特許第6705021号(P6705021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705021
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】触覚呈示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20200525BHJP
   H01L 35/30 20060101ALI20200525BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   G06F3/01 560
   H01L35/30
   H05K7/20 S
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-561869(P2018-561869)
(86)(22)【出願日】2017年12月13日
(86)【国際出願番号】JP2017044708
(87)【国際公開番号】WO2018131371
(87)【国際公開日】20180719
【審査請求日】2019年3月15日
(31)【優先権主張番号】特願2017-4647(P2017-4647)
(32)【優先日】2017年1月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川名 譲
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 邦生
(72)【発明者】
【氏名】志方 元
【審査官】 岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−064842(JP,A)
【文献】 特開2004−079560(JP,A)
【文献】 特開2013−161974(JP,A)
【文献】 特開2013−122750(JP,A)
【文献】 特開平05−216545(JP,A)
【文献】 特開2008−263860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/041
H01L 35/30
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触覚呈示対象によって接触され得る被接触面と、
前記被接触面に伝わる冷熱又は温熱を発生する熱電変換部と、
前記被接触面の温度を検出する温度センサとを有し、
前記熱電変換部は、
第1伝熱部材及び第2伝熱部材と、
供給される電力に基づいて前記第1伝熱部材と前記第2伝熱部材との温度差を発生する少なくとも1つの熱電素子とを含み、
前記被接触面は、前記第1伝熱部材の表面に形成されるか、若しくは、前記第1伝熱部材の表面に当接する別の伝熱部材の表面に形成されており、
前記温度センサは、前記第1伝熱部材の表面において前記被接触面が形成される領域の外側、若しくは、前記第1伝熱部材の表面において前記別の伝熱部材に当接する領域の外側に配置される、
触覚呈示装置。
【請求項2】
前記第1伝熱部材は、板状の形状を持ち、
前記熱電素子は、前記第1伝熱部材の一方の面に当接し、
前記被接触面は、前記第1伝熱部材の他方の面に形成されるか、若しくは、前記第1伝熱部材の前記他方の面に当接する前記別の伝熱部材の表面に形成されており、
前記温度センサは、前記第1伝熱部材の前記一方の面に配置される、
請求項1に記載の触覚呈示装置。
【請求項3】
前記第2伝熱部材の温度変化を抑制するヒートシンク部材を有し、
前記第2伝熱部材は、板状の形状を持ち、
前記第1伝熱部材と前記第2伝熱部材とが対向して配置され、
前記熱電素子は、前記第2伝熱部材の一方の面に当接し、
前記ヒートシンク部材は、前記第2伝熱部材の他方の面に当接し、
前記温度センサの検出信号を伝送する2つの検出用配線を接続するための2つの検出用
端子部が、前記第2伝熱部材の前記一方の面に形成される、
請求項2に記載の触覚呈示装置。
【請求項4】
前記第1伝熱部材及び前記第2伝熱部材の各面に垂直な方向から見た平面視において、前記2つの検出用端子部の中間に前記温度センサが位置する、
請求項3に記載の触覚呈示装置。
【請求項5】
前記第1伝熱部材及び前記第2伝熱部材は、前記平面視において矩形の形状を持ち、
前記2つの検出用端子部は、前記矩形の形状における1つの辺に沿って前記第2伝熱部材の端部に並んでいる、
請求項4に記載の触覚呈示装置。
【請求項6】
