(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本明細書の実施形態においては、全体を通じて、同一の部材には同一の符号を付している。また、前後は、容器本体の開口側と背面側とを結ぶ方向を指し、左右は、容器本体の開口側から見た状態を指すものとする。
【0016】
基板収納容器1について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る基板収納容器1を示す斜視図である。
図1に示される基板収納容器1は、図示されない複数の基板、例えば、直径450mmのウェハなどを収納可能なものであり、容器本体2と、蓋体3とを備える。ただし、基板収納容器1は、基板を直接収納するのではなく、基板を収納したキャリアを収納するものであってもよい。
【0017】
容器本体2は、蓋体3により覆われる前面の開口(図示なし)と、天井面2aと、背面(図示なし)と、左右の側面2cと、底面(図示なし)とを有する略立方体のもので、いわゆるフロントオープンボックスタイプのものである。この開口は、後述する蓋体3により覆われる。
【0018】
蓋体3について説明する。
図2は、蓋体3を示す説明図であり、(a)が正面図、(b)が側面図、(c)が底面図である。
図2(a)に示される蓋体3は、容器本体2の開口をシール可能な外形形状及び寸法で形成されるもので、開口(図示なし)を有する筐体3aと、筐体3aの開口を覆うカバープレート3bと、ラッチ機構3cとを有する。
【0019】
筐体3aは、一方に開口を有し、他方が容器本体2の開口と対向する略直方体の箱状である。筐体3aの側壁には、
図2(b),(c)に示されるように容器本体2の開口の周縁との間に挟み込まれるガスケット3dが設けられている。
【0020】
カバープレート3bは、筐体3aの開口を覆うものであり、ネジなどで筐体3aに固定される。
【0021】
ラッチ機構3cは、出没することで、蓋体3を容器本体2に係止可能するもので、筐体3a内部に配置される。本実施形態では、ラッチ機構3cは、上下の2辺にそれぞれ2箇所設けられる。
【0022】
ところで、本実施形態の蓋体3には、基板収納容器1の内部空間と外部空間とを連通し、かつ、挿入部材5を挿入可能な貫通穴30と、挿入部材5を保持する保持部4と、が形成されている(
図2参照)。ただし、基板収納容器1の内部空間と外部空間とを連通する貫通穴30は、容器本体2に貫通穴20(図示なし)として形成されてもよく、基板収納容器1は、少なくとも1つの貫通穴20,30が形成されるとよい。また、貫通穴20,30は、容器本体2又は蓋体3にそれぞれ2箇所以上に形成されてもよい。
【0023】
図3は、
図2のA−A線で切断した保持部4付近を示す断面図であり、
図4は、
図3の保持部4付近を示す斜視図である。
貫通穴30及び保持部4を説明する前に、挿入部材5について説明する。
【0024】
貫通穴30に挿入される挿入部材5としては、基板収納容器1の内部空間と外部空間との圧力差を調整する内圧調整機構、基板収納容器1の内部空間に気体を供給又は排出する弁機構(例えば、パージバルブ)などが挙げられる。このうち、内圧調整機構は、フィルタなどの微小な穴・空隙を有するもので構成される。本実施形態では、挿入部材5は、フィルタ部材(以下、「フィルタ部材5」という。)とする。
【0025】
図3に示されるフィルタ部材5は、第1の接続部51と、第2の接続部52と、フィルタ54を保持するフィルタ収納部53とを有する。
【0026】
第1の接続部51は、先端に向かって縮径する略円筒状のもので、フィルタ収納部53の一方の面に突設して形成されている。第1の接続部51の先端は、開口されており、フィルタ収納部53の内部に連通している。
【0027】
第2の接続部52は、先端に向かって縮径する略円筒状のもので、フィルタ収納部53の他方の面に突設して形成されている。第2の接続部52の先端は、フランジが形成されており、フランジの中心が開口されて、フィルタ収納部53の内部に連通している。
【0028】
フィルタ収納部53は、略円板状のもので、1又は複数枚のフィルタ54を保持するように、内部が中空に形成されている。
【0029】
フィルタ54は、四フッ化エチレン、ポリエステル繊維、多孔質フッ素膜又はガラス繊維などからなる分子ろ過フィルタ、あるいは活性炭素繊維などのろ材に化学吸着剤を担時させたケミカルフィルタが使用される。また、フィルタ54の表面又は裏面は、ポリプロピレンやポリエチレンなどで形成される格子状の保護部材が設けられている。
【0030】
