【実施例】
【0020】
本発明のコーヒーマシンAは、一例として
図1・
図7に示すように、抽出原料となるコーヒー粉Wからコーヒー液を実質的に抽出するブリュワー部1と、抽出用の湯を生成するための湯生成部2と、抽出したコーヒー液をカップCに注ぐ注出部3とを具えて成るものであり、これらをマシン本体4内に一体的に組み込んで成るものである。
ここで本実施例では、注出室となるベンドステージ41をコーヒーマシンA(マシン本体4)の正面側に配置するものとし(正面側と定義し)、その両側を左右方向と定義する。また、マシン本体4(内側)から見てベンドステージ41が位置する正面側を前方(前側)と称することがあり、更にその反対側を後方(奥側)と称することがある。
【0021】
そして、本実施例では、抽出時にカップCが載置されるベンドステージ41の床面は、一例として
図2に示すように、格子状もしくは簀の子状に形成され、その下(マシン本体4内)にドレンボックス42が着脱自在に収容される。また、ドレンボックス42のすぐ奥側には、抽出後にフィルタ面から払い出されたコーヒーカスW1を一時的に貯留するカスボックス43が着脱自在に設けられる。因みに、ドレンボックス42やカスボックス43をマシン本体4内から取り出す際には、コーヒーマシンAの正面に設けられた開閉扉44(
図1参照)をほぼ全開状態に開放してから、これらを取り出すものである。
【0022】
また、本明細書に記載する「コーヒー液」とは、原料となるコーヒー粉Wから湯を溶媒としてコーヒーのエキス分をドリップ抽出(溶出)した状態のものを言う(ドリップコーヒー)。すなわち本発明のコーヒーマシンAは、ドリップコーヒーを本格的に抽出するようにした装置である。
また、コーヒーマシンA(ブリュワー部1)は、コーヒー粉供給機構5とカス払い出し機構6とを具える。更に、本発明では、抽出空間となる抽出シリンダの上下の開口部を各々閉鎖し得る上部ピストンと下部ピストンとを静止状態に設置しておき、抽出シリンダを昇降動自在に設けるものであり、このためコーヒーマシンAは、抽出シリンダを昇降動させるシリンダ昇降機構7を具えるものである。
以下、コーヒーマシンAを構成する各構成部材について説明する。なお、説明にあたってはブリュワー部1の説明に先立ち、湯生成部2から説明する。
【0023】
湯生成部2は、上述したように抽出用の湯を生成する部位であるが、ここで生成された湯は、実質的な抽出に先立ちコーヒー粉Wを蒸らすためにも使用される。
湯生成部2は、一例として
図7に示すように、給水タンク21と、湯ボイラ22とを具えて成り、このうち給水タンク21は、湯を生成する前の水を貯留する部位である。また湯ボイラ22は、水から湯(Hot Water)を生成する部位である。
また湯ボイラ22には、給水タンク21から供給された水を加熱するためのヒータ221と、温水(湯)の温度を計測するための温度センサ222とが設けられる。
更に、給水タンク21から湯ボイラ22に水を送る給水経路L1には、給水ポンプM1と逆止弁CVが設けられる。
【0024】
次に、ブリュワー部1について説明する。
ブリュワー部1は、上述したようにコーヒー粉Wからコーヒー液を実質的に抽出する部位であり、抽出ユニット10を主な構成部材とし、このものは抽出シリンダ11とシリンダケース12とを具えて成る。なお、本実施例では抽出ユニット10は、コーヒーマシンA(マシン本体4)に対し、着脱自在に構成されるものであり、この詳細については後述する。
【0025】
次に、コーヒー粉供給機構5について説明する。
コーヒー粉供給機構5は、抽出原料となるコーヒー粉Wを抽出シリンダ11に供給する機構であり、抽出の都度、例えば一杯分ずつ豆から挽いてコーヒー粉Wを生成する。
このためコーヒー粉供給機構5は、一例として
図2に併せ示すように、コーヒー豆を貯留するホッパー51と、コーヒー豆を適宜の粒度に挽くグラインダ52を具える他、挽いたコーヒー粉Wを抽出シリンダ11に滑落投入するための漏斗状のガイド53やシュート54を具えて成る。なお、シュート54は、マシン本体4を構成するフレーム等に対し、上端部分の両サイドが回動自在に取り付けられて成り、投入先端が抽出シリンダ11に臨むように構成される。また、シュート54は、バネ等の付勢によってコーヒー粉Wの投入時には、回動が阻止されるようになっている。
【0026】
また、ホッパー51とグラインダ52は一対で一組として設けられ、本実施例では、二組設置され、これは例えば異なるコーヒー豆を収容しておくためである。ここで異なるコーヒー豆とは豆の種類そのものや、同種の豆でも焙煎度合いを異ならせたもの等が含まれる。因みにコーヒー豆の焙煎度合いは、一般に8段階に分類されており、煎りの浅いものから4種類がドリップコーヒーに適すると言われている。もちろんドリップコーヒーでもアイスコーヒー用に抽出する場合には、比較的、強めに煎ったコーヒー豆を使用することもあり得る(実際行われている)。このようなことから本発明で用いられるコーヒー豆としては、必ずしも煎りの浅いコーヒー豆に限定されるものではなく、対を成すホッパー51及びグラインダ52をホット用/アイス用のコーヒー豆に分けて設けること等も可能である。もちろん、ホッパー51及びグラインダ52は、一組だけでも構わないし、あるいは三組以上設けることも可能であるが、三組以上設ける場合であっても漏斗状のガイド53やシュート54は共通して使用することが好ましい。
なお、
図7中の符号M6、M7は、各グラインダ52を駆動させるためのモータである。
【0027】
次に抽出ユニット10について説明する。抽出ユニット10は、上述したように抽出シリンダ11とシリンダケース12とを具えて成る。
抽出シリンダ11は、一例として
図2〜
図5に示すように、円筒状を成すシリンダ本体13の上下を各々上部ピストン14及び下部ピストン15で密閉し得るように構成される。
なお、一般的なコーヒーマシンは、シリンダ本体を静止状態(不動状態)に固定設置しておくとともに、このシリンダ本体に対し上下のピストン(いずれか一方または双方)を上下動させることで、コーヒー粉Wの投入や抽出空間の密閉等を行うが、本発明では上述したように上部ピストン14及び下部ピストン15を静止状態(不動状態)に固定設置しておくとともに、シリンダ本体13を昇降動させることでコーヒー粉Wの投入や抽出空間(シリンダ本体13)の密閉等を行っており、これが大きな特徴である。このため本発明における上部ピストン14及び下部ピストン15の「ピストン」という名称は、厳密には、そぐわないかも知れないが、従来から慣用されてきた名称であり、またこれら両部材がシリンダ本体13に対して相対的な上下動動作を行うとも言えるため、本明細書でも上記名称を使用する。
