(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6705071
(24)【登録日】2020年5月15日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】広域電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
H02J3/38 120
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-36883(P2020-36883)
(22)【出願日】2020年3月4日
【審査請求日】2020年3月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518348919
【氏名又は名称】亀井 正通
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】亀井 正通
【審査官】
佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−220946(JP,A)
【文献】
特開2002−234703(JP,A)
【文献】
国際公開第2018/083726(WO,A1)
【文献】
特開2004−102177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広域への電力供給を行うための1または複数の1次発電所と、
前記1次発電所で発電された電気により、水素を製造する水素製造施設と、
広域に分散配置され、前記水素製造施設で製造された水素を貯蔵する複数の1次水素貯蔵施設と、
個々の前記1次水素貯蔵施設に対して複数分散配置された複数の2次水素貯蔵施設と、
複数の特定居住区域内に敷設され、各特定居住区域内の電力消費施設または住戸に電力を送る地域電力網と、
個々の前記特定居住区域に対して設置され、前記1次水素貯蔵施設または2次水素貯蔵施設を介して輸送されてきた水素を電力に変換する2次発電装置または2次発電施設と、
前記水素製造施設と前記1次水素貯蔵施設との間、前記1次水素貯蔵施設と前記2次水素貯蔵施設との間、および前記1次水素貯蔵施設または前記2次水素貯蔵施設と前記2次発電施設との間で、前記水素を輸送する多数の輸送手段と、
を備え、
前記地域電力網は主として前記特定居住区域内の地下に敷設された電線としての地中電力ケーブルによって構成されていることを特徴とする広域電力供給システム。
【請求項2】
請求項1記載の広域電力供給システムにおいて、前記1次発電所は水力発電施設、太陽光発電施設、または風力発電施設を備えた発電所であることを特徴とする広域電力供給システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の広域電力供給システムにおいて、前記水素製造施設は、前記1次発電所で発電された電気を用いて水を電気分解して水素を製造する施設であることを特徴とする広域電力供給システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の広域電力供給システムにおいて、前記特定居住区域は、少なくとも建物としての集合住宅、オフィスビル、公共施設、および病院を備えた都市機能を備えた居住区域であることを特徴とする広域電力供給システム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の広域電力供給システムにおいて、前記2次発電装置または2次発電施設のうちの少なくとも一部は水素ガスタービン発電所であることを特徴とする広域電力供給システム。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載の広域電力供給システムにおいて、前記2次発電装置または2次発電施設のうちの一部は、水素燃料エンジンまたは水素燃料電池を利用したものであることを特徴とする広域電力供給システム。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の広域電力供給システムにおいて、前記輸送手段はトレーラーまたはカードル形式の輸送車両であることを特徴とする広域電力供給システム。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の広域電力供給システムにおいて、前記特定居住区域内に前記水素を個別に供給するための1または複数の水素ステーションが設置されていることを特徴とする広域電力供給システム。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の広域電力供給システムにおいて、前記特定居住区域内の電力消費施設または住戸の少なくとも一部に水素を利用する個別の発電手段と水素タンクが設置されていることを特徴とする広域電力供給システム。
【請求項10】
