【実施例1】
【0020】
本発明に係る外壁通気工法用ラス10は、
図1、
図2に示したように、モルタル塗着作業に先立って下地材(図示例では、通気胴縁4、補助胴縁5)に張設されるものであり、ラス材1に、裏打ち材として樹脂製のメッシュシート2が溶着手段3により取り付けられてなることを特徴とする。
以下、前記外壁通気工法用ラス10の構成要素であるラス材1、樹脂製のメッシュシート2、及び溶着手段3について具体的に説明する。
【0021】
(ラス材1についての説明)
前記ラス材1は、例えば、ワイヤーメッシュ(溶接金網)、エキスパンドメタル、リブラス等、種々のラス材で実施できるが、本実施例では、製作精度が高いワイヤーメッシュを基本構造とするラス材1を採用した。ただし、エキスパンドメタル、リブラス等、種々のラス材でも同様に実施できる。
本実施例1に係るラス材1は、縦線材11と横線材12とが各交点をスポット溶接により接合して方眼形状の格子状に形成され、一定本数(本実施例では一例として9本)置きの線材には、他の線材よりも太径の縦力骨21および横力骨22が用いられた構成で実施されている。前記一定本数置きに力骨21、22を用いたのは、ラス材1自体の形状を保持するためである。ひいては、剛性が高いモルタル壁を構築するためでもある。本実施例では9本置きに力骨21、22を配設しているがこれに限定されず、所望の剛性や胴縁等の柱材の配置間隔(例えば、
図1Bに示すように、胴縁4、5の軸心(又は罫書き)に沿って縦力骨21を配置させる。)等の構造設計に応じて適宜設計変更可能である。
【0022】
ちなみに、本実施例にかかる縦横の線材11、12(力骨21、22含む。)のピッチは、一例として、ともに15.1mmに設定され、尺モジュール又はメーターモジュールに対応した設計で実施されている。
また、線材11、12の径は、一例として0.8mm程度、力骨21、22の径は、一例として1.6mm程度で実施している。さらに、ラス材1全体のサイズは、一例として縦寸が965mm程度、横寸が1875mm程度で実施している。
【0023】
(樹脂製のメッシュシート2についての説明)
本実施例では、フィルムを割繊して交差して得られたメッシュシート、具体的には、ポリプロピレンやポリエチレンなどの延伸フィルムから造った割繊網状体を縦横に連続的に積層・熱融着してなる樹脂製のメッシュシート2で実施している。
前記樹脂製のメッシュシート2には、剛性、目合い、又は層数等による厚みの違いに応じて多数のバリエーションがあるが、その中でも剛性が高く、目合いが細かいものが好ましい。厚みについては特に優劣はないが、厚ければ、前記ラス材1との直付けが可能となる利点があり、透視性を有するほどに薄ければ、下地材はもとより下地材に記した罫書きも視認できる等、当該ラス10を下地材に貼り付ける際の作業性が向上する利点がある。
【0024】
具体的に、前記樹脂製のメッシュシート2の目合いは、5mm以下、すなわちモルタル壁を構築するために塗るモルタルの余剰水(水分)やセメントノロの染み出しは許容するが、骨材(砂利、膨張したパーライト等)は通過させない構造で実施される。
このような構成の樹脂製のメッシュシート2で実施する意義は、網状に編まれているのでモルタルののりが非常によい上に、余剰水やセメントノロが、裏打ち材(樹脂製のメッシュシート2)の裏側に形成した通気層6側へ経時的にほどよく染み出すことにより、通気層6側からも表面7側と同じく乾燥されるので、モルタルが早期に乾燥するだけでなく、クラック防止効果が期待できるからである。一方、骨材を通過させない構造としたのは、いうまでもなく、モルタル外壁の剛性低下(品質低下)を防止するためである。
樹脂製のメッシュシート2の素材を形成する糸は、複数本の糸を寄せ集めて束状にしたもの(束ねて織られたもの)が好ましい。束状にしていないものと比し、より骨材が通過しにくくなるし、ステープル等の留め付け具を取り付ける際に貫通させた孔も広がり難くなるからである。
【0025】
参考までに、
図4に、前記外壁通気工法用ラス10の部分的な写真を例示する。この
