特許第6705025号(P6705025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705025
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/915 20130101AFI20200525BHJP
【FI】
   A61F2/915
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-568150(P2018-568150)
(86)(22)【出願日】2018年2月8日
(86)【国際出願番号】JP2018004406
(87)【国際公開番号】WO2018151007
(87)【国際公開日】20180823
【審査請求日】2019年7月29日
(31)【優先権主張番号】特願2017-24773(P2017-24773)
(32)【優先日】2017年2月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599140507
【氏名又は名称】株式会社パイオラックスメディカルデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊川 秀英
(72)【発明者】
【氏名】大山 峻
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/129551(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0296362(US,A1)
【文献】 特表2011−512206(JP,A)
【文献】 米国特許第6896697(US,B1)
【文献】 特開2002−345971(JP,A)
【文献】 特表2010−505533(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/097236(WO,A1)
【文献】 特表2014−509221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/915
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグザグ状に屈曲し、その両端が連結されて環状に形成されているか、又は、所定形状に屈曲した形状をなす枠状体が、周方向に複数並んで連結されて環状に形成された、複数のストラット部と、これらの各ストラット部を、軸方向に複数連結するブリッジ部と、を有するステントであって、
各ストラット部における、前記ステントの一端側に突出した突出部を山部とし、他端側に突出した突出部を谷部としたとき、
前記一端側の先頭に位置するストラット部を除く各ストラット部の前記山部が、全て前記ブリッジ部に連結され、かつ、前記ブリッジ部によって複数個ずつ束ねられて、前記一端側に隣接する前記ストラット部の、前記谷部又は前記山部に連結されており、各ストラット部の前記谷部が、前記ブリッジ部に連結されていないものを有しており、
前記ブリッジ部は、前記一端側に向かう途中で一本に束ねられてなる結束部を有しており、この結束部が、前記一端側に隣接する前記ストラット部の、前記谷部又は前記山部に連結されており、
前記結束部は、前記ステントの周方向一方向及び周方向他方向に屈曲する、少なくとも2つの屈曲部を有しており、各屈曲部の全ての頂部が、前記他端側に向くように構成されていることを特徴とするステント。
【請求項2】
前記屈曲部の全ての頂部は、前記ステントの軸方向において、前記結束部における、一本に束ねられた部分よりも、前記他端側に配置されている請求項1記載のステント。
【請求項3】
前記ステントの周方向一方向に屈曲する前記屈曲部の頂部、及び、前記ステントの周方向他方向に屈曲する前記屈曲部の頂部は、前記ステントの軸方向において互いに位置ずれしており、これらの頂部のうち、前記他端側に位置ずれした頂部は、前記ステントの軸方向において、前記結束部における、一本に束ねられた部分よりも、前記他端側に配置されている請求項1記載のステント。
【請求項4】
前記ステントの周方向一方向に屈曲する前記屈曲部の頂部、及び、前記ステントの周方向他方向に屈曲する前記屈曲部の頂部は、複数個ずつ設けられている請求項1〜3のいずれか1つに記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、胆管、尿管、気管、血管等の管状器官や、体腔等の体内に留置されるステントに関する。
