特許第6705113号(P6705113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705113
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】呼吸用空気監視装置及び監視機器
(51)【国際特許分類】
   B63C 11/20 20060101AFI20200525BHJP
   G08B 21/14 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   B63C11/20
   G08B21/14
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-41699(P2016-41699)
(22)【出願日】2016年3月4日
(65)【公開番号】特開2017-154678(P2017-154678A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】510266882
【氏名又は名称】株式会社近江潜建
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】浅川 久代志
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−067244(JP,A)
【文献】 特開2003−215001(JP,A)
【文献】 特表平09−507184(JP,A)
【文献】 特開昭61−052532(JP,A)
【文献】 特開2002−068081(JP,A)
【文献】 特開2006−198004(JP,A)
【文献】 特開2005−279218(JP,A)
【文献】 特開平05−124580(JP,A)
【文献】 特開2009−059167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/02 − 11/32
G08B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス濃度測定器と、
呼吸器へ呼吸用空気として供給される加圧空気を通過させる管路と、
前記管路から分岐して、前記加圧空気の一部を一次側空気として流入させる分岐路と、
前記分岐路に流入した前記一次側空気を減圧して二次側空気とする圧力調整器と、
前記一次側空気として前記分岐路に流入した前記加圧空気の空気圧を測定する第1圧力センサと、を備え、
前記ガス濃度測定器は、前記二次側空気のガス濃度を測定し、
前記加圧空気の空気圧は前記呼吸器への送気圧であることを特徴とする呼吸用空気監視装置。
【請求項2】
ガス濃度測定器と、
監視機器と、を備え、
前記監視機器は、呼吸用空気としての加圧空気を通過させる管路と、前記管路から分岐して、前記加圧空気の一部を一次側空気として流入させる分岐路と、前記分岐路に流入した前記一次側空気を減圧して大気圧よりも陽圧な二次側空気とする圧力調整器と、前記一次側空気の空気圧を測定する第1圧力センサと、前記二次側空気が供給される空気室と、を備え、
前記空気室は、採集チューブを介して前記ガス濃度測定器に接続され、を備え、
前記空気室には常時開放された排出口が設けられ、
前記空気室に供給された前記二次側空気は、前記排出口から絶えず微量ずつ排出されると共に、前記採集チューブを介して前記ガス濃度測定器へ供給され、
前記ガス濃度測定器は、前記空気室から前記採集チューブを介して供給された前記二次側空気のガス濃度を測定することを特徴とする呼吸用空気監視装置。
【請求項3】
前記圧力調整器により減圧された前記二次側空気のゲージ圧は0.02Mpa〜0.08Mpaであることを特徴とする請求項1又は2に記載の呼吸用空気監視装置。
【請求項4】
前記圧力調整器により減圧された前記二次側空気の空気圧を測定する第2圧力センサを更に備えることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の呼吸用空気監視装置。
【請求項5】
制御手段を更に備え、
前記制御手段は、前記第2圧力センサによる測定値と予め設定されている上限値及び下限値とを比較することによって、前記第2圧力センサによる測定値が正常範囲内にあるか否かを判定することを特徴とする請求項4に記載の呼吸用空気監視装置。
【請求項6】
制御手段を更に備え、
前記制御手段は、前記第1圧力センサによる測定値と予め設定されている上限値及び下限値とを比較することによって、前記第1圧力センサによる測定値が正常範囲内にあるか否かを判定することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の呼吸用空気監視装置。
