(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の突起は、前記ステント本体の外側から離れた一端部が、前記ステント本体の外側に近接した他端部に比べて、生分解されやすい材質及び/又は構造からなる請求項1〜3のいずれか1つに記載のステント。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1〜8を参照して、本発明に係るステントの第1実施形態について説明する。
【0011】
図4に示すように、このステントは、例えば、胆管、膵管、十二指腸、食道、大腸等の消化管、尿管、気管、血管などの管状器官Vや、体腔等の、体内に留置されるものである。
【0012】
そして、
図1及び
図2に示すように、この実施形態のステント10は、筒状をなし、その周方向に複数の開口13を設けたステント本体11と、ステント本体11の外側及び/又は内側に配置され、ステント本体11の、複数の開口13の少なくとも一部を塞ぐ被覆部材20と、ステント本体11の外側に配置されるように、被覆部材20の表側から突設し、体内の病変部A(
図4参照)に係止可能とされた、複数の突起30とを有している。
【0013】
この実施形態におけるステント本体11は、金属線材15を織ったり組んだり絡ませたり等して編むことによって、軸方向両端が開口した円筒状をなしている。また、ステント本体11の軸方向両端部には、軸方向中間部に比べて拡径した拡径部17,17が設けられている。
図4に示すように、この拡径部17,17は、体内である管状器官Vにステント10を留置したときに、管状器官Vの内壁に密接することで、アンカリング効果を高めて、ステント10を位置ずれしにくくするものである。なお、ステント本体としては、その軸方向両端部に拡径部を設けてなくともよく、その形状は特に限定されない。
【0014】
また、ステント本体としては、例えば、金属円筒をレーザー加工やエッチング等で加工して筒状に形成したものであってもよい。更に、この実施形態のステント本体11は、常時は拡径した状態となる自己拡張型であるが、ステント本体としては、バルーンカテーテル等に装着しておき、ステントの内側に配置されたバルーンを膨らませることで、拡径させるバルーン拡径型としてもよい。
【0015】
上記のステント本体11の材質は、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W等や、Ni−Ti系合金、Co−Cr系合金、Co−Cr−Ni系合金、Cu−Zn−X(X=Al,Fe等)合金、Ni−Ti−X(X=Fe,Cu,V,Co等)合金等の形状記憶合金などの金属が好ましいが、ポリウレタン(PU)、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)、ポリ乳酸、ポリジオキサノン(PDS)、液晶ポリマー等の樹脂を用いることもできる。
【0016】
また、この実施形態における前記被覆部材20は、
図2に示すように、ステント本体11の外側に配置され、複数の開口13の少なくとも一部を塞ぐカバー21と、このカバー21の表側に取付けられたシート25とから構成されている。
【0017】
なお、
図1に示すように、この実施形態における被覆部材20は、ステント本体11の軸方向中間部を被覆しており、ステント本体11の拡径部17,17は露出されているが、被覆部材20によって、ステント本体11の全体を被覆して、ステント本体11の開口13の全てを塞ぐ構造としてもよい。また、被覆部材としては、カバー及びシートの両方を備えるものでなくともよく、更に、被覆部材を構成するカバーは、ステント本体11の内側に配置される構造であってもよく、特に限定はされない(これらについては後述の実施形態で説明する)。
【0018】
図2に示すように、この実施形態におけるカバー21は、裏側が平坦面状をなし、表側に複数の凸部22が形成されるように、ステント本体11を構成する金属線材15を埋設して、ステント本体11の外周に沿って配置されている。
【0019】
また、
図1及び
図2に示すように、カバー21の外側にシート25が被せられており、このシート25に複数の突起30が設けられている。この実施形態におけるシート25は、ステント本体11の軸方向に沿って伸びる帯状をなしており(