【背景技術】
【0002】
以前から、胆管、尿管、気管、血管、食道等の管状器官や体腔などの体内に生じた、狭窄部や閉塞部に、ステントを留置して、狭窄部や閉塞部を拡張させて、胆汁や血液等を流れやすくしたり、或いは、動脈瘤が生じた箇所にステントを留置して、その破裂を防止したりする等といった、ステントを用いた治療が行われている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、略菱形、略円形、略角形等をなした、複数の構成要素と、これらの構成要素を、軸方向に連結する連結部とを有する、ステントが記載されている。前記連結部は、ステントの軸方向一端側に、山状の屈曲部を有し、ステントの軸方向他端側に、谷状の屈曲部を有する、略S字状に屈曲した形状をなしている。
【0004】
また、胆管等の管状器官にステントを留置した場合には、時間の経過に伴って、胆汁等の体液や、癌細胞の増殖等によって、ステントの内腔が閉塞することがあり、体内からステントを回収する必要が生じることがあった。この場合は、例えば、管状器官内に留置されたステントの一端部を、鉗子やスネア等で把持した後、これを引っ張ることによって管状器官内壁からステントを引き剥がし、その後、更にステントを引っ張ることで、管状器官内からステントを抜き出すようにしている。
【0005】
上記のような体内から回収可能なステントとして、例えば、下記特許文献2には、ジグザグ状に屈曲し環状をなした複数のストラット部と、各ストラット部を軸方向に連結するブリッジ部とを有し、各ストラット部の、ステント一端側に突出した屈曲部を山部としたとき、各ストラット部の山部が全てブリッジ部に連結され、かつ、ブリッジ部によって複数個ずつ束ねられた形状をなす、ステントが記載されている。また、ブリッジ部は、直線状のフレームを複数本束ねてなり、各フレームがストラット部の山部の全てに連結された構造をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−104488号公報
【特許文献2】国際公開WO2016/129551号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2のステントにおいては、ブリッジ部は、直線状のフレームからなるので、ステントを屈曲した管状器官等に留置した場合、直線状の各フレームが折れ曲がって、ブリッジ部がキンクしやすくなる可能性があった。
【0008】
一方、上記特許文献1のステントにおいては、複数の構成要素どうしを連結する連結部は、略S字状に屈曲した形状をなしているので、連結部が比較的長く、ある程度の柔軟性を有するため、キンクしにくい。しかしながら、体内からステントを引き抜くべく、ステントを一端側から引っ張ると、連結部の屈曲部が、体内の内壁に引っ掛かりやすくなる可能性があった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、体内に留置したステントを体内からスムーズに抜き出すことができると共に、ブリッジ部がキンクしにくい、ステントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、ジグザグ状に屈曲し、その両端が連結されて環状に形成されているか、又は、所定形状に屈曲した形状をなす枠状体が、周方向に複数並んで連結されて環状に形成された、複数のストラット部と、これらの各ストラット部を、軸方向に複数連結するブリッジ部と、を有するステントであって、各ストラット部における、前記ステントの一端側に突出した突出部を山部とし、他端側に突出した突出部を谷部としたとき、前記一端側の先頭に位置するストラット部を除く各ストラット部の前記山部が、全て前記ブリッジ部に連結され、かつ、前記ブリッジ部によって複数個ずつ束ねられて、前記一端側に隣接する前記ストラット部の、前記谷部又は前記山部に連結されており、各ストラット部の前記谷部が、前記ブリッジ部に連結されていないものを有しており、前記ブリッジ部は、前記一端側に向かう途中で一本に束ねられてなる結束部を有しており、この結束部が、前記一端側に隣接する前記ストラット部の、前記谷部又は前記山部に連結されており、前記結束部は、前記ステントの周方向一方向及び周方向他方向に屈曲する、少なくとも2つの屈曲部を有しており、各屈曲部の全ての頂部が、前記他端側に向くように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