特許第6705088号(P6705088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本製紙クレシア株式会社の特許一覧

特許6705088ワイパーディスペンサー用アタッチメント及びワイパーディスペンサー
<>
  • 特許6705088-ワイパーディスペンサー用アタッチメント及びワイパーディスペンサー 図000002
  • 特許6705088-ワイパーディスペンサー用アタッチメント及びワイパーディスペンサー 図000003
  • 特許6705088-ワイパーディスペンサー用アタッチメント及びワイパーディスペンサー 図000004
  • 特許6705088-ワイパーディスペンサー用アタッチメント及びワイパーディスペンサー 図000005
  • 特許6705088-ワイパーディスペンサー用アタッチメント及びワイパーディスペンサー 図000006
  • 特許6705088-ワイパーディスペンサー用アタッチメント及びワイパーディスペンサー 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705088
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ワイパーディスペンサー用アタッチメント及びワイパーディスペンサー
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/08 20060101AFI20200525BHJP
   A47K 7/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   B65D83/08 B
   A47K7/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-147596(P2015-147596)
(22)【出願日】2015年7月27日
(65)【公開番号】特開2017-24782(P2017-24782A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 和雄
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−192962(JP,A)
【文献】 特開2014−129108(JP,A)
【文献】 特表2012−510410(JP,A)
【文献】 特開2003−012052(JP,A)
【文献】 特開2001−161598(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/021583(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/08
A47K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパーディスペンサー用アタッチメントであって、
ポップアップ式に取り出せるように交互に折り畳まれて積層されたウェットワイパーの積層体を収納する収納部と、
前記収納部の上端開口を開閉可能な第1の蓋体と第2の蓋体とを備え、
前記第1の蓋体は、その中央部に凹部を有しており、
取り出し口が、前記凹部の底面に設けられた、
箱状のディスペンサー本体が設けられ、
前記ディスペンサー本体の取り出し口と前記積層体の間に、JIS K7171によって評価される、700MPa以上1000MPa以下の曲げ弾性率を有するアタッチメント本体が配置され、
前記ウェットワイパーが通過可能なワイパー通過部が、前記アタッチメント本体の平面視で直線状の溝が交差して十字状に形成され、前記ワイパー通過部が、2.5cm以上6.0cm以下の開口面積を有することを特徴とするワイパーディスペンサー用アタッチメント。
【請求項2】
前記アタッチメント本体が、1.0mm以上1.3mm以下の厚みを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のワイパーディスペンサー用アタッチメント。
【請求項3】
前記アタッチメント本体が、前記ワイパー通過部が前記取り出し口に合わさるように、前記ディスペンサー本体の内面に取り付けられることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のワイパーディスペンサー用アタッチメント。
【請求項4】
前記アタッチメント本体が、前記ディスペンサー本体の内面積未満の面積を有し、前記積層体に載置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のワイパーディスペンサー用アタッチメント。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載されたワイパーディスペンサー用アタッチメントを備えることを特徴とする箱型ワイパーディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパーディスペンサー用アタッチメント及びワイパーディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不織布で形成されるワイパーに関し、各種の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、不織布で形成されるワイパーと、このワイパーを収納する収納箱とを備えるワイパー包装体が開示される。ワイパーは、収納箱において交互に重ねられ、ポップアップ式に折り畳まれて積層される。このワイパー包装体では、ポップアップ式に折り畳まれた積層体からワイパーを収納箱の取り出し口を通じて一枚ずつ取り出すことができる。