前記熱電素子に電力を供給する2つの駆動用配線を接続するための2つの駆動用端子部が、前記第2伝熱部材の前記一方の面に形成されており、
前記2つの駆動用端子部は、前記2つの検出用端子部とともに、前記矩形の形状における前記1つの辺に沿って前記第2伝熱部材の前記端部に並んでいる、
請求項5に記載の触覚呈示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温覚や冷覚などの触覚を呈示する触覚呈示装置に係り、特に熱電素子を用いた触覚呈示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、VR(virtual reality)を実現する機器の普及に伴って、人の触覚を電気的・機械的に再現する技術が注目されている。下記の特許文献1には、ペルチェ素子を用いて任意の温覚を再現する温覚呈示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−72018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ペルチェ素子を用いて任意の温覚を再現するためには、ペルチェ素子の温度を検出して制御する必要がある。特許文献1の図7図8に記載される装置では、指などが接触されるペルチェ素子の表面に温度検出用のセンサが設けられている。しかしながら、指が接触される部分にセンサが貼り付けられていると、繰り返し使用しているうちにセンサが外れ易くなったり、摩耗などを生じ易くなったりするため、耐久性が低いという不利益がある。また、センサによる凹凸が触覚の違和感を与えてしまうという不利益もある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐久性の低下を抑制し、違和感のない良好な触覚を呈示できる触覚呈示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る触覚呈示装置は、触覚呈示対象によって接触され得る被接触面と、前記被接触面に伝わる冷熱又は温熱を発生する熱電変換部と、前記被接触面の温度を検出する温度センサとを有する。前記熱電変換部は、第1伝熱部材及び第2伝熱部材と、供給される電力に基づいて前記第1伝熱部材と前記第2伝熱部材との温度差を発生する少なくとも1つの熱電素子とを含む。前記被接触面は、前記第1伝熱部材の表面に形成されるか、若しくは、前記第1伝熱部材の表面に当接する別の伝熱部材の表面に形成される。前記温度センサは、前記第1伝熱部材の表面において前記被接触面が形成される領域の外側、若しくは、前記第1伝熱部材の表面において前記別の伝熱部材に当接する領域の外側に配置される。
【0007】
この構成によれば、前記第1伝熱部材の表面において前記被接触面が形成される領域の外側に前記温度センサが配置されるため、指などの触覚呈示対象が前記温度センサに直接触れない。これにより、触覚呈示対象が前記温度センサに直接触れる場合に比べて耐久性が向上する。また、触覚呈示対象が前記温度センサに直接触れることによる触覚の違和感が生じない。
【0008】
また、この構成によれば、前記第1伝熱部材の表面において前記別の伝熱部材に当接する領域の外側に前記温度センサが配置されるため、前記第1伝熱部材と前記別の伝熱部材との密着性が良くなり、前記熱電素子の冷熱又は温熱が前記被接触面へ伝わり易くなる。
【0009】
好適に、前記第1伝熱部材は、板状の形状を持ってよい。前記熱電素子は、前記第1伝熱部材の一方の面に当接してよい。前記被接触面は、前記第1伝熱部材の他方の面に形成されるか、若しくは、前記第1伝熱部材の前記他方の面に当接する前記別の伝熱部材の表面に形成されてよい。前記温度センサは、前記第1伝熱部材の前記一方の面に配置されてよい。
【0010】
この構成によれば、前記被接触面が形成されていない前記第1伝熱部材の前記一方の面に前記温度センサが配置されるため、指などの触覚呈示対象が前記温度センサに直接触れない。これにより、触覚の違和感が生じなくなり、耐久性が向上する。
【0011】
また、この構成によれば、板状の形状を持った前記第1伝熱部材の前記他方の面に前記別の伝熱部材が当接するため、前記第1伝熱部材と前記別の伝熱部材とを広い面積で当接させ易くなり、前記熱電素子の冷熱又は温熱が前記被接触面へ伝わり易くなる。
【0012】
