(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表面データ処理部は、前記加飾データにおいてつや消し状で形成することが示されている領域に対し、前記三次元データが示す前記造形物の表面の状態を粗く変化させた前記加飾造形物データを生成することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の造形システム。
前記造形実行部は、造形中の前記造形物の周囲を支えるサポート層の材料を吐出可能であり、少なくとも前記状態を粗く変化させる領域に前記サポート層の材料を接触させた状態で、前記造形物を造形することを特徴とする請求項8に記載の造形システム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る造形システム10の一例を示す。
図1(a)は、造形システム10の構成の一例を示す。本例において、造形システム10は、立体的な造形物を造形する造形システムであり、造形装置12及び制御PC14を備える。
【0019】
造形装置12は、造形物の造形を実行する装置であり、制御PC14の制御に応じて、造形物を造形する。また、より具体的に、造形装置12は、フルカラーでの着色がされた造形物を造形可能なフルカラー造形装置であり、ユーザ(操作者)により指定された加飾が施された造形物を示すデータである加飾造形物データを制御PC14から受け取り、加飾造形物データに基づいて、造形物を造形する。また、これにより、造形装置12は、ユーザにより指定された加飾が施された造形物を造形する。造形装置12のより具体的な構成や、ユーザにより指定される加飾等については、後に更に詳しく説明をする。
【0020】
制御PC14は、造形装置12の動作を制御するコンピュータ(ホストPC)である。本例において、造形装置12は、少なくとも造形物の立体的な形状を示すデータである三次元データを外部から受け取る。また、造形物に施すべき加飾の指定を、ユーザから受け取る。そして、指定された加飾を示すデータである加飾データと、三次元データとに基づき、加飾造形物データを生成する。そして、生成した加飾造形物データを造形装置12へ供給する。また、これにより、制御PC14は、造形装置12による造形の動作を制御する。
【0021】
ここで、本例において、加飾データは、例えば、造形物の表面の少なくとも一部に対して施す加飾を示すデータである。また、加飾造形物データは、例えば、加飾データが示す加飾が施された造形物を示すデータである。また、三次元データとしては、公知の様々な形式の3Dデータを用いることができる。例えば、三次元データとしては、色の指定がされていないオブジェクトを示す3Dデータを用いることができる。また、三次元データとして、単一の色が設定された3Dデータを用いること等も考えられる。また、三次元データとして、例えば表面の各位置に対してフルカラーの色が指定されている3Dデータ等を用いてもよい。
【0022】
また、上記のように、本例において、制御PC14は、三次元データを、外部から受け取る。しかし、造形システム10の変形例において、制御PC14は、例えばユーザの指示に基づき、三次元データを生成してもよい。また、造形システム10の変形例において、制御PC14は、例えば、加飾データを外部から受け取ってもよい。この場合、制御PC14は、例えば、三次元データと加飾データとを外部から受け取ってもよい。また、本例における制御PC14の具体的な構成や動作については、後に更に詳しく説明をする。
【0023】
また、上記のように、本例において、造形システム10は、複数の装置である造形装置12及び制御PC14により構成されている。しかし、造形システム10の変形例において、造形システム10は、一台の装置により構成されてもよい。この場合、例えば、制御PC14の機能を含む一台の造形装置12により造形システム10を構成すること等が考えられる。
【0024】
続いて、造形装置12の具体的な構成について、説明をする。
図1(b)は、造形装置12の要部の構成の一例を示す。本例において、造形装置12は、加飾データが示す加飾が施された造形物50を造形する造形実行部の一例であり、ヘッド部102、造形台104、走査駆動部106、及び制御部108を有する。
【0025】
尚、以下に説明をする点を除き、造形装置12は、公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。より具体的に、以下に説明をする点を除き、造形装置12は、例えば、インクジェットヘッドを用いて造形物50の材料となる液滴を吐出することで造形を行う公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。また、造形装置12は、図示した構成以外にも、例えば、造形物50の造形や着色等に必要な各種構成を更に備えてよい。また、本例において、造形装置12は、積層造形法により立体的な造形物50を造形する造形装置(3Dプリンタ)である。この場合、積層造形法とは、例えば、複数の層を重ねて造形物50を造形する方法である。造形物50とは、例えば、立体的な三次元構造物のことである。また、加飾データが示す加飾が施された造形物50の特徴については、後に更に詳しく説明をする。
【0026】
ヘッド部102は、造形物50の材料を吐出する部分である。また、本例において、造形物50の材料としては、インクを用いる。この場合、インクとは、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体のことである。また、より具体的に、ヘッド部102は、造形物50の材料として、複数のインクジェットヘッドから、所定の条件に応じて硬化するインクを吐出する。そして、着弾後のインクを硬化させることにより、造形物50を構成する各層を重ねて形成して、積層造形法で造形物を造形する。また、本例では、インクとして、紫外線の照射により液体状態から硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)を用いる。
【0027】
また、ヘッド部102は、造形物50の材料に加え、サポート層52の材料を更に吐出する。また、これにより、造形装置12は、造形物50の周囲に、必要に応じて、サポート層52を形成する。サポート層52とは、例えば、造形中の造形物50の外周を囲むことで造形物50を支持する積層構造物のことである。サポート層52は、造形物50の造形時において、必要に応じて形成され、造形の完了後に除去される。
【0028】
造形台104は、造形中の造形物50を支持する台状部材であり、ヘッド部102におけるインクジェットヘッドと対向する位置に配設され、造形中の造形物50を上面に載置する。また、本例において、造形台104は、少なくとも上面が積層方向(図中のZ方向)へ移動可能な構成を有しており、走査駆動部106に駆動されることにより、造形物50の造形の進行に合わせて、少なくとも上面を移動させる。この場合、積層方向とは、例えば、積層造形法において造形の材料が積層される方向のことである。また、より具体的に、本例において、積層方向は、主走査方向(図中のY方向)及び副走査方向(図中のX方向)と直交する方向である。
【0029】
走査駆動部106は、造形中の造形物50に対して相対的に移動する走査動作をヘッド部102に行わせる駆動部である。この場合、造形中の造形物50に対して相対的に移動するとは、例えば、造形台104に対して相対的に移動することである。また、ヘッド部102に走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部102が有するインクジェットヘッドに走査動作を行わせることである。また、本例において、走査駆動部106は、主走査動作(Y走査)、副走査動作(X走査)、及び積層方向走査(Z走査)をヘッド部102に行わせる。
【0030】
主走査動作とは、例えば、主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作のことである。本例において、走査駆動部106は、主走査方向における造形台104の位置を固定して、ヘッド部102の側を移動させることにより、ヘッド部102に主走査動作を行わせる。また、走査駆動部106は、例えば、主走査方向におけるヘッド部102の位置を固定して、例えば造形台104を移動させることにより、造形物50の側を移動させてもよい。
【0031】
副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ造形台104に対して相対的に移動する動作のことである。また、より具体的に、副走査動作は、例えば、予め設定された送り量だけ副走査方向へ造形台104に対して相対的に移動する動作である。本例において、走査駆動部106は、主走査動作の合間に、副走査方向におけるヘッド部102の位置を固定して、造形台104を移動させることにより、ヘッド部102に副走査動作を行わせる。また、走査駆動部106は、副走査方向における造形台104の位置を固定して、ヘッド部102を移動させることにより、ヘッド部102に副走査動作を行わせてもよい。
【0032】
積層方向走査とは、例えば、積層方向へヘッド部102又は造形台104の少なくとも一方を移動させることで造形物50に対して相対的に積層方向へヘッド部102を移動させる動作のことである。また、走査駆動部106は、造形の動作の進行に合わせてヘッド部102に積層方向走査を行わせることにより、積層方向において、造形中の造形物50に対するインクジェットヘッドの相対位置を調整する。また、より具体的に、本例において、走査駆動部106は、積層方向におけるヘッド部102の位置を固定して、造形台104を移動させる。走査駆動部106は、積層方向における造形台104の位置を固定して、ヘッド部102を移動させてもよい。
【0033】