請求項9記載の広域電力供給システムにおいて、前記住戸に設置される個別の発電手段と水素供給手段は家庭用水素燃料電池または水素燃料エンジンと、交換可能な水素タンクであることを特徴とする広域電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の送電鉄塔等を不要とする水素エネルギーを利用した広域電力供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガスの排出による地球温暖化が大きな問題となっている。その解決手段の一つとして水素エネルギーを利用した電力供給システムが注目されており、多くの実証実験が行われ、また一部が実用化されている。
【0003】
水素エネルギーを利用した電力供給システムの一形態は、大まかには、発電所あるいは発電設備で発電された電気を利用して水素製造装置あるいは水素製造施設により水素を製造し、製造された水素を水素貯蔵装置あるいは水素貯蔵施設に貯蔵し、貯蔵された水素から水素ガスタービンなどで水素発電して通常の電力として供給するものである。
【0004】
この他、水素ステーションにおいて燃料電池自動車に水素を供給するなどして、水素エネルギーが利用されている。
水素エネルギーの利用に関する技術としては、例えば以下の特許文献に記載された発明がある。
【0005】
特許文献1には、水素自動車および燃料電池自動車に対して、再生可能エネルギーを利用して安定的にかつ高効率に自立してエネルギーを供給できる方法として、再生可能エネルギー発電ユニットと、発電された電力の一部を蓄える蓄電ユニットと、電気分解用の水を供給する水供給ユニットと、水供給ユニットにより供給された水を、蓄電ユニットにより蓄電された電力によって電気分解して水素および酸素を製造する水電解ユニットと、水電解ユニットにより製造された水素を備蓄する水素貯蔵ユニットと、水電解ユニットにより製造された酸素を備蓄する酸素貯蔵ユニットと、水素貯蔵ユニットに備蓄された水素を用いて発電を行う水素発電ユニットと、水素発電ユニットが発電時に発生する水を回収する水回収ユニットと、再生可能エネルギー発電ユニット内で発電時に発生する熱を蓄積し、水電解ユニットが水素を製造するときに熱を前記水電解ユニットに供給する蓄熱ユニットと、蓄電ユニットに蓄電された電力を供給対象に供給する電力供給ユニットと、水素貯蔵ユニットに貯蔵されている水素または水素を含む媒体を、供給対象に供給する水素供給ユニットと、各ユニットにおける電力、水素、熱の需給状況を監視し、監視した需給状況に基づき今後の不足分を補うよう各ユニットの運転を制御する管理ユニットとを備えた電力水素供給システムが開示されている。
【0006】
特許文献2には、建築物用の水素エネルギー供給システムとして、貯蔵された水素を用いて電力を生成する水素エネルギー生成部と、水素エネルギー生成部から供給される電力を、建築物の外部に対して電力を供給する第1のルート、および建築物の内部に対して電力を供給する第2のルートのうちの少なくともいずれかを介して供給可能である電力供給部と、電力供給部が供給する電力を制御する制御部であって、電力系統が停電した場合に、第1のルートを介した電力供給を開始させる制御、および第1のルートにおける電力の供給範囲を増加させる制御のうちの少なくともいずれかを行う制御部とを備えるシステムが開示されている。
【0007】
特許文献3には、エネルギー網とより効率的にエネルギーの授受を行うことが可能な水素エネルギーシステムとして、水素製造に関して予め定められた時系列な物理量を複数取得する取得部と、時系列な物理量毎に優先度を設定する設定部と、相互に関連する複数の時系列な計画値を生成する計画部であって、複数の時系列な物理量それぞれに対応する計画値を物理量毎の優先度に応じて生成する計画部とを備える水素エネルギーシステムが開示されている。
【0008】
特許文献4には、再生可能エネルギーにより発電する発電部から供給された電力を用いて、水の電気分解により水素を製造する水素製造部と、水素製造部が製造した水素を貯蔵する水素貯蔵部と、水素貯蔵部と連通する経路を介して取得した水素を用いて発電した電力を負荷に供給する水素発電部と、水素貯蔵部に貯蔵された水素を水素発電部に供給する経路と異なる経路により供給する供給部と、供給部が特定期間に供給する第1水素量を取得する水素量取得部と、第1水素量に応じて、水素発電部及び水素製造部のうちの少なくとも一方を制御する制御部とを備える水素エネルギー貯蔵システムが開示されている。
【0009】
特許文献5には、システム全体としての運用を停止させることなく、水素吸蔵能力の劣化度を診断することができる電力供給技術として、発電装置から入力した電力を用いて第1水素ガスを製造する水素製造部と、この第1水素ガスを輸送する第1輸送管が接続するとともに内部に水素吸蔵材料が収容されている少なくとも2つ以上のタンクと、これら複数のタンクに接続する第2輸送管を介して水素吸蔵材料から放出される第2水素ガスが輸送される燃料電池と、複数のうちいずれか一つのタンクにおける第1水素ガスおよび第2水素ガスの両方の輸送を閉止した状態でこのタンクの内部を減圧する減圧ポンプと、減圧されたタンクの内部に第3水素ガスを輸送する第3輸送管と、この第3水素ガスの輸送量を計測する計測部とを備えた電力供給システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第6005503号公報