好適に、上記触覚呈示装置は、前記第2伝熱部材の温度変化を抑制するヒートシンク部材を有してよい。前記第2伝熱部材は、板状の形状を持ってよい。前記第1伝熱部材と前記第2伝熱部材とが対向して配置されてよい。前記熱電素子は、前記第2伝熱部材の一方の面に当接してよい。前記ヒートシンク部材は、前記第2伝熱部材の他方の面に当接してよい。前記温度センサの検出信号を伝送する2つの検出用配線を接続するための2つの検出用端子部が、前記第2伝熱部材の前記一方の面に形成されてよい。
【0013】
この構成によれば、前記ヒートシンク部材が前記第2伝熱部材の他方の面に当接する一方で、前記2つの検出用端子部が前記第2伝熱部材の前記一方の面に形成される。これにより、前記2つの検出用端子部によって干渉されることなく、前記第2伝熱部材と前記ヒートシンク部材とを広い面積で当接させることが可能となる。
【0014】
好適に、前記第1伝熱部材及び前記第2伝熱部材の各面に垂直な方向から見た平面視において、前記2つの検出用端子部の中間に前記温度センサが位置してよい。
【0015】
この構成によれば、前記平面視において前記2つの検出用端子部と前記温度センサとにより占められた領域が小さくなるため、前記熱電素子を配置させるための領域が相対的に大きくなる。
【0016】
好適に、前記第1伝熱部材及び前記第2伝熱部材は、前記平面視において矩形の形状を持ってよい。前記2つの検出用端子部は、前記矩形の形状における1つの辺に沿って前記第2伝熱部材の端部に並んでよい。
【0017】
この構成によれば、前記矩形の形状における1つの辺に沿って前記第2伝熱部材の端部に前記2つの検出用端子部が並んでいるため、前記平面視において前記熱電素子を配置させるための領域が相対的に大きくなる。
【0018】
好適に、前記熱電素子に電力を供給する2つの駆動用配線を接続するための2つの駆動用端子部が、前記第2伝熱部材の前記一方の面に形成されてよい。前記2つの駆動用端子部は、前記2つの検出用端子部とともに、前記矩形の形状における前記1つの辺に沿って前記第2伝熱部材の前記端部に並んでいてよい。
【0019】
この構成によれば、前記ヒートシンク部材が前記第2伝熱部材の他方の面に当接する一方で、前記2つの駆動用端子部が前記第2伝熱部材の前記一方の面に形成される。これにより、前記2つの駆動用端子部によって干渉されることなく、前記第2伝熱部材と前記ヒートシンク部材とを広い面積で当接させることが可能となる。また、前記2つの検出用端子部と前記2つの駆動用端子部とが、前記矩形の形状における1つの辺に沿って前記第2伝熱部材の端部に並んでいるため、前記平面視において前記熱電素子を配置させるための領域が相対的に大きくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐久性の低下を抑制し、違和感のない良好な触覚を呈示できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施形態に係る触覚呈示装置の一例を示す斜視図である。
図2】第1の実施形態に係る触覚呈示装置の一例を示す正面図である。
図3】第1の実施形態に係る触覚呈示装置の一例を示す平面図である。
図4図3の平面図において第1伝熱部材の図示を省略した図である。
図5】第1の実施形態に係る触覚呈示装置における制御系の構成の一例を示す図である。
図6】第2の実施形態に係る触覚呈示装置の一例を示す斜視図である。
図7】第2の実施形態に係る触覚呈示装置の一例を示す正面図である。
図8】第2の実施形態に係る触覚呈示装置の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態に係る触覚呈示装置について図面を参照しながら説明する。図1は触覚呈示装置の一例を示す斜視図であり、図2は触覚呈示装置の一例を示す正面図であり、図3は触覚呈示装置の一例を示す平面図である。図4は、図3の平面図において第1伝熱部材11の図示を省略した図である。
【0023】
本明細書では、互いに直交する3つの方向を「X」、「Y」、「Z」と記す。また、X方向に含まれる互いに逆の方向を「X1」及び「X2」と記し、Y方向に含まれる互いに逆の方向を「Y1」及び「Y2」と記し、Z方向に含まれる互いに逆の方向を「Z1」及び「Z2」と記す。図2の正面図はY2側からY1方向を見た図であり、図3の平面図はZ1側からZ2方向を見た図である。以下の説明では、Z方向から見ることを「平面視」と記す場合がある。
【0024】
本実施形態に係る触覚呈示装置は、指などの触覚呈示対象が接触し得る被接触面Aを有する。図1の例において、被接触面AはZ方向に垂直な平面であり、後述する熱電変換部10の表面に形成される。
【0025】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る触覚呈示装置は、熱電変換部10と、温度センサ20と、ヒートシンク部材30を有する。
