特許第6705046号(P6705046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6705046低温成形用導電性組成物および導電膜付き基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6705046
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】低温成形用導電性組成物および導電膜付き基板
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20200525BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20200525BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   H01B1/22 A
   B22F1/02 B
   B22F1/00 R
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-224163(P2019-224163)
(22)【出願日】2019年12月12日
【審査請求日】2020年1月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】杉山 高啓
(72)【発明者】
【氏名】沼口 穣
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−164908(JP,A)
【文献】 特開2016−054098(JP,A)
【文献】 特開2016−119255(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/067016(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
B22F 1/00
B22F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粉末(A)と、樹脂バインダ(B)と、膜形成剤(C)と、溶媒(D)と、を含み、130℃以下の低温で導電膜を成形するために用いられる低温成形用導電性組成物であって、
前記導電性粉末(A)の少なくとも一部は、表面にカルボン酸系の表面処理剤が付着しており、
前記膜形成剤(C)は、25℃で前記溶媒(D)に対して不溶であり、かつ前記導電膜の成形時には前記溶媒(D)に対して可溶な化合物であり、
ここで、前記不溶とは、前記膜形成剤(C)の前記溶媒(D)に対する溶解度が3質量%未満であることをいい、前記可溶とは、前記溶解度が3質量%以上であることをいう、低温成形用導電性組成物。
【請求項2】
前記膜形成剤(C)の含有割合が、前記樹脂バインダ(B)100質量部に対して、5質量部以上150質量部以下である、
請求項1に記載の低温成形用導電性組成物。
【請求項3】
前記膜形成剤(C)が、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物のうちの少なくとも1つの有機金属化合物を含む、
請求項1または2に記載の低温成形用導電性組成物。
【請求項4】
前記膜形成剤(C)の含有割合が、前記膜形成剤(C)と前記溶媒(D)との合計を100質量%としたときに、4質量%以上25質量%以下である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の低温成形用導電性組成物。
【請求項5】
前記樹脂バインダ(B)が、重量平均分子量が1500以上の熱硬化性樹脂を含む、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の低温成形用導電性組成物。
【請求項6】
前記樹脂バインダ(B)が、重量平均分子量が3000以上の熱可塑性樹脂を含む、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の低温成形用導電性組成物。
【請求項7】
硬化剤を含まないか、前記樹脂バインダ(B)100質量部に対して硬化剤が1質量部未満である、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の低温成形用導電性組成物。
【請求項8】
110℃以下の温度で前記導電膜を成形するために用いられる、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の低温成形用導電性組成物。
【請求項9】
基板と、前記基板上に成形され、請求項1〜8のいずれか一項に記載の低温成形用導電性組成物の乾燥体からなる前記導電膜と、を備えた導電膜付き基板。
【請求項10】
前記導電膜の体積抵抗率が100μΩ・cm以下である、請求項9に記載の導電膜付き基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温成形用導電性組成物および導電膜付き基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品等の電極や配線パターンを形成するために、導電性組成物が広く用いられている(例えば特許文献1〜6参照)。例えば、高温に曝されると性能が低下してしまうような基板(例えばプラスチック基板)の上に電極や配線パターンを形成する場合には、常温(25℃)〜200℃の比較的低温で導電膜を成形可能な導電性組成物が好ましく利用されている。これに関連し、特許文献1には、導電性粉末と熱硬化性樹脂と希釈剤とを撹拌混合し、ペースト状(スラリー状、インク状を包含する。)に調製した導電性組成物が開示されている。特許文献1には、導電性組成物を基板上に所望のパターンで付与した後、150℃で加熱し、熱硬化性樹脂を硬化させることによって基板上に導電膜を成形することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−106356号公報
【特許文献2】特開2016−100134号公報
【特許文献3】特許第4702499号公報
【特許文献4】特開2014−002992号公報
【特許文献5】特開2014−107533号公報