【0028】
次に、シリンダ昇降機構7について説明する。
シリンダ昇降機構7は、静止状態に設置された上部ピストン14及び下部ピストン15に対し、シリンダ本体13を上下動させる機構であり、シリンダ本体13は、マシン本体4内に静止状態に取り付けられたシリンダケース12内を昇降動するように構成される。
具体的には一例として
図4に併せ示すように、シリンダ昇降機構7は、シリンダ本体13の外周部に形成されたリードネジ71と、このリードネジ71に螺合するリングギア72とを具えて成り、このリングギア72には、内周側に前記リードネジ71に螺合するメネジが形成される。且つ、このリングギア72は、外周側にギアが形成されており、このギアに噛合するように、駆動ギア73が設けられる(リングギア72の外周側)。なお、図中符号M5が、駆動ギア73を回転駆動させるための駆動モータである。
【0029】
因みに、リングギア72と駆動ギア73は、常に噛合状態が維持されるのではなく、抽出ユニット10をコーヒーマシンA(マシン本体4)内にセットしたときのみ噛合状態が維持される。換言すれば、抽出ユニット10をコーヒーマシンAから取り外した分離状態では、リングギア72も抽出シリンダ11とともにコーヒーマシンAから分離されるため、両者の噛合状態は解除される。
また、リングギア72はシリンダ本体13の外周部において定位置で(上下方向に移動することなく)回転するように構成され、具体的にはシリンダケース12によって回転自在に支持される。これにより駆動モータM5によって駆動ギア73を回転させると、リングギア72が定位置で回転し、この回転を受けてシリンダ本体13が昇降動するものである。
【0030】
またシリンダ本体13の昇降動は、抽出シリンダ11とシリンダケース12との間に形成される上下方向レール75に規制されるものであり、これによりシリンダ本体13を円滑に且つ安定して昇降動させることができる。
この上下方向レール75は、一例として
図4・
図6(a)に示すように、シリンダ本体13の外周側において上下方向に彫り込み状に形成された縦溝76と、シリンダケース12内周面において当該縦溝76に嵌合するように形成された凸状の縦リブ77とにより構成される。
なお、縦溝76は、シリンダ本体13の左右二個所の位置で、前記リードネジ71を切り欠くように形成される。一方、シリンダケース12内周側の縦リブ77は、シリンダケース12の左右両側の柱部内側に形成される。
このようにシリンダ本体13は、その外周側に形成された縦溝76が、シリンダケース12の縦リブ77に常に嵌まり合った状態で昇降動するものであり、これにより確実な昇降動作が可能となる。
【0031】
次に、カス払い出し機構6について説明する。
カス払い出し機構6は、抽出後にフィルタ面に付着残留したコーヒーカスW1をフィルタ面から除去するものであり、一例として
図4に示すように、フィルタ面をこすり取るように作動するスクレイパ61を主要部材とする。なお、フィルタ面から除去されたコーヒーカスW1は、上述したように手前側のカスボックス43内に落下投入される。
そして、本実施例では、このスクレイパ61をシリンダ本体13の上部開口を取り囲むように設けるものであり(言わばリング状)、より詳細には、スクレイパ61は、高さ方向に厚みを有する筒状に形成される。
またスクレイパ61は、シリンダ本体13とともに昇降動するように構成され、コーヒーカスW1の払い出しを行わないときには、筒状の内側がシリンダ本体13の頂部に臨む状態に維持される。
【0032】
コーヒーカスW1の払い出しは、シリンダ本体13の上端が下部ピストン15のフィルタ面に到達したとき(下死点)に行われ、このため下死点位置に達したスクレイパ61の背面側には、スクレイパ61を正面のカスボックス43側に押し出す(水平往復動させる)カス払い出し機構6(実駆動部)が設けられる。
なお、カスボックス43は、上述したようにベンドステージ41のすぐ背面側(奥側)に着脱自在に設けられており、例えばカスボックス43内に溜まったコーヒーカスW1を廃棄したい場合等には、まずマシン本体4の開閉扉44を開放し、ベンドステージ41下方に設けられたドレンボックス42をマシン本体4から取り出した後、カスボックス43を取り出すものである。
【0033】
カス払い出し機構6(実駆動部)としては、一例として
図4・
図5に併せ示すように、カムリンク機構6(カス払い出し機構6と同じ符号を付す)が採用できる。
このカムリンク機構6は、カス払い出しモータM3によってカムを回転させ、この回転をリンク機構を介してスクレイパ61の前後動作(水平往復動作)に変換するものである。
そして、このカムリンク機構6により、下部ピストン15のフィルタ面に付着残留したコーヒーカスW1がスクレイパ61の筒状内周面(後述する払い出し作用部610)で削ぎ落とされ、カスボックス43内に収容される。
【0034】
なお、カムリンク機構6は、
図5に示すように、スクレイパ61を前方に押し込む作用先端部に、スクレイパ61に係止する円板状の接続部62が形成される一方(円板の軸を水平に向けた状態に立設)、
図4に示すように、スクレイパ61の背面側に、当該接続部62を下方から受け入れるキャッチ受け部63が形成される。これによりスクレイパ61が、シリンダ本体13と共動して下死点まで下降した際に、円板状の接続部62が、自然にスクレイパ61のキャッチ受け部63内に収まり、双方の接続(係止)が図られる。もちろん、カムリンク機構6を作動させてスクレイパ61を水平移動させている間(スクレイパ61でコーヒーカスW1の払い出しを行っている間)は、この接続状態が維持され、払い出し後にシリンダ本体13を上昇させると、カムリンク機構6とスクレイパ61の接続状態も自然に解除される。
このようにカムリンク機構6は、スクレイパ61を前後動させるときだけ(スクレイパ61が下死点位置で水平移動するときだけ)、スクレイパ61との接続が継続されるように構成され、スクレイパ61がシリンダ本体13とともに昇降動する間は、この接続が解除されるようになっている。
【0035】
またカムリンク機構6における接続部62の近傍には、スクレイパ61が下死点まで下降したことを感知するセンサ(リードスイッチ)LSが設けられる一方、スクレイパ61におけるキャッチ受け部63の近傍には、スクレイパ61が下死点まで下降した際に、このセンサLSに接触する当接片64が設けられる。