【特許文献2】特許第6619446号公報
【特許文献3】特許第6564131号公報
【特許文献4】国際公開第18/069993号
【特許文献5】特許第6616016号公報
【特許文献6】特許第6501961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
水素エネルギーは、地球温暖化につながる二酸化炭素などの有害物質をほとんど排出しないクリーンで環境に優しいエネルギーであり、また貯蔵や輸送が可能であるといったメリットがある。
【0012】
その反面、現状においては水素を製造するコスト、水素の輸送コスト、製造された水素を電気や熱に変換する際の変換効率やコストに関するデメリットがあるとされている。
【0013】
しかしながら、現状の送電鉄塔、送電線による電力供給網においてもその整備のための建設コスト、維持コストは膨大であり、また地震や台風などの自然災害によって電力供給網が遮断されうるといった問題がある。また、老朽化した鉄塔の改修や取替の費用も膨大なものとなる。
【0014】
一方、現状において水素エネルギー利用におけるデメリットとされているコストや変換効率の課題に関しては、水素エネルギー利用が広がるにつれて、また水素関技術が進歩するにつれて大幅な改善が見込まれるため、長期的にはコストが低減され、大きな経済的効果が期待できる。
【0015】
本発明の広域電力供給システムは上述のような背景のもとに発明されたものであり、従来の送電鉄塔等が不要な水素エネルギーを利用した広域の電力供給網として、環境に対する負荷が小さく、経済性にも優れ、自然災害などによる影響も最小限に抑えることができる広域電力供給システムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の広域電力供給システムは、水素エネルギーの利用を図ったものであり、広域への電力供給を行うための1または複数の1次発電所と、前記1次発電所で発電された電気により、水素を製造する水素製造施設と、広域に分散配置され、前記水素製造施設で製造された水素を貯蔵する複数の1次水素貯蔵施設と、個々の前記1次水素貯蔵施設に対して複数分散配置された複数の2次水素貯蔵施設と、複数の特定居住区域内に敷設され、各特定居住区域内の電力消費施設または住戸に電力を送る地域電力網と、個々の前記特定居住区域に対して設置され、前記1次水素貯蔵施設または2次水素貯蔵施設を介して輸送されてきた水素を電力に変換する2次発電装置または2次発電施設と、前記水素製造施設と前記1次水素貯蔵施設との間、前記1次水素貯蔵施設と前記2次水素貯蔵施設との間、および前記1次水素貯蔵施設または前記2次水素貯蔵施設と前記2次発電施設との間で、前記水素を輸送する多数の輸送手段と、を備えていることを特徴とする。
【0017】
1次発電所は環境への負荷が少ない再生可能エネルギーを利用する水力発電施設、太陽光発電施設、または風力発電施設を備えた発電所などが好ましいが、条件によっては、再生可能エネルギーによる発電の供給量が確保されるまでは、従前のその他の発電所を併用する場合も考えられる。
【0018】
本発明における水素製造施設は、1次発電所で発電された電気を用いて製造することを想定しており、水を電気分解して水素を製造する方式が一般的であるが、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明で言う特定居住区域は、例えば建物としての集合住宅、オフィスビル、公共施設、や病院を備えた都市機能を備えた居住区域を意味する。これらの特定居住区域は単独住宅などの住戸を含んでもよく、また公園や森、湖、レクリエーション施設、多種の交通機関、交通施設を備え、人々が生活する一つの都市空間を構成するものを想定している。
【0020】
さらに具体的には、例えば特許文献6に示されるような、建物としての集合住宅、ホテル、オフィスビル、病院建築物または工場の周囲に、建物と間隔をおいて、常時の出入口としての開口部を除く建物のほぼ全周を取り巻く形で水密性を有する耐洪水塀が構築されており、この耐洪水塀は適用対象地域で想定される浸水深以上の高さを有し、かつ想定される浸水深以上の水圧に抵抗可能な耐力を有する塀であり、その開口部には浸水時に開口部を水密に閉塞する開口部閉塞手段が設けられているといった都市構造を備えた耐洪水塀を備えた居住空間としての都市であってもよい。
【0021】
また、分散させた複数の特定居住区域間の余った土地には、高速道路網、鉄道網を整備したり、自然環境をそのまま残した地域、さらには人工的な森や湖、大規模な公園、レジャー施設などを作ることもできる。
【0022】
本発明における地域電力網は主として、上述した特定居住区域内の地下に敷設された電線としての地中電力ケーブルによって構成される電力網を想定している。本発明は従来の多数の送電鉄塔に沿って張り巡らした送電線などによる送電方式を排除できるようにしたものであり、都市内においても電柱などを用いずに地下に配設された地中電力ケーブルによる電力の供給方式とすることが望ましい。