制御部108は、例えば造形装置12のCPUであり、造形装置12の各部を制御することにより、造形物50の造形の動作を制御する。また、本例において、制御部108は、制御PC14から受け取る加飾造形物データに基づき、造形装置12の各部を制御する。本例によれば、造形物50を適切に造形できる。
【0034】
続いて、造形装置12におけるヘッド部102の構成や、造形装置12が造形する造形物50の構成の例について、更に詳しく説明をする。
図2は、ヘッド部102及び造形物50の構成について説明をする図である。
図2(a)は、ヘッド部102の構成の一例を示す。
【0035】
本例において、ヘッド部102は、複数のインクジェットヘッド、複数の紫外線光源204、及び平坦化ローラ206を有する。また、複数のインクジェットヘッドとして、図中に示すように、インクジェットヘッド202s、インクジェットヘッド202mo、インクジェットヘッド202w、インクジェットヘッド202y、インクジェットヘッド202m、インクジェットヘッド202c、インクジェットヘッド202k、及びインクジェットヘッド202tを有する。これらの複数のインクジェットヘッドは、例えば、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。また、それぞれのインクジェットヘッドは、造形台104と対向する面に、所定のノズル列方向へ複数のノズルが並ぶノズル列を有する。また、本例において、ノズル列方向は、副走査方向と平行な方向である。
【0036】
また、これらのインクジェットヘッドのうち、インクジェットヘッド202sは、サポート層52の材料を吐出するインクジェットヘッドである。サポート層52の材料としては、例えば、サポート層用の公知の材料を好適に用いることができる。インクジェットヘッド202moは、造形材インク(Moインク)を吐出するインクジェットヘッドである。この場合、造形材インクとは、例えば、造形物50の内部(内部領域)の造形に用いる造形専用のインクである。
【0037】
尚、造形物50の内部については、造形材インクに限らず、他の色のインクを更に用いて形成してもよい。また、例えば、造形材インクを用いずに、他の色のインク(例えば白色のインク等)のみで造形物50の内部を形成することも考えられる。この場合、ヘッド部102において、インクジェットヘッド202moを省略してもよい。
【0038】
インクジェットヘッド202wは、白色(W色)のインクを吐出するインクジェットヘッドである。また、本例において、白色のインクは、光反射性のインクの一例であり、例えば造形物50において光を反射する性質の領域(光反射領域)を形成する場合に用いられる。
【0039】
インクジェットヘッド202y、インクジェットヘッド202m、インクジェットヘッド202c、インクジェットヘッド202k(以下、インクジェットヘッド202y〜kという)は、着色された造形物50の造形時に用いられる着色用のインクジェットヘッドである。より具体的に、インクジェットヘッド202yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド202mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド202cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。また、インクジェットヘッド202kは、ブラック色(K色)のインクを吐出する。また、この場合、YMCKの各色は、減法混色法によるフルカラー表現に用いるプロセスカラーの一例である。また、これらの各色のインクは、着色用の有色の材料の一例である。また、インクジェットヘッド202tは、クリアインクを吐出するインクジェットヘッドである。クリアインクとは、例えば、無色の透明色(T)であるクリア色のインクのことである。
【0040】
複数の紫外線光源204は、インクを硬化させるための光源(UV光源)であり、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発生する。また、本例において、複数の紫外線光源204のそれぞれは、間にインクジェットヘッドの並びを挟むように、ヘッド部102における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。紫外線光源204としては、例えば、UVLED(紫外LED)等を好適に用いることができる。また、紫外線光源204として、メタルハライドランプや水銀ランプ等を用いることも考えられる。
【0041】
平坦化ローラ206は、造形物50の造形中に形成されるインクの層を平坦化するための平坦化手段である。平坦化ローラ206は、例えば主走査動作時において、インクの層の表面と接触して、硬化前のインクの一部を除去することにより、インクの層を平坦化する。
【0042】
以上のような構成のヘッド部102を用いることにより、造形物50を構成するインクの層を適切に形成できる。また、複数のインクの層を重ねて形成することにより、造形物50を適切に造形できる。
【0043】
尚、ヘッド部102の具体的な構成については、上記において説明をした構成に限らず、様々に変形することもできる。例えば、ヘッド部102は、着色用のインクジェットヘッドとして、上記以外の色用のインクジェットヘッドを更に有してもよい。また、ヘッド部102における複数のインクジェットヘッドの並べ方についても、様々に変形可能である。例えば、一部のインクジェットヘッドについて、他のインクジェットヘッドと副走査方向における位置をずらしてもよい。
【0044】
図2(b)は、造形装置12により造形する造形物50の構成の例を示す図であり、楕円体状の造形物50を造形する場合について、造形物50の断面の構成の一例を示す。また、図中に示すように、図示した断面は、Z方向と垂直なX−Y断面である。また、この場合、Y方向やZ方向と垂直な造形物50のZ−X断面やZ−Y断面の構成も、同様の構成になる。
【0045】
また、
図2(b)においては、表面が着色された造形物50を造形する場合について、造形物50の構成を簡略化して示している。この場合、造形物50の表面が着色されるとは、例えば、造形物50において外部から色彩を視認できる領域の少なくとも一部が着色されることである。この場合、造形装置12は、例えば図中に示すように、内部領域152、光反射領域154、分離領域156、着色領域158、及び保護領域160を有する造形物50を造形する。
【0046】
内部領域152は、造形物50の内部を構成する領域である。また、内部領域152については、例えば、造形物50の形状を構成する領域(造形領域)と考えることもできる。本例において、ヘッド部102は、インクジェットヘッド202moから吐出する造形材インクを用いて、内部領域152を形成する。
【0047】
光反射領域154は、着色領域158等を介して造形物50の外側から入射する光を反射するための領域である。本例において、ヘッド部102は、インクジェットヘッド202wから吐出する白色のインクを用いて、内部領域152の周囲に光反射領域154を形成する。
【0048】
分離領域156は、光反射領域154を構成するインクと着色領域158を構成するインクとが混ざり合うことを防ぐための透明な領域(透明層)である。本例において、ヘッド部102は、インクジェットヘッド202tから吐出するクリアインクを用いて、光反射領域154の周囲に分離領域156を形成する。
【0049】
着色領域158は、インクジェットヘッド202y〜kから吐出する着色用のインクにより着色がされる領域である。この場合、着色用のインクは、着色用の材料の一例である。本例において、ヘッド部102は、インクジェットヘッド202y〜kから吐出する着色用のインクと、インクジェットヘッド202tから吐出するクリアインクとを用いて、分離領域156の周囲に着色領域158を形成する。また、これにより、着色領域158は、内部領域152等の外側に形成される。また、この場合、例えば、各位置への各色の着色用のインクの吐出量を調整することにより、様々な色を表現する。また、色の違いによって生じる着色用のインクの量(単位体積あたりの吐出量が0%〜100%)の変化を一定の100%に補填するために、クリアインクを用いる。このように構成すれば、例えば、着色領域158の各位置を所望の色で適切に着色できる。
【0050】
保護領域160は、造形物50の外面を保護するための透明な領域(外側透明領域)である。本例において、ヘッド部102は、インクジェットヘッド202tから吐出するクリアインクを用いて、着色領域158の周囲に保護領域160を形成する。また、これにより、ヘッド部102は、透明な材料を用いて、着色領域158の外側を覆うように、保護領域160を形成する。以上のように各領域を形成することにより、表面が着色された造形物50を適切に形成できる。
【0051】
尚、造形物50の構成の変形例においては、造形物50の具体的な構成について、上記と異ならせることも考えられる。より具体的には、例えば、内部領域152と光反射領域154とを区別せずに、例えば白色のインクを用いて、光反射領域154の機能を兼ねた内部領域152を形成すること等が考えられる。また、分離領域156や着色領域158等を省略すること等も考えられる。
【0052】
また、造形装置12においては、例えば、着色がされていない造形物50を造形すること等も考えられる。この場合、造形装置12は、例えば、
図2(b)に示した構成から一部の領域を省略した構成の造形物50を造形する。より具体的に、この場合、例えば、光反射領域154、分離領域156、及び着色領域158等を省略することが考えられる。また、後に詳しく説明をするように、本例においては、造形物50に対する加飾として、造形物50の表面にしぼ加工状の細かい凹凸を形成すること等も考えられる。しかし、