【請求項7】
ガス濃度測定器と、
呼吸用空気としての加圧空気を通過させる管路と、
前記管路から分岐して、前記加圧空気の一部を一次側空気として流入させる分岐路と、
前記分岐路に流入した前記一次側空気を減圧して二次側空気とする圧力調整器と、
前記一次側空気の空気圧を測定する第1圧力センサと、
前記圧力調整器により減圧された前記二次側空気の空気圧を測定する第2圧力センサと、
を備え、
前記ガス濃度測定器は、前記二次側空気のガス濃度を測定することを特徴とする呼吸用空気監視装置。
【請求項8】
ガス濃度計測器へ供給される被測定空気を製造すると共に、呼吸器へ供給される呼吸用空気の空気圧を監視するための監視機器であって、
前記呼吸用空気としての加圧空気を通過させる管路と、
前記管路から分岐して、前記加圧空気の一部を流入させる分岐路と、
前記分岐路に流入した前記加圧空気の空気圧を測定する圧力センサと、
前記分岐路に流入した前記加圧空気を減圧して前記被測定空気を製造する圧力調整器と、
を備え
前記加圧空気の空気圧は前記呼吸器への送気圧であることを特徴とする監視機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜水士等へ供給する呼吸用空気を監視するための呼吸用空気監視装置及びこれに用いられる監視機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水中で作業を行う潜水業務においては、呼吸用空気を水中の潜水士へ送るための呼吸用空気供給システムが用いられている。このシステムは、空気圧縮機で製造された呼吸用空気(加圧空気)を潜水士が装備する圧力調整器へ送り、圧力調整器により水深にあった環境圧に減圧して潜水士に供給するように構成されている。
【0003】
そして、加圧空気の送気圧は、潜水士が作業する水深の圧力に0.7MPaを加えた値以上であることが要求される。送気圧が低すぎると潜水士に充分な空気が供給されず、呼吸抵抗が増して呼吸困難を引き起こす虞があるためである。
【0004】
加圧空気の送気圧の設定は陸上(又は船上)に設置された圧力調整器で行われることが多いが、圧力調整器で設定できるのは送気圧の最大圧力だけであり、最小圧力を保証するものではなかった。そこで、送気圧が所定圧力まで減少した際に点滅ライトと警報音で周囲に知らせる圧力警報器が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
また、加圧空気を製造する際にエンジンの排気ガスが混入すると、排気ガスに含まれる一酸化炭素により潜水士がガス中毒を起こす虞があることから、加圧空気に含まれる一酸化炭素濃度を検知するためのCO検出警報装置が提案されている。例えば、特許文献1に開示のCO検出警報装置は、密封された空気室に加圧空気の一部を取り込み、圧力調整弁により空気室内の圧力を略大気圧に減圧させ、空気室内に設けられた市販のガス濃度測定器により一酸化炭素濃度を測定するように構成されている。空気室内の圧力を減圧させるのは、加圧空気の空気圧は高すぎて、そのままの圧力では市販のガス濃度測定器による測定ができないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開第2010−67244号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】圧力警報器を紹介する東亜潜水株式会社のWEBページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した圧力調整器では最大圧力を設定できるものの、圧力調整器の故障や設定ミス等により、送気圧が想定されていた最大圧力を超える虞があった。送気圧が最大圧力を超えると潜水士が装備する圧力調整器の故障の原因となるが、従来の圧力警報器は送気圧の減少を検知して報知するものの、送気圧が高くなりすぎた場合に報知するようには構成されていなかった。よって、高くなり過ぎた送気圧に起因する事故の発生を防止するのは難しかった。
【0009】
また、特許文献1に開示のCO検出警報装置では、空気室内の空気は、一定の圧力を超えた場合にのみ圧力調整弁を通じて排出されるため、空気室内の空気の循環に乏しく、加圧空気に高濃度の一酸化炭素(排気ガス)が混入しても、これが検出されるまでにタイムラグが生じて迅速に対応できない虞があった。また、特許文献1ではエンジンの排気ガスに含まれる一酸化炭素のみに着目しており、加圧空気のその他の成分については考慮されていない。