【特許文献6】特開2004−137345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基材のバリエーションを広げて、例えばポリカーボネート(PC)製の基板等に対しても適用可能とするためには、導電膜を成形する際の温度をより低く設定する必要がある。加えて、本発明者らの検討によれば、上記導電膜は膜強度が不足して耐久性に欠けることがあった。より具体的には、例えば電子機器の組み立てや使用に際して衝撃や負荷がかかると、導電膜が変形したり剥がれ落ちたりして、断線や絶縁不良といった不具合を生じることがあった。そこで本発明者らは、樹脂の強度を高めうることが知られている添加剤、例えば膜形成剤や反応促進剤等と呼ばれているような添加剤を導電性組成物に添加して、導電膜の強度を向上することを考えた。しかし、所謂、1液タイプの導電性組成物に対してこのような添加剤を安易に添加すると、例えば導電性組成物の保管時に粘度が上昇してハンドリング性が悪化したり、導電性組成物がゲル化して導電膜の成形が不可能になったりすることがあった。また、成形した導電膜の体積抵抗率が高くなって、電気伝導性が実用レベルに達しないことがあった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、経日安定性に優れ、かつ高い膜強度と電気伝導性とを兼ね備えた導電膜を成形可能な低温成形用導電性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、導電性粉末(A)と、樹脂バインダ(B)と、膜形成剤(C)と、溶媒(D)と、を含み、130℃以下の低温で導電膜を成形するために用いられる低温成形用導電性組成物が提供される。上記導電性粉末(A)の少なくとも一部は、表面にカルボン酸系の表面処理剤が付着している。上記膜形成剤(C)は、25℃で上記溶媒(D)に対して不溶であり、かつ上記導電膜の成形時には上記溶媒(D)に対して可溶な化合物である。
【0007】
上記構成の低温成形用導電性組成物は、常温(25℃)で保管しているときには、樹脂バインダ(B)が溶媒(D)に溶解し、かつ膜形成剤(C)が溶媒(D)に溶解しない。これによって、所謂、1液タイプであっても、保管時に低温成形用導電性組成物が増粘しにくくなり、優れた経日安定性を実現することができる。また、導電膜の成形時に膜形成剤(C)が溶媒(D)に溶解し、導電性粉末(A)の表面に作用することによって、130℃以下の低温であっても、高い膜強度と電気伝導性とを兼ね備えた導電膜を実現することができる。
【0008】
なお、本明細書において「膜形成剤(C)が溶媒(D)に対して不溶」とは、後述する手順で溶解性評価を行ったときに、膜形成剤(C)の溶媒(D)に対する溶解度が3質量%未満であることをいう。また、本明細書において「膜形成剤(C)が溶媒(D)に対して可溶」とは、後述する手順で溶解性評価を行ったときに、膜形成剤(C)の溶媒(D)に対する溶解度が3質量%以上であることをいう。
【0009】
ここで開示される好ましい一態様では、上記膜形成剤(C)の含有割合が、上記樹脂バインダ(B)100質量部に対して、5質量部以上150質量部以下である。これにより、ここに開示される技術の効果をより安定して発揮できると共に、導電膜の電気伝導性を向上することができる。
【0010】
ここで開示される好ましい一態様では、上記膜形成剤(C)が、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物のうちの少なくとも1つの有機金属化合物を含む。これにより、ここに開示される技術の効果をより安定して発揮できると共に、導電膜の電気伝導性を向上することができる。
【0011】
ここで開示される好ましい一態様では、上記膜形成剤(C)の含有割合が、前記膜形成剤(C)と前記溶媒(D)との合計を100質量%としたときに、4質量%以上25質量%以下である。これにより、ここに開示される技術の効果をより安定して発揮できる。
【0012】
ここで開示される好ましい一態様では、上記樹脂バインダ(B)が、重量平均分子量が1500以上の熱硬化性樹脂を含む。これにより、導電膜の基材に対する接着性および膜強度のうちの少なくとも1つを向上することができる。
【0013】
ここで開示される好ましい一態様では、上記樹脂バインダ(B)が、重量平均分子量が3000以上の熱可塑性樹脂を含む。これにより、導電膜の基材に対する接着性および膜強度のうちの少なくとも1つを向上することができる。
【0014】
ここで開示される好ましい一態様では、硬化剤を含まないか、樹脂バインダ(B)100質量部に対して硬化剤が1質量部未満である。これにより、経日安定性および電気伝導性のうちの少なくとも1つを向上することができる。
【0015】
ここで開示される好ましい一態様では、110℃以下の温度で上記導電膜を成形するために用いられる。これにより、耐熱温度が低いプラスチック基板、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)製の基板やポリカーボネート(PC)製の基板に対しても好適に導電膜を成形することができる。
【0016】
また、本発明により、基板と、上記基板上に成形され、上記低温成形用導電性組成物の乾燥体からなる導電膜と、を備えた導電膜付き基板が提供される。かかる導電膜は、例えば130℃以下の低温で導電膜を成形した場合であっても、体積抵抗率を小さく抑えることができる。好ましくは、例えば100℃で2時間焼成した後の体積抵抗率を、100μΩ・cm以下に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る導電膜付き基板を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、低温成形用導電性組成物の組成)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、低温成形用導電性組成物の調製方法や導電膜の成形方法、導電膜付き基板の製造方法等)は、本明細書により教示されている技術内容と、当該分野における当業者の一般的な技術常識とに基づいて理解することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0019】
なお、本明細書において「導電膜」とは、低温成形用導電性組成物を樹脂バインダが変質しない温度(130℃以下、例えば110℃以下)で乾燥させた膜状の乾燥体をいう。導電膜は、配線(線状体)、配線パターン、ベタパターン、を包含する。また、本明細書において「常温」とは25℃をさす。また、本明細書において「相互作用」とは、分子間で共有結合を形成すること、および、共有結合よりも弱い分子間力、例えば、イオンと双極子との相互作用、双極子間の相互作用、水素結合、ファンデルワールス結合等といった分子間に働く力を形成すること、を包含する。また、本明細書において範囲を示す「X〜Y」の表記は、X以上Y以下の意と共に、「好ましくはXより大きい」および「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。
【0020】
≪低温成形用導電性組成物≫
ここで開示される低温成形用導電性組成物(以下、「組成物」と略称することがある。)は、所謂、1液タイプであり、130℃以下の低温で導電膜を成形するために用いられる。一例では、組成物を基材上に塗布した後、常温(25℃)よりも高く120℃以下、さらには30〜110℃、50〜100℃、例えば80〜100℃の温度で加熱乾燥することによって導電膜を成形するために用いられる。組成物の付与は、例えばスクリーン印刷やオフセット印刷等で行うことができる。オフセット印刷では、版に付着させた組成物を一旦ゴムブランケット等の中間転写体に転写(offset)した後、基材に塗布する。オフセット印刷の典型例としては、平版を用いる平版オフセット印刷や凸版を用いるドライオフセット印刷等が挙げられる。ここで開示される組成物は、スクリーン印刷用やオフセット印刷用として好適に用いることができる。ここで開示される組成物は、必須の成分として、導電性粉末(A)と、樹脂バインダ(B)と、膜形成剤(C)と、溶媒(D)と、を含んでいる。以下、各構成成分について順に説明する。