【0026】
熱電変換部10は、被接触面Aに伝わる冷熱又は温熱を発生する装置である。図1及び図2の例において、熱電変換部10は、第1伝熱部材11及び第2伝熱部材12と複数の熱電素子13を含む。
【0027】
第1伝熱部材11及び第2伝熱部材12は、それぞれ板状の形状を持ち、互いに対向して配置される。第1伝熱部材11及び第2伝熱部材12の各面は、Z方向に対して略垂直である。すなわち、第1伝熱部材11のZ2側の面111及びZ1側の面112と、第2伝熱部材12のZ1側の面121及びZ2側の面122とが、何れもZ方向に対して垂直である。被接触面Aは、第1伝熱部材11のZ1側の面112に形成される。平面視において、第1伝熱部材11及び第2伝熱部材12は矩形の形状を持つ。図3に示すように、第1伝熱部材11及び第2伝熱部材12の当該矩形形状は略合同であり、平面視において略全体が重なっている。第1伝熱部材11及び第2伝熱部材12は、例えばセラミックスや樹脂などの絶縁性の材料からなる。
【0028】
熱電素子13は、例えばペルチェ素子であり、後述する熱電素子駆動回路80から供給される電力に基づいて第1伝熱部材11と第2伝熱部材12との間の温度差を発生する。
図1に示すように、熱電素子13はZ方向に延びた角柱状の形状を持つ。熱電素子13のZ1側の端面が第1伝熱部材11のZ2側の面111に当接し、熱電素子13のZ2側の端面が第2伝熱部材12のZ1側の面121に当接する。図4に示すように、複数の熱電素子13が平面視において行列状に配置される。図4の例では、X方向に並んだ列の数とY方向に並んだ行の数がそれぞれ6である。
【0029】
温度センサ20は、被接触面Aの温度を検出するセンサであり、例えばサーミスタを含む。温度センサ20は、第1伝熱部材11の表面において被接触面Aが形成される領域の外側に配置される。例えば温度センサ20は、図1及び図2に示すように、第1伝熱部材11のZ2側の面111に配置される。
【0030】
ヒートシンク部材30は、第2伝熱部材12のZ2側の面122に当接して配置されており、第2伝熱部材12の温度変化を抑制する。ヒートシンク部材30は、例えば熱伝導性の高い金属の筐体を有した部品でもよく、具体的には、ソレノイドやモータ等の振動発生器が含まれた部品でもよい。
【0031】
本実施形態に係る触覚呈示装置は、図1及び図4に示すように、2つの検出用端子部51及び52を有する。検出用端子部51及び52は、温度センサ20の検出信号を伝送する2つの検出用配線61及び62に接続される。温度センサ20に含まれるサーミスタ等のセンサ素子へ供給される電流は、2つの検出用配線61及び62を通じて流れる。検出用端子部51及び52は、例えばランド電極であり、半田付けによって検出用配線61及び62に接続される。
【0032】
2つの検出用端子部51及び52は、第2伝熱部材12のZ1側の面121に形成される。検出用端子部51及び52は、第2伝熱部材12の面121の矩形形状におけるX1側の辺に沿って(すなわちY方向に沿って)第2伝熱部材12のX1側の端部に並んでいる。図4に示すように、温度センサ20は、平面視において、検出用端子部51及び52の中間に位置する。また温度センサ20は、平面視において、第2伝熱部材12のY方向の略中央に位置する。
【0033】
本実施形態に係る触覚呈示装置は、図1及び図4に示すように、2つの駆動用端子部53及び54を有する。駆動用端子部53及び54は、熱電素子13に電力を供給する2つの駆動用配線63及び64に接続される。熱電変換部10の複数の熱電素子13は、第1伝熱部材11や第2伝熱部材12に形成された配線によって直列に接続される。直列接続された複数の熱電素子13へ供給される電流は、2つの駆動用配線63及び64を通じて流れる。駆動用端子部53及び54は、例えばランド電極であり、半田付けによって駆動用配線63及び64に接続される。
【0034】
2つの駆動用端子部53及び54は、第2伝熱部材12のZ1側の面121に形成される。駆動用端子部53及び54は、検出用端子部51及び52とともに、第2伝熱部材12の面121の矩形形状におけるX1側の辺に沿って(すなわちY方向に沿って)第2伝熱部材12のX1側の端部に並んでいる。図4に示すように、2つの駆動用端子部53及び54は、Y方向において2つの検出用端子部51及び52を挟んだ位置に配置される。
【0035】