【0010】
エンジンの排気ガスに含まれる一酸化炭素は不完全燃焼によって発生する無色無臭の猛毒性の気体であるから、一酸化炭素濃度に注意を払うことは重要である。しかしながら、この一酸化炭素の発生に加えて、燃焼過程で起きる酸素の減少や二酸化炭素の増大にも着目する必要がある。実際の排気ガスに含まれる気体の多くは無毒の窒素や二酸化炭素であるものの、無毒の気体であっても空気中に含まれる濃度によっては人体に大きな影響を及ぼす危険があるためである。よって、潜水士へ供給する加圧空気においては、一酸化炭素濃度だけでなく、酸素、炭酸ガス、種々の有害ガスの濃度についても監視することが望まれる。
【0011】
実際、高圧室内業務においては、密封された作業室内での作業員の酸素欠乏症及び有害ガス中毒を防止するため、酸素、炭酸ガス、及び有害ガス(一酸化炭素、メタンガス、硫化水素その他炭酸ガス以外のガスであって、爆発、火災その他の危険又は健康障害を生ずるおそれのあるもの)の濃度を測定するための測定器の携行が義務付けられている。潜水業務ではこのような義務づけはされていないが、潜水業務においても高圧室内業務の場合と同様に酸素、炭酸ガス、有害ガスの濃度測定を行うことは、潜水士の安全性を確保するうえで重要である。
【0012】
そこで本発明は、潜水士に供給される呼吸用空気の送気圧やガス濃度を適正に監視できる呼吸用空気監視装置及びこれに用いられる監視機器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の呼吸用空気監視装置は、呼吸器へ呼吸用空気として供給される加圧空気を通過させる管路と、前記管路から分岐して、前記加圧空気の一部を一次側空気として流入させる分岐路と、前記分岐路に流入した前記一次側空気を減圧して二次側空気とする圧力調整器と、前記一次側空気として前記分岐路に流入した前記加圧空気の空気圧を測定する第1圧力センサと、を備え、前記ガス濃度測定器は、前記二次側空気のガス濃度を測定し、前記加圧空気の空気圧は前記呼吸器への送気圧であることを特徴とする。
【0014】
本発明の呼吸用空気監視装置は、ガス濃度測定器と、監視機器と、を備え、前記監視機器は、呼吸用空気としての加圧空気を通過させる管路と、前記管路から分岐して、前記加圧空気の一部を一次側空気として流入させる分岐路と、前記分岐路に流入した前記一次側空気を減圧して大気圧よりも陽圧な二次側空気とする圧力調整器と、前記一次側空気の空気圧を測定する第1圧力センサと、前記二次側空気が供給される空気室と、を備え、前記空気室は、採集チューブを介して前記ガス濃度測定器に接続され、前記空気室には常時開放された排出口が設けられ、前記空気室に供給された前記二次側空気は、前記排出口から絶えず微量ずつ排出されると共に、前記採集チューブを介して前記ガス濃度測定器へ供給され、前記ガス濃度測定器は、前記空気室から前記採集チューブを介して供給された前記二次側空気のガス濃度を測定することを特徴とする。
【0015】
本発明の呼吸用空気監視装置は、前記圧力調整器により減圧された前記二次側空気のゲージ圧は0.02Mpa〜0.08Mpaであることを特徴とする。
【0016】
本発明の呼吸用空気監視装置は、ガス濃度測定器と、呼吸用空気としての加圧空気を通過させる管路と、前記管路から分岐して、前記加圧空気の一部を一次側空気として流入させる分岐路と、前記分岐路に流入した前記一次側空気を減圧して二次側空気とする圧力調整器と、前記一次側空気の空気圧を測定する第1圧力センサと、前記圧力調整器により減圧された前記二次側空気の空気圧を測定する第2圧力センサと、を備え、前記ガス濃度測定器は、前記二次側空気のガス濃度を測定することを特徴とする。
【0020】
本発明の監視機器は、ガス濃度計測器へ供給される被測定空気を製造すると共に、呼吸器へ供給される呼吸用空気の空気圧を監視するための監視機器であって、前記呼吸用空気としての加圧空気を通過させる管路と、前記管路から分岐して、前記加圧空気の一部を流入させる分岐路と、前記分岐路に流入した前記加圧空気の空気圧を測定する圧力センサと、前記分岐路に流入した前記加圧空気を減圧して前記被測定空気を製造する圧力調整器と、を備え、前記加圧空気の空気圧は前記呼吸器への送気圧であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の呼吸用空気監視装置によれば、分岐路に流入した一次側空気としての加圧空気の空気圧を第1圧力センサで測定するので、管路を介して潜水士等へ供給される加圧空気の空気圧を監視でき、空気圧異常に伴う事故の発生を防止できる。また、ガス濃度測定器は加圧空気を減圧して得られた二次側空気のガス濃度を測定するので、市販のガス濃度測定器を用いることができる。また、分岐路に流入させた加圧空気を利用して加圧空気の空気圧とガス濃度の双方を測定できるので使い勝手が良い。