図2(b)においては、図示の便宜上、このような細かい凹凸等は省略して図示を行っている。しぼ加工状の加飾については、後に更に詳しく説明をする。
【0053】
続いて、制御PC14の具体的な構成や動作について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、制御PC14は、造形物に施すべき加飾の指定を、ユーザから受け取る。そして、指定された加飾を示す加飾データと、三次元データとに基づき、加飾造形物データを生成する。また、生成した加飾造形物データを、造形装置12(
図1参照)へ供給する。
【0054】
また、より具体的に、本例において、制御PC14は、造形物に施すべき加飾の指定として、しぼパターンの指定、造形物50の色の指定、及び造形物50に描く画像の指定を受け付ける。また、これらの指定可能な加飾に応じて、制御PC14は、それぞれの加飾を行うための構成を有している。
【0055】
図3は、制御PC14の要部の構成の一例を示す機能ブロック図である。本例において、制御PC14は、データ入力部302、表面データ処理部304、データ出力部306、表示部308、パターン選択部310、しぼパターンメモリ312、色選択部314、色パレット316、画像選択部318、画像メモリ320、及び画像データ管理部322を有する。尚、
図3は、制御PC14について、機能上の特徴を説明するために様々な機能をブロックに分けて示したものである。そのため、各ブロックが制御PC14における物理的な構成(例えば、電子回路のユニット等)に必ずしも対応しているわけではない。
【0056】
データ入力部302は、三次元データ入力部の一例であり、例えば、制御PC14の外部から供給される三次元データの入力を受け付ける。データ入力部302は、例えばインターネット等の通信経路や、メモリカード等の記憶媒体を介して、三次元データの入力を受け付ける。
【0057】
表面データ処理部304は、加飾データ及び三次元データに基づいて加飾造形物データを生成する処理部である。本例において、表面データ処理部304は、パターン選択部310、色選択部314、及び画像選択部318を介して、造形物50(
図1参照)の表面の少なくとも一部に対して施す加飾を示す加飾データを取得する。この場合、パターン選択部310、色選択部314、及び色パレット316は、加飾指定受付部の一例であり、造形物50の表面の少なくとも一部に対する加飾の仕方の指定をユーザから受け付ける。
【0058】
また、表面データ処理部304は、パターン選択部310等から受け取る加飾データに基づいて三次元データを加工することにより、加飾が施された造形物50を示す加飾造形物データを生成する。この場合、加飾データに基づいて三次元データを加工するとは、例えば、三次元データが示すオブジェクトの表面に対し、加飾データが示す加飾を追加することである。また、加飾を追加するとは、例えば、造形物50の表面に対し、指定されたしぼパターンに対応する凹凸形状(凹凸模様)の追加、指定された色の着色、又は指定された画像を追加することである。また、造形物50の表面とは、例えば、造形物50において外部から質感や色彩を確認できる領域のことである。
【0059】
データ出力部306は、表面データ処理部304が生成した加飾造形物データを出力する出力部である。データ出力部306は、例えば、通信経路や記憶媒体を介して加飾造形物データを出力することにより、加飾造形物データを造形装置12へ供給する。表示部308は、例えばモニタ等の表示装置であり、造形物50に施す加飾のプレビュー表示等を実行する。
【0060】
パターン選択部310及びしぼパターンメモリ312は、加飾の指定としてしぼパターンの指定を行うための構成である。この場合、しぼパターンとは、例えば、しぼ加工状の凹凸のパターンを示すデータのことである。この場合、凹凸のパターンとは、例えば、凹凸の形状や並び方等を示すパターンのことである。また、しぼ加工状の凹凸とは、例えば、プレス金型等において行うしぼ加工(皺加工)において形成するしぼ(皺)と同様の凹凸のことである。しぼ加工とは、例えば、表面を鏡面仕上げにせず、細かい模様(凹凸)をつける加工のことである。また、この場合、しぼとは、この細かい模様のことである。
【0061】
また、本例において、パターン選択部310は、しぼパターンメモリ312に格納されているしぼパターンを表示部308に表示することにより、互いに異なる複数種類のしぼパターンをユーザに提示する。そして、ユーザにいずれかのしぼパターンを選択させることにより、加飾の仕方の指定をユーザから受け付ける。そして、選択されたしぼパターンに対応する加飾データを表面データ処理部304へ供給する。この場合、しぼパターンに対応する加飾データとは、例えば、そのしぼパターンに従って造形物50の表面にしぼ加工状の凹凸を形成する加飾を行うことを示す加飾データのことである。
【0062】
また、しぼパターンメモリ312は、予め設定された複数種類のしぼパターンを記憶するメモリである。この場合、複数種類のしぼパターンとしては、例えば、ヘアライン、梨地、木目、岩目、砂目、布地模様、幾何学模様等の様々な質感に対応するパターンを用いることが考えられる。また、しぼパターンの一つとして、しぼ加工状の加飾を行わない場合に対応するパターンも記憶して、パターン選択部310に提示させることが好ましい。
【0063】
また、しぼパターンメモリ312は、それぞれのしぼパターンに対応付けて、造形物50への加飾時に形成すべき凹凸の形状等を更に記憶する。この場合、例えばヘアライン、木目、布地模様等の少なくとも一部のパターンについては、凹凸の形状のみではなく、模様に合わせて色も変化させることが好ましい場合もある。そのため、このような場合、しぼパターンメモリ312は、しぼパターンと対応付けて、色の情報も記憶することが好ましい。
【0064】
色選択部314及び色パレット316は、加飾の指定として色の指定を行うための構成である。この場合、色の指定とは、例えば、造形物50の表面の少なくとも一部について、着色する色を指定することである。また、本例において、色の指定は、造形物50の着色領域158(
図2参照)に着色する色を指定することである。色選択部314は、例えば、2次元の画像を印刷する場合の公知の方法と同一又は同様にして、色の指定の指示をユーザから受け付ける。この場合、色選択部314は、造形物50の表面に着色する色について、例えば、カラーパレットからの選択(色選択)や、RGBの数値指定による色の合成等により、ユーザからの指定を受け付ける。また、この場合、例えば表示部308にプレビュー画像を表示させることにより、加飾の結果をユーザに確認させながら、ユーザに色の選択や決定を行わせる。また、ユーザによる色の指定に応じて、色選択部314は、造形物50に着色する色を示す加飾データを表面データ処理部304へ供給する。また、色パレット316は、ユーザに色の選択を行わせるカラーパレットを記憶する記憶部(カラーパレット用メモリ)である。
【0065】
画像選択部318、画像メモリ320、及び画像データ管理部322は、加飾の指定として画像の指定を行うための構成である。この場合、画像の指定とは、例えば、造形物50の表面の少なくとも一部に描く画像のことである。また、造形物50の表面に画像を描くとは、例えば、造形物50の着色領域158に対し、複数色の着色用のインクを用いて画像に対応する絵柄を形成することで、指定の画像が外部から視認できるように形成することである。また、造形物50の加飾に用いる画像としては、例えば、カラーパターン、CG画像、又は写真画像等を用いることが考えられる。
【0066】
また、画像の指定時において、画像選択部318は、例えば、画像メモリ320に記憶されている画像を読み出し、表示部308に表示させることにより、選択可能な画像をユーザに提示する。また、これにより、造形物50の加飾に用いる画像について、ユーザの選択を受け付ける。そして、画像選択部318は、ユーザに指定された画像データを示す加飾データを、表面データ処理部304へ供給する。
【0067】
また、画像メモリ320は、造形物50の加飾に使用する画像を記憶するメモリである。本例において、画像メモリ320は、例えば、画像データ管理部322を介して取得した複数の画像を記憶する。また、画像データ管理部322は、画像メモリ320に記憶させるメモリを管理する管理部であり、加飾用の画像を示す画像データについて、画像メモリ320への書き込みや、画像メモリ320からの消去を行う。また、画像データ管理部322は、必要に応じて、例えば、通信経路や記憶媒体等を介して、制御PC14の外部から画像を取得する。
【0068】
以上のようにして、本例において、制御PC14は、加飾データ及び三次元データに基づき、加飾造形物データを生成する。また、この場合、制御PC14は、複数の加飾データを用いて、加飾造形物データを生成してもよい。より具体的に、制御PC14における表面データ処理部304は、例えば、パターン選択部310、色選択部314、及び画像選択部318のそれぞれから加飾データを受け取り、これらの複数の加飾データと三次元データとに基づき、加飾造形物データを生成してもよい。また、表面データ処理部304は、パターン選択部310、色選択部314、及び画像選択部318のうちの一つ又は二つの構成から受け取る一つ又は二つの加飾データを用いて、加飾造形物データを生成してもよい。
【0069】
また、しぼパターンの指定、造形物50の色の指定、及び造形物50に描く画像の指定のうち、いずれの指定をユーザから受けるかについては、例えば、表示部308に表示する操作画面(GUI)に対するユーザの操作に応じて決定することが考えられる。
図4は、加飾の指定時に表示する操作画面の構成の一例を示す。
【0070】
