(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705080
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】排熱回収装置
(51)【国際特許分類】
F01N 5/02 20060101AFI20200525BHJP
B63H 21/38 20060101ALI20200525BHJP
B63H 21/32 20060101ALI20200525BHJP
F02G 5/02 20060101ALI20200525BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20200525BHJP
F24H 1/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
F01N5/02 B
B63H21/38 A
B63H21/32 Z
F02G5/02 D
F02G5/02 Z
F01N13/08 B
F24H1/00 631D
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-71403(P2016-71403)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-180382(P2017-180382A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】395008333
【氏名又は名称】株式会社大晃産業
(73)【特許権者】
【識別番号】500067329
【氏名又は名称】三井造船特機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】猪原 祥行
(72)【発明者】
【氏名】藤木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】真山 欣作
(72)【発明者】
【氏名】喜多 宏司
(72)【発明者】
【氏名】川田 剛
(72)【発明者】
【氏名】植木 修次
(72)【発明者】
【氏名】尾野 一義
(72)【発明者】
【氏名】深井 孝一
【審査官】
村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−228269(JP,A)
【文献】
特開2010−229850(JP,A)
【文献】
特開2011−256783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00−99/00
B63H 21/32
F02G 5/02
F24H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスの挿通路に熱交換手段を備えた排気管と、前記排気管に隣接配置される排ガスの迂回流路であるバイパス管とが、導入側排ガス管が接続される分配ケースと、排出側排ガス管が接続される合流ケースとを共有している排熱回収装置であって、
前記バイパス管は、前記排気管の配置方向の厚みを前記導入側排ガス管の半分以下とし、かつ断面積が前記導入側排ガス管の断面積以上に構成し、
前記排気管は、前記導入側排ガス管から流入する排ガスにより生じる圧力損失が前記バイパス管と一致するように構成し、
前記分配ケースには、前記導入側排ガス管から流入する排ガスを、排気管側流路へ導くための排気管開口部と、バイパス管側流路に導くためのバイパス管開口部と、回転軸を基点として前記排気管開口部と前記バイパス管開口部のいずれか一方を閉塞するダンパーが備えられ、前記回転軸は、少なくとも一部が前記導入側排ガス管の中心軸の延長線上に掛かるように配置され、
前記中心軸を基点とした前記排気管開口部と、前記バイパス管開口部の配置角度を近似させていることを特徴とする排熱回収装置。
【請求項2】
前記分配ケースにおける前記排気管側流路には、前記排気管開口部よりも下部側に、液受けが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の排熱回収装置。
【請求項3】
排ガスの挿通路に熱交換手段を備えた排気管と、前記排気管に隣接配置される排ガスの迂回流路であるバイパス管とが、導入側排ガス管が接続される分配ケースと、排出側排ガス管が接続される合流ケースとを共有している排熱回収装置であって、
前記排気管は、前記導入側排ガス管から流入する排ガスにより生じる圧力損失が前記バイパス管と一致するように構成され、
前記分配ケースには、前記導入側排ガス管から流入する排ガスを排気管側流路またはバイパス管側流路のいずれか一方へ導くためのダンパーが備えられ、
前記排気管側流路には、前記分配ケースから前記排気管の入口までの経路に流入した排ガスの流れ方向を変える第1曲部が備えられると共に、前記合流ケースを介した前記排出側排ガス管への流入経路にはストレート構造が適用され、
前記バイパス管側流路には、前記分配ケースから前記バイパス管への流入経路にはストレート構造が適用されると共に、前記バイパス管の出口から前記合流ケースまでの経路に排出した排ガスの流れ方向を変える第2曲部が備えられていることを特徴とする排熱回収装置。