【0022】
本発明の呼吸用空気監視装置によれば、圧力調整器により減圧された二次側空気は空気室に供給され、空気室に供給された二次側空気は常時開放された排出口から微量ずつ排出されるので、空気室では二次側空気が絶えず流動して二次側空気の滞留が防止され、空気室には常に新鮮な二次側空気が供給される。そして、ガス濃度測定器は、このように空気室を流動する新鮮な二次側空気のガス濃度を測定するので、加圧空気のガス濃度に異常が生じた場合には、直ちにこれを検出することができ、迅速な対応が可能になる。
【0023】
本発明の呼吸用空気監視装置によれば、圧力調整器により減圧された二次側空気のゲージ圧は0.02Mpa〜0.08Mpaであり、大気圧よりも幾分陽圧であるので、空気室内の二次側空気は常に排出口から排出されることになり、空気室内における空気の流動が促進されると共に、排出口から外気が逆流するのを防止できる。
【0024】
本発明の呼吸用空気監視装置によれば、二次側空気の空気圧を測定する第2圧力センサを備えるので、二次側空気の空気圧不良によりガス濃度測定器によるガス濃度の測定が適切に行えないといった不具合を防止できる。
【0028】
本発明の監視機器によれば、分岐路に流入した加圧空気の空気圧を圧力センサで測定するので、管路を介して潜水士等へ供給される加圧空気の空気圧を監視でき、空気圧異常に伴う事故の発生を防止できる。また、加圧空気を減圧して被測定空気を製造するので、呼吸用空気に含まれるガス濃度の測定を大気圧仕様のガス濃度測定器を用い行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態に係る呼吸用空気監視装置を備える呼吸用空気供給システムを示す概略図。
図2図1に示す呼吸用空気監視装置の概念斜視図。
図3図2に示す呼吸用空気監視装置の概念平面図。
図4図2に示す呼吸用空気監視装置が備える操作パネルの概略図。
図5】本発明の第2実施形態に係る呼吸用空気監視装置の概念平面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1実施形態]
以下、図1図4を参照して、本発明の第1実施形態に係る呼吸用空気監視装置1について説明する。呼吸用空気監視装置1は、例えば図1に示す様に、水中作業を行う潜水士P1へ呼吸用空気を供給する呼吸用空気供給システムSにおいて用いられる。
【0031】
呼吸用空気供給システムSでは、空気圧縮機D1により外部空気が圧縮されて加圧空気が製造され、圧力調整器(図示せず)を介して空気清浄器D2へ送られる。空気清浄器D2では加圧空気が濾過されて水分及び油分が除去されると共に活性炭等で脱臭され、空気清浄器D2が備える予備空気槽D2aに蓄えられる。予備空気槽D2aに蓄えられた加圧空気は、呼吸用空気として潜水ホースHを介して呼吸器D3へ送られる。呼吸器D3は加圧空気を呼吸に適した空気圧に減圧して潜水士P1へ供給する。呼吸器D3へ送られる呼吸用空気の圧力(送気圧)は、送気員P2が上記圧力調整器を操作することにより水深に応じた圧力となるように調整される。
【0032】
呼吸用空気監視装置1は空気清浄器D2と潜水ホースHの間に設置され、呼吸用空気の空気圧及びガス濃度を測定して異常の有無を検知する。呼吸用空気監視装置1により呼吸用空気の異常が検知された場合には、送気員P2は連絡員P3に異常の発生を報告し、連絡員P3が水中電話D4を用いて潜水士P1にこれを知らせ、浮上又は予備空気源への切り替えを指示する。
【0033】
呼吸用空気監視装置1の具体的構成について説明する。図2及び図3を参照して、呼吸用空気監視装置1は、監視機器Aと、ガス濃度計測器5と、音センサ11と、警報手段としての表示灯12と、を備える。監視機器Aは、ガス濃度計測器5へ供給される被測定空気を製造すると共に、呼吸用空気の空気圧を監視するものであって、管路2と、管路2から分岐する分岐路3と、分岐路3に接続された容器4と、制御手段としての制御回路8と、を備える。管路2は、呼吸用空気としての加圧空気を通過させる空気流路を規定するものであって、その上流端2aは空気清浄器D2の送気口に接続され、その下流端2bは潜水ホースHの上流端に接続される。
【0034】