、管状器官等の体内に、ステントを他端側から挿入し留置した状態で、ステントを回収すべく、ステント一端側を鉗子やスネア等によって把持して引っ張ると、一端側の先頭に位置するストラット部を除く各ストラット部の全ての山部が、ブリッジ部を介して引っ張られ、山部どうしが収束して縮径されやすく、体内の内壁に引っ掛かりにくくなると共に、ストラット部どうしを連結するブリッジ部の結束部は、ステントの周方向一方向及び周方向他方向に屈曲する、少なくとも2つの屈曲部を有しており、各屈曲部の全ての頂部が、ステント他端側に向くように構成されているので、ステント回収時に、屈曲部の頂部が体内の内壁に引っ掛かりにくくすることができ、ステントを体内からスムーズに抜き出すことができる。そして、結束部は、ステントの周方向一方向及び周方向他方向に屈曲する、少なくとも2つの屈曲部を有しているので、結束部を長く確保することができ、その結果、柔軟性を高めて、ブリッジ部をキンクしにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るステントの第1実施形態を示しており、(a)はステントを構成するステント本体の斜視図、(b)はステント本体にカバーが被覆された状態の斜視図である。
図2】同ステントを構成するステント本体の展開図である。
図3図2のA部拡大図である。
図4】同ステントの断面図である。
図5】同ステントを体内から引く抜く際の状態を示す拡大説明図である。
図6】同ステントを体内に留置した状態を示す説明図である。
図7】同ステントを体内から引く抜く際の状態を示す説明図である。
図8】本発明に係るステントの第2実施形態を示しており、同ステントを構成するステント本体の要部拡大展開図である。
図9】同ステントを縮径させた状態の説明図である。
図10】本発明に係るステントの第3実施形態を示しており、同ステントを構成するステント本体の要部拡大展開図である。
図11】同ステントを縮径させた状態の説明図である。
図12】本発明に係るステントの第4実施形態を示しており、同ステントを構成するステント本体の要部拡大展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜7を参照して、本発明に係るステントの第1実施形態について説明する。
【0014】
図1(a)に示すように、この実施形態のステント10は、両端部が開口した略円筒状をなしたステント本体20を有しており、更に図1(b)に示すように、ステント本体20の内側に内側カバー60が被覆され、ステント本体20の外側に外側カバー65が被覆された構造をなした、いわゆるカバードステントとなっている。もちろん、内側カバー60や外側カバー65を被覆させないステントや、一方のカバーのみを被覆させたステントとしてもよい。
【0015】
図2の展開図を併せて参照すると、前記ステント本体20は、線状のフレーム31を、山部35及び谷部37を形成するように、ジグザグ状に屈曲させて、その両端が連結されて環状になる、複数のストラット部30を有している。そして、これらのストラット部30が、ブリッジ部40を介して、ステント10の軸方向に複数連結されることで、ステント本体20が構成されるようになっている。
【0016】
なお、ストラット部としては、ジグザグ状に屈曲し両端が連結されて環状に形成された構造のみならず、所定形状に屈曲した形状をなす枠状体が、ステント周方向に複数並んで連結されて環状に形成された構造としてもよい。
【0017】
また、ストラット部30の、隣接するフレーム31,31がV字状に屈曲してなるV字突出部分32(図3の二点鎖線で囲った部分)は、各ストラット部30について、その周方向に8〜24個設けることが好ましく、12〜16個設けることがより好ましい。
【0018】
なお、以下の説明において、ストラット部30における、ステント10の軸方向一端側(図2,3では図中左側を意味する、以下、単に「一端側」ともいう)に屈曲して突出した突出部を山部35とする。また、ストラット部30における、ステント10の軸方向他端側(図2,3では図中右側を意味する、以下、単に「他端側」ともいう)に屈曲して突出した突出部を谷部37とする。なお、以下の説明において、後述するフレーム41や、結束部50、同結束部50の第1屈曲部51や第2屈曲部53等における、「一端」や「他端」とは、それぞれステントの軸方向一端側における端部、及び、軸方向他端側における端部を意味する。
【0019】