【0004】
ところで、ワイパーの収納には、環境負荷低減や利便性向上の観点から、紙製やフィルム製の収納体の代わりに、剛性があり繰り返し使用可能なワイパーディスペンサーを使用する場合がある。また、衛生性向上の観点から、不織布に薬液を含浸させたウェットワイパーを使用する機会も増えている。このため、近年、ウェットワイパーを収納できるワイパーディスペンサーが要望されている。
【0005】
しかしながら、ウェットワイパーは、その表面が滑らかなため、表面張力によりウェットワイパーの表面同士が密着してしまい、ウェットワイパーを取り出し口から取り出す際、2枚のウェットワイパーが繋がった状態で、取り出されてしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許5598881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ワイパーディスペンサーの取り出し口からウェットワイパーを一枚ずつ分離して取り出すことができるワイパーディスペンサー用アタッチメント及びワイパーディスペンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明は、ワイパーディスペンサー用アタッチメントであって、ポップアップ式に取り出せるように交互に折り畳まれて積層されたウェットワイパーの積層体を収納するディスペンサー本体に設けられ、前記ディスペンサー本体の取り出し口と前記積層体の間に配置されるアタッチメント本体と、前記ウェットワイパーが通過可能な切欠き又は貫通穴によって前記アタッチメント本体に形成され、前記取り出し口の開口面積よりも小さい開口面積を有するワイパー通過部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
(2)本発明は、(1)の構成において、前記ウェットワイパーが、不織布で形成される基材シートと、前記基材シートに含浸され、アルコール濃度が40v/v%以上83v/v%以下の薬液と、を備え、前記ワイパー通過部が、2.5cm以上6.0cm以下の開口面積を有することを特徴とする。
【0010】
(3)本発明は、(1)又は(2)の構成において、前記ワイパー通過部が、前記アタッチメント本体の平面視で十字状に形成されることを特徴とする。
【0011】
(4)本発明は、(1)から(3)のいずれか1つの構成において、前記アタッチメント本体が、700Mpa以上1000Mpa以下の曲げ弾性率を有することを特徴とする。
【0012】
(5)本発明は、(1)から(4)のいずれか1つの構成において、前記アタッチメント本体が、1.0mm以上1.3mm以下の厚みを有することを特徴とする。
【0013】
(6)本発明は、(1)から(5)のいずれか1つの構成において、前記アタッチメント本体が、前記ワイパー通過部が前記取り出し口に合わさるように、前記ディスペンサー本体の内面に取り付けられることを特徴とする。
【0014】
(7)本発明は、(1)から(5)のいずれか1つの構成において、前記アタッチメント本体が、前記ディスペンサー本体の内形に沿った外形を有し、前記積層体に載置されることを特徴とする。
【0015】
(8)本発明は、ワイパーディスペンサーであって、ポップアップ式に取り出せるように交互に折り畳まれて積層されたウェットワイパーの積層体を収納するディスペンサー本体と、前記ディスペンサー本体の内部に設けられる(1)から(7)のいずれか1つのワイパーディスペンサー用アタッチメントと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のワイパーディスペンサー用アタッチメント及びワイパーディスペンサーによれば、ワイパーディスペンサーの取り出し口からウェットワイパーを一枚ずつ分離して取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係るワイパーディスペンサーの斜視図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3】(a)は第1実施形態に係るワイパーディスペンサー用アタッチメントの平面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
図4】第1実施形態に係るワイパーディスペンサーの作用図であり、1番目のウェットワイパーを取り出している状態を示す図である。