【請求項4】
前記第1曲部に、液受けが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の排熱回収装置。
【請求項5】
前記液受けから前記排気管の入口までの経路に、第1エキスパンションジョイントが配置されていることを特徴とする請求項4に記載の排熱回収装置。
【請求項6】
前記バイパス管には、第2エキスパンションジョイントが配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の排熱回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の機関等から発生する排ガスの熱を回収する装置に係り、特に水管型の排熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の主機関や発電機関の排ガスから熱を回収する装置としては、水管型のものと、煙管型のものが知られている。本発明では、排ガス経路に媒液を挿通させる管路を配置して熱交換を行う水管型の排熱回収装置に関する技術である。
【0003】
水管型の排熱回収装置としては従来、例えば
図6に示すように、排気管2とバイパス管3を備え、排気管2に熱交換手段2aを備えることを基本として構成されていた。このような構成の装置では、機関1から延設されている排ガス管4から、排気管2とバイパス管3に分岐する分岐部に、流路を切り替えるダンパー5が備えられている。
【0004】
水管型の排熱回収装置では、熱交換を行う管路からの液漏れを考慮して、液受けを設ける必要がある。このため、従来は、排ガス管4に対してバイパス管3が延長線上に配置され、排気管2を大きく迂回させる配置構成が採られていた。
【0005】
しかしながら、このような構成の排熱回収装置は、少なくとも迂回流路となる排気管2を現場で据え付ける必要が生じ、工期の短縮が困難であると共に、狭い船内において大きなスペースをとることとなってしまっていた。
【0006】
このような実状に鑑み、特許文献1に開示されているような2重管式の排熱回収装置が提案されている。特許文献1に開示されている排熱回収装置は、
図7に示すように、内筒をバイパス管3とし、内筒と外筒との間を排気管2として、熱交換手段(不図示)を設ける構成を採っており、バイパス管3と排気管2との流路の切り替えをダンパー5により行う構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−61863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に開示されているような構成の排熱回収装置によれば、装置の小型化を図ることができると共に、既存配管の取り回しを殆ど変えずに装置の取り付けを行うことができるため、工期の短縮を図ることもできる。また、工期短縮により工事費用を抑えることも可能となる。
【0009】
しかしながら、2重管構造は、排気管2とバイパス管3が独立化されている装置に比べて構造が複雑化するといった問題がある。また、その構造上、排ガスを排気管2側へ流す際の圧力損失と、バイパス管3側へ流す際の圧力損失の変化を小さくするために、装置内へ排ガスを導入する経路を装置側面に設ける必要がある。このため、既存配管に設置する際、排ガスを導入する排ガス管4の方向を変更することが必要となる。
【0010】
本発明では、上記問題を解決し、小型で、簡易な構造とし、かつ既存配管の一部に対して差し替え交換可能な排熱回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る排熱回収装置は、排ガスの挿通路に熱交換手段を備えた排気管と、前記排気管に隣接配置される排ガスの迂回流路であるバイパス管とが、導入側排ガス管が接続される分配ケースと、排出側排ガス管が接続される合流ケースとを共有している排熱回収装置であって、前記バイパス管は、前記排気管の配置方向の厚みを前記導入側排ガス管の半分以下とし、かつ断面積が前記導入側排ガス管の断面積以上に構成し、前記排気管は、前記導入側排ガス管から流入する排ガスにより生じる圧力損失が前記バイパス管と一致するように構成し、前記分配ケースには、前記導入側排ガス管から流入する排ガスを、排気管側流路へ導くための排気管開口部と、バイパス管側流路に導くためのバイパス管開口部と、回転軸を基点として前記排気管開口部と前記バイパス管開口部のいずれか一方を閉塞するダンパーが備えられ、前記回転軸は、少なくとも一部が前記導入側排ガス管の中心軸の延長線上に掛かるように配置され、前記中心軸を基点とした前記排気管開口部と、前記バイパス管開口部の配置角度を近似させていることを特徴とする。
【0012】
また、上記のような特徴を有する排熱回収装置の前記分配ケースにおける前記排気管側流路には、前記排気管開口部よりも下部側に、液受けが設けられているようにすると良い。このような構成とすることにより、仮に、排気管に設けられた熱交換手段から媒液の漏洩が生じたとしても、媒液が導入側排ガス管に流れ込むことを防止することができる。
【0013】
