(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
仕切壁を介して、下方に弁室、上方に通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室と前記通気室を連通する開口が設けられると共に、前記通気室側の周面に排出口が形成されたハウジングと、
前記弁室内に昇降可能に配置され、前記開口に接離するフロート弁と、
前記ハウジングの外側で、前記排出口に連結される燃料蒸気配管とを有しており、
前記通気室には、前記排出口に連通して、該排出口から前記通気室の内方に向けて延びる筒状壁が設けられており、
前記筒状壁の前記仕切壁側の面に、前記通気室に連通する通気孔が設けられ、前記筒状壁の延出方向側の端部は閉塞されており、
前記筒状壁の前記仕切壁側の面には、前記ハウジングを前記フロート弁の軸方向に沿って見たときに、前記開口と重なる遮蔽部が設けられ、該遮蔽部よりも前記排出口側に第1通気孔が設けられ、前記遮蔽部よりも前記端部側に第2通気孔が設けられており、これらが前記通気孔をなしていることを特徴とする燃料タンク用弁装置。
前記筒状壁の前記仕切壁側の面であって、前記第1通気孔の前記第2通気孔側の周縁には、前記仕切壁に向けて延出する規制壁が設けられている請求項1又は2記載の燃料タンク用弁装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1〜7を参照して、本発明に係る燃料タンク用弁装置の、一実施形態について説明する。なお、以下の説明において、「燃料」とは、液体の燃料(燃料の飛沫も含む)を意味し、「燃料蒸気」とは、蒸発した燃料を意味するものとする。
【0013】
図1及び
図2に示すように、この実施形態における燃料タンク用弁装置10(以下、「弁装置10」という)は、略筒状をなし上方に仕切壁23を設けたハウジング本体20とと、該ハウジング本体20の下方に装着され、複数の通気孔30aを有するキャップ30と、前記ハウジング本体20の上方に装着されるカバー40とからなる、ハウジング15を有している。
【0014】
そして、
図4に示すように、ハウジング本体20の下方にキャップ30が装着されることで、仕切壁23を介して、ハウジング下方に図示しない燃料タンクに連通する弁室Vが形成され、ハウジング本体20の上方にカバー40が装着されることで、仕切壁23を介して、ハウジング上方に排出口47に連通する通気室Rが形成されるようになっている。
【0015】
前記ハウジング本体20は、下方が開口した略円筒状をなし、下方側に通気溝21aがが形成された周壁21を有しており、該周壁21の外周の上方寄りの位置には、係止爪21bが形成されている。また、周壁21の上方開口に、前記仕切壁23が配置されている。この仕切壁23の中央には、円形状の開口24が形成されており、その裏側周縁には、弁座24aが突設されている(
図4参照)。更に、周壁21の上端側からは、段部26aを介して、周壁21よりも縮径した略円筒状の上壁部26が立設されており、その外周にシールリング28が装着されている。
【0016】
また、前記弁室V内には、キャップ30との間に、スプリング31を介して、フロート弁35が昇降可能に配置されている。このフロート弁35は、その上端中央から弁頭36が突設されており、該弁頭36の外周には、ゴム等の弾性部材から形成された、環状をなしたシール部材37が装着されている。
【0017】
図4に示すように、上記フロート弁35は、燃料に浸漬していない状態では、その自重によりスプリング31を圧縮して、キャップ30上に載置され、シール部材37が弁座24aから離れて、開口24が開いた状態に保持される。一方、燃料タンク内の燃料液面が上昇し、フロート弁35が燃料に浸漬されると、
図5に示すように、スプリング31の付勢力及びフロート弁35自体の浮力により、フロート弁35が上昇し、シール部材37が弁座24aに当接して、仕切壁23の開口24を閉塞するようになっている。
【0018】
上記フロート弁35は、燃料の揺動等によって燃料タンク内の液面が異常に上昇したときに、それに伴って上昇して、仕切壁23の開口24を閉塞し、燃料の外部漏出を防ぐ、いわゆる燃料流出防止弁としたり、燃料タンク内の液面が設定された満タン液面に達したときに、それに伴って上昇して、仕切壁23の開口24を閉塞して、それ以上の過給油を防止する、いわゆる満タン規制弁としたりしてもよく、特に限定はされない。
【0019】
次に、カバー40について説明する。