分岐路3には圧力調整器6が設置されており、管路2から分岐路3に流れ込んだ加圧空気(一次側空気)は圧力調整器6により減圧されて二次側空気(被測定空気)として容器4の空気室4aへ供給される。容器4には空気室4aに連通する排気口41及び採集口42が設けられ、排気口41は常時開放されている。圧力調整器6により減圧された二次側空気の空気圧は大気圧よりも幾分陽圧とされており、空気室4aへ供給された二次側空気は排気口41を介して絶えず微量に外部に排出され、また採集口42から採集チューブ51を介してガス濃度測定器5へ供給される。
【0035】
ガス濃度測定器5は、採集チューブ51を介して供給された二次側空気における各種ガス濃度(二次側空気に含まれる酸素、炭酸ガス、有害ガス(一酸化炭素やメタンガス等)の濃度)を測定し、測定されたガス濃度をモニタ5aに表示する。また、ガス濃度測定器5は測定したガス濃度に基づき二次側空気におけるガス濃度の異常の有無(酸素欠乏や有毒ガスの混入)を検知し、異常が検知された際には内蔵の警報装置(図示せず)を作動させ、警報音を発する構造とされている。本実施形態においては、ガス濃度測定器5に取り込まれる被測定空気は圧力調整器6により製造されたほぼ大気圧の二次側空気であるため、ガス濃度測定器5に市販の大気圧仕様のガス濃度測定器(例えば、理研計器株式会社製のポータブルマルチガス測定器RX−515)を採用することができる。このようなガス濃度測定器の構成は公知であるので詳細な説明は省略する。
【0036】
音センサ11は、ガス濃度測定器5からの警報音を検知して警報信号を制御回路8へ出力し、制御回路8は音センサ11からの警報信号を受けて表示灯12へ作動信号を出力する。表示灯12は、外付けブザー付きの回転灯であって、作動信号を受信すると警報音を発生させると共に回転灯を作動させ、作業者等に異常の発生を知らせる。なお、音センサ11は、警報音のみを検知し、人間や機械等から発せられる音には反応しないように設定されている。
【0037】
監視機器Aは更に、第1圧力センサ71と、第2圧力センサ72と、筐体9と、を備える。第1圧力センサ71は、分岐路3における一次側空気の圧力を測定するものであり、第1接続路13を介して分岐路3に接続されている。また、第2圧力センサ72は、分岐路3における二次側空気の圧力を測定するものであり、第2接続路14を介して分岐路3に接続されている。第1圧力センサ71による測定値及び第2圧力センサ72による測定値は制御回路8へ入力される。
【0038】
制御回路8へ入力された第1及び第2圧力センサ71,72からの測定値はそれぞれ、後述する第1及び第2圧力センサコントローラC1,C2(図4参照)へ出力されてデジタル表示されると共に、制御回路8は測定値に基づき圧力異常の有無を検出する。制御回路8による圧力異常の検出は、第1又は第2圧力センサ71,72による測定値と予め設定されているそれぞれの閾値(空気圧力の上限値及び下限値)とを比較することにより行われる。
【0039】
なお、分岐路3における一次側空気の圧力の閾値及び分岐路3における二次側空気の圧力の閾値は、上述したように第1及び第2圧力センサコントローラC1,C2により設定入力されるが、加圧空気の圧力(分岐路3における一次側空気の圧力)は、呼吸用空気監視装置1の上流側に設けられた圧力調整器(上述した空気圧縮機D1と空気清浄器D2の間に設けられた圧力調整器(図示せず))により調整され、また分岐路3における二次側空気の圧力は、当該圧力調整器と圧力調整器6とにより調整される。
【0040】
筐体9には、容器4、制御回路8、第1圧力センサ71、及び第2圧力センサ72が収容されており、筐体9の前面には制御回路8により制御される操作パネルPN(図4)が設けられている。この操作パネルPNには上述した第1圧力センサコントローラC1及び第2圧力センサコントローラC2の他、電源スイッチS1、運転ランプL1、圧力異常ランプL2、音センサランプL3、ランプ付きスイッチL4が設けられている。
【0041】
第1圧力センサコントローラC1は、第1圧力センサ71に対応し、表示手段C11と入力手段C12とを備える。表示手段C11には第1圧力センサ71による測定値がデジタル表示され、上述した分岐路3における一次側空気の圧力の閾値は入力手段C12を介して設定入力される。
【0042】
同様に、第2圧力センサコントローラC2は、第2圧力センサ72に対応し、表示手段C21と入力手段C22とを備える。表示手段C21には第2圧力センサ72による測定値がデジタル表示され、上述した分岐路3における二次側空気の圧力の閾値は入力手段C22を介して設定入力される。
【0043】
