特許第6705087号(P6705087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ車体株式会社の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特許6705087フロントサイドドアにおけるディビジョンバーの支持構造
<>
  • 特許6705087-フロントサイドドアにおけるディビジョンバーの支持構造 図000002
  • 特許6705087-フロントサイドドアにおけるディビジョンバーの支持構造 図000003
  • 特許6705087-フロントサイドドアにおけるディビジョンバーの支持構造 図000004
  • 特許6705087-フロントサイドドアにおけるディビジョンバーの支持構造 図000005
  • 特許6705087-フロントサイドドアにおけるディビジョンバーの支持構造 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705087
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】フロントサイドドアにおけるディビジョンバーの支持構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/04 20060101AFI20200525BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   B60J5/04 M
   B60J1/17 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-31002(P2017-31002)
(22)【出願日】2017年2月22日
(65)【公開番号】特開2018-134989(P2018-134989A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 和幸
(72)【発明者】
【氏名】中尾 寿希
(72)【発明者】
【氏名】井上 武
【審査官】 小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−189823(JP,U)
【文献】 特開平06−297949(JP,A)
【文献】 特開平09−175184(JP,A)
【文献】 実開平03−121019(JP,U)
【文献】 特開2016−107895(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1641547(KR,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0013233(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/04
B60J 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両におけるフロントサイドドアの前部に設けられたブラケットと、そのブラケットにより前記フロントサイドドアの前部で上下方向に延びるように支持されて窓ガラスの昇降を案内するディビジョンバーと、を備えるフロントサイドドアにおけるディビジョンバーの支持構造において、
前記フロントサイドドアのインナーパネルの前部であって同インナーパネルの車内側には、前記ブラケットを締結するための締結部と前記インナーパネルに接合されている接合部とを有する補強部材が設けられており、
前記接合部は、前記締結部の周りに位置しており、車幅方向と直交する基準面に対し傾斜する板状に形成されており、
前記インナーパネルにおける前記接合部が接合されている部分は、前記接合部と同様に傾斜している
ことを特徴とするフロントサイドドアにおけるディビジョンバーの支持構造。
【請求項2】
前記接合部は、前記締結部の周りに間隔をおいて少なくとも二つ設けられている請求項1に記載のフロントサイドドアにおけるディビジョンバーの支持構造。
【請求項3】
前記接合部は、前記締結部を挟む両側にそれぞれ設けられている請求項2に記載のフロントサイドドアにおけるディビジョンバーの支持構造。
【請求項4】
前記接合部は、前記締結部よりも前側と後側とにそれぞれ設けられている請求項2に記載のフロントサイドドアにおけるディビジョンバーの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントサイドドアにおけるディビジョンバーの支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両におけるフロントサイドドアの前部には、嵌め込み窓ガラスが設けられているとともに、その嵌め込み窓ガラスの後側に設けられた昇降窓ガラスと同嵌め込み窓ガラスとを仕切るディビジョンバーが設けられている。このディビジョンバーは、昇降窓ガラスの昇降を案内すべくフロントサイドドアの前部で上下方向に延びている。