図2に示すように、ステント10の一端側の先頭に位置する、ストラット部30の山部35には、所定個おきに(ここでは2個おき)、リング状をなした引き抜き部39が設けられている。これらの複数の引き抜き部39には、ループ状をなした引き抜きワイヤ25(図1参照)が挿通されており、図5に示すように、この引き抜きワイヤ25を鉗子5等で把持して引っ張ることで、体内からステント10を引き抜き可能となっている。なお、図5においては、便宜上ステント本体20のみが示されている。また、引き抜き部39は、ステント10の一端側の先頭に位置するストラット部30の、山部35の全てに設けてもよい。
【0020】
そして、ステント10は、カテーテルやシース等の図示しない医療用チューブ内に、縮径状態で収容されて、同医療用チューブの先端側から、体内へ押し出されて配置されるようになっている。この場合、ステント10は、谷部37が設けられた他端側を押出方向に向けて収容され、他端側から体内に挿入される。そして、ステント10を体内から回収する際には、山部35が向いた前記一端側から引き抜いて回収することになる。
【0021】
すなわち、本発明における「ステントの他端側」は、ステントを体内に挿入する際の挿入方向側の端部となり、「ステントの一端側」は、ステントを体内から回収する際の引き抜き方向側の端部となる。
【0022】
また、図2及び図3に示すように、ステント10の一端側の先頭に位置する、引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の山部35は、前記ブリッジ部40によって複数個ずつ(ここでは4個)束ねられて、ステントの一端側に隣接するストラット部30の、谷部37に連結されている。更に、ステント10の一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の山部35は、全てブリッジ部40に連結され、各ストラット部30の谷部37は、ブリッジ部40に連結されていないものを有している。
【0023】
上記ブリッジ部40は、ステント10の一端側に向かう途中で一本に束ねられてなる結束部50を有しており、この結束部50が、ステント10の一端側に隣接するストラット部30の、谷部37に連結されている。
【0024】
図2及び図3に示すように、この実施形態のブリッジ部40は、4本のフレーム41を有しており、各フレーム41の他端が、各ストラット部30の、ステント10の周方向に隣接する4個の山部35にそれぞれ連結されている。なお、この実施形態では、ストラット部30の山部35が、ブリッジ部40によって4個ずつ束ねられているが、ブリッジ部40により束ねられる、ストラット部30の山部35の個数は、特に限定されない。また、ブリッジ部40は、各ストラット部30の周方向に、3〜6個設けられていることが好ましく、3〜4個設けられていることがより好ましい。
【0025】
そして、これらの4本のフレーム41が、ステント10の一端側に向かう途中、ここでは各フレーム41の一端どうしが互いに連結されることで、一本に束ねられて結束部50をなしており、この結束部50の一端が、ステント10の一端側に隣接するストラット部30の谷部37に連結されている。なお、結束部50の一端は、ステント10の一端側に隣接するストラット部30の、山部35に連結されていてもよい。また、複数のフレーム41が一本となるように束ねられた部分を、以下の説明において結束部分45とする。
【0026】
この実施形態における結束部50は、ステント10の周方向一方向R1側に屈曲した第1屈曲部51と、ステント10の周方向他方向R2に屈曲した第2屈曲部53とを有しており、各屈曲部51,53の全ての頂部52,54が、ステント10の他端側に向くように構成されている。
【0027】
この結束部50は、上記結束部分45において束ねられ、該結束部分45からステント一端側に向けて伸びる一本のフレーム41を、第1屈曲部51や第2屈曲部53を形成するように、適宜屈曲させることで構成されている。概略的には、この実施形態の結束部50は、略S字状をなすように屈曲した、2つの屈曲部の両方の頂部を、ステント10の他端側に向けて屈曲させたような形状となっている。以下、結束部50の形状について詳細に説明する。
【0028】
なお、本発明において、各屈曲部の「頂部」とは、屈曲部の折り返し部であって、屈曲部全体として見たときに、ステントの周方向に最も突出した部分を意味するものとし(図3,8,10参照)、また、各屈曲部について、折り返し部が複数存在する場合には、各折り返し部における、ステントの周方向に最も突出した部分を意味する(図12参照)。また、本発明において、屈曲部の頂部が他端側に向くとは、屈曲部の頂部に向かう両側部分が、全体としてステントの他端側に向けて傾斜していることを意味する。