図1に示すように、この実施形態のカバー40は、円板状の天井壁41と、その外周縁部から下方に向けて延びる円筒状をなした周壁43とを有している。また、周壁43の下端部側外周からは、係止孔44aを有する、帯状をなした係止片44が垂設されている。
【0020】
そして、
図2及び
図4に示すように、周壁43の下端部を、前記ハウジング本体20の段部26aに当接させると共に、係止片44の係止孔44aに、ハウジング本体20の係止爪21bを係合させることで、周壁43の下端部内周と、上壁部26の外周との隙間が、シールリング28を介して密閉シールされた状態で、ハウジング本体20の上方にカバー40が装着されるようになっている。
【0021】
また、周壁43の上方外周には、複数の取付部45が周壁外方に向けて突設されている。これらの取付部45を介して、燃料タンク1の天井板内面に、溶着等によって取付けられるようになっている(
図4参照)。なお、取付部の形状や構造は、特に限定されない。
【0022】
更に、この弁装置10の、ハウジング15の通気室R側の周面には、排出口47が形成されている(
図4参照)。ここでは
図4に示すように、前記周壁43の所定箇所に、円形状の排出口47が形成されており、該排出口47は通気室Rに連通している。
【0023】
また、この弁装置10は、ハウジング15の外側で、排出口47に連結される燃料蒸気配管49を有している。
図4に示すように、この実施形態における燃料蒸気配管49は、排出口47の外側(通気室Rの外側)周縁から、略円筒状をなすようにハウジング外方に向けて延びている。この燃料蒸気配管49は、フロート弁35の軸方向に直交して、前記天井壁41に対して平行に延びている。また、この燃料蒸気配管49の外周に、燃料タンク外部に配置される図示しないキャニスターに連通するチューブが、装着されるようになっている。
【0024】
そして、
図3や
図4に示すように、通気室Rには、前記排出口47に連通して、該排出口47から通気室Rの内方に向けて延びる筒状壁50が設けられており、この筒状壁50の仕切壁23側の面に、通気室Rに連通する通気孔57が設けられ、筒状壁50の延出方向側の端部55は閉塞された形状をなしている。
【0025】
この実施形態における筒状壁50は、
図3に示すように、前記排出口47の内側(通気室Rの内側)周縁から通気室Rの内方に向けて延びた、略半円筒状をなしている。また、
図6に示すように、この筒状壁50は、仕切壁23側の面の両側から、仕切壁23に対して離れる方向に垂直に延びる両側部53,53を有している。
【0026】
より具体的に説明すると、この実施形態の筒状壁50は、その外面(筒状壁50の内部空間とは反対側の面)側が前記仕切壁23に面すると共に、断面が略円弧形状をなすように延びる底部51と、該底部51の幅方向(筒状壁50の延出方向に直交する方向を意味する。以下同様)の両側から、前記仕切壁23に対して離れる方向に垂直に延出した両側部53,53と、底部51及び両側部53,53の延出方向先端部どうしを閉塞する端部55とを有している。また、両側部53,53は、底部51の幅方向両側の端部から、天井壁41に向けて垂直に延出し、かつ、同天井壁41の内面に連結されている(
図3及び
図6参照)。
【0027】
なお、筒状壁50の両側部53,53は、その延出方向先端部が、天井壁41に連結されずに、両側部53,53と天井壁41との間に、隙間があってもよい。この場合、両側部53,53の端部どうしは、別の連結壁で連結されることとなる。なお、両側部53,53としては、例えば、底部51の両側から天井壁41側に向けて次第に幅広となるようなテーパ状の壁部や、段状の壁部としたり、更には、全体が円弧状をなしていたりしてもよく、特に限定はされない。
【0028】
また、この実施形態の通気孔57は、
図4に示すように、第1通気孔58及び第2通気孔59からなるが、
図7に示すように、これらの通気孔58,59は、ハウジング15をフロート弁35の軸方向に沿って見たときに、仕切壁23に設けた開口24に対して、位置ずれして設けられている。
【0029】
更に
図7に示すように、筒状壁50の仕切壁23側の面、ここでは底部51の外面には、ハウジング15をフロート弁35の軸方向に沿って見たときに、仕切壁23に設けた開口24と重なる遮蔽部51aが設けられている。また、
図4に示すように、底部51には、遮蔽部51aよりも排出口47側に第1通気孔58が設けられ、遮蔽部51aよりも端部55側に第2通気孔59が設けられており、これらの第1通気孔58及び第2通気孔59が、上述したように通気孔57をなしている。
【0030】