【0003】
フロントサイドドアは、その前端部で上下方向に延びる回転中心周りに回転することによって開閉される。このため、フロントサイドドアの開閉時にはディビジョンバーに対し昇降窓ガラスの質量に基づく慣性力が作用し、そうした慣性力の作用によってディビジョンバー(昇降窓ガラス)がぐらつくおそれがある。
【0004】
こうしたことを抑制するためには、ディビジョンバーが上下方向に間隔をおいた複数の箇所でフロントサイドドアのインナーパネル上に支持された状態とすることが効果的である。しかし、フロントサイドドアにおけるインナーパネルの前部には、スピーカーが設置されていたり、サイドミラーのワイヤハーネスが通過する貫通穴が形成されたりしている。このため、インナーパネルには上述したディビジョンバーの複数の箇所での支持を実現するためのスペース的な余裕がなく、ディビジョンバーをインナーパネル上の一箇所で強固に支持せざるを得ない。
【0005】
ディビジョンバーをインナーパネル上の一箇所で強固に支持する構造としては、例えば特許文献1に示されている構造を採用することが考えられる。この特許文献1では、図5に示すように、インナーパネル71に対し補強部材72を溶接等により接合し、その補強部材72に対しディビジョンバー73を支持するためのブラケット74をボルト締結するようにしている。上記補強部材72は、インナーパネル71に対し面接触した状態で溶接等によって接合されている取付片(接合部)75と、その取付片75から車内側(図5の左側)に突出した位置にあって上記ブラケット74がボルト締結されている締結部76と、を有している。
【0006】
特許文献1に示されるように、ディビジョンバー73を支持するためのブラケット74をインナーパネル71に接合された補強部材72にボルト締結する場合、その補強部材72を厚肉に形成するなどして強度を高めることにより、ディビジョンバー73をインナーパネル71上の一箇所で強固に支持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016−107895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フロントサイドドアの開閉時、昇降窓ガラスの質量に基づく慣性力がディビジョンバー73に対し図5の左方向に作用すると、ディビジョンバー73を支持するブラケット74及び補強部材72を介して上記慣性力が同補強部材72の取付片75とインナーパネル71との接合部分に伝達される。その結果、上記接合部分にインナーパネル71とほぼ直交する方向であって同パネル71から離れる方向に上記慣性力が作用し、そうした慣性力の作用に伴って取付片(接合部)75のインナーパネル71からの剥離が生じるおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、ディビジョンバーを支持するための補強部材の接合部がインナーパネルから剥離することを抑制できるフロントサイドドアにおけるディビジョンバーの支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するフロントサイドドアにおけるディビジョンバーの支持構造では、車両におけるフロントサイドドアの前部に設けられたブラケットと、そのブラケットによりフロントサイドドアの前部で上下方向に延びるように支持されて窓ガラスの昇降を案内するディビジョンバーと、を備えるフロントサイドドアのインナーパネルの前部であって同インナーパネルの車内側には、上記ブラケットを締結するための締結部と上記インナーパネルに接合されている接合部とを有する補強部材が設けられる。上記接合部は、上記締結部の周りに位置しており、車幅方向と直交する基準面に対し傾斜する板状に形成されている。上記インナーパネルにおける上記接合部が接合されている部分については、上記接合部と同様に傾斜している。
【0011】
上記構成によれば、フロントサイドドアの開閉時、昇降窓ガラスの質量に基づく慣性力がディビジョンバーに対し車内側に向けて作用すると、ディビジョンバーを支持するブラケット及び補強部材を介して上記慣性力がインナーパネルと補強部材の接合部との接合部分に伝達される。この接合部分が受ける上記慣性力については、上記接合部とインナーパネルにおける同接合部に対応する部分とがそれぞれ上述したように傾斜していることから、上記接合部に対し直交する方向に作用する剥離方向成分と、上記接合部に対し平行となる方向に作用する剪断方向成分とに分解することが可能である。そして、インナーパネルと補強部材の接合部との接合部分に関しては、上記剥離方向への力の作用に対する接合強度と比較して、上記剪断方向への力の作用に対する接合強度の方が強くなる傾向がある。従って、上記接合部分が上記慣性力の一部(剪断方向成分)を上記剪断方向に受けることにより、上記接合部分に対し上記慣性力が作用することによる補強部材の接合部の剥離が生じにくくなる。