【0029】
図2及び図3に示すように、この実施形態における第1屈曲部51は、頂部52に向かう両側部分51a,51bが、周方向に対して他端側に傾いており、屈曲部全体として見たときの頂部52の方向が他端側に向いている。なお、第1屈曲部51の一端51cは、前記結束部分45に連結されている。
【0030】
一方、第2屈曲部53も、頂部54に向かう両側部分53a,53bが、周方向に対して他端側に傾いており、屈曲部全体として見たときの頂部54の方向が他端側に向いている。なお、第2屈曲部53の一端53cは、ステント10の一端側に隣接するストラット部30の、谷部37に連結されている。
【0031】
また、第1屈曲部51の一側部分51aの端部と、第2屈曲部53の他側部分53bの端部とが、ステント10の一端側に向けて山状に屈曲した山状屈曲部分56を介して、互いに連結されているが、この山状屈曲部分56の角度(山状屈曲部分56の両側部分、すなわち、第1屈曲部51の一側部分51aと、第2屈曲部53の他側部分53bとがなす角度)は鈍角をなしている。更に、この実施形態においては、結束部50の軸方向両端、ここでは、第1屈曲部51の他端51cと、第2屈曲部53の一端53cとは、図2及び図3に示すように、ステント10の周方向において、ほぼ整合した位置となっている。
【0032】
なお、結束部としては、上記形状に限定されるものではなく、例えば、図8や、図10図12に示すような形状としてもよい(これらについては後述する)。すなわち、結束部は、ステントの周方向一方向及び周方向他方向に屈曲する、少なくとも2つの屈曲部を有していればよく、3つ以上の屈曲部を有していてもよい。また、結束部を、略Z字状等として、その2つの屈曲部の両方の頂部を、ステント他端側に向けて屈曲させたような形状としてもよい。ただし、この場合も、各屈曲部の全ての頂部が、ステントの他端側に向くように構成されていることが必要である。
【0033】
また、上記のように、複数のストラット部30がブリッジ部40を介して連結されることにより、ステント軸方向に隣接するストラット部30,30と、ステント周方向に隣接するブリッジ部40,40とで囲まれた空間S(図2及び図3参照)が、ステント本体20に複数形成されている。そして、この空間Sに、結束部50の第1屈曲部51や第2屈曲部53が入り込むように配置されている(図2及び図3参照)。
【0034】
なお、この実施形態におけるステント本体20は、金属円筒を、レーザー加工やエッチング等で加工して、複数のストラット部やブリッジ部を形成することで構成されている。ただし、例えば、金属板を加工して、ジグザグ状又は枠状体からなる複数のストラット部やブリッジ部を設け、この金属板を円筒状に屈曲させてステント本体を形成してもよい。
【0035】
また、上記ステント本体20は、常時は拡径した状態となる自己拡張型であるが、バルーンカテーテル等に装着しておき、ステントの内側に配置されたバルーンを膨らませることで、拡径させるバルーン拡径型としてもよい。
【0036】
上記ステント本体20の材質は、特に限定されないが、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W等や、Ni−Ti系合金、Co−Cr系合金、Co−Cr−Ni系合金、Cu−Zn−X(X=Al,Fe等)合金、Ni−Ti−X(X=Fe,Cu,V,Co等)合金等の形状記憶合金などが好ましい。また、ステント本体20の所定位置に、例えば、Pt、Ti、Pd、Rh、Au、W、Ag、Bi、Ta及びこれらの合金や、BaSO4、Bi、W等の粉末を含有した合成樹脂、ステンレスなどからなる、X線不透過性のX線マーカーを設けてもよい。
【0037】
更に上述したように、ステント本体20の内側に内側カバー60が被覆されていると共に、外側に外側カバー65が被覆されており、両カバー60,65によって、ステント本体20のメッシュ開口(ストラット部30の複数のフレーム31と、ブリッジ部40の複数のフレーム41と、結束部50のフレーム41とで画成される空隙)が塞がれている。これらの内側カバー60及び外側カバー65は、例えば、ポリウレタン、シリコーン、天然ゴム、ナイロンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルや、更には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂、ポリブタジエン等のオレフィン系ゴム、スチレン系エラストマーなどで形成されることが好ましい。
