し且つ高圧ガスが注入された金属パイプ材料14は、メインキャビティ部MCのみならずサブキャビティ部SCにまで入り込んで膨張する。上述したように、このブロー成形時にはヒータ20がオンとされてサブキャビティ部SCが加熱されている。
図7に示す例では、メインキャビティ部MCは断面矩形状に構成されているため、金属パイプ材料14は当該形状に合わせてブロー成形されることにより、断面矩形状に成形される。なお、当該部分が、パイプ部80aとなるパイプ成形部分14aに対応する。ただし、メインキャビティ部MCの形状は特に限定されず、所望の形状に合わせて円形、楕円形、多角形等あらゆる形状を採用してもよい。また、メインキャビティ部MCとサブキャビティ部SCとが連通しているため、金属パイプ材料14の一部は、サブキャビティ部SCへ入り込む。当該部分が、押し潰されることによってフランジ部80bとなるフランジ成形部分14bに該当する。
【0037】
図7(c)に示すように、ブロー成形後若しくはブロー成形の途中の段階で、離間している上型12と下型11とを接近させる。この動作によって、サブキャビティ部SCの容積が小さくなり、フランジ成形部分14bの内部空間が消滅し、折りたたまれた状態となる。即ち、当該上型12と下型11の接近によって、サブキャビティ部SC内に入り込んでいる金属パイプ材料14のフランジ成形部分14bがプレスされ押し潰される。その結果、金属パイプ材料14の外周面に、当該金属パイプ材料14の長手方向に沿うように押し潰されたフランジ成形部分14b(当該状態では、金属パイプ材料14は、完成品としての金属パイプ80と同様の形状となる)が成形される。なお、これらブロー成形からフランジ部80bのプレス成形完了に至るまでの時間は、金属パイプ材料14の種類にもよるが概ね1〜2秒程度で完了する。上述したように、このプレス成形時にはヒータ20がオフとされてサブキャビティ部SCの加熱が停止されている。
図7に示す例では、プレス成形完了時には、上型12の表面12bが下型11の表面11bと当接し、上型12と下型11とがそれ以上近接できない状態となる。当該状態では、サブキャビティ24Bの表面とサブキャビティ16Bの表面との間には、押し潰されたフランジ成形部分14b(すなわちフランジ部80b)の厚さに対応する隙間が形成されている。
【0038】
また、ブロー成形後の上型12と下型11の接近によって、サブキャビティ部SC内に入り込んでいる金属パイプ材料14のフランジ成形部分14bのみならず、メインキャビティ部MC部分の金属パイプ材料14のパイプ成形部分14aも押し潰されることとなるが、加熱されて軟化しているので型閉じするスピードや圧縮ガス等を調節することによって、弛みや捩れのない製品に仕上げることができる。
【0039】
(変形例1)
次に、
図8を参照して、変形例1に係る成形装置について説明する。変形例1に係る成形装置は、ヒータが上型と下型の間に配置されている点で上記実施形態の成形装置10と相違する。以下では、上記実施形態との相違点について特に説明し、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
図8に示すように、変形例1のブロー成形金型113では、上型112の表面112bにおけるサブキャビティ24Bの左右外側(サブキャビティ24Bに対するメインキャビティ24Aとは反対側)それぞれに、矩形状の凹部112Aが形成されている。また、下型111の表面111bにおけるサブキャビティ16Bの左右外側それぞれに、矩形状の凹部111Aが形成されている。これら凹部112A,111Aは、
図8(b)に示すように、型閉時には上型112と下型111との間に収容部(収容空間)130を画成する。
【0041】
変形例1に係る成形装置では、ヒータ120(加熱部)は、上型112と下型111との間に配置されている。ヒータ120は、ブロー成形金型113の長手方向における外側で両端が支持されることにより固定されており、ブロー成形金型113とは別に設置されている。ヒータ120は、収容部130に収容されることで、型閉時(プレス成形時)においてブロー成形金型113と接触(干渉)しないように設けられている。ヒータ120は、ブロー成形時にブロー成形金型113を局部的に加熱するために用いられる点においては上記実施形態のヒータ20と同様である。即ち、制御部70は、ブロー成形前からヒータ120をオンとし、ブロー成形完了後の型閉時にヒータ120をオフとすることで、ブロー成形時にはサブキャビティ部SCを加熱された状態としつつ、フランジ部80bの成形時にはサブキャビティ部SCが加熱されない状態となるように、ヒータ120を制御してよい。なお、変形例1の成形装置として、ヒータ120が型閉時にブロー成形金型113と接触しないように設けられた例を挙げて説明したが、ヒータ120はブロー成形金型113と接触するように設けられていてもよい。
【0042】
(変形例2)
次に、