図5】第1実施形態に係るワイパーディスペンサーの作用図であり、1番目のウェットワイパーの取り出しが完了した状態を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るワイパーディスペンサーを説明する図であり、図2に対応して描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0019】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係るワイパーディスペンサーを図1図5に基づいて説明する。
【0020】
図1に示すように、ワイパーディスペンサー10は、ウェットワイパー11を収納可能でかつ取り出し口21を有するディスペンサー本体20と、このディスペンサー本体20の内部に設けられ、ワイパー通過部31を有するディスペンサー用アタッチメント30(以下、単に「アタッチメント30」と称する)と、を備える。
【0021】
ディスペンサー本体20は、箱状であり、この例では、一方向に長い直方体状に形成される。ディスペンサー本体20は、ウェットワイパー11を収納する収納部22と、この収納部22の上端開口23を開閉可能な第1の蓋体25とを備える。第1の蓋体25は、上端開口23の奥側の縁に第1のヒンジ部26を介して連結されており、第1のヒンジ部26を中心に回動可能である。また、第1の蓋体25は、その中央部に平面形状が長方形状の凹部27を有しており、取り出し口21は、この凹部27の底面に設けられる。取り出し口21は、第1の蓋体25の長手方向に沿って長い長円状の貫通穴で形成される。
【0022】
さらに、第1の蓋体25の奥側の端部には、凹部27に嵌合可能な第2の蓋体25aが第2のヒンジ部25bを介して連結される。この第2の蓋体25aは、第2のヒンジ部25bを中心に回動可能であり、凹部27に嵌合することで取り出し口21を閉塞する。一方、取り出し口21を開放する際は、使用者は、第2の蓋体25aの手前側の端部に設けられた凸部25cを摘まんで、第2の蓋体25aを上方に回動させることにより、第2の蓋体25aを凹部27から離脱させて取り出し口21を開放する。
【0023】
ディスペンサー本体20は、射出成形などで製造された樹脂成形体であり、繰り返し使用可能な剛性を有する。ディスペンサー本体20の成形材料には、ポリプロピレンなど各種の合成樹脂を用いることができる。
【0024】
ウェットワイパー11は、医療現場、実験室、精密部品工場、食品加工場、給食センター、飲食店などの様々な場所で、機材や備品、容器包装の拭き取りや現場の清掃に使用されるものである。ウェットワイパー11は、不織布で形成される基材シートと、基材シートに含浸される薬液と、を備える。例えば、基材シート100枚当たりに、エタノール濃度が約80%のエタノール水溶液を700ml含浸させることにより、要求される衛生性を備えたウェットワイパー11を得ることができる。また、ウェットワイパー11は、例えば、食品の製造工程において、ウェットワイパー11が食品やその包装体などに混入した際、発見し易いように着色剤を含むものでもよい。
【0025】
基材シートである不織布の種類は格別に限定されるものではなく、例えば、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、アクリル繊維、綿、ウール等を積層し、一体化したものがあげられる。一体化する方法としては、ウォータージェットやニードルパンチを用いる方法等、ワイパーとして使用する際に糸屑等が発生しない程度の強度を保持できる方法であれば限定されない。
【0026】
ウェットワイパー11を着色する着色剤としては、特に限定されず、一般に繊維・紙の着色に用いられる直接染料、カチオン染料、塩基性染料、酸性染料等の染料、天然色素、食用色素、染料ベース、顔料ベースのインキ等をあげることができる。これらの中でも、染着性及び耐候性の観点からは、直接染料、カチオン染料及び顔料ベースのインキが好ましい。色は、赤・青・黄・等特に限定されず、その配合量は色落ちを起こさない程度であれば適宜適当量決めることができる。
【0027】
図2に示すように、各ウェットワイパー11は、ポップアップ式に取り出すことができるように、上下に隣接する他のウェットワイパー11と噛み合うように、交互に折り畳まれて積層された状態で、収納部22に収納される。ディスペンサー本体20においては、多数のウェットワイパー11が積層された積層体13の上端側から、アタッチメント30のワイパー通過部31及び取り出し口21を通じて、ウェットワイパー11が一枚ずつ取り出される。
【0028】
アタッチメント30は、取り出し口21と積層体13の間に配置されるアタッチメント本体32と、ウェットワイパー11が通過可能な切欠き又は貫通穴によってアタッチメント本体32に形成されるワイパー通過部31とを有する。アタッチメント本体32は、断面視において、ワイパー通過部31が取り出し口21の下側に重ね合わさるように、第1の蓋体25の凹部27の内面に取り付けられる。アタッチメント本体32は適度な弾性を有しており、ウェットワイパー11がワイパー通過部31を通過する際に、ウェットワイパー11の引上げ力に応じて柔軟に弾性変形可能である。アタッチメント30を第1の蓋体25の内面に取り付ける手段は任意であるが、例えば、食品衛生法に適合した固定手段(例えば、両面テープなど)を好適に用いることができる。
【0029】