図5は、第1の実施形態に係る触覚呈示装置における制御系の構成の一例を示す図である。図5に示すように、本実施形態に係る触覚呈示装置は、触覚呈示装置の全体的な動作を制御する制御部70と、制御部70の制御に従って各熱電素子13に電力を供給する熱電素子駆動回路80と、図示しない装置(ホストコントローラなど)と制御部70との間で制御コマンドや温度検出値などの信号のやり取りを行うインターフェース部90とを有する。
【0036】
制御部70は、例えば、インターフェース部90を介して入力される制御コマンドに応じて、被接触面Aの温度を制御する処理を行う。すなわち、制御部70は、温度センサ20において検出される被接触面Aの温度が制御コマンドによって指定された温度へ近づくように、熱電素子駆動回路80から熱電素子13へ供給される電力(例えば熱電素子13に流れる電流の大きさ)を制御する。また、制御部70は、触覚呈示対象へ触覚を呈示する期間の前後の定常状態(指などが被接触面Aに接触していない状態)において、被接触面Aの温度が予め定められた範囲内に維持されるように被接触面Aの温度を制御する処理を行う。これにより、触覚の呈示の応答速度が高速化する。
【0037】
上述した構成を有する本実施形態に係る触覚呈示装置によれば、次のような効果が得られる。
(1)本実施形態に係る触覚呈示装置によれば、伝熱部材11の表面において被接触面Aが形成される領域の外側に温度センサ20が配置されるため、指などの触覚呈示対象が温度センサ20に直接触れない。これにより、温度センサに直接指が接触する従来の装置に比べて耐久性を高めることができる。また、触覚呈示対象が温度センサ20に直接触れることによる触覚の違和感が生じないため、良好な触覚を呈示できる。
(2)本実施形態に係る触覚呈示装置によれば、被接触面Aが形成されていない第1伝熱部材11のZ2側の面111に温度センサ20が配置されるため、指などの触覚呈示対象が温度センサ20に直接触れない。これにより、従来の装置に比べて耐久性を高めることができるとともに、触覚の違和感の発生を防止して良好な触覚を呈示できる。また、第1伝熱部材11と第2伝熱部材12との間に温度センサ20が配置されるため、Z方向における装置のサイズを小型化できる。
(3)本実施形態に係る触覚呈示装置によれば、ヒートシンク部材30が第2伝熱部材12のZ2側の面122に当接する一方で、2つの検出用端子部51及び52が第2伝熱部材12のZ1側の面121に形成される。これにより、2つの検出用端子部51及び52によって干渉されることなく、第2伝熱部材12とヒートシンク部材30とを広い面積で当接させることが可能になり、第2伝熱部材12の温度変化を効果的に抑制できる。第2伝熱部材12の温度変化が小さくなることで、被接触面Aの温度の設定精度が向上し、より高品質の触覚を呈示できる。
(4)本実施形態に係る触覚呈示装置によれば、第1伝熱部材11及び第2伝熱部材12の各面に垂直なZ方向から見た平面視において、2つの検出用端子部51及び52の中間に温度センサ20が位置する。これにより、平面視において2つの検出用端子部51及び52と温度センサ20とにより占められた領域が小さくなり、熱電素子13を配置させるための領域が相対的に大きくなる。従って、熱電素子13の配置密度を高めることが可能となり、装置のサイズを小型化できる。
(5)本実施形態に係る触覚呈示装置によれば、第2伝熱部材12の面121の矩形形状における1つの辺に沿って、第2伝熱部材12の面121の端部に2つの検出用端子部51及び52が並んでいる。すなわち、面121の端部に2つの検出用端子部51及び52がまとまって配置されている。これにより、熱電素子13を配置させるための領域が相対的に大きくなるため、熱電素子13の配置密度を高めることが可能となり、装置のサイズを小型化できる。
(6)本実施形態に係る触覚呈示装置によれば、ヒートシンク部材30が第2伝熱部材12のZ2側の面122に当接する一方で、2つの駆動用端子部53及び54が第2伝熱部材12のZ1側の面121に形成される。これにより、2つの駆動用端子部53及び54によって干渉されることなく、第2伝熱部材12とヒートシンク部材30とを広い面積で当接させることが可能となり、第2伝熱部材12の温度変化を効果的に抑制できる。
(7)本実施形態に係る触覚呈示装置によれば、2つの駆動用端子部53及び54が、2つの検出用端子部51及び52とともに、第2伝熱部材12の面121の矩形形状における1つの辺に沿って、第2伝熱部材12の面121の端部に並んでいる。すなわち、面121の端部に4つの端子部(51〜54)がまとまって配置されている。これにより、熱電素子13を配置させるための領域が相対的に大きくなるため、熱電素子13の配置密度を高めることが可能となり、装置のサイズを小型化できる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図6図8は第2の実施形態に係る触覚呈示装置の一例を示す図である。図6は斜視図であり、図7は正面図であり、図8は平面図である。