図1参照)、その表側に複数の突起30が突設されている。そして、シート25の表側の複数の突起30が設けられた部分に対応する裏側26以外の部分(以下、「突起30に対応する裏側26以外の部分」ともいう)が、カバー21に部分的に固着されている。この実施形態においては、シート25の、突起30に対応する裏側26以外の部分が、カバー21の複数の凸部22の頂部や、カバー21の凸部22が設けられた箇所よりも、ステント10の軸方向において外方の部分E(以下、「外方部分E」という)に、部分的に固着されている。なお、シート25の、前記裏側26以外の部分と、カバー21とは、例えば、所定の接着剤で接着したり、縫合糸によって縫着したり、溶着したり等の手段によって固着される。また、シート25を、カバー21の凸部22の頂部に固着させずに、前記外方部分Eのみを、カバー21に固着させてもよい。更に、シート25は、カバー21の表側全面に固着させてもよい(これについては後述の実施形態で説明する)。
【0020】
更に
図2や
図3に示すように、カバー21の表側とシート25の裏側との間には、空隙Gが設けられている。この実施形態では、上記のように、シート25の、突起30に対応する裏側26以外の部分が、カバー21の複数の凸部22の頂部に固着されているので、カバー21の表側と、シート25の裏側と、凸部22,22との間で囲まれた部分に、空隙Gが設けられている。
【0021】
なお、上記のカバー21やシート25は、例えば、ポリウレタン(PU)、シリコーン、天然ゴム、ナイロンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルや、更には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂、ポリブタジエン等のオレフィン系ゴム、スチレン系エラストマーなどで形成されることが好ましい。また、これらのカバー21やシート25は、生分解性ポリマーではない材料で形成されていることが好ましい。
【0022】
一方、この実施形態における前記突起30は、上記シート25の表側に設けられている(
図2参照)。ここでは、
図1に示すように、4個で1組の突起30が、ステント本体11の軸方向に沿って所定間隔をあけて配置されており、これらの複数の突起30の列が、ステント本体11の周方向に沿って所定間隔をあけて配列されている。更に
図2に示すように、各突起30は、カバー21の表側に設けられた凸部22,22の間となるように配置されている。なお、突起の個数や配列は、上記態様に限定されるものではない。
【0023】
また、各突起30は、ステント本体11の外側から離れるほど縮径すると共に、その先端が尖った略円錐状をなしている(
図1及び
図2参照)。すなわち、各突起30の、ステント本体11の外側から離れた一端部31は、ステント本体11の外側に近接した他端部33に比べて、縮径した形状をなしている。なお、この実施形態における一端部31は、突起30の、尖った先端を含むものである。
【0024】
更に
図2に示すように、突起30の、被覆部材20の表側(ここではシート25の表側)から先端までの高さHは、0.05〜10mmであることが好ましく、0.1〜5mmであることがより好ましい。更に、突起30の他端部33の外径Dは、0.03〜6mmであることが好ましく、0.06〜4mmであることがより好ましい。
【0025】
なお、突起の形状としては、例えば、角錐状や、針状、台形状、半球状等であってもよく、体内の病変部Aに係止可能であれば、特に限定はされない。ただし、突起としては、円錐状や、角錐状、針状等の、先端が尖った形状であることが、体内の病変部Aに係止しやすくなるので、好ましい。なお、突起は、体内の内壁に係止可能としてもよい。
【0026】
また、この実施形態における複数の突起30は、全て同一高さで形成されているが、例えば、ステント本体11の軸方向中間側に配置された突起を、被覆部材の表側から最も高く形成し、この突起に対して、ステント本体11の軸方向端部側に向けて配置された突起を、次第に低い高さで形成してもよい。このように突起が形成されている場合、例えば、管状器官Vにおいて、癌細胞等が増殖したことで、病変部Aの内腔が最も狭くなった箇所に、ステントの軸方向中間部を位置合わせして、ステントを留置したときに、最も高い突起が、病変部Aの、最も内腔が狭くなった箇所に位置する癌細胞等に係止するので、薬物Mを効果的に供給することができる。
【0027】
そして、複数の突起30は、少なくとも一部が生分解性ポリマーからなる生分解部をなしており、該生分解部に薬物Mが含有されている。この実施形態では、
図2や
図5(a)に示すように、突起30の、ステント本体11の外側から離れた一端部31が、上記のような生分解性ポリマーからなる生分解部をなしている。