上記においても説明をしたように、本例において、制御PC14は、しぼパターンの指定、造形物50の色の指定、及び造形物50に描く画像の指定をユーザから受け付ける。また、この場合、それぞれの加飾に関する選択や条件の指定については、例えば、アイコンの選択、パターンやパレットに対するクリック、バーのスライド、又は数値の入力等を介して、ユーザから受け付ける。また、この場合、必ずしもこれらの全ての指定を受け付けるのではなく、ユーザが選択した加飾に関する指定のみを受け付けてもよい。
【0071】
そのため、操作画面においては、先ず、例えば図中に画面402として示す画面を表示部308(
図3参照)に示すことで、しぼ(しぼパターン)、色、及び画像のうちのいずれを指定するかについて、ユーザの選択を受け付ける。そして、この選択に応じて、表示部308に表示する画面について、しぼパターン、色、及び画像のそれぞれの指定を受ける画面404、406、408に遷移させる。また、遷移後の画面において、加飾についてのより具体的な指定をユーザから受け付ける。また、画面404、406、408でユーザの指示を受ける間に、必要に応じて、例えば画面410に示すように、加飾のチェック用のプレビュー画像を表示部308に表示する。
【0072】
また、画面404、画面406、及び画面408においては、例えば、
図3を用いて説明をしたそれぞれの加飾に関連する各種の情報を表示する。例えば、しぼパターンの指定用の画面404においては、選択可能な複数種類のしぼパターンを表示する。また、本例において、画面404では、しぼパターンに加え、しぼパターンを適用する倍率(表面方向倍率)や、しぼの深さ(しぼ深さ)についても、ユーザの指定を受けるための表示を行う。この場合、しぼパターンを適用する倍率とは、造形物50の表面に実際に形成する凹凸のパターンの大きさについて、所定の基準の大きさと比較して示す倍率のことである。しぼパターンを適用する倍率を変化させることにより、例えば、造形物50の表面の面内においてパターンの模様を形成する周期(ピッチ)を変化させることができる。また、しぼの深さとは、例えば、しぼを構成する凹凸の高さのことである。このように構成すれば、しぼパターンを用いてより多様な加飾を行うことができる。
【0073】
また、色の指定用の画面406においては、例えば、カラーパレットからの選択や、RGBの数値指定のための表示を行う。また、画像の指定用の画面408においては、選択可能な画像の表示を行う。本例によれば、例えば、加飾の指定をユーザから適切に受け付けることができる。
【0074】
また、
図4での図示等は省略したが、制御PC14は、例えばしぼパターン、色、及び画像のそれぞれの指定時において、更に、それぞれの加飾を行う加飾領域の指定をユーザから受け付ける。この場合、加飾領域とは、造形物50の表面においてそれぞれの加飾を行うべき領域のことである。また、加飾領域の指定としては、例えば、造形物50の表面の全面又は部分のいずれかを指定すること等が考えられる。また、部分を指定する場合においては、例えば、矩形、楕円、又は任意形状等を用いて、加飾対象の領域を指定すること等が考えられる。また、例えば、三次元データが示すオブジェクトが複数のパーツから構成されている場合、加飾すべきパーツを指定することで、加飾領域を指定してもよい。
【0075】
また、造形物50の表面の各部に対して行う加飾の設定については、必要に応じてコピー及びペーストの処理が可能にすることが好ましい。この場合、例えば、選択した領域に対して行う加飾の情報(表面情報)をコピーして、造形物50の表面の他の領域へ貼り付けること等が考えられる。
【0076】
また、しぼパターンの種類によっては、造形物50の表面の一部に対してしぼパターンを用いた加飾を行う場合等に、始点や終点でパターンが不連続になること等も考えられる。また、しぼパターンと造形物50の形状との関係により、このような不連続が生じる場合もある。より具体的には、例えば、ヘアライン、木目、又は布地模様等のしぼパターンを用いる場合、造形物50の表面上の端部において、接続部分が不連続になること等が考えられる。そのため、このような場合には、例えばしぼパターンによる加飾を行う領域を適宜変形させることで、接続部の調整を行うことが好ましい。
【0077】
また、しぼ加飾を行う場合においては、例えば造形の解像度の最小単位である1ボクセル(voxel)単位で凹凸の凸部を形成すること等も考えられる。この場合、例えば、凸部の密度を濃度に見なして、誤差拡散法やディザ法により凸部を配置したデータを加飾データとして用いてもよい。凸部の密度を濃度に見なして誤差拡散法やディザ法により凸部を配置するとは、例えば、ハーフトーン処理において色の濃度を扱う処理と同一又は同様にして凸部の濃度を扱う処理を行って、誤差拡散法やディザ法で凸部の配置を決定することである。
【0078】
続いて、制御PC14の動作について、フローチャートを用いて説明をする。
図5は、制御PC14の動作の一例を示すフローチャートである。本例において、造形物50の造形を行う場合、制御PC14は、先ず、データ入力部302において三次元データの入力を受け付ける(S102)。そして、例えばユーザの指示に基づき、造形物50の表面に対する加飾(表面加飾)を行うか否かの判断を行う(S104)。そして、表面加飾を行う場合(S104:Yes)、更に、例えばユーザの指示に基づき、しぼ加工状の細かい凹凸を形成する加飾(しぼ加飾)を行うか否かの判断を行う(S106)。そして、しぼ加飾を行う場合(S106:Yes)、しぼ加飾に関するユーザの操作を受け付け(S108)、次のステップS110へ進む。また、しぼ加飾を行わない場合(S106:No)、ステップS108の動作を行わずに、次のステップS110へ進む。
【0079】
そして、次のステップS110においては、例えばユーザの指示に基づき、造形物50の表面を着色する加飾(色加飾)を行うか否かの判断を行う(S110)。そして、色加飾を行う場合(S110:Yes)、色加飾に関するユーザの操作を受け付け(S112)、次のステップS114へ進む。また、色加飾を行わない場合(S110:No)、ステップS112の動作を行わずに、次のステップS114へ進む。
【0080】
そして、次のステップS114においては、例えばユーザの指示に基づき、造形物50の表面に画像を描く加飾(画像加飾)を行うか否かの判断を行う(S114)。そして、画像加飾を行う場合(S114:Yes)、画像加飾に関するユーザの操作を受け付け(S116)、次のステップS118へ進む。また、画像加飾を行わない場合(S116:No)、ステップS116の動作を行わずに、次のステップS118へ進む。
【0081】
そして、次のステップS118においては、ユーザによる加飾のための操作が終了したか否かの判断を行う(S118)。そして、操作が終了していないと判断した場合(S118:No)、ステップS106へ戻り、以降の動作を繰り返す。また、操作が終了したと判断した場合(S118:Yes)、次のステップS120へ進む。
【0082】
そして、ステップS120においては、例えばユーザの指示に基づき、造形の実行を開始するか否かの判断を行う(S120)。そして、造形の実行を開始するタイミングになるまで、この判断を繰り返すことで、待機する(S120:No)。また、造形の実行を開始すると判断した場合(S120:Yes)、造形装置12に造形の動作を実行させる(S122)。
【0083】
また、表面加飾を行うか否かの判断を行うステップS104において、表面加飾を行わないと判断した場合(S104:No)、表面加飾に関する動作を行わずに、ステップS120と同様の動作を行うステップS124へ進む。そして、ステップS124において、造形の実行を開始するタイミングになるまで待機して(S124:No)、造形の実行を開始すると判断した場合に(S124:Yes)、造形装置12に造形の動作を実行させる(S122)。
【0084】
以上のように構成すれば、例えば、制御PC14により、表面加飾のための処理を適切に行うことができる。また、これにより、造形装置12において、表面加飾がされた造形物50を適切に造形できる。
【0085】
ここで、本例において、造形物50に対する表面加飾としては、上記のように、しぼ加飾、色加飾、及び画像加飾を行う。そして、これらの加飾のうち、色加飾及び画像加飾については、例えば、造形物50における着色領域158(
図2参照)の形成時において、着色領域158の各部を様々な色のインクを用いて行うことで実現できる。そして、この場合、造形する造形物50の形状自体は、例えば、表面加飾の設定を行う前の三次元データが示す形状と同じであってよい。
【0086】
これに対し、しぼ加飾を行う場合には、造形物50の表面の微細な形状について、表面加飾の設定を行う前の三次元データが示す形状から変化させることになる。そして、この場合、しぼ加工状の凹凸を形成する具体的な方法については、様々な方法を考えることができる。
【0087】
図6は、しぼ加飾を行う具体的な方法について説明をする図である。尚、
図6において、造形物50を構成する各層の厚さやしぼの深さについて、造形の解像度を600dpiとしてインクジェットヘッド法で造形を行う場合の例を示している。また、以下において説明をするそれぞれの最小値について、より高解像度で造形を行う場合には、値がより小さくなる。また、より低解像度で造形する場合には、値がより大きくなる。
【0088】
図6(a)は、しぼ加飾を行わない場合(しぼ無し)における造形物50の構成(層構成)の一例を示す。
図2等を用いて上記においても説明をしたように、本例において、造形システム10(
図1参照)は、例えば、造形物50の内部を構成する内部領域152の周囲に、光反射領域154、分離領域156、着色領域158、及び保護領域160を形成する。そして、しぼ加飾を行わない場合、光反射領域154の厚さについては、例えば、100〜1000μm程度(好ましくは、250〜1000μm程度、更に好ましくは、250〜500μm程度)にする。また、分離領域156の厚さについては、例えば、50〜200μm程度(好ましくは、100〜200μm程度)にする。着色領域158の厚さについては、例えば、50〜500μm程度(好ましくは、150〜400μm程度)にする。また、保護領域160の厚さについては、例えば、50μm以上程度にする。また、保護領域160については、例えば、省略してもよい。