【0038】
なお、上記実施形態では、本発明における「前記一端側の先頭に位置するストラット部を除く各ストラット部」とは、引き抜き部39を有するストラット部30以外の、全てのストラット部30を指すものであり、また、本発明における「各ストラット部」とは、引き抜き部39を有するストラット部30を含む、全てのストラット部30を指すものであり、更に本発明における「前記一端側に隣接する前記ストラット部」とは、ある所定のストラット部30に対して、それに隣接する所定のストラット部30を指すものである(例えば、図2においては、紙面右端(軸方向他端側)のストラット部30に対して、その隣に位置する、紙面右端から2つ目のストラット部30を指す)。これは後述する実施形態においても同様である。
【0039】
次に、上記構成からなる本発明のステント10の、使用方法の一例について説明する。なお、この使用方法は一例であり、特に限定はされない。
【0040】
図6に示すように、十二指腸1の下部には、乳頭2が設けられており、この乳頭2から胆管3や膵管4が分岐して伸びている。また、図示しない肝臓により生成される胆汁は、胆管3内を流動し、乳頭2を通過して十二指腸1へと供給されるようになっている。ここでは、乳頭2を通して、胆管3内にステント10を留置する際の手順について説明する。
【0041】
なお、本発明のステント10は、胆管3以外にも、膵管4や、食道、気管、大腸、血管等の管状器官や、体腔等の体内に留置することもでき、適用箇所は特に限定されない。
【0042】
まず、ステント10を縮径させて、カテーテルやシース等の図示しない医療用チューブ内に収容する。この際には、引き抜き部39を有するストラット部30があるステント一端側を手元側に向け、ステント他端側をチューブ先端側に向けて、医療用チューブ内にステント10を縮径させた状態で収容する。
【0043】
この状態で周知の方法によって、図示しない内視鏡のルーメンを通じてガイドワイヤを胆管3に挿入した後、同ガイドワイヤを介して医療用チューブを挿入していくことで、ステント10を、その他端側から胆管3内に挿入する。そして、医療用チューブの先端部が胆管3の所定位置に達したら、医療用チューブの挿入を終了する。その後、プッシャ等を介してチューブ先端からステント10を解放することで、ステント10を拡径させて、図6に示すように、ステント他端側を胆管3内に配置すると共に、ステント一端側を乳頭2からやや突き出るように配置して、ステント10を留置する。
【0044】
こうして胆管3内に留置されたステント10によって、胆管3が拡径した状態に維持されるが、胆汁等の体液や、癌細胞の増殖等によって、ステント10の内腔が閉塞されたり、或いは、治療が終了したりした場合には、ステント10を体内から回収したい場合がある。
【0045】
この場合には、図7に示すように、例えば、図示しない内視鏡のルーメンを通じて、鉗子5を十二指腸1内に挿入し、該鉗子5で、ステント一端側に設けたループ状の引き抜きワイヤ25を把持して、図5に示すように、鉗子5を操作者の手元側に向けて引っ張る。なお、ループ状のスネアを、ステント一端側に引っ掛けて、同スネアを介してステントを引っ張ってもよく、ステントを引っ張る手段は特に限定されない。
【0046】
このとき、ステント10の一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の山部35が、ブリッジ部40によって複数個ずつ束ねられ、ステント一端側に隣接するストラット部30の谷部37に連結され、かつ、ステント10の一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の山部35は、全てブリッジ部40に連結された構造をなしているので、上記のように、ステント一端側から引っ張ると、ステント一端側の先頭に位置するストラット部30を通じて、ステント10の一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の全ての山部35が、それらを複数個ずつ束ねるブリッジ部40を介して引っ張られる。
【0047】