また、上記目的を達成するための本発明に係る排熱回収装置は、排ガスの挿通路に熱交換手段を備えた排気管と、前記排気管に隣接配置される排ガスの迂回流路であるバイパス管とが、導入側排ガス管が接続される分配ケースと、排出側排ガス管が接続される合流ケースとを共有している排熱回収装置であって、前記排気管は、前記導入側排ガス管から流入する排ガスにより生じる圧力損失が前記バイパス管と一致するように構成され、前記分配ケースには、前記導入側排ガス管から流入する排ガスを排気管側流路またはバイパス管側流路のいずれか一方へ導くためのダンパーが備えられ、前記排気管側流路には、前記分配ケースから前記排気管の入口までの経路に流入した排ガスの流れ方向を変える第1曲部が備えられると共に、前記合流ケースを介した前記排出側排ガス管への流入経路にはストレート構造が適用され、前記バイパス管側流路には、前記分配ケースから前記バイパス管への流入経路にはストレート構造が適用されると共に、前記バイパス管の出口から前記合流ケースまでの経路に排出した排ガスの流れ方向を変える第2曲部が備えられていることを特徴とするものであっても良い。
【0014】
また、上記のような特徴を有する排熱回収装置では、前記第1曲部に、液受けが設けられているように構成することができる。このような構成とすることにより、液受けを分配ケースと別に設けることができる。よって、その容量を増やすことができると共に、ドレンを設けて貯留された液を排出することもできる。
【0015】
また、上記のような特徴を有する排熱回収装置では、前記液受けから前記排気管の入口までの経路に、第1エキスパンションジョイントが配置されていることが望ましい。このような構成とすることにより、構造が複雑となる排気管側流路にも、エキスパンションジョイントを配置することができる。よって、バイパス管側流路のみにエキスパンションジョイントを配置する場合よりも、熱歪みの吸収効果を高めることができる。
【0016】
さらに、上記のような特徴を有する排熱回収装置の前記バイパス管には、第2エキスパンションジョイントが配置されていることが望ましい。このような構成とすることにより、排ガスが流入する流路と流入しない流路との間に生ずる熱歪みを吸収することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
上記のような特徴を有する排熱回収装置によれば、小型で、簡易な構造とし、かつ既存配管の一部に対して差し替え交換可能な排熱回収装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態に係る排熱回収装置の正面視からの透過断面を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る排熱回収装置の左側面視からの透過断面を示す図である。
【
図3】ダンパーによりバイパス管側の流路を閉塞した場合の例を示す図である。
【
図4】ダンパーにより排気管側の流路を閉塞した場合の例を示す図である。
【
図5】第2の実施形態に係る排熱回収装置の正面構成を示す概略図である。
【
図6】排気管とバイパス管を完全別体構造とした従来の排熱回収装置の構成例を示す図である。
【
図7】排気管とバイパス管を2重管構造とした従来の排熱回収装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の排熱回収装置に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、
図1は第1の実施形態に係る排熱回収装置の正面視からの透過断面を示す図であり、
図2は第1の実施形態に係る排熱回収装置の左側面視からの透過断面を示す図である。
【0020】
本実施形態に係る排熱回収装置10は、
図6、
図7に示す従来例と同様に、主機関や発電機関等の駆動機関(機関1)からの排ガスを挿通させる排ガス管4の一部に設けて使用される。よって、以下の説明においては、排熱回収装置10の上流側に位置する排ガス管を導入側排ガス管4aと称し、下流側に位置する排ガス管を排出側排ガス管4bと称することとする。
【0021】
排熱回収装置10は、排気管12と、バイパス管14、分配ケース16、および合流ケース18を基本として構成されている。排気管12は、内部に挿通される排ガスとの間で熱交換を行う媒液を挿通させるための管路である熱交換手段20を備える排ガス流路である。また、バイパス管14は、排気管12を使用しない際に、排ガスを挿通させるための迂回流路である。
【0022】
分配ケース16は、上述した排気管12とバイパス管14の上流側に配置され、導入側排ガス管4aとの接続部を備えるマニホールドである。分配ケース16には、排気管12とバイパス管14とのいずれか一方に排ガスを流入させるための切り替え手段であるダンパー22が備えられている。一方、合流ケース18は、上述した排気管12とバイパス管14の下流側に配置され、排出側排ガス管4bとの接続部を備える流路である。なお、分配ケース16における導入側排ガス管4aとの接続部と、合流ケース18における排出側排ガス管4bとの接続部とを直線上に配置することにより、排熱回収装置10は、既存配管との間での単純な差し替えによる設置が可能となる。
【0023】