図3(a)及び(b)に示すように、ワイパー通過部31は、取り出し口21の開口面積よりも小さい開口面積を有する。この例では、取り出し口21の開口面積は、薬液が含浸されない、いわゆるドライワイパー用としてディスペンサー本体20を使用した場合に、ドライワイパーの取り出しに適した大きさに設定されており、ワイパー通過部31は、ドライワイパー用として適した取り出し口21より、開口面積が小さくなるように構成されている。
【0030】
また、図3(a)では、ワイパー通過部31の好適な形状の一例として、平面視で十字状に形成されたワイパー通過部31を示している。この例では、ワイパー通過部31は、取り出し口21の長手方向に延在する第1の穴31aと、第1の穴31aと十字をなすように取り出し口21の短手方向に延在する第2の穴31bとで構成される。
【0031】
以上、説明した実施形態の作用・効果について述べる。図4に示すように、取り出し口21から外部に露出した1番目のウェットワイパー11Aが把持されて引き上げられると、1番目のウェットワイパー11Aに続く2番目のウェットワイパー11Bも一緒に取り出し口21から引き上げられる。この際、取り出し口21よりも開口の狭いワイパー通過部31によって、1番目のウェットワイパー11Aの下部及び2番目のウェットワイパー11Bの上部には、引上げ方向とは反対方向に作用する抵抗が生ずる。
【0032】
これにより、図5に示すように、2番目のウェットワイパー11Bはワイパー通過部31を通過する際に受ける抵抗によって、取り出し口21から上部が露出した状態で取り出し口21側に残る。一方、1番目のウェットワイパー11Aは、ワイパー通過部31からの抵抗を受けつつも、最終的には使用者の引上げ力によって取り出し口21から完全に引き上げられる。したがって、第1実施形態に係るワイパーディスペンサー10によれば、基材シートの表面が滑らかで、表面張力によりウェットワイパー11の表面同士が密着し易い場合であっても、2枚のウェットワイパー11が繋がることなく、取り出し口21から、ウェットワイパー11を一枚ずつ分離して取り出すことができる。
【0033】
また、ワイパーディスペンサー10においては、ディスペンサー本体20とは別部品であるアタッチメント30にワイパー通過部31を設けた。
【0034】
これに対し、ワイパー通過部をディスペンサー本体に一体に形成することも考えられるが、この場合、ウェットワイパー11の取り出しに適した仕様(例えば、ワイパー通過部の周囲の弾性率や厚み、ワイパー通過部の形状)を得るためには、ディスペンサー本体自体の形状や材質を変える必要が生じる。これでは、ディスペンサー本体の成形金型まで変更することになってしまい、製造コストが高くなる。
【0035】
この点、ワイパーディスペンサー10では、ディスペンサー本体20とは別部品であるアタッチメント30にワイパー通過部31を設けたので、ウェットワイパー11の取り出しに適した仕様を得るために、ディスペンサー本体20自体の形状や材質を変える必要がない。すなわち、ウェットワイパー11の取り出しに適したアタッチメント30を追加するだけで済むため、ディスペンサー本体20の成形金型を変更する必要がなく、ワイパー通過部をディスペンサー本体に一体に形成する場合に比べ、製造コストを大幅に削減することができる。
【0036】
また、薬液が含浸されないドライワイパー用として、ワイパーディスペンサー10を使用する場合は、アタッチメント30を使用せずにディスペンサー本体20のみを使用すればよい。このように、ウェットワイパー11及びドライワイパーのいずれのワイパーを使用する場合においても、同じディスペンサー本体20を兼用できるため、使い勝手がよく、製品コストを抑えることもできる。
【0037】
ここで、ワイパー通過部31の開口面積の好適な大きさについて述べる。アルコール濃度40v/v%以上83v/v%以下の薬液が基材シートに含浸される場合、ウェットワイパー11を、より良好に一枚ずつ分離して取り出すためには、ワイパー通過部31の開口面積は、2.5cm以上6.0cm以下の範囲から選択することが好適である。例えば、4.06cmなどとすることができる。
【0038】
前記したアルコール濃度の範囲は、一般的な細菌を殺菌することを目的として流通している消毒用アルコールの平均的な濃度を基準としたものである。例えば、60v/v%未満のアルコールを浸含させて使用される場合が多い。このような消毒用アルコール等を薬液として浸含させたウェットワイパー11をワイパーディスペンサー10を用いて使用した場合、ワイパー通過部31の開口面積が2.5cmを下回ると、シートをワイパーディスペンサー10から分離することは可能だが、引き出し時の抵抗が大きく、ウェットワイパー11がワイパー通過部31に引っ掛かることにより、ディスペンサー本体20が持ち上がってしまったり、ウェットワイパー11が破損してしまったりなどの問題が発生する。逆に、ワイパー通過部31の開口面積が6.0cmを上回ると、引き出し時の抵抗があまり発生せず、薬液の浸含により密着したウェットワイパー11同士が分離しずらくなり、ウェットワイパー11が繋がって引き出されるなどの問題が発生する。
【0039】