【0023】
それによって、都市本来の美しい景観を造り出すことができ、また自然災害などによる影響を受けにくいといった効果がある。
【0024】
本発明における2次発電装置または2次発電施設は、水素エネルギーを電気に再変換して、上述の地域電力網に供給するための装置あるいは設備であり、その一部あるいは全部に大容量のエネルギー変換方式としては水素ガスタービン発電所の形態が好ましい。
【0025】
このような水素ガスタービン発電所は、特定居住区域外部の特定居住区域に近接した場所に設置するようにすれば、当該居住区域内の交通に影響を与えることなく、再変換した電気を地域電力網に供給することができる。
【0026】
また、水素エネルギーを電気に再変換する他の形態としては、水素燃料エンジンまたは水素燃料電池があり、2次発電装置または2次発電施設のうちの一部に水素燃料エンジンまたは水素燃料電池を設置して2次発電を行うことができる。水素燃料エンジンまたは水素燃料電池の場合、水素ガスタービン発電所のような大容量の発電は困難であるため、都市計画に応じて適宜配置するようにすればよい。
【0027】
輸送手段はトレーラーまたはカードル形式の高圧水素輸送車両などを用いることができる。これらの車両は大型車両の通行に適した道路を、水素製造施設と1次水素貯蔵施設との間、1次水素貯蔵施設と2次水素貯蔵施設との間、1次水素貯蔵施設または2次水素貯蔵施設と2次発電施設との間に造り、整備することで、従来の送電鉄塔による電力網に代わる水素輸送車両主体の電力供給網を構築することができる。
【0028】
また、水素製造施設から1次水素貯蔵施設、1次水素貯蔵施設から次水素貯蔵施設、1次水素貯蔵施設または2次水素貯蔵施設から2次発電施設という段階的な構成において、電力の消費地である特定居住区域に近付くにしたがって大型の輸送手段の利用から小型の輸送手段の利用に移すようにし、それに応じた交通網を整備することにより、効率の高い広域電力供給システムを構築することができる。
【0029】
また、適用対象となる地域の特性によっては、輸送の一部を河川や海の往来手段である船舶を利用しての輸送を併用することもできる。
【0030】
特定居住区域内においては、上述の地域電力網とは別に、水素を取り扱う1または複数の水素ステーションを設置し、燃料電池自動車(FCV)などの車両に水素を供給したり、特定居住区域内の工場や病院など電力消費施設、あるいは家庭などに、直接、水素を供給できるようにしてもよい。
【0031】
地域電力網により効率的に電気の配線を設置することができた場合においても、水素ステーションに送られてくる水素を電気に変え、直接消費者に供給することができる。例えば、個々の家庭に小型の発電装置として、水素燃料エンジン装置あるいは家庭用水素燃料電池を設置すれば、地域電力網からの電気に加え、直接、各家庭で水素エネルギーを併用して利用することができる。その場合、電気への変換と同時に、熱エネルギーを温水などの形で取り出して利用することもできる。
【0032】
すなわち、特定居住区域内の電力消費施設または住戸の少なくとも一部に水素を利用する個別の発電手段と水素供給手段を設け、個別にも水素エネルギーによる電気などを利用できるようにすることができる。
【0033】
家庭あるいは比較的小規模な電力消費施設での小容量で水素エネルギーの使用に関しては、家庭用水素燃料電池または小型の水素燃料エンジンなどの利用が考えられ、その場合、水素供給手段として、カセット式に交換可能な水素タンクなどを利用することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の広域電力供給システムは、地球温暖化につながる二酸化炭素などの有害物質をほとんど排出しないクリーンで環境の負荷が少ない水素エネルギーを利用するシステムであり、また水素エネルギーは貯蔵や輸送が可能であるといったメリットがある。
【0035】
1次発電所として、環境への負荷が少ない再生可能エネルギーを利用する水力発電施設、太陽光発電施設、または風力発電施設を備えた発電所などを用いれば、トータル的にも地球温暖化、その他の環境問題の解決に大きく貢献させることができる。
【0036】
現状においては水素を製造するコスト、水素の輸送コスト、製造された水素を電気や熱に変換する際の変換効率やコストに関するデメリットがあるとされているが、送電鉄塔、送電線による電力供給網においてもその整備のための建設コスト、維持コストは膨大であり、また地震や台風などの自然災害によって電力供給網が遮断されうるといった問題や老朽化した鉄塔の改修や取替の費用も膨大なものとなるといった問題があり、長期的に見た場合には、輸送手段としてのトレーラーやカードルなどの車両を利用した方が自由度が高く、かえって経済的でシステムであるといえる。
【0037】