これにより、スクレイパ61が下死点まで下降したことをセンサLSにより自動検知するものであり、またこの信号に基づいて、カムリンク機構6のカス払い出しモータM3を自動的に駆動させ、コーヒーカスW1の排出動作にスムーズに移行できるものである。
なお、上記センサLSは、シリンダ本体13が下死点に下降したことを検知するセンサ(リードスイッチ)も兼ねており、このセンサLSの検知信号により、自動的に駆動モータM5の回転(駆動)、すなわちシリンダ本体13の下降動作を停止させるものである。 因みに、カムリンク機構6の原点位置(スクレイパ61がコーヒーカスW1を払い出して元の位置に戻ったこと)は、図示を省略する別のセンサで検出するものである。
また、
図3等に示す符号65は、下部ピストン15のフィルタ面から削ぎ落としたコーヒーカスW1を、カスボックス43に案内するための滑り台状のガイドであり、本実施例では当該ガイド65の両サイドに立壁が形成され、ここにスクレイパ61の下部が嵌合しながら、スクレイパ61が前後動するように構成される。因みに、当該ガイド65は、シリンダ本体13の頂部に一体的に形成され、シリンダ本体13とともに昇降動する。
【0036】
以上述べたように、スクレイパ61はシリンダ本体13とともに下死点から上死点(シリンダ本体13の上部開口が上部ピストン14で閉鎖される位置)まで昇降動する一方、抽出を終えて下死点まで下降した後は、前後方向にも移動(往復動)するように構成され、以下このような作動を規制する構造について説明する。
まずスクレイパ61の左右両側(筒状の厚み部分)に、一例として
図4に併せ示すように、外側に突出する突起66を形成する。この突起66は、左右二個所ずつ、計四個所形成される。
また、シリンダケース12には、一例として
図6(a)に示すように、この突起66を内嵌め状態に収めながら摺動自在とする縦溝67と横溝68が形成され、縦溝67はその下端(スクレイパ61が下死点に到達した状態)で横溝68に達する(つながる)ように形成される。
これにより抽出後に下死点まで下降してきたスクレイパ61が、スムーズに前方に水平移動できる構成となっている。すなわちスクレイパ61が昇降動する際には、前記突起66は縦溝67に嵌まりながら上下方向に摺動し、スクレイパ61が水平移動つまり下死点から前方に移動する際には、縦溝67に嵌まっていた突起66が、今度は横溝68に嵌まりながら前後方向に摺動するものである。
【0037】
なお、スクレイパ61は、上述したように高さ方向に厚みを有する筒状に形成され、グラインダ52で挽かれたコーヒー粉Wが、シュート54を介してシリンダ本体13内に投入される際には、当該厚み部(筒状の内側部)が、落下してくるコーヒー粉Wの飛散を防止するカバーの作用を兼ねるものである(
図10(b)参照)。
また、例えば
図2〜
図4に示すように、スクレイパ61の厚み外周前方側(カスボックス43側)に、迫り出し部69を傾斜状に形成しておき、スクレイパ61が上昇した際、この迫り出し部69が、コーヒー粉Wを投入したシュート54の投入先端部(ここではシュート54下部に側面視円形状部材として形成)に当接するようにしておけば、一例として
図10(c)に示すように、シリンダ本体13への給湯に先立ち、スクレイパ61が上昇した際、スクレイパ61の迫り出し部69が、シュート54をシリンダ本体13から退去させるように回動させることができる(言わば蹴飛ばし)。これによりシリンダ本体13に給湯する際、シュート54に蒸気が掛かりにくくなり(接触しづらくなり)、コーヒー粉Wの固着を防ぐことができる。従ってコーヒー粉Wの確実な投入が長期にわたって維持でき、コーヒー粉Wの固着を解消するためのメンテナンスも激減させることができる。
【0038】
なお、本実施例では、スクレイパ61は、上述したようにシリンダ本体13の上部開口を周状に取り囲む閉鎖環状に形成したが、スクレイパ61は必ずしもこのような形状に限定されるものではない。すなわちスクレイパ61は、一例として
図6(b)に示すように、平面視、払い出し側(カスボックス43側)を開口した開放環状もしくはU字状に形成することも可能であり、コーヒーカスW1をフィルタ面から除去する払い出し作用部610(例えばカスボックス43側を除く背面及び左右両面の計三面)が連続形成されていれば構わない。なお当該払い出し作用部610は、高さ方向に、例えばコーヒーカスW1以上の厚みを有するように形成されることが好ましい。
因みに、特許請求の範囲の「このものの(シリンダ本体の)上部開口をほぼ取り囲むように」という記載は、上記のようにスクレイパ61が必ずしも閉鎖環状に形成されず、払い出し側が開口されたU字状または開放環状に形成される場合を包含するものである。
また、スクレイパ61の払い出し側を開口させた場合、特にスクレイパ61をU字状に形成した場合には、前記迫り出し部69は、シリンダ本体13の外周側に形成することが可能であり、例えば本実施例で言えば上記ガイド65を当該迫り出し部69として機能させることが可能である。
【0039】
また、抽出ユニット10(抽出シリンダ11)は、上述したように、人の手によってコーヒーマシンA(マシン本体4)から脱着できるように構成されており、このため抽出ユニット10は、上記カムリンク機構(カス払い出し機構)6及びシリンダ昇降機構7からの駆動伝達が、容易に切り離し且つ再接続できるように構成されており、以下このような構造について説明する。
【0040】
まず抽出ユニット10を設置する空間から説明する。抽出ユニット10は、上述したようにシリンダ本体13、上部ピストン14、下部ピストン15、スクレイパ61等の上下動する部材と、マシン本体4内で固定設置されるシリンダケース12、リングギア72等の上下動しない部材とに大きく分けられる。
また、マシン本体4内において抽出ユニット10を設置する空間は、一例として
図3に併せ示すように、上側や奥側等が仕切壁45で仕切られている。この空間(抽出ユニット10の設置空間)の奥側には、シリンダ本体13を昇降させるためのシリンダ昇降機構7の駆動ギア73や、スクレイパ61によってコーヒーカスW1を払い出すカムクランク機構6(実駆動部)等が収められる。もちろん、抽出ユニット10の設置空間とシリンダ昇降機構7との仕切壁45には、駆動ギア73とリングギア72を噛合させるための窓が開口される。
また、抽出ユニット10の設置空間の上方には、別の仕切壁45を隔てて、グラインダ52が収容されており、この仕切壁45にも前記漏斗状のガイド53を通すための窓が開口される。
また、抽出ユニット10の設置空間の隣には(
図2では左側)、給水タンク21が収容される。
【0041】
以下、抽出ユニット10の着脱自在構成について説明する。