その結果、図5に示すように、各ストラット部30における山部35どうしが収束して、ステント10が縮径されやすくなると共に、ステント10の一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の全ての山部35は、全てブリッジ部40に連結されているため、ステント10の一端側に突出した突出部が、独立して存在しなくなり、各ストラット部30の複数の山部35を、胆管3等の体内の内壁に引っ掛かりにくくすることができる。
【0048】
それと共に、隣接するストラット部30,30どうしを連結するブリッジ部40の結束部50は、ステント10の周方向一方向R1に屈曲する第1屈曲部51、及び、ステント10の周方向他方向R2に屈曲する第2屈曲部53を有しており、各屈曲部51,53の頂部52,54は、ステント10の他端側に向くように構成されているので、各屈曲部51,53の頂部52,54が、胆管3等の体内の内壁に引っ掛かりにくくすることができる。
【0049】
上記のように、このステント10においては、各ストラット部30の複数の山部35、及び、結束部50の各屈曲部51,53の頂部52,54を、体内の内壁に引っ掛かりにくくすることができるので、体内からステント10をスムーズに抜き出すことができる。なお、この実施形態の場合、胆管3から抜き出されたステント10は、図示しない内視鏡のルーメンを通じて、体内から回収することができる。
【0050】
そして、このステント10における結束部50は、ステント10の周方向一方向R1及び周方向他方向R2に屈曲する、2つの屈曲部51,53を有しているので、結束部50を長く確保することができ、その結果、結束部50の柔軟性を高めて、ブリッジ部40をキンクしにくくすることができる。そのため、管状器官等が屈曲している場合であっても、その屈曲した管状器官に対応して、ステント10を適宜屈曲させて、その内腔を保持しつつ留置することができ、また、ステント留置後に、癌細胞等の増殖等によって、ステント10が圧迫されて屈曲した場合であっても、ブリッジ部40をキンクしにくくして、ステント内腔の狭窄を防止することができる。
【0051】
図8及び図9には、本発明に係るステントの第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0052】
この第2実施形態のステント10Aは、ブリッジ部40の結束部50Aの形状が、前記実施形態と異なっている。
【0053】
図8に示すように、このステント10Aにおける結束部50Aは、ステント10Aの周方向一方向R1側に屈曲した第1屈曲部51Aと、ステント10Aの周方向他方向R2側に屈曲した第2屈曲部53Aとを有しており、両屈曲部51A,53Aが共に、弓なり状に屈曲した形状をなしている。なお、両屈曲部51A,53Aは、ステント10Aの軸方向において、ほぼ整合した位置に配置されている。また、屈曲部の全ての頂部、すなわち、第1屈曲部51Aの頂部52、及び、第2屈曲部53Aの頂部54が、ステント10Aの軸方向において、結束部50Aにおける、複数のフレーム41が一本となるように束ねられた結束部分45よりも、ステント10Aの他端側に配置されている。
【0054】
なお、図9に示すように、ステント10Aが縮径すると、所定の結束部50Aの第1屈曲部51Aと、該結束部50Aに対してステント周方向に隣接した、他の結束部50Aの第2屈曲部53Aが近接するようになっている。
【0055】
そして、この第2実施形態においては、各屈曲部51A,53Aの、各頂部52,54は、前記結束部分45よりも、ステント10Aの他端側に位置しているので、結束部50Aの長さをより長く確保することができ、ブリッジ部40を、よりキンクしにくくすることができる。また、結束部50Aの長い第1屈曲部51Aや第2屈曲部53Aを、ステント軸方向に隣接するストラット部30,30と、ステント周方向に隣接するブリッジ部40,40とで囲まれた空間Sに、入り込むように配置させることができるため、ブリッジ部40の、体内の内壁への当接面積を増やすことができ、同内壁に対して均一な拡張力を伝達することができると共に、ステント10Aに外力が作用した場合に(例えば、内径の小さい管状器官に留置した際に、その内壁からの押圧力が大きい場合や、ステント10Aを医療用チューブ内に収容すべく縮径させる場合等)、ステント本体20の内側又は外側に被覆されたカバー60,65の凹みを抑制することができる。
【0056】
図10及び図11には、本発明に係るステントの第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0057】