【0028】
生分解性ポリマーは、生体に悪影響を与えないものであって、生体内で分解可能なものであればよく、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン(PCL)、PLAとPGAとPCLとの共重合体、ポリジオキサノン、キトサン、乳酸デプシペプチドランダム共重合体、乳酸デプシペプチドブロック共重合体、トリメチレンカーボネート、ポリエチレングリコールとPGA、PCL及び/又はPLAとのブロック共重合体、ポリ乳酸グラフト化多糖、ポリグラクチン、ポリヒドロキシブチレートや、これらを2種以上混合した生分解性ポリマーを用いることができる。
【0029】
また、この実施形態では、突起30の、ステント本体11の外側に近接した他端部33は、生分解性ポリマーではなく、生分解しない/又は生分解されにくい材料で形成されている。例えば、ポリウレタン(PU)、シリコーン、天然ゴム、ナイロンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルや、更には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂、ポリブタジエン等のオレフィン系ゴム、スチレン系エラストマーなどで形成されている。
【0030】
上記のように、この実施形態における複数の突起30は、他端部33を生分解しない/又は生分解されにくい材料で形成することで、一端部31が他端部33に比べて生分解されやすくなっているが、例えば、突起30の他端部33を、一端部31よりも厚くしたり外径を大きくしたりして(本実施形態の場合よりも、更に他端部33を一端部31よりも厚くしたり又は外径を大きくしたりする)、他端部33を一端部31よりも生分解されにくくして、一端部31が他端部33よりも生分解されやすい構造としてもよい。
【0031】
また、この実施形態では、突起30の、尖った先端を含む一端部31を生分解部としたが、例えば、突起の軸方向途中を生分解部としたり、他端部側を生分解部としたりしてもよく、突起の少なくとも一部に生分解性ポリマーからなる生分解部を有する構造であれば、特に限定はされない。
【0032】
更に突起としては、
図6(a)や
図7(a)、
図8(a)に示す構造としてもよい。
図6(a)に示す突起30Aは、その全体が、生分解性ポリマーからなる生分解部により構成されている。
【0033】
また、
図7(a)に示す突起30Bは、生分解性ポリマーからなる生分解部を有する外壁35と、この外壁35の内部に設けられた内部空間37とを有しており、該内部空間37に薬物Mが、突起外部に漏れないように封入されて、生分解部に薬物Mが含有された構造となっている。また、突起30Bは、一端部31と他端部33とを有しており、一端部31側の外壁35が、生分解性ポリマーからなる生分解部をなしている。
【0034】
更に、
図8(a)に示す突起30Cは、ステント本体11の外側から離れた一端部31が、生分解性ポリマーからなる生分解部をなし、該生分解部に薬物Mが含有されており、ステント本体11の外側に近接した他端部33が、生体内溶解性の材質からなっている。なお、生体内溶解性とは、例えば、胆汁や、膵液、胃液等の消化液や、血液などの、体液によって、溶解する性質を意味する。なお、上記の生体内溶解性の材質としては、例えば、水溶性ポリアミノ酸、コラーゲン、フィブロネクチン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸や、これらを2種以上混合したものを用いることができる。
【0035】
なお、突起30は、拡径した他端部33の端面を、シート25の表側に、接着剤を介して接着したり、溶着したりすることで、シート25の表側に取付けられている。また、突起30は、シート25と一体的に形成してもよい。
【0036】
そして、突起30の生分解部(ここでは突起30の一端部31)に含有される薬物Mは、例えば、抗癌剤や、抗血栓剤等を挙げることができる。また、本発明における「生分解部に薬物が含有されている」とは、生分解部に薬物を浸み込ませたり、生分解部内に薬物を内包させたり混在させたり、薬物を溶解して固化させたりしたものを含む意味である。
【0037】
次に、上記構成からなる本発明のステント10の、使用方法の一例について説明する。ここでは、胆管や、膵管、十二指腸、食道、大腸等の消化管である管状器官Vに、癌組織等の病変部Aが生じた場合に、この病変部Aにステント10を留置する場合について説明する。なお、この使用方法は一例であり、特に限定はされない。