まず抽出ユニット10の設置空間では、
図3〜
図5に示すように、マシン本体4の底部から四本のピン46が上向きに突出するように設置される。また、抽出ユニット10の背面側の仕切壁45には、
図2・
図3に示すように、上部にフック47が設置される。
一方、抽出ユニット10のシリンダケース12の下部には、一例として
図6(a)に示すように、前記ピン46を外嵌め状に収めるピン孔48(切り欠き状)が一例として四個所形成される。またシリンダケース12の上部背面側には、
図2・
図3に示すように、上記フック47に嵌まる掛止部49が形成される。
このように抽出ユニット10は、下側ではマシン本体4に対し四本のピンに取り外し自在の差し込み構造となっており、また背面側ではマシン本体4側の仕切壁45に設けたフック47に取り付け・取り外し自在の掛止構造となっており、これにより抽出ユニット10をマシン本体4に対し着脱自在とする構成が採られている。
【0042】
すなわち、抽出ユニット10をマシン本体4内に設置する際には、下側ではシリンダケース12のピン孔48を、マシン本体4から突出しているピン46に嵌め込むようにするとともに、背面側ではシリンダケース12の掛止部49を、仕切壁45のフック47に引っ掛けるようにして抽出ユニット10をマシン本体4内に取り付ける(装着する)ものである。
また、このような取付状態から抽出ユニット10をマシン本体4内から取り外すには、抽出ユニット10(シリンダケース12)を持ち上げるようにして、背面側のフック47による掛止と、下部のピン46による接続を解除しながら取り外す。もちろん、抽出ユニット10を取り外すにあたっては、事前にコーヒーマシンAの正面側の開閉扉44をほぼ全開させておき、ドレンボックス42やカスボックス43をマシン本体4内から取り外した後、上部ピストン14や下部ピストン15に接続されている各種経路(チューブ)を切り離してから、抽出ユニット10を取り外すものである。
因みに、上部ピストン14には給湯とエア抜きの経路(後述する湯供給経路L2と圧力調整経路L3)が接続されており、下部ピストン15には抽出と撹拌用エアの経路(後述する抽出経路L4とエア供給経路L5)が接続されており、これらをコネクタ接続としておけば、切り離し操作(接続解除操作)と接続操作とが容易に且つ衛生的に行えるものである。
【0043】
次に、抽出ユニット10においてシリンダ昇降機構7からの駆動伝達を切り離したり、再接続したりする構成について説明する。
シリンダ昇降機構7は、上述したように噛合する駆動ギア73とリングギア72との間で回転を伝達する構成である。すなわち、本実施例ではリングギア72の背面側に固定設置された駆動ギア73と、シリンダ本体13の外周に設けられたリングギア72との間で回転を伝達する構成であるため、抽出ユニット10をマシン本体4内から取り外すことで、双方のギアが分離され、双方のギアの噛合状態も自然に解除される(容易に駆動の切り離しが行える)。もちろん抽出ユニット10をマシン本体4内に装着した際には、これら双方のギアが自然に噛合するようになり、両ギアが容易に接続される(回転を伝達する状態が即座に得られる)。
【0044】
次に、抽出ユニット10においてカムリンク機構(カス払い出し機構)6からの駆動伝達を切り離したり、再接続したりする構成について説明する。
抽出ユニット10をマシン本体4内から取り出すには、上述したように抽出ユニット10を持ち上げるようにして、マシン本体4内から取り外す。このためスクレイパ61の背面側では、キャッチ受け部63もシリンダ本体13とともに上方に移動し、カムリンク機構6の接続部62との接続状態も容易に解除される。もちろん、抽出ユニット10をマシン本体4内に取り付けた際には、上述したように抽出ユニット10を上方から下方に降ろすような動作となるため、スクレイパ61のキャッチ受け部63が自然にカムリンク機構6の接続部62に嵌まり、両者の接続が自動的に且つ確実に行われる。
【0045】
なお、抽出ユニット10の着脱は、このような上下方向の動作に限定されるものではなく、前後方向の動作(引き抜き/押し込み)によって行うことも可能である。もちろん、そのためには、抽出ユニット10の取り付けをピン46及びピン孔48、フック47及び掛止部49で行うのではなく、予めマシン本体4内の底部に、前後方向のガイド(レール)を敷設しておき(図示略)、抽出ユニット10をコーヒーマシンAから取り外す際には、抽出ユニット10を上記ガイドに沿ってマシン本体4内から引き出す(引き抜く)ようにするものであり、また抽出ユニット10をコーヒーマシンAに取り付けるには、前記ガイドに沿って抽出ユニット10をマシン本体4内に押し込むようにして取り付けるものである。
もちろん、このように抽出ユニット10を前後方向の動作で着脱するようにした場合には、上記ガイドに沿ってマシン本体4内に押し込んだ装着状態で、抽出ユニット10(シリンダケース12)をマシン本体4と回転自在のキーや閂等でロックしておくことが好ましい。
また、抽出ユニット10を前後方向の動作で着脱するようにした場合には、抽出ユニット10の着脱操作に併せて、前記上部ピストン14及び下部ピストン15の各経路の接続・非接続の切り替えを併せて行うことができる。すなわち、抽出ユニット10の装着(押し込み)によって各経路のコネクタ接続を行うようにし、抽出ユニット10を引き抜くことにより、このコネクタ接続を自然に解除させることができる。
【0046】
次に、上部ピストン14について説明する。
上部ピストン14は、上述したように上昇してくるシリンダ本体13の上部開口を閉鎖する部材であり、抽出時には抽出空間となるシリンダ本体13内を密閉状態に維持するものである。ここで
図4等に示した符号141が、そのため(抽出空間を密閉するため)に上部ピストン14に外嵌めされるOリングであり、これにより抽出空間に供給する湯等の漏出が防止され、また当該空間を適宜の密閉空間(耐圧空間)に維持するものである。
【0047】
また、上記
図7に示すように、前記湯ボイラ22から上部ピストン14までの間には、湯(高温湯)を供給するための湯供給経路L2が形成され、この経路中には、湯供給バルブV1が設けられる。ここで湯供給バルブV1は、湯ボイラ22からシリンダ本体13内、つまり上部ピストン14と下部ピストン15との間の抽出空間に湯を供給する際に、バルブ開放(オン)で上記湯供給経路L2を連通させ、給湯状態(給湯可能状態)となり、バルブ閉鎖(オフ)で当該経路が遮断され給湯停止となる。
また、この湯供給経路L2には送湯量(流量)を計測するための流量計(フローメータ)23が設けられる。