このような基本構成を有する排熱回収装置10において、排気管12とバイパス管14は、別体形成された上で、隣接して並列配置されている。排気管12とバイパス管14を別体形成とした上で、いずれか一方の流路にエキスパンションジョイント24を配置することで、熱膨張による排熱回収装置10の歪みを防ぐことができる。なお、
図1に示す形態では、構造が簡単なバイパス管14に、エキスパンションジョイント24を配置している。
【0024】
バイパス管14は、排気管12と並列配置されている方向からの視点(以下、正面視と称す)において、導入側排ガス管4aの延長線上に配置され、その厚みが導入側排ガス管4aの半分以下(導入側排ガス管4aを円筒形とした場合には、半径以下)となるように構成されている。また、バイパス管14は、導入側排ガス管4aから流入した排ガスの圧力損失が極端に大きくならないように、その断面積が導入側排ガス管4aの断面積以上となるように構成されている。このため、バイパス管14は、導入側排ガス管4aと断面形状を異ならせ、必要とされる断面積を確保している。例えば
図1に示す形態では、導入側排ガス管4aの断面形状を円形としていた場合、分配ケース16を介して断面形状を矩形とし、その幅方向長さを長くすることで、流路面積を確保している。
【0025】
ここで、導入側排ガス管4aの断面積(流路面積)をS、直径をDとした場合、厚みをa、幅をbとしたバイパス管14の断面積S´との関係は、数式1が成り立てば良い。
【数1】
ここで、aは、D/2以下である。このため、a=D/2とした場合、数式2が成り立つこととなる。
【数2】
なお、圧力損失を排気効率の許容範囲内とするためには、バイパス管14の断面積S´は、導入側排ガス管4aの断面積Sに対して、5%程度大きくすると良い。なお、排気効率の許容範囲内となる圧力損失とは、例えば通常の排ガス管が延長されている場合と変わらない程度とすれば良い。
【0026】
このような構成とされるバイパス管14に対して排気管12は、導入側排ガス管4aから流入する排ガスにより生じる圧力損失がバイパス管14と一致、あるいは同等となるように、流路面積や内部配管の配置や数量等が定められている。このような構成とすることで、流路切り替えをした際の機関1(
図6、
図7参照)への負荷変動を避けることができる。また、その断面形状は、特に限定するものでは無いが、形状形成の容易性を考慮した場合には、矩形とすることが望ましい。
【0027】
分配ケース16には、ダンパー22の切り替えによって選択的に閉塞される流路の開口部としての、排気管開口部12aを備えた壁面12bとバイパス管開口部14aを備えた壁面14bとが設けられている。2つの壁面12b,14bは、正面視において、導入側排ガス管4aの中心軸を基点とした傾斜角度θ1と傾斜角度θ2が近似、望ましくは一致するように配置されている。ダンパー22は、2つの壁面の交点近傍に、回転軸22aを備え、回動によって排気管開口部12aかバイパス管開口部14aのいずれか一方を閉塞可能に構成されている。さらに、実施形態に係る排熱回収装置10では、正面視において、導入側排ガス管4aの中心軸の延長線上に、ダンパー22の回転軸22aの少なくとも一部が掛かることとなるように構成されている。
【0028】
このような構成とすることで、ダンパー22によって排ガスの流路を切り替えた際、導入側排ガス管4aからの流入角度が近似することとなる。よって、排気管12側流路とバイパス管14側流路とを切り替えた際に生じる圧力損失の差を抑制することができる。
【0029】
また、分配ケース16では、排気管開口部12aから排気管12への接続に至る領域の下部側に、熱交換手段20を構成する配管から媒液が漏洩した際の液溜まりとなる液受け16aが設けられている。液受け16aは、排気管開口部12aを構成する壁面12bを仕切りとして構成されており、漏洩した媒液が導入側排ガス管4aへ流れ込むことを防止している。
【0030】
このような構成の排熱回収装置10では、ダンパー22を
図3に示す位置に配置した場合には、矢印で示したように、導入側排ガス管4aから流入した排ガスが、排気管12側へ流入し、熱交換(排熱回収)が成される。排気管12を通過した排ガスは、合流ケース18を介して排出側排ガス管4bへ流入し、排出されることとなる。
【0031】
一方、排熱回収を行わない時には、ダンパー22が
図4に示す位置に配置される。これにより、導入側排ガス管4aから流入した排ガスは、バイパス管14側へ流入し、合流ケース18を介して排出側排ガス管4bへと流れることとなる。
このような特徴を有する排熱回収装置10は、排気管12とバイパス管14を近接配置して、分配ケース16と合流ケース18により挟み込む形態としたため、排気管12とバイパス管14を完全に別体として配管を配置する従来のものに比べて小型化することができる。また、排気管12とバイパス管14は、近接配置した別体構造とされているため、2重管構造の排熱回収装置に比べて簡易な構造とすることができる。さらに、導入側排ガス管4aとの接続部と、排出側排ガス管4bとの接続部とを直線上に配置することができるため、既存配管の一部との差し替え設置が可能となる。よって、従来に比べて工期を大幅に短縮することができると共に、工事費用も抑制することができる。