【0038】
まず、
図3に示すように、ステント10を縮径させた後、カテーテルやシース等の図示しないステント搬送具内に収容又は装着する。
【0039】
このとき、この実施形態においては、シート25の、複数の突起30が設けられた表側に対応する裏側26以外の部分が、カバー21に部分的に固着されているので、シート25の、複数の突起30が設けられた表側に対応する裏側26の部分に、柔軟性を持たせることができる。その結果、上記のように、ステント10を体内の所定箇所に留置すべく、ステント本体11を縮径させて、ステント搬送具内にステント10を収容する際に、
図3に示すように、シート25をステント本体11の軸方向に延びやすくして、シート25から突起30を外れにくくすることができると共に、カバー21もステント本体11の軸方向に延びやすくなり、ステント搬送具内にステント10を収容しやすくすることができる。
【0040】
更に、この実施形態においては、カバー21の表側とシート25の裏側との間には、空隙Gが設けられているので、上記のように、ステント本体11を縮径させて、ステント搬送具内にステント10を収容する際に、カバー21とシート25との摺動抵抗を減らして、シート25をステント本体11の軸方向に、より延びやすくすることができ、シート25からの突起30の外れを、更に効果的に防止することができると共に、カバー21もステント本体11の軸方向に、より延びやすくなり、ステント搬送具内にステント10を更に収容しやすくすることができる。
【0041】
上記のように、ステント搬送具内にステントを収容後、周知の方法によって、ガイドワイヤや内視鏡等を介して、管状器官V内に医療チューブを進行させ、同ステント搬送具を病変部Aにより狭窄した部分を通過させて、その先端部を病変部Aをやや超えた位置に配置する。その状態で、プッシャ等を介してステント10の移動を規制しつつ、ステント搬送具を操作することにより、ステント搬送具の先端からステント10を解放させて拡径させ、
図4に示すように病変部Aにステント10が配置される。この状態では、ステント10の拡径部17,17が管状器官Vの内壁に密接して、そのアンカリング効果によって、ステント10の位置ずれが抑制されると共に、病変部Aに複数の突起30が突き刺さるように係止する(
図4参照)。
【0042】
このとき、突起30は、
図5(a)に示すように、その尖った先端が病変部Aに突き刺さって、生分解部をなす一端部31が病変部Aの奥側に入り込む。この状態で所定期間が経過すると、
図5(b)に示すように、突起30の生分解部が分解するので、この分解部に含有された薬物Mが、病変部Aに直接供給されることとなる。
【0043】
このように、このステント10においては、被覆部材20の表側から突設した、複数の突起30の少なくとも一部は、生分解性ポリマーからなる生分解部をなしており、該生分解部に薬物Mが含有されているので、体内の所定位置にステント10を留置した後、所定期間が経過すると、各突起30の生分解部が分解しつつ、該生分解部に含有された薬物Mを、所望のタイミングで病変部Aに供給することができる。また、この実施形態では、突起30が病変部Aに突き刺さり、生分解部をなす一端部31が病変部Aの奥側に入り込んでいるので、病変部Aの表側からではなく、病変部Aの奥側から薬物Mを効果的に供給することができる。更に、薬物Mを含有させる部分が、突起30の生分解部なので、薬物Mを含有させやすくすることができると共に、薬物Mが供給された後には、生分解性によって分解させることができる。
【0044】
そして、このステント10においては、ステント本体11の外側に、複数の突起30を配置する構造ではなく、
図1や
図2に示すように、被覆部材20(ここではシート25)の表側に複数の突起30を突設させておき、この被覆部材20をステント本体11の外側に配置する構造、すなわち、複数の突起30を、被覆部材20を介してステント本体11の外側に配置する構造としたので、ステント本体11から複数の突起30が外れることを防止して、ステント本体11の外側に、複数の突起30を強固に安定して配置することができる。また、このステント10においては、複数の突起30がシート25の表側に設けられており、このシート25をカバー21の外側に被せることで、ステント本体11の外側に、複数の突起30を一度に設置することができ、複数の突起30を容易に設けることができる。
【0045】
また、この実施形態においては、
図2や