なお、各通気孔58,59は、
図3や
図7に示すように、筒状壁50の延出方向に沿う方向が幅狭で、筒状壁50の延出方向に直交する方向が幅広とされた、略長方形状をなししている。ただし、各通気孔58,59は、例えば、丸孔状や、楕円形状、正方形状、その他の矩形状等であってもよく、特に限定はされない。
【0031】
また、筒状壁50の仕切壁23側の面であって(ここでは底部51の外面)、第1通気孔58の、第2通気孔59側の周縁には、仕切壁23に向けて延出する、規制壁60が設けられている(
図4参照)。
図3に示すように、この実施形態の規制壁60は、底部51の幅方向に沿って延びて、垂直に延出した両側部53,53に至る長さで張り出した、長板状をなしており、その先端面60aは仕切壁23の面方向と平行で(
図6参照)、かつ、前記開口24の外周縁部にほぼ整合する位置に配置されている(
図4参照)。
【0032】
なお、上記実施形態では、筒状壁50を構成する底部51は、その断面が略円弧形状をなしているが、例えば、
図6の二点鎖線で示すように、筒状壁50の仕切壁23側の面は、平面部51bを有していてもよく、該平面部51bに通気孔を設けていてもよい。なお、この平面部51bは、仕切壁23に対してほぼ平行な平面状をなしている。
【0033】
次に、上記構成からなる本発明の弁装置10の作用効果について説明する。
【0034】
図4に示すように、燃料タンク内への燃料が十分に給油されておらず、フロート弁35が燃料に浸漬していない状態では、開口24が開いている。この状態で燃料タンク内に燃料が給油されると、弁室V、開口24、通気室R、通気孔57(第1通気孔58及び第2通気孔59)、筒状壁50の内部空間、排出口47、燃料蒸気配管49、を順次通って、燃料タンク内の空気や燃料蒸気が燃料タンク外のキャニスターへ排出される。
【0035】
そして、燃料タンク内への燃料給油や、車両の旋回や傾きによって、燃料タンク内の燃料液面が上昇すると、上述したように、フロート弁35が上昇して、そのシール部材37が弁座24aに当接し、仕切壁23の開口24を閉塞するので(
図5参照)、燃料タンク内の空気や燃料蒸気の排出量が低下して、それ以上の燃料給油を防止できると共に、燃料が開口24を通って通気室R内に流入することを阻止して、燃料タンク外への燃料漏れを抑制することができる。
【0036】
ところで、車両が事故等によって反転したり横転したりして、
図6に示すように、弁室Vが上方、通気室Rが下方に位置する状態になると、燃料タンク内の燃料が、燃料タンク1の天井面側に集まることとなる。この場合、フロート弁35のシール部材37が弁座24aに当接して、仕切壁23の開口24を閉塞する前に、ハウジング本体20の通気溝21aや、キャップ30の通気孔30aから、弁室V内に流入した燃料が、開口24を通じて通気室R内に燃料が入り込むことがある。
【0037】
このとき、この弁装置10においては、通気室Rには、排出口47に連通して該排出口47から通気室Rの内方に向けて延び、延出方向の端部55が閉塞された筒状壁50の、仕切壁側の面に、通気室Rに連通する通気孔57(ここでは第1通気孔58及び第2通気孔59を意味する。以下同様)が設けられている。そのため、上述したように、車両が反転したり横転したりして、
図6に示すように、弁室Vが上方、通気室Rが下方に位置する状態となり、仕切壁23の開口24から通気室R内に燃料が流入しても、通気室Rの内周面と、筒状壁50の外周面との間に燃料が溜まって、筒状壁50の底部51に形成された通気孔57には燃料が流入しにくいので、燃料が排出口47を通じて燃料蒸気配管49へ流出することを抑制することができる。なお、筒状壁50は、その延出方向先端部が端部55によって閉塞されているので、この部分から筒状壁50内に燃料が流入することはない。
【0038】
また、この実施形態においては、
図3や
図6に示すように、筒状壁50は、仕切壁23側の面の両側、すなわち、底部51の両側から仕切壁23に対して離れる方向に垂直に延びる両側部53,53を有しているので、車両の反転時や横転時に、通気室R内に燃料が流入しても、燃料が、通気室Rの内周面と、筒状壁50の、垂直に延びる両側部53,53や、端部55との間に捕捉されて、筒状壁50の通気孔57には流入しにくくなり、底部51の通気孔57から筒状壁50内に燃料が流入することをより効果的に抑制できる。
【0039】
更に、