【0089】
また、しぼ加飾を行う場合、造形物50を構成する少なくとも一部の層について、しぼパターンに応じて形成する凹凸の形状に合わせて、厚さを変化させる。また、この場合、厚さを変化させる層については、特定の層に限定されず、様々な層の厚さを変化させることが考えられる。
【0090】
図6(b)〜(d)は、しぼ加飾を行う場合においてしぼ加工状の凹凸を形成する具体的な方法の例を示す。
図6(b)は、しぼ加飾における凹凸を着色領域158のみで形成する場合の例を示す。この場合、制御PC14における表面データ処理部304(
図3参照)は、例えば、加飾データ及び三次元データに基づき、着色領域158の各位置における厚さがしぼパターンに応じて変化する構造を示す加飾造形物データを生成する。また、造形装置12(
図1参照)は、このような加飾造形物データに基づいて造形を行うことにより、しぼ加飾が施された造形物50を造形する。
【0091】
また、この場合、造形物50の表面の色の見え方は、例えばしぼの深さに応じて変化することになる。そのため、造形物50の表面に色加飾や画像加飾等を更に行う場合、このような色の変化についても考慮して、それぞれの加飾を行うことが好ましい。また、
図6(b)において、実線で示した層構成は、保護領域160を形成しない場合の構成の例を示す。また、保護領域160を形成する場合には、例えば図中に破線で示すように、着色領域158に形成されるしぼの凹凸に沿った状態で、一定の厚さの保護領域160を形成する。
【0092】
この場合、光反射領域154及び分離領域156の厚さについては、例えば、
図6(a)に示したしぼ無しの場合と同様にすることが考えられる。また、例えばしぼの凹凸の深さを50〜1000μm程度にする場合、着色領域158の厚さについては、例えば、50〜1000μm程度にする。また、保護領域160を形成する場合、保護領域160の厚さについては、例えば50〜500μm程度にする。
【0093】
また、しぼの凹凸については、着色領域158よりも外側の層で形成してもよい。
図6(c)は、しぼ加飾における凹凸を保護領域160のみで形成する場合の例を示す。この場合、制御PC14における表面データ処理部304は、例えば、加飾データ及び三次元データに基づき、保護領域160の各位置における厚さがしぼパターンに応じて変化する構造を示す加飾造形物データを生成する。また、造形装置12は、このような加飾造形物データに基づいて造形を行うことにより、しぼ加飾が施された造形物50を造形する。また、この場合、造形物50の表面の色の見え方について、しぼの深さによる変化は生じない。そのため、この場合、造形物50の見え方を大きく変化させずに、しぼ加飾により、触感を変化させることができる。
【0094】
また、この場合、光反射領域154、分離領域156、及び着色領域158の厚さについては、例えば、
図6(a)に示したしぼ無しの場合と同様にすることが考えられる。また、例えばしぼの凹凸の深さを20〜1000μm程度にする場合、保護領域160の厚さについては、例えば、20〜1000μm程度にする。
【0095】
また、しぼの凹凸については、着色領域158よりも内側の層で形成することも考えられる。
図6(d)は、しぼ加飾における凹凸を着色領域158よりも内側の領域で形成する場合の例を示す。この場合、制御PC14における表面データ処理部304は、例えば、加飾データ及び三次元データに基づき、着色領域158よりも内側の領域の各位置における厚さがしぼパターンに応じて変化する構造を示す加飾造形物データを生成する。また、造形装置12は、このような加飾造形物データに基づいて造形を行うことにより、しぼ加飾が施された造形物50を造形する。
【0096】
また、より具体的に、
図6(d)においては、着色領域158よりも内側に形成される分離領域156について、各位置の厚さをしぼパターンに応じて変化させる場合の例を示している。この場合、光反射領域154や着色領域158の厚さについては、例えば、
図6(a)に示したしぼ無しの場合と同様にすることが考えられる。また、保護領域160の厚さについては、例えば、
図6(b)に示した場合と同様にすることが考えられる。また、分離領域156の厚さについては、しぼの凹凸の深さに合わせて、例えば50〜1000μm程度にすることが考えられる。
【0097】
このように構成した場合も、造形物50の表面の色の見え方について、しぼの深さによる変化は生じない。また、この場合、着色領域158の法線方向における厚さについては、着色領域158よりも内側に形成される凹凸を考慮して、一定の厚さになるように調整することが好ましい。
【0098】
ここで、
図6(b)〜(d)に示したような凹凸の形成の仕方については、例えば、形成する凹凸の寸法等に応じて選択してもよい。例えば、しぼの寸法が小さい場合、造形物50における最表面に透明な保護領域160を形成して、例えば
図6(c)に示すように、保護領域160等の一つの層の厚さの範囲内で凹凸を形成することが考えられる。また、しぼの寸法が小さく、かつ、しぼの深さに応じて造形物50の表面の色の見え方を変化させたい場合等には、例えば
図6(b)に示すように、着色領域158の厚さの範囲内で凹凸を形成することが好ましい。
【0099】
また、しぼの凹凸の寸法が大きい場合には、例えば
図6(d)等に示すように、着色領域158よりも内側に凹凸を形成して、着色領域158等を含む表面の領域を凹凸に沿って形成することが好ましい。そのため、
図6(d)に示した構成は、しぼについて、例えば、
図6(b)、(c)等に示した場合と比べて大きい凹凸や深い凹凸を形成する場合により適しているともいえる。
【0100】
また、着色領域158よりも内側に凹凸を形成する方法としては、
図6(d)に示した場合に限らず、例えば光反射領域154や内部領域152の厚さを変化させることで凹凸を形成すること等も考えられる。この場合、内部領域152の厚さとは、例えば、造形物50の中心から内部領域152において光反射領域154と接する面までの距離のことである。このように構成した場合も、しぼの凹凸を適切に形成できる。
【0101】
続いて、本例の造形システム10の特徴に関し、補足説明や変形例の説明等を行う。先ず、造形システム10の特徴に関し、補足説明等を行う。
【0102】
上記においても説明をしたように、本例によれば、三次元データが示す形状の造形物50に対し、加飾データが示す加飾を適切に施すことができる。また、これにより、例えば、ユーザの負担を大きく増大させることなく、様々な加飾が施された造形物50を適切に造形できる。
【0103】
また、この場合において、造形物50に加飾を施すとは、例えば、例えば、造形物50の表面に着色を行うことや、造形物50の表面の微細な形状を変化させることで表面の質感を変化させること等である。また、この場合、造形物50の表面に着色を行うとは、例えば、着色用のインクを用いて表面の少なくとも一部を造形することで、表面に対する着色を行うことである。また、この場合、例えば造形物50の表面に複数色で着色を行うことで、造形物50の表面に画像を描くこと等も考えられる。また、表面の質感を変化させるとは、例えば、表面のざらつき具合を変化させること等である。この場合、例えば、上記において説明をしたしぼ加飾を行うことで、造形物50の表面の少なくとも一部にしぼ加工状の細かい凹凸を形成して、質感を変化させること等が考えられる。また、例えば、造形物の表面の少なくとも一部について、細かい凹凸を形成することで、非鏡面状に仕上げること等もできる。
【0104】
図7は、造形システム10の特徴について更に詳しく説明をする図である。
図7(a)は、しぼ加飾を行うことの効果について説明をする図であり、しぼ加飾等を行わずに造形したラグビーボール形状の造形物50の様子の一例を示す。本例の造形システム10のように、インクジェットヘッドを用いて積層造形法で造形を行う場合、単に造形を行うと、積層されるインクの層の1層毎の端部が積層方向(Z方向)へ重なる影響により、例えば図中に示すように、造形物50の表面に等高線の様に見える積層縞が現れる場合がある。また、同様に、主走査方向(Y方向)や副走査方向(X方向)においても、縞模様が現れる場合がある。また、これらの縞模様は、特に緩やかな斜面のある造形を行う場合やフルカラーの造形を行う場合において、外観品質を低下させることになる。
【0105】
これに対し、本例においては、造形物50の表面に対してしぼ加飾を行うことにより、造形物50の表面の質感を適切に変化させることができる。また、観察者により識別される色(識別色)についても、所望の色により適切に変化させることができる。また、これらにより、例えば、造形物50の表面に現れる積層縞等の意図しない縞模様について、より目立ちにくい条件で造形を行うこと等が可能になる。そのため、本例によれば、造形物50に対して所望の加飾を行うと共に、積層縞等の影響を適切に抑えることもできる。また、本例においては、しぼ加飾を行うことにより、表面の質感に関連して、例えば造形物50を観察した場合の印象に限らず、造形物50を接触した場合に感じる触感を変化させることもできる。そのため、本例によれば、例えば、所望の触感が得られる造形物50を適切に造形することもできる。また、この場合、造形物50の表面を凹凸状にすることで、例えば、造形物に指紋による汚れが付着すること等も可能になる。
【0106】
また、しぼ加飾は、例えば、造形物50の表面の質感について、造形面の角度による差を小さくするために行うこと等も考えられる。この場合、造形物50の表面の質感とは、例えば、表面のザラツキ感や光沢感等のことである。
【0107】