【0021】
<導電性粉末(A)>
導電性粉末は、導電膜に電気伝導性を付与する成分である。導電性粉末の種類は特に限定されず、従来公知のものの中から、例えば用途等に応じて、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。特に限定されるものではないが、導電性粉末としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)等の金属の単体、およびこれらの混合物や合金、コアシェル粒子等が例示される。
【0022】
合金としては、例えば、銀−パラジウム(Ag−Pd)、銀−白金(Ag−Pt)、銀−銅(Ag−Cu)等の銀合金が挙げられる。コアシェル粒子は、例えば、コア部と、コア部の表面の少なくとも一部を被覆する金属を含んだ被覆部と、を有する。少なくとも一部を被覆する金属としては例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)等が挙げられる。
【0023】
好適な一態様では、導電性粉末が銀系粒子を含んでいる。銀は比較的コストが安く、かつ電気伝導度が高い。このため、導電性粉末が銀系粒子を含むことでコストと低抵抗とのバランスに優れた導電膜を実現することができる。なお、本明細書において「銀系粒子」とは、銀成分を含むもの全般を包含する。銀系粒子の一例としては、例えば、銀の単体、上記した銀合金、銀系粒子をシェルとするコアシェル粒子等が例示される。
【0024】
また、2種以上の導電性粉末を併用する場合、第1の導電性紛末と第2の導電性粉末との混合比は特に限定されない。一例として、低抵抗の観点からは、相対的に体積抵抗率が小さい第1の導電性紛末(例えば銀系粒子)を100質量部とした場合に、相対的に体積抵抗率が大きい第2の導電性粉末(例えば銀系粒子以外の導電性粉末)の含有量を、概ね100質量部以下、例えば75質量部以下、50質量部以下、25質量部以下、15質量部以下、10質量部以下、5質量部以下、1質量部以下、0.5質量部以下、0.1質量部以下としてもよい。
【0025】
導電性粉末の形状は特に限定されない。導電性粉末は、例えば、球状、フレーク状、針状、不定形等であってもよい。導電性粉末は、製造コストを低減する観点等からは、球状であるとよい。導電性粉末は、電気伝導性を向上する観点等からは、フレーク状であるとよい。なお、本明細書において「球状」とは、全体として概ね球体(ボール)と見なせる形態を示し、楕円状、多角体状、円盤球状等をも包含する用語である。本明細書において「球状」とは、例えば平均アスペクト比が1.0〜2.0、好ましくは1.5以下であることをいう。また、本明細書において「フレーク状」とは、鱗片状、板状等をも包含する用語であり、平均アスペクト比が、概ね2以上、典型的には3以上、例えば5〜50、8〜40、さらには10〜30であることをいう。また、本明細書において「平均アスペクト比」とは、導電性粉末を構成する複数の導電性粒子を電子顕微鏡で観察し、得られた観察画像から算出されるアスペクト比の算術平均値(長径/短径比、典型的には、長径/厚み比)をいう。
【0026】
特に限定されるものではないが、導電性粉末のD50粒径は、概ね0.1μm以上、典型的には0.5μm以上、例えば0.8μm以上、さらには1μm以上であって、概ね10μm以下、7μm以下、例えば5μm以下、さらには3μm以下であってもよい。D50粒径を所定値以上とすることで、溶媒中での導電性粉末の凝集を高度に抑制して、経日安定性(ライフ)を向上することができる。さらに、導電膜中の導電性粒子の界面が少なくなり、電気伝導性を向上することができる。また、D50粒径を所定値以下とすることで、組成物に好適な流動性(粘度)を持たせることができ、導電膜を成形する際の塗工性やハンドリング性を向上することができる。さらには、薄膜状にあるいは細線状の導電膜を安定的に形成することができる。なお、本明細書において「D50粒径」とは、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径の小さい側から積算値50%に相当する粒子径をいう。
【0027】
導電性粉末を構成する導電性粒子の少なくとも一部は、表面にカルボン酸系の表面処理剤が付着している。カルボン酸系の表面処理剤は、溶媒(D)中で導電性粉末(A)の分散性を高めたり、導電性粉末(A)の表面酸化を防止したりする機能を有する。カルボン酸系の表面処理剤は、後述する膜形成剤(C)と相互作用する構造部分(典型的には官能基)を有する。膜形成剤(C)と相互作用しうる官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシル基、エステル結合基等の酸素含有基が挙げられる。なかでも、カルボキシル基が好ましい。ここに開示される技術の効果を高いレベルで発揮する観点からは、導電性粉末(A)がカルボン酸系の表面処理剤が付着した導電性粒子を主体(全体の50質量%を超える成分)として構成されているとよく、カルボン酸系の表面処理剤が付着した導電性粒子が、導電性粉末(A)全体の概ね60質量%以上、例えば80質量%以上であるとよく、実質的に100質量%(95質量%以上)を占めているとよい。
【0028】
なお、カルボン酸系の表面処理剤が付着した導電性粒子は、市販品を購入してもよく、従来公知の手法によって作製することもできる。一例として、金属粉末をカルボン酸またはその塩と液相中で反応させることによって作製することができる。カルボン酸またはその塩の種類は特に限定されず、従来公知のものの中から、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。特に限定されるものではないが、カルボン酸としては、例えば、デカン酸(カプリン酸)、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸(飽和脂肪酸);アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸(不飽和脂肪酸);フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸、トリマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フェニル酪酸、フェノキシ酢酸、アスコルビン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸や、それらのアルキル置換体、アルケニル置換体;酸無水物;等が例示される。
【0029】
好適な一態様では、表面処理剤としてのカルボン酸の炭素数が、概ね5以上、例えば10以上、さらには15以上であるとよい。これにより、溶媒(D)中での導電性粉末(A)の分散安定性をより良く高めることができる。一例として、炭素数8〜12の中鎖脂肪酸や、炭素数14以上の長鎖脂肪酸が挙げられる。また、カルボン酸の塩としては、例えば、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩やカリウム塩)や、アルカリ土類金属塩(例えばマグネシウム塩やカルシウム塩)等が例示される。特に限定されるものではないが、表面処理剤の付着量は、例えば導電性粉末100質量部に対して、概ね0.01〜3質量部、例えば0.01〜1質量部程度であってもよい。