図5(a)に示すように、複数の突起30は、ステント本体11の外側から離れた一端部31が、ステント本体11の外側に近接した他端部33に比べて、生分解されやすく構成されているため、体内の所定位置にステント10を留置した際に、突起30の一端部31が、他端部33よりも先に分解することとなり、薬物Mを、病変部Aに近い位置(ここでは病変部Aの奥側)から集中的に供給することができると共に、
図5(b)に示すように、分解しにくい他端部33が体内の病変部Aに係止して、アンカー効果を得ることができ、ステント10の位置ずれを抑制して、薬物Mを所定の病変部Aにより正確に供給することができる。
【0046】
なお、ステント10が、
図6(a)に示す突起30Aを有している場合には、ステント10を体内の所定位置に留置すると、突起30Aが病変部Aに突き刺さるように係止し、その後、所定期間が経過すると、
図6(b)に示すように、突起30Aの全体が分解して、薬物Mを病変部Aに供給することができる。また、突起30Aの全体が分解するので、ステント10を体内から回収する際に、突起30Aが管状器官Vの内壁に引っ掛かることがなく、ステント10を回収しやすくなる。
【0047】
また、ステント10が、
図7(a)に示す突起30Bを有している場合には、体内の所定位置に留置すると、突起30Bが病変部Aに突き刺さるように係止し、その後、所定期間が経過すると、
図7(b)に示すように、外壁35が分解されて、内部空間37に充填された薬物Mを病変部Aに供給することができると共に、病変部Aに係止した外壁35がアンカー効果を発揮して、ステント10の位置ずれを抑制することができる。
【0048】
更に、ステント10が、
図8(a)に示す突起30Cを有している場合には、体内の所定位置に留置すると、突起30Cが病変部Aに突き刺さるように係止した後、所定期間経過すると、
図8(b)に示すように、生体内溶解性の材質からなる他端部33が、消化液や血液等の体液や、体外からの送液等の流体によって溶解されるので、病変部Aに突起30Cだけを残して、突起30Cをステント本体11と分離させることができる。その結果、ステント10が体内の所定位置から位置ずれした場合でも、このステント10の動きに影響されずに、病変部Aに突き刺さったままの突起30Cによって、病変部Aに薬物Mをしっかりと供給することができる。また、ステント10を体内から回収すべく、ステント10を引っ張るときに、突起30Cが病変部Aに引っ掛かって抜きにくくなることを防止して、体内からステント10をスムーズに抜去することができる。
【0049】
更に、このステント10においては、ステント本体11の複数の開口13の少なくとも一部が、被覆部材20(ここではカバー21及びシート25)で塞がれているので、癌組織等が増殖した場合に、それらがステント本体11内に入り込むことを防止して、ステント内腔を閉塞しにくくすることができる。このとき、突起30は生分解性ポリマーで形成されているものの、被覆部材20は生分解性ポリマーで形成する必要がないので、体内の所定位置にステント10を留置した後に、被覆部材20が生分解することを防止して、ステント本体11の開口13を閉塞した状態に維持することができ、癌組織等の、ステント本体11内への入り込みを防止しつつ、突起30による薬物Mの病変部Aへの供給を確実に行うことができる。
【0050】
更に、被覆部材20の表側に設けた複数の突起30は、体内の病変部Aに係止可能とされているので、ステント10の留置時に、突起が体内の病変部Aに係止した場合には、アンカー効果を得ることができ、ステント10を所定位置にしっかりと留置することができ、薬物Mを所定の病変部Aに、より適切に供給することができる。
【0051】
また、このステント10においては、複数の突起30の少なくとも一部が、生分解性ポリマーからなる生分解部をなし、該生分解部に薬物Mが含有されているので、薬物Mがステント外部に放出されないため、例えば、ステント留置前において、ステント搬送具内に生理食塩水等によるフラッシュ操作等を行っても、薬物Mの濃度や成分が変化することを防止することができ、その結果、病変部Aに所定濃度や成分の薬物Mを確実に供給することができ、また、ステント10を、ガイドワイヤや内視鏡等を介して搬送する際に、目的の病変部A以外に薬物Mが拡散してしまうことを防止することができる。更に、このステント10においては、複数の突起30の少なくとも一部が、生分解性ポリマーからなる生分解部をなし、該生分解部に薬物Mが含有されているので、突起30の形状や、高さ、外径等(ここでは生分解部なす一端部31の形状や、高さ、外径等)を適宜変更することによって、病変部Aへの薬物Mの供給量や時間等を制御することができる。