このように、フィルタ部材5は、フィルタ54を挟んで非対称形状であるが、第1の接続部51の先端開口と第2の接続部52の先端開口は、フィルタ収納部53の内部にそれぞれ連通しているため、フィルタ54を介して、基板収納容器1の外部空間から内部空間に流入する気体をろ過することができる。
【0031】
なお、フィルタ部材5は、フィルタ収納部53の中央付近で分割された2つの部材であらかじめ形成され、相対するフィルタ収納部53間にフィルタ54を収納し、周縁部を溶着や接着することで形成される。このとき、フィルタ54は、異なる性能のものを組合わせて使用することが好ましい。例えば、分子ろ過フィルタとケミカルフィルタとを組合わせることで、基板は、パーティクル汚染のみならず有機ガス汚染からも防止される。
【0032】
つづいて、貫通穴30及び保持部4について説明する。
図3に示される貫通穴30は、第1の貫通穴31と、第2の貫通穴32とで形成されている。
【0033】
第1の貫通穴31は、フィルタ部材5の第1の接続部51を挿入可能な大きさで、筐体3aに設けられる。具体的には、第1の貫通穴31は、カバープレート3bに向かって立設された円筒33の中心に形成されている。この第1の貫通穴31に、フィルタ部材5の第1の接続部51が挿入される。
【0034】
ここで、第1の貫通穴31は、フィルタ部材5の第1の接続部51のみが挿入可能で、第2の接続部52が挿入できない寸法又は形状に形成しておくと、フィルタ部材5の取付け方向を統一することができる。
【0035】
第2の貫通穴32は、第1の貫通穴31に相対し、フィルタ部材5のフィルタ収納部53を挿入可能な大きさで、カバープレート3bに設けられている。具体的には、第2の貫通穴32は、
図4に示されるように筐体3aに向かって延びる周壁42の内周として形成されている。
【0036】
この周壁42は、フィルタ部材5を取付けるときのガイド及び位置決めの役割を果たすもので、保持部4の一部を構成している。周壁42は、筐体3a側に向かって直径が小さくなっており、また、周壁42の一部は、切欠かれている。この切欠かれた部分には、後述する弾性片41が、外方から第2の貫通穴32の内側に向かって伸びている(
図4参照)。
【0037】
一方、
図3に示される保持部4は、周壁42の一部と、弾性片41とで構成されている。弾性片41は、カバープレート3bの所定位置に一端が接続され、他端が自由端となっている。この弾性片41の自由端は、弾性部41aと、係止爪部41bと、被操作部41cとで形成されている。
【0038】
弾性部41aは、カバープレート3b側から筐体3a側に向かって、略U字に形成されている。言い換えると、弾性部41aは、フィルタ部材5の挿入方向と直交する方向以外に延びている。更に言い換えると、弾性片41は、挿入部材5の挿入方向と平行な方向に屈曲されている。このように弾性部41aが形成されることで、弾性片41は、フィルタ部材5の挿入方向と略直交する方向に弾性変形し、変位可能になっている。
【0039】
係止爪部41bは、フィルタ部材5を保持部4に係止固定するもので、筐体3a側よりもカバープレート3b側が、第2の貫通穴32の中心方向に突出している。係止爪部41bは、フィルタ部材5のフィルタ収納部53の外縁を係止する。このため、周壁42と、係止爪部41bとの最大間隔は、フィルタ部材5のフィルタ収納部53の最大直径よりも小さく形成される。
【0040】
被操作部41cは、弾性片41自身をフィルタ部材5の挿入方向と略直交する方向に変位させるもので、作業者の指、ロボットハンド、治具などにより、第2の貫通穴32の外側(弾性片41の一端側)に押圧される。
【0041】
ここで、フィルタ部材(挿入部材)5を蓋体3から取外す取外方法について説明する。
図5は、挿入部材5の取外方法を示す説明図である。
まず、弾性片41の被操作部41cを、カバープレート3bの第2の貫通穴32の外側に押圧することで、弾性片41をフィルタ部材5の挿入(取外)方向と略直交する方向に変位させる。すると、係止爪部41bもフィルタ部材5の挿入(取外)方向と略直交する方向に変位し、係止が解除される。このとき、フィルタ収納部53が取外し可能な位置になるまで、係止爪部41bを変位させるとよい。
【0042】
つづいて、フィルタ部材5の第2の接続部52を指や治具などで保持し引抜くことで、フィルタ部材5の第1の接続部51を、筐体3aの第1の貫通穴31から取外し、更に引抜くことで、フィルタ部材5を第2の貫通穴32から取外す。このとき、フィルタ収納部53が係止爪部41bを超えた時点で、被操作部41cへの押圧を解除してもよい。
【0043】
このように、フィルタ部材5は、蓋体3の貫通穴30から抜出され取外される。これにより、取外しの途中でフィルタ部材5の向きを変更する必要がなくなり、フィルタ部材5の取外しが容易になる。
【0044】