【0030】
特に限定されるものではないが、組成物全体に占める導電性粉末(A)の割合は、概ね40質量%以上、典型的には50〜95質量%、例えば55〜90質量%、60〜85質量%、65〜80質量%であってもよい。上記範囲を満たすことで、電気伝導性に優れた導電膜を好適に形成することができる。また、塗工性やハンドリング性が良好となり、安定して導電膜を成形することができる。
【0031】
<樹脂バインダ(B)>
樹脂バインダは、導電膜に接着性や耐久性を付与する成分である。なお、本実施形態では導電膜の成形温度が低温なため、後述する樹脂バインダの性状は導電膜の状態においても維持されうる。樹脂バインダは、常温(25℃)において後述する溶媒(D)中に均質に溶解しているとよい。すなわち、組成物の保管時には、目視で溶け残りが確認されず、樹脂バインダと溶媒(D)とが、均質な相の混合物、すなわち溶体を生ずることが好ましい。樹脂バインダは、常温(25℃)で液状であってもよい。これにより、常温で溶媒(D)に溶解されやすくなる。樹脂バインダは、特に限定されず、従来公知のものの中から、例えば基材の種類や導電膜に要求される特性等に応じて、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0032】
樹脂バインダは、エネルギー硬化性樹脂、例えば熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂等であってもよく、可塑性樹脂、例えば熱可塑性樹脂であってもよい。特に限定されるものではないが、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂(B1)、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂等が例示される。熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂(B2)、ブチラール樹脂(B3)、セルロース樹脂(B4)、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂等が例示される。なかでも、導電膜の耐久性、例えば、耐摩耗性、耐薬品性、耐水性、耐湿性のうちの少なくとも1つを向上する観点からは、熱硬化性樹脂が好ましい。また、熱可塑性樹脂のなかでは、非結晶性樹脂(無定形状態にある樹脂)が好ましい。
【0033】
エポキシ樹脂(B1)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂等が例示される。市販品としては、例えば、三菱化学株式会社製のJER(登録商標)シリーズ、株式会社ADEKA製のEPシリーズ、日本化薬株式会社製のNCシリーズ、EPPNシリーズ、EOCNシリーズ、DIC株式会社製のEPICLONシリーズ等が例示される。
【0034】
熱可塑性ポリエステル樹脂(B2)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等が例示される。ポリエステル樹脂は、有機溶媒に可溶な非晶性であるとよい。市販品としては、例えば、東洋紡株式会社製のバイロン(登録商標)シリーズ、ユニチカ株式会社製のエリーテルシリーズ等が例示される。
【0035】
ブチラール樹脂(B3)としては、例えば、ビニルブチラール、ポリビニルブチラール(PVB)等が例示される。市販品としては、例えば、積水化学工業株式会社製のエスレックシリーズ、株式会社クラレ製のモビタールシリーズ等が例示される。
【0036】
セルロース樹脂(B4)は、セルロース由来の化合物(セルロース誘導体)全般を包含する。セルロース樹脂としては、例えば、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、エチルメチルセルロース(EMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ニトロセルロース、ジアセチルセルロース等が例示される。市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製のメトローズ(登録商標)、ダウケミカル株式会社製のETHOCEL(登録商標)シリーズ等が例示される。
【0037】
特に限定されるものではないが、熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)の重量平均分子量は、概ね100以上、典型的には500以上、例えば1000以上、好ましくは1500以上、さらには2000以上であって、概ね5万以下、1万以下、典型的には7000以下、例えば5000以下、さらには3000以下の、比較的高分子量であってもよい。また、熱可塑性樹脂(例えば熱可塑性ポリエステル樹脂)の重量平均分子量は、概ね1000以上、好ましくは3000以上、典型的には5000以上、1万以上、例えば1万4000以上、さらには2万以上であって、概ね5万以下、例えば3万以下であってもよい。
【0038】
重量平均分子量が所定値以上であると、基材に対する接着性や膜強度を向上すると共に、導電膜の緻密性を高めることができる。重量平均分子量が所定値以下であると、塗工性やハンドリング性を向上することができる。また、保管時に増粘が生じ難くなり、有効使用期間を長く設定することができる。なお、本明細書において「重量平均分子量」とは、ゲルクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)によって測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した重量基準の平均分子量をいう。
【0039】
樹脂バインダは、導電性粉末(A)および後述する膜形成剤(C)のうちの少なくとも1つと相互作用を生じるための構造部分(典型的には官能基)を有していてもよい。一例として、樹脂バインダは、水酸基を有する水酸基含有樹脂を含んでいてもよい。樹脂バインダの水酸基価は、例えば5mgKOH/g以上、10mgKOH/g以上、100mgKOH/g以上であってもよく、概ね500mgKOH/g以下、例えば300mgKOH/g以下、200mgKOH/g以下であってもよい。水酸基価が所定値以上であると、導電性粉末と樹脂バインダとが相互作用を生じ易くなり、緻密で膜強度の高い導電膜を形成し易くなる。水酸基価が所定値以下であると、溶媒の使用量が抑えられると共に、塗工性やハンドリング性を向上することができる。
【0040】
特に限定されるものではないが、組成物全体に占める樹脂バインダ(B)の割合は、概ね1〜20質量%、例えば5〜15質量%であってもよい。特に限定されるものではないが、導電性粉末(A)の全体を100質量部としたときに、樹脂バインダ(B)の含有割合は、概ね1〜20質量部、例えば5〜15質量部、7〜10質量部であってもよい。上記範囲を満たすことで、基材に対する接着性や耐久性に優れ、かつ体積抵抗率が低く抑えられた導電膜を好適に形成することができる。