図9を参照して、変形例2に係る成形装置について説明する。変形例2に係る成形装置は、ヒータに代えて加熱流体を供給する加熱流体供給部を備える点で上記実施形態の成形装置10と相違する。以下では、上記実施形態との相違点について特に説明し、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
図9に示すように、変形例2のブロー成形金型213では、上型212及び下型211には、加熱流体供給部220(加熱部)が設けられている。加熱流体供給部220は、隅部212c,111cに形成された、加熱流体(高温エア)が流れる配管部221と、配管部221から延在してサブキャビティ24B,16Bの表面に開口する吹出部223と、を有している。変形例2に係る成形装置では、上述したヒータ20やヒータ120に代えて、吹出部223の吹き出し口から加熱流体を供給する(ブローする)ことによってサブキャビティ部SCを加熱する。加熱流体は、気体及び液体のいずれでもよく、好ましくは窒素やアルゴンガスなどの不活性ガスである。変形例2に係る成形装置では、制御部70は、ブロー成形後に加熱流体供給部220に加熱流体を供給させることで、ブロー成形時にサブキャビティ部SCが加熱された状態となるように加熱流体供給部220を制御する。なお、ブロー成形時(型閉時)には、加熱流体供給部220からの加熱流体の供給を停止させるだけではなく、冷却流体(冷媒)を供給して吹き出し口の周りを冷却してもよい。この冷媒としては例えば気体を用いることができる。
【0044】
次に、本実施形態に係る成形装置10の作用及び効果について説明する。
【0045】
従来技術の成形装置を用いてフランジ部80b付きの金属パイプ80を成形する場合、ブロー成形時に金属パイプ材料14のフランジ成形部分14bがサブキャビティ部SCに接触して冷却されることで、プレス成形で押し潰す前にフランジ成形部分14bの温度が下がってしまい、フランジ部80bを目標の形状通りに成形できない可能性があった。
【0046】
この点、本実施形態に係る成形装置10は、サブキャビティ部SCを加熱するヒータ20を備えている。適切な温度でフランジ部80bの成形を行うことが可能となり、成形品(金属パイプ80)の均一性を向上できる。このように、成形装置10によれば、ブロー成形金型13を局部的に加熱するヒータ20を備えることで、均一な製品を成形することが可能となる。
【0047】
なお、本実施形態に係る成形装置10によれば、ヒータ20(ヒータ120、加熱流体供給部220)で加熱することによりブロー成形時(膨張成形時)におけるサブキャビティ部SCの温度を調整することが可能となることから、ブロー成形時にフランジ成形部分14bがサブキャビティ部SCに接触してフランジ成形部分14bの温度が下がってしまうことを抑制できる。
【0048】
また、成形装置10では、ヒータ20が上型12及び下型11の少なくとも一方に埋設されていることから、ヒータ20が上型12又は下型11に接触し、ヒータ20による上型12又は下型11の調温の応答性が良くなるという効果が得られる。また、パイプ材料14に付着したスケールが飛散してヒータ20に付着してしまい、ヒータ20の性能が低下したり、ヒータ20が故障してしまうことを抑制できる。変形例1の成形装置では、ヒータ110は、ブロー成形金型13の間(上型12と下型11との間)に配置されており、ブロー成形金型13は、型閉時にヒータ110を収容する収容部130を有していることから、ヒータ20の交換時の作業性が良くなるという効果が得られる。変形例2の成形装置では、加熱流体供給部220は、サブキャビティ部SCに加熱流体を供給することによってサブキャビティ部SCを加熱することから、加熱が完了した後は加熱流体の供給を停止することで次工程であるフランジ部の冷却へ急速に切り替えることが可能となるという効果が得られる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
【0050】
上記成形装置10では、上下金型の間で加熱処理できる加熱機構50を備え、通電によるジュール熱を利用して金属パイプ材料14を加熱していたが、これらに限定されるものではない。例えば、加熱処理が上下金型の間以外の場所で行われ、加熱後の金属製パイプを金型間に運び込んでもよい。また、通電によるジュール熱を利用する以外にも、ヒータ等の輻射熱を利用してもよいし、高周波誘導電流を利用して加熱することも可能である。
【0051】
高圧ガスは、窒素ガス、アルゴンガスなどの非酸化性ガスや不活性ガスを主に採用できるが、これらは金属パイプ内に酸化スケールを発生しづらくさせることができるものの、高価である。この点、圧縮空気であれば、酸化スケールの発生により大きな問題を生じさせない限り、安価であり、大気中に漏れても実害はなく、取扱いが極めて容易である。したがって、ブロー工程を円滑に実行することができる。
【0052】
ブロー成形金型は無水冷金型と水冷金型の何れでもよい。ただし、無水冷金型は、ブロー成形終了後に金型を常温付近まで下げるときに、長時間を要する。この点、水冷金型であれば、短時間で冷却が完了する。したがって、生産性向上の観点からは、水冷金型が望ましい。