次に、ワイパー通過部31の好適な形状について述べる。各ウェットワイパー11は、ポップアップ式に取り出すことができるように、上下に隣接する他のウェットワイパー11と噛み合うように、交互に折り畳まれて積層された状態で、収納部22に収納されるため、ディスペンサー本体20においては、多数のウェットワイパー11が積層された積層体13の上端側から、アタッチメント30のワイパー通過部31及び取り出し口21を通じて、ウェットワイパー11が一枚ずつ交互に取り出される。よって、ウェットワイパー11の引出時にワイパー通過部31にストレスが掛かる部分も短手方向に交互に移動する。そのため、ワイパー通過部31の最適な形状としては十字状が最適である。すなわち、前述したように、ワイパー通過部31は、取り出し口21の長手方向に延在する第1の穴31aと、第1の穴31aと十字をなすように取り出し口21の短手方向に延在する第2の穴31bとで構成される。ポップアップでシート1枚を引き出す際、シート中央部は、片方の凹部である第2の穴31bの一方から対向するもう片方の凹部である第2の穴31bの他方に移動する。この時、シート中央部が凹部に入った瞬間にシート・樹脂板間の抵抗が急激に増加するため、手持ちのシートは取出せるが続くシートは樹脂板上に取り残される結果、一枚ずつシートを引き出すことが可能となる。一方、直線状の切込のみでは引出時に狭い空間に過剰にシートが詰まり、シート自体が取出せなくなる。
【0040】
続いて、アタッチメント本体32の弾性率については、曲げ弾性率として700Mpa以上1000Mpa以下(PP。厚さ1.2mmで仮定)の範囲から選択することが好適である。
【0041】
アタッチメント本体32の曲げ弾性率が700Mpaを下回ると、シート抵抗低下でシートが繋がり、1000Mpaを上回ると、取出し口21に掛かるシート抵抗が増加しシートが引っ掛かり、取り出し性が低下する。アタッチメント本体32の材質としてポリプロピレン(PP)が最適である。ポリエチレン(PE)は抵抗が繰り返されることにより変形するため、引出性に影響する。塩化ビニル(PVC)は、硬く表面性も悪くシートの引っ掛かりが発生する。
【0042】
次に、アタッチメント本体32の厚みt(図3(b)参照)については、1.0mm以上1.3mm以下の範囲から選択することが好適である。
【0043】
アタッチメント本体32の厚みが1.0mmを下回ると、シート抵抗低下でシートが繋がり、1.3mmを上回ると、取出し口21に掛かるシート抵抗が増加しシートが引っ掛かり、取り出し性が低下する。
【0044】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るワイパーディスペンサーを図6に基づいて説明する。なお、前述したワイパーディスペンサー10(図2参照)と共通する要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0045】
前述したワイパーディスペンサー10(図2参照)においては、比較的に小さいアタッチメント本体32を第1の蓋体25の内面に取り付けた構成を例示したが、アタッチメント本体の大きさや配置は、適宜変更可能である。
【0046】
例えば、図6に示すように、このワイパーディスペンサー40では、アタッチメント本体52が、ディスペンサー本体20の内形に沿った外形(この例では、収納部22の横断面よりやや小さい長方形)を有する。そして、アタッチメント50は、ウェットワイパー11をワイパー通過部31に通した状態で、落し蓋のように、その自重で積層体13を押さえ付けるようにして積層体13の上面に載置されている。
【0047】
このワイパーディスペンサー40においても、2番目のウェットワイパー11Bはワイパー通過部31を通過する際に受ける抵抗によって取り出し口21側に残り、1番目のウェットワイパー11のみを分離して取り出すことができる。また、ウェットワイパー11及びドライワイパーのいずれを使用する場合においても、同じディスペンサー本体20を兼用することができる。
【0048】
さらに、アタッチメント50がその自重で積層体13を押さえ付けることにより、ウェットワイパー11の浮き上がりを防止して、2番目のウェットワイパー11を取り出し口21側に、より確実に残すことができる。これにより、ウェットワイパー11を、より円滑に一枚ずつ取り出すことができる。加えて、アタッチメント50が積層体13の上面全体を覆うため、積層体13中の薬液の揮発を抑制することもできる。これにより、ウェットワイパー11の品質をより長い期間、保持することができる。
【0049】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またそのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0050】
10…ワイパーディスペンサー
11…ウェットワイパー
12…基材シート
13…積層体
20…ディスペンサー本体
21…取り出し口
30…アタッチメント
31…ワイパー通過部
32…アタッチメント本体
40…ワイパーディスペンサー
50…アタッチメント
52…アタッチメント本体
t…アタッチメント本体の厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6