【0041】
<膜形成剤(C)>
膜形成剤は、導電膜の成形時に導電性粉末(A)の表面と相互作用を生じて、導電膜の特性(例えば、膜強度および電気伝導性のうちの少なくとも1つ)を高める成分である。なお、本実施形態では導電膜の成形温度が低温なため、後述する膜形成剤の性状は導電膜の状態においても維持されうる。膜形成剤は常温(25℃)において後述する溶媒(D)に不溶である。このため、組成物の保管時には、膜形成剤が溶媒(D)中に懸濁しているか、または容器の底に沈降している。膜形成剤は、常温(25℃)で固体状であってもよい。これにより、常温で溶媒(D)に溶解しにくくなる。膜形成剤は、導電膜の成形時において溶媒(D)に可溶である。膜形成剤は、融点が、概ね30〜120℃、例えば50〜80℃であってもよい。
【0042】
膜形成剤としては、以下の条件:(イ)常温で溶媒に対して不溶である;(ロ)導電膜の成形時には溶媒に対して可溶である;(ハ)導電膜の成形時に導電性粉末と相互作用を生じる;を満たす限りにおいて特に限定されず、例えば導電膜の成形時に皮膜形成および反応促進のうちの少なくとも1つの効果があることが知られている化合物の中から、例えば樹脂バインダ(B)の種類等に応じて、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。特に限定されるものではないが、膜形成剤としては、例えば、有機金属化合物(C1)、3級アミン化合物(C2)等が例示される。
【0043】
有機金属化合物(C1)としては、例えば、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物等が例示される。有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムキレート、ジルコニウムアシレート等が例示される。有機チタン化合物としては、例えば、チタンアルコキシド、チタンキレート、チタンアシレート等が例示される。有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムキレート、アルミニウムアシレート等が例示される。有機スズ化合物としては、例えば、スズアルコキシド、スズキレート、スズアシレート等が例示される。より具体的には、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、テトラステアリルチタネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジオクチルスズオキサイド、ジブチルスズオキサイド、モノブチルスズオサイド、ジブチルスズジアセテート等が例示される。なかでも、環境性や安全性の観点からは、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物が好ましい。
【0044】
3級アミン化合物(C2)としては、ジメチルウレイド基を有するジメチルウレア化合物、例えば、イソホロンジイソシアネートとジメチルアミンとから得られるジメチルウレア化合物、m−キシリレンジイソシアネートとジメチルアミンとから得られるジメチルウレア化合物、ヘキサメチレンジイソシアネートとジメチルアミンとから得られるジメチルウレア化合物等の脂肪族ジメチルウレア化合物や、3−フェニル−1,1−ジメチルウレア、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)等の芳香族ジメチルウレア化合物が例示される。3級アミン化合物は、エポキシ樹脂(B1)と併用することによって、特に高い効果を発揮しうる。
【0045】
特に限定されるものではないが、組成物全体に占める膜形成剤(C)の割合は、概ね0.05〜30質量%、例えば0.5〜20質量%、1〜15質量%であってもよい。特に限定されるものではないが、樹脂バインダ(B)を100質量部としたときに、膜形成剤(C)の含有割合(phr)は、概ね3質量部以上、典型的には5質量部以上、例えば8質量部以上、好ましくは10質量部以上であって、概ね200質量部以下、典型的には150質量部以下、例えば100質量部以下、好ましくは50質量部以下であってもよい。膜形成剤(C)の含有割合を所定値以上とすることで、ここに開示される技術の効果をより高いレベルで発揮することができる。また、膜形成剤(C)の含有割合を所定値以下とすることで、導電膜中の有機成分の割合を低減して、電気伝導性を向上することができる。
【0046】
特に限定されるものではないが、組成物における膜形成剤(C)の濃度、すなわち、膜形成剤(C)と前記溶媒(D)との合計((C)+(D))を100質量%としたときの膜形成剤(C)の割合は、概ね1質量%以上、典型的には2質量%以上、例えば3質量%以上、好ましくは4質量%以上、さらには5質量%以上であって、概ね30質量%以下、好ましくは25質量%以下、典型的には20質量%以下、例えば15質量%以下であってもよい。これにより、上記した性状(イ)〜(ハ)を呈し易くなるため、ここに開示される技術の効果をより安定して発揮することができる。また、導電膜中の有機成分の割合を低減して、電気伝導性を向上することができる。
【0047】
<溶媒(D)>
溶媒は、上記(A)〜(C)を分散または溶解させて、組成物の粘度やチキソ性を調整することにより、塗工性やハンドリング性を向上する成分である。溶媒としては、常温で膜形成剤(C)が不溶であり、かつ導電膜の成形時には膜形成剤(C)が可溶である限りにおいて特に限定されず、従来公知のものの中から、例えば樹脂バインダ(B)や膜形成剤(C)の種類、組成物の付与方法等に応じて、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0048】
溶媒は、典型的には、有機溶剤から構成される有機溶媒である。溶媒は、常温で樹脂バインダ(B)を可溶なものが好ましい。これにより、常温での導電性粉末の凝集を高度に抑制して、経日安定性をより良く向上することができる。また、スクリーン印刷用の組成物、すなわちスクリーン印刷によって基材上に組成物を付与する場合は、溶媒の沸点(複数種類の溶媒を併用する場合は、少なくとも1種の溶媒の沸点)が、概ね200〜300℃であるとよい。一方、オフセット印刷用の組成物、すなわちオフセット印刷によって基材上に組成物を付与する場合は、溶媒の沸点(複数種類の溶媒を併用する場合は、少なくとも1種の溶媒の沸点)が、140〜230℃であるとよい。これにより、導電膜形成時のハンドリング性を向上して、ハンドリング性と経日安定性とを高度にバランスすることができる。
【0049】