図7(b)は、造形物50の表面の質感について説明をする図である。インクジェットヘッドを用いて積層造形法で造形を行う場合、造形物50の上面502及び下面504と、側面506との間で、ざらつき等の表面の質感に差が生じる場合がある。より具体的に、積層方向(Z方向)へインクの層を積層する場合、積層方向と垂直な水平面(XY平面)である上面502及び下面504では、インクのドットの拡がり(レベリング)の影響で表面が平坦になり、視覚的には光沢面となる。また、造形物50の上面502については、平坦化ローラで平坦化を行うことで、より平坦になる。一方、側面506においては、1層毎の端部で面を構成する構成上、細かい凹凸が形成されることでザラツキが生じ、視覚的にはつや消し状の面となる。また、側面506については、造形時にサポート層52を接する影響によっても、つや消し状になりやすい。そして、これらの結果、造形物50において、側面506と上下面との間で質感に差が生じることになる。しかし、このような質感の差が存在すると、造形物50の見栄えが悪くなり、造形物50の品質が低下する場合もある。
【0108】
これに対し、本例においては、例えば、つや消し状になる側面の状態に合わせて、上面502や下面504に対してしぼ加飾を行うことで、上面502及び下面504をつや消し状の面にすることが考えられる。この場合、つや消し状の面とは、例えば、光の反射の仕方に影響を与える凹凸を形成することにより、凹凸を形成しない場合よりも光沢性を低下させた面のことである。また、つや消し状の面については、例えば、意図的に非光沢性にした面等と考えることもできる。また、より具体的に、この場合、制御PC14(
図1参照)において、加飾データとして、造形物50の表面のうち、上面502又は下面504等の水平な面の少なくとも一部に対し、つや消し状に形成することを示すデータを用いる。また、制御PC14における表面データ処理部304(
図3参照)は、加飾データにおいてつや消し状で形成することが示されている領域に対し、予め設定されたしぼパターンに基づき、三次元データが示す造形物の表面の状態を粗く変化させた加飾造形物データを生成する。この場合、造形物の表面の状態を粗く変化させるとは、例えば、表面の状態について、ざらつきがより大きな状態にすることである。このように構成すれば、例えば、造形物50の上面502や下面504等について、側面506におけるつや消し状の状態により近づけることができる。
【0109】
また、この場合、造形装置12における造形の実行時において、上面502や下面504において少なくとも状態を粗く変化させる領域について、サポート層52の材料を接触させた状態で形成することが好ましい。このように構成すれば、例えば、上面502や下面504について、つや消し状の状態でより適切に形成できる。また、これにより、造形物50表面について、造形面の角度に状態に大きな差が生じることを適切に防ぐことができる。
【0110】
尚、上記においては、造形物50の上面502や下面504をつや消し状に形成する動作について、主に、通常のしぼ加飾を行う場合と同様に、ユーザの指示に基づいて行う場合について、説明をした。しかし、上面502や下面504をつや消し状に形成する動作については、例えばユーザの指示を受けずに、三次元データに基づいて自動的に行ってもよい。このように構成すれば、例えば、表面の状態が均質な造形物50について、より簡単に造形することができる。
【0111】
また、上記においては、造形物50に対して行う加飾として、主に、しぼ加飾、色加飾、及び画像加飾について、説明をした。本例によれば、例えば、表面に対する加飾の指定がされていない三次元データ等を用いる場合にも、簡易な操作により、ざらつき、色、画像等の表面加飾を適切に施すことができる。また、造形物50に対して行う加飾については、上記において説明をした加飾に限らず、その他の様々な加飾を行うことも考えられる。
図7(c)は、造形物50に対して行う加飾の他の例を示す。
【0112】
図7(c)に示した場合において、造形物50に対する加飾としては、造形物50の一部の領域510に金箔等を貼り付ける加飾を行う。この場合、金箔等は、造形物50に貼り付けられる加飾用の薄膜の一例である。
【0113】
また、この場合、造形装置12(
図1参照)の構成として、造形物50の表面において粘着性(接着性)になる材料を吐出可能な構成を用いる。また、より具体的に、この場合、粘着性になる材料としては、例えば、プライマーインク等を用いることが考えられる。また、この場合、造形装置12のヘッド部102(
図1参照)は、プライマーインク用のインクジェットヘッドを有する。また、造形装置12は、少なくとも金箔等の貼り付けを行うタイミングにおいて粘着性になる条件で、造形物50の表面における一部の領域510について、プライマーインクで形成する。
【0114】
また、この場合、金箔等の貼り付けは、例えば、造形装置12での造形物50を造形する動作の完了後に行う。この場合、造形物50は、例えば、プライマーインクで形成された領域510に金箔等を貼り付けることにより加飾される。
【0115】
このように構成すれば、例えば、造形物50の造形後に造形物50の表面に別途接着剤等を塗布する場合と比べ、金箔等を貼り付ける領域510をより高い精度で適切に設定できる。また、これにより、様々な形状の領域510を設定して、造形物50の加飾を高い精度でより適切に行うことができる。また、この場合、造形装置12から造形物50を取り外した後に行う後工程について、例えば造形物50の造形後に接着剤等を塗布する場合と比べ、より簡略化することもできる。そのため、このように構成すれば、例えば、金箔等を貼り付ける加飾について、より簡易かつ高精度に行うことができる。
【0116】
また、造形物50を造形する具体的な方法や、造形物50の加飾の仕方については、上記において説明をした方法に限らず、様々な他の方法を用いてもよい。例えば、上記においては、造形物50を造形する方法について、主に、紫外線硬化型インクを用いてインクジェット方式で造形を行う場合について、説明をした。しかし、造形物50の材料としては、例えば、熱可塑性のインク等を用いること等も考えられる。熱可塑性のインクとは、例えば、インクジェットヘッド等の吐出ヘッドからの吐出後に、室温に冷えることで硬化するインクである。また、造形物50の材料を吐出する吐出ヘッドとしては、例えば、インクジェット方式以外の方式で材料を吐出する構成を用いること等も考えられる。また、造形の方法として、例えば、光造形方式等を用いること等も考えられる。この場合、光造形方式とは、例えば、光硬化性のインクを満たした液層の液面にレーザ光を照射することで造形を行う方式である。また、この場合、例えば、造形しようとする造形物に対応するパターンでレーザ光を照射することにより、造形物50を構成する各層を硬化させる。また、このような場合にも、三次元データ及び加飾データに基づく加飾造形物データを生成し、加飾造形物データに基づいてレーザ光の照射等を行うことで、しぼ加飾等を適切に行うことができる。
【0117】
また、上記においては、
図7(b)等を用いて、造形物50の表面をつや消し状に形成する動作の一例を説明した。また、その方法について、例えば、造形物50の上面や下面に対してしぼ加飾を行うことで、上面や下面をつや消し状の面にすること等を説明した。以下、造形物50の表面をつや消し状にする方法について、更に詳しく説明をする。
【0118】
図8は、造形物50の変形例について説明をする図であり、表面をつや消し状に形成した場合の造形物50の構成の一例を断面図により示す。尚、以下に説明をする点を除き、
図8において、
図1〜7と同じ符号を付した構成は、
図1〜7における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。
【0119】
本変形例において、造形物50は、内部領域152、光反射領域154、着色領域158、及びマット領域162を有する。内部領域152、光反射領域154、及び着色領域158は、
図2に示した造形物50における内部領域152、光反射領域154、及び着色領域158と同一又は同様の特徴を有する領域である。また、本変形例の造形物50において、マット領域162は、
図2に示した造形物50における保護領域160(
図2参照)の代わりに造形物50の最も外側に形成される領域である。
【0120】
また、本変形例においても、造形物50の造形は、例えば
図2(a)に示すヘッド部102(
図2参照)を用い、造形物50の材料となるインクをヘッド部102における各インクジェットヘッドから吐出することで行う。また、この場合、各インクジェットヘッドは、造形の解像度に応じて設定される位置へインクを吐出することにより、造形の最小単位であるボクセルに対応するインクのドットを形成する。また、
図8においては、造形物50を構成する各ボクセルをマス目状に示すことで、断面(スライス面)上での各領域のボクセル構成の例を示している。また、それぞれのボクセルの位置に対し、その位置に形成するインクのドットの色を示している。この場合、図中の一マスが、1つのボクセルを表す。また、この場合、1つのボクセルは、加飾造形物データにおける1つの位置のデータ(1データ)に対応する。そのため、図中の一マスについては、加飾造形物データにおける1つの位置のデータを示していると考えることもできる。また、加飾造形物データの仕様等によっては、例えば、図中の一マスについて、複数のボクセルや加飾造形物データにおける複数の位置のデータと対応させてもよい。
【0121】