電源スイッチS1は、呼吸用空気監視装置1の電源をオン/オフ制御すると共に、外部電源としてAC電源(100V)とDC電源(24V)の何れかを選択できるようにされている。これにより、制御回路8へは外部電源から100Vの交流電力又は24Vの直流電力が供給される。なお、AC電源からの交流電力は、筐体9の裏面から延びる電源コード19を介して供給され、DC電源からの直流電力は筐体9の裏面に設けられた接続端子台(図示せず)に接続されたケーブル等(図示せず)を介して供給される。
【0044】
圧力異常ランプL2は後述するように制御回路8によって一次側空気又は二次側空気における圧力異常が検知された時に点灯される。音センサランプL3は音センサ11用電源(図示せず)の電源異常時に点灯され、ランプ付きスイッチL4は後述するようにガス濃度測定器5によりガス濃度における異常が検知されると点灯される。
【0045】
呼吸用空気監視装置1による呼吸用空気の監視は次の様にして行われる。まず、管路2の上流端2aを空気清浄器D2の送気口に接続すると共に、管路2の下流端2bを潜水ホースHの上流端に接続する。ガス濃度測定器5は筐体9の上に載置してもよく、音センサ11はガス濃度測定器5の警報音を検知可能な位置に設置される。
【0046】
外部電源(AC電源又はDC電源)の何れかを選択して電源スイッチS1をオンすると、運転ランプL1が点灯する。空気清浄器D2から供給される呼吸用空気としての加圧空気は、管路2及び潜水ホースHを介して潜水士P1へ供給される。また、管路2を通過する加圧空気の一部は分岐路3へ流れ込み、その一部は圧力調整器6により減圧されて二次側空気(被測定空気)となり、空気室4aへ供給される。このとき、圧力調整器6による加圧空気の減圧は、二次側空気の空気圧が大気圧とほぼ等しく且つ大気圧より僅かに高くなるように行われる。
【0047】
このようにして二次側空気が空気室4aへ供給されることにより、排出口41からは二次側空気が絶えず微量に排出される。よって、空気室4a内では二次側空気が絶えず流動して二次側空気の滞留が防止され、また空気室4a内における空気圧はほぼ大気圧に維持される。そして、空気室4aに供給された二次側空気の一部は、収集チューブ51を介してガス濃度測定器5へ取り込まれ、二次側空気のガス濃度が測定される。測定されたガス濃度はガス濃度測定器5のモニタ5aに表示され、またガス濃度測定器5は二次側空気のガス濃度における異常の有無を判断する。二次側空気のガス濃度に異常があると判断すると、ガス濃度測定器5は警報音を発生させる。
【0048】
なお、圧力調整器6から空気室4aへ供給される二次側空気の空気圧としては、ゲージ圧が0.02Mpa〜0.08Mpaであるのが好ましく、0.04Mpa〜0.06Mpaであるのが更に好ましい。ゲージ圧が低すぎると空気室4a内における二次側空気の流動が不足して空気が滞留するおそれが生じ、またゲージ圧が高すぎるとガス濃度測定器5によるガス濃度測定が正常又は正確に行われない虞があるためである。
【0049】
ガス濃度測定器5が警報音を発生させると、音センサ11はこれを検知し、制御回路8へ警報信号を出力する。制御信号8が警報信号を受信すると、制御信号8は表示灯12へ作動信号を出力して表示灯12を作動させると共に、操作パネルPNを制御してランプ付きスイッチL4を点灯させ、運転ランプL1を消灯させる。このように、表示灯12が作動することにより異常の発生を幅広く周囲に知らせることができ、また操作員(例えば送気員P2)はランプ付きスイッチL4の点灯により異常の種類が二次側空気のガス濃度であると認識できる。
【0050】
また、第1圧力センサ71は一次側空気の圧力を測定し、その測定値は制御回路8へ入力される。制御回路8は、入力された測定値を第1圧力センサコントローラC1の表示手段C11に表示させ、これにより作業員は一次側空気の圧力を目視で確認することができる。また、制御回路8は、入力された測定値と予め設定された閾値とを比較することにより、一次側空気の圧力が正常範囲内にあるか否かを判定する。一次側空気の圧力が正常範囲にない場合には、一次側空気の圧力(即ち潜水士P1へ供給される呼吸用空気の送気圧)に異常が生じたと判定し、制御信号8は作動信号を出力して表示灯12を作動させると共に、操作パネルPNを制御して圧力異常ランプL2を点灯させて運転ランプL1を消灯させる。
【0051】