【0032】
上記実施形態では、バイパス管14、排気管12共に、その断面形状を矩形とする旨記載した。しかしながら、排気管12やバイパス管14の断面形状は、圧力損失を所定値以下とすることができる断面積(流路面積)を確保することができるものであれば、さらに多くの角部を持つ多角形や、楕円形としても良い。
【0033】
次に、
図5を参照して、第2の実施形態に係る排熱回収装置10Aについて説明する。本実施形態においても、排気管12、やバイパス管14、分配ケース16、および合流ケース18の基本的構成、および機能は、第1の実施形態に係る排熱回収装置10と同様である。よって、その構成を同様とする箇所には、図面に同一符号を付して、詳細な説明は省略することとする。
【0034】
第1の実施形態との相違点としては、分配ケース16の構造や分配ケース16から排気管までの流路構成、および合流ケース18の構造やバイパス管14から合流ケース18までの流路構成である。具体的には、分配ケース16は、その内部にダンパー22のみを備える簡易な構成としている。そして、分配ケースに付帯するように、液受け16aとなるケースを備え、液受け16aに貯留された液を抜くためのドレン16a1を設ける構成としている。ダンパー22は、回転軸22aを基点として回動して液受け16aを介した排気管側流路と、バイパス管側流路のいずれか一方を閉塞し、導入側排ガス管4aから流入した排ガスを閉塞していない流路へ流すようにする役割を担う。
【0035】
本実施形態では、分配ケース16の側方に液受け16aを配置し、この液受け16aを介して排気管12へ導入される構成としている。このため、分配ケース16から排気管12の入口までの流路に曲部(第1の曲部)が設けられることとなる。一方、排気管12から合流ケース18、および排出側排ガス管4bまでの流路は、曲部を持たないストレート構造となるように構成されている。このため、
図5に示す例の場合、導入側排ガス管4aから分配ケース16に流入した排ガスは、90°方向転換されて液受け16a側へ流入する。液受け16a内では、排ガスは、さらに90°、鉛直方向へ方向転換されて排気管12へと流入することとなる。排気管12を通過して熱交換が成された排ガスは、合流ケース18を介して排出側排ガス管へ4bと流れ出る。
【0036】
これに対し、導入側排ガス管4aから分配ケース16を介したバイパス管14への流路は、ストレート構造となるように構成されている。そして、バイパス管14から合流ケース18への流路には、曲部(第2曲部)が設けられる構成とされている。このため、
図5に示す例の場合、導入側排ガス管4aから分配ケース16に流入した排ガスは、ストレートにバイパス管14へと流入する。バイパス管14の出口側では、排ガスは90°方向転換されて合流ケース18へと流入する。合流ケース18へ流れ込んだ排ガスは、さらに90°方向転換して鉛直方向へ向けられ、排出側排ガス管4bへと流れ出る。
【0037】
このように、本実施形態に係る排熱回収装置10Aでは、排気管側流路に排ガスが導入される際には、導入側に曲部が存在することとなり、バイパス管側流路に排ガスが導入される際には、排出側に曲部が存在することとなる。そして、排気管側流路とバイパス管側流路のそれぞれに設けられた曲部(方向転換)の角度がほぼ等しくなるように構成されている。よって、排気管側流路、とバイパス管側流路のどちらに排ガスが導入される場合であっても、流路の形状(曲がり具合)に基づく圧力損失が近似することとなる。
【0038】
また、本実施形態に係る排熱回収装置10Aでは、バイパス管14の他に、液受け16aから排気管12の入口までの流路にも、エキスパンションジョイント26が設けられている。このような構成とすることで、熱膨張による排熱回収装置10Aの歪みを吸収することが可能となる。
【0039】
このような構成の排熱回収装置10Aによれば、上記第1の実施形態に係る排熱回収装置10と同様に、排気管12とバイパス管14を完全に別体として配管を配置する従来のものに比べて小型化することができる。また、排気管12とバイパス管14は、近接配置した別体構造とされているため、2重管構造の排熱回収装置に比べて簡易な構造とすることができる。さらに、既存配管の一部との簡易的な交換設置が可能となる。よって、従来に比べて工期を大幅に短縮することができると共に、工事費用も抑制することができる。
【0040】
また、第1の実施形態に係る排熱回収装置10に比べ、バイパス管の断面形状の変更を行わない分、排熱回収装置10Aを通過する際の圧力損失を小さく抑えることができる。
【符号の説明】
【0041】
1………機関、2………排気管、2a………熱交換手段、3………バイパス管、4………排ガス管、4a………導入側排ガス管、4b………排出側排ガス管、5………ダンパー、10、10A………排熱回収装置、12………排気管、12a………排気管開口部、12b………壁面、14………バイパス管、14a………バイパス管開口部、14b………壁面、16………分配ケース、16a………液受け、16a1………ドレン、18………合流ケース、20………熱交換手段、22………ダンパー、22a………回転軸、24………エキスパンションジョイント、26………エキスパンションジョイント。