また、より具体的に、この場合、内部領域152を構成する各位置には、加飾造形物データにおけるデータの配置(指定)に基づき、造形材インク(Moインク)のドットが形成される。また、光反射領域154を構成する各位置には、加飾造形物データにおけるデータの配置に基づき、白色(W色)のインクのドットが形成される。また、着色領域158における各位置には、加飾造形物データにおけるデータの配置に基づき、各位置へ着色する色に合わせて、YMCKの各色のインク及び透明色(T色)のクリアインクの中から選ばれるインクのドットが形成される。また、この場合、例えば、造形物50の断面を示すデータを2次元の面データとして扱い、着色領域158内に誤差拡散法等でYMCKの各色及びT色を示すデータを配置することで、着色領域158を構成する各位置に形成するインクのドットの色を決定する。より具体的に、この場合、例えば、先ず、YMCKの各色のインクのドットを形成すべき位置を決定する。そして、着色領域158内においてYMCKの各色のインクのドットが形成されない位置(YMCKの各色が指定されていないデータ位置)に対し、T色でのインクのドットの形成を指定する。このように構成すれば、例えば、着色する色によって着色領域158の厚さや形状に変化が生じることを防ぎ、造形物50の表面形状を維持しながら、着色領域158の各位置に対して適切に着色を行うことができる。
【0122】
また、
図8に示した場合において、着色領域158は、白色の部分、赤のグラデーションの部分、明るい緑色の部分、及び、黒色の部分を有する。この場合、着色領域158における白色の部分とは、例えば、加飾造形物データの表面において白色に着色がされている部分のことである。また、白色の部分については、例えば図中に示すように、T色のクリアインクのみで充填するように形成することが考えられる。このように構成すれば、例えば、着色領域158よりも内側の光反射領域154の色を造形物50の外側から視認可能にすることで、白色の着色を適切に行うことができる。また、着色領域158において、赤のグラデーションの部分については、Y色、M色、及びT色のインクを用いて形成することが考えられる。また、この場合、T色のインクで形成する位置の割合を徐々に変化させることでグラデーション状の着色を行うことができる。また、明るい緑色の部分については、Y色、C色、及びT色のインクを用いて形成することが考えられる。黒色の部分については、黒色(K色)のインクを用いて形成することが考えられる。
【0123】
また、マット領域162は、上記のように、造形物50の最も外側に形成される領域であり、例えばクリアインクを用いて、着色領域158の周囲に形成される。また、より具体的に、本変形例において、マット領域162は、一部のボクセルが間引かれることで凹凸状に形成されることで、マット状になる。この場合、一部のボクセルが間引かれるとは、例えば図中に示すように、造形物50の表面に沿った領域の一部のボクセルの位置のみにインクのドットが形成されることである。また、この場合、マット領域162は、一部のボクセル位置にドットを形成しないことで不連続な層になることで、マット状に形成される。
【0124】
造形物50の表面にこのようなマット領域162を形成することにより、例えば、造形物50の表面の状態をつや消し状にすることができる。また、
図8においては、造形物50の表面の全体にマット領域162を形成する場合について、造形物50の構成の例を図示している。しかし、造形物50の構成の更なる変形例においては、例えば、造形物50の表面の一部のみにマット領域162を形成してもよい。このように構成すれば、例えば、造形物50の表面における所望の位置に対し、つや消し状にする加飾を適切に行うことができる。
【0125】
尚、造形物50の具体的な構成については、上記において説明をした構成に限らず、更に変形を行ってもよい。例えば、造形物50の構成の更なる変形例においては、
図2に示した造形物50と同様に、光反射領域154と着色領域158との間に分離領域を更に形成してもよい。また、着色領域158の外側に、
図2に示した造形物50と同様に、保護領域を更に形成してもよい。この場合、保護領域の更に外側にマット領域162を形成することが考えられる。また、このような構成については、例えば、着色領域158とマット領域162との間に透明な領域を更に形成した構成と考えることができる。また、この場合、例えば、保護領域として機能する所定の厚さの領域を含めて、マット領域162と考えることもできる。
【0126】
続いて、マット領域162を備える造形物50を造形する動作について、更に詳しく説明をする。
図9は、マット領域162を備える造形物50を造形する動作について更に詳しく説明をする図である。
図9(a)は、造形装置12において造形物50を造形する様子を簡略化して示す。
図9(b)は、造形物50の一部を構成するボクセルを模式的に示す図であり、
図9(a)において破線で示した部分におけるボクセルの構成を簡略化して示す。
【0127】
マット領域162を備える造形物50を造形する場合においても、造形物50を造形する動作については、通常の造形装置12で行うことができる。より具体的に、この場合も、
図1等を用いて説明をした造形装置12を用いて、造形物50を造形することができる。また、この場合、図中に示すように、造形台104上において、必要に応じて造形物50の周囲にサポート層52を形成しつつ、造形物50の造形を行う。
【0128】
また、この場合、造形装置12は、制御PC14から供給される加飾造形物データに基づいて造形を行うことで、マット領域162を備える造形物50を造形する。また、制御PC14においては、例えば
図3を用いて説明をした制御PC14と同一又は同様にして、三次元データ及び加飾データに基づき、加飾造形物データを生成する。また、この場合、三次元データとしては、例えば、マット領域162を構成する凹凸等の情報を含まない三次元データを用いる。また、加飾データとしては、マット領域162の形成を指定するデータを用いる。マット領域162の形成を指定する加飾データとは、例えば、造形物50の表面の少なくとも一部をマット状に形成することを示すデータのことである。
【0129】
また、より具体的に、この場合、制御PC14は、例えば
図3に示した構成に加え、マット領域162の形成に関連する処理を行う構成を更に有する。また、この場合、制御PC14におけるパターン選択部310及びしぼパターンメモリ312(
図3参照)について、マット領域162の形成に関連する処理を行う構成を兼ねさせてもよい。また、制御PC14は、表面データ処理部304(
図3参照)において、三次元データ及び加飾データに基づき、マット領域162が造形物50の表面の少なくとも一部に形成される造形物50を示す加飾造形物データを生成する。また、この場合、造形物50の最外層におけるボクセル単位(液滴単位)での離散的な位置(ボクセルの位置)にクリアインクのドットを配置することで、マット領域162を形成する。また、マット領域162を構成するクリアインクのドットの合間(クリアインクのドットが配置されない部分)には、サポート層52の材料となるインク(サポートインク)のドットを配置する。このように構成すれば、例えば、造形の完了後にサポート層52を除去することで、マット領域162を適切に形成することができる。
【0130】
ここで、造形物50の各領域及びサポート層52を構成する各ボクセルについては、例えば
図9(b)に示すように形成することが考えられる。
図9(b)に示すボクセルの構成は、サポート層52の除去を行う前の時点でのボクセルの構成の一例である。また、
図9(b)においては、説明の便宜上、光反射領域154と着色領域158との間に分離領域156を形成する場合の造形物50について、ボクセルの構成の一例を示している。また、着色領域158については、薄青色に着色する場合のボクセルの構成を示している。
【0131】
また、この場合、サポート層52の除去を行う前の時点において、マット領域162は、クリアインクで形成されるドットに対応するボクセル(T)と、サポートインクで形成されるドットに対応するボクセル(S)とで構成される。また、図中に示した場合においては、最終的なマット領域162においてクリアインクの面積占有率が33%になるようにマット領域162を形成している。この場合、クリアインクの面積占有率が33%になるとは、サポート層52を除去した後においてクリアインクの面積占有率が33%になることである。また、本変形例においては、サポート層52の除去を行う前の時点においても、マット領域162におけるクリアインクの面積占有率が33%になっている。この場合、サポート層52の除去を行う前の時点でマット領域162におけるクリアインクの面積占有率が33%になっているとは、図中に示すように、マット領域162に対応する領域を構成するボクセルについて、3つのボクセルあたり1つのボクセルがクリアインクに対応するボクセルになっていることである。また、この場合、サポート層52を除去することで、サポートインクに対応するボクセルがなくなり、ボクセル単位での凹凸状のマット領域162が造形物50の表面に形成されることになる。
【0132】
続いて、サポート層52を除去した後の状態について、更に詳しく説明をする。
図10は、サポート層52を除去した後の状態等について説明をする図である。
図10(a)は、
図9(b)に示す状態からサポート層52を除去した後の状態の一例を示す。
【0133】
図9(b)に示す状態からサポート層52を除去した場合、
図9(b)においてマット領域162に対応する領域を構成しているクリアインクのボクセルのうち、着色領域158と接しているボクセルのみが除去されずに残り、着色領域158と接していないボクセルは、サポート層52と共に除去されることになる。そのため、サポート層52の除去後の状態は、
図10(a)に示すように、着色領域158と接する部分にクリアインクで形成される凸状の部分が離散的に形成された状態になる。そして、この場合、造形の完了後の造形物50(最終造形物)表面は、光が乱反射するマット状になる。また、より具体的に、図中に示す場合、着色領域158の表面の33%に、クリアインクで、ボクセル単位での凸状の部分が形成されることになる。このように構成すれば、例えば、造形物50の表面における所望の位置にマット領域162を形成して、造形物50の表面の見え方を適切に調整することができる。また、これにより、例えば、造形物50の外周面の角度によって光沢性に意図しない差が生じること等を適切に防ぐことができる。