【0048】
更に、上部ピストン14には、シリンダ本体13内(抽出空間)を加圧状態に設定したり、大気開放状態に設定したりする圧力調整経路L3が接続され、この経路中には、エア開放バルブV2とエアポンプM2が設けられる。ここでエアポンプM2及びエア開放バルブV2は、抽出空間を加圧状態とするときに、エアポンプM2を作動(オン)させるとともにエア開放バルブV2を閉鎖(オフ)するものであり、抽出空間を大気開放状態とするときに、エアポンプM2を停止(オフ)させるとともにエア開放バルブV2を開放(オン)するものである。
またエアポンプM2とエア開放バルブV2の間には逆止弁CVが設けられ、この逆止弁CVは、抽出空間を大気開放状態に設定する際、エアポンプM2側にエアを流さないようにする作用を担うものである。
【0049】
また上部ピストン14には抽出空間(シリンダ本体13内に収容したコーヒー粉W)に面してシャワープレート142が設けられる。このシャワープレート142は、抽出空間に収容したコーヒー粉Wに湯を散布することが主目的であり、濾過作用は必要ない。このため上部ピストン14内は、当然、湯供給経路L2から供給される湯を下面のシャワープレート142(散湯孔)に通すように形成される。因みに、シャワープレート142は、湯を通過(散湯)させればよいため、後述するフィルタ152(下部ピストン15に設けるフィルタ152)を適用(流用)することも可能である。
【0050】
次に、下部ピストン15について説明する。
下部ピストン15も、上述した上部ピストン14と同様に、これ自体は静止状態(不動状態)に設けられ、抽出時にはシリンダ本体13内の下部開口を密閉するものである。ここで図中符号151が、そのために下部ピストン15に外嵌めされるOリングであり、これによりシリンダ本体13内(抽出空間)に供給された湯やコーヒー液等の漏出が防止され、また抽出空間内を適宜の密閉空間(耐圧空間)に維持するものである。
【0051】
また、上記下部ピストン15から注出部3(ノズル31)までの間には、抽出経路L4が形成され、当該経路によってシリンダ本体13(抽出空間)内で抽出したコーヒー液を注出部3に移送し、ここからカップCに注ぎ入れるものである。なお、当該経路中には、抽出バルブが設けられないものであり(つまり抽出経路L4が単なる管(チューブ)状に形成されており)、これによりメンテナンス時に行う抽出バルブの洗浄などをなくし、洗浄時のヒューマンエラーや作業者による洗浄差などの問題が生じないようにしている(誰が管理しても容易に同じ衛生状態が保てるよう考慮している)。
【0052】
また、この下部ピストン15にはドレン経路も設けられないものである。ここでドレン経路とは、シリンダ本体13内で抽出したコーヒー液が、注出部3への移送により、徐々に少なくなってきて、液中に雑味分が多く含まれるようになってきた段階(これを残液とする)で、この残液を抽出経路L4から切り換えて排水管等に排出する経路である。
本実施例では、このようなドレン経路もないため、一回の抽出毎に生じる残液は、コーヒーカスW1に含ませて、コーヒーカスW1とともにカスボックス43に収容するものである。
因みに、このような構造から、本コーヒーマシンAは、排水管などの排水設備がないところでも設置でき、電源され取れれば、オフィスの中央等どこにでも設置でき、またコーヒーマシンA〜既存の排水設備までの排水管設置工事も不要となる。
【0053】
更に下部ピストン15には、抽出中のシリンダ本体13内にエアを供給するためのエア供給経路L5が接続され、この経路にはエアポンプM4と逆止弁CVが設けられる。なお、このエアポンプM4から抽出空間にエアを供給するのは、コーヒー粉Wと湯を撹拌するためであり、この撹拌については後述する。
【0054】
また本
発明では、下部ピストン15を、左右方向と前後方向とに揺動自在に支持するものであり、以下、この構造について説明する。
下部ピストン15は、一例として
図2・
図3・
図5に示すように、シリンダケース12から二本のリンクバーを介して支持され、左右方向及び前後方向に揺動自在に支持される。
具体的にはシリンダケース12の下部において、左右方向に沿うリンクバーが横架され(これを左右方向リンクバー17とする)、この左右方向リンクバー17に対して上下方向に伸びるリンクバー(これを上下方向リンクバー18とする)が前後方向に回動自在に接続される。そして、この上下方向リンクバー18の上端部で、下部ピストン15が左右方向に揺動自在に支持されるものである。
【0055】
次に、下部ピストン15を左右方向及び前後方向に揺動自在に支持した効果について説明する。
本発明では、上述したように、静止状態(不動状態)に固定設置した上部ピストン14及び下部ピストン15に対し、シリンダ本体13を昇降動させており、このため抽出後は、シリンダ本体13がカス払い出し位置(下死点)まで下降する際、シリンダ内壁面に付着残留しているコーヒーカスW1を、下部ピストン15の外周当たり面が、相対的にこすり取るような状況になる。ここで、シリンダ内壁面に付着残留するコーヒーカスW1は、当然、均一ではなくバラツキが生じるため、このバラツキから下部ピストン15には、このものを偏心させるような抵抗力が働く。ここで下部ピストン15が揺動自在に支持されていない場合(単に水平に支持されている場合)には、シリンダ本体13の下降中、下部ピストン15の外周部のOリング151は、部分的に押しつぶされるようになり(部分的に無理な力が掛かり)、損傷を招くことが考えられる。しかしながら、本実施例では下部ピストン15が左右方向及び前後方向(X方向及びY方向)に揺動自在に支持されるため無理なく力のバランスを保つことができ、下部ピストン15の外周に設けられたOリング151の損傷を防ぐことができる。
なお、下部ピストン15を揺動自在に支持するにあたっては、必ずしも前後・左右の二方向に揺動自在とするのではなく、例えばユニバーサルジョイントで接続し、全ての方向に揺動自在とすることも可能である。
【0056】
また下部ピストン15には抽出空間(シリンダ本体13内に収容したコーヒー粉W)に面してフィルタ152が設けられる。つまり、当該フィルタ152は、下部ピストン15の上面に設けられ、シリンダ本体13内に投入されたコーヒー粉Wが接触する部位である。
ただし、当該フィルタ152は、コーヒー粉Wから抽出したコーヒー液を通過させる一方、コーヒー粉Wの通過は阻止する濾過作用を具えるものである。なお、このフィルタ152によって本発明では本格的なドリップコーヒーを抽出するものであるが、このフィルタ152そのものは本格的なエスプレッソコーヒーを抽出する際にも適用できる。