【0052】
更に、この実施形態においては、
図2に示すように、被覆部材20は、ステント本体11の外側に配置されたカバー21と、このカバー21の表側に取付けられたシート25とからなり、このシート25の表側に複数の突起30が設けられているので、ステント本体11の外側に配置されたカバー21の表側に、複数の突起30を設けたシート25を取付けるだけで、ステント本体11の外側に、複数の突起30を一度に設けることができ、ステント10の生産性を高めることができる。また、カバー21の表側にシート25を取付けるため、シート25の固着面積を広く確保することができ、カバー21にシート25を強固に固着することができる。なお、カバー21がステント本体11の内側に配置された場合にも、同様の効果を得ることができる。
【0053】
図9には、本発明に係るステントの第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0054】
この実施形態のステント10Aは、前記第1実施形態の、カバー21及びシート25を備える被覆部材20と異なり、一つの被覆部材20Aだけで構成されており、この被覆部材20Aがステント本体11の外側に配置され、その表側から複数の突起30が突設されている。なお、
図9の想像線で示すように、突起30は、カバー21の凸部22の表側から突設させてもよい。
【0055】
図10には、本発明に係るステントの第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0056】
この実施形態のステント10Bは、被覆部材20Bが、カバー21及びシート25からなり、シート25の裏側全面が、カバー21の表側全面に固着されていて、カバー21の表側とシート25の裏側との間に空隙がない構造となっている。
【0057】
図11には、本発明に係るステントの第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0058】
この実施形態のステント10Cは、被覆部材20Cが、カバー21及びシート25からなり、ステント本体11の内側にカバー21が配置されていて、ステント本体11を構成する金属線材15の表側外周面が露出しており、シート25の裏側が、カバー21の表側の、金属線材15が配置された箇所よりも外方部分Eに、部分的に固着されている。
【0059】
図12には、本発明に係るステントの第5実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0060】
この実施形態のステント10Dは、前記実施形態とは異なり、カバー21Dの、裏側に複数の凸部22が形成され、表側が平坦面状をなしており、カバー21Dの表側にシート25が隙間なく配置されている。そして、シート25の、突起30に対応する裏側26以外の部分が、カバー21Dの表側の、凸部22に対応する領域Bに、部分的に固着されており、それ以外の部分は固着されていない構造となっている。なお、
図11の想像線に示すように、突起30を、シート25の、カバー21Dの凸部22に対応する領域Bに設けた場合には、シート25の、突起30に対応する裏側26以外の部分(領域B以外の部分)が、カバー21Dの表側に部分的に固着し、それ以外の部分が固着しない構造となる。
【実施例】
【0061】
本発明のステントに用いられる、表側に複数の突起を設けたシートを製造した。すなわち、ポリ乳酸200mgにジクロロメタンとエチルアルコールの混液1.2mlを加えて溶解した。これにパクリタキセル2mgを加えて、よく混和して粘調液とした。そして、入口の直径800μm、深さ2000μmの円錐状の穴を10個作成したメス型に、前記粘調液を充填し、約10℃で、遠心分離機で、5分間、2000rpmで遠心することにより、乾燥した。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(信越化学工業株式会社製、商品名「HPMCP HP−55」)0.5gに、ジクロロメタンと、エチルアルコールの混液5mlを加えて溶解した液を、メス型の上に塗布して充填して完全に乾燥する前に、ポリウレタンシートを貼付した。24時間後にポリウレタンシートを剥離することにより、表側に複数の突起を設けたシートを製造することができた。
【0062】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。