特に限定されるものではないが、有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、等のグリコールエーテル系溶剤;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(セロソルブアセテート)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、シクロヘキシルアセテートプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2−アセテート、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のアセテート系溶剤;イソホロン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶剤;ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルプロピオネート、ベンジルアルコール、1−フェノキシ−2−プロパノール、3−メチル−3−メトキシブタノール等のアルコール系溶剤;エステル系溶剤;等が例示される。なかでも、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のアセテート系溶剤、イソホロン等のケトン系溶剤、1−フェノキシ−2−プロパノール等のアルコール系溶剤、のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0050】
<その他の成分>
組成物は、ここに開示される技術の効果を著しく損なわない限りにおいて、上記した(A)〜(D)の成分に加えて、必要に応じて種々の添加成分を含有することができる。添加成分としては、従来公知のものの中から1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。添加成分の一例としては、例えば、硬化剤(E)、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、湿潤剤、分散剤、消泡剤、帯電防止剤、ゲル化防止剤、可塑剤、安定化剤、酸化防止剤、防腐剤、着色剤(顔料、染料)、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)等が例示される。硬化剤(E)は、例えば、上記樹脂バインダと反応して架橋構造を形成しうる成分である。硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミド系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、有機ホスフィン類等が例示される。
【0051】
特に限定されるものではないが、組成物に添加成分を含む場合、組成物全体に占める添加成分の割合は、概ね5質量%以下、典型的には3質量%以下、例えば2質量%以下、好ましくは1質量%以下であるとよい。添加成分の含有割合を所定値以下とすることで、導電膜中の有機成分の割合を低減して電気伝導性を向上することができる。また、経日安定性に影響を及ぼしうることから、樹脂バインダ(B)を100質量部としたときに、硬化剤(E)の含有割合は、概ね1質量部未満、好ましくは0.5質量部以下、例えば0.3質量部以下、さらには実質的に含んでいない(0.1質量部以下である)とよい。この含有量は、硬化剤(E)の硬化作用が本質的に発現しない量である。硬化剤(E)の含有割合を所定値以下とすることで、ここに開示される技術の効果をより高いレベルで安定して発揮することができる。
【0052】
<導電膜付き基板>
上記組成物によれば、典型的には130℃以下までの加熱によって、導電膜を形成することができる。したがって、上記組成物は、耐熱性の低い材質からなる基板上に電極や配線パターンを形成する用途で好ましく用いることができる。
【0053】
図1は、導電膜付き基板10の模式的な断面図である。導電膜付き基板10は、基板12と、基板12上に形成された導電膜14と、を備えている。基板12は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル等の樹脂からなるプラスチック基板であってもよい。基板12には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料)、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)等の各種添加剤が配合されていてもよい。また、基板12の一部または全部の表面には、例えば、導電層、絶縁性保護層、反射防止層、光学調整層、防湿層、等の下地層(コート層)が形成されていてもよい。
【0054】
導電膜14は、上記組成物の乾燥体から構成されている。上記組成物は、硬化剤(E)を含んでいないか、あるいは含んでいても本質的に硬化作用が発現しない程度の含有割合に押さえられている。このため、導電膜14では樹脂バインダ(B)の重合や化学架橋が実質生じない。導電膜14では、組成物のときの樹脂バインダ(B)や膜形成剤(C)の性状が概ね維持されている。
【0055】
導電膜14は、予め定められたパターンで形成されている。この実施形態では、基板12の一方の表面に、所定の間隔で独立した複数の導電膜14が形成されている。導電膜14は、図1に示すように基板12の片面のみに備えられていてもよく、基板12の両面に備えられていてもよい。導電膜14は、基板12の一部のみに備えられていてもよいし、あるいは、可撓性基板12の全面にわたって備えられていてもよい。導電膜14では、膜強度が高く耐久性に優れると共に、体積抵抗率が低減され良導電性が実現されている。例えば、100℃で2時間乾燥した後の体積抵抗率が、概ね500μΩ・cm以下、好ましくは200μΩ・cm以下、より好ましくは150μΩ・cm以下、特には100μΩ・cm以下、さらには50μΩ・cm以下でありうる。
【0056】
導電膜付き基板10は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、電子ペーパー、デジタルビデオカメラ等の携帯型電子機器に搭載されるフレキシブルデバイス、例えば、タッチパネル、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の電子部品として好適に用いることができる。なお、「携帯型」とは、個人(典型的には成人)が容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味する。
【0057】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を係る実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0058】
〔膜形成剤の溶解性評価〕
まず、表1に示す4種類の溶媒(D)と、表2に示す2種類の膜形成剤(C)と、を用意し、溶媒(D)に対する膜形成剤(C)の溶解性を評価した。詳しくは、表3に示すように、温度が25℃、80℃、100℃の各温度環境下において、膜形成剤(C)の濃度、すなわち、膜形成剤(C)と前記溶媒(D)との合計((C)+(D))を100質量%としたときの膜形成剤(C)の割合を1〜13質量%の範囲で変化させたときの溶解性を評価した。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