次に、フィルタ部材(挿入部材)5を蓋体3に取付ける取付方法について説明するが、基本的に上述した取外方法と逆の手順で行えばよい。
まず、弾性片41の被操作部41cを、カバープレート3bの第2の貫通穴32の外側に押圧することで、弾性片41をフィルタ部材5の挿入方向と略直交する方向に変位させる。このとき、フィルタ収納部53を取付け可能な位置になるまで、係止爪部41bを変位させる。
【0045】
つづいて、フィルタ部材5の第2の接続部52を保持し、カバープレート3bの第2の貫通穴32に、フィルタ部材5の第1の接続部51を先頭にして挿入する。フィルタ部材5を挿入していくと、フィルタ収納部53が周壁42にガイドされながら、筐体3aの第1の貫通穴31に第1の接続部51が挿入される。フィルタ部材5を更に挿入し、フィルタ収納部53が係止爪部41bを超えた時点で、被操作部41cへの押圧を解除する。
【0046】
被操作部41cへの押圧が解除されると、弾性片41は、第2の貫通穴32の中心方向に変位し、フィルタ収納部53の外縁の一部は、係止爪部41bに係止され、また、フィルタ収納部53の外縁のうち係止されていないその他の部分は、周壁42に保持される。
【0047】
このように、フィルタ部材5は、蓋体3の貫通穴30に挿入され取付けられる。そのため、蓋体3を備える基板収納容器1の外側に突出する部分がなく、搬送中に装置や他の容器と衝突して、フィルタ部材5が外れたり破損したりすることがなく、また、基板収納容器1を梱包しても、梱包袋を破損することがない。
【0048】
ここで、弾性片41の変形例について説明する。
図6は、弾性片41の変形例(a),
(b),(c)を示す断面図である。
図6(a)に示される弾性片41は、弾性部141aが略N字状に形成されているものである。この弾性部141aは、挿入部材5の挿入方向と直交する方向以外に延びており、挿入部材5の挿入方向と平行な方向に2度屈曲されている。これにより、変位量を大きくすることができる。
【0049】
一方、
図6(b)に示される弾性片41は、上記実施形態とは逆に弾性部241aが筐体3a側からカバープレート3b側に向かって、略U字状に形成されているものである。この弾性部241aも、挿入部材5の挿入方向と直交する方向以外に延びており、挿入部材5の挿入方向と平行な方向に屈曲されている。これらの弾性部141a,241aを有する弾性片41であっても、フィルタ部材5を保持部4に保持することができる。
【0050】
また、
図6(c)に示される弾性片41は、少なくとも一対となって、挿入部材5’を保持部4に保持するものである。この場合、弾性片41は、筐体3aの外面などに直接に形成され、挿入部材5’は、筐体3aの外面の凹部又は穴部などの保持部4に保持される。
【0051】
以上のとおり、本発明の実施形態に係る基板収納容器1は、開口を有する容器本体2と、開口をシール可能に覆う蓋体3とを備える基板収納容器1であって、容器本体2又は蓋体3は、基板収納容器1の内部空間と外部空間とを連通し、かつ、挿入部材5を挿入可能な貫通穴20,30と、挿入部材5を保持する保持部4と、が形成され、保持部4は、挿入部材5の挿入方向と直交する方向に変位可能な弾性片41を有する。
【0052】
これにより、保持部4の弾性片41が、挿入部材5の挿入方向と直交する方向に変位するため、挿入部材5の挿入方向を途中で変更する必要がなくなり、挿入部材5の着脱作業性を向上させることができる。また、挿入部材5の着脱作業は、複雑な動作ではないため、挿入部材5の着脱作業を自動化することも可能になる。
【0053】
本実施形態では、保持部4は、挿入部材5の挿入方向と直交する方向以外に延びる弾性部41aを有する。これにより、弾性片41は、小さい力であっても、挿入方向と直交する方向への変位が容易になるし、変位量を大きくすることができる。
【0054】
本実施形態では、弾性片41は、挿入部材5の挿入方向と平行な方向に屈曲されている。これにより、弾性片41は、小さい力であっても、挿入方向と直交する方向への変位が容易になる。
【0055】
本実施形態では、弾性片41の自由端は、挿入部材5を係止固定する係止爪部41bと、弾性片41自身を挿入部材5の挿入方向と直交する方向に変位させる被操作部41cと、を有する。これにより、保持部4は、被操作部41cが挿入部材5の挿入方向と直交する方向に押圧されることで、係止爪部41bが変位し、挿入部材5が係止又は解除されるから、挿入部材5の着脱が可能になる。
【0056】
本実施形態では、挿入部材5は、フィルタ部材である。これにより、基板収納容器1の内部空間と外部空間との圧力差を調整することができる。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。