【0134】
ここで、造形物50において、光反射領域154、分離領域156、着色領域158、及びマット領域162については、造形物50の表面に対する法線方向における厚さが一定になるように形成することが好ましい。この場合、厚さが一定であるとは、例えば、所定の許容範囲内で一定なことであってよい。また、この場合、光反射領域154、分離領域156、着色領域158の厚さについては、例えば、
図6(a)を用いて説明をした構成と同一又は同様の厚さにすることが考えられる。また、内部領域152やサポート層52の厚さについては、造形物50の形状等に応じた厚さにすることが考えられる。また、造形物50の最表面に形成するマット領域162の厚さについては、例えば、100〜200μm程度にすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、造形物50の表面を適切にマット状にすることができる。
【0135】
また、各領域の厚さについては、法線方向に並ぶボクセルの数との関連も重要である。例えば、分離領域156については、厚くし過ぎると、着色領域158に対して視認される解像度(色の見え方の実質的な解像度)や色調への悪影響が生じるおそれがある。そのため、分離領域156については、例えば、法線方向に並ぶボクセルが1〜2個程度になるように形成することが好ましい。また、着色領域158については、厚くすると視認される解像度が低下し、薄くすると色表現域(gamut)が狭くなる。そのため、着色領域158については、法線方向に並ぶボクセルが2〜4個程度になるように形成することが好ましい。また、マット領域162については、凹凸の形状が大きいとザラツキが目立つため、法線方向及び法線方向と直交する面内方向において並ぶボクセルが1〜2個程度になるように形成することが好ましい。より具体的に、この場合、1つの凸部を構成するボクセルの数について、X、Y、Zの各方向へ並ぶボクセルの数を1〜2個程度にして、1個(1×1×1ボクセル)又は2個(1×1×2ボクセル)〜8個(2x2x2ボクセル)程度にすることが好ましい。
【0136】
また、
図9(b)及び
図10(a)等においては、XY方向へ連なる面のボクセルの群が造形物50における1つの層(1層)を形成している場合について、ボクセルの構成を簡略化して示している。また、それぞれのボクセルの寸法について、積層方向(Z方向)の寸法と面内の方向(例えば、Y方向)の寸法の比(例えば、Z:Y)で面内の方向の寸法の方が大きい場合には、造形物50における1つの断面の形状やカラーを示すデータ(スライスデータ)に対応する領域を複数の層により形成してもよい。
【0137】
続いて、本変形例に関する補足説明や、更なる変形例の説明を行う。先ず、本変形例に関する補足説明を行う。
図9及び
図10(a)を用いて説明をした本変形例において行う造形の動作については、例えば、積層造形法で造形物50を造形する場合において、造形物50の最外面の全面ではない一部に対し、マット処理用のインクのドットを形成する動作等と考えることができる。また、より具体的に、本変形例においては、マット処理用のインクで形成するマット領域162について、造形物50の外面の法線方向に対して一定の厚さで形成する。また、マット処理用のインクとして、透明なクリアインクを用いる。また、この場合、マット領域162について、造形物50の表面にクリアインクでマット状に形成される領域等と考えることができる。
【0138】
また、この場合、マット領域162を形成する処理を行うか否か(マット処理の可否)については、ユーザが選択可能(設定可能)にすることが好ましい。この場合、例えば制御PC14(
図1参照)に対するユーザの操作により、マット領域162を形成する処理を行うか否かの指示を受け付けることが考えられる。また、この場合、マット領域162の面積占有率をユーザが設定可能にすることがより好ましい。マット領域162の面積占有率とは、例えば、造形物50の表明においてマット領域162が形成される範囲において、凸状に形成される部分の面積が占める割合のことである。また、凸状に形成される部分の面積とは、例えば、凸状の部分を構成するボクセルが占める設計上の面積のことである。
【0139】
続いて、マット領域162の形成の仕方等に関する変形例について、説明をする。
図10(b)は、マット領域162の形成の仕方の変形例について説明をする図である。上記においては、マット領域162における凸状の部分(凸部)について、主に、1つのボクセルで1つの凸部を形成する場合の例を説明した。しかし、造形物50の構成の更なる変形例においては、複数のボクセルで1つの凸部を形成してもよい。
【0140】
より具体的に、各ボクセルの形状について、アスペクト比が大きな形状になる場合、造形物50の表面における面の角度によって凸部の形状に差が生じ、結果として、マット状の状態にも差が生じる場合がある。そのため、1つの凸部を構成するボクセルの数やボクセルの並び方については、ボクセルのアスペクト比に応じて決定することが考えられる。例えば、1つのボクセルにおいて、積層方向と直交する面内方向(X方向及びY方向)と積層方向(Z方向)とのアスペクト比が2:1(2倍)である場合、
図10(b)に示すように、マット領域162のおける1つの凸部を2個のボクセル(1×1×2ボクセル)で形成して、積層方向に2つのボクセルが並ぶようにすることが考えられる。このように構成した場合、1つの凸部の積層方向における幅が1つのボクセルの2倍になるため、それぞれの凸部の形状を立方体により近づけることができる。また、これにより、例えば、造形物50の表面における面の角度によってマット状の状態に差が生じることを適切に防ぐことができる。また、
図10(b)に示した場合において、マット領域162でのクリアインクの面積占有率は50%になっている。
【0141】
また、上記においては、マット領域162について、主に、着色領域158の外側にクリアインクで形成する場合の例を説明した。しかし、造形物50の構成の更なる変形例においては、例えば、着色領域158の一部にマット領域162を兼ねさせること等も考えられる。
図11は、造形物50の構成の更なる変形例について説明をする図である。
図11(a)は、本変形例において造形物50の一部を構成するボクセルを模式的に示す図であり、造形物50の造形時においてサポート層52を除去する前の状態の一例を示す。
図11(b)は、サポート層52を除去した後におけるマット領域162の近傍の状態の一例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、
図11において、
図1〜10と同じ符号を付した構成は、
図1〜10における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。
【0142】
上記においても説明をしたように、造形物50の構成の更なる変形例においては、例えば、着色領域158の一部にマット領域162を兼ねさせること等も考えられる。より具体的に、例えば、造形物50に求められる品質等によっては、造形物50の最外面に着色領域158が露出するように造形物50を造形すること等も考えられる。そして、このような場合、着色領域158の外側に別途マット領域162を形成するのではなく、着色領域158において最も外側の部分を凹凸状に形成することで、着色領域158の一部をマット領域162としても機能させることが考えられる。また、この場合、
図11に示す本変形例の構成のように、マット領域162は、着色領域158の一部の領域になる。また、マット領域162は、着色領域158において造形物50の表面に露出している部分の少なくとも一部に形成される。
【0143】
また、この場合、制御PC14(
図1参照)において加飾造形物データを生成する処理の中で、造形物50の最外面をマット化する処理(マット処理)を行う。また、このマット処理において、例えば、着色領域158の最外面にある一部のボクセルをサポートインクのボクセルに置き換える。このように構成すれば、例えば、着色領域158の外側にボクセルを増やす方法ではなく、いわば、着色領域158のボクセルを間引くことで、造形物50の表面について、光を乱反射させるマット状の状態にすることができる。
【0144】
また、より具体的に、この場合、着色領域158の最外面は、例えば
図11(a)に示すように、一部のボクセルがサポートインクのボクセルに置換された状態になる。そして、この場合、造形物50の造形の完了後にサポート層52を除去すると、造形物50の表面には、例えば
図11(b)に示すように、凹凸が形成されることになる。そのため、本変形例においても、例えば、造形物50の表面を適切にマット状にすることができる。
【0145】
ここで、本変形例のようにマット領域162を形成する場合、着色領域158を構成する着色用のインク(カラーインク)のボクセルの一部が消失することになる。しかし、最終的な造形物50の色調や色の見え方の実質的な解像度は、多数のボクセルの影響により決まることになる。そのため、本変形例のようにマット領域162を形成したとしても造形物50の表面の画質等への影響については、通常、無視することができる。また、この場合、着色領域158において法線方向に並ぶボクセルの数を必要に応じて増加させ、十分の大きな数にすれば、マット領域162を形成することの影響をより低減することもできる。また、造形物50の更なる変形例においては、上記以外の方法でマット領域162を形成すること等も考えられる。より具体的に、例えば、表面を着色せず、造形物50の表面の少なくとも一部を白色のインクで形成する場合等には、マット処理用のインクとして白色のインク等を用いること等も考えられる。