同様に、第2圧力センサ72は二次側空気の圧力を測定し、その測定値は制御回路8へ入力される。制御回路8は、入力された測定値を第2圧力センサコントローラC2の表示手段C21に表示させ、これにより作業員は二次側空気の圧力を目視で確認することができる。また、制御回路8は入力された測定値と予め設定された閾値とを比較することにより、二次側空気の圧力が正常範囲内にあるか否かを判定する。二次側空気の圧力が正常範囲にない場合には、二次側空気の圧力に異常が生じたと判定し、制御信号8は作動信号を出力して表示灯12を作動させると共に、操作パネルPNを制御して圧力異常ランプL2を点灯させて運転ランプL1を消灯させる。
【0052】
このように、本実施形態の呼吸用空気監視装置1においては、呼吸用空気のガス濃度及び空気圧を常時監視できるので、潜水士P1への送気障害、ガス中毒による死亡事故、健康障害の発生を防止し、潜水作業の安全性を向上できる。また、潜水士P1へ供給される呼吸用空気の一部を分岐路3へ絶えず取り込み、このようにして取り込まれた呼吸用空気のガス濃度を常時監視するので、潜水士P1へ供給される呼吸用空気のガス成分をリアルタイムで監視することができる。
【0053】
また、呼吸用空気のガス濃度の異常、一次側空気の空気圧の異常、及び二次側空気の空気圧の異常の全てを、表示灯12で報知することができるので、周囲の多くの作業員に異常発生を迅速に知らせることができる。
【0054】
更に、操作パネルPNには、圧力異常ランプL2、音センサランプL3、ランプ付きスイッチL4が設けられているので、これら圧力異常ランプL2、音センサランプL3、ランプ付きスイッチL4の点灯状態により異常の種類を認識することができる。また、第1圧力センサコントローラC1及び第2圧力センサコントローラC2にはそれぞれ一次側空気の空気圧及び二次側空気の空気圧が表示されるので、作業員は一次側空気及び二次側空気の空気圧を常に目視にて確認することができる。
【0055】
なお、異常の原因が解決したら、ランプ付きスイッチL4を押すことにより、点灯していた圧力異常ランプL2、音センサランプL3、又はランプ付きスイッチL4は消灯し、運転ランプL1が点灯する。
【0056】
また、本実施形態の呼吸用空気監視装置1によれば、現場環境に応じて外部電源として交流電源と直流電源のいずれをも利用できるので、使い勝手がよい。
【0057】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る呼吸用空気監視装置101について図5を参照して説明する。この呼吸用空気監視装置101は上述した呼吸用空気監視装置1と略同一であるが、音センサ11が省略されており、ガス濃度測定器5に代えてガス濃度測定器105を備える点で異なる。
【0058】
この呼吸用空気監視装置101では、ガス濃度測定器105においてガス濃度の異常が検知されると、ガス濃度測定器105は警報音を発する代わりに制御回路8へ警報信号を出力する。ガス濃度測定器105からの警報信号が制御回路8に入力されると、制御信号8は上述したのと同様にして作動信号を表示灯12へ出力し、表示灯12を作動させる。
【0059】
この呼吸用空気監視装置101においても、上述した呼吸用空気監視装置1と同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態に係る呼吸用空気監視装置について添付の図面を参照して説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形、修正が可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態においては警報手段として表示灯12を用い、異常の発生を音の発生(聴覚的手段)及び回転灯の作動(視覚的手段)により報知したが、警報手段は表示灯12に限定されず、異常の発生を聴覚的手段及び/又は視覚的手段によって報知できればその構成に制限はない。
【0062】
また、上記実施形態においては警報手段(表示灯12)を用いて主に陸上(又は船上)の作業員に異常の発生を報知し、作業員から潜水士P1へ異常の発生を伝える構成としたが、潜水士P1へ直接異常を報知する構成であってもよい。この場合には、潜水士P1に警報手段を携帯させ、制御回路8からの作業信号を水中電話線等を通じて警報手段へ出力することによって警報手段を作動させればよい。このように構成することにより、潜水士P1への通報をより迅速に行うことができる。
【符号の説明】
【0063】
1,101 呼吸用空気監視装置
2 管路
3 分岐路
4 容器
4a 空気室
5,105 ガス濃度測定器
6 圧力調整器
8 制御回路(制御手段)
11 音センサ
12 表示灯(警報手段)
71 第1圧力センサ
72 第2圧力センサ
A 監視機器
図1
図2
図3
図4
図5