具体的には、まず、合計の質量が20gとなるように溶媒(D)中に膜形成剤(C)を添加し、目的の濃度の混合液を調製した。例えば、膜形成剤(C)の濃度が1質量%の場合は、溶媒(D)19.8gに対して膜形成剤(C)を0.2g添加し、混合液とした。次に、調製した混合液をガラス棒で1分程度よく撹拌した後、表3に示す温度環境で所定の時間、放置(保持)した。このとき、25℃および100℃の温度環境では、放置時間を16時間とし、80℃の温度環境では、放置時間を8時間とした。そして、所定の放置時間が経過した後、目視にて混合液を観察し、下記の指標で溶解性を評価した。結果を、表3に示す。
「〇」:目視で溶け残っている粒子が認められず、かつ混合液が透明である(溶体となっている)。
「×」:目視で溶け残りが認められる。
【0062】
表3では、各温度環境について、「〇」と判定された中で最も高濃度のときに、混合液が略飽和状態になっていると考えられる。表3に示すように、25℃の温度環境では、各混合液について、膜形成剤(C)の溶媒(D)に対する溶解度が、3質量%未満であった。すなわち、膜形成剤(C)は、25℃で溶媒(D)に対して不溶であった。一方、80℃以上(ここでは80℃または100℃)の温度環境では、各混合液について、膜形成剤(C)の溶媒(D)に対する溶解度が、3質量%以上であった。すなわち、膜形成剤(C)は、導電膜形成時の乾燥温度にあたる80℃以上で溶媒(D)に対して可溶であった。
【0063】
【表3】
【0064】
〔試験例I〕
<組成物の調製>
まず、導電性粉末(A)としてのAg粉(フレーク状、D50粒径5μm、カルボン酸で表面処理したもの)と、表4に示すNo.1,2の2種類の樹脂バインダ(B)と、表5に示すNo.1〜8の8種類の膜形成剤(C)とを、それぞれ溶媒(D)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート中で撹拌し、組成物(例1〜7、比較例1〜9)を調製した。なお、導電性粉末(A)100質量部に対する樹脂バインダ(B)の含有割合は、全て10質量部とした。また、膜形成剤(C)の濃度、および、膜形成剤(C)の樹脂バインダ(B)100質量部に対する含有割合(phr)は、表6に示す通りとした。表6には、25℃および100℃の温度環境における、膜形成剤(C)の溶媒(D)に対する可溶性をあわせて示している。
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
<経日安定性の評価>
上記調製した組成物を常温(25℃)で3ヶ月間保存して、定期的に粘度変化を評価した。なお、粘度測定には、回転粘度計(ブルックフィールド型粘度計)を使用し、25℃において、組成物中で回転子を10rpmの回転速度で回転させたときの粘度(Pa・s)を測定した。この結果に基づき、下記の指標で経日安定性を評価した。結果を、表6の「経日安定性の評価」の欄に示す。
「良」:粘度が非常に安定(粘度変化が1ヶ月で±10%以内で、かつ3ヶ月後もゲル化なし)。
「可」:粘度が安定(粘度変化が1ヶ月で±20%以内で、かつ3ヶ月後にゲル化)。
「×」:粘度が測定不能(初期からゲル化、または増粘が激しい。)
【0068】
表6に示すように、No.5〜8の膜形成剤を使用した比較例2〜5,7〜9の組成物では、初期からゲル化が生じたり、5日で粘度が3倍以上になる等、増粘が激しかったりして、経日安定性が不足していた。この原因としては、25℃において膜形成剤が溶媒に溶解しているため、導電性粉末との相互作用が進行したことが考えられる。これに対して、No.1〜4の膜形成剤を使用した例1〜7、および、膜形成剤を使用していない比較例1,6の組成物では、1ヶ月後も粘度変化が小さく、経日安定性に優れていた。
【0069】
<導電膜の成形>
上記調製した組成物を、スクリーン印刷の手法によって、PC製の基板の表面に10μm程度の厚みで2cm×2cmの正方形状のパターンに付与(塗工)した。そして、100℃で2時間加熱乾燥することによって、PC基板上に導電膜を形成した。この導電膜について、体積抵抗率とテーププル強度を測定した。なお、組成物の調製時にゲル化が生じた比較例2、7〜9については導電膜の成形が困難だったため、評価対象外とした。
【0070】
<体積抵抗率の測定>
上記形成した導電膜の表面抵抗率を、株式会社三菱化学アナリテック製の抵抗率計(型式:ロレスタGP MCP−T610)を用いて、4探針法で測定した。また、導電膜の膜厚を、表面粗さ計(株式会社東京精密製のサーフコム)で測定した。そして、表面抵抗率に膜厚をかけあわせることで、体積抵抗率を算出した。結果を表6の「体積抵抗率」の欄に示す。
【0071】
表6に示すように、例1〜7では、体積抵抗率が200μΩ・cm以下に抑えられていた。なかでも、膜形成剤としてNo.1〜3の有機金属化合物を使用した例1〜3,5,6では、体積抵抗率が100μΩ・cm以下に抑えられていた。また、膜形成剤としてNo.1,2の有機ジルコニウム化合物(ジルコニウムテトラアセチルアセトネート)を使用した例1,2,5では、膜形成剤を使用していない比較例1,6に比べて相対的に抵抗が低減されていた。この理由としては、膜形成剤とAg粉の表面とが相互作用を生じて、Ag粒子間の距離が近接し、Ag粒子同士が接触しやすくなったことが考えられる。
【0072】
<テーププル強度の測定>
上記形成した導電膜の膜強度を、180°引き剥がし試験で測定した。具体的には、導電膜に粘着テープ(例えばセロハンテープ(登録商標))を軽く貼り付けた後、粘着テープを剥離角度180°の条件で剥離し、このときの導電膜の剥離の有無によって膜強度を評価した。結果を表6の「テーププル強度」の欄に示す。
「○」:導電膜の剥離無し。
「×」:導電膜の剥離あり。
【0073】
表6に示すように、膜形成剤を使用していない比較例1,6では、実用レベルを考慮すると膜強度が不足していた。これに対して、膜形成剤を添加した例1〜7および比較例3〜5では、膜強度が相対的に向上していた。
【0074】
【表6】
【0075】
〔試験例II〕
ここでは、導電性粉末(A)について検討した。
まず、導電性粉末(A)として表7に示すNo.1〜6の6種類のAg粉を用意した。そして、導電性粉末(A)と、表4のNo.1,2に示す2種類の樹脂バインダ(B)と、表5のNo.2に示す膜形成剤(C)とを、それぞれ溶媒(D)としての1−フェノキシ−2−プロパノールまたはジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート中で撹拌し、組成物(例8〜16、比較例10〜14)を調製した。なお、導電性粉末(A)100質量部に対する樹脂バインダ(B)の含有割合は表8に示す通りとした。また、膜形成剤(C)の濃度、および、膜形成剤(C)の樹脂バインダ(B)100質量部に対する含有割合(phr)は、表8に示す通りとした。表8には、25℃および100℃の温度環境における、膜形成剤(C)の溶媒(D)に対する可溶性をあわせて示している。
【0076】
【表7】
【0077】
そして、試験例Iと同様に、上記調製した組成物の経日安定性の評価と、導電膜のテーププル強度および体積抵抗率と、を測定した。なお、本試験例では、一部の組成物について、加熱乾燥条件を100℃・2時間とした導電膜に加えて、加熱乾燥条件を80℃・2時間とした導電膜を作成し、あわせて評価した。体積抵抗率の結果を表8の「体積抵抗率」の欄に示す。なお、経日安定性については、いずれも試験例Iの例2と同様に「良」の結果だった。また、テーププル強度については、加熱乾燥温度が100℃、80℃の場合について、いずれも試験例Iの例1,2,5と同様に「○」の結果だった。