図6の二点鎖線で示すように、筒状壁50の仕切壁23側の面(ここでは底部51の外面)が平面部51bを有しており、該平面部51bに通気孔57が形成された場合には、通気孔57を、通気室Rの、仕切壁23から最も離れた面である、天井壁41の内面から、最大限離間させることができ、車両の反転時や横転時に通気室R内に燃料が流入した場合に、底部51の通気孔57から筒状壁50内に、燃料をより流入しにくくすることができる。
【0040】
ところで、車両が悪路を走行して上下に振動したり左右に揺動したり、或いは、急旋回したりした場合、フロート弁35の上昇による開口24の閉塞が間に合わずに、燃料や燃料の飛沫が、開口24から通気室R内に勢いよく吹き出すことがある(
図4の矢印参照)。
【0041】
このような場合であっても、この実施形態においては、通気孔57を構成する第1通気孔58や第2通気孔59は、
図7に示すように、ハウジング15をフロート弁35の軸方向に沿って見たときに、仕切壁23に設けた開口24に対して、位置ずれして設けられているので、上記のように、車両の振動や揺動、急旋回等で、燃料が揺動して、仕切壁23の開口24から通気室R内に吹き出した場合でも、燃料がそれらの通気孔58,59から筒状壁50内に流入しにくくすることができる。
【0042】
更にこの実施形態においては、
図7に示すように、筒状壁50の仕切壁23側の面(底部51の外面)には、ハウジング15をフロート弁35の軸方向に沿って見たときに、仕切壁23に設けた開口24と重なる遮蔽部51aが設けられ、この遮蔽部51aよりも排出口47側に第1通気孔58が設けられ、遮蔽部51aよりも端部55側に第2通気孔59が設けられている。そのため、上記のように燃料が揺動して、仕切壁23の開口24から通気室R内に吹き出しても、遮蔽部51aによって燃料が遮られて、第1通気孔58や第2通気孔59から筒状壁50内に流入しにくくすることができる。仮に、燃料が、第2通気孔59から筒状壁50内に流入しても、第1通気孔58から排出することができ、また、第1通気孔58及び第2通気孔59の両方で、筒状壁50内の通気性を確保することができる。
【0043】
また、この実施形態においては、
図4に示すように、筒状壁50の仕切壁23側の面(底部51の外面)であって、第1通気孔58の、第2通気孔59側の周縁には、仕切壁23に向けて延出する、規制壁60が設けられている。そのため、上記のように燃料が揺動して、仕切壁23の開口24から通気室R内に、燃料が吹き出した場合に、燃料が規制壁60に衝突して、第1通気孔58から筒状壁50内へ流入することを抑制できる。また、燃料が第2通気孔59から筒状壁50内に流入した場合には、燃料を、第1通気孔58を介して規制壁60を伝って落下させることができるので、筒状壁50内から燃料をより排出させやすくすることができる。
【0044】
図8〜10には、本発明に係る燃料タンク用弁装置の、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0045】
この実施形態の燃料タンク用弁装置10A(以下、「弁装置10A」という)は、主として筒状壁50Aの構造が前記実施形態と異なっている。
【0046】
すなわち、
図8に示すように、カバー40の周壁43に形成された排出口47の外側周縁から、天井壁41から離れるように、斜め下方に向けて燃料蒸気配管49が延出している。そして、排出口47の内側周縁から通気室Rの内方に向けて延びる筒状壁50Aは、
図8や
図9に示すように、燃料蒸気配管49の延出方向に沿って、天井壁41に近接するように斜め上方に向けて延出している。また、
図8に示すように、筒状壁50Aは、その端部55が、仕切壁23の開口24のほぼ中央に整合する位置に配置されている。
【0047】
更に、この実施形態における通気孔57Aは、前記実施形態の第1通気孔58や第2通気孔59よりも開口面積が大きい略正方形状をなしており、筒状壁50Aの底部51の端部55寄りの位置に設けられている。なお、通気孔57Aの開口面積は、前記実施形態の第1通気孔58及び第2通気孔59の合計の開口面積と、ほぼ同じ開口面積で形成されている。
【0048】
そして、この実施形態においても、上述したように車両の反転等により、
図10に示すように、弁室Vが上方、通気室Rが下方に位置する状態となり、仕切壁23の開口24から通気室R内に燃料が流入したときに、通気室Rの内周面と、筒状壁50Aの外周面との間に燃料が溜まって、通気孔57Aには燃料が流入しにくいので、燃料が排出口47を通じて燃料蒸気配管49へ流出することを抑制することができる。
【0049】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。