図4によると、前記樹脂製のメッシュシート2について、目合いが5mm以下であること、網状に編まれていること、また、複数の糸を束ねて織られていることを視認することができる。
【0026】
(溶着手段3についての説明)
前記ラス材1と裏打ち材(樹脂製のメッシュシート)2とは、溶着手段(本実施例では熱溶着)3により取り付けられている。
接着剤等による接着手段を採用しない理由は、防水紙と異なり、樹脂製のメッシュシート2では良好な接着状態を保持できないからである。また、糸等による縫着手段を採用しない理由は、縫針がラス材1と接触して破損等する虞があり、高い製作精度のラス材1が要求されるからである。縫着によるラス材1全体の反りを防止する工夫も必要となるからである。
【0027】
具体的に、本実施例1にかかる裏打ち材(樹脂製のメッシュシート)2は、
図2に示したように、ラス材1を構成する縦線材11(縦力骨21を含む。)と直交する方向に設けた当て材8とで当該縦線材11を挟持し、前記縦線材11を避けた部位(図中の○印)で前記当て材8と溶着3することによりラス材1に取り付けられている。
前記当て材8は、帯状に形成され、前記裏打ち材2と断続的に(図示例では、75.5mm程度のピッチで)溶着されている。
前記当て材8は、ラス材1を構成する線材(横線材12)の配置間隔よりも小さい幅寸(6mm程度)で実施されている。
【0028】
なお、前記当て材8を前記縦線材11と直交する方向、すなわち横線材12と同じ横方向に設けた意義は、縦方向に設けて実施することもできるが、横方向に設けた方が、ラス材1の製造機械のライン方向に沿うので、効率的かつ経済的にラス材1、ひいては外壁通気工法用ラス10を製作できるからである。
また、前記当て材8は、横力骨22と等ピッチで該横力骨22の直下位置(又は直上位置)に沿って設けてい
る。
【0029】
前記当て材8を帯状に形成するのはラス材1と裏打ち材2とを一体化する上で必然的要件であるが、必ずしもラス材1の全長にわたり連続的に設ける必要はない。ラス材1に裏打ち材2を取り付けるだけなら溶着手段3を2箇所で行えば足りるからである。ただし、本実施例にかかる当て材8は、やはり外壁通気工法用ラス10を効率よく製造するためにラス材1の全長にわたり連続的に設けて実施している。
また、前記当て材8に対し、前記溶着手段3を断続的に設けたのは、当て材8の裏面側にモルタルが回り込むスペースを適度に確保するためである。当て材8の裏面側にモルタルが回り込むことにより、適正なかぶり(被り)を出し、ひいてはモルタル外壁の強度・剛性等の品質向上を図ることができる。なお、溶着ピッチは75.5mm程度に限定されず、151mm程度でもよい。要するに、適正なかぶりを出し、モルタル外壁の強度等に悪影響が及ばないことを条件に適宜設計変更可能である。
【0030】
前記当て材8の幅寸を横線材12の配置間隔よりも小さい6mm程度で実施するのは、隣接する横線材12(図示例では横線材12と横力骨22)に跨がらないようにする等、やはり当該ラス10を効率よく製造するためである。また、溶着手段3を精度良く行うためでもある。
【0031】
なお、本実施例では、熱溶着手段3を採用しているが、これに限定されず、超音波溶着手段でも、高周波溶着手段でも同様に実施できる。要するに、溶着手段3の選定は、被加熱物の種類、形状(厚さ、大きさ)、溶着形状等に応じて適宜決定される。
本実施例にかかる当て材8は、熱融着点が同じで相性が良いという理由から、裏打ち材2と同素材で実施しているが、これに限定されず、例えばPPバンドでも好適に実施できる。
【0032】
したがって、上記構成の外壁通気工法用ラス10によれば、裏打ち材2に上述した樹脂製のメッシュシート2を用いて実施するので、モルタルののりが非常によい上に、当該ラス10へモルタルを下塗りした後、余剰水(水分)やセメントノロが裏打ち材2の裏側に形成した通気層6側へ経時的に染み出すことにより、通気層6側からも表面7側と同じく乾燥され、モルタルが早期に乾燥するだけでなく、クラック防止効果も期待できる。加えて、帯状の当て材8に適正なピッチで溶着手段3を実施するので、モルタルが当て材8の裏面側にほどよく回り込むことができ、付着強度が高い高強度・高剛性・高品質のモルタル壁を構築することができる。