【0078】
【表8】
【0079】
表8に示すように、表面にカルボン酸の表面処理剤が付着しているNo.1〜3のAg粉を使用した例8〜16では、樹脂バインダや有機溶媒の種類、および膜形成剤の濃度に依らず、いずれも体積抵抗率が200μΩ・cm以下に抑えられていた。なかでも、No.1のAg粉を使用した例8,11,14、およびNo.3のAg粉を使用した例10,13,16では、加熱乾燥条件を100℃・2時間としたときの体積抵抗率が、100μΩ・cm以下、さらには50μΩ・cm以下に抑えられていた。この理由としては、膜形成剤とAg粉の表面とが相互作用を生じて、Ag粒子間の距離が近接し、Ag粒子同士が接触しやすくなったことが考えられる。
【0080】
これに対して、表面にベンゾトリアゾールの表面処理剤が付着しているNo.4のAg粉を使用した比較例10,11,14、および、表面処理がされていないNo,5,6のAg粉を使用した比較例12,13では、体積抵抗率が10000を超えて顕著に高くなっていた。すなわち、導電性粉末の表面にカルボン酸が付着していない場合には、ここに開示される技術の効果が発揮されなかった。
【0081】
〔試験例III〕
ここでは、さらに複数種類の樹脂バインダ(B)について検討した。
まず、表4に示すNo.1,2の2種類のものに加えて、表9に示すNo.3〜5の樹脂バインダ(B)を用意した。そして、表7に示すNo.2,3の導電性粉末(A)と、樹脂バインダ(B)と、表5のNo.2に示す膜形成剤(C)とを、それぞれ溶媒(D)としての1−フェノキシ−2−プロパノールまたはジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート中で撹拌し、組成物(例17〜20)を調製した。なお、導電性粉末(A)100質量部に対する樹脂バインダ(B)の含有割合は表10に示す通りとした。また、膜形成剤(C)の濃度、および、膜形成剤(C)の樹脂バインダ(B)100質量部に対する含有割合(phr)は表10に示す通りとした。表10には、25℃および100℃の温度環境における、膜形成剤(C)の溶媒(D)に対する可溶性をあわせて示している。
【0082】
【表9】
【0083】
そして、試験例Iと同様に、上記調製した組成物の経日安定性の評価と、導電膜のテーププル強度および体積抵抗率を測定した。体積抵抗率の結果を表10の「体積抵抗率」の欄に示す。なお、経日安定性については、いずれも試験例Iの例2と同様に「良」の結果だった。また、テーププル強度については、いずれも試験例Iの例1,2,5と同様に「○」の結果だった。
【0084】
【表10】
【0085】
表10は、樹脂バインダ(B)の種類を変えた評価結果である。表10に示すように、いずれの例についても、体積抵抗率が200μΩ・cm以下に抑えられていた。このことから、ここに開示される技術の効果は、樹脂バインダ(B)に依らず発揮されるものと考えられる。
【0086】
〔試験例IV〕
ここでは、膜形成剤(C)の添加量について検討した。
まず、表7のNo.1に示す導電性粉末(A)と、表4,表9のNo.2に示す樹脂バインダ(B)と、表5のNo.2に示す膜形成剤(C)とを、それぞれ溶媒(D)としての1−フェノキシ−2−プロパノール中で撹拌し、組成物(例21,22)を調製した。なお、導電性粉末(A)100質量部に対する樹脂バインダ(B)の含有割合は、全て7質量部とした。また、膜形成剤(C)の濃度、および、膜形成剤(C)の樹脂バインダ(B)100質量部に対する含有割合(phr)は表11に示す通りとした。表11には、25℃および100℃の温度環境における、膜形成剤(C)の溶媒(D)に対する可溶性をあわせて示している。
【0087】
そして、試験例IIの例8と同様に、経日安定性の評価と、導電膜のテーププル強度および体積抵抗率を測定した。体積抵抗率の結果を表11の「体積抵抗率」の欄に示す。なお、経日安定性およびテーププル強度については、いずれも試験例IIの例8と同様の結果だった。
【0088】
【表11】
【0089】
表11に示すように、膜形成剤(C)の濃度が高くなるにつれ、体積抵抗率が少しずつ上昇した。言い換えれば、膜形成剤(C)の樹脂バインダ(B)100質量部に対する含有割合(phr)が大きくなると、体積抵抗率が少しずつ上昇した。これは、導電膜中で電気伝導性の低い有機成分の割合が多くなったためと考えられる。したがって、抵抗を一層低く抑える観点からは、組成物における膜形成剤(C)の濃度を概ね30質量%以下、例えば15質量%以下とすることが好ましいと考えられる。また、膜形成剤(C)の樹脂バインダ(B)100質量部に対する含有割合を、概ね200質量部以下、例えば150質量部以下とすることが好ましいと考えられる。
【0090】
〔試験例V〕
ここでは、硬化剤(E)の添加について検討した。
まず、硬化剤(E)として、味の素ファインテクノ株式会社製のアミキュア「PN−40(アミンアダクト系)」と「MY−25」とを用意した。そして、表7のNo.1に示す導電性粉末(A)と、表4、表9のNo.2に示す樹脂バインダ(B)と、表5のNo.2に示す膜形成剤(C)とを、それぞれ溶媒(D)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート中で撹拌し、組成物(例23,24)を調製した。なお、導電性粉末(A)100質量部に対する樹脂バインダ(B)の含有割合は表12に示す通りとした。また、膜形成剤(C)の濃度、および、膜形成剤(C)の樹脂バインダ(B)100質量部に対する含有割合(phr)は表12に示す通りとした。表12には、25℃および100℃の温度環境における、膜形成剤(C)の溶媒(D)に対する可溶性をあわせて示している。また、樹脂バインダ(B)100質量部に対する硬化剤(E)の含有割合は表12に示す通りとした。
【0091】
【表12】
【0092】
表12に示すように、樹脂バインダ(B)100質量部に対して硬化剤を1質量部添加した例23,24では、3ヶ月後にゲル化が認められた。これは、硬化剤が悪影響を与えたためと考えられる。したがって、経日安定性の観点からは、樹脂バインダ(B)100質量部に対する硬化剤(E)の含有割合を、1質量部未満、例えば0.5質量部以下とすることが好ましいと考えられる。
【0093】
以上、本発明を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0094】
10 導電膜付き基板
12 基板
14 導電膜
【要約】
【課題】経日安定性に優れ、かつ高い膜強度と電気伝導性とを兼ね備えた導電膜を形成可能な低温成形用導電性組成物を提供する。
【解決手段】本発明により、導電性粉末(A)と、樹脂バインダ(B)と、膜形成剤(C)と、溶媒(D)と、を含み、130℃以下の低温で導電膜を成形するために用いられる低温成形用導電性組成物が提供される。上記導電性粉末(A)の少なくとも一部は、表面にカルボン酸系の表面処理剤が付着している。上記膜形成剤(C)は、25℃で上記溶媒(D)に対して不溶であり、かつ上記導電膜の成形時には上記溶媒(D)に対して可溶な化合物である。
【選択図】図1
図1