【0057】
フィルタ152は、一例として
図8に示すように、コーヒー粉Wと接触する方から(コーヒー液の通過方向から)、メッシュフィルタMF、穿孔フィルタEFを積層して成り、これを支持部材で支持して成る。なお、本実施例では、支持部材は、二枚のサポート部材を積層して成り、これをコーヒー液の通過方向からサブサポートSS、ベースサポートBSと称している。なお、メッシュフィルタMF、穿孔フィルタEF、サブサポートSS、ベースサポートBSを積層して成るフィルタ152を本明細書では「特殊四層フィルタ152」と称することがある。もちろん、各部材には、コーヒー液を通過させる通過孔hが形成されており、コーヒーカスW1は、コーヒー粉Wと直接接触するメッシュフィルタMF上に残留する。
また、ここではメッシュフィルタMF、穿孔フィルタEF、サブサポートSS、ベースサポートBSの全てがSUS製(ステンレス製)であるため、紙製のフィルタ(いわゆるペーパーフィルタ)に比べ、抽出したコーヒー液に紙の匂いがせず、またフィルタ152そのものを繰り返し使用できる点で優れている。また、上記構成のフィルタ152は糖度計によるブリックス値が高いことが本出願人によって確認されており、この点でも優れている。具体的には、一般のペーパーフィルタのブリックス値が1.2〜1.8程度であるところ、本実施例のフィルタ(特殊四層フィルタ)152は2.3〜2.8程度であり、コーヒーの旨味成分を極めて濃く抽出できることが確認されている。
【0058】
以下、フィルタ152を構成する各部材について説明する。
まず、メッシュフィルタMFは、一例として400メッシュのステンレス製金網(平織金網)で形成される。ここで400メッシュのステンレス金網は、例えば線径0.03mmで開口サイズ33μmであるが、メッシュフィルタMFとしては、350メッシュのステンレス製金網(線径0.03mm・開口サイズ54μm)でも可能であるし、300メッシュのステンレス製金網(線径0.04mm・開口サイズ44μm)でも可能である。
なお、コーヒー粉Wの微粉は、最も細かいもので20μm程度であるため、上記メッシュフィルタMFのうち最も開口サイズの小さい400メッシュ(開口サイズ33μm)を適用しても、単にサイズだけで比較すればコーヒー粉Wの微粉はメッシュフィルタMFの通過孔hを通り抜けてしまう。しかし、コーヒー粉Wの微粉は、完全な球体(まん丸)ではないため、微粉よりも大きい目のメッシュフィルタMFを使用しても微粉の通り抜けが防止できるものである。もちろん、ここでは抽出時にコーヒー粉Wと湯を撹拌しており、これも大きい目のメッシュフィルタMFでありがら、微粉の通り抜けを防止することに寄与している。なお、撹拌については後述する。
【0059】
また、メッシュフィルタMFの外周縁には、一例として
図8に併せ示すように、段差が形成されており、メッシュフィルタMFが全体としてハット状を呈するように形成される。ここでメッシュフィルタMFにおいて内側の円形平面部が実質的な濾過面(フィルタ面)になるため、ここをフィルタ本体部MF1とし、段差を隔てた外周平面部を鍔部MF2とする。なお、鍔部MF2より内側のフィルタ本体部MF1には、段差を利用して、後述の穿孔フィルタEFとサブサポートSSとが収容される。このためフィルタ本体部MF1における収容空間の深さ(段差の高さ)は、穿孔フィルタEF及びサブサポートSSの板厚のほぼ合計に設定される(例えば穿孔フィルタEFの板厚が0.2mmで、サブサポートSSの板厚が0.8mmの場合、フィルタ本体部MF1における収容空間の深さは1mm程度に設定される)。
また、フィルタ本体部MF1と鍔部MF2との段差は、折り曲げ加工で形成されるが、この折り曲げ加工と同時に、複数の円孔MF3が鍔部MF2に開孔される。この円孔MF3は、その後に行うメッシュフィルタMF、穿孔フィルタEF、サブサポートSS、ベースサポートBSの一体化(樹脂PLによる一体化)を強化するためである。
【0060】
次に、穿孔フィルタEFについて説明する。
穿孔フィルタEFは、一例として板厚0.2mmのSUS製円板で形成され、フィルタ全面(積層面)に細い通過孔hが多数穿設される(例えば径寸法で130μm〜180μm程度)。
なお、穿孔フィルタEFの通過孔hの大きさ(径寸法)は、全て同じ大きさでも構わないが、例えばフィルタの中央に大きな通過孔hを穿孔し、周縁部に小さな通過孔hを穿孔する等、フィルタの各部位により通過孔hの大きさを異ならせることも可能である。
また、穿孔フィルタEFの中央付近と周縁付近とでは、通過孔hの密度を異ならせることも可能であり、例えば抽出するコーヒー液を、穿孔フィルタEFの中央付近に集めるようにしながら抽出したい場合には、穿孔フィルタEFの中央付近に通過孔hを密に穿孔し、そこから徐々に周縁付近に向かうほど通過孔hが粗になるように穿孔することが可能である。
なお、穿孔フィルタEFの通過孔hは、エッチング加工で穿孔することが可能である。
【0061】
次に、ベースサポートBS及びサブサポートSSの支持部材について説明する。
ベースサポートBS及びサブサポートSSは、メッシュフィルタMFや穿孔フィルタEFを支持するものであり、より詳細には抽出時に作用する圧力等によってメッシュフィルタMFや穿孔フィルタEFが変形や破損しないように支持するものである。
なお、本実施例のベースサポートBSは一例として板厚1.0mmのSUS製板材で形成され、またサブサポートSSは一例として板厚0.8mmのSUS製板材で形成される。そして、どちらも中央に円形の大きな通過孔h(例えば直径約7mm)が開口されるとともに、その周囲にほぼ正六角形の小さな通過孔h(例えば対辺距離約3mm)が多数開口される(いわゆるハニカム状)。
【0062】
ここで、両支持部材の中央以外にほぼ正六角形の通過孔hを開口したのは(平面視状態でハニカム状に形成したのは)、メッシュフィルタMFや穿孔フィルタEFを支持するサポート部材としての強度アップと開口率の向上を同時に達成するためである。すなわち、通過孔hをほぼ正六角形とすれば、通過孔h同士の境界部分が一定の幅寸法となり、メッシュフィルタMFや穿孔フィルタEFを支持する強度として優れた性能を発揮するとともに、コーヒー液をスムーズに通過させる開口率としても高く確保でき、限られたフィルタ面積を有効に利用できるものである。
もちろん、通過孔hの形状としては、一般的なパンチングメタルに代表されるように、円形にすることも考えられるが、この場合には円形状の孔と孔の境界部分が一定の幅寸法にならず各部で異なる。そのため、境界部分の最も狭い部分で必要最低限の強度を確保しようとすると、全体の開口率が低下し、限られたフィルタ面積を有効に利用できないことが懸念される。