また、ラス材1と裏打ち材2を溶着手段3で取り付けて一体化するので、縫着手段よりも自在性に優れ、ラス材1に高い製作精度が要求されない利点がある。縫着手段では懸念されるラス材1全体の反りも、溶着手段3では生じない利点もある。すなわち、溶着手段3によれば、簡易な手段で合理的、経済的に製作でき、良好なモルタル塗り作業を行うことができる外壁通気工法用ラス10を実現できる。
その他、上述した樹脂製のメッシュシート2は、ステープル等の留め付け具を容易に貫通させることができ、かつ、当該貫通孔の亀裂は広がり難いという施工上の利点もある。
[
参考例1]
【実施例2】
【0033】
この
参考例1にかかる外壁通気工法用ラスは、
図1、
図3に示したように、上記実施例1と比し、裏打ち材として樹脂製メッシュシート2よりも硬質の樹脂製シート2’を用いている点が主として相違する。上記実施例1と同一の構成要素は同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0034】
参考例1にかかるラス材1は、上記実施例1と同様のものを用いる(前記段落[00
21]、[0022]参照)。
【0035】
参考例1にかかる樹脂製シート2’は、一例として柔軟性、耐熱性に優れたPPシート(ポリプロピレン樹脂シート)を採用したが、もちろんこれに限定されず、熱可塑性樹脂シート、具体的にはPETシート(ポリエチレンテレフタレート樹脂シート)、A−PETシート(非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂シート)、PSシート(ポリスチレン樹脂シート)、PEシート(ポリエチレン樹脂シート)、PCシート(ポリカーボネート樹脂シート)等でも同様に実施できる。
【0036】
前記ラス材1と裏打ち材(樹脂製シート)2’とは、当て材8(
図2参照)を用いない溶着手段(本実施例では熱溶着)9により取り付けられ一体化されている。
すなわち、上記実施例1にかかる樹脂製のメッシュシート2と比して硬質の樹脂製シートを採用することにより、直付け溶着9が可能となる。
直付けする部位は、当該外壁通気工法用ラス10’の剛性を効率よく高めるべく、横力骨2と所要のピッチ(図示例では、75.5mm程度)で溶着9している。なお、溶着ピッチは上記実施例1と同様に、適正なかぶりを出し、モルタル外壁の強度等に悪影響が及ばないことを条件に適宜設計変更可能である。
なお、本
参考例1では、熱溶着手段9を採用しているが、これに限定されず、超音波溶着手段でも、高周波溶着手段でも同様に実施できる。要するに、溶着手段9の選定は、被加熱物の種類、形状(厚さ、大きさ)、溶着形状等に応じて適宜決定される。
【0037】
したがって、上記構成の外壁通気工法用ラス10’によれば、当て材8を無用化できるので、部材点数が少なくシンプルな工程で製造でき、経済的である。また、熟練工でなくてもスムーズなモルタル塗り作業を実現でき、ひいては付着強度が高い高強度・高剛性・高品質のモルタル壁を構築することができる。
また、上記実施例1と同様に、ラス材1と裏打ち材2を溶着手段9で取り付けて一体化するので、縫着手段よりも自在性に優れ、ラス材1に高い製作精度が要求されない利点がある。縫着手段では懸念されるラス材1全体の反りも、溶着手段9では生じない利点もある。すなわち、溶着手段9によれば、簡易な手段で合理的、経済的に製作でき、良好なモルタル塗り作業を行うことができる外壁通気工法用ラス10’を実現できる。
【0038】
以上、実施例
1を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
例えば、
参考例1にかかる樹脂製シート2’を、実施例1にかかる当て材8を用い、溶着手段3によりラス材1に取り付けて外壁通気工法用ラスを製造することも勿論できる。この場合の説明は重複するので割愛する(前記段落[0026]〜[0031]参照)。