この第3実施形態のステント10Bは、ブリッジ部40の結束部50Bの形状が、前記実施形態と異なっている。
【0058】
図10に示すように、このステント10Bにおける結束部50Bは、ステント10Bの周方向一方向R1側に屈曲した第1屈曲部51Bと、ステント10Bの周方向他方向R2側に屈曲した第2屈曲部53Bとを有しており、両屈曲部51A,53Aが共に、弓なり状に屈曲した形状をなしている。また、第1屈曲部51Bの頂部52、及び、第2屈曲部53Bの頂部54は、ステント10Bの軸方向において互いに位置ずれしている。ここでは、第1屈曲部51Bの方が、第2屈曲部53Bよりも、ステント10Bの他端側となるように位置ずれしている。そして、各屈曲部51B,53Bの頂部52,54のうち、第2屈曲部53Bの頂部54よりも、ステント10Bの他端側に位置ずれした、第1屈曲部51Bの頂部52は、ステント10Bの軸方向において、結束部50Bにおける、複数のフレーム41が一本となるように束ねられた結束部分45よりも、ステント10Bの他端側に配置されている。
【0059】
そして、この第3実施形態においては、ステント10Bが縮径されると、図11に示すように、ストラット部30とブリッジ部40とで囲まれた空間Sに、所定の結束部50Bの第1屈曲部51Bが入り込むと共に、該結束部50Bに対してステント周方向に隣接した、他の結束部50Bの第2屈曲部53Bが入り込むこととなる。このとき、第2屈曲部53Bの頂部54よりも、第1屈曲部51Bの頂部52が、ステント10Bの他端側に位置ずれしているので、所定の結束部50Bの第1屈曲部51Bが、周方向に隣接する他の結束部50Bの第2屈曲部53Bに干渉しにくくなり、ステント10Bを縮径させやすくすることができる。また、結束部50Bを長く確保して、ブリッジ部40を、よりキンクしにくくすることができ、かつ、ブリッジ部40の、体内の内壁への当接面積を増やして、内壁に均一な拡張力を伝達することができると共に、ステント10Bに外力が作用した場合に、ステント本体20の内側又は外側に被覆されたカバー60,65の凹みを抑制することができる。
【0060】
図12には、本発明に係るステントの第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0061】
この第4実施形態のステント10Cは、ブリッジ部40の結束部50Cの形状が、前記実施形態と異なっている。
【0062】
図12に示すように、このステント10Cにおける結束部50Cは、ステント10Cの周方向一方向R1側に屈曲した第1屈曲部51Cと、ステント10Bの周方向他方向R2側に屈曲した第2屈曲部53Cとを有しており、また、第1屈曲部51Cには、2つの頂部52,52が設けられていると共に、第2屈曲部53Cにも、2つの頂部54,54が設けられている。
【0063】
すなわち、第1屈曲部51Cは、2つの頂部52,52が、窪み状屈曲部分57を介して並列して設けられた、略ハート状に屈曲した形状をなし、これがステント軸心に対して斜めに配置されている。同様に、第2屈曲部53Cも、2つの頂部54,54が、窪み状屈曲部分57を介して並列して設けられた、略ハート状に屈曲した形状をなしており、これがステント軸心に対して斜めに配置されている。なお、各屈曲部に設けた頂部は、3つ以上であってもよく、特に限定はされない。
【0064】
そして、この第4実施形態においては、各屈曲部51C,53Cに、頂部52や頂部54が複数設けられているので、結束部50Cをより長く確保して、ブリッジ部40をよりキンクしにくくすることができると共に、ブリッジ部40の、体内の内壁への当接面積を増やして、内壁に均一な拡張力を伝達することができ、更に、ステント10Cに外力が作用した場合に、ステント本体20の内側又は外側に被覆されたカバー60,65の凹みを抑制することができる。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
10,10A,10B,10C ステント
20 ステント本体
30 ストラット部
35 山部
37 谷部
40 ブリッジ部
45 結束部分
50,50A,50B,50C 結束部
51,51A,51B,51C 第1屈曲部
52 頂部
53,53A,53B,53C 第2屈曲部
54 頂部
60 内側カバー
65 外側カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12