【0038】
第2の実施形態に係る触覚呈示装置は、既に説明した第1の実施形態に係る触覚呈示装置に第3伝熱部材40を追加したものであり、他の構成は第1の実施形態に係る触覚呈示装置と概ね同様である。第3伝熱部材40は、本発明における別の伝熱部材の一例である。以下では、図1図5に示す触覚呈示装置との相違点を中心に説明する。
【0039】
第3伝熱部材40は、第1伝熱部材11のZ1側の面112に当接しており、図6及び図7において示すように板状の形状を持つ。第3伝熱部材40のZ1側の面402には、被接触面Aが形成される。第3伝熱部材40のZ2側の面401は、第1伝熱部材11のZ1側の面112に当接する。第3伝熱部材40は、例えば、フレキシブル基板などの部品や、保護用のシート部材、触覚呈示装置を収容するケースや筐体などである。第1伝熱部材11からの冷熱や温熱は、第3伝熱部材40を介して間接的に被接触面Aへ伝わる。
【0040】
上述した構成を有する第2の実施形態に係る触覚呈示装置によれば、第1の実施形態に係る触覚呈示装置と同様の効果に加えて、更に次のような効果が得られる。
(1)第2の実施形態に係る触覚呈示装置によれば、第1伝熱部材11の表面において第3伝熱部材40に当接する領域の外側に温度センサ20が配置されるため、当該領域内に温度センサ20が配置される場合に比べて第1伝熱部材11と第3伝熱部材40との密着性が良くなり、熱電素子13の冷熱又は温熱が第3伝熱部材40を介して被接触面Aに伝わり易くなる。従って、被接触面Aの温度の設定精度が向上し、より高品質の触覚を呈示できる。
(2)第2の実施形態に係る触覚呈示装置によれば、板状の形状を持った第1伝熱部材11のZ1側の面112と、板状の形状を持った第3伝熱部材40のZ2側の面401とが当接するため、第1伝熱部材11と第3伝熱部材40とを広い面積で当接させ易くなり、熱電素子13の冷熱又は温熱が被接触面Aへ伝わり易くなる。従って、被接触面Aの温度の設定精度が向上し、より高品質の触覚を呈示できる。
【0041】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、更に種々のバリエーションを含んでいる。
【0042】
上述した実施形態では、第1伝熱部材11のZ2側の面111に温度センサ20が配置されているが、本発明はこの例に限定されない。例えば、第1伝熱部材11のZ1側の面112において被接触面Aの範囲が一部分に限定されている場合(樹脂ケースによって被接触面Aが限定されている場合など)は、第1伝熱部材11のZ1側の面112であって、かつ、被接触面Aの外側の領域に温度センサ20が配置されてもよい。この場合も、指などの触覚呈示対象が温度センサ20に直接触れないようにすることができるため、従来の装置に比べて耐久性を高めることができるとともに、触覚の違和感の発生を防止して良好な触覚を呈示できる。
【0043】
上述した実施形態では、第1伝熱部材11のZ2側の面111における端部に温度センサ20が配置されているが、本発明の他の実施形態では、面111の端部から離れた場所(例えば中央部)に温度センサが配置されてもよい。
【0044】
上述した実施形態における各部材の形状やサイズ、部材間の位置関係、部材の個数などは一例であり、本発明はこれらの例に限定されない。
【0045】
本特許出願は2017年1月13日に出願した日本国特許出願第2017−004647号に基づきその優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2017−004647号の全内容を本願に援用する。
【符号の説明】
【0046】
10…熱電変換部、11…第1伝熱部材、111,112…面、12…第2伝熱部材、121,122…面、13…熱電素子、20…温度センサ、30…ヒートシンク部材、40…第3伝熱部材、401,402…面、51,52…検出用端子部、53,54…駆動用端子部、61,62…検出用配線、63,64…駆動用配線、70…制御部、80…熱電素子駆動回路、90…インターフェース部、A…被接触面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8