また、送電鉄塔、送電線は、景観を大きく毀損するものであり、これらを排除することで自然の美しい景観を保全することができる。また、送電鉄塔、送電線は、台風や地震などの自然災害によって大きな経済損失を発生させる恐れがあるのに対し、車両などの輸送手段は災害の被害を受けにくく、被害を受けた場合でも車両等の代替が容易であるという面でも経済性が高い。
【0038】
製造した水素による水素エネルギー大量保存や移動の自由度が高いため、電力の供給において、災害から都市や地域、国を守るのみでなく、その時の状況に応じて可変的に電力を供給することができる。
【0039】
また、現状において水素エネルギー利用におけるデメリットとされているコストや変換効率は、水素エネルギー利用が広がるにつれて、また水素関技術の進歩に伴って大幅な改善が見込まれるため、長期的にはコストが低減され、大きな経済的効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の広域電力供給システムの全体系を示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を添付した図面に基づいて説明する。
図1は本発明の広域電力供給システムの全体系を概念的に示した図である。
図における大まかな電力供給系統の流れは、1次発電所1、水素製造施設2、1次水素貯蔵施設3、2次水素貯蔵施設4、2次発電施設5(水素ガスタービン発電所)、地域電力網6となる。
【0042】
まず、1次発電所1で発電された電気を、1次発電所1に付帯させたあるいは1次発電所1の近傍に設置した水素製造施設2に送り、水素製造施設2で水素を製造する。
【0043】
1次発電所1としては、環境保護の観点からは、水力発電所1a、風力発電所1b、あるいは太陽光発電所1cのような再生可能エネルギーによる発電所を利用することが望ましい。
【0044】
水素製造施設2には、水電気分解装置などが設置され、1次発電所1より送られてくる電気を用いて水素を製造することができる。
【0045】
水素製造施設2で製造された水素は、トレーラー7などの輸送手段を利用して、広域に分散配置された1次水素貯蔵施設に送られる。
【0046】
さらに、個々の1次水素貯蔵施設3に対して、より小型な貯蔵施設としての2次水素貯蔵施設4が複数分散配置されており、需要に応じて1次水素貯蔵施設3から2次水素貯蔵施設4に向けて、トレーラー7などの輸送手段により、水素が搬送され、2次水素貯蔵施設4に貯蔵される。
【0047】
2次水素貯蔵施設4は規模が小さいものは、燃料電池自動車(FCV)などの車両に水素を供給する施設として用いられている水素ステーション程度のものとなる場合もある。
【0048】
地域電力網6は、特定居住区域内の地下に敷設された電線としての地中電力ケーブルによって構成される電力網を想定している。都市内においても電柱などを用いずに地下に配設された地中電力ケーブルによる電力の供給方式とすることで、美しい景観を造り上げ、また維持することができる。
【0049】
特定居住区域の地域電力網6に近接して、水素ガスタービン発電所などの2次発電施設5が設置され、上述の2次水素貯蔵施設4あるいは1次水素貯蔵施設3から直接トレーラー7などで搬送されてくる水素を利用して2次発電を行い、この2次発電による電気を地域電力網6に供給する。
【0050】
また、水素エネルギーを電気に再変換する他の形態としては、特定居住区域内の各家庭に、水素燃料エンジンまたは水素燃料電池などの2次発電装置8を設置して、地域電力網6の電力とは別に、あるいは併用して利用することができる。
【0051】
家庭用あるいは比較的小規模な電力消費施設での小容量で水素エネルギーの使用に関しては、家庭用水素燃料電池または小型の水素燃料エンジンなどの利用が考えられ、その場合、水素供給手段として、カセット式に交換可能な水素タンクなどを利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…1次発電所、1a…水力発電所、1b…風力発電所、1c…太陽光発電所、
2…水素製造施設、3…1次水素貯蔵施設、4…2次水素貯蔵施設、5…2次発電施設(水素ガスタービン発電所)、6…地域電力網、7…トレーラー、8…2次発電装置
【要約】
【課題】従来の送電鉄塔等が不要な水素エネルギーを利用した広域の電力供給網として、環境に対する負荷が小さく、経済性にも優れた広域電力供給システムを提供する。
【解決手段】本発明の広域電力供給システムは、1次発電所1と、1次発電所1の電気により水素を製造する水素製造施設2と、広域に分散配置された1次水素貯蔵施設3と、個々の1次水素貯蔵施設3に対して分散配置された2次水素貯蔵施設4と、居住区域内の電力消費施設または住戸に電力を送る地域電力網6と、居住区域に対して設置され、1次水素貯蔵施設3または2次水素貯蔵施設4を介して輸送されてきた水素を電力に変換する2次発電施設5と、水素製造施設2と1次水素貯蔵施設3との間、1次水素貯蔵施設3と2次水素貯蔵施設4との間、および1次水素貯蔵施設3または2次水素貯蔵施設4と2次発電施設5との間で、水素を輸送するトレーラー7などの輸送手段によって構成される。
【選択図】
図1