【0012】
上記接合部は、補強部材における締結部周りに間隔をおいて少なくとも二つ設けられていることが好ましい。
この構成によれば、補強部材をインナーパネルに対しより強固に接合することができる。
【0013】
なお、上記接合部に関しては、補強部材における締結部を挟む両側にそれぞれ設けられているものとしたり、補強部材における締結部よりも前側と後側とにそれぞれ設けられているものとしたりすることが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ディビジョンバーを支持するための補強部材の接合部がインナーパネルから剥離することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ディビジョンバーの支持構造が適用されるフロントサイドドアを示す概略図。
図2図1におけるフロントサイドドアの一点鎖線L1で囲んだ部分を示す拡大図。
図3図2におけるディビジョンバー、ブラケット、リーンフォースメント、及びインナーパネルを、矢印A−A方向から見た状態を示す断面図。
図4図3のリーンフォースメントにおける接合部及びその周辺を示す拡大断面図。
図5】ディビジョンバーをインナーパネル上に支持するための支持構造の従来例を示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、車両のフロントサイドドアにおけるディビジョンバーの支持構造の一実施形態について、図1図4を参照して説明する。
図1に示すように、フロントサイドドア1は、その前端部に設けられた上下一対の回転支持部2によって車両の側部に支持されている。これら回転支持部2は、フロントサイドドア1の前端で上下方向に延びる回転中心CL周りにフロントサイドドア1が回転できるよう同ドア1を支持する。そして、フロントサイドドア1は、上記回転中心CL周りでの回転を通じて開閉される。フロントサイドドア1のインナーパネル3の前部であって、同インナーパネル3の厚さ方向の車内側(図1の紙面と直交する方向の手前側)には、フロントサイドドア1における回転支持部2周りを補強するためのリーンフォースメント4が固定されている。
【0017】
フロントサイドドア1の上部には窓用開口部5が形成されており、フロントサイドドア1の前部には上下方向に延びて窓用開口部5を前後(図1の左右)に分けるディビジョンバー6が設けられている。窓用開口部5におけるディビジョンバー6よりも前側の部分には嵌め込み窓ガラス7が固定されている。一方、窓用開口部5におけるディビジョンバー6よりも後側の部分には昇降窓ガラス8が昇降可能に設けられている。また、窓用開口部5の後端部の下側には、上下方向に延びるとともにディビジョンバー6との間で昇降窓ガラス8を前後に挟むディビジョンバー16が設けられている。これらディビジョンバー6,16は、昇降窓ガラス8の昇降を案内するためのものである。なお、ディビジョンバー16は、その下端部に固定されたブラケット17をインナーパネル3の後部に締結することにより、同インナーパネル3上に支持されている。
【0018】
一方、ディビジョンバー6については、昇降窓ガラス8が窓用開口部5を閉じた状態のもとでのフロントサイドドア1の開閉時、窓用開口部5に対応する部分で昇降窓ガラス8の質量に基づく慣性力を受けるため、そうした慣性力の作用によってぐらつくことがないよう、インナーパネル3上に強固に支持された状態とすることが望まれている。フロントサイドドア1におけるインナーパネル3の前部には、スピーカー9が設置されていたり、サイドミラーのワイヤハーネスが通過する貫通穴10が形成されていたりするため、インナーパネル3上におけるディビジョンバー6を支持できる箇所には限りがある。従って、ディビジョンバー6をインナーパネル3上に強固に支持する構造として、ディビジョンバー6を上下方向に間隔をおいた複数の箇所でインナーパネル3上に支持する構造を採用することは困難であり、ディビジョンバー6をインナーパネル3上の一箇所で強固に支持せざるを得ない。
【0019】
次に、ディビジョンバー6をインナーパネル3上に支持する構造について、詳しく説明する。
図2は、図1のフロントサイドドア1における一点鎖線L1で囲んだ部分を拡大して示している。図2に示されるように、リーンフォースメント4は、ディビジョンバー6の下端部に対応する位置まで延びている。そして、リーンフォースメント4におけるディビジョンバー6の下端部に対応する部分は、インナーパネル3との間を前側から後側に向って、すなわち図2の右から左に向って通過している。ディビジョンバー6の下端部にはブラケット11が固定されており、そのブラケット11をリーンフォースメント4に対し締結することによってディビジョンバー6がブラケット11及びリーンフォースメント4を介してインナーパネル3上に支持されている。
【0020】