また、ベースサポートBS及びサブサポートSSの中央付近に、周囲のハニカム状の通過孔hよりも大きい円形の通過孔hを開口したのは、コーヒー液の抜けをフィルタ中央部で向上させ(他の部位よりも抜け易くし)、コーヒー液の抽出を効率良く行うためである。
【0063】
このように、本実施例では支持部材をベースサポートBSとサブサポートSSとに分けて構成しており、これはSUS製板材にエッチング加工を行う際の板厚限界が約1mmであるためである。すなわち、ここではベースサポートBS及びサブサポートSSに上記正六角形の通過孔hを開口するにあたり、エッチング加工で開口しており、この加工限界が約1mmの板厚であるため、支持部材を二枚に分けたものである。また、このようなことからベースサポートBSとサブサポートSSとを積層する際には、円形の通過孔hと正六角形の通過孔hとを一致させるものであり(
図9参照)、例えば複数ある通過孔hの幾つかに位置決め用のピンを嵌合させてベースサポートBSとサブサポートSSの各孔位置を合致させた状態で一体化するものである。
【0064】
なお、ベースサポートBSの外径寸法は、一例として
図8に併せ示すように、サブサポートSSよりも一回り大きく形成されており、これはサブサポートSSのみがメッシュフィルタMFのフィルタ本体部MF1の収容空間(段差)に収められるためである。すなわちベースサポートBSは、積層状態(一体化状態)では、その外周縁をメッシュフィルタMFの鍔部MF2に重ね合わせるように設けられ、フィルタ本体部MF1の収容空間に収められた穿孔フィルタEFとサブサポートSSを強固に挟み込む(押さ込む)ように保持している。
またベースサポートBSにおいて鍔部MF2と重ね合わされる外周縁には、周方向の長孔BS1が複数、等配状に形成されており、これもメッシュフィルタMF、穿孔フィルタEF、サブサポートSS、ベースサポートBSを強固に一体化するためである。すなわち、この長孔BS1は、一例として
図8の断面図に示すように、メッシュフィルタMFの円孔MF3と連通するように形成され、これにより樹脂(食品用樹脂)PLが、メッシュフィルタMF及びベースサポートBS(鍔部MF2)の外周縁を挟み込むだけでなく、上記円孔MF3と長孔BS1の連通部分では、樹脂PLが両方の孔を上下方向に貫通して、より強固に一体化を図るものである。
【0065】
次に注出部3について説明する。
注出部3は、上述したように、シリンダ本体13内で抽出したコーヒー液を、最終的にカップCに注ぎ込む部位であり、ノズル31を主要部材とする。
なお、
図1等では、上記注出部3が構成されるベンドステージ41を大気開放状態で図示しているが、当該ベンドステージ41には、適宜、開閉扉などを設け、区画された室内として形成することが可能である。
【0066】
本発明のコーヒーマシンAは、以上のような基本構造を有するものであり、以下、本コーヒーマシンAを適用して、本格的なドリップコーヒーを抽出する態様について説明する。
(1)抽出シリンダの初期状態
まず抽出シリンダ11の初期状態について説明する。
抽出シリンダ11は、一例として
図10(a)に示すように、シリンダ本体13の上部開口が上部ピストン14で閉鎖されない初期位置で待機する。この初期位置は、例えばシリンダ本体13の上部を、上部ピストン14と下部ピストン15とのほぼ中間に位置させた状態であり、これによりシリンダ本体13の上部開口が開放され、ここからコーヒー粉Wの投入が可能となっている。
【0067】
(2)コーヒー粉の投入
次いで、このような状態のシリンダ本体13内にコーヒー粉Wを投入するものであり、これには、まず適宜のコーヒー豆をホッパー51からグラインダ52に適量供給し、ここで挽かれたコーヒー粉Wを、漏斗状のガイド53及びシュート54を介してシリンダ本体13内に投入する(例えば
図3参照)。なお、投入時には、一例として
図10(b)に示すように、シュート54の投入先端がシリンダ本体13の上部開口に臨んだ状態となり、コーヒー粉Wは、シュート54を滑落しながらシリンダ本体13内に投入されるものである。
また、シリンダ本体13の上方には、上述したように筒状のスクレイパ61が設けられており、シュート54を通過したコーヒー粉Wは、このスクレイパ61の上方からシリンダ本体13内に投入されるため、スクレイパ61がコーヒー粉Wの投入時の飛散を防止する作用を兼ねるものである。
【0068】
(3)シリンダ本体の上昇(上死点)
その後、一例として
図10(c)に示すように、シリンダ本体13を上昇させ、このものの上部開口が上部ピストン14で閉鎖されるようにする。ここで上部ピストン14によるシリンダ本体13の閉鎖は、必ずしも抽出空間となるシリンダ本体13内を強固に密閉する必要はなく、シリンダ本体13の上部開口からエアが抜け出るような閉鎖でも構わない。しかしながら、このような状態に閉鎖した場合には、後述の注湯段階までに、再度、シリンダ本体13を上昇させ、シリンダ本体13内を密閉(エア抜けがない程度に密閉)することが好ましい。
なお、シリンダ本体13の上昇に伴いスクレイパ61も上昇するものであり、この際、迫り出し部69がシュート54の投入先端部(側面視円形部)に当接するように設定しておけば、スクレイパ61の迫り出し部69でシュート54をシリンダ本体13から退去させることができる(回転移動させることができる)。これにより事後、シリンダ本体13内に給湯する際、シュート54に蒸気が掛かりにくくなり(接触しづらくなり)、シュート54へのコーヒー粉Wの固着を防ぐことができる。また、このためコーヒー粉Wの確実な投入が長期にわたって維持でき、コーヒー粉Wの固着を解消するメンテナンスもなくすことができる。
【0069】
(4)1回目注湯(蒸らし用)
その後、
図7中の湯供給バルブV1オンで、一例として
図10(d)に示すように、上部ピストン14のシャワープレート142から散湯し、シリンダ本体13内のコーヒー粉Wを蒸らすものである。なお、この給湯時には、
図7中のエア開放バルブV2を開放(オン)してエア抜きすることで、シリンダ本体13内への給湯がスムーズに行えるものである。
また、シリンダ本体13内に供給される湯の温度は、一例として90±2℃であり、またその注湯量は約30〜100ccであり、この注湯量は流量計(フローメータ)23で計測した後、自動的に注湯を停止するものである(つまり湯供給バルブV1オフ)。
また、注湯停止後は、5〜10秒ほどの時間を掛けてコーヒー粉Wを蒸らすものである。