リーンフォースメント4におけるディビジョンバー6の下端部に対応する部分は、ブラケット11がボルト締結されている締結部12と、インナーパネル3に対しスポット溶接により接合された部分である接合部13とを有している。なお、リーンフォースメント4は、それら締結部12及び接合部13を有する補強部材としての役割を担っている。そして、上記接合部13は、図2に実線で示すように、上記締結部12の周りに位置しており、同締結部12の周りに間隔をおいて複数(この例では三つ)設けられている。また、三つの接合部13のうち、一つは締結部12よりも前側(図2の右側)に設けられており、残りの二つは締結部12よりも後側(図2の左側)に設けられている。
【0021】
図3は、図2のディビジョンバー6、ブラケット11、リーンフォースメント4、及びインナーパネル3を、矢印A−A方向から見た状態を示している。図3に示されるように、締結部12は、リーンフォースメント4の他の部分よりもインナーパネル3から離れた車内側の位置で、同インナーパネル3に対し平行となる平板状に形成されている。また、リーンフォースメント4は、締結部12よりも前側(図3の右側)に位置する固定部14でインナーパネル3に対し固定されており、且つ、その固定部14と締結部12との間に位置する屈曲部15を有している。この屈曲部15は、インナーパネル3の車内側の面に沿うようにリーンフォースメント4を略90°屈曲させることによって形成されている。
【0022】
リーンフォースメント4においては、締結部12を同リーンフォースメント4の他の部分よりもインナーパネル3から離れた車内側に位置させるため、リーンフォースメント4を車内側にへこませることによって締結部12が形成されている。このように締結部12を形成することにより、リーンフォースメント4における締結部12周りの剛性が高められている。
【0023】
リーンフォースメント4の締結部12周りに位置する上記接合部13(図3には一つのみ図示)は、同締結部12に対し傾斜する板状に形成されている。言い換えれば、上記接合部13は、車幅方向(図3の上下方向)と直交する基準面Fbに対し傾斜する板状に形成されている。これら接合部13の傾斜態様については、締結部12に近づくほど接合部13が車内側(図3の下側)に変位する傾斜態様となっている。また、インナーパネル3における接合部13が接合されている部分については、上記接合部13と同様に傾斜している。
【0024】
ちなみに、接合部13の傾斜角度θ、及び、インナーパネル3における接合部13が接合されている部分の傾斜角度θについては、インナーパネル3における上傾斜角度を有する部分、すなわち接合部13が接合されている部分の形成難易度を許容レベルとしつつ、可能な限り大きい値となるように設定されている。なお、この実施形態では、上記傾斜角度が例えば15°に設定されている。
【0025】
次に、上記ディビジョンバー6の支持構造の作用について説明する。
図4は、図3のリーンフォースメント4における接合部13及びその周辺を拡大して示している。フロントサイドドア1の開閉時、昇降窓ガラス8の質量に基づく慣性力がディビジョンバー6に対し車内側に向けて作用すると、ディビジョンバー6を支持するブラケット11及びリーンフォースメント4を介して上記慣性力がインナーパネル3とリーンフォースメントの接合部13との接合部分に伝達される。
【0026】
この接合部分が受ける慣性力Fについては、上記接合部13とインナーパネル3における同接合部13に対応する部分とがそれぞれ上述したように傾斜していることから、上記接合部13に対し直交する方向に作用する剥離方向成分F1と、上記接合部13に対し平行となる方向に作用する剪断方向成分F2とに分解することが可能である。
【0027】
そして、インナーパネル3とリーンフォースメント4の接合部13との接合部分については、上記剥離方向への力の作用に対する接合強度と比較して、上記剪断方向への力の作用に対する接合強度の方が強くなる傾向がある。従って、上記接合部分が上記慣性力Fの一部(剪断方向成分F2)を上記剪断方向に受けることにより、上記接合部分に対し上記慣性力Fが作用することによるリーンフォースメント4の接合部13のインナーパネル3からの剥離が生じにくくなる。
【0028】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)ディビジョンバー6をインナーパネル3上に支持するためのリーンフォースメント4において、インナーパネル3に対し接合されている接合部13が同インナーパネル3から剥離することを抑制できる。
【0029】
(2)フロントサイドドア1のインナーパネル3においては、その肉厚が例えば0.75mmといった比較的薄い値とされる関係から、ディビジョンバー6(ブラケット11)を直接的に支持するような場合には、その支持を強固なものとするために同支持を行う部分(座部)の剛性を高めることが好ましい。しかし、上記座部の剛性を高めるためにインナーパネル3をへこませて上記座部を形成するなどの対策を実施しようとすると、インナーパネル3の形成難易度があがって製造に手間がかかる。