更に、注湯時には、上述したようにシュート54がシリンダ本体13(抽出空間)から退去しているため、シュート54に蒸気が掛かりにくくなり、シュート54にコーヒー粉Wが固着することを防止できるものである。
【0070】
(5)2回目注湯(抽出用)
このようにしてコーヒー粉Wを蒸らした後、再度、
図7中の湯供給バルブV1を開放して(オン)、一例として
図10(e)に示すように、上部ピストン14のシャワープレート142からシリンダ本体13内にコーヒー液抽出用の湯を供給する。もちろん、ここでも給湯の際にはエア開放バルブV2を開放(オン)してエア抜きすることで、シリンダ本体13内への給湯がスムーズに行えるものである。
また、本工程での注湯は、連続で160〜180ccに達するまで行われ、規定量の注湯を流量計23で計測したら、自動的に注湯を終了するものである(湯供給バルブV1オフ・エア開放バルブV2オフ)。
【0071】
(6)撹拌
また、本実施例では、注湯途中から上記
図10(e)に併せ示すように、
図7中のエアポンプM4オンで、下部ピストン15(フィルタ152)からエアをシリンダ本体13内に供給し、コーヒー粉Wと湯を充分に撹拌するものである。因みに、エアポンプM4からのエアの送り込みはタイムアップで自動的に停止させるものである。
なお、この撹拌によってシリンダ本体13内に送り込まれたエアは、特殊四層フィルタ152を通って、コーヒー粉Wからコーヒーのエキスが抽出されている液中に供給される。この際、エアは穿孔フィルタEFやメッシュフィルタMFに開口された細かい通過孔hを通過することで微小泡(ナノバブル)となり、このことでエキスの抽出が満遍なく行われ、結果、従来にないおいしい(従来にない高いブリックス値の)コーヒー液が抽出できる。
【0072】
(7)撹拌の効果(層に分離)
そして、このようなエア撹拌によってシリンダ本体13内のコーヒー粉W(液中に存在するコーヒー粉W)は、一例として
図10(f)に示すように、粒の大きいもの(重いもの)が底に位置し、且つ小さいもの(軽いもの)が上に位置し、全体として層を作ることになり、これがあたかも濾過機構の作用を担い、微粉の混ざらないコーヒー液を抽出することができる。
【0073】
(8)コーヒー液の抽出(エア押し出し)
その後、シリンダ本体13内で抽出したコーヒー液をノズル31に送り出すには、上記
図10(f)に併せ示すように、上部ピストン14からシリンダ本体13内に加圧エアを供給し(
図7中のエアポンプM2オン・エア開放バルブV2オフ)、コーヒー液のノズル31への送りを促進させることが好ましい(抽出時間の短縮化)。なお、シリンダ本体13内で抽出されたコーヒー液は、下部ピストン15(フィルタ152)から抽出経路L4を通ってノズル31に送られ、ここからカップCに注ぎ入れられる。
なお、抽出の終盤ではコーヒー液に雑味成分が多く混じるが、本実施例では、このような雑味成分の多い残液は、コーヒーカスW1に含ませたまま、コーヒーカスW1とともにカスボックス43に投入するものであり、抽出経路L4には送らないものである(ノズル31から流出させないものである)。
また、抽出後のコーヒーカスW1は、
図10(g)に示すように、下部ピストン15のフィルタ152上に残留する。
【0074】
(9)シリンダ本体の下降(下死点)
この後、
図10(h)に示すように、カス払い出し位置(下死点)までシリンダ本体13を下降させる。この際、シリンダ内壁面に付着したコーヒーカスW1を下部ピストン15の外周当たり面がこすり取って行くような状況になる。このため下部ピストン15には、カス付着のバラツキによって偏心させようとする抵抗力が作用するが、本実施例では下部ピストン15が、左右方向リンクバー17と上下方向リンクバー18とにより前後・左右の二方向に揺動自在に支持されているため、下部ピストン15は無理なく力のバランスを保つことができ、ピストン外周部に嵌められたOリング151の損傷を防ぐことができる。
【0075】
(10)カス払い出し
なおシリンダ本体13及びスクレイパ61が下死点まで下降したことはセンサLSで検知する(
図4参照)。
そして、このような下死点検知により、カムリンク機構6のカス払い出しモータM3を作動させると、
図10(i)に示すように、スクレイパ61(払い出し作用部610)が前方側に移動し(水平の往復動を行い)、下部ピストン15(フィルタ152)上のコーヒーカスW1がカスボックス43内に落下・投入される。
なお、本実施例では、上述したように抽出の終盤で生じる雑味成分の多い残液は、コーヒーカスW1に含ませたまま、コーヒーカスW1とともにカスボックス43に投入するものである。
因みに、ドレンボックス43は、コーヒー液が誤ってカップCに注がれなかった場合に、これを受けるためである。また抽出経路L4を洗浄する際には、通常ノズル31の下方に洗浄液(洗浄済みの洗浄液)を受ける容器を載置するが、これが誤って載置されない場合に備えて、ドレンボックス43に洗浄液が収容できるようにしている。
また、コーヒーカスW1を払い出した後のスクレイパ61は、当然ながら
図10(j)に示すように、カムリンク機構6によりシリンダ本体13上部に戻るものである。
【0076】
(11)シリンダ本体の上昇(初期位置への戻り)
このようにしてコーヒーカスW1を払い出した後、シリンダ本体13及びスクレイパ61が、
図10(a)に示すように、初期位置まで上昇し(戻り)、次回の抽出に備えて待機する(待機状態となる)。
【0077】
以上述べたように、本実施例では、微粉の混入を防止した本格的なドリップコーヒーが自動抽出できるものである。因みに、微粉の混入を防止するだけであれば、ペーパーフィルタを用いてもよいが、その場合にはフィルタの素材である紙、例えばリグニン等の異物の匂いや味がコーヒー液に生じてしまうため、ペーパーフィルタを敬遠する人もいるほどである。もちろん、金属フィルタ自体は従来から存在しているが、従来の金属フィルタは、パンチングで通過孔を開口するため、目開きが比較的大きく、微粉の混入は避けられなかった。
またペーパーフィルタでは、金属フィルタのように繰り返し使用することができず、抽出の都度、フィルタの交換・廃棄を要する点が問題であった。もちろん、金属フィルタであれば、上述したように、うま味成分であるコーヒー豆のオイルを充分にドリップ抽出することができるものである(紙や布製のフィルタを使った従来のドリップ抽出に比べて)。
このように、本実施例では、金属フィルタを用いながらも、微粉の混入を防止し、本格的なドリップコーヒーを抽出できるものである。