【0030】
このことを考慮して、インナーパネル3とは別体のリーンフォースメント4に、ディビジョンバー6を支持する部分、すなわちブラケット11が締結される締結部12(上記座部に相当)が、上記リーンフォースメント4をへこませることによって形成されている。そして、リーンフォースメント4における上記締結部12周りに位置する接合部13が、インナーパネル3に対し接合されている。
【0031】
インナーパネル3とは別体のリーンフォースメント4については、上記締結部12をへこませて形成するとしても形成難易度があがることはない。そして、上記締結部12が形成されているリーンフォースメント4の接合部13をインナーパネル3に接合することにより、インナーパネル3の形成難易度をあげることなく、インナーパネル3上におけるディビジョンバー6(ブラケット11)を支持する部分の剛性を高めることができる。
【0032】
(3)上記リーンフォースメント4はフロントサイドドア1における回転支持部2周りを補強するための既存の部品であり、そうした既存の部品に締結部12及び接合部13を形成するようにしている。このため、それら締結部12及び接合部13が形成された別の補強部材を新たに設ける必要はなく、フロントサイドドア1の部品点数が増えることを抑制できる。
【0033】
(4)上記接合部13は、リーンフォースメント4における締結部12周りに間隔をおいて複数設けられている。より詳しくは、上記接合部13は、リーンフォースメント4の締結部12よりも前側と後側とにそれぞれ設けられている。この構成により、リーンフォースメント4における締結部12周りをインナーパネル3に対してより強固に接合することができる。
【0034】
(5)リーンフォースメント4は、締結部12よりも前側に位置する固定部14でインナーパネル3に対し固定されており、且つ、その固定部14と締結部12との間に位置する屈曲部15を有している。また、リーンフォースメント4における複数の接合部13のうち、少なくとも一つは締結部12よりも後側に設けられている。このリーンフォースメント4においては、締結部12よりも前側の部分に位置する屈曲部15と、締結部12よりも後側の部分に位置してインナーパネル3に接合される接合部13とにより、必要とされる剛性を確保することが可能となる。従って、リーンフォースメント4の剛性を確保するために接合部13をインナーパネル3に接合する箇所として少なくとも締結部12よりも後側に一箇所あればよくなり、インナーパネル3に対する上記接合部13の接合がリーンフォースメント4の剛性確保にとって効果的なものとなる。
【0035】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・リーンフォースメント4における接合部13の数及び位置を適宜変更してもよい。この場合、リーンフォースメント4における締結部12よりも後側に少なくとも一つの接合部13を設けることが好ましい。また、接合部13の数については、一つまたは二つであってもよいし、四つ以上であってもよい。
【0036】
・リーンフォースメント4において、接合部13が締結部12を挟む両側にそれぞれ設けられていてもよい。この場合、接合部13を図2の実線で示すように設けるだけでなく二点鎖線で示すようにも設けることが考えられる。
【0037】
・リーンフォースメント4に締結部12及び接合部13を形成する代わりに、それら締結部12及び接合部13が形成された補強部材をリーンフォースメント4とは別に設けるようにしてもよい。
【0038】
・接合部13の傾斜角度、及び、インナーパネル3における接合部13が接合されている部分の傾斜角度について、15°という値を例示したが、他の値を採用することも可能である。なお、これら傾斜角度を大きくするほど、インナーパネル3の形成難易度があがるものの、接合部13とインナーパネル3との接合強度を高めることができる。
【0039】
・ディビジョンバー16をディビジョンバー6と同様にインナーパネル3上に支持するようにしてもよい。この場合、インナーパネル3の後部における車内側の部分であってブラケット17との間に、同ブラケット17が締結される締結部と、その締結部の周りに位置してインナーパネル3に対し接合される接合部とを有する補強部材を設ける。そして、上記接合部及びインナーパネル3における上記接合部が接合されている部分を、ブラケット11における接合部13と同様に傾斜させる。
【符号の説明】
【0040】
1…フロントサイドドア、2…回転支持部、3…インナーパネル、4…リーンフォースメント、5…窓用開口部、6…ディビジョンバー、7…嵌め込み窓ガラス、8…昇降窓ガラス、9…スピーカー、10…貫通穴、11…ブラケット、12…締結部、13…接合部、14…固定部、15…屈曲部、16…ディビジョンバ−、17…ブラケット。
